【女装男児】女装家且来素子闊歩歩いて候:其の拾之壱

灼けにムッとする空気が飛行機のタラップを降りる且来素子准尉の肺を焼く。
「ぶはっ。こんな熱くも湿気の多い土地に良く人が住めると言うものだ。
然し中々にと美人が多い。休暇で家族旅行と行きたい所ではあるが
倭之御國の御上は兵を扱き使って給料を貰うらしい。
つまり。仕事で在る。軍務である。ちょっと悲しい」
毎度の事である。こっちが終わったらあっち。それが終わったら次から次へと
一兵たりともさぼる暇もなく且来は新天地へとでかい尻を転がされる。
もっとも今回は戦闘任務とは無縁の見聞を広げるための視察任務であり
期間も僅か弐週間の限定的な物である。陸の船の数を減らしたとはいえ
四番五番の噂は高く國領線を守る列車を定時運行するには兵がいる。
且来の軍家族もそこにいるならば余り長い間留守にも出来ない。

尤も今回の任務の内容は視察と言っても軍事関係の施設を見て回ると
言うよりは他国の内情や情背を知っておけと言う程度の物であり
視察すべき場所の指定は在るものの強い拘束力が在る物ではなかった。
半分は休暇で在ると言ってもよく確かな命令もない変わりに予算はない。
且来がサンダル履きで降りた土地は未だ倭之御國帝国陣地も正式な物もなく
形式的な駐在地がある程度である。
したがって且来は女装家と書き殴られたTシャツをハーフパンツ。
つまりは一介の只のおでぶとして空港に降り立ち
全く言葉の分からないタクシーの運転手に丸い指で地図を示し程々に安いホテルへと向かう。
いかにも当然の如くにおのぼり観光客からぼったくろうとしたタクシーの運転手は
ニッコリと嘲笑った且来にタクシーメーターを拳で潰され三発殴らって大損の苦難に会う。

そこそこにやすくも高くもないホテルに鞄を起きまずは腹ごしらえと
街をぶらつく熱中症を気にしながら午後の市場を回り屋台を回る。
言葉が伝わらなければ身振りをまじえ多少は高いを知っても気前よく金を払い。
早めに夕食を済まして街をぶらついては夕方にBARに脚を向ける。
この國の就労時間は短いのか。それとも偶然に週末だったからか以外にも人は多い。
観光客は余り歓迎されないは確かだろう。
寡黙なバーテンダーさえも且来には愛想も良くはなく。
店の中の一種独特な風体の若者も且来にきつく目線を飛ばす。
そんなによそ者が嫌いならBARの前のボディガードが肩を押してくるだろうし
バーテンも寡黙を貫くが且来がグラスを指で指せば酒をついでくれる。
もっともそれは多分多めに支払いをしているからだろう。
昨日も明日も戦場に身を起き遺骸の山の上に膝を立てる且来に取って
BARの喧騒など酒の摘みの目刺しと対して代わりはないだろう

「Добрый вечер Откуда ты Хочешь поиграть со мной?
(こんばんは 何処から来たのですか私と遊びませんか?)」
カウンターの隣に座っった女性がにこりと微笑み声を掛けてくる。
場末とは言わずとも見しらぬ漢に声を掛けてくるが女性ではあれは娼婦の類で在るとすぐ知れる。
時に且来は女難をたぐり寄せるとすれば特に興味を示さずに
「倭之御國帝国陸軍・且来素子鏡蔵である。腹回りは壱メートルは超えるのが自慢であるぞ」
どうせ互いに言葉が解らにぬのであれば適当な冗談をくっつけて愛想で嘲笑う。
其れ以上。彼女とは言葉をかわさない。相手も特になにもせず。
交互にバーテンに向けてグラスを指さして酒を煽る。
途中一度だけ且来は席を立ち清潔感なぞまるで無いトイレで用を足して
自分が座る席に踊ろうとすればさっきの女性と誰かが顔を寄せて離してる。
赤いドレスと腕にはめるやたら金ピカなブレスレットが娼婦その物で有るが
尻の形はいいなと思った瞬間に肩に誰かが打つかり互いに顔を見合わせる。
フードを深く被っているし他国の漢の顔は皆同じに見える。
それでも眉を顰めたたげで事は終わりと席へと戻る。
さっきまで自分の席にすわっていたツールは山羊鬚の漢が占領し無我夢中で女を口説いているから
バーテンが進めるままに赤いドレスの女を挟んでさっきとは別の席にどかりと座る。
後ろを誰かが通り過ぎる気配がしてもあまり気にもせず。
理由の解らぬ魚の和え物を突き安い酒で喉を焼く。
段々と店の喧騒が騒がしくなり若い連中がなだれ込んでくる。
随分と気前が良いと言うようにビールを頼んでは皆で回す。
それでも寡黙なバーテンの眉がぴくぴくと震えている。
段々と若い連中が高揚し騒ぎ立て床で脚を踏み鳴らす。
山羊髭の漢と赤いドレスの女は気にしてもいない。これが毎度の事であるのだろうか?

且来は何か気がつく。
妙であった・・・。さっきトイレの出口で肩と腹をぶつけた漢。
右肩が下がっていた。重い鞄を掛けていた。確かにそれは右肩だ。
だけどもさっき店を出る時肩の高さは右も左も同じであった。
肩と腹をぶつけて席に座り酒を二杯あおったならおそよ其の時間は五分とならず。
そして漢が店を出ていった。酒の一杯も煽らずにあの漢は何をしに来た?
ぴしりと背筋が凍り殺気が奔る。体躯を回してフードの漢が去った出口を睨み
反対側に体を捻って壁を観る。態とらしく置かれた避妊具の自販機の暗い影
鞄が一つこっそり置かれる。かちりかちりと耳に音さえ聞こえるのは幻聴か?
その時漢達が叫んで床を踏み鳴らす。

「ジーク・アルデニュンタ」

且来は地面を踏み抜いた。
持ち前の馬鹿力を四肢に伝え渾身の力で床を踏み抜く。
脂肪と筋肉の塊の腹は木と金属のカウンターを粉砕し必死と伸ばした腕が
赤いドレスの女の腰を支えて抱きしめ、そのままバーテンの体に体当たりする。
且来の背中で爆風が弾け勢いが乗ればBARの窓をぶち破り道路の外までゴロゴロ転がる。
ドカンと言う爆風は痕から耳と体に遅い掛かる。
転がる道路の上で頭を巡らせば確かにそれは爆弾で白い煙と血肉が飛び散る。
爆発が一瞬であればこ店内からうめき声が漏れても来る。
当たりは騒然に人が騒いでは手を上げ勇敢な漢達が救助に店に駆け込んで行く。
足元に転がる寡黙なバーテンはゲホゲホと咳き込むのをやめない。
しっかりと腕に抱いた女のドレスは敗れた物の擦り傷だけすんだらしい。
やたら大きな声で喚くので下ろしてやれば感謝もせずに携帯を取り出し騒ぎ出す。
ピクリと小さく弾けた二度目の殺気に手を上げれば。
その手に虹色のバンがピタリと止まる。運転手は慌てて且来の顔を見つめ
鬼の形相の且来におびえハンドルを切るって走り去る。
何とか女とバーテンを助けはしたが山羊髭の漢は無理であった。
視察任務の初日に爆弾騒ぎとはやれやれいつもの戦場と代わり映えしないと苦く嗤い
且来は後ろで騒ぐ誰かの声にも耳を貸さずに有るき出す。

且来の頭の中では近くで砲弾が弾けた位の認識でしかないが
赤いドレスの女には違うらしい。命の恩人となればそうであろうがも。
あれだけの騒ぎの後でも且来は悠々と屋台を回り買い食いをし
煩くついて回る女に焼肉やアイスを押し付け手を振って追い払うも
結局女はホテルの部屋までついてくるとかなりぎり声で騒ぎたてる。
10分も20分も部屋の中を歩き回り身振り手振りで喚くが且来は屋台の戦利品を漁るばかりだ。
それからやっとボロボロに成った鞄から携帯電話を取り出すと画面を叩いて話かけてから
且来の顔の前にズイと突き出す。

「どうして怖くないの?爆弾よ。爆弾テロよ」
携帯のしっとりした声が女性の言葉を国際標準語に訳してくれる。
次に女性が顰め面で画面を圧して且来の顔にグイと付き出す。
「儂。軍人だし。あんなの毎日だし。風呂入ったら帰ってくれ。
儂は寝る。喰ったから寝る。おやすみなさい」
爆弾テロにあったばかりだと言うのに且来の無神経さに腹を立てたのだろう
怒りを全身の仕草で表し国言葉で悪態を突き且来の部屋で吠え地団駄を踏む。

「AH・・・・WAO・・・AHHHHH」
微睡みの中に居たはずであるがムズ痒い感触に襲われしかたなく瞼を上げると
ある意味予想取りで意外な光景が入ってる。
当然の如く且来の腹の上に手を付き赤いドレスの女が股間に跨って喘ぐ。
且来が目を開けたのを知ると手首を握り胸に押し付ける。
赤いドレスの下には黒いキャミソールである。要はその上から乳房を嬲れと言う事らしい
異国の旅の恥は書き捨て据え膳食わねばと言う前に食われているのは且来の方だろう。
「変態。変態。御前は変態・・・。気持ちいい」
ベッドの上に放り出した携帯のボタンを押せば且来にも分かる言葉となるが
変態とか和訳ソフトに登録されているのだろうかと些かに不安を感じる。
着衣のままで有るのは少し気に食わないが其の上からもぷくりと勃った乳首の感触を楽しめば
「変態変態御前は変態おたんこなす・・ああ・・もっと・・」
娼婦の女が一頻り喘いだ後に携帯のボタンを圧して訳言が届く。
異国の異人の性交の習慣は知らないけれども相手に気持ちを伝えたいのは同じなのだろうか
体位を変えようとしても女は首を振り起き上がる且来の肩を抑えこんではそのまま腰を振り続ける。
且来の御國の民より肌の色は白いが少し乾燥した肌にも見える。
黒いキャミソールの乳房の膨らみは大きく。パンティをずらし一物をくわえ込む隙間に見える陰毛は黒い。
何処か馴染みと懐かしさを感じる体の特徴で有るが携帯を使わず訳さずに喘ぐ声は一際大きく
使う腰も激しく止まらない。まどろんで居た且来であればどれくらい跨っていたかも分からずであるが
腰に手を添えて体を揺さぶり喘ぎ続ける其の時間は結構長く感じられもする。
「変態変態御前は変態っ」携帯の和訳の言葉を耳で憶えて喘ぐと勝手に昇りつめ
周囲憚らず声を喘げて絶叫を上げ四肢を震わせて絶頂を貪る。
暫し且来の上で余韻を楽しむと腰をあげ固いままの一物をずるりと抜いてベットに倒れ込み
荒い呼吸が収まると後はすぅすぅと寝息を立てる。
「元気な儂の息子はどうしてくれるのだろう?勝手に跨って貪ったくせに・・・悲しいぞ」
しかたなくも悲しく軍妻達にメールをしてシャワーを浴びて寝息を立てる女の横に転がる。

