因石使いヒトム:ⅲ

「ヒトム様・・・。
今月の無駄遣い・・・失礼・・・お布施はお幾らほどにいたしましょうか?」
「うぬ・・・もうそんな時期か・・・。先月の倍位で良いんじゃないか」
「先月の倍って・・・。結構な額になりますが宜しいのでしょうか?」
「うぬ・・・推しだからな。ライバルも多いし。
愛しのザザビーヌちゃんだからな。誕生日も近い。
ここらでランクを上げて顔を覚えて守らないとな。云々・・・」
「ランクって・・・体の良い金儲けにまんまと嵌まって貢いでる癖に・・・」
「なんか言ったか?シシヌルミルカ・・・」
「いえ・・・仰せの通りに。私の御主人様・・・あぁ・・・」
文句を垂らしたのが気に食わなかったのだろう。
不意に頭を強く押さこまれ自分の乳房の間から覗く独特の匂い香る亀頭を咥えさせられてしまう。

偽人ホムンクルスを懐に忍ばせる没落貴族ヒトム・オルナーゼ・ド・ヌワン。
其の素性は兎も角に素行はすこぶる悪い。
王都の輩に詐欺でも働いたのか幾度も悪党どもの追手に追われてひどい目にあっている。
辛くも逃げて交わす事も出来てもいたが一年前には運も尽きっけて怪我を負う。
元々若い時に屋敷に日を掛けられ命かながらに這いずり逃げ出すが顔も体も火傷を負う。
頭皮の三分の一の皮膚も焼けて毛穴もやけたから頭の横と半分は坊主だ。
顔の半分も火傷跡が爛れるから初めて雇われた従者は深夜に屋敷でばったり出会うと
幽霊か化け物と間違えて逃げ出すかその場で失神する始末である。
それも毎度の事と本人は慣れているが周りの物がしつこく苦言を漏らした為に
最近やっと外出時や公共の場所に出る時は紋章の付いた布で顔を覆う。
尤も布に描く紋様が骸骨だったり羊骨の悪魔を模した物であるとか俗世から
逸脱するものを好むから本人は楽しんでいても結局は化け物面には代わりない。
顔が怖いとそれで済むなら未だましでもある。
人主人類の従者がヒトムを怖がるならばと身の回りの世話と護衛を兼ねて
錬金術の極みの技の果と偽人ホムンクルス達をその代わりと従えるが
時に一年と少し前に悪党野盗に屋敷を襲われ終いには大きく怪我を負っている。
厄災見舞われても悪運強しとでも言うのだろうか。
大漢に好きなように嬲られた末でも左手の筋を切られ腹に短剣をぐさりと刺され
片膝を潰された物の従者ホムンクルスの手助けを借りて生き延びている。
もっとも左手を完全に握りしめる事は出来ないから夜伽で乳房を嬲るのに苦労する。
ヒトムを囲む従者達の乳房がある一定の大きさを誇るのはそれが原因であろう。
手の中に収まる程度では指を立てるのも大変だからである。
ちなみに其の尻もやはり大きいと尚に喜ぶのはヒトムの趣向でもある。
腹に穴が開いたから腸は確かに傷ついて居るから食は細い。
自分ではあまり食べないくせに其の癖料理好きでもあり其の腕は街の美食家を唸らせるのも容易い
砕かれた脚も一生治る事はなく嫌々ながらも木杖を付いて歩くか
愛想嗤いを絶やさないホムンクルスの従者の手に支えられ立って歩くのがやっとである。
それがヒトムの風体と成るが居とする場所も変わって居る。
誰かを怒らせるのも得意なのかそれとも相手が執念深いのか確かに一時は貴族屋敷に住んでいたが
野盗悪党と手先の襲撃と策略事が激しくきつく。あまり一箇所にとどまれないとなればこそ
特別に誂えた馬車と屋敷に見立て住処ともしている。
寝所馬車・夜伽馬車・執務馬車・食堂厨房馬車・護衛馬車に金庫馬車とその他。
一通りに生活に必要な物を馬車に無理やり詰め込んだ貴族馬車連隊とでも言うのだろう。
道すがら森の奥でその馬車連隊で日々を過ごしやむなく街に出る時は
大金を払い貴族屋敷を別荘とする。何とも変わった生活を個々暫く余儀なくされる。
尤も色々不便を強いられるのは従者達のほうで有り
時に化け物巣食う森の中で宴会さえも楽しむヒトムは其の生活をも楽しんでいた。

「今月の売上が年増の婆婆より低いってどういう事なの?
私頑張ってるの。頑張ったの。脂ぎった貴族爺と握手して会食までしたのよ?
あの変態爺。食卓の下で太股嬲ってくるのよ?変態なのよ。
それなのに年増婆婆の方が売上いいってどういう事なのっ?」
豪華な装飾が施された寝椅子に身を沈め金切り声を上げ仕切り従者に八つ当たりする
ついでに囲人から貰ったぬいぐりみをぼすんと投げつける。
「大切な囲人様[efn_note]現代表記ではファン.[/efn_note]から頂いた物を乱雑に扱っては
行けません。サザビーヌさん。誰かに観られたら大変で御座います」
サザビーヌ・トリム・メイケルン・・・。
王都劇能演劇界において新進気鋭の演者劇姫[efn_note]同表記では歌姫・芸能人[/efn_note]で有る。
本来確かに偽人ホムンクルスであるからこそに其の人気は爆発的に根強い。
貴族政治家商人庶民と関わらず娯楽を求める輩に対し
娯楽と妄想を提供しその代わりに際限なくも金銭を巻き上げる商売。
それを商売営みとする劇能会社に取って偽人サザビーヌを始め美形美少女熟女のホムンクルスは
良き商品であり、最初から人の心を惹きつけて離さない至極魅惑の存在として生み出される。
「サザビーヌさんが頑張ったのは確かです。それは確かでございます。
否然しです。サザビーヌ様が太股を触らせたなら
アリエンヌさんは太腿だけでではなく濡れた其の先まで触れさせたのでしょう。
今月は負けても来月はもっと頑張って頂かないと」
「何言ってるのよっ?私にもっと脚を開けって言ってるの?
冗談じゃないわ?私は清楚で売ってるのよ?あんな汚い指を咥える訳ないでしょ」
ぶんっと腕を振るって今度は蛙のぬいぐるみを仕切り係に投げつける。

