【女装男児】女装家且来素子闊歩歩いて候:其の拾之参
コツコツと警察病院の廊下を元アルメルダ騎士団会計秘書役ポリヌソワレが歩いてくる。
この國は湿気と熱い気温が常と成るに関わらず顔と手て意外は衣服と言う布で覆う。
いくらかは通気性を考慮してあるとは言え外を歩くと成れば手袋と帽子をも欠かさない。
騎士団に所属して居た頃は若い総裁の舐める様な視線を避けたいが為の服装で合ったが
今は仕える主人の言いつけて常にその姿衣装と決められている。
当然の如くポリヌソワレは総裁と同じ日に逮捕され特別捜査課から
此の國の捜査執行機関に身柄を譲渡された。
そこで数日間の取り調べを受けた時に司法取引を持ちかけられる。
騎士団の関係事項の供述と書類の提出。それとcrabbomberの捜査逮捕に協力すれば
変わりに罪を減刑すると言う物で合ったが、ポリヌソワレはその内容の変更を強く求める。
其れが且来の側に置いて欲しいと言う物である。
どういう事かと問われても自分がそうしたいからだとしか答えず。
其れが許されないなら取引には応じもしなかれば完全黙秘すると宣言し
其れ以降一切口を開こうとはしなかった。
流石に騎士団の影の運営者とも言われたポリヌソワレから情報を引き出せないと成れば
面目が潰れると担当官は且来に連絡をいれて話し合いをし
当人が何を求めているかと確認が行われた後に足首に電子枷を嵌め24時間の監視付きであれば
条件をすり合わせた後ポリヌソワレは且来預かりとなる。
且来の前に姿を現したポリヌソワレは羨望の眼差しを向け膝降り屈むと
その手に唇を押し付け心と体を捧げ忠誠を誓う。
且来自身は良く解らずともポリヌソワレが最初にその姿を観た時に
天啓にもにた衝撃を受け一目ぼれしていた。
主人として飼い主として恋人として夫として。
ある意味随分と身勝手ではあろうがポリヌソワレは頑固な女でそれを曲げようとしない。
その代わり行き過ぎるほどの忠誠心を且来に捧げ全ての事を且来に委ねる。
妻として奴隷として女として。それはどの行為一つとして揺るぎない物であった。
「本日は皆様に重要な案件をお知らせ致します」
何時になく爽やかにいつも通りせくセクシーにそれでいて随分と厳しい口調で
F.A.M.F.K.A.I.H.R.S.I.Dのマイケル・ソワーヌ・ビレヌ捜査官は画面ので頭を下げる。
少し腰だかなデザイン重視のデスクの上に読み上げるべき原稿と清涼飲料のボトルが置かれている。
あれだけ人気が有るマイケルを企業が頬って置くはずなどまったくなくもあり。
置いてある清涼飲料のCMにも当然マイケルは出ている。
「世間を騒がせているcrabbomberの容姿の情報を前回より精査した物を公開致します。
現在捜査中でも有るために全ての情報を公開する事は差し控えます。
又、解説者としてF.A.M.F.K.A(欧州アルメルダ魔法連邦犯罪捜査機関)から
トモム・ミリン特別捜査官に来ていただいております。
それでは先ず映像をご覧に入れます」神妙な顔でマイケルが合図を送る。
続く画面が切り替わると何処かのファーストフードの店の少し反対側に有る
監視カメラの映像である。幸いな事にJ.Jに取っては不幸な事に店に入る人物の容姿が判別出来る。
数名の客が日常の風景として食事を楽しもうと店に次々と入っていく。
特にそれは何処に有る物であるがある青年がハンバーガーの袋を持って出てくると
ワイプ画面での中でマイケルがその青年を指で指す。
青年は今時の髪型とスタイルで少しうつむき加減で歩くも横断歩道を此方側に歩いて来た所で
顔を上げはっきりとカメラに素顔を向ける。その後は横に体を回し横側の方へ歩いて消える。
「どうでしょう。一度最初から通して観て貰いました。
今度は早送りで顔を確認出来る位置まで勧めて観てみますね。御願いします」
神妙な顔つきで合図をすればパラパラと画面が動き先程の所でピタリと止まる。
止まった画像に再度調整が掛かりマイケルが犯人とした青年の上半身がアップに成り
