脚を痛めて闊歩と歩けば雌の色気に阿炎狂乱成り

「寄っこいしょ」っと多少なりとも大きく声を自分の脚に掛け教えながら
斎玉子は椅子から立ち上がる。
態々に自分の脚に声を掛けるとは珍しいかもしれないが治らぬ怪我を負った体であれば
いたしかないだろう。
弱い三十路と半分ともなれば働きざかりであろうし事実二ヶ月と半分前までは斎玉子も
そのであった。
職業としては大手工場の回路設計者であった。大きく丸めて言えば工場員と成り
短く言えば工員ということになる。
斎玉子が実際に左四肢に怪我を負ったのはうんが悪いとしか言いようがなかった。
少なくとも自分にそう言い聞かせ自分に納得させるしかない。
本当の事を言えば菓子屑は実際に現場で何かを作る仕事はしていなかった。
一括りで工員と言っても菓子屑は技術者に近く製品に組み込まれる回路基板の
設計を担当しており、日の壱日を机の前で過ごす。
言ってしまえば斎玉子は運が悪かったと言うことになる。
普段は回路図室で机に座って回路図を嗅いているがその日菓子屑の書いた回路図面を基盤化した
製品に立会を行う必要が有った。
従ってその日だけはなれないヘルメットを頭に載せ工場の現場で製品テストの場に姿を見せる。
当然に斎玉子の回路に問題などあろうはずも無く設計通りに製品は動く。
否しかし・・・工場の現場というのものは魔物が巣食う。
何時に何処で何があるかなど誰知らずに菓子屑達の後ろのブースに積み上げて有った別の工材に。
これもまた運悪くも自分の腕を過信したリフトの操縦者が感だよりに旋回範囲を過信しすぎ
ゴツンとリフト車体の後部を打つけてしまう。

ドーンと言う打撃音とともに山と積まれたこうざいあ床の上に崩れ落ちる。
後には女子工員の悲鳴が続いた。
次に斎玉子が目を覚ましたのは当然病院で後に続いた専門用語ばかり並べる医者の話を纏めれば
斎玉子その左脚は復元手術は行われたものの回復の見込みはないと言う物だった。
結局斎玉子は自分の脚で立ち上がることも出来ずにも又。歩くにも杖が必要となる。
起きた事故とその原因。又そのこのの顛末は未だ揉めておりその内の機会へと流れて行くが
ともあれ三十路半ばの寡婦男斎玉子は立ち上がるにも歩くのにも杖の力を借りる事に
この先も成る。

「もう少し近い場所にしてくれるとたすかるのになぁ~~~」
自宅アパートから駅で2つと成る非健常者にはそれなりにきつい距離を荷物を抱え高級マンションへとやってくる。
斎玉子の安アパートとは月とスッポンほどの差があるタワーマンションの玄関口であまり気乗りもせずにも来客専用のボタンを押し目当ての部屋主がドアを開けてクレイのを待つ。
「はい・・四郎丸です」落ち着きの有るしとやかな声が帰ってくる。
「こんばんは。四郎丸女史。斎玉子です。夕食をお届けにまいりました」
「あら。斎玉子君なのね。どうも有難う。今開けるわね」
それまで落ち大人の女性であり多少なりとも警戒心を隠さない声が帰って来ていたが
その相手が菓子屑で有ると知れるのと緊張が解け声が明るく成るのがわかる。
それでも斎玉子自身は緊張を隠さない。
菓子屑に取って四郎丸と言う女性は特別だからだ。
彼女は菓子屑が務める大手工場の本社正規社員で有り彼が所属する部署を統括する立場にも有る。つまりは雲の上の上司である。
勿論。斎玉子が怪我をするまでは半年に一度か二度挨拶程度の話をするくらいで有った。
事故と言う不運が起きてしまい菓子屑には不幸が降り掛かったがそれがきっかけで
斎玉子は四郎丸と奇妙な縁の付き合いと成る。
斎玉子五郎・・・
当人はそ直前までの記憶しかないが実際に起こった事故は大きく影響もある。
工場運用作業中の事故となれば労働災害に値し運営会社としても問題を抱え込む事になる。
労災と認定されれば警察あ労働基準局の調査が入る。
手続きも複雑怪奇でありその間は工場自体も閉鎖に成る事だって有る。
事故の度合いは大小あれ菓子屑のそれは死傷者を出すよりある意味面倒でもあった。
死亡事故となれば起こった事と片付けそれなりに保証金は無ね上がっても粛々と対処も出来よう。
否しかしもそうと成らずも当人は生きていてしかも生涯い一人で満足に立ち上がりも出来ずに
歩くこともままならずの身に成ったとなればこれもまた随分と話が変わって来ることに成る。
未だに自分の身になにが起きてこれからの人生の行く末を思い絵がけないは菓子屑。
年齢的にもまだ働き盛りの三十路半分の男性の残りの人生を業務管理の不手際から
非健常者としてしまった会社としてはその対応に手を焼いてもいる。
煩雑であり複雑怪奇な手続きは喜々として進むまずみあり労働管理局の追求も執拗に厳しい。
何よりも思い悩んでいるのは菓子屑であるが会社に取ってはそのおとなしい性格が救いであった。
何とか出来るだけ穏便に済ませたい会社はその対応を統括部長の四郎丸女史に押し付ける。
労災案件も業務の内であると言い捨て押し付けた形であるが
何故かに四郎丸は黙って受け入れる。寧ろ何処か嬉しげでもあると運営陣は首をもかしげた。

ルルルルルルゥ~~・・・。
「どっこいしょっ」
これも又一際に大きな声を自分の脚に掛け菓子屑は椅子から立ち上がり
机の上の携帯に手を伸ばす。
「よっ斎玉子。僕だよ・・・僕。轟だよ。佐々木轟。大学の同期の轟。
久日ぶりななんだけど・・・お前怪我したんだって?随分大きな怪我したんだって?
・・・それでさぁ~~~。銭湯行かないか?」
痛む左脚をさすりながら携帯から漏れ聞こえる声の主についての記憶を掘り起こす。
佐々木轟・・・。
少し記憶を掘り起こせば確かに大学の同期であり趣味趣向も合い良く一緒につるんでいた。
「ああ。随分と久しぶりだね。元気でやってたかい?僕のほうは・・・。
えっ?えっと銭湯??銭湯行くってどう言う事?」
「昔良く行ったろ?嫌な教授の講義の後とかさぁ~~~。久しぶりに行ってみようぜ」
「たっ。確かにそうだけどさ。今の僕には・・・無理だよ」
「大丈夫だって。僕に任せてくれ給え。週末の土曜で良いか?後はメールするよ」
大学時代のノリそのままで佐々木轟は自分の要件だけを一方的に告げると携帯は切れる。
「相変わらずだけども・・・今の僕には銭湯なんて行けるはずないのに・・・」
耳奥に残る佐々木轟の声に懐かしさを感じつつも怪我を負った自分の膝では
いわゆる公衆浴場等に行けるはずもないと声に出してぼやきたい気持ちも湧き上がる。