「困ったもんだ・・・。然しなんとかしないと売上が堕ちてるもの事実。
このままでは新劇にでも出すかそれとも秘催事でもぶち上げないと儲けがでないな」
不貞腐れいじけて風呂場へと姿を消したサザビーヌの姿を無視して仕切り係は苦言を漏らす。
近年劇能界の競争は激しい。
月を追う事日を重ねる事に生み出される劇姫の数はうなぎ登りだ。
確かにサザビーヌの人気は絶大でも有るが多種多様な趣味趣向を求める顧客の要望も
また年々過激にも成ってきている。
サザビーヌが劇能界に姿を現して五年。
確かにその容姿と才能で人気を博すがそろそろ古臭くも成ってきている。
好敵手ライバルもいれば新規の後続もワラワラと湧いて出てくる。
そろそろ売上も頭打ちと言う所なのかも知れない。新規で偽人を作らねば成らないだろう。
劇姫とは美貌と才能を持たされて生れてくるホムンクルスで有る。
劇能会社の発注で顧客民衆が求めて止まない物を組み込み調整されたある種特殊な製品と言える。
勿論に其の美貌だけではなく性格・言動・思考さえも制御されている。
それは他のホムンクルスも同様であり例えば主人に仕える従者として調整されれば
偽宝石商や露天の石商人から因石を買い上げた者を主人と認め
ヒトムの様な者にも誠意を込めて仕える。
戦士として生まれれば雇い主を野盗から護って身を捧げれば
軍将軍に忠誠を捧げ剣と槍と己の命を削るのもいとわない。
劇姫とも成れば人々の人気を其の身に集め求められる様に振る舞い
都にはいじらしくも可憐な姿でその気にさせ貢がせた金を雇い主に捧げる。
その対価として生きる事と営みを許されている。
当然の如く売上が悪くなれば何処かの貴族や娼館に水揚げされ好きに嬲られるのが堕ちである。
サザビーヌはその瀬戸際へと追い込まれていた。

しとしとと湯が滴る風呂場でサザビーヌは銀蛇口を捻り湯量を滝の様に上げる。
頭から湯をかぶり白い体の表面を少し熱めの湯が床へと滑り滴っていく。
「はぁ~~~。生き返るし・・・」声をあげたのは誤魔化しである。
憂鬱な気分から抜け出す為に熱い湯を浴びるがこれからしようとする行為に備え
もう少し左に蛇口を撚り湯量を多くする。どうせ声を上げてしまう。
外に漏れる事はなくても劇姫としては憚るべき事で有るかもしれないからだ。
態とらしくも自分を焦らし自分でも感じる部分だと思う喉に手を当て撫で回す。
嫌らしくも自分の指をさ誰かの漢雄のそれと思い騙し
時にゆっくとと首をなぞり押し当て自らの首を閉めげば呻きが上がる。
自分で首を締め上げならがも片手を乳房の肉を下側からお仕上げ揉みしだく。
息苦しさに喘ぐも乳首をつまみ潰せばぞくりと刺激が走り軽く仰け反る。
すぐに片方だけでは物足りなくなってしまい。
双房両方に細い指が食い込み絡む。
「ああぁ~~~。気持ちいい・・・。自分の指でも感じるのに・・・ああ・・・
誰かに弄って貰いたい・・・美男子よりも醜い顔がいい・・・いっそ化け物ならもっと」
ササビーはその価値を高めるため処女で有る事を求めらる。
売上の為に多少のサービスを強いられても絶対的な場所には触れさせない。
それ故に唯一自分を慰めるのは自分の指である。
「ああ・・・ああぁ・・・もっと・・・」
スラリと伸びた細い指が大きな乳房に食い込み歪に歪む。
あまり背も高くもなく顎が尖っても何処か童顔で幼さを醸し出す顔つきと
反対にどんと前に突き出た大きな乳房がギャップを生みだし魅力でもある。
はぁはぁと声を荒げて拙くも前に脚を運び浴室の壁に上体を押し付ける。
自らの体重を乗せて石壁に乳房を押し付けれればザラザラとした感触が乳首を潰す
「あん・・・これいい・・・。もっと・・・こすって乳首擦って・・・」
ざらつく石壁に勃起した乳首を擦りつけ喘ぐと体を上下に揺らしだす。
「あっあっあっ・・・」
壁にこすれば痛みと熱さで乳房が火照る。すぐに我慢出来なくなれば素早く女陰に指が潜り込む
「ああ・・・これがいいの・・・これがかんじちゃう」
最初こそ入り口を弄っても押し寄せる期待と快楽に指の本数は増えグチャリと中に潜り込む。
ぐちゃりぐちゃり・・・ぐちゃり・・・。
一度奥まで潜った指は止まらずに前後しても尚にその奥までめり込み入る
「入ってる・・・入ってる・・・気持ち・・でも足りない」
自分の雌陰が指を飲み込む様を顎を下げ目に焼き付けてももの足りない。
顎を上げ風呂場の石壁に乳房を押し付け体を揺する。
「はぁはぁ・・・もっと・・もっと・・欲しいの。
お・・・犯して・・・私を犯して・・・不細工な化け物・・・」
はぁはぁと・・・誰とも知れずに呪詛を繰り返し自分の指で体を慰め喘ぐサザビーヌ。
止まる事を知らぬ其の指はいつの間にか後ろの尻穴までもなぞり回す。
「そ。そこは・・・駄目・・気持ちイイ・・・前だって未だなのに・・・
後ろの穴なんて・・・無理・・・。ああ。駄目。逝っちゃう。逝っちゃう」
我慢できずに乳房を揺らしのけぞれば雌陰から汁水が弾けて飛び散り絶頂を迎える。
床に尻もちを付いても尚に大きく開いた脚の又からはしゃぁしゃぁと音を立てて汁水が虹を作る。
「ああ・・・。あたしったら・・・又・・・こんな事・・・」
いつまで立っても止まらず尚も続く放水をじっと見つめサザビーヌはガックリと放心してしまう。

劇能会社が行う催事[efn_note]イベント[/efn_note]には色々と種類が有る。
目玉であるのがやはり劇姫が踊り舞う新劇であろう。
予算の都合や手間がかかることなので年に何回も行えるものではないともすれば
人気を維持するには囲人との触れ合いを重視する為の姑息な手段も多い。
音円盤と言われる劇姫の声と歌を加工した製品の販売。絵柄板[efn_note]この時代この大陸には未だ写真と言う者が存在あらず・ブロマイドやポストカード[/efn_note]もそれである。
それらの他には握手劇も有るし極めて稀であり特殊な場合では有るが
多額のお布施を施してくれた者には劇姫自らのお礼も兼ねて直接会う会食会もある。
もっとも独占を嫌う劇姫等に取って特定の客と親密な関係に成ると云うのは好ましくもない。
其の関係が公にでも成れば他の客からは嫌悪され忌み嫌われ商品価値が失われるからだ。
それでも客商売で有るから色々な条件を解決出来れば劇姫と囲人が直接会うことは不可能でない。
もっとも大前提として巨額なお布施を収めてからの其の跡の話で有る。