更にフォルターが掛かるとより鮮明に顔が写し出される。
それは一部を覗いて確かにcrabbomber・J.Jの顔で有る。
J.Jが鏡を覗き込んでじまじと自分の顔を見ると確かに公開された画像とすごく似ても居る。
「どうですか?トモム・ミリン捜査官。
何を根拠にこの画像の人物がcrabbomberと断定にいたったのでしょう?」
爽やかさとセクシーさの中に甘い韻を踏んだ声でマイケルが促す」
「はい。此の人物は過去の爆破事件の現場の監視カメラに写っていた物と
目撃証言を組みわせ試行錯誤を重ねた者です。過去の事件現場を再考し見直し
精査した結果です。それを元に構築したデータを組み上げその後は
捜査員の地味な努力でやっとの事で特定した人物でありますが
彼を又こうして映像に取られる事が出来たのは幸運とも言えるでしょう」
「捜査員の方々の努力の賜と言えるでしょう。
それでもまだ気になります。現在F.A.M.F.K.Aは彼の詳細を掴んで居るのでしょうか?」
「其れが・・・。残念ながら此のcrabbomberと思われる人物の詳細。
つまりは指名なり住所までは掴んでおりません。ある意味非常に幸運に彼の姿を
カメラに納める事が出来ましたがそれだけなのです。
ですからこうして画層を公開する事でさらなる情報をご提供頂きたいと考えています」
「なるほど。過去の目撃情報を精査し制作した物に対して膨大な監視カメラの映像から
マッチする人物を探し出したと言う事ですね。捜査員の方々の努力に感謝します
なお。此の画像に映る人物に対する情報はF.A.M.F.K.Aのサイトのアドレスまで
ご連絡下さい。よろしく御願いします。ではCMです」
これまで重くるしい雰囲気に包まれていたがマイケルがにこりと微笑むとそれも溶ける。
動画であるはずなのにマイケルが出演する南の島でほどよく鍛えられた半身を
晒し清涼飲料を飲み干すCMが流れ皆がそれを食い入る様にずっと見つめる。
J.Jがその動画の存在を知ったのはある用事を処理した帰りであった。
マイケルのチャンネルをフォローしてあったから通知が来ていたが
鞄の奥底にしまい込んでいたから気づくのが遅れる。
慌てて塒にもどりPCのキーを叩いて食い入る様に覗き込む。
公開された画像はJ.Jが鏡を覗き込んでじまじと自分の顔を見ると確かに公開された画像とすごく似ても居る。
爆破テロと行って入れてば現場に脚を踏み入れないと成らないからカメラには映るだろう。
どこかの誰かが自分の姿を覚えている事も有るかもしれない。それが積み重ねていくと
鮮明な犯人像が浮かび上がるのだろう。J.Jは捜査当局の執念に感心する。
確かに毎週日曜の午後。海岸近くのあのモールの店で昼食を買って海風に当たりながら
一週間に自分がやった仕事や生活の点数を計算して弾き出すのが週間になって居る。
積み重ねた捜査のデータと顔認識ソフトを使い膨大な街のカメラから偶然であろうとも
自分の姿を捉えたのであれば称賛に値するのかもしれない。
それでもJ.Jは彼等より先に行く。
一度は容姿を変えたのだからもう一度変えるだけである。
好評された画像を参考にその反対の感じにスタイルを又変える。
伸ばした髭をバッサリと剃り上げ髪の毛は染め直し目にカラーコンタクトを入れ
縁の太い伊達眼鏡を掛ける。衣服のスタイルも今度は誰にも相談せずに自分で通販で揃える。
外出する時は必ず確認し自分で決めたスタイルに統一してから出かけるように気を付けていく。
犯罪者として生きるJ.Jも少しは人心が有るのかもしれない。
J.J自身それを実行するべきかどうかを悩みそれなりの時間を使ってしまう。
エリーヌの携帯を壊してしまった事が随分と気になった。
自分が行おうとしている爆破テロの標的である。
しかも携帯のクローンを作ろうとした矢先に驚かせてしまい
運悪く携帯をエリーヌが携帯を落して割ってしまった。
事故であると言うのは簡単であるがそれが余計に気になった。
自分のせいで有るのは変わりないし女性があんなに取り乱して泣いた姿は