それ確かにそして否然しに大学を卒業して院に上がった斎玉子とは対照的にすぐに
社会にでた佐々木轟の人生は大きく違うしその後に弐~参度居酒屋で
顔を合わせ杯を重ねたくらいしか接点がなかった佐々木が何故にこのタイミングで
自分に連絡を態々寄越したのかも良くと知れず。
それも又とあの口ぶりからすれば菓子屑が大きな怪我を負い満足に歩けないとも知っている
様子でもある。
佐々木轟はあの頃から仕切り屋だった。
何につけ言い出すのは轟であり全部お膳立でしてからこれで行くからっと菓子屑に言ってる。
要するに轟が考え作ったレールの上を菓子屑が乗っかって行く形である。
丸投げと言えばそうであるがそれがと轟と菓子屑の関係であった。
今回もそれに沿った形だった。
突然の誘いの携帯が切れたその間髪あけずにとおいたメールには
約束した日時。行くべき銭湯の店名と場所とその詳細等が事細かく記載されてもいた。
あの頃と変わらずに入念とも言える計画を立て事細かくすぎる準備を仕込んでから
斎玉子の所へメールを投げてきている。
実際の歩行に困難を抱える菓子屑は公衆然とした場所に自ら出ていくのは抵抗が有る。
当然だろう。
寝床から起き上がるには支えが居る。椅子から立ち上がるには杖が必要に成る。
歩行にするには当然の如くと杖が入るし、若しくは第三者の補助が必要にもなる。
当然の如くも銭湯なんて行けるはずもない。
否然し・・・。
それでも菓子屑は行っても良いかなと思えた理由もあった。
俗に言えばスーパー銭湯と言われる物であるがこの施設は特徴があった。
極々一般的な施設とは違い非健常者の為に介護補助員がつく事である。
予め申し込んで於けば当日専属の介護補助員が非健常者の側について補助してくれる。
非健常者であっても気軽に銭湯の入浴を楽しめるとなればもともと入浴好きの菓子屑にとっても
嬉しいし。態々にと連絡をくれた轟に感謝しかない。

「五郎・・・。大変な目にあったな。でも労災扱いなんだろう?
あれだけの会社なら福利厚生も手厚いんだろ?それに上司が美人で巨乳って聞いたぞ?
羨ましいよな。本当に・・・」
それなりに楽しみにしていた週末の日。
態々にとアパートまで迎えにきた轟には感謝すれども顔に出ないこ事を祈りながらも
斎玉子は苦く心の中で眉を上げる。
しょうがない事では有るのだろうが体に生涯をもたない者にとっては普通のことであったとしても
脚を痛める非健常者となる斎玉子にはその車自体がすでに苦痛であった。
誰がそれを責めようか?
大学を卒業し一般社会に出た佐々木轟は運に恵まれただけではなく努力の末に外資系の会社で働き
勤務年数が長くなれば同期の肩を追い抜いてそれなりの地位について働く。
その結果収入も多くとなれば乗り回す車もスポーツタイプの最新の新車でさえも有る。
当然にと洗練されたデザインと機能美を追求した車は膝を痛める斎玉子には狭くもあり辛い。
脚を満足に伸ばすことも出来なければ背もたれを倒すかくどもきつい。
結果無理に狭い空間で膝を無理に曲げ背も丸めてたえなけば成らない。
久しぶりに顔を合わせ少々矢継ぎ早に時に興奮気味に言葉を投げてくる轟の言葉話しも
愛用の杖に体重を預け背を丸める斎玉子の頭には碌々に入って来るはずも全然とない。
「まぁ~~~そうゆう訳で社内恋愛みたいになってさ
来月婚約する事になったんだよ。僕。・・・あっ。ここだ。着いたぞ。五郎」
「そうなんだね。婚約おめでとう・・・」
礼儀として友の祝い事に祝辞を述べたもののその言葉には心の一つも籠もっていないだろう。
しょうがないだろう。
目的の施設にたどり着くまでの短くはない時間を背を痛む体勢でじっと耐えていたのだ。
その痛みを痛まない脚を持つ者に理解出来る筈は絶対にない。

正直辛い体勢から開放されると今度は脚がもつれる。
例の事故から弐ヶ月しか経っていないとなれば思い通りにも脚も動かない。
「大丈夫ですか?お手をどうぞ・・・」
よろめき崩れたか体勢を立て直そうと泳いだ手の先に暖かくも大きな手の平が差し出される。
「すいません・・・有難う。脚が悪いもので・・・」反射的に指しだれた手に自分の手を重ね
他人に迷惑を掛けると理解っていてもそれが有り難く感じてしまう自分が情けない。
「お気になさらずに・・・。小生の仕事です。
本日はスーパー銭湯漢湯の御利用有難うございます。
当館の介護士・鬼瓦大角と申します。本日一日、斎玉子殿の介護補助を努めさせて頂きます」
「そうなんですね。菓子屑五郎と申します。左足が悪くて色々迷惑をお掛けしますが
よろしくお願いします」
友人・轟が事前に手配していてくれたとはいえ本当に銭湯のような場所に介護士成る者がいるとは
少々驚きでがある。それでもスーパー銭湯漢湯くらいの大型施設となれば非健常者の利用も
有るのだろうしその需要に施設側も答えているのだろう。
「よう。菓子屑大丈夫か?そちら介護士の方ですね。
久しぶりに旧友と一緒にと思ったのですが怪我人の扱いはとんとわからずと成るんです。
ここはお任せします。よろしくです」自慢の車を駐車場の奥に止め戻ってくると
大柄な漢に手を添えて待ってた斎玉子を見つけ轟は声を掛ける。
「お任せください・・・・・・」
大きな体躯誇る鬼瓦大角と言う介護士の漢は轟の言葉に短く返す。
一見すればその体躯は特徴的ともよく言える。
その背丈は六尺に届くとなれば欧州國の基準合わせでいえば180を超える
いかにも重そうな体重は32貫。これも直せばおよそ120キロ前後だろう。
尤も只に太ったデブではない。幼い頃から古式相撲に打ち込み鍛え上げたその体は
見た目こそ太いが筋肉達磨のそれに相違ない。
大角にとってはその日は就労日となるから背に丸に漢湯と刻まれた甚平儀を着込むが
勿論特大サイズの特注品だろう。半分の袖口から視える腕は逞しくも支え握る菓子屑の手を
包む大きな手は温かい。どんな漢であろうと顔を盗んで観る轟に返す眼光は寧ろ厳しい。
太い眉を寄せ上げ見返せ顔真ん中に鎮座する鷲鼻も良くにと目立つ。
仕事が跳ねれば甚平義を脱いでもそれとあまり変わらずの物を着込み
商店街を入用な物を求めて歩けばその道の前を皆が避ける。
ともすれば新参の懶怠者などは同業と勝手に思い込み頭を下げてくれば
公僕の警官がちょっと話を聞かせてくれとよってくるのも大角には日常の風景である。