「なんでこんな不気味な所で会食会をやるの?怖いし歩きにくいわ」
凡そ弐ヶ月に一回行う事を強いられる会食会。
一定期間の間に推し劇姫に多額のお布施を施した輩に感謝のしるしとして
こっそりひっそり秘密に行われる会食会。
「そうは言っても仕方ありません。
本日の囲人様の住居は此方でございますし。人目に付かずにむしろ好都合です」
「好都合って言っても死迷いの森なんてもとより怖くて誰も寄り付かないわよっ」
本当に怖くて声が上ずる。当然であろう。
鬱蒼と木々が茂り動物か吠え魔物が徘徊する死迷いの森こそは其の呼び名通りに
迂闊に迷い込めば死んでも迷い続けて尚に迷うと言われている。
そんな場所で劇姫が囲人と密会するなんてありえないだろう。
雲泥に何度も馬車車輪を取られ其の度に難儀を余儀なくされたサザビーヌ一行。
何回も迷ったのではないかと案内人を疑った挙げ句に目的の場所に付いたと示された時には
山高帽を弐回もかぶり直して仕切り係も安堵のため息を吐いて肩を下ろす。

「これはこれはこんな森奥まで態々と脚を運んで頂き大変恐縮で御座います。
サザビーヌ・トリム・メイケルン様と其の御一行。
当家主人・ヒトム・オルナーゼ・ド・ヌワンは其の姿も異様異彩でありますし
何分に諸事情も御座いますのでご理解を。あちらで御座います」
背の高い偽人であろう従者に促され一際大きな主人馬車へと一行は進む。
劇姫家業の癖と言ってもそれ以上にサザビーヌは好奇心が旺盛である。
もとより其の場所と辺りの風景は一般常識からかけ離れている。
何より先をあるく偽人従者の機嫌が悪そうだ。
劇姫業を営むサザビーヌに劣らずも優る美女であり乳房も張っている
尻の形も大きさも貴族然とした姿勢も立派すぎる。
相当にきつく躾けられているか自らの意識が高く主人に絶対なる信頼を置いているのだろう
その癖丁寧な言葉の中に何処かはっきりと棘を仕込んでる様に感じられたのなら
これだけの容姿を持つ従者を放っぽって世間戯言塗れる劇姫如きにうつつを抜かし
恐らくは無理をしてまで金銭を貢ぎ惚ける主人に嫉妬か呆心を抱いて居るのかも知れない。
有るきながらもそれを確かめ周りに目を回せば尚更である。
あまりみかけないほどに大きな馬車。
少なくても一つの荷台馬車に六頭の馬に繋がる金具が据え付けられていると思えば
それは少ない方であろう。護衛役の従者が屯する武装馬車は八頭立てでもある。
すでに馬が繋がれているのはいつでも奔りだし主人馬車を守るためだろう。
それよりも大きな主人馬車は十頭立てであるし食堂馬車は更に多い。
馬車はそれだけではないし資材・商隊・荷車と並べば相当に大きな商隊で
一端の軍隊連馬車にも匹敵する。否。それ其の物と言って良いだろう。
あと弐歩か三歩と迎賓馬車の踏台に近寄れば足元に雲泥がない事に気がつく。
フラリと周りを盗んで見れば連隊馬車が脚をやすめる大地はきちんと整地してある。
サザビーヌ達がやって来た辺りは道がぬかるんで苦労したものだが
今に立つ足元は盛り土が成され有るきやすく平らにきちんと直されている。
もしそれが主人馬車の先までと成されていれば随分と用意周到入念に野盗対策が成されて居る。
随分と又大げさに逃げる準備を施してるとなれば相当に主人は悪党に違いない。