初めて満たし素直ん罪悪感を感じて止まらない。
結果エリーヌが言い捨てた用事が有るなら事務所を通せと言う言葉を思い出し。
彼女宛に新品の携帯電話を送る事にする。
きちんと謝罪の手紙を添えると一緒にそこは犯罪者の性だろう。
初めからクローンアプリをインストールしておき彼女が電源を入れれば
GPSを始め全ての情報がJ.Jの携帯に届く。
この辺は犯罪者としての悪い癖だろう。
小さな善意より大きな悪意が何時も心の中に巣を作る。
エリーヌはその言葉通りに事務所を持っていた。
芸能プロダクションとかではなく純粋に騎士団員を支える支援団体の物であり
何方かと言うと個人事務所である。
送った携帯をエリーヌが使ってくれるとは限らないとは思って致し
其の可能性は少ないとJ.Jは思ったがこれも運が良く回る。
思ったより早く携帯の電源が入り誰かがその携帯を使う。
実際に携帯電話として通話は行われないし時々しか電源が入らない
それでもエリーヌのアパートの位置に携帯が持ち込まれる事をGPSが教えてくれる。
J.Jが携帯を送る前にすでに自分で携帯を購入したのだろう。
それでも有り難いのはエリーヌは自身のスケジュールをこの携帯に打ち込んでくれる事だ。
お陰で彼女の行動を正確に把握出来る。メモ代わりの小さい文章からもエリーヌの様子が見て取れた。
彼女の行動と様子がわかると計画が立てやすい。
正確ではないし完全に自分の素性がばれているわけでもない。
そうであれば既に執行機関が塒に突入してくるはずだ。つまり自分は未だ捕まっていない。
そしてもうすぐにエリーヌの講演会の日が近づいてくる。急いで準備する必要も有る。
比較的大きな多目的ホール。
恐らく300人くらいは入れるコンサートホールでエリーヌは公演を行う予定である。
J.Jは何度か下見を繰り返す。あれこれと爆破の計画をも夢想する。
大きく爆破してエリーヌと一緒に派手に観客をも一緒に吹き飛ばしてやるのが理想である。
それがもっとも世間に自分の名を知らしめる方法でもある。
彼の郵便物の悪魔でも200人をやっと超えるかどうかの犠牲者を出したに過ぎない。
それを超える事が出来れば自分が此の國一番の爆弾魔に成れる。
何度も頭の中で夢想し実際にPCでシュミレーションも組み立てる。
其れが一番であると思ったが実際に爆弾を組み立て設置すると成ると無理が有ると分かる。
300人以上を爆破するにはそれなりに大きな爆弾を制作し其れを会場に設置するには
時間と人手が足りなかった。正しい場所に設置すれば爆破シュミレーションがその成果を
保証するがエリーヌと観客を同時に爆殺するにはやはり無理があると結論付ける。
やはりエリーヌ本人がステージ上で公演する最中に爆死するのがいいだろう。
魔女エリーヌがその声で優しげに話し出した時に爆死する。
自分も其の観客席に座りその姿を観てやるのも良い。
スケジュールがわかっているから時限式でも問題ないしリモコン式の物にして
エリーヌが公演を始め最高潮に達した時に自分でスイッチを圧しても良い。
ひと一人を爆殺する威力の爆弾は一式すでに組み上げてある。
それなら後は事前にホールに忍び込んで仕掛けるだけで良い。
簡単に実行出来るが魔女エリーヌ・アルデニュンタがステージの上で爆死すると成れば
見物であるし皆が恐怖に慄くだろう。
J.Jはほくそ笑み口元を歪める。
多目的ホールに爆弾を仕掛けるのは頭の中で考えるよりも簡単であった。
この手の公共施設はその設計図を始め多くの情報が公開されている。
J.Jがほしい情報は直ぐにネットで手に入る。
最初に思いついた計画を少し変更し爆弾の性能を上げる。万が一の為だ。
エリーヌが公演を行う二日目にホールに脚を運び爆弾を抱え堂々と中央入口から入っていく。
公演のある日時は確かに持ち物検査があるがそれもお座なりだ。
J.Jはそれをもちゃんと避け警備員と目があっても咎めれる事も無く施設の中に入る。