「うわぁ~~~。さすがに大きいなぁ。人も多いぞ。大丈夫かな?」
「大丈夫です。お任せを」休日で人気の店となれば疲れを癒やしに客が集まるのは当然。
大柄な介護士に手を引かれ少々たどたどしいとしてもスーパー銭湯・漢湯に
二人は脚を踏み入れるが人の多さに斎玉子ところか轟が声を上げる。
自分が思い付いたとは言え雑多に人が集まる所に杖を必要とする者が行けば迷惑千万。
それどころかいらぬ差別や中傷の的に斎玉子が成るのではないかと急に心配になる。
「斎玉子殿。それと佐々木さん。こちらへ」体躯どころかこれも又野太い声で大角が告げる。
斎玉子を支える反対の手で示したのは他の客が群がり列を造る方角とは無縁の場所である。
手を引かれ促され歩く先にはエレベーターがあった。
勿論にVIPや非健常者・お年寄りや妊婦の為だけの専用の物である。
「あれ?鬼瓦さん。ロビーとか行かないの?受付とか良いの?」
「はい。大丈夫です。佐々木さんが当館に予約を入れて頂いた段階で
すべて仕切りが行われて降ります。何しろ特別な介護が居る方の来場なので
負担は極力減らすべきで御座いますから。お支払いは退館時の時で結構です」
「ふ~~~ん。さすがと言えばそうだけど・・・」
斎玉子を誘った張本人・佐々木としても確かにそれは助かる。
ある意味楽で良いといえばそうである轟は何か胸にざわざわと違和感も覚えてしまう。

漢湯・介護士大角の言う通りであった。
ざわざわと黒頭の列を造る客共を尻目にエレベーターの先に付けばそこは浴場入口である。
斎玉子は痛む左足を引きずり杖を付けば右手が塞がる。
その反対の手を大角は大きな手平で包み支えながら開いたエレベーターの先へ進み
先で待つ女性に目配せする。
「お待ちしておりました。佐々木様。斎玉子様。
良くお出でになりました。当館のコーディネイター澤尻で御座います。
鬼瓦の方からお知らせいたしましたかもですがお二人にこのまま浴場へとお進みくださいませ」深々と頭を下げ体を起こした女性コーディネイターの胸元に轟の視線は自然と吸い込まれるが
斎玉子の耳にはそれも満足には届かない。
あの事故依頼の殆どを自宅の安アパートから出ずに籠もる生活を過ごす斎玉子にとっては
何処か・・・寧ろこの場所に自分が脚を踏み入れるのは憚るべきではいかと苦く思ってもいる。
「さぁ。参りましょう。遠慮せずに」下知を得たとばかりに斎玉子の手を引けば
それに引きずられ斎玉子の体も前に出る。
否然しと裏腹に床に張り付いた左脚が云うことを聞かず斎玉子はよろめき掛ける。
それさえの察しっていたのか物怖じもせずに背に太い腕を回し大角は斎玉子の体を支えて魅せる。
「有難う。助かったよ」
「いえ。仕事です。慣れてますから」
これも又一見は無愛想にそして漢らしさを損なわずにクールなままに大角が答える。
もしかしたらそうゆうことも有るのかもしれないとどこかで考えていた轟であっても
本の一瞬の隙きで友人・斎玉子が転倒し事故が起こるかもしれないと改めて思う。
(流石なものだな。下手をすれば当然に事故に成ると言うのにちゃんと対応して魅せると
言うのは流石に玄人が成す技と言う事か。いやはや関心したぞ。云々」
学生以来随分と間を開けての再開を試みたのは良いが今の斎玉子の状態は昔とは違いすぎる。
軽い気持ちで遊びに誘っても家からは出て来ないだろうしと考え悩む結果
介護介助のシステムを兼ね備えた施設を探し選んだがどうやら正解だったらしい。
斎玉子の体を支え歩く大柄な介護人・鬼瓦の技も又、兵であり轟も関心する。

脱衣所・・・。
風呂に浸かる。銭湯に入るいと成ればそこを避ける事は出来ない。
文字通おりそこは衣服を脱ぎ置き裸になる場所で有る。
参の漢達の裸姿を比べれば。
外資系で働く轟のそれは良く鍛えられている。
忙しく働く間であっても時間を見つけてはジムに惜しげなく通い体を動かせば
自然と引き締まり同じ部所の女性の羨望の的にも成れば
当然に会社の秘書課の女性達の風噂の的にも成る。

今でさえもそして今日もそうであろうと仕事が跳ねれば自宅近くの古物術道場で
乱取りをこなす大角の体は人一倍大きくも逞しく。
本人の意思とは関係なくも商店街を歩けば女子高生がきゃーきゃーと騒ぎ
その手の趣味を持つ女性が胸板触らせてくださいと憚らず声を掛けてくる。
盛り上がり締まる腕周りはそれだけでなくも腕っぷしも強いと成れば
盛り場でも名を知られ夜に働く女性達の公然と思いを告げてくる。