「この度はお招き頂き有難うございます。
いつも私奴を応援して頂いてありがとうございまっ・・・ひぃっ」
何かの演出でも言うのだろうか。
態と灯りを小さい溶けて崩れた蝋燭のみで照らされた迎賓馬車の室内。
脚を踏みれ先じてスカートの裾を軽く持ち頭を垂れ自分の囲人に礼を尽くす。
相手が誰であろうともお布施の払ってくれる相手であればこそ多少の我慢は当たり前と
静かに顔をあげた其の途端に可愛い唇と割って悲鳴が轟く。
「ひぃ・・・ばっ。化け物・・・。
あっ・・・御免なさい。私奴としたことが・・・」
何かの悪戯とも間違えるほどの不気味さの中。
短く崩れた蝋燭に照らされた怪物の顔は人の者と到底に思えない。
「これは・・・これは驚かせて申し訳ない。悪気があったわけではないだが
初めて合間見る人を驚かせるのが趣味であってな」化け物顔の漢がケケケっと笑う。
「ヒトム様いい加減に為さいませ・・・。悪戯好きの冗談は顔だけにして下さいな」
旨い冗談が言えたとでも言うのだろう。
先程の従者が立派な乳房を揺らして嗤いながら紅い布ヒトムに渡してくる。
「何を一人でほくそ笑んで笑っているのだ?
主人の顔で笑いを取るとはどんな根性しておるだ。
劇姫サザビーヌ・トリム・メイケルン殿。本当に驚かせて済まぬ。
儂がヒトム・オルナーゼ・ド・ヌワンである。
今宵は会ってくれて至極の極みで有る。儂は少食故にあまり食べられないが
精一杯にと馳走させて頂く。楽しんでくれれば幸いで有る」
魅惑的でむっちりとした乳房を揺らす従者の手から紅布を受け取ると
サザビーヌが化け物と叫んで呼んだ火傷で爛れた皮膚を覆い隠す。
「御免なさい。びっくりしちゃって・・・」
今まで何回かとこなしてきた会食会はどれも明るい場所で贅沢極まりないものであった。
誰もかれもとサザビーヌの気を惹こうとその趣味に合わせた物が多い。
だからこそ少々脂ぎった指で触れられても無理に我慢も出来ていた。
それとは真逆な不気味な雰囲気にサザビーヌは気後れして観を縮める。
顔を覆い成るべき怖がらせない様に気を使いつつも指を一本立てて宴の先を促す。
深々と頭を垂れて主人と客人に背を向けると馬車の奥壁の四角扉を開けて
最初の料理皿を受け取り二人の前に淑やかなに尻を振りつつ届ける。
其の隙きに反対の奥から別の従者が暗がりの中に身を表し
卓の上のサザビーヌのグラスの中にトクトクと弾石水[efn_note]現代の炭酸水・このままでは味は一切ない[/efn_note]をトクトクと注ぎ黄色果実の半身を絞り
爽やかな香りで辺りを芳しく染める。
ヒトムと言う貴族の根性は相当曲がっているのだろうか。
貴族との会食と言うのは当然に慣例をなぞる。
最初に出てくるものが前菜としてのものなら軽めな料理かスープと決まる。
それと知ってはいるサザビーヌの前に置かれた其の料理はじゃがいもだった。
尤も今まで観たものより蓋周り大きくも有りホクホクと湯気を上げる。
芋の上側には少し切り口が有るがそれがどうしたとでも言うのだろうか。
銀紙の上に乗る少し大きな只のじゃが芋。
何をどうやって食べるのかと思えい上目遣いに紅布で反顔を覆うヒトムを盗んで観ると
当たり前の様にじゃが芋の上側に銀匙を突き立ててほじくり返してる。
サザビーヌはそれを真似して驚いた。
少し力を入れて立てた銀匙は以外にもほろりと其の中に落ちていく。
どうやらじゃが芋の中は空洞になっているらしい。
中の感触を確かめようと中を顔を寄せ中を覗くととろみのある黄色いスープが満たされている。
どうやら大きめのじゃが芋の態々くり抜き空洞を作り其の中を美味しい溶き卵でみたしてあるのだ
「お・・・おっ美味しい。すごく美味しいのです」
料理を食して目を丸くするのは珍しい。
一口に又一口とじゃが芋を銀匙でほじくり溶き卵のスープを味わいすする。
正直にそれだけで三回位はお代わりできてしまいなそうでもある。
ホクホクとした食感と甘いスープを堪能し至福の極みと嬉しく顔もほころぶ。
最初の一品がすでで至福の味わいで胃袋を震わせ喜ぶサザビーヌ。
それから一皿一皿にとまさに天に登る様なもてなしに体も心のご満悦では有るが
卓を向こうを囲むヒトムは多少口元を歪め引きつり気味の笑みを浮かべて履いたが
心奥のそれでは随分と機嫌が悪かった。
ヒトムの推し姫遊びを確かに従者共は良くと思ってはいない。
所詮主人が望む事であるからと文句は言っても結局黙る。
それでもいざすべての準備が整って憧れの劇姫とあうという時に
奥方従者のシシヌルミルカさえ声に出して苦言吐き出す。
「ヒトム様。私共は可愛いとも愛しいとその御顔を思いますが
常々ご自分でも良くとしっておりましょう?慣れぬ人には度が過ぎます。
どうか反顔を覆い隠してくださいませ」
今に思えば確かにそうだ。それでも相手は因石偽人類のホムンクルスである。
人種人類の者においそれと本音を吐き出す事もないだろうと高をくくっていた節もあった。
世に美しくも可憐な少女と謳われ自分も確かに一時の迷いと心を踊らせたが
その彼女の心目に写ったのはやっぱり醜顔怪物顔と言うことなのか。
随分とやりきれない気分で料理の数を重ねていけばその日の主賓料理と言える
大鹿熊のステーキ肉を一切れだけ無造作に食べると残りを弐割れ串に挿して
どさりと床に投げ捨てる。
汁に塗れた大鹿熊は貴族界隈でも珍味とされる。
甘汁を飛ばして宙を舞う肉が馬車床に届き跳ねる前に一閃と影が奔る。
ご褒美ご馳走であるとがぶりと咥えたのは犬だ。
大きさは小型の無類に入るし丸っこい体に丸めの皺顔。
ふんふんと鼻を鳴らし皺顔を揺らし高価な肉にかぶりつく。
前足をを揃え肉の端を押さえ頭を振って引きちぎろうと格闘している。
よく見れば只の犬とは違うと見ても取れる。
良く似た犬種は世間にも多いのだがそいつは因石犬だ。
番犬愛玩犬として調整された動物系のホムンクルス。
何故にわかるかと言うと実物のそれにはない皺が胴体に有る。
のっぺりとした胴体の毛の中に皺がある。其の皺は眉を潜めて顰め面の人顔にも見える。
つまりは皺顔の犬の癖に体にもう一つの皺顔を持つ奇面犬と言えばそれが正しい。
もっとも皺顔の犬である。確かに胴体の皺人顔も生きている。
本体の犬と合体している。もしくは寄生しているとも考えるといい。
だが、人皺の方は眉を寄せて瞳を硬く閉じれば寝ている。ずっとで有る。
皺顔犬を長く飼育するヒトムでさえ人皺顔が目を開けた事を観たことは無く
たまにうなうなと寝言を皺の口から漏らしたのをやっと聞いたくらいである。
ブンブンと肉と格闘する皺顔犬を横目にも食事が進んでいく。
二度とはないだろうと言う機会であるやもしれんのに笑顔をたやすにサザビーヌを持て成すが
心内では飽きてるのかもしれない。
会話が少なかったと知れるが其れは後日の事である。
皿の上にのる料理はどれも工夫が成されていて目で楽しみびっくりさせられると思えば
其の食べかも一筋縄でも行かない。なれないから多少の苦労はするも
料理の味はまさに絶品天国至極の味わいで舌が唸ってしょうがない。
小さい体と胃袋を人生初めてサザビーヌは強く呪ったのも頷ける。
「本日は楽しんでくれたのなら儂としても嬉しく思う」
最後のデザートと後食酒のその後でヒトムが切れくれた事に感謝の述べ
「此方こそお招き頂き有難うございます。これからも応援して頂ければ嬉しくも
又、お会い出来る時を楽しみにしております。ヒトム様」
丁寧であってもちゃんとヒトムの顔を見上げなかったのは無礼とは知っていても
怖かったからではない。あまりの美味しさに禄に言葉をも発せず
黙々と料理を口に運びいの中に堕とすの食い意地を観られてしまったとの乙女心からである。
最後に互いに交わした握手は暖かさはあっても決して堅い絆を結ぶものではなかった。
そこにヒトムの気持ちが観て取れてもサザビーヌは疎く気づかなかった。
何しろプクリと膨らむ自分の腹がきになって恥ずかしくそれどころではなかったの有る。