その後は事前に調べたルートを通り幾つかの扉を開けて地下へと潜り込む。
地下と言っても管理施設とかではなく単純にステージの下である。
此のステージは多様な形に自在に形を変える。其の為にステージの下に空間がある。
其の場所にも特に咎められずに辿り着くとJ.Jはその天井に自分の作品の爆弾を設置する。
この部屋では天井と成るが実際には此の上にエリーヌが立つ。
J.Jはその姿を思い浮かべ興奮が止まらず伸ばす腕が震える。
抑えられない衝動の中で手をうごかし時限式のスイッチを入れる。
リモコンも用意して有るがそれは飽く迄も呼びだ。
好みとして自分のスタイルとして時限式の爆発をJ.Jは好む。
セットした爆弾をいれたリュックの蓋をきちんとしめ態とウィンクと投げキッスを投げてから
その部屋を出る。誰も観てないのに一人で悦に浸り馬鹿な子供みたいな事をしたのはやり過ぎだろうか。
次の人公演がある当日までJ.Jはエリーヌの事を調べまくる。
ネットを徘徊しては彼女の画像と動画をPCに保存して観まくる。
数は少なくてもTVのインタビュー番組を見つけては録画して見直し
きっと有るだろうと思い探し出したエリーヌのフェイクヌードや動画を観ては
自分が殺す女が漢に犯されてる動画をみてエリーヌを犯すのが自分で有ると
勝手に夢想しては自慰を何度も繰り返しては白濁を吐き出し悦に浸る。
自分でもその時間は自分のスタイルのレールを外しまくったと
公演当日の朝に反省する。以前は一つ一つの自分の生活態度に点数を付け
常に自分を見直していたがいつの間にか魔女エリーヌに囚われ吸い込まれ
自分を見失っていたかもしれないと冷たいシャワーを浴びながら自分自身に唾を吐き捨てた。
それでも既に爆弾はセットしてあるし時間がくれば容赦無く爆発する。
其の規模はあまり大きくはないが地下の天井を打ち抜きステージに立つエリーヌを
爆殺するには十分すぎる威力である。
事前に公演チケットも購入してあるし自分が座る席の番号も確認してある。
少し早い時間でもあるが出かける前に確認する事はリモコンを持つ事と
エリーヌにおくったクローン携帯を持ちだず事である。
思いも掛けずエリーヌに送った携帯は数日前から動き出した。
通話こそないものの入力されるスケジュールの数が多くなりメモも増える。
持ち出され移動するようになり恐らくはエリーヌ本人か若しくは付き人が
この携帯を持ち歩いているのだろう。これでエリーヌがホールにいるかどうかも確認出来る。
紆余曲折はあった。ある程度は國の執行機関もcrabbomberの正体に近づいてもいるだろう。
それでも後数時間もすれば魔女エリーヌ・アルデニュンタは火あぶりの変わりに
爆弾の餌食と成って頭と四肢を血飛沫を上げ死んでいく。
同時に魔女エリーヌ・アルデニュンタを吹き飛ばした爆弾魔としてJ.Jの名前は世に知り渡るだろう。
世間の悲鳴と彼女を惜しむ声とcrabbomberへの憎しみと罵声はJ.Jにとっての称賛と誉である。
何度か下見した通りに地下鉄とバスを乗り継ぎ公演が行われる多目的ホールに到着する。
J.Jはエリーヌに関わるようになって暫く自分のスタイルを崩した事も有るが
今日その時は以前の自分を取り戻しcrabbomberとしての本領を取り戻し
極めて冷静で残忍な爆弾魔としての顔を取り戻す。
公演が行わなわれる時間であれば片通りの検査を受けて鞄の中を開ける。
平凡でどこにでもいる青年を演じれば大した物は入って居ない。
爆弾を破裂させるリモコンはジェケットの内ポケットに納めて有るし
フェイクのペンも隣に忍ばされてる。勿論そこまで確認される事もない。
公演が始まるには少し時間もあったと思い売店でドリンクを買う。
思いの外その量も多かったし何となくも落ち着かなかったので余裕があるとしても
ホールの中で落ち着こうと該当ホールへと脚を運ぶ。
「飲食物は持ち込めませんので。飲んでからか流してからにしてください」
「あっ。すいません。飲んじゃいます」
それはそうだと思いJ.Jを止めた女性警備員に愛想を振りまき残りを呑み込み