「エリーヌ・アルデニュンタ」自分の名前を口で告げてから
[エリーヌって呼んで頂戴]携帯のボタンを圧して訳葉を追加する。
「且来素子・・・もとこ・・・」余り携帯等は苦手な且来は顔を指さして答える。
「もとこ・・・素子・・・変態素子」口の中でもごもごと繰り返しし納得すると
「変態素子」と納得したように頷く。
[変態素子は此処に何したのですか?]
[半分は仕事半分は遊び。昨日の怪我だいじょうぶか?]
[はい。大丈夫。有難う。変態は?]
[素子・・・変態じゃないぞ。儂の仕事は戦争だからあれくらいは何時もの事だ]
[ふーん。でもテロだよ?爆弾テロ。怖くない?]
[テロって言われても良く分からん。よくある事なのか?]
「云々。最近はとても多い。弐週間に一度はある。あっちこっち」
互いの紹介を兼ねてちょっとおしゃれなカフェで朝食を取りながら話を進める。
爆弾を砲弾とすれば且来も理解できるが戦争と爆弾テロとは同義でないし性質も違う。
半分遊びで来てる且来ではあるが見聞を広めると言うのであれば良しもあれ悪くもあれ
カフェの朝食では腹も膨らまぬが確かに且来は其れに興味をもったと言えよう。

「困りますよ。且来准尉殿。一般人の方とか連れて来ちゃ。困るんですって」
「そうは言ってエリーヌ・なんちゃらの方からついてくるのだ。
いかしかたあるまい。ついでに何か着るものを用意してやってくれ」
朝食が終わったと言うのにエリーヌは且来の後にくっついてくる。しかも堂々とである。
倭之御國の駐在事務所にまでついて来たと思えばこっそり指差す係員を睨み
「変態。御前は変態・・・」自分の口でも言える癖に態々携帯のアプリで悪く口を吐いてくる。
「へんたいって・・・言われたましたよ?僕が変態って決めつけてますよ?」
「気を悪くするな。坊主。彼女が初めて憶えた倭言葉なのだ。許してやれ
其れより昨日の爆弾騒ぎの事とか國事情を教えてくれ。どうも気になる」
「且来准尉殿が教えたんですか?僕が変態って教えたんですか?
とりあえず奥の部屋で御話します。入用な物も有るでしょうから」
且来には坊主と見える係員でも果たすべき責任は心得ているのだろう。
駐在事務所の廊下と幾つかの部屋を通り過ぎ地下の詰所に且来を案内する。
当然の如く自分は且来の連れだからフリーパスで有ると言うように
昨日からと同じドレスのままにエリーヌがぶらぶらとついてくる。

海に突き出た巨大な岩盤を金槌で叩いて五つに割った七つの大陸
日が沈む方角に幾つかの國が屯し同じ民族と思想と宗教を並べ信じて國境を
超えて絆を結ぶ欧州思想連邦国家。民族的には寛大で広い心を持つ者が多く
協調性も高い比較的温厚な人々が暮すとされている。
「まぁ~~~。世情的的いその様な傾向に傾いてるのは確かですか
其れも九拾年前くらいからでして。其れ以前は結構過激な民族でした」
「付き物でも堕ちたと言うのか?百年前に?」
坊主と呼んだ係員を眉を寄せて顔を寄せると彼はチラリとエリーヌの顔色を気にするが
それでも歴史上の避けて通れぬ世界大戦と悲劇の話をゆっくりと語りだす。

時を遡り歴史の書物の頁を捲る必要もあまりなくもその魔女の名は此の國と世界の人々の
記憶に今も昔も焼き付いている。
魔女アルデニュンタと呼ばれた彼女は若くして初めて夫に娶られてから
魔女の死幕が大抵火あぶりの其れで終わるまでに三度結婚したと言う。
最初の二人は異国生まれの異人の夫であり参番目の夫は同胞の漢であったと
言われているが確かにそうであっても詐欺師紛いの犯罪者であったとも影に表に噂が残る。
問題はそこではなく最初の結婚で彼女は夫に激しい虐待を受け肌に痣と火傷のを負ったらしい。
二番目の夫はやはり彼女を虐待の末に自殺寸前にまで追い詰めたがそれは精神的な虐待とも記録には残る。
二度の結婚に失敗し有る安酒場で働いて居た彼女はそこに偶然現れた弁論家の思想弁論に出会う。
思想弁論と言うのは政治思想・宗教思想・家庭思想等の根底にある自身の意見を
二人若しくは其れ以上の複数人相手の間で語り合い競い討論する物である。
弁論家の思想弁論を聞いている内に魅了されると同時に彼の弁論の矛盾点に気がついた彼女は
彼に討論思想弁論を堂々と申込み見事にこれを見事に打ち破る。
この刻。言霊魔女のアルメルダ・アルデニュンタと彼は初めて呼び彼女を称える。
翌日翌夜からアルメルダに討論思想弁論を挑む者が後を絶たなくもなっていく。
最初こそ戸惑いもあれば時に打ち負かされる事が合っても根っからの博識もあり
一度負けた相手の弁論を繰り返し勉強し自分の力としていくと成れば
確固たる信念と教養も糧となりその噂は村を超え山を超え街を超えいずれは國へと届く。
当時の政府国会でも思想弁論は有意義な政治手段であり才能を認めれたアルメルダは
下級国会議員となるが政治家と権力の階段を疾風の如く掛け上がり所属する正当の
副党首まで上り詰める。この時はまだ小さな政党でしかなかったはずだが
アルメルダが個人的にと又実験的に創作していた思想原理の原稿が思わぬ形で外部に漏れる。
当時としても又世界的も未だ珍しいある意味進歩的で独創出来な思想弁論は
世界大陸大戦が圧巻する世情の中に国民に熱唱的に指示される。
世に云う特定遺伝子継承による排他的民族主義の大陸征服を声高らかに憚らず謳った物である。
特定遺伝子継承による排他的民族主義。
要するに自分達意外の他民族は皆有害で有る。自分達が大陸の支配民族であると断言した
アルメルダの思想弁論は本人の意志とは掛からずに国民民衆に広く浸透し
アルメルダその本人もそれを語る事を皆に求められる。
最初こそ本人も乗る気ではなかったのかもしれない。然し何度も皆の前で語り叫ぶ内に
それは自分の信条信念へと心に固く信じる様に成った頃に当然の如く
アルメルダの政党は国民の選挙の票を殆ど一つの政党で集め國の一党独裁政権と成る。
其の頃参度目の夫を迎えたアルメルダは徐々に変貌を魅せる。
夫の影響も合ったのかもしれない。段々と化粧が濃くなり生活も派手になり嗜好品を求め
美術品と金銭と愛し。そして血を求め始める。
当然のであろうに自分達が支配者であると言うならば迫害すべき相手が必要と成り
それは自國民意外の劣等民族でなければ成らず。国民が求めるままに世界大陸大戦へと突き進めば
工業立国でもあり生真面目な民の力と頭脳明晰な科学者と技術者。
世に戦神の女神が居るならばアルメルダ率いる軍は随分と寵愛を受けたのだろう。
戦々恐々と大陸を國旗を掲闊歩して他国を侵略して行くその影で排他的主義を根拠とした
大規模な虐殺をも厭わずにそれも又隠す事もなく平然と行われていた。
次々と土地と國が奪われて行く大陸諸国。幾ら兵を送り込んでも幾ら戦車を並べても
一矢報いる事も出来なかった彼等の前に突然とアルメルダの悲報が届く。
自然死でも病死でも戦死でもなくアルメルダはあっさりと暗殺される。
大陸の殆どを手中に納めたアルメルダは次に血を摺るる獲物を東方の海に浮かぶ
戦略的にも余り価値もないだろう島國に決め禄に宣戦布告もせずに軍を送った。
最初の二ヶ月はとても順調であると報告を受けて居たが戦線が膠着すると状況が変わる。
島国の離島は奪い取れても本島にはまともに攻め込む事も出来ず。
激しい抵抗に合っていると届けが届くと直ぐに今度は離島も奪いかえされ
終いには派遣した軍兵が全滅したと一報が返ってくる。
これに激怒したアルメルダはさらなる軍と大量殺戮兵器の導入を決定するが
その前にあっさりと暗殺されてしまう。奇妙な事に一般的な銃殺ではなく
鋭い刃による惨首であったとすれば、それは彼の東の國の手の者で在る事は間違いなかった。
痛ましい事に彼女の遺骸には切り落とされた首から上が当たりにも見つからず。
首から下の四肢を三番目の夫が目で確認してアルメルダの死を認めたとも言う。
尤も真相はわからずじまいであり首が見つかってない以上。
彼女は今現在もどこかで生きて居るのではないかとその噂が絶えない。
アルメルダの死以降。求心力を失った國への国際世情の抵抗激しく
それから五年後にアルメルダの國は敗北する。
機して国際世論と他国の介入により最終的には敗戦国となった其の國こそ
今日その日に且来が脚を踏み入れた豪州アルメルダ魔女連邦国である。