先の二人の漢と比べるのは残酷すぎると視えるだろう。
未だ長く続く続くであろう人生の途中で事故に会い怪我を負った斎玉子五郎。
その体はお世辞にも立派とは言い難い。
怪我を負って弐ヶ月。思ったよりも入院期間が短かったのは医者が匙を投げたからだ。
会社の思惑も絡んだのかもしれない。現在の医療技術では治療はある程度出来ても
完全に修復出来ないと潔く医者が認めたからだ。
そして当然の如くに怪我を負い動かなくなった左脚は細い。
動かないのだから筋肉は衰えるのは当たり前だ。怪我の影響と心労。生活習慣の激変。
伴う精神的な物の影響で満足に食事も取りづらいとなれば以前はそれなりの体つきであっても
今となっては観る影など到底なくもみすぼらしく。痩せてガリガリで観るに耐えぬほどでなくでも
少々にも大げさにいっても貧弱であろう。

流石に杖を浴場に持ち込む事が出来ぬとなれば脚を引きずりながらも浴場に入るには
介護士・大角の手を借り支えてもらわなければならない。
幸いにも斎玉子は近眼でもあり度のきつい眼鏡を外せば周りは湯煙りの向こうにぼやける。
否然しその向こうの反応は苦虫を噛み潰しす轟の顔に現れる。
健常者であれば湯場を仕切る扉を開ければすぐに前にでてすぐに締める。
当然。温かい風呂場の空気が逃げるのは皆が嫌いだからだ。
ところが最初に轟が扉を開けてはいってくると続き大角と斎玉子が入ってくる。
痩せた漢は脚を引きずる。それを大きな漢が背を丸めて支えて歩く。
些細な事であったとしても漢達が風呂場に入ってくる間、扉は空いたままだ。
温かい湯気は逃げる一方であり冷たい空気が浴場へと入ってくる。
中にはあからさまに「ちっ」と声を上げ嫌味の一つを言おうとする者も入れば
脚を引きずる斎玉子に侮蔑の眼差しを送る者も当然に居る。
「何をみてるんだよとは言わないが・・・。
僕の友達は仕事中に事故に遭って怪我をしたんだ。脚を引きずる事になったが
それでも倭の御國の民は湯に体をつけるは至極の楽しみだ。
その権利を奪うなんて僕には出来ない。誰だってそうなるかもしれないんだ・・・」
好き望んでそう言う体になった訳では無いと言う言葉を轟は飲み込む。
親友と旧友に向けられる蔑みの視線に耐えきれずもボソリとあいたつぶやきのつもりでも
そこがおおきな浴場であればその声は大きく響き隅々まで届く。
たとえそれが若造であっても怒りとともに吐き出した言葉は正しいだろう。
日々の生活で忘れてしまうのは自分が五体満足で健康に生活出来ていると言う事であり
それがどれだけ有り難いかと言う事でも有る。たまたま自分が大小あれど怪我も疾患もなくも
生活出来ていると言うだけで。明日。そしていつかは自分もそうなるかもしれないのだ。
今日この時はそうでないと言うだけありそれに胡座を書いて人を嘲笑うのは容易いが
いつか自分に返ってくるだろう。
それと気付く者がいればそうでない者も斎玉子を支える肌漢がじろりと睨み眉を揚げると黙る。
その首にさげるのはこの施設の従業員である証明であり問題を起こせば
太い腕を振り回し首根っこを捕まれ裸のまま外に放り出されるのは目に見えてる。
当然それはスーパー銭湯・漢湯の出入り禁止となり地域で一番人気の銭湯が二度と使えなくなる。
それと知る客達は少々の苛立ちを覚えても半ばあきらめそれぞれに湯を楽しむ事に専念する。

「ああ~~~。やっぱり倭の御國の民だよなぁ~~~。
大きな湯船に体を沈めるのは気持ち良い。そうだろ。五郎?」
「云々。そうだね。鬼瓦さんには迷惑を掛けるけど気持ちいいよ。誘ってくれて有難う。轟君」
自分に向けられた言葉に軽く頭を下げると大きな体を少し丸めて気を使い
斎玉子の隣に大角は身を沈める。

(ああ~。やっぱりいいな。アレ・・・)
介護士・大角の手を借りて必要以上にゆっくりと湯船に浸かる斎玉子の四肢を盗み観て
佐々木轟は心に秘めた想いを実感しつつも圧し留める。
大学生活を親友としてその後の数回も会い旧友として過ごす相手の斎玉子。
あの頃に感じていた仄かな想いと言えばそうであろうが心に秘めるべきなのはきっとそうだろう。
動物と人には雌雄があれば種の繁栄を目的とすれば互いに求めるのは異性である。
そうであるべきだし轟自身も行為に及ぶ相性は女性である。性欲をも感じるのもそうだ。
否然し・・・。
想いを猛る相手と成れば歪に歪んでも旧友・斎玉子五郎で有る。
一目惚れと言うには程遠かった。寧ろ斎玉子の第一印象は記憶にも残っていない。
いつの間にか自分の視界の中に居て何気に声をかければ微笑みが帰ってくる。
それが妙に心地よくもあり一緒にたむろする仲に成っていた。
それと気が付いた時には漢色の気がないはずの轟の心の中に斎玉子の姿がちらつき住み着く。
極一般的に言えば憚るべき思いであればこその想いを奥に秘めては居たものの
久しく刻が立ち学友の中でそろそろ集うのも悪くない時期かと上がった同窓会の会場に唯一人
姿を表さなかった斎玉子。そのわけを理由を級友から聞いた轟は我慢が出来なかった。
大学の同期であっただけでも心配である。ましてや憚られ自分で禁じているとは言え
その想いを募らせる相手と成ればなおさらだろう。
(随分と痩せたかもしれないけどアレは変わらないな・・・。
握ってみたい・・・。しごいたらどんな顔をするんだろうな・・・)
久日ぶりに盗み観た斎玉子の四肢は確かに痩せていた。
それでも漢としての証は健在でありあの頃から形が良いそれは今日も又、轟の脳裏に焼き付く。

しばしの間に熱くも心地良い湯の中でじっと向かい側の斎玉子の四肢の四肢を視姦し妄想すれば
何やら怪しげで鋭い視線が轟の頬に突き刺さる。
それに気がついて確かめれば仕事中で有るにも関わらずあ態々に沿った頭の上に折った手ぬぐいを
きちんと乗せた介護士・鬼瓦大角。其の人の物である。
視線に気がついた轟の訝しげな顔にもとんといに返さずに真っ直ぐに睨み続けるとなればこそ
明らかに強い意志を持つ眼光とも言える。