空のボトルを脇のゴミ箱にすてると初めて彼女が手を下げて通してくれる。
大した事ではないがちょっとした失敗に自分を笑い頭を掻きながら
一応にとポケットから公演チケットを取り出し番号を確認する。
それでもまだ時間には早いのかまだパラパラとしか入場者は入ってもいない。
最終確認のつもりでエリーヌのクローン携帯を歩きながら取り出しGPSで確認すると
確かにその携帯が比較的近い位置に反応を示す。
J.Jは満足して携帯に頷き自分の席がある列を見つける。
「御免なさい。其の奥なので」丁寧にカップルに頭をさげ隙間を作って貰い脚を勧めて
自分の席へと進む。結構それが奥だったので更に二人の客に頭を下げやっと
自分が座り数十分後に魔女エリーナが死んで行く様を見物する席の前に立つ。
「よっこらしょっ」若い癖に声を上げ自分の体に合図しながら席に座る。
一度椅子に腰を下ろし鞄を抱え直し尻の位置を合わせゆっくりと背もたれに身を預ける。
ぴっぴっと電子音が小さく鳴った。
なにかの拍子でも良く聞く音色の電子音だ。
J.Jの背筋に悪寒が奔る。同時に何が起きたかも想像がついた。
どこかで何かのスイッチが入った。どこかで何かの装置の起動を知らせる音だ。
J.Jは椅子の上に腰を下ろした一度は腰を乗せ二度目に位置を直し背もたれによりかかった。
そしてぴっぴっとスイッチが入ったことを知らせる音がなった。
感圧式のスイッチがはいったのは確かであり。感圧式のスイッチに繋がるのは爆弾だろう。
誰かが自分を罠にかけた。それは間違いない。嵌められた。誰かの罠に。
だが誰に嵌めらたと言うのだろう。執行機関ではないだろう。
彼等なら銃を持って蟻が餌肉に集まるように湧いてくる。
J.Jは恐る恐る体重を移動し椅子下に仕掛けてるはずの爆弾を確認しようと手を伸ばそうとする。
「動かない方が良いぞ。小童」野太く不気味な声が背中から聞こえる。
「えっ?僕は何も・・・」どきりとして反射的に首が縮み声が漏れる
「動かないほうが良いぞ。小童。感圧式のTNT二袋分の爆弾が椅子の下にくっついてる。
尤も個の國でTNTなど手に入らなくてな。変わりに漢縁之國の地雷をばらして
そこに直にスイッチを繋いである。分かるか?むき出しの地雷がお前の尻の下にくっついてる
儂なら姿勢を直して息を整える。諦めるこ事だな。ジャック・ジャックマン」
「どうしてそれを・・・。」晴天の霹靂如く頭が追いつかない
それでも事態を認識し自分置かれた状況何とか理解すると背もたれに体を預けて落ち着こうと努力する
のそりと背後で気配が動くと山にも見える漢が後ろの座席から前に乗り越えてくる。
あったことはないだろう。海やけが随分と薄くなり白さが戻る肌の漢がJ.Jの前にズイと立つ。
山と視界を遮る漢の横でスーツを来た女性が顔を出し補足白い指で眼鏡を外し
無造作に頭に手を上げ髪の毛を掴むとウィックと知れる偽髪を取るとさっき話したばかりの
女性警備員の其の顔が魔女エリーヌ・アルデニュンタであると初めて知れた。
「犯罪者って意外と馬鹿なのね。前に会ってるのに気づかないなんて。
こんなに美人な魔女の顔を忘れるなんて悲しいわ。お馬鹿さん」
衝撃だった。自分が殺そうとした女の顔を見ても言葉を交わしても気づかなかった。
「今は黙っていろ。小僧。種は後で明かしやる・・・持ってきてくれ」
誰に声を掛けたという訳でもなくてもすぐに応えが分かる。
J.Jの記憶にも馴染む女性が列の向こうからカツカツと歩いてくると
手に持っていたリュックを且来に渡す。にこりと微笑む姿は騎士団の秘書役ポリヌソワレである。
其の彼女が持ってきたのも良く知る品物で二日前にJ.Jがステージの下に
仕掛けた自分で作った爆弾だ。狙う標的は勿論目の前にいるエリーヌだった。
「こいつの事はお前が一番知っているだろう。少なくてもステージの床を貫いて
ひとの一人や二人は爆殺出来る。余計な事はするなよ。
お前が作った爆弾だ。警告するぞ。余計な事はするな」