此処までを聞けば随分と長い歴史話の勉強と成るが若い小僧の係員が
喉を絞って更に小声で且来に告げたのは言霊魔女のアルメルダが掲げた
特定遺伝子継承による排他的民族主義は未だ個の國に根強く残っている事である。
アルメルダが生きていた時代より時間も世情も移り変わり彼女の同胞人種の割合は
少なくなっている。他人種移民が自国領に紛れ込み日に日に数がふえてもいる。
脇に追いやられ肩身が狭いとまで行かなくても観たくもない肌の色の人々が
平然悠々と自分の街を歩いてる。それがどうにも我慢できずに段々と声をあげる輩が増えている。
つまりは平然と魔女アルメルダを崇拝する輩が憚らず声を上げているのも事実と言う。
「変態おたんこなす。喉かわいた。小遣いよこせ」
部屋の向こう壁に肩を預けて黙っていたエリーヌが携帯のボタンを圧して起こる。
「全く。儂は御前の金庫番ではないぞ。これで足りるか?」
ドリンク代にしては少々高い紙幣を突き出すと儲けたとばかりに細い指でかっさらうエリーヌ。
「金庫番っていうより。あの御方が且来准尉のひもなのでは?僕にはそう見えますけど」
「煩い。誰がひもだ。それより。それが全部ではあるまい。
昨日の爆弾騒ぎをエリーヌ・なんちゃらはテロといったぞ?変な小童も騒いでいた」
「それは確かにテロでしょう。最近は特に多いです。あちこちで」

何処にでも転がってるアルファベットを二つ並べてJ.Jと呼ばれる彼は
昨日の仕事の点数を75点と評価した。悪く無い点数ではあるが合格点には
すこしたりないだろう。数々の癖を持ち疾患を患うJ.Jはメモ帳と薬が欠かせない。
特に点数評価と言う癖には並々成らず執着を持っている。
朝起きてからの歯磨きと身支度。朝食の容易と食事のマナー。
仕事への取り組みと態度。昼食は外出先で取る事が多いから店選びと食べるメニュー
実際に出てきた料理の味。午後の仕事の進行具合を成果と実質的な結果評価
余暇の時間にゲームをするなら対戦相手の何人倒しどんな殺し方をするか。
ガールフレンドと会う時は雰囲気作りとデート内容。娼婦と遊ぶ時は成るべく高いコストを掛け
その価値が有ったのかどうか。シャワーの時間は手早く済ませ風呂に浸かる時は逆に時間を掛ける。
ベッドの中に潜り込む時に全ての手数を合計し決められた手順で評価計算し平均点を出す。
その平均点が自分で許せる範囲であれば罰はなし。その下限より下回れば罰を自分に与える。
平均点よりも少し点数が低くてももっと悪くても与える罰はみな同じであり
其の罰はJ.Jに取ってもとても嫌な物である。
だから自然と物事に対して慎重になりとても有能なテロリストであると言えよう。

75点・・・まぁまぁだなとJ.Jは昨日のクラブの爆破を自己採点する。
合格ラインを80と設定してるしそれに近いと成れば納得の数字でもある。
上手く言ったのは狙った時間に魔女アルデニュンタを崇拝するカルト連中が
店に集まって来て騒ぎだした時だったので、最初の計画通り奴らに死と教訓を与えて
やれたのは歓である。悪い点はギリギリで数人の客が店から出て来てしまったので
想定した死亡人数を満たさなかった事だ。それでも死者12人。負傷者28人と言うのは
Club Bomberとも呼ばれるJ.Jに取っては悪くない成果でもある。
とは言えそれに満足してるわけにも行かない。
J.Jは壱年に自分がすべき仕事の件数を決めている。
大体二週間に一度は何か知らの仕事をする計画配分になっているが
昨日のクラブ爆破は先週中にやっておくべき事であった。
つまりは次の計画を速やかに実行に移さないと年間の計画に遅れがでる。
後が詰まってくるとその分がさつに成ってしまい仕事の質が落ちてしまう。
J.Jは出来るだけ早く次のクラブを爆破する必要があった。

「オタンコナス。参時間待つ。馬鹿。変態」
携帯に向かって母国語で話しボタンを圧して且来の顔の前に突き出して侮蔑してくる。
「そうは言ってもこれが儂の仕事なのだ。どうしてもあの美術館を観ないと鳴らんのだ」
対する且来の通訳機は軍用品である。あの坊主係員が融通してくれた物であり
耳栓代わりの機器とブレスレットの二つを組み合わせた物であり
エリーヌの罵倒は且来の耳に届く時に耳栓機器を通して倭言葉に変換されて届く。
変わりに且来が話す言葉は耳栓機器のセンサーが骨伝導振動を解析し
ブレスレットの電波信号を送り音声に変換されて発音される。
まぁ結果。携帯のボタンを押す必要は無いとして二人の間で交わされる言葉は手間が掛かる。
「変態オタンコナス。勝手に待て。仕事行く。電車賃」
涼しかった倭の領事事務所とは違い湿気も温度も高い世界的な観光名所の前で
3時間も又されると成れば怒りもするだろうエリーヌはムカついた顔で
且来の顔の前に綺麗な手を突き出して仕事場までの電車賃としっかりと強請る。

エリーヌが罵倒した通りにほぼ参時間程列を作り美術館に入場した物の
且来は軍人である。元は漫才師であっても美術と言うものに全く興味もない。
軍務であるから一応にと関心のあるふりをして見て回るが他の客の波に呑まれて
順々に巡って行くだけだから尚更よくわからない。
それでもこれで視察箇所は終わったと旨をなでおろしホテルに戻ると
部屋の移動をきっちりと申し受けられる。昨夜エリーヌと一緒に過ごしたのは良いが
思えば一人分の料金しか払ってなかったのがあった。
仕方なく従業員の苦言に付き合い昨日の割増を払い新しく部屋をも映る。
「さっき何観てた?変態空け者小父様さん。」
「いや、何と言われても隣で観てた癖に。段々悪口の語彙がひどくなって来てるぞ。エリーヌ」
往復の電車賃を渡したせいかエリーヌは結構遅い時間に且来の部屋に入ってきた。
部屋を移ったにも関わらず堂々と扉をノックしてくると成れば従業員に色目でも使ったのだろう。
且来が何を覗いていたかと言えば軍用品のPCであるが写っていたのは
軍嫁と月姫が全裸で四つん這いに成って床を歩く姿である。
丁寧にカメラをもった二人の前を猟犬女の弐ⅱが歩いているらしい。
羞恥であるにろも遠くにいようが居まいが且来家の仕来りであると言い張る軍嫁しずゑに
逆らえるはずもなく月姫も乳と尻を揺らし並んで床を這いずりきっちり三週回る。
別に出張中にそれを魅せられても嬉しくないなと苦く嘲笑う
隣影でこっそりとエリーヌも興味津々で覗き込んでいたらしい。
「あれやると・・・御前悦ぶのか?・・・変態阿呆小父様さん」
「嫌別に儂が悦ぶわけじゃない。寧ろ喜ぶ悶えるのはあやつらだ」
「ふーん。御前の國は皆・・・変態」
「否。全うである。性交とは多種多様な楽しみ方があって当然である。
しかし彼奴等は絶対変態である。儂もちょっとは変態である」
「やっぱり。御前は変態。私正しい。確かめる」
仕事で客の相手をしてきたはずなのにそれとも空振りだったのだろうか
エリーヌは且来の手を引いてベッドに倒れ込む。

ordförande。
総裁と呼ばれ敬愛される漢はその日を楽しみにしていた。
総裁は自分も未だ若く欲望に忠実であると同時に相手に求める趣向は出来るだけ初な者を好む。
頭でっかちな未経験な者よりも数回の経験が少し在るものそれから従順であり忍耐力の在る者。
つまりは余り経験の無い少女を特に好み自分の言葉に逆らう事をしない少女ばかり好む。
特に幹部に命じたという訳でもないが国内各地を回りBARやバブで集会を開くと
どうしても気分高揚し体が火照る。偶々今日の集会の後に差し出された少女は二人であった。
ちょっとした手違いでと地区の代表は笑い。何方か一人を選んでも二人同時でも良いと言う。
彼はタイプの違う二人を同時にきにいり宿泊先のコテージに連れて来いと告げる。
17歳と18歳と教えた少女二人に総裁の漢はそれ以上を効かなかった