「未だ足りないじゃない。また小娘に負けるって言うの?
あんた真面目にやってるの?脚を開いてもこれだけってどういうことなのよ」
白く塗り込まれた石作の屋敷でキキルヌと呼ばれる劇姫が癇癪を起こす。
「四肢を開いても股を舐めさせてもあの子に負けるなんて許せないわ。
どっかの大爺[efn_note]パトロン[/efn_note]にでも首輪を括って貰うしかないじゃない」
其の世界に入って日は浅いと言っても最初から年上姉様の路線に合うように調整された
劇姫キキルヌは確かに一定の人気を誇ってはいるが絶大とはいえなかった。
最近はその人気に陰りが観えてきたかと思えば好敵手のサザビーヌの売上の線に
指を掛ける事も出来なく成りつつも有る。つまりは完全に負けているのである。
其のために劇能界隈ギリギリの禁じ手を物怖じせずに脚をつっこみ。
誰彼構わずとも言わぬとも脚を開いて舐めさせるのはつねに時に雄漢のそれを握り扱き
白濁を体に浴びる事も難なくもこなす。
それでも思うようには行かない。このまま時間が立てば過去の先輩と同じ道を辿ってしまう。
避けるべき道は更に常に売上を上げる事であるがその方法の数は少ない。
劇姫商売ではその商品としての劇姫を自分の物とするのが至極究極と成る。
水揚げや嫁ぎ事と呼ばれるがそれが公になると他の客の人気は堕ちる。
誰かの物に成らないからこそ自分が貢ぐ事でそれが出来るかも知れないと言う妄想が
顧客から金を絞り取る術である。
水揚げ嫁ぎが決まれば引退だ。当然営む運営としてはできるだけ長く金を生んで欲しいから
それらは本当に最後の手段でありどうしようもない時は秘密に契約を結んで貸し出す事も有る。
大口の顧客は一度手に入れたものを逃すはずもなく秘密でも公でも構わずに躾け
首輪を括って自分の物にしてしまう。公に祝事としての嫁ぎであるが
悪く言えば躾けて嬲り手籠にすると言う事だ。
結局欲に塗れる裏事界隈の者はそれを企み金銭を注ぐ。

劇歌場。
その表台では憎きあの小娘サザビーヌが声を張って詩ってもいる。
キキルヌの出番はとっくに終わったし楽屋裏に引っ込み化粧を落として寛ぐのが正しい。
それでも売上を気にする劇姫達は貢いでくれる囲人を探し二階席を歩いて物色する。
多くの場合は観客は自分の推し姫が表台に上がっていれば食い入るように見つめ声を上げるが
そうでない時は仕切り席に陣取り観覧や歓談を楽しむ。
劇歌場といえば推し姫を接する事の出来る場所であると同時に政事の根回しや商談の機会でもある
仕来りとして言うならば劇姫の間でも順番は守るべきものであり
先に客の席に誰か入っていれば後から来たものは酢通りするのが習わしでもある。
それを見極めるために仕切り席の卓の橋には小さなランタンが置いてあり
其処に灯りが灯っていれば其の席の客席に付いてる劇姫はおらず。
それが消えていれば先に誰かが接客している事はないとなる。
其の日はキキルヌは運が悪かった。金を落としてくれる客の席には他の誰かが客の腹を撫でていた
(なんてことなの。ついてないわ。皆、助平面で鼻の下伸ばす変態爺だわ)
少し覗き込んで中を確かめるも目があえば愛想笑いでその場を誤魔化す。
ほとんど最後の列に近づきため息を漏らしつつもその席を覗くとランタンは消えているものの
その奥になんとか見て取れる客姿はたった1つ。脇に雌従者がいるのとは言え劇姫はいない。
「公爵様。お邪魔しても宜しいかしら?」結って垂らした長い髪を指で態と払って小耳に掛け
色仕掛けの真似事をしかけて返事を待たずに勝手に席にもぐりこんでしまう。
「ああ。まぁ良いだろう・・・」嗄れ喉に引っかかるような聞きにくい声が耳に届く。
「私奴寂しいので御座います。少しで宜しいので側に居させてくださいな。公爵様」
本当に公爵の地位を持つかどうかは知らないしどうでも良い。
ただ位の高いお方と持ち上げる常套手段であり当然に体重を預け乳房を押し付ける。
主人が遊び慣れているのか従者の意識が高いのか直ぐの直ぐに軽い飲み物とつまみが
卓の上に届けられる。これは相当にこなれている証拠であろうとキキルヌは睨む。
他の劇姫がこないように誰かに邪魔されたくとでも言うのだろう。
暗く落とした席座に腰を下ろす囲人に態とらしくに体を預け肩に顔を乗せれば
公爵様と呼んだ漢の横顔が視界の真ん中に収まる。
正直キキルヌも一瞬ぎょっとして身を固くする。
舞台では今も未だ小娘がと尻を振ってたの観客囲人に淫猥混じりの声援に答えている。
じっとその方角を観てると成ればこの御仁もあの小娘に現を抜かす助平なのだろうか・・・。
暗がりを眩しくも無くそれなりに照らされる灯りがかすかに揺らめくけば漢の顔も垣間見える。
其れは人の肌の上に何かの皺を刻んだようにも爛れた火傷跡にも見える。
傍と思い出せばかつて戦さ場に慰問興行を打った時に戦火で顔と腕を焼いた兵士が
吾を忘れ舞台に上がろうとして来た事を思い出す。
戦さ場ならでの出来事であったし日常を逸した境遇に身を置く兵士であるからこそ
故郷の恋人とキキルヌの姿を駆け寄った狂気に驚きはしたが。
狂気に狂い焼いた自分の火傷顔を晒すもぐっと大きく開いた目玉が怖かったのも覚えている。
然し。その兵士さえもきっと昨日までは皆と同じ顔だったのだろう。
運も巡りもたまたまに悪かったと言うだけであろうし。彼らのお陰で街は平和を貪れるのだ。
真っ直ぐにじっと動かず舞台表台を見つめる漢の肌は爛れて居るが
誰かの為に顔肌を焼いたとでも言うのなら其れは勲章こそであり如何に見た目が醜くとも
それを責めてば罵る権利など何処の誰にも有るはずもない。
一瞬こそキキリヌは身を固くしたが過去のそれを思い出し体の力をそっと抜き
先程寄り体重を漢に強く預け肩に頭をも預ける。
ふと気がつけばいつの間にか自分の膝に置いた漢手に自分の手を重ねて湯を絡める。
雌と女が色気に塗れ手を握り指を絡めれば遊びであっても握り返すのが当たり前であろう。
自分に気があるかもしれぬと薄い期待にしがみつき漢も欲に握り治すだろう。
それでも絡めた指はあまり動かずにも力も弱い。少しちょっぴりぴくんと動いただけである。
「顔の火傷跡は昔にな・・・。
家撃ちにあった時に火掛けにもあってな。家人を救った代償に顔肌を焼いたのだ。
今となってはそれも痛みもないが御婦人に合う度に声を挙げられる始末で有る。
左手と腹と脚は押し込み野盗にやられてな。油断はしてなかった物の相手が悪かった。
立って歩くのはつ木杖のお陰でなんとかなるが・・・。
乳房を嬲るには力がうまく入らんのだ・・・。」
「家人の身代わりと肌を焼いたなら漢の勲章で御座いましょう。
強盗に押し込まれるのは人気者の証です。人が妬むほどの財力をお持ちと言う証です。
乳を嬲る握力がないのは残念ですが・・・はっ。情夫などうしてるのすでか?
乳房の肉に指が入らないなら情夫の棒はどうしてるのですかっ?」
つい余計な事を聞いてしまったと後悔するが聞かずにはいられない素朴な疑問である。
「馬鹿者っ。じょ、情夫の棒を握る時は元気な方の手を使うわ。
淑女の癖に儂の情夫の棒を心配するとは余計なことだわ。
そっ。それに雇い入れる雌共は吟味してだな。
痛む指でも食い込むほどの大きな乳房を持つ者を厳選しているわっ。
儂は何を告白しているのだ。性癖ではないかっ」云々と背後に控える従者が頭を垂れて頷く。
主人が情婦・情婦を満足させていないと成れば一大事である。
ヒトムは舞台から視線を引き剥がし鍔をも飛ばす勢いで弁明する。
「あははっ。公爵様たら可愛い。
乳房に指が喰い込まないくらいで惚れた雌が逃げるはずなど御座いませんの。
ましてや情婦の棒を元気な手でしごくとか・・・・あははぁ」
半ば本気で怒り出すヒトムを劇姫キキルヌは本気で笑う。
隣の座席から静かにしろとわざとらしい咳払いが飛んでも来る。
「とっとにかく不自由な体であっても夜伽には影響することはない。
頑張っているのだ。儂は頑張っているのだ。こらっ。貴様なんで嘲笑う。
逃げるな。こっち来い。尻肉たたいてやるから此方来い」
顔を真っ赤に染めワタワタと手を振り上げて後ろに下がる従者を叱る主人の姿は滑稽でも有る。
確かにはっきりと観えたヒトムの顔は火傷跡が酷い。
それでも明るくも楽しい性格の一面も垣間見せる。要は外見で人柄はわからないと言う事だ。
「ほらほら。公爵様。その辺にさなさいましな。
誰も公爵様を怪物扱いしてませんよ。ましてや情婦の棒を扱いても妾の乳房を嬲っても
夜な夜な誰もが致して居ることですよ。勿論私は少々高く付きますけど・・・ぷぷ」
冗談混じりに声を上げ暴れるヒトムを窘め料理と酒をキキリヌが進める。
そこまで言うならと落ち着きを取り戻しどかりと席に腰を鎮めると
多少なりとも漢と雌の間に恋人風情の空気が漂って行く。