野太い声で二度も警告されJ.Jはコクンと頷いた。其れしか出来ない。
今思い出せは漢の着込むやたら派手なTシャツには見憶えがあった。
エリーヌの携帯を壊した時にバイクに乗って来た漢であろう。
漢は受け取ったバックの通しベルトを前からJ.Jの肩にかける。
何やら仕掛けも有るのだろう。しゅるりとバックから紐を取り出し
J.Jの首に巻き付ける。更に誰かが背を圧し肩にかかったリュックの掛け紐を
何かに紐で結び通す。ポンポンと肩を叩かれ背筋を伸ばすせば其れで
前に抱えた自分の爆弾入りのリュックを抱え込み紐で結ばれた事になる。
「少しばかり弄ってある。時限装置は外してある。当然御お前のリモコンでは作動しない。
起爆装置は儂とお前に恨みを持つ者が持っておる。儂が圧さなくても誰かが押す」
漢が窮屈をそうに席の間に屈みベリベリとテープが外れる音が聞こえると
言った通りのTNT弐袋と地雷の信管らしき取り出しリュックの中に入れる。
其の次はアラーム付きの腕時計も放り込む。嵌められた。二度もだ。
感圧式の装置が入ったと思ったのは遠隔操作で鳴らした時計のアラームだ。
感圧式の爆弾が起動したと思わせてJ.Jの行動を見事に制限したのだ。
地雷は本物であろう。この漢が嘘をつくとは思えない。
然し地雷のTNTが2袋追加されたら爆弾の威力は跳ね上がる。
此の漢か恨みが有る者が起爆装置を押せばJ.Jの体は爆発する。
自分の命が誰かに握られてると分かると冷汗が止まらない。
ついでとばかりにJ.Jがエリーヌに送った携帯をポリヌソワレが取り出し
バックの中にすべらせる。これも又ばれていたのかもしれない。
携帯でその位置を確かめていたJ.Jを欺きスケジュールも入力していたのもポリヌソワレであろう。
「立て。小童。移動する。いつまでも此処にいるわけにも行かないのでな。
もっとも魔女エリーヌの公演何など有りもしないのだが」
派手な柄のTシャツの漢が狭そうに座席の間を進むとポリヌソワレがパンパンと二度手を打ち鳴らす。
それが合図とそれまでほどほどに客席を埋めかけていた客が立ち上がりそれぞれに出口へと歩いて行く。
それもまた全員が偽物でありJ.Jを騙す演出であった。
自分で作った爆弾をバックに詰め込まれ地雷のTNTを追加されしっかりとチャックを閉められ
南京錠を掛けられその鍵は漢が目の前で指で安々と潰し引きちぎってゴミ箱に投げ捨てた。
もうJ.Jは自分自身で爆弾を外すことは出来ない。
漢の言う通りにするしかなかった。こうしてる間にも誰かが起爆装置を起動させるかもしれないのだ。
窓一つないトラックに乗せられて移動した後もまど一つない部屋だった。
「儂は倭之御國帝国陸軍且来素子准尉である。
縁あって個の國に仕事で来訪してな。お前の起こした事件に巻き込まれてな。
良縁にも恵まれたが失った友もいる。責任はお前に取って貰う。
だが。御前も知りたい事も有るだろうしな。其れは教えてやる。
立ち会うのは倭の者が一人。國の執行機関から
F.A.M.F.K.A(欧州アルメルダ魔法連邦犯罪捜査機関)のトモム・ミリン特別捜査官である。
轟諜報一左。始めてくれ」
「ご紹介を頂きました。倭之御國諜報準備課の轟諜報一左で御座います。
この度の事件に付いてこちら側が行なった作戦の詳細をそれなりにかいつまんで
お知らせします。随分と困惑もなさっているでしょうからね。
その後此の御國の執行機関F.A.M.F.K.A捜査官による事件供述書が制作されます。
実は且来准尉の軍務視察箇所が未だ残っていますので。出来るなら速やかに供述して頂くと
大変有り難いと存じます。尤も貴方には一切の選択権はありません。
協力を拒んだり黙秘した時点で我々が退出した後に僕が起爆装置を起動します。
協力して頂ける間は食事と排泄等の世話はきちんとさせて頂きます。
変に逆らったり誤魔化したりこちらの調査結果と違いがある場合等が出た場合は
拷問官の出番となります。何せ軍ですから玄人の集まりです。痛いですよ?