Almelda409と名乗るハッカーは自分の腕が余り良いとは思っていない。
だが自分にもそれなりの才能が在るとは知ってもいる。
自分はこれで生きて行くしかないとも知っているから労力を投資は惜しみもしない。
街中の小さなガレージハウスを借り切り一階には祖父のが乗り回していた車を
雄一の趣味のバイクと自転車を置く。二階は何処かの企業のサーバールームも
匹敵するかもしれないと言うPCサーバーとワークステーションPCが並ぶ。
住居スペースと言えばそれらに脇にお知られ冷蔵庫とキッチンとベッドが個人まり在るくらいだ。
Almelda409はそれまで特に関わりを持って来なかったBARの爆破事件を調べていた。
爆弾テロとして爆弾テロを繰り返すcrabbomberと言う犯人の名前は知って致し
PCの画面に向かいつつも脇のダブレットから流れてくるNEWSで一応の知識は在った。
それでも関心がなかった。PCやネットハッキングの世界はテロリストの話なんて話題にならない。
否然し。次の朝に珍しく仕事意外の通話を携帯が知らせてくると事情が変わる。
一頻り自分の中で受け止めると自分の出来る事できる形でこの件を処理すると決める。
Almelda409はハッカーらしく警察は無能だと信じている。どんな形であれ無能であると。
だから自分で調べることにする。
そして当然ハッカーであるから此処ぞとばかりに気合を入れエナジードリンクとがぶ飲みし
棒付きキャンデーを咥えるとPCの画面を覗き込みコマンドをタイプする。
始めこそてまどった物の二日前の事件現場の向かい側の雑貨屋の防犯カメラの映像を
納めたPCのハードディスクにアクセス出来た。
その画像は警察の公式発表と矛盾してた。あの爆弾テロで生き残った者はたしかに居た。
4人程であったが。それでも彼等は皆怪我をするか瀕死の状態であり
誰かの手を借りてやっと立って店から出てくるか若しくは救助隊の担架に乗せられてかの何方かである。
然し。爆発が起きた瞬間に熊と言えば未だ格好もいいが。まるで肉達磨のような漢が店から飛び出してくる。
不格好にゴロゴロと路上を転がるも腕にはしっかりと赤いドレスの女性を胸に抱き
片手には爆風で焦げた髭とエプロンを来たバーテンらしき漢の首根っこを掴んでいる。
二回三回と地面を転がった肉達磨の漢は立ち上がると二人を離すとしっかりとした足取りで立ち上がり
顔を向けもしないで左手を無造作にあげるとその左手の先に虹色のバンが急ブレーキを踏んでピタリと止まる。
恐らく頭を巡らせた肉達磨の漢とバンの運転手は目が合ったのだろう。
運転手は人を轢くところだったと言うように慌ててギアをバックに入れて方向を変えて走り去る。
壱分か二分の間であろう。肉達磨の漢はその場に佇み当たりを見渡して居るようであったが
満足したのか騒乱隣り始めた現場にくるりと背を向けて勝手に歩き出していく。
まるで映画の英雄譚のような活躍で在るにも関わらず肉達磨の漢はズカズカと在るき去り
その後ろを慌て取り乱した赤いドレスの女が爆風で踵が壊れたヒールを脱ぎ捨て追いかける。

Almelda409はこいつだ。この肉達磨が自分を助けてくれると啓示を受けたの如く
PCの前で手を叩き跳ね咥えたキャンデーを思わず噛み砕いてしまい小さな破片が気管に潜り込み
げほげほと咳き込みその日8本目のエナジードリンクを喉に流しこんでから
目じりに溜まった涙を擦り肉達磨の静止画をじっと睨む。
動く物体を捉える動画であるしその一枚を切り取った静止画像でもある。
雑貨屋と向かいのBARとの距離もある。幾ら画層処理ソフトのシャープネスフィルターを
実行しても限界はある。何処にでもいる漢とはいえないし特徴がないわけでもない。
何となくではあるがそれは豪州アルメルダ魔女連邦国の民とは肌の色が違うように思える。
自分達の肌はそれ程白くもなく人類学分類学に照らし合せても白くはないが
すこしは白い。大体にして黄色や黒よりと比べれば確かに白いかもしれないと言うくらいであるが
肉達磨の漢の肌はそれよりも歴然とした白さであるが何処ど無く浅黒さも残る。
それはきっと日焼けのせいだろう。肉達磨と言うのがよく似合う体躯と白い肌。
何よりAlmelda409の目を引いたのは爆発で焦げたとはいえ着込むTシャツの背文字
女装家となんとか読めるたの良いが果と女装家と言うのは何であろう?
暫くネットの海をさまよった後に女装の意味は理解出来た。
確かに自分の國にも男性でありながら女性の服を来て性的興奮を覚える物も居る。
勿論個の國では日陰の存在であるからそれをTシャツの柄にはしないだろう。
尤もAlmelda409は他国のポップカルチャーに敏感であったからこそ理解出来ただけであって
大抵の者はそれが何をいみするから解らないし興味もないだろう。
兎に角何となく。それでも何故この漢が自分を助けてくれると知ったのか理由が解らなくても
次の問題はどうやってこの漢を街中から探しだすか。それは問題でもある。
PCの検索画面で女装コンマ肉達磨とタイプして直ぐ居場所が分かるわけでない。
藁の中から半分に折れたマッチの棒を見つける様なものだと思えばそれは翌朝に見つかる。
あの現場から2ブロック先のオープンカフェで真新しいTシャツを着込み事件の時に
一緒に居たドレスを来た女性と何やら楽しげに眉を顰めて会話をしていた。
肉達磨の漢は女装家成る物に強い拘りがあるのだろうか?
事件当日に焦がしてしまった物とは色違いで在るが同じ柄のTシャツをぴちぴちに着込んでいる。
何かバカにされた気分でもあるがAlmelda409は必死に街角のカメラを回しズームし
二人の様子を伺う。先ず目についたのは娼婦にも見える女が握る携帯である。
あれをハッキングするのは難しくないだろう。但し女性のプライバーシーを犯すのは気が引けた。
変わりに肉達磨が何か気にするように手首のブレスレットを時々弄るのを観て
何かのデジタル機器であると睨む。途端に心が踊る。ハッカー魂に火がついたと言えば格好がいいが
どうやらそれは一筋縄ではいかないらしい。高度な精密機器であると思われるが
何かの暗号化もされて居るような反応がPC画面に移し出される。
電波を発信したり受信したりしてる様が観られるが随分と複雑でもあり
飛び出した電波は何処遠くへと指向性を持って飛んでいき又何処からが信号が
返って来てそれで何かの動作をしてるらしい。そのやり取りの間に割り込むのは難しい。
おそらく仕組みはいい線まで理解出来ているとしてもその先どうやって
彼等とコンタクトを取るかと言うのにAlmelda409は丸一日とエナジードリンク1ケース18本
棒付きキャンデー25本。それから宅配ピザ四枚をつぎ込んだ。
来週はスポーツジムの会員IDを偽造しないと太ってしまうと本気で心配してしまう。

「Nice to meet you today.Trevligt att träffa dig i dag.Rád som vás dnes spoznal.
今天很高兴见到你。今日ははじめまして。私の胸はEカップです」
その日の視察はこの國の庶民にも愛される甘く美味しい麺麭の工場見学と缶詰工場の視察と
且来に聞かされて今日は槍が降っても銃殺されても絶対についていくと携帯を片手に
息巻くエリーと且来は今や二人一緒が店の常連となったカフェで朝食を取る。
二人の会話に突然女性の声が割り込む。尤もそれは且来のブレスレットが発音したものであり
女性の声とは言えザラつきが交じる。
多言語で話掛けてきたのは且来の母国語がどれであるかわも解らずであり
Almelda409は多分これではないかと言うのに加え女装という文字から
推測した國のポップカルチャーの中に一時期流行った言語を抜き出した物である。
「その言葉を持ってくるとは・・・正直驚いたぞ」
軍用の通信機器に割り込んで来たとなればある種大事であるが且来はそれよりも
思わぬ所で懐かしい自分の持ちねた持ち出された事に驚き自分の上でを覗き込む。
「私はハッカー。これくらいは昼御飯の前・・・嘘。丸々一日かかったわ
お陰で太りそう。可憐な乙女なのにどうしてくれるの?」
「がははっ。儂は軍人であるからな。儂が動けば軍も動く。
つまりこれは軍事装置である。二流三流の者に破られていたら儂は命幾つ合っても足りぬ。
して?この國のハッカーが儂に何のようだ?亡命とかややこしい話は領事館に言って欲しいぞ」
「助けて。貴方はあの時爆発から彼女と漢を助けたでしょ?
私も助けて欲しい。貴方には其れが出来る。crabbomberを捕まえたいの」
其の単語がブレスレットから聞こえた瞬間エリーヌは身を引いて両腕を自分で抱きしめる。
当然思い出したのだろう。ゾッとして悪寒が走ったのだろう。
「確かに儂はあの場所にいたしエリーヌ殿も一緒にいた。偶然である。
戦で体張るものではあれば殺気も奔る。後は考えるより体が動く物だ
エリーヌ殿は御名子である。女性だ。当然守るべき存在であるから手を伸ばした。
バーテンの漢は偶々だ。目の前に居ただけある。無論救えなかった命も在る」
あの時且来が庇わなかったらエリーヌは死んでいただろう。
あの瞬間を思い出すも今且来が側に居てくれる事に安堵して冷めたエスプレッソをエリーヌは飲み干す。
「crabbomberは一定の間隔を置いてテロ行為を行っているわ。
日が巡る度に人々が死んでいく。確かにこの國には問題が合って差別もある。
魔女アルメルダを崇拝する騎士団は平然と差別と弾圧を繰り返し他の人々を苦しめているけど
あの現場にはそうでない人も居たのよ。彼等は二度と家族と会えない」
「理解する。それは理解する。だがなぜ個の國の執行機関に連絡しない?
詰まるところ儂に何が出来る?儂は個の國に長く居ない。
儂が守るべき國は倭之御國。守る家族も遠い地に集う。命の重さは誰一人も変わらずも
責を果たすのは各々の國と人であろう?確かに儂は彼奴の顔をちらりと観た。
気配も知れば次に会えば逃しはせぬ。それでも儂の出る幕が在るなら当局に人相を知らせるくらいだろう」
判って居ても且来は正論を申し立てる。あの現場に確かに居たとしても且来が出る幕ではない。
軍務でこの國に来てる以上それが視察で合っても軍務を熟すのが且来である。
つまりは正論である。