「ちょっとっ。どうゆいう事なのよ?
これがさっきのお布施ってどういうことなのよっ。あの公爵馬鹿なんじゃないの
頭の螺子飛んでるじゃないの?どうするのよ。これ・・・」
思いの外にキキリヌがヒトムの側に居た時間は短かった。精々半時に満たずと言うところだろう。
なにしろ自分の舞台が跳ねてからでありそれも後半近しであったから相手を見つけるには
難しかった。出遅れたと言うのが正しいだろう。
然しその半時満たずの接待の代金が金の延べ棒七本と成れば驚愕に値する。
それは新劇興行を7日連続で行い全部の売上を全部合わせてやっと届くかと言うところである。
「そりゃ少しは頑張ったわよ。
気持ち悪いとはいわないけどさ。火傷の顔を撫でたし接吻もしたわ。
でもそれだけよ。あとちょっと美形だった。接吻もお上手だったわ。
こら・・・いい加減。起きなさいよ。この御馬鹿。いつまで失神してるのよ」
木卓の上に置かれた七本の金の延べ棒を運んできた仕切り係の漢はヒトムの従者から
お布施としての延べ棒を受け取り部屋に届けると緊張のあまり卒倒し床で泡を吹いている。
ヒトムとしてはある事情から日々に溜まっていく金銭を少しでも多くは吐き出したいと思っている
そうしないと自身が持ちあるく財布がいつまで立っても軽くならないと言うわけだ。
尤も最初からヒトムの経済観念は破綻しているのも事実である。

暗にそんな事があったと言うのもわからずに此方の部屋にも
機嫌の悪いサザビーヌが愚痴を垂れる。
「やっぱり・・・そうなのかしら?嫌われたのかしら?でもそうでもないような」
劇姫と言っても仕事である。人気商売であるから浮き沈みもあって当然とも分かる。
それでも三日事に仕切り役から聞かされるお布施の金額と詳細にサザビーヌは納得がいかない。
あの会食以来にがくんと売上が堕ちた。正確ではなくも全体では上昇してるとも言える。
全体のお布施の金額は以前より少しづつ上がってきている。努力の結果だろう。
それでもあの会食会からのお布施が減ったのだ。全くなくなったと言うわけではない。
然し以前よろはあからさまに減額されている。
自分としては精一杯対応したと思えてもいる。
お礼の書状も送付したはずなのにヒトムからの返信もないらしい。
完全に嫌われたとおもってもある程度のお布施は届く。
形だけの情けとも仕切り役は言い切る。
今日も自分が舞台に立った途端にその座席の蝋燭がぽっと消え
演じながらちらりと観やれば誰か何処かの年増が席に滑り込んでいったらしい。
嫌われたと思えば悔しいが化け物顔の漢と付き合うのもやはり怖いと何処かで思うが・・・。
一人浴室で慰める時にはどうしてもあの漢の顔が浮かぶのがなやましかった。