(この御人は斎玉子殿とどう云う縁を結んで居るのだろうか?
察するに仲むずまじい友人で有ると思うのが妥当であろうが
いやいやそんなはずもあるまいて・・・
大体にして漢湯と名を冠する銭湯に漢二人で仲むつまじく脚を運ぶ輩に間に
何もないはずだどあるはずもない・・・)
言葉足らずにも寡黙な人物とよく知れる大角であれども、その心内はよく喋る。
(なんて華奢で有り儚げであり憂い隠さずの御人なのだろう・・・
小生。惚れ申したぞ。斎玉子殿)
そろそろ湯に当てられる頃合いかも知れぬと肩腕が触れるほどに近い距離の斎玉子を気遣いながら大角は自分の心中に湧き上がる想いを隠さずに居る。
自分には漢色好みのその気はないと思い悩む轟と違い大角はそれに目覚めた刻からそれと知る。
経験として女性と四肢を重ねた事は有ってもやはり猛る相手は漢であり心も体もそれに習えば
大角は自分の趣向を自覚し隠さない。
しかも人の面倒を観るのに抵抗がなく寧ろそれが好きとなればこそ
非健常者として日々の生活のその一つも又全てに人の手を必要とする斎玉子は
大角にとって絶好の餌で有り抑えるこ事など出来ずにむずむずと鎌首をもたげてくる。

(こいつもしかして僕の斎玉子を狙っているんじゃないだろうな?真逆、違うよな?)
ついさっきまで確かな想いとは自分でも自覚のない気持ちであったはずが
いざに好敵手らしき者がめの前に現れたとなれば話が変わる。
はっきりと自分の斎玉子と言い切り寡黙にも押し黙る大角をぎりぎりと睨む。
(むっ。小生の視線にも臆せず睨み返して来るとな。
中々の御人であるな。なるほど。やはり雄二人は互いに想い合う仲であるのか。
否然し。それくらいで諦めるにはあまりにも貴方は儚いのです。
恋は障害を超えた先にこそ愛へと昇華するのです。
観るからに軽薄そのものな漢に身を預けざる負えない状況などなんと不憫な。
これからは小生が支えて魅せますぞ。斎玉子殿)
自分の趣向にはっきりと自覚のある大角と今さっき自分の中にそれがあると知ったばかりの
轟の間には大小と低い高いの違いはあれども四肢に不便を患う斎玉子を思う心に違いなし。
世間一般庶政を違えど恋する漢の想いに違いも無ければそれと知らず久しぶりの銭湯を
楽しむ斎玉子の横で己こそが恋敵と漢二人がバチバチと視線に火花を散らし合う。

「ほら。五郎。お前の好物だろ。僕の分一個やるよ。鶏の唐揚げ」
「いやいや。斎玉子殿の好物はこちらの天ぷらに違いない。さぁどうぞ遠慮なく」
結構に長い時間を湯船で過ごした後に今度腹ごしらえとばかりに声を上げる轟に続き
湯着に着替えた一同は併設された食堂で豪勢な食事に下太鼓を打つ。
尤も金庫番を仕切るのは轟であるから相伴に預かるのは残り二人。
特に大角は従業員であるから自腹で食事を注文せざる負えない。
それでも想いを寄せる斎玉子の為と成れば箍も外れる。
全くもって二人の想いなど知るはずもない斎玉子であるが
自分が所望した笊蕎麦の上にあれよあれよと乗せられる食べ物に困惑もする。
轟が唐揚げを乗せれば大角が天ぷらを上に重ねる。
負けじと轟が串焼きをまた乗せる。
なんのこれしきとばかりに大角が肉厚のカツ揚げを積み重ねる。
「ふたりとも有難う。僕の事は気にせず食べてくれよ」
すでに笊蕎麦の麺など見えないほどに積み上げられた笊を見つめ
どうした物かと悩みながらも破顔し今にも歯をむき出して喧嘩でも始めそうな
二人を何とかなだめる。

何やら変な変な競争でも始まったのかと苦く嘲笑う斎玉子の様子を少し離れた席で女子校生が
一つと漏らす。
「あの人・・・。姫よね。絶対姫よね?」
「云々。姫プレイよ。しかも本人は自覚もない本気の姫よ」
「いいなぁ~~~。私もああやって貢いで欲しいなぁ~~~。羨ましい」
斎玉子字自身は全く持ってそんな気はなくても
轟は級友として心配してくれてるのだろうし。
それも又介護士大角は仕事として互いに少々やり過ぎの感はあってもそうであろうと感じるし
嬉しさを感じつつも周りに気を使わせてしまう四肢を持つ自分を斎玉子は自虐してしまう。

おもいおもいそれぞれに食事を楽しんだ後に又、少し浴場に戻り
「サウナにでも入ってくる。五郎はどうする?」
「いや。僕は遠慮しておくよ。あっちの岩風呂にするよ。轟」
互いに下の名で呼び合う仲であるのだなと嫉妬の念を禁じえない大角の手を借りて
岩風呂に向かう。
高温多湿のサウナは以前こそ好きであったが今の体では少々にときついかもしれないと
警戒した五郎であるが。さして気にせずに体を沈めた岩風呂も実際には結構と熱く感じる。
湯の周りを囲む岩を熱して居るわけでもないのだろうがきっと貯める湯が元々に熱いのだろう。
体を沈めて数分と言えるかという所で・・・いや寧ろ弐分と立たずに斎玉子は違和感を感じる。
「ぼっ・・・僕ちょっと・・・」たとだとしくもなさけなく小さな声を上げると斎玉子は
満足に出来もしないのに自分の四肢に力を込め立ち上がる。
「いや。待って・・・」あまりに当然の斎玉子の動作に追いつけずそれでも伸ばした手が
体を支えると同時にと。
「うぐぐ・・・」と唸って斎玉子の四肢は糸の切れた人形のように力が途切れ
あわやと熱い湯船の中へ倒れ沈む。
否然し当然の如くその前に漢鬼瓦大角の太くたくましい腕ががっちりと斎玉子の四肢を支え抱える
ざざぁとそのままに湯音を流し岩風呂の縁を一跨ぎに超えてみせるとズカズカと大股で
意識を失い四肢に力を忘れた斎玉子の体を抱き上げたまま裸一貫のまま出口へと向かう。
「退けてくれ。退けろってばっ」真っ先に大きな声を浴場の出口に屯する輩を動かしたのは轟だ。自身は熱気たごまるサウナに身を置きながらも曇るガラシ越しにしっかり斎玉子を観ていた。
起きた異変を気取るとこれも股ぐらなど隠そうともせずに足元を確かめ手振りと声で人を払い
斎玉子を抱える大角を先導する。