「従兄弟がいたの。陀羅しなくていっつも女の尻を追いかけていた。
自分はプレイボーイだと信じていたしいつも娼婦にぼったくられていたわ。
ブレルはあの日あの場所に居たの。私のデスクの上には変な山羊鬚の彼が今も笑っているわ。
敵を打ちたいの。この手で彼奴を殺したいの。だから助けて」
且来のブレスレットから漏れる声は合成である。一本調子で人の心なんて微塵も感じない。
だが且来にもエリーヌーの耳にも其の声は涙に咽び泣いていた。
結局且来は約束はしなかった。自分は軍属であり飽く迄も任務でこの地に居るだけであり
滞在の時間もみじかいから出来る事はないと。礼儀としてあの時エリーヌの隣に座り
一生懸命口説いていた山羊鬚のブレルが安らかに眠るようにと祈りを捧げ
國の執行機関に連絡を入れcrabbomberと思われる漢の風体を伝えるとだけ告げる。
その日の夕方近く質素ではあるがブレルの葬式が行われた。
慌ただしくも悲しげにそれ程大きくもない郊外の協会に親族に職業を伏せたAlmelda409も参列する。
余り親族にも顔を会わせたくない彼女は式が始まるであろう時間ぎりぎりに協会の飛び等を潜る。
それは自分をプレイボーイと信じ正式には結婚してなかったが一子をもうけそれでも
遊びあるいていたブレルの棺と写真。そして葬花が飾らていたがAlmelda409の目が
張り付いたのはやたらと大きな葬花が協会の隅に鎮座している事である。
決死て立派とは言えない生涯を送ったであろうブレルにもその親族にも
金持ちと言える者はいない。やたらを大きく立派な葬花を贈り主は誰かと聞いても
誰も知らずと首を振る。元よりAlmelda409は近眼であり葬花に書かれた札の文字もぼやけて見えもしない。
とは言え。葬花であっても花であり風にたなびくだけてもある。
ブレンの葬式は粛々と進行し教会の牧師が葬言を述べ親族が一人に一人にと棺に歩みより
山羊髭のブレルに最後の別れを告げる。
Almelda409もこの時ばかりは涙を隠せずに嗚咽を漏らし彼の額に口づけして別れを告げた。
すんすんと鼻を啜り冷たい教会の椅子に腰掛ける。
家族親族がそれぞれに別れを告げ棺の蓋を閉めようと内縁の妻が手を伸ばそうとした時
山がのそりと動いた。
それが人で有り漢で在ると言うのに誰もが一瞬戸惑う。
そして誰もが顔合わせて見るも知りあいには居ないと首を振る。
山と成る漢は此の國の葬服とは少し違い。大きく出た腹を黒と白の背広で包み黒のネクタイ。
それに腕に白い腕章をつけていた。余りに大きな体の為に女性が隠れて居るのに気づかすに。
また後ろに小柄とは言い固いが未だ若い漢も列を成す。
山にそびえる漢は一切の脚音を礼儀として全くも鳴らさず。
棺の蓋を閉めようとした妻の前で深く腰を折り一礼する。
流石にブレルの妻も怯えるが漢の隣で自国の民と思われる女性が軽く頭を下げたのと見ると
それが異国文化の違いであれど同じ意味を示す葬礼と知る。

「儂の名前は且来素子鏡蔵。遠く倭之御國帝国陸軍将校である。
参列されてる方々には御初に御目に掛かる。無礼を承知で推参させて頂き申した。
ブレル・アルフォズ・ジル殿にはその生前に一度お会いした。
僅かな時間ではあったがこちらの女性と楽しげに話しておった。
少々憎たらしげではあったが実に楽しそうな笑顔であった。
すまぬ・・・。御婦人殿。儂は助けられなかった・・・。すまぬ
責めてこうして死に姿を見送らせて頂きたくそう候」
山と姿を現した且来は男泣きに声を上げると深々と頭を下げ
胸元から倭の線香を取り出し近くの蝋燭から火を貰うと手を振り煙をたゆらし
波阿弥陀仏と念仏を唱え手をあわせて故人の死を悼み送る。
若い役人風情者もそれに習いエリーヌも自国のやり方で従兄弟を送る。
且来と二人は棺の蓋が閉められ埋葬されるまで遠目では有るが立ち会った。
途中若い係の漢が内縁の妻に歩み寄り彼女に分かる言葉で突然の来訪を謝罪し
封筒を手渡す。中を観た内縁の妻は受け取れないと首を振るが
自分達の國でには亡くなった者が死地へ向かう時に大きな川を渡る必要があり
その渡し船の駄賃と持たせる風習がある。それにお子さんも有りこれからの事もある。
救えなかった謝罪としてせねて成人なさるまでの資金の足しにして欲しい。
もし受け取ってくれなければ僕があの人に殴られ三途の川を渡る羽目に成るからと
でかい腹にピチピチのワイシャツのボタンを嵌める且来を指差し
終いには半泣きで妻に頭を下げ頼みこむ始末でもった。
聞けば異国の軍隊に身を置くと言う輩であるがブレンの葬式に参列したのは
三人ほどであるが全てが終わり帰りの車に乗り込む且来を囲んだのは15人程でもあった。
最後に深々と妻と子とブレンの墓に頭を下げ彼等は道に列となり消えて行く。

「貴方達。何者なの・・・?」
「先日申した通りである。倭之御國帝国陸軍将校。且来素子。Eカップである」
「同じく倭之御國欧州アルメルダ魔法連邦諜報準備課轟純壱郎です。
この人酷いんですよ。知り合いの故人の葬式に行くから香典を出せと
僕の机殴って壊すんです。お陰で僕は立って仕事してるんですよ?
部長に泣きついて色々予算確保しました」
「やったわ。私の金庫が膨らんだの。でも昨日の缶詰工場見学はいけなかったの。グスン」
「おい。坊主?今。諜報準備課と申したな。倭之御國の軍人が何故個の御国に根を生やしてる?
聞けば新婚であるらしいな。しかも可愛い奥方は個の國の御婦人だと?何を企んでいるのだ」
「準備だけです。下準備。準備は大事でしょ?いろいろと。僕のお嫁さん誘惑しないでくださいね」
「今日は缶詰工場よね?絶対行くわよ。私の金庫の変態小父様さん」
山羊髭の故人ブレルを見送った翌日にAlmelda409が朝食をカフェで取る且来たちを
覗いてみると前日までとは様子が違う。女装家のロゴが入るTシャツであるが又もや色違いを
着込む且来と毳毳しい棘のなくなった雰囲気とやわらかな服を着込むエリーヌ。
それに葬式で且来のサポートを無理矢理やらされた若い役人風情。
こちらは國の天気事情もあるからと背広姿ではないが襟付きのシャツを着込んでいる。
おまけにAlmelda409が操作する監視カメラに良く映るようにと席も移動してる。
前回に話せば雑音がまじり聞き取り難い部分が改善されているのは何か知らの調整が
されたのだろう。カメラでは見えないがエリーヌは耳にイヤフォンを嵌め
手首には新しくも若い女性が好みそうなブレスレットを括っているところかも
どうやら轟の気配りもあり且来達の会話も容易く成っているのだろう。

「パフェ食べて良い?パフェ。店員さ~ん。苺抹茶パフェ大盛りでぇ~~」
「儂はプリンが良い。此処のプリンは絶品なのだ。お替りを三つほど頼む」
「僕は。妻のお土産に鹿肉の熟成ハムのサンドイッチを。何せ新婚ですからね」
「ずるくない?ずるいわよね。何でそっちだけ美味しいもの食べてるの?
私だけ宅配ピザとエナジードリンクって何時もと同じだわ。
仕事しましょ?お・し・ご・と。ねっねっ」
「Almelda殿は引きこもりで姿を見せぬからな。正体も知らない方が儂らも都合が良い。
弊害もあるだろう。例えば美味い物が食べられないとかな。ぷぷw
さて。まずは犠牲となった者達に祈りを捧げよう。その後に坊主の話を聞こう」

crabbomberは立て続けにとクラブを爆破した。
凡そ二週間に一度と言う慣例と破り意表をついた形である。
前回よよりは小規模でな爆発であったし狙われクラブも今までとも少し違う。
それでも死者は出たし負傷者もそれなりに出ている。
且来が身を置く戦場とは違い身近に衛生兵が居るわけでもない。
爆弾テロが実際に起きてから連絡を聞きつけて救急隊が駆けつけるまでには
どうしても遅延が起こる。初動対応が遅れる事は諌めない。
結果助けられたかもしれない人びとが二度と家に変える事も出来なくなる。
「F.A.M.F.K.A(欧州アルメルダ魔法連邦犯罪捜査機関)の協力要請に応じて
編成された国際人道救援特別捜査班の者です。
現場視察に参上しました。この後缶詰工場の視察の予定が入ってるので
速やかなる協力をお願いします。ご面倒事がお好きなら彼処の人が御相手します。
あの人怖いですよ?すっごく怖いです。拳骨痛いのです」
二度目の爆発現場に突然と現れた奇妙な三人組の内若い漢が
出来たてほやほやと言わんばかりに輝く金色のバッチを翳し小さなBARの入り口に
佇む変な柄のTシャツを着込む漢を指で示す。
Tシャツの漢はにんまりと嘲笑うと車避けの金属棒を拾い上げグイと拳を固めて魅せる。
甲高い音が地面に堕ちると金属棒は漢の拳の形にそって見事に潰れている。
「じょ。情報共有はしてくれるのだろうか?F.A.M.F.K.Aが縄張りを荒らすのは有名だが
あんたの様な班は聞いたことがない。確認したい所ではあるが・・・」
「担当者を決めていただけば随時報告しますよ。
何ならそちらから人員を派遣して貰っても構いません。喜んで受け入れます。
但し缶詰工場と各所視察に付き合って貰うのが条件です。早くして貰って良いです?
そろそろ拳骨が落ちてきそうなので・・・」
Tシャツの漢がジリジリと脚を踏み鳴らし獲物を狙う熊の如くにこっちを睨む。
現場管轄の地元警察の担当官は納得は出来ずとも特別捜査官を名乗る漢に黙って道を譲る。