生きたまま皮はがれるのは。それから此の事件に付いて裁判等は行われません。
つまりF.A.M.F.K.Aの方へ供述書は提出しますが。
全て非公式であり貴方にはすべての法律は適用されません。
お解りになりましたか?解らなくても始めますね。では・・・」
軍の諜報課に属するとなると少々長い文章の暗記等容易いのだろう。
新婚の轟は一切の書類等も見ずにスラスラと話し出す。
先ず。当倭之御國帝国陸軍且来准尉が貴方と最初に接触したのは
七回目の爆破事件を貴方が起こした時です。
この時に且来准尉は貴方の顔と容姿を殆ど正確に覚えていました。
元々は漫才師であり後に軍に無理矢理復帰させられる且来准尉はでぶの癖に
状況判断能力は高いです。とは言え未だ少し深くてい要素もあったので
市内全部のカメラから該当人物を探し出すのは躊躇しました。予算に限りもあるので
変わりにマイケル・ソワーヌ・ビレヌ捜査官による。情報公開と市民からの情報提供を求めています。
フェイクです。マイケル・ソワーヌ・ビレヌと言う人物は仮想世界の人物です。
中身を演じたのは且来准尉です。あのプリプリのマイケルのお尻は且来准尉のでか尻です。
詐欺ですよね。詐欺。世の中の乙女の期待をさらっと裏切る且来准尉こそ悪魔です。
幸いな事にこの時点で莫大な再生数のお陰で広告収入が跳ね上がり予算の確保が楽になりました。
僕としてはすごく嬉しいです。嫌味な上司に頭下げなくても済みますからね。ぷぷぷのぷ。
さて。貴方が失敗したエリーヌさんの携帯のクローンに付いてですが
其れ以前の暫く前から私達は貴方が彼女を尾行していたのは知っていました。
今回の作戦実行のきっかけとなったハッカーの方が彼女を尾行する貴方を確認してます。
その後は護衛を兼ねる友人と街を練り歩き貴方からの接触を待っています。
何時接触されても良いように数日の間スタッフを待機させるのは大変だったし
シュミレーションも面倒でした。次回の機会があるなら持っと早く動いて頂けると助かりますね。
街に待った接触は僕もPC画面を見て緊張しましたよ。
軍属であっても演技は皆素人です。中でも一番緊張していたのも且来准尉ですね。
まぁ概ね貴方が体験したとおりです。
警戒している彼女等に不用意に近づいた獲物を黒肌君が押さえつける。
この時彼は眼鏡を掛けていたのご存知ですか?その前の公園散策では掛けていませんでした。
監視カメラで貴方が尾行しているのは把握していましたし。接触に備えて顔を確認するためです。
この時点で貴方は後ろの岩壁に押し付けられるわけですが眼鏡のカメラで写真を撮影してます。
犯罪者の性でしょう。必死に顔を隠そうと顔をそむけますが前方のエリーヌさんの
眼鏡でも動画を撮影してました。まぁ無駄な努力という事です。
その後は隙きを見て彼女が携帯を落しますが最初から壊れやすい様に調整してました。
軽く地面に落しただけで中の部品が飛び出すようにね。幾つかの部品も抜いてありまして
貴方のクローンアプリに反応したのは近くにあった該当から電波を送って其れらしく見せただけです。
同時に此処で貴方の携帯をクローン化もしておきました。気づきませんでしたか?馬鹿ですね。
態とらしく且来准尉が登場しますがギア入れ間違えてエンストする所でした。
恥ずかしいですよね。でもちょっとお馬鹿さんな所が魅力だとも女性陣は言ってました。
且来准尉が去った後はバイカーの女性と目を合わせてますから全体の姿をスキャングしてます。
最後にいかついお兄さんが登場して助け起こして貰ってますがガッチリと握手してますので
指紋の採取が上手く行きました。
まぁこんな感じでコンタクトがおわったんですけど予想以上にお馬鹿さんでしたよ。
身ばれするのも良い所です。習得したデータから各種データと照らし合わせて
指名・住所・寝蔵等を始めガールフレンドの有無。彼女可愛いですよね。
浮気してなければ良いですが。してますけどね。使用携帯の遠隔クローン。
PCのハッキング。IPアドレスの習得。盗聴機器の設置