「只の湯あたりか?それとも何かほかの病気でも抱えているのだろうか?」
「湯あたりとは思いますが・・・何か思い当たる事でも?」
「分からない。ボクもしばらくぶりにあってるんだ。事故の事は知っているけど」
「なるほど。事故で脚を痛めたんですね。もしかしたらそれ意外に何か有るのかもと」
「云々。話を聞いただけで実際に調べたわけじゃないんだ。失態だよな」
「否。友達であると言うだけであの対応は出来ないでしょう。
ガラス越しでも見守っていたとはさすがです」
「そちらこそ。とっさの自体にも慌てずとは玄人仕込の技だな」
突然に倒れた斎玉子であるが大角がとっさに支え出口まで運ぶ。
同時にもサウナルームから素早く出て来きた轟が声を上げて人を払う。
見事な連携である。

互いに認め交わす言葉は人の道極まりない物であるが・・・
(相変わらず細い体の癖に腹と下の毛は濃いよな。触ったら気持ち良いだろうなぁ~~~。
どうせ意識ないんだから握っても良いかな?あれ。僕。ちょっと変態)
(うぐぐ。こうして惜しげなくも無褒美な裸をまじまじと観れるとは正に眼福で有る。
ついでと言っては何だが・・・・接吻・・・人口呼吸を施すべきだろうか?キッスであるな)
人の道と書いて人道。それしかり人命救助と言えば格好が良いがその下には
己の欲望に忠実な漢二人の邪な心が錯綜して止まずである。

当直の医師とコーデナイターが駆けつける間に倒れかけた斎玉子が浴場から運び出されたその後。
「見たか?あの漢・・・」
「ああ。あれはお姫様抱っこだ」
「それはそうだが・・・お前出来るか?痩せて居るとはいえ漢の体一つ。
ああも簡単に支え持ち上げられるものか?しかもお姫様抱っこだぞ?」
「俺には無理だ。例えそれが女でも。俺の嫁さんは八〇キロ有るんだぞ。無理に決まってる」
「それは厄介だな。だがしかし良いな。俺も・・・」
「なんだ?筋肉自慢かよ。いかにも鍛えてますって感じだしな。いつかはやってみたいって口か」
「否。してもらいたい方だ・・・。あんな漢に抱えられてみたい」
「うへっ。そっちかよ。まぁわからないわけでもないが・・・。
俺は人払いに声を上げたほうが好みだな。キュっとしまったかわいい尻がたまらん」
他人同士であればこそ湯場の恥も書き捨てとでも言うように互いの顔を禄に見ずに言葉が並ぶ。
羨ましいとばかりに後ろ髪を惹かれつつもそれぞれに湯船に浸かる漢達。
客の趣向に口を挟むなど野暮な事は慎むあれど冠する名前が漢湯であればその手の客も良くと集うのだろう。勿論その数は少数で有るとも告げてはおこう。

「ヘックションっ・・・」さっきまでの熱気が去り肌ぬくもりがすぎるとくしゃみと共に
斎玉子は意識を取り戻し半身を起こす。
「大丈夫か?五郎。気持ちとか悪くないか?」
「斎玉子殿。心配しました。意識が戻って一安心です。良かった」
「云々。ダイジョブだと思う。久しぶりに熱い湯に入って逆上せたのかもしれない。
・・・それより・・・」その先の言葉を呑み込み気配を察した轟と大角は慌てて五郎の手を離す。心配のあまりと言えば確かにそうであるが追々にとっさにも二人で五郎の手を握りしめていたからである。緊急事態に思えたとは言え倒れる斎玉子の両手をそれぞれに固く握りしめていたとなれば
恥ずかしさと気まずさが脇の二人を包む。

「多少ハプニングが有りましたが本日は当館スーパー銭湯・漢湯を御利用頂いてありがとうございました。又の御利用をお待ちしております」良くに通る声で挨拶する女性コーディネイターの脇で
口を真一文字に結んだ介護士・鬼瓦大角が頭を下げる。
「皆様。色々有難う御座いました。いずれ機会があったら利用させて頂きます」
にこやかに挨拶したのは連れ出した当人の轟ではなく恥ずかしくも湯当たりした斎玉子である。
さっき以来言葉を黙する大角と同じようにどこか気まずさを禁じえない轟。
「今日は誘ってくれて有難う。又。その内に」友に礼を尽くし言葉を手を差し出す斎玉子
「ああ。又どっか一緒にいきたいな」その手を握り返す轟の心中は穏やかとは言い難い。
引き籠もってばかりでは良くないだろうと連れ出して観たもののどうやらそれあ性急だったらしい
心配だったと云うのは確かであるがそれが恋であると悟った今と成れば斎玉子に無理をさせた
自分自身の愚行が情けない。
少なくでもそれ以上嫌われたくもないと退館の際に大角が呼んでおいた介護託タクシーに
乗り込む斎玉子の後ろ姿を黙って見送る事に留める。それもまた恋心であるのだろうか。

恋する乙女の成せる技
もといと転じて恋する漢が成す御業と成ればこそに・・・。
自分の心と身体と欲望に漢色の趣向が有ると自覚してしまった轟は
昨日の失態を取り返す為にすぐに行動を起こす。
同窓会を断った斎玉子。その理由は明確であったが詳細を確かめずに誘い出したのは明らかに
失態だった。最初のデートは失敗だったと言えよう。
その時はそれであると認識できてなくてもいまならわかる。
とにかくも自分の想い人の体は常人と同じようには動かない。
遅ればせながらもこの時に轟は非健常者と言う言葉と意味を知る。
意図せずにも工場の勤務中に事故に合い怪我を負った斎玉子の状態はどういう物なのか?
言わすもがそれは個人情報であり第三者が知り得るのは昨今で無くても難しい
何よりもそれが勤務中の事故と成り労災となれば尚更だ。
当然の如く正面切って求めて観ても答えがまともに帰ってくることなどないし
事故の事を今更に轟自身が調べていると斎玉子に知られでもしたらやっかいだ。
大学時代の友達で有っても知られたくない事も多いだろう。
以前と変わらぬ友情と付き合いでとはいかない。
斎玉子はどれだけ努力しても残りの人生の全て自分の脚だけでは歩けないのだ。
果たしてそれだけなのだろうかと言う轟の疑問が膨らむが壁は思うより厚い。
斎玉子が務める工場は運営する会社自体が大きい。それこそ世界的に名を覇せる位に。
それもまた当然の如くと労災事故に対する情報を告示する気配など微塵もない。
ガードが硬いと言えばそうであるが。調べて行くと事情が有るらしい。
纏め潰してしまえば会社と斎玉子の間で揉めているらしい。
なかった事には出来ないとは言え出来るだけ小さく穏便に済ませたい会社側と
人生の残りを鉄の杖を頼って生きて行くしかない斎玉子。その隔たりは大きい。
未だに双方の間で争いが続き医療機関からも情報が取れないと成れば万事休すかと思えば
意外と直ぐに欲しい物が手に入る。それも手近と言えるところから。
後にその訳を当人に聞けば本人自身が情報の整理とその時の心中を記録するために綴ったと言う。
つまりは工員として働き初め事故が起こるその以前から斎玉子が綴り記録したネット上の個人ブログである。当初こそは匿名で執筆していた事故が起きてからは会社の対応を良しとせずに
轟自身も良く知る学生時代のハンドルネームで書かれていた為に以外にも直ぐにたどり着けた。