「無理をせずにもよいぞ。エリーヌ殿。貴殿には辛いだろう」
「好き好んで入りたくないわ。でも私にだって何かできるかも。どいてよ。あなた邪魔」
実際に身を持って体験した爆破テロから時間も立っていない。
身をすくむ思いと吐き気を抑えながらも二度目の現場にエリーヌは脚を踏みれる。
それなりの覚悟もあるのだろう。遠隔地にいるAlmelda409の為に轟が焦げ跡の
残る現場でビデオカメラを回す。且来は広くないBARの真ん中で腕を組み当たりを見渡す。
エリーヌは桃色のハンカチで口を覆いながらもしっかりとした足取りで当たりを歩き回る。
「おい?そこの形は良いが少しばかり尻の小さい捜査官殿。
云々。貴殿だ。銀縁眼鏡を赤い縁の物にすれば漢も喜ぶと思うのだが・・・
兎に角だ。状況を教えて暮れないだろうか?この街の事は未だ疎い」
褒められたのかセクハラ発言されたのか分からないが回りからシシルと呼ばれる女性操作官は
自分のコンプレックスの尻を手で抑えるも且来の側に寄って来て上司の確認を取ってから話出す。
「多分褒められたと受け取っておきますね。えっと・・・。
この辺にあるBARは小さい作りの物が多いんです。その・・・所謂同性愛者のたまり場と言うか・・・」
シシルは声を落して話出す。
アルメルダ魔法連邦では人種差別が堂々と憚らずも行われている。
当然差別を好み拳を上げる輩が居る反面。差別対象となる者達も堂々と声を上げる。
両者の対立と緊張は激しく時に街通りで片方が集会を行えば殆ど必ずと対立するグループが
現れ騒ぎになり暴徒と成り互いに殴り合い喧嘩騒ぎになる。
治安部隊が出動し鎮圧するまで騒ぎは続く。内乱の一歩手前と行っても過言ではない。
その主軸となっているのがアルメルダ騎士団を自称する過激な集団であり
彼等は自分意外の人種やコミニティを認めない。
差別の対象は勿論に特定遺伝子を持たない人種を始め同性愛者を始め国家宗教意外の神を信じる者や
過去の政府が打ち立てた移民政策の施行結果による移民や難民。
果は政治活動団体。兎に角自分達の主義主張を受け入れない者達全てと成る。
否然しとそれに堂々と牙を向くのがcrabbomberである。
かつてアルメルダ騎士団が街の広場で大規模な集会を開いた時に彼等を標的に
crabbomberは最初の爆弾テロとおこなった。集会が最高潮に盛り上がった時に
同時に三つの爆弾がシンクロして爆発し結果多くの騎士団員が絶命落命負傷と言う大惨事に成り
結果的に騎士団は大きな集会を避けるようになる。どうしても標的に成りやすいからだ。
それから先は中規模小規模の集まりが多くなりその分鬱憤を溜め込んだ騎士団員が
其の憂さ晴らしとばかりにクラブで又他の輩を差別排他の末に暴力事件と成る傾向にもある。

但し今回は違った。
前回且来達が偶然に酒を煽ったクラブに後からでも騎士団団員の若者が
徒党を組んで押し寄せ騒ぎ立てたが、今回は違う。
アルメルダ騎士団と対立はしているかも知れないが同性愛者のたまり場と言っても
比較的温厚な者達が集まる店であり誰かに喧嘩を売られもしないなら
大人しくそれぞれに今宵だけのパートナーを物色する客が屯する店である。
「ふむ。なるほど。言い換えればなんちゃら騎士団と言う輩と対立する程に
異性の良い男色好みの輩が集う店も他にあると言うのだな?
そうであれば爆弾魔は何故に個の店を選んだのだ?」
「それは・・・我々が目下全力を上げて捜査している最中であります」
事件現場に捜査官と言う仕事を営む自分等が居るのだから当たり前であるとシシルが眼鏡を指で押す。
「はい。どいて。どいて。そのおしりどけて。邪魔邪魔。次の予定詰まってるだから。
ほら。変態小父様さん。多分これよ。これ。私にも出来る事あったわ」
相変わらずも鼻と口をハンカチで抑えながらも店の奥の廊下を物色していたエリーヌが
細指の先に千切れた人の手首を摘んで持ち運んで来る。
且来と仲間の前のテーブルの上に黒く固まった人の手腕がドサリと置かれる。
「ちょっとこまります。証拠品はもうちょっと大事に扱って下さい。
それにしても未だ遺骸が残っていたなんて・・・でもこれがどうしたっていうんです?」
「私達は玄人なの。あんた等の目は節穴なの?給料泥棒って貴方の事を言うのよ。
よく観なさいよ。手首の裏側。ひっくり返して。それ。それよ。
アルメルダ騎士団の入れ墨はいってるわ。紋章の下の線が一本だから最近入団したのよ
下っ端って事よ。分かる?これが意味する所って?」
ハンカチで口を抑えるからエリーヌの声は籠もる。
「此の人も同性愛者だったって事ですか?騎士団に所属してるのに?
ちょっとありえなくないですか?騎士団幹部にバレたら暴殺の可能性だってありますよ?」
轟もやはり戦人なのだろう。慣れていて当たり前と言うように千切れた手首に寄せ
ビデオカメラのピントを合わせて呟く。
「それは単純であるな。元々の趣味趣向と性癖が男色好みと言う事だ。
あとからなんちゃら騎士団に入団したのだろう。男色を好む者が差別の対象とは
知らなかったのだろう。知った所で個人の性癖など安々と変わりはせぬ。」
「今度も又。アルメルダ騎士団を狙ったのよ。恐らく何人かいるのよ。
たった一人の為に爆弾を使ったわけじゃないのよ。騎士団の中にもそういう輩が居るのも知ってのよ」
「爆弾魔の奴は少なくても騎士団とやらのメンバーリストを持って居るに違いないな。
それも個人個人の趣味や動向までも把握してるとも見える。
何時何処に集まる。そこに何人集う。そして巻き添えになる輩もいる。手強いな。」
[手腕の持ち主がわかったわ。私がハッカーでよかったでしょ?
そっちのオバサンの携帯に詳細を送るわね。今出来る事はこれくらいだわ]
オバサン呼ばわりされたシシルの携帯がピコンと成り被害者の情報が届く。
「どうやって?こんなに早く?」シシルが唸る。
「僕らは玄人なんです。手腕の持ち主の指紋をカメラで撮影してサイドキックハッカーに送ったのです
あとは彼女がその辺の捜査機関のデーターベースをハッキングしたんでしょう。
何せ僕は可愛い新妻を持つ事務屋でしかありませんからその辺の責任は一切感知しません」
「誰がサイドキックよ。そももそも私が言わなければ観光三昧だった癖に」
「終わりよね?終わり。缶詰工場よ。試供品貰いまくるの。行くわよ。はげちゃびん変態」
「禿げてはおらん。これは剃って折るのだ。故に安全カミソリは必需品である」
地元警察が未だ遺骸の捜査を終わらぬと言うのに一定の成果を上げると
一風も又はそれ以上に変わった組わせの連中は現場を荒らしどたどたと帰っていく。

「ぐぇ~~~。どんだけ長いあいだ息をとめていればいいんですか?
あなた達は鼻に蓋が出来る異星人ですか?ぐはぁ無理無理。もう無理」
缶詰工場見学に無理矢理ついてきた捜査官シシルは工場建物の外で旨を抑える。
「軟弱だわ。執行機関の捜査官で税金泥棒の癖に我が祖国の至極の逸品。
世界に誇るそして世界一臭いシュールストレミング。
鰊の缶詰を嫌うなんて美食を誇る我が國人の恥だわ」
試食ところか且来にねだり紙袋三つ分ともなる缶詰を大事に抱えるエリーヌが毒づく。
「悪くないぞ。悪くない。倭の熱燗に良くあうであろうな。
軍嫁も晩酌の肴に喜びそうである。もっとも空輸出来ぬのが手間である。
「以前事故があったのですよ。誤ってこの缶詰を飛行機の機内で開けた客がいて
機長副機長が悶絶失神して墜落の危機に陥ったのですね。
御国に送るのなら船便しかありません。その分更に熟成されるので旨味がますかも知れません。
「ぐぇ・・・。無理。
貴方達何者なんですか?本当に宇宙人なのでは?
ええ。確かに先程の手首の持ち主は確認出来ました。同性愛者でもあり騎士団の団員でした。
それにしても団員のリストところか動向まで把握してるってどうやってるんでしょう。
ぐぇ~~。次回の視察とやらは食べ物意外を希望します。ついていけません。無理です。ぐぇ」
[ハッカーでよかったわ。映像だけも吐きそうだったもの・・・]
且来のブレスレットからこちらも又胃袋から逆流する胃液を我慢するAlmelda409の声が漏れる。

