菟は兎らしく
ゴタゴタと山とうず高くが積み上がられた商品籠の向こう側。
ぴょこぴょこと楽しげに動く物が有る。
【釜から杓で燄を掬い、それを三回繰り返し、熱した石に掛けて上がる熱気に顔を賦せる灼熱の国】
この國街は五大陸世界でも熱さには定評が有る。熱い。とにかく熱い。
冷気を常に吐き出す特殊は石を持ち歩かないと弐刻もしないうちに体が茹で上がり行き倒れる必定となる。
街人はともかく港に付いて最初に旅人は涼石を買い求めるのが習わしでもある。
雑踏激しく騒ぐ大市場の片隅。
少しでも日陰を求め山と積まれた商品籠の後ろにうずくまり何やら楽しげに白灰色の物が動く。
ぴょこぴょこと動くそれを良く良く見れば。
確かにそればウザギの耳で有ると知れるが実際の物よりは大きいから耳の持ち主は兎の亜人と知れる。
兎人とも呼ばれるから数え方が難しい。
亜人で有るから人種人類と同じに一人の漢と言えばいいのか。
兎で有るから一羽の雄と数えれば良いのか。
どちらでも良いと吐いて捨てるのは。これも又、亜人差別主義者と指を刺される。
「夢に迄出てきた乾酪肉麺麭だぞ・・・。
しかも一番旨い食べ方はこの國の熱い中で乾酪が溶けるのを待って食するのが一番美味しいらしい」
兎耳をぴょこぴょこと揺らし兎人の雄人は声を震わせ乾酪肉麺麭を握りしめ歓喜する。
どうやらこの雄人は美食家らしい。しかも相当と酔狂な趣味を持っているのともしれる。
乾酪肉麺麭は意外にもどこでも食べられる物である。
それぞれの地には特徴も有るだろうが基本的には牛の乳を発酵させ固めた乾酪と
肉や野菜を厚めの乾燥麺麭で挟んで食する、極めて庶民的な食べ物で有る。
割と何処の國。何処の街でも口にできる食べ物。
何なら自宅の厨房で適当に作っても乾酪肉麺麭は食べられる。寧ろその方が遥かに簡単で有るはずだ。
しかし・・・。
この兎人の雄は故郷から態々と塩海を船で渡り熱気と熱波渦巻く
【釜から杓で燄を掬い、それを三回繰り返し、熱した石に掛けて上がる熱気に顔を賦せる灼熱の国】
その國まで足を運んでいるのある。
目当ては一つ。何処の國でも食することが出来てもこの國の乾酪肉麺麭は濃厚な乾酪を使い
挟まれる鹿肉も分厚く切られ鐵板の上でジュウジュウと灼かれる。焼くではなく灼くとなる。
正せさえ熱い気候の中で料理された乾酪肉麺麭は鐵板の熱とその気候熱で更に熱せられ
2分もすれば挟んだ乾酪がじわりと溶けて肉に染み込む。
熱いから手に持つのもやっとで茶紙に包まれた乾酪肉麺麭を口を空けて頬張れば
口の中にジュワリと乾酪を含んだ肉汁が口の中に広がる。
噛みごたえの有る肉と舌の上に垂れる乾酪の甘さ。絶品で有る事には変わりない。
「くぅ~~~。これだけでもう~~~。たまらないぞっ
店主殿。これで買える分だけつくってくれ。云々これは旨い。旨すぎるぞ」
商品籠の裏側からぬっと手を伸ばして屋台の隅に弐枚の金貨を置く。
「えっと。金貨ってのは困るんだけど?一個金銅貨7枚で・・・」
「良いんだ。屋台主殿。元より先日まで銀貨銅貨なんて世にあると知らなかったんだ。
それに数えるのも面倒。十個でも二十個でも食べるから構わず作ってくれよ。早く」
待ちきれるというように商品籠の影からすっと若い兎人が立ち上がる。
その途端。路地の反対側の屋台店主の女店主が思わず目を見開く。
周りを歩く女と雌達が一斉に視線を向ける。
美男児と言うにはあまりに端正な顔つきとぴょこぴょこと跳ねる長い耳。
伸ばした黒髪を後ろで結いあげ。それも風に揺らす。
何処となく幼気な顔つきであれど青年らしさも凛々しく観れる。
背も高いといえるし細身で着込む暑そうな旅礼服にも細かな刺繍が入る。