工場内でフォークリフトが積み上げられた工材にぶつかりその下敷きになった斎玉子の左脚は
潰れる。一般的な医学治療の水準では完全には治療にも復元にも限界があると宣告されている。
斎玉子に事故が齎した影響は左脚の麻痺だけで有りもせず。
明言は避けて居る物の内蔵にも異常が有ったりヘルメットをかぶっていたとは言え
重い工材が当たれば頭蓋骨と脳内に疾患が生まれ頭痛もするらしい。
先日も比較的短時間で湯当たりしたのもこの影響と言えるのだろう。
何よりも斎玉子自身が未だにとこれからもずっと自分の体の怪我と影響を受け入れる事は
出来ないだろうと綴るブログ記事は痛ましい。
斎玉子の症状の全部を図り知る事は出来ずともその大凡は知る事が出来る。
それに今の斎玉子の生活状況もな何となくと知れてくる。

斎玉子五郎。その安アパート似て。
ついに数ヶ月前までは普通の健常者として生活しているならば
その部屋作りもそのままで有る。
五郎としては怪我を負った自分の体とその生活が楽に成るように
いわゆるバリアフリーの設備を施した場所にでも引っ越したいが現状ではそれは無理である。
単に起こった事故のその処理について会社と処遇と斎玉子の希望に隔たりが有りすぎる。
とはいえある程度は会社側も最低限よりは少しましな対応をもしてはくれる。
もっともそれを斎玉子自身は良しとはしてないし寧ろ困り事厄介事とも捉えている。
左脚の麻痺が斎玉子の主な症状であるがそれだけも不便極まりない。
椅子から立ち上がろうとすれば、先ずに手近に立てかけてある杖を探す。
杖を掴み半身を預ける前にこれも又先じて柄を握る。
それから杖柄を握った手と腕に力を掛け動く右足に体重を乗せ
「どっこいしょっ」と声を上げ自分の体に合図を送ってやっと立ち上がる事となる。
立ち上がると言うたった一つの事にこれだけの動作必要と成れば生活全てがそれに類する。
ましてや痛みが伴わない訳もないから時に耐えきれなくて転倒してしまう事だって有る。
そこで必要とされるのが介護士。又は介助人と呼ばれる専門職の人間である。
先日に轟と出かけた先の銭湯で鬼瓦という人物の手を借りたが彼も又それに属する。
会社とは未だ揉めているがそれでも一人できちんと生活し辛いとなれば助けを求める必要もあり
会社側もそれくらいの面倒をみるのは吝かではないと言うのだろう。
一週間の何日かの間は斎玉子の所に会社が手配した介護人が顔を出す。

「さぁ~~~。御主人様。存分に・・・」
多少なりとも薄暗く明かりを堕とした狭い部屋。
その一角。毎度のことで有ると知っては居ても半ば諦めと呆れと困惑を隠さない斎玉子の前に
黒を貴重とした衣服に純白カチューシャとエプロン眩しくもメイド服を着込み体を前屈に曲げ
小柄な体躯の癖に大きくも形の良い桃尻を突き出しす女性一人。
「あのね・・・。しずゑさん。僕は脚がいたくて 立っているのもやっとなの。
それなのに毎回ここに来る度に挨拶代わりにおっきなお尻を突き出して
僕はそれを叩かないといけないわけ?しかも参回も。手がいたくなるんだよね」
「しずゑって呼び捨てにして下さい。いっそ豚でも!
御主人様への挨拶は奉仕の基本で御座います。さぁ~~~遠慮なくご存分にぃ♪」

顔をしかめても嫌がっても介護士で有りながらも斎玉子を御主人様と勝手に呼ぶ
しずゑはそのまんまるな尻を突き出すのをやめない。
ぱ~~~んと渾身の力で尻を打てば
「あ~~~~ん。気持ち良いです。御主人様ぁ~~~。
あんっ。もっとぉぉ~~~。あんあん・・・いっちゃ~~う」
最初の一発に悶絶し身を捩れ残りの二発でしずゑは高みへと登る。
全くもって迷惑な癖を持つ介護士で有ると嘆いていも会社が直接雇用し押し付けている。
勿論に体に不便を持つ斎玉子としては特に腕の良いしずゑの力添えは非常に助かる。
「それでは御主人様。お背中をお流ししますねぇ~~~。
何恥ずかしがっているのですか。私奴は御主人様にお使えする従者。
否。奴隷で御座います。今更包み隠さずとも御主人様の御身は隅々まで目に焼き付けております
もとより。あんなことやこんな事させていらっしゃる癖に」
紅く頬を染めるのは斎玉子ではなくしずゑのほうだ。
「ちょ。ちょっと人様が聞いたら誤解するからっ。
何時にきみあ奴隷になったんだよ。焼き付けなくて良いから勝手に。
あんな事こんな事って背中流してもらうだけでしょ?人様が聞いたら誤解するから
大体仕事でしょ?玄人でしょ?頬紅く染めないで。お風呂だから。背中流してもらうだけだから」
左脚が麻痺していればどうしても自分の意思では動かせない。
それを動かすには他の動く部位を使って位置を調整しなければ成らない。
湯船に浸かろうとすればその縁をこえなければ成らない。
左脚が麻痺する斎玉子は立ったまま自分の体勢を維持したまま湯船の淵を超えるのにも難儀する。
狭い風呂場の壁に手を添えしずゑに体を支えて貰ってやっとさと風呂湯に身を沈める事が出来る。
「気持ち良いですか?御主人様。
痒い所とか嬲てほしい所とかありませんか?いつでも仰ってくださいな」
「あのね。しずゑ君。頭を洗って貰ってるだから痒い所があれば言うけど。
嬲って欲しい所はないの。大体、漢が嬲って欲しいとか言ったら変態でしょ?へ・ん・た・い」
メイド服は戦闘服と言い切りながらもさすがに濡らすわけにはいかないと
この時ばかりは何処から持ってきたのか大人用のスクール水着に着替えるしずゑがすぐに切り返す
「御主人様?それは偏見と言うもので御座います。
世の徒然。古今東西老若男女。それこそ趣味趣向には多彩な物があって然りで御座います。
昨今は特に自由奔放な個人のアイデンティティが認められつつもあり
世情の中にも受け手や責められる事に快楽を求めて止まない殿方もちらほらと・・・
寧ろ一杯。この際御主人様も目覚めて観ては?まずはお手軽な亀甲の縄縛りから」
「結構ですっ。例え世の徒然の他の殿方の輩が求めてもぼくは結構です。
何処の世情に荒縄で亀甲縛られて快楽に身を捩る漢がいるのいうのだっ」
「ここにお一人。斎玉子坊ちゃまが・・・ぷぷっ」
「違うから。そう言うのじゃないから。やめなさい。その上目つかいは。
その気になったらどうするの?下なめずりしなくて良いから。しずゑ様っ」