夜遅くも涼しい風が流れる郊外の動かないトレーラーハウスの前。
塗料が削れ色味が薄れたプラッシック性の椅子に座りセルグはビールをチビチビと飲む。
そこへジャリジャリと石砂利を潰し余り観たこともない軍用車らしき物が二台止まる。
聞いた事はないがその荷台ともかなり向こうでライトを消して此処まで来てるなら
赤外線でもつかって自動運転でもしてるのだろうか?何方にしても秘密にしたい事が有るのだろう。
二台とまった軍用車の内大きな漢と普通の背丈の漢が降りてくる。
やたらでかい漢が砂利を踏むと普通の漢が大胆にも手を示して制する。
こいつとは自分が話すからとでも言うように。
でかい男は黙って頷く。信頼関係は確かにあるのだろう。
「こんばんは。遅くに失礼します。互いに素性は知りたくないでしょう。
それでも貴方にはこれが必要でしょう?
酔いに任せて弔う友の思い出を語るには少々本数が足りないと思ったので」
「どうして?何を知っている?痩せっぽち野郎」
「椅子の後ろのバットは握らない方が良いですよ。後ろの御方の肩は丈夫すぎるんです」
言われてでかい漢の方をみればすることがないとばかりに手頃な石を見つけては
的も決めずに投げて遊んでる。確かにあの漢が石を投げれば必ず的に当たるだろう。
バットを握ればその的がセルグの頭になる。それから二年程に軍役についた事のあるセルグ
ライトをけした二代目の軍用車の中で狙撃手が潜んで居るのも気配でわかる。
此の連中は玄人であり若しもの用心を怠らない。見るからに異国人の肌となれば
何処から来て何故の目的で何を求めるかが掴めない。
「弟さんの件。痛ましい限りです。
アルメルダ騎士団はあまり評判が良くもありません。主義主張が異なるのは人の世の常です。
否然し。常に自分が正しく強いわけではありません。牙を向く狩人は常にいます」
「何が言いたい?」セルグは痩せっぽちの漢が差し出したビールの蓋を椅子の縁で弾いて
飛び出る泡を啜る。そのビールの銘柄は確かに弟の好みの物であった。
「crabbomberは先の一件ところか弟さんが通うBARまで知っていた。
恐らくは騎士団の名簿も握ってる。その団員の動きまでも。果たして貴方の上は知って居るのでしょうか?」
ぞっとした。背筋が凍る。偶然ではないと薄々思ってはいたが
あのテロリスト野郎は騎士団の内情もよく知った上で自分達を確実に狙っていると言うのだろうか?
「彼奴等は何も考えちゃいない。飲んで騒いで怒りのはけ口を他人にぶつけてるだけだ。
自分の利益しか考えちゃいない。総裁とやらだって表面が良いだけの坊ちゃまだ」
「なるほど。自分が兎と言う事に気がついてないのですか?では貴方は梟と言う処でしょうか?
それで何時彼に会えますか・・・?弟さんの弔い金です」
「潜れと言うのか?俺は紋章二本線の下っ端だぞ?・・・おい?この金額冗談だろ?」
「後ろのおじさんは体を動かすのが仕事ですが僕は計算が得意な事務員です。
きちんと三回チェックしてます。事が終われば國を出るでしょ?生活費は必要ですよ」
何処か態とらしくも口元を歪め痩せっぽちは石砂利を踏んで去っていく。
弐参度ばかり大きな漢と言葉を交わすとやはり時間がかかったのだろう。
手持ち無沙汰とばかりに痩せっぽちの頭に拳骨を落とすとこちらを見ずに車に潜り込む。
あのでかい漢が指揮官とは限らぬがそれでも十分怖い存在で有るとは知れる。
優しげで頼りないと見える痩せっぽちの漢でさえあれだけの金を動かすのだ。
彼奴等が何者であれ弟の敵は取れるかもしれないが同時に騎士団を裏切る事にも成るだろう。
セルグは何かに飲み込まれた気がして二本目のビールの蓋を椅子で弾く。

セルグは自分が何か大きな物の歯車に成ったかもしれないと思ったのは翌朝である。
いつもは絶対に深夢を貪る朝も早くにトレーラーハウスの扉をバンバンと誰が叩く。
煩い煩いとふらつく脚で扉を開けると黒肌の小太りの漢が指を拳銃に見立ててセルグを弾く
「ちゃんとしろってボスが言ってるぞ。僕に殺されるようじゃ使えないってさ。
ぷぷぅ。そのトランクス駄載っ。駄載っ。時代はビキニかTバックだって。
弛んだお腹もなんとかしなよ。小父様さん。しかもヒヨコちゃん柄ってもっと駄載。
ほれ。連絡用の携帯と高級ジムの会員ID。経費用のクレジットカードと現金。
無駄使いするなよ。明細票はちゃんと纏めておけよ。今日の指示書は携帯をチェックだな
受け取りのサインは此処と此処。字も汚っ。ほんとこいつで大丈夫なのかよ。
又来るから。車変え車。いつまでも従兄弟に甘えてるじゃないよ」
ドアの前で膠着するセルグの脇腹を突くと小太りの配達員はとことこと歩く

何だ彼奴と思うと自分は負けたと思い知らされる。
トレーラーハウスの前には一台のサイドバイクが止まり横の座席には
小太りの配達員が苦労して腹を詰め込む。運転するのは女性であるが絶世の美女であり
レザースーツに身を包み一度だけセルグをするとつまらなそうに一瞥すると
サイドカーに腹を納めた小太りの太っちょに投げキッスを投げ微笑むをアクセルを目一杯開け
爆音を鳴らす。太っちょが意味有りげにひらひらと手を振るとくるりと回って中指を立てる。
あとは爆音と土煙を上げてサイドバイクが唸りを上げて走っていく。
あんなに美人な女があんな小太り野郎に惚れてる理由がわからない。
それでも羨ましく自分が情けなくなるも取り合えず渡された携帯の電源を入れてみる。
「遅い遅い遅すぎるって。此のいれかれおぽんちの唐変木。
朝ミーティング終わちゃったじゃん。クレープよ。杏苺のクレープ。
彼奴等何時もうまいもの食べてるの。太っちゃうわとか言ってお替りするのよ。
画面のこっちでブリトー噛るしか無いの私。可愛そうよね。ハッカー何か辞めたいわ。
今日の指示は送ったからね。弟さんの敵とりたいならちゃんとしな。
上手く潜らないとボスが怒るわよ。あの拳骨は岩も砕くんだって。
御前の頭も砕かれるよ。あと見張ってるからね。梟のお兄さん」
それだけ言うと電話の相手は勝手に黙る。察するに朝ミーティングで誰かが食べる
デザートに相当な恨みが有るらしい。
梟と勝手に呼ばれるのは良いとしても自分は電話の応答ボタンを押してない。
それなのに相手が勝手に怒鳴り始めるとはどういう事だろう?
此の女性はハッカーと言ってたのなら仲間内であるはずでもその携帯をハッキングしたとでも
言うのだろうか?一応通話履歴を覗いても記録など有るはずもない。
セルグはアルメリダ騎士団に身を起きながらもそこに侵入する駒として何か得体の知れない
連中の胃袋に飲み込まれた気がしてならかった。

文句ばかりも言ってもいられない。
勝手に話して勝手に黙った携帯にはその日にこなさなけばならない指示がズラリと並ぶ。
まずは運動であるがこれも色々大変である。先ずは従兄弟にビールを奢るからと口説き
地下鉄の駅まで送って貰うと二本乗り継ぎちょっとした高級スポーツジムに辿り着く。
すでに会員IDは持っているからすんなり入れるのは良いが自分の頭が追いつかない。
兵役時代以来まともな運動はしてないから体を動かすのが辛く感じる。
ランニングマシンの操作もなれずもたつく自分が情けない。
なんとかそこで弐時間が頑張りヘトヘトの脚に鞭撃って地下鉄を参本乗り継ぎ歓楽街へ。
そこでもやはり指定されたタトゥーショップに脚を踏みれる。
「お題は貰ってる。図柄も決まってる。入れる場所は左腕だね。今日は。明日はお尻だ。ぷぷ
それから古いやり方でやれって指示だからさ。痛いよ。かなり。んじゃ。座っておくれ」
それは弟を騎士団に無理に誘いそして死なせた贖罪であろう。
今時の入れ隅はプリントと呼ばれる方法が一般的であるが太ったオバサンの入れ墨氏は
肌に針をさしインクを流し込む昔乍らの方法を取る。痛いのは確かで有るがセルグは耐える
どうやってcrabbomberが彼等の居場所を掴んでいるかは知らないが
自分がその情報を手に入れるには幹部へと登らないと駄目だろう。
紋章二本の下っ端では到底無理だし後一本どうしても線がいる。
其のためには騎士団への貢献と強い意志を示す必要がある。
今までは左手首の裏側にしか入れてなかった入れ墨を左腕に大きく入れる。
自分はアルメルダ騎士団に忠誠を誓うと回りに宣言する入れ墨のデザインである。

結構大きな入れ隅をいれたばかりとなると体力的にも消耗する。
それでもやっと昼食を取れるとなるとなりほっと一息つくと
携帯にメールが流れてくる。此処最近のcrabbomberが起こした事件の詳細だ。
セルグ自身も騎士団に身を起きながらも弟が犠牲となるまで気にしてなかった。
自分と其の回りは大丈夫で有ると高を括って居た方が楽で簡単だからだ。
メールに添付された内容を頭に叩き込んで行く内に犠牲に成った弟と自分が
騎士団の傘と権力に呑まれ何をして来たかと言う現実を叩きつけらえる。
自分達が鬱憤を溜め込み吐き出すためにクラブに屯し声を上げ他の誰かを攻撃すれば
そこにcrabbomberが現れ全部纏めて爆殺してしまう。
自分達の主張や思想の全てを今直ぐ捨てる事は難しくても自分と仲間はその場所に行かず
徒党を組まず屯しなければ罪のない人々は家に帰れたのだ。
間接的であろうと無かろうと自分達は人を迫害してるばかりか人を殺してる事に変わりはない。
自分の弟を殺したの自分で有ると現実を突きつけられた。

昨日までの不摂生の生活と精神的な負担に憔悴を余儀なくされるが
その日最後の指示に従い今度ばかりはタクシーを使って自宅のトレーラーとは
真逆のガンシューティングセンターに気分的は張って実際には腰をさすりながら辿り着く。
そこでとても若く色気ムンムンの女性定員と向かい会い。
「今日の私はEカップ・・・ナイトブラの色は勿論むらさき♪」
指示書通りに合言葉の語尾を上げて告げると彼女は嫌らしくもスンと鼻を鳴らし
指を曲げて付いてこいとまるい尻を突き出して事務所の奥へと誘う。
合言葉の意味が特別あったかどうかは別として。多分ボスのジョークだろうが。
事務所の奥の階段を降りるとガンショップの中にガンウェアハウスが詰まってる光景にぶち当たる。
「お探しの商人は何でございます?ミスター・梟。」
きっぱりと汚れも糸くずもない背広姿に髭の漢が白い手袋を嵌めてカウンターの向こうで待っている。
「取り回しの良い12ミリの拳銃と・・・ポンプ・・・」
「ポンプアプションのシングルショットガン。グレックの12ミリとは粋ですな。
予備の物は小型のリボルバー。ホルダー腰後ろの奴と脚首の物。
手榴弾は常に弐個をお持ちですね。ナイフは黒色に刃を染めたカーボン製。
中々と悪趣味ですな。ミスター・梟。全てこちらに御座います。
弾はふんだんにありあますから少し感を取り戻したほうが宜しいかと」
セルグが兵役時代に好んだ銃機器一揃えを白手袋の漢は用意する。
それぞれを手にして確認しながらセルグは悪戯に口に出してみる。
「若し俺のボスとあんたのボスが同じだとして・・・・。
アルメルダ騎士団が本気で挑んだら勝てると思うか?」
白手袋の漢は意外だと言う思いに囚われ目を丸くして答える
「あの御方の御國は大陸の各所の國と連合を相手に今日も戦を行っております。
それでいて尚に我が連邦が連合国に武器を流していると言うだけで
既に此の國に諜報員を根付かせているのですよ?烏合の衆の相手など本気ですると思いますか?
彼等が本気に成ったら騎士団ところか國が業火の渦に巻き込まれるに違いありません。
あの國の戦法は容赦がありません。今日未だ私の首が繋がっているのは運が良いだけです」
「なるほど・・・。明日は我が身か・・・」
そう言うとセルグはシューティングルームに籠もり2時間程昔の感を取り戻すべく引き金を絞る。