「こうちょっと脚を開いたらどうかしら?公爵様」
キリリヌと其の劇能会公社に押し切られる形で最近誂えた工房馬車の中で
椅子に寝そべりながらキリリヌが進言する。
「もうすでに魅せ過ぎではないのか?これ以上捲ったら布の意味がなくなるぞ」
「そうからし?いっその事取ってしまっても私奴はかまいませんの」
誂われられていると知ってもヒトムは大真面目に答える。
きっかけはヒトムが趣味で絵画を描く。特に裸体が得意であると漏らした事である。
あれ以来慎ましくも文を交わし合うことから始まった付き合いは
夜伽には至らずともキリリヌは暇をみつけてはヒトムの馬車連隊に脚を運ぶ。
「もったいぶらなくてもいいでしょう?公爵様になら観られても・・・いっそ其の先も」
強引に薄いに白布をめくろうとするキリリヌを眉を潜めてヒトムが嗜める。
キリリヌが強引なまでに積極的なのは私欲絡みであっても商売にもそれは影響する。
新劇舞台絵柄板として描かれる絵画は基本的に大衆画家が書くことが多い。
其の描き方としても極めて世俗的でもありあまり文化的に捉えるものは少なかった。
確かに肌を晒してももとより人受けを狙ってのものであり殿方だけではなく女性にも
受け入れて貰えるようにと若干でも肌の露出を控えたかんじである。
所がヒトムが描くキリリヌのそれは大ききくも違った。
一種の宗教絵画の様にも見える神格化とも言わずともその雰囲気で描かれるかと思えば
妙に写実的で現実身をも感じさせる。立ち姿で蓮に構えるそれまでのものではなく
寝椅子の寝そべり白布一枚だけ羽織りは一見すればだらしなくも漢を誘うような構図と
滴り塗れるような質感。双方が合間見れ美しくも艶めかしい絵画にヒトムは仕上げる。
それを版画にお越し大量にも絵柄札に公社が刷って売れば当然の如くに人気がでて利益が上がる。
キリリヌにとっても劇能公社にとっても願ったり叶ったりである。
絵画の腕は確かであるがそれ以前に一財産も弐財産をも飽きるほどにヒトムの金銭感覚が
何処か完全に可笑しいのも此処にわけが有る。
キリリヌの裸体画自体は暗い工房馬車の中で描かれるが其の背景は真っ蒼な色で表現される。
他の絵画でも蒼空の色として良く使われる其の色は実は十と数年前まではなかったのである。
蒼と言う絵の具。蒼と言う染料。その時まで蒼と言っても青であり蒼ではなかった。
太古の昔から今日まで肉眼で蒼色を観ることは出来てもそれを絵画として染め物として
蒼を表現する事は出来なかった。
その蒼を蒼として表現する為にあらゆる工夫が試されたがそれを成し遂げたのがヒトムである。
有る特定の鉱山から取れる鉱石を粉砕し粉にし絵油とませて作る工程は難しくはないかもであるが
先ずその鉱石を粉砕する事が出来なかった。
運良くくだけても今度は絵油と混ぜ合わせる事が出来ず職人達は匙を投げる。
「確か弐年の年月を研究に費やしたぞ。云々」
キリリヌの尻の線を直しながら豪語するが今の助平爺の性癖からは研究に没頭する様等
ヒトムの従者も信じられないし、ヒトム自身も股やるのは嫌だと断言して嘲笑う。
変態助平爺と今は化したヒトムであるが当時今もたぶん・・・は聡明出会ったらしい。
自分の開発した手法を直ぐに王都著作管理省に申請する。
おかげで蒼を蒼と示す絵の具や染め物が作られる度にその使用許可量がヒトムの元に転がり込む
たかが絵の具染め物具と言ってしまえば其れまでであるが一つ一つは安価であっても
この世の大陸で蒼い絵の具と染め物具が使われるとなれば得られる金額はかなり大きい。
得る金額が大きれば税金の支払いも多額になるから。
「いっそ何処かの島の一つやふたつ買ってしまえば少々減るのではないすか?
もうこの際。税金対策等無駄ですから國の一つも買いましょう」
古参の会計従者が毎年に真顔で書面片手に迫れるのにヒトムもうんざりしている。
其れ言えに計算はちゃんとしてもついつい大きく上乗せするのは悪い癖であり
あの変態公爵(正しくは公爵ではないが)は金銭感覚が瓦解していると評されてもいる。

「なんで・・・?なんで私は描いてくれないの?
ちゃんとお願いしたの貴方?年増が良いの?年増趣味なの?あの御方。
悔しい。悔しいの!私だって・・・お慕いしてるのにぃ」
部屋の中で囲人から貢いで貰ったぬぐるみを振り乱し脚を引きちぎってサザビーヌが喚く。
変態趣味と噂違わずとも一端筆を取ると新進気鋭の筆業が冴え描かれる裸体は女神の如し
多少大げさな言い回しであってもヒトムが描いた女性の絵柄板は絶賛され
天の山に届くかと言うほどに金貨が高く積まれると成ればどの歌姫もこぞって
依頼をヒトムへと届ける。それでもヒトムの筆は早くもなく今まで描いたのは三人だけである。
勿論その一人は最近あまり表だっての活動は控えていても例の絵画札のお陰で人気はう鰻登りの
其れと成るキリリヌ。華族と貴族が一人づつであれば
以前は自分を推してくれたヒトムが此方を向いてくれないがザザビーヌは納得も行かない。
まぁ言葉ではお慕いしてると言っては見せても未だ未熟でもあるサザビーヌは
どうしても自分の事と目の前の売上だけに目が言ってしまうも仕方がないが
それでもサザビーヌは納得がいかず癇癪を今も起こしてる。

「あの・・・今日は宜しくお願いします。ヒトム様」
やっとやっとの事で待ちかねたその日をサザビーヌは迎えることが出来た。
「そんなに緊張することもあるまい。
長く掛かるやも知れんから気楽にな。無理しないかんじで良いだろう」
「はい。お気遣い有難う御座います」其の日に成るまで随分と時間が掛かる。
何度も仕切り係の尻をけとばし焚付るだけでなく自ら手紙を何度も描きづつけるなど
劇姫の営業行為の枠を超えてもサザビーヌはヒトムに絵画札を描いて欲しいと頼み込んだ。
ヒトムの事情はわからぬがなんとかやっと承諾を得たものの当日となると緊張もする。
今までも新劇用の絵柄札を書いて貰った事はある。
もっとも其れとは今回の物は色合いが違う。
老若男女万人の受けを狙った絵柄をヒトムはつまらないと言い張る。
其れにそぐわないと描いて貰えないとなれば清純派として売り出すサザビーヌには荷が重い。
其のはずであるが意を決したとでも言うのだろう。
サザビーヌは際どいポーズでも良いと言い切る。帰って眉を潜めたのはヒトムの方である。
成り行きで何人かの女性を裸体絵画と描いた物の本業でもない。
若く筆の勢いが乗っていた全盛期に比べればいい意味で落ち着いたかもしれんが技術が堕ちる。
故に多少の無理を申し付ければ諦めるとも思っていたのだ。
いつもの様に工房馬車に厚手の外套を羽織り現れたサザビーヌの方は
恥ずかしさに高揚していたかもしれない。
ぱさりと外套を脱いで肌を晒したサザビーヌは側に置いてあった掛け布を手に取り
寝椅子[efn_note]現代で言えばソファ[/efn_note]の上に腰を下ろすと背もたれに身を預けゆっったりと構える。
体を鎮めるクッションがこそばよいのか二回三回と位置を調整してから
「お願いします。ヒトム様・・・」クリクリと大きな瞳を瞬かせて合図を送る。
「うぬ・・・、まぁ気楽にな。云々・・・」
どことなくおざなりに聞こえる超えと態とらしくコホンと咳を履いて背筋を伸ばし
絵札衝立に向かい茶墨墨で下絵を書いていく。
シャッシャッと小刻みで軽い音が絵布の上を茶墨墨が走れば直ぐにも下絵が浮かび上がる。
絵師として仕事に没頭するヒトムは真剣そのままで傍から見れば職人魂の漢らしさも確かに魅せる
ヒトムは筆の疾さには自信がある。それでいて乱雑でもない。
下絵が終わり大まかな体線を描き更にも筆を進めて行く。
それでもかなりの時間じっと動かないで居るのはモデルを務めるサザビーヌの負担にも成るだろう
頃合いを観て休息をとり杯から水を喉置くに流しこんでまた寝椅子に体を沈めて久しくも。
サザビーヌの心がざわつき始める。