「ああ・・・あん・・・だめ・・・」
色香りに塗れて仰ぐのは思惑違いの斎玉子である。
「ここで御座いますか?ここが 宜しいのでしょう?
可愛い御声をお出しになって・・・」
「だって・・・あん・・・気持ちいい・・・」
情けなくも切なげにも吐息を荒らげる斎玉子の股間に身を屈め
屈辱に囚われるも喘ぐその股ぐらのに手をのばすがしずゑである。
介護士で有りながらも斎玉子を御主人様と呼ぶしずゑの手業は匠である。
尤も斎玉子自身が望んだわけでも強請るわけでもない。
「気持ち良いで御座いましょう。良いお顔で御座いますの。御主人様」
半ば寧ろ強引に左脚の自由聞かぬ斎玉子の肩無を無理に押しやしベッドの上に
押し倒すとその股間に乳房を乗せたまま斎玉子の一物を扱く。
介護士であるはずのしずゑであるがそれ以上にも女として漢に奉仕する
その術も業を極めているのがしずゑで有る。

「はぁはぁ・・・」と半開きの唇下から漏れる吐息とは真逆に虚ろのにも固く閉じる瞼
その瞼の向う側でパシャリパシャリと光とおと繰り返される。
「御主人様ったら・・・本当にお可愛くて・・・」
性を出し尽くし絞り尽くされた斎玉子はフラフラと手首を振って返すのが精一杯である。
だらしなくも寝台の上に裸体四肢を放り出し荒く胸を上下させる斎玉子の姿を
喜々と刹那とばかりにメイド姿のしずゑが自前の携帯で撮影する。
「この角度が・・・いやもうちょっと脚を開いて頂いたほうが・・・
怠惰な情事の後の雰囲気が・・・御主人様。もうちょっと・・・」
尤も体の何処かを動かすと言う力なんて斎玉子にはないから
それと知って細い指で斎玉子の脚を押しずらし満足げに頷き携帯のボタンをしずゑは押し切る。
「今日の一枚はこれに決まりですわね。勿論。私奴のおかずで御座います」
果さて欲しい物をてに入れたと成れば、残りの仕事とばかりに少し濡らしたタオルで
斎玉子の体を丁寧に拭いてやり出来るだけ傷まないように容易にと脚の位置を整えてから
静かに斎玉子の部屋を音を立てずにしずゑは出て行く。

真城しずゑ
容姿端麗美人美女・・・お手軽サイズのDカップの乳房と職場では噂されているが
実際はDカップにしては少々大きくもありEカップと言うには少々と小さいというのが事実である。
その代わりに尻は大きくも有り形も良い。よく通勤電車で下衆な痴漢がその尻を撫で回して来るが
あまりに触り心地が良くて追終に没頭してしまい通報され呼ばれた警官に声を掛けられる迄
吾を忘れてしずゑの桃尻を触りまくっていると言う始末で有る。
果は痴漢業界ではあの尻は魔性の尻だ・・・一度触ったらこっちの世界には戻ってもれぬとも
変な格言が語られる。経験を生んだ玄人程それを知っているからしずゑには手を出さずに
遠目に盗見るのが常である。
そのしずゑが心血を注いで介護するのが斎玉子であるが少々と行き過ぎでもあろう。
歪んでいると言っても良い。
母子家庭で育ったしずゑであったがその母も病を患ってもいた。
当然その介護の負担は幼い頃からしずゑ之にかかる。
幼いときからある意味それが当たり前となっていたしずゑが生残する頃には
それが一つのやり甲斐となり生きがいと成り自身の存在価値と思い込むように成った。
介護であればこ職業を介護しとし職場もそれと選んで入るがしずゑの心は満たされない。
理由は簡単であり介護を必要とする相手の状況は常々に変化していくし
縁にも恵まれず短い期間ですれ違ってしまったりしずゑの懇意と熱意が熱すぎたり
時に激しすぎ行き過ぎる介護愛に要介護者の方が音を上げてしまう事も多い。
暫くのその後に恵まれた縁を結んだ斎玉子はしずゑに取って格好の獲物だった。
斎玉子は現状暫くも今後の半生を四肢の麻痺を抱えて生きていく事に成る。
しかも当人の性格なのかついついに行き過ぎる介護と言いつつも歪んだ愛情をも斎玉子は受け入れてしまう。嫌がっては魅せる物の結果的には強引なしずゑのなすがままとなってしまう。
最初こそに介護と介助という行為出会ったはずであるが。
数を積み重ね縁を深くと結んで幾度に斎玉子はしずゑの歪情を受け入れて行く。
今となっては毎度の如くの入浴の後の性欲処理も動かぬ四肢を理由にして
されるがままに身を預けてる

はあはあ・・・と声を上げ身を捩るしずゑを囲い覆うのは
その自宅部屋一杯にと埋められた斎玉子の写真である。
普通であるのなら推しの男性アイドル等の物であろうがすべて斎玉子で有る
尤もその手のポスターと違いしずゑ自身が自らに撮影した淫らな写真である。

 

 

置字

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

置字

天鼠蛭姫

天鼠蛭姫

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