やっとの事で。本当のやっとの事で自宅のトレーラーハウスにたどり着き
冷めたブリトーをビールで胃袋に落とし込むと自分の携帯を取り上げてボタンを圧す。
ハッカーに言われたわけでもないし指示書にもない。
それでも自分でこれはするべきであると考え騎士団の班長に連絡を入れる。
自分が如何に正しく騎士団に忠実で有るかを熱熱と語り唾を飛ばす。
その半面やんわりと小児愛好者でもあると匂わせてもおく。
其れが正しい事ではなくても階段を登るには必要な事であった。

時間はあまりない。次に何時爆弾テロがあるかなんて分からない。
以前は弐週間に一度位であったはずだが確かにそれもわからなくなった。
短い準備期間で慌ただしくも形を作るとセルグは騎士団の活動に没頭する。
出来るだけ多くの集会に顔を出すようになったかがハッカーAlmelda409が
口を酸っぱくして小さい物だけを選ぶ。小さいと言ってもそれなりの人数が集まり
一人若しくは二人の幹部が必ず顔を出す。
彼等の前で「ジーク・アルデニュンタ」と鍔を飛ばし忠誠の証を何度も吐き出し
如何に自分が騎士団への忠誠心を持っているかを示し
その後は数人の仲間とBARやパブを巡る。
セルグは騎士団が定めた差別の対象を見つけると真っ先に声を上げて喧嘩を売る。
顔を真っ赤にして腹から声をだし俺達の縄張りから出て行けと脅す。
そうする事で彼等が騎士団をも見つけても遠ざかってくれれば
crabbomberの被害にあう確率は低くなる。
例え自分が目立ちすぎて警察当局に目を付けられても評判が悪くなっても止めなかった。
それでも元々ゼルグは自分で選んで騎士団に入ってる。
その思想・主義・構想原理・差別思想。其れが気に言って正しいとも傾倒していたのだ。
以前はそこまで出なくても幹部の前でジーク・アルデニュンタと連呼し
パブで差別侮蔑を繰り返し叫んで居ると其れが当たり前の様に思えてくる。
其れが正しい事だと。セルグは泥沼にはまっていく。

昨夜もその前の夜も集会に参加し鍔を飛ばし忠誠を示しパブで数名のゲイらしき連中を追いかけて
喧嘩を売って一晩を過ごした。彼奴等の逃げ惑う顔が面白くてしかたない。
ドッドッドッドッとトレーラーハウスの外で煩くバイクの音が成る。
又、黒肌の小太りの野郎がやって来たのかととりあえず扉を開ける。
以前は舐めた真似をしやがって。今の自分なら勝てると思って体を揺らして外に出る。
確かにそこにはあの小太り野郎が美人が運転するサイドバイクにいたが
隣にもう一台。然し二回り程大きなサイドバイクがエンジンを響かせる。
バイクに跨る女はゴーグルで半分顔を隠しているがレザースーツが覆う体の曲線は
目を瞠るものがある。今の自分なら口説き落とせるかも知れない。
否然し。のそりのそりとバイクの助手席から尻を出した漢が近づいてくると悪寒が奔る。
黒肌の小太り野郎が声も出さず大げさに口をパクパクさせてボスであると教えててくれる。

「おい。大丈夫か?大分疲れて居るのではないか?酷い顔だぞ。
暴れるのは良いが取り込まれるのは良くないぞ?
戦を思い出せ。戦争を。今の御前は半日も持たぬぞ。」
ゆっくりとした口調はセルグを心配している同時に警告でもある。
「いや。俺は大丈夫です。ちゃんと出来てます」自身なさげにやっと声を絞り出す。
「そういうやつほど真っ先に死んで行くんだぞ?
御前だって良く知ってるだろ?小童如きの遊びに傾倒してどうする?
所詮それだけの漢だったのかと弟殿に嘲笑われるぞ。兄の癖に敵一つ打ってくれないのかとな」
「うぐ・・・」全身の力がぐらりと抜ける。
「遅くなった・・・。色々あってな。
別に陣中見舞に来たわけではないのだ。弟殿に会わせてやる」
その日初めてあった自分のボスは優しくはないが礼儀を知る人物らしい。
山の様な体をよけて頷くとあの小太りの漢が寄ってきて余り大きくもない箱を渡してくる。
「弟殿の遺骸だ。これしか拾ってやれなかった・・・。
儂の相方が運良く見つけてな。命は拾ったが彼奴の被害者で在る。
ちゃんと弔ってやれ。忘れるな。御前は戦場に居る」
それだけ言うと変な柄のTシャツを来たボスはのそりのそりとバイクに向かって歩き去る。
「サインくれ。サイン。荷物は荷物だからな。
本当にちゃんと弔ってくれよ。俺もやられたんだ・・・彼奴によ。
今はあんたが要なんだ。しっかりしてくれよ。
それからこれやるよ。割引券。ストリップハウスの。ちょっと抜いて来いってよ。
字汚なっ。練習しろよ。本当に手間が掛かる奴だ」
黒肌の小太りの漢はひらひらと手を振りわざとらしく拳を丸めて中指を立てる。
その手には指が参本しか無い事に今更ながら気がつく。
ドッドッドッドッと又大きな音を立てて二台のバイクが猛々と土煙を上げて消えていく。
思ったよりは重いが大きくもない弟の遺骸の入った箱を抱きしめセルグは泣いて崩れ堕ちる。

黒肌の小太りが気を使ってくれた割引券をセルグは結局使わなかった。
その代わりシューティングスクエアに脚を運び銃を打ちまくって発散する。
弟の手首がは入った箱は軍用であり暫くの間は腐らずに冷凍保管出来るとも知る。
数日の間休息を取った後に高級スポーツジムに顔出し体調を整えようとしてると声がかかる。
「探していたのよ。貴方を。かなり熱心で威勢の良い団員がいるって聞いたから」
滑から四肢で隣のランニングマシンを奔る女性の顔は良く知っていた。
「俺に何か用ですか?Mis.ポリヌソワレ」ランニングしながら慎重に名前を呼んで見る。
「礼儀正しいのね。私が結婚してるって言うのは公にしてないのに」
「正確さが俺の売りなんです。騎士団に貢献出来る噺も持っています」
「あら?随分と勿体つけるのね。私には教えてくれるわよね?」
「取っておきなんですよ?初対面なんですよ。こっちにも理がないと」
「そこまでの物ならとっくに私が知ってるのではなくって?もう良いわ・・・」
自分より格下の団員に焦らされてるのを嫌うのだろう。マシンのスピードを細い指で落とす
「crabbomberの人相・・・」セルグは真っ直ぐに窓の外を観てぼそりと呟く。
「なんですって?貴方そんな物どこで・・・」明らかに狼狽しポリヌソワレが睨み返してくる。
「俺は正確さを売りにしてるですよ・・・」窓の外から視線をポリヌソワレに移してにやりと嘲笑う。

黒肌小太りの彼奴がくれてよこした割引券を使わなくてよかったとセルグは思う。
参回目のデートで互いの相性を確かめると言う通説をポリヌソワレは一回省く。
それまでしてセルグの情報を欲しがっているのは明白であるが
夫が居るはずなのに露骨にセルグを脚を開いて強引に誘う。
それだけならまだしも強欲でもあり貪欲にセルグの体をポリヌソワレは貪る。
下手に割引券なんて使ってたら体力が持たなかっただろう。
それでなくも高級ホテルに籠もって丸二日も精を絞り取られるとは思いもしなかった。

「あの馬鹿がいい加減に口走ったお陰で私がどんだけ苦労したと思ってるのよ。
顔写真を合成するのは難しくないのよ。但し。但しよ?
個性的で独創的でありながらも何処にでもいそうな顔つきで
絶対に誰でもない顔を作れってどういう事よ?どんだけ私が苦労したと・・・」
「よくできてるんじゃないかしら?流石コンピュータの達人ね。
確かに直ぐ見つけられそうな鷲鼻だけど・・・」
「否。鼻は目立ちますけど。全体的な印象がぼやけてますよね?
なんか本当に何処にでもいそうな顔出ですけど。モデルってあるですか此の顔の」
「儂だ。儂の顔だ・・・」何処か不機嫌そうな且来が憮然と漏らす
「ええっ?えええええ・・・オタンコナスの顔がこうなったの?美男子よ?美男子」
「えっと。何処をどう弄ったら且来准尉の顔がこんな美男子になるですか?説明を求めます」
「そうでしょ。そうでしょ。私も苦労したの。すっごく苦労したの。褒めて褒めて」
「でもさ。これってすごいわよ。騎士団の連中が一生懸命この写真の漢を探しても
現実にはいないんでしょ?まかり間違ってどっかのハッカーが復元したら
このおでぶさんの顔ってでしたって言うのは余りに悲惨だわ」
「貴殿らは儂の顔に文句を言うのか?これでももてるんだぞ?嫁だって二人いるんだぞ?」
「変態なの。変態。あの変態の味を知ったら女は忘れらないわ。顔は弐の次」
自分だって毎夜且来に跨る癖に顔は弐に次だと言い張るエリーヌを呆れて且来が睨む。

天鼠蛭姫

天鼠蛭姫

テキストのコピーはできません。