ああ・・・あの人が観てる。
私の四肢をあの人が観てる・・・。あんな醜い顔して私を視姦してる。

状況は確かにそうだろう。
寝椅子に体を沈め一応は掛け布一枚だけを羽織るも体の大半はヒトムの目に写っている。
確固たる事実であるが言ってしまえば絵をモデルを観て絵を書いているのだから当たり前だ。
それでも。うら若くも多少変わった趣味を嗜むサザビーヌの妄想は止まらない。

気持ち悪い。
あんな醜い顔で口元歪めて嘲笑ってる。
私の体を舐めるように視感してるんだわ。
嫌らしい・・・変態だわ・・・変態・・・
でも・・・其れが良い・・・感じちゃう。

もとより強姦願望の強いサザビーヌは自分を見つめるヒトムの絵師としての視線を
何処でどう勘違いするのか化け物強姦魔の睨めつけるような舌なめ釣りに感じてしまう。
最初は少しだけサザビーヌの体がもそりと動いた様に観えた。
まぁ結構長い時間立っているしそこの部分は描き終えたからと気にせずに居ると
今度こそはっきりと手が動く。
薄くも透けるほどの布一枚の其の下でゴゾゴソゴソと動く。
最初こそ遠慮してるとも言うのだろう。
拙くたどたどしいものであったがこんもりとした秘部に指が触れると餌を見つけた蛇の如く
一気に襞の周りを這いずりだす。

ああぁ~~~。
あん・・・。
聞こえぬように押し殺した声が籠もるがもとより密閉された馬車の中だ。
もとより怪我を患うがヒトムは元々耳聞きが良い。
傍と一度顔を上げてサザビーヌに視線を送るが眉を潜めただけだ。

駄目・・・。
そんな汚い顔で私を観ないで・・・。
犯されちゃう・・・。

今度ははっきりと聞こえる声を上げるとじっとりと絡みつく視線に酔ってしまい。
喘ぎをあげると襞奥にぐちゃりと指がめり込んでしまう。
一度指がめり込むと止まらない。ぐちゃりぐちゃりと入り口をかき回し
桃色の襞奥がみえてしまうと漢の性であろうにもヒトムの筆が止まる。
自分の目の前で唐突に起きた美少女の自慰に思わず観取れたと言うが本音だ。

嫌・・・。変態。変態化け物
観ないで・・・観ないで・・・気持ちイイ。

筆を止めて観いるヒトムの顔は醜く欲望に塗れる強姦魔其の物であり
サザビーヌの妄想を掻き立て指が襞をかき回し快楽を聞き出す。
いつの間にか布に隠れた乳房をも曝け出し余った手で自ら鷲掴みにすると
まるで雄の棒の様に根本から先端へと握り絞って歪に嬲る。

はぁはぁ・・・嫌。獣の癖に私を犯そうとするなんて
乳房嬲ろうなんて嫌らしい変態。

手慣れているといえばそうであろうが劇姫として生きていれば漢指に弄られる事もないのだろう。
自分の手指で慰めるが其の技は匠でもある。
大きな乳房を両手て絞り扱き先端を潰しては仰け反り喘ぎ。
やはりそれでは物足りないと股座に指を当てよく観て変態とばかりに襞を押し広げ
曝け出した襞奥に指をずぼりと入れてほじくり返す。

ああ・・・気もし良い。気持ち良いの
化け物に観られて自慰するの良い。感じちゃう。

べチャリべちゃりと音が成れば直ぐにグチャリグチャリと汁音が続く。
若さゆえの到りか恥知らずなのか欲望に忠実であるからなのか
喘ぎも指の動きも止まらず更に疾く成っていく。

あっあぁあっああ・・・。
駄目・・・止まらない。もっと。もっと気持ちよくなりたいの。
いい・・・もっと・・・もっと・・・犯して化け物。
あっあぁあっああ・・・あっあぁあっああ・・・あっあぁあっああ・・・

迎大きくも激しくと脚を開きパックリと更に開いた雌陰がしゃぁ~~~と
音と湯気を上げるとサザビーヌは喘ぎを上げて弓に反り絶頂を迎え快楽を貪る。

ああぁっなんて事・・・。
私っ私。怪物のに観られて失禁なんて・・・。
自分の体によし寄せる快楽に酔いながら羞恥に塗れ未だにちょろりと漏れる恥水を見つめながらも
ガクガクと膝を揺らして失神してしまう。

「随分とお熱が入っていたようですが・・・。
其の割には筆が全然進んでおりませんよ?ヒトム様」
扉向こうに控えていれば一部始終を見知りするシリヌルミルカが嫌味を履いて誂う。
「わ・・・。儂としては眼福であったが・・・。これでは劇姫としての立つ瀬があるまい。
気づく前にどっかに運んで休ませろ。念のため此奴の従者は殴って気絶でもさせておけ。
知ればお大騒ぎになるやもしれん。儂は適当に絵を仕上げる」
眼福であると宣言したのだからヒトムも十分に楽しんだのだろう。
何しろうら若き推しの一人劇姫サザビーヌの自慰を目の前で見れたのだから
多少は推し遊びに飽きていたとは言えさぞに存分に楽しんだに違いない。

数日の後。
あの日の事は黙して何もないと名言した手紙と一緒に絵画が届く。
勿論。サザビーヌ自体恥だと知って自覚もしていたが外で待っていたはずの仕切り係の漢は
途中から目眩に襲われ大層具合が悪くとなり気がついたら宿に戻っていたと言い張る。
肝心の絵画は素晴らしくも恥知らずでもあったが実際にサザビーヌが及んだ行為に比べれば
稚拙な物と言えるだろう。白布の奥で自らの股間辺りを嬲るようにも見えるが
決してうつろに喘ぐ表情ではなく化け物其の物をぎりりと睨む戦士のようなきつい目つきは
観る者を圧倒し魅了する。
確してサザビーヌの対面は保たれその絵画も確かに人気の一品であったが
あまりに芸術性が高く表現も素晴らしかった為に新劇の絵柄札など俗世の物にするのは
到底認められないとばかりに有識者が怒鳴り出し最終的には王都立の美術館が強く希望し
引き取る事になる。
結果的で有るにしろそれにより劇姫サザビーヌの人気は鰻が登って鮭が跳ねるほど上向きになる。

 

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天鼠 蛭姫ノ壱

天鼠 蛭姫ノ壱

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