何処ぞの貴族か若い領主とでも言うのだろう。
上手く手篭めにでも出来たら一生分の金貨が手に入る。
そんな雰囲気を持つ青年である。
「お代は確かに頂きますが・・・。
これじゃ乾酪肉麺麭二百個分になっちゃいます。今日の材料分はすでになくって・・・」
「うんうん。後は又後日でいいよ。店主殿。
僕はしばらくこの街に滞在してるから宿に届けてくれるなり。
暇を見つけて立ち寄った時に頂きに来るからそれでよろしく」
「なるほど。そうさせて頂きます。若き兎人様」
恭しく頭を垂れる屋台の店主に涼やかに手を振り若い店主は市場の外へと有るき出す。
その後と仕事と立場を忘れ女と雌が付いて行こうと列を作る。
チャンスあれば声を掛けたいと願う淑女乙女が獲物の背を追いかける。
乙女はともかく女盛りの淑女が兎人の後を追いかける気持ちはよく分かる。
何しろ美形美男で有る。それに異様なほどに金払いが良い。
喉が渇けばと鹿乳を買い求めるが払う金はもちろん金貨。
ふらりと入った酒場では品書きの一番高い物を大量に注文し一人で食べるが
同時に他の客にも存分に振る舞う。代金は勿論自分で払う。
難癖をつけて金を巻き上げようとする三下悪者には渋りもせずに気前よく金貨を押し付けて黙らせる。
思う以上の金貨を握らせられれば悪党も押して黙るしか無いだろう。
今どき奇妙な輩だと見えるが当人は至って楽しげに街をフラフラと歩き回って行く。
「風呂付きの部屋を一つ。
豪勢でなくていいよ。普通の部屋で構わない。風呂がついてればそれで良いんだ。
街埃を落としたいだけだから。世話女は特別誰でも構わないから。適当で」
散々飲み食いした後に兎人は特別安い宿に寝台を求めて入る。
あれだけ金貨を持つのなら豪勢な屋敷丸ごと借りられるだろうに態々安い宿に
質素な部屋を求める。嗜みも心得てるようではあるが求める世話女の質は問わない。
食や酒遊びには糸目を付けぬがそれ意外の事は無頓着にも見て取れる。
揉めたのは当人ではなく宿の世話女達である。
元より美男であれば肌に振れたくも有る。金払いも良いと成れば実入りも多いだろう。
「ここは私の出番よ!」
「ちょっとまって。若いあの方に相手は若いアタシよ」
「何よ。割り込んで来て。あの人は私が世話するのよ。どきなさいよ」
「此処ぞと言う時の僕の出番です。お姉さん達は引っ込んで下さい。」
「ちょっとあの人が男色趣味なはず無いでしょ。胸が好きに決まってるでしょ。しかも大きいのが!」
戦々恐々と争う世話女と丁稚雄の隙きを付いてこっそりと別の女が兎人の部屋に滑り込む。
「なんて綺麗な体・・・」
思わず漏らした自分の言葉に世話焼き女が寄って言う。
温かい湯桶から上がり寝椅子に横たわる兎人の体を拭きながら女は酔う。
兎人の雄のその肌は滑らかに湯済みを含みしっとりと強請る。
雄の胸板のほんのりと紅い乳首に我出来ずに舌を付けぴちゃぴちゃと舐めてしまう。
言われたわけでない。自分が舐めたいと思えば勝手に体が動く。
それは雄の胸だけではなく。いつの間にかと自然に股ぐらを弄り雄の一物を握りしごく。
「ああ・・・。美味しい・・・なんて形がいいの。それに味も・・・」
握る一物の先をベチャベチャと音を立てて滑れば間も空けずにジュルジュルと根本まで啜る貪る。
火照った体を持て余すと女は服を剥ぎすてると雄の上に跨り腰を振る。
「ああぁ・・・堪らない。堪らない。貴方の一物。
犯して・・・犯して・・・孕ませて。中に出して孕ませて・・・」
止まらない欲望に身を焦がし女は強請る。
部屋に響く喘ぎは止まらず尻を振り果てるまで夜遅くまでそれは続き終わらない。
置字