まぁ現実世界でもデジタルワールドでもこの時から貴方は我々の監視対象と成るわけです。
筒抜けでしたよ。全部。漢寡婦の私生活なんて見ても面白くないんですが。我慢我慢の仕事ですね。
24時間連日監視しているわけですからフェイクの講演会をチャンスと思い込み
貴方が設置した爆弾は直ぐ解除しましし罠に掛けるのは簡単でした。
ご存知で有るかわかりませんが個の國は我が倭之御國と戦争をしてる相手国に
必要以上の武器を輸入しています。我が御國の御上はとても慎重な方々でしてね。
いつかはこの國とも争う事になるかも知れません。その時の為に僕らがいるのです。
先の未来の戦に勝つために先に根を張り準備を怠らないのです。
それが諜報課の仕事で僕の存在意義なんです。夢々お忘れなきようお願いします。
深々と轟は頭を下げ一歩と下がる。
「えーと。とcrabbomberことJ.J。ジャック・ジャックマンだね。
それではF.A.M.F.K.Aの事情聴取を始める。私も爆弾を抱きしめた犯人との面談は初めてでね。
中々落ち着かない。此処はお互いの為に成るべく手早く済まそう。良いかね?」
J.Jは頷く。完敗であった。且来と言う異国人が自分を罠に嵌めた悔しさより
それにはまった自分が悔しい。どこかに希望はないかと探って見ても
自分の胸には爆弾と地雷が巻き付いてる。これでどうしろというのだ。
F.A.M.F.K.Aはお役所である。言い方は悪いだろう。
然し事件の詳細を丹念に記録する作業は結構退屈で長く苦痛でもあった。
早く終わってくれないかと思っても次々と質問と確認が続く。
当然に且来の脇に据え付けたらたビデオカメラが全てをも記録してる。
いくら自供しても説明しても裁判はないと宣言されているのがから
全くの無駄に思える。だが然し此処で癇癪を起こしても黙りこくっても
それでJ.Jの命は終わる。死を先延ばしにするには捜査官の詰問に答えて行くしかない。
途中弐度の休憩を挟んでも聴取は終わらなかったが
休憩時には軽食与えてもらえトイレにもいけた。何方もポリヌソワレが手を貸してくれる。
濃い化粧の香りが鼻についたが彼女の仕草と吐息が女神の抱擁にも思えた。
何枚もの書類を机にぶつけてそろえ束に纏めるとF.A.M.F.K.Aのトモム・ミリンは
身を乗り出しJ.Jの肩に手を乗せる。
「幸いな事にも私の回りに君が起こした事件の犠牲者は居ない。
だが私は事件の犠牲者の遺族に会い話しを聞いてきた。皆言ってたよ。
地獄に堕ちろとな。私もそう思う。地獄に堕ち給え」
肩に乗せた手に圧力が掛かりJ.Jは自分の犯した間違いを知る。
分厚いファイルを茶色の鞄に詰め込み且来の前に歩み寄ると手の平を合わせて
ガッチリと握手を交わす。轟とも同じ様に手を握り互いの苦労を労うとトモムは重いドアの向こうに消える。
のそりと山の如くと且来がJ.Jの前に近寄ると襟元の置くに少し厚い封筒をねじ込む。
「これには御前が殺した人々の名前が刻んである。
責めて胸に抱いて悔いてしね。儂の國には死者銭を持たせてやる風習が有る。
貴様が三途の川を渡れるとは思わぬが地獄の閻魔様の賄賂にでも使いが良い」
J.Jがコクンと頷き見た事のない穴の開いた硬化に紐を通した物を手首に巻きつける。
轟が一歩と弐歩と後ろに下がる。これから起こる事を良くと知ってるのだろう。
J.Jの前に且来が仁王の如くに立ち塞がる。
J.Jは自分の最後が来たと知り自分の脚で立ち上がる。
且来の利き手が上がるとゆらゆらと回りの空気が淀んで見える。
「歯っ。食いしばれ。若造っ」
J.Jは受け入れる。覚悟も出来たのかも知れない。
目を開けたまま奥歯を合わせて力を込める。
張り手一閃。轟音唸って風を斬る。
そして世界が暗転の闇へと溶ける。
「起きろ。小僧。起きろ」パンパンと頬を張られ聞いた事のない女性の声が届く。
「大丈夫か?此処が何処かわかるか?最近出番が全くないからな。
張り切ってるのだ。私は。言葉わかるか?小僧」
天使かと思った。化粧こそしてないがそれでも美人だ。
褐色の肌と大きな胸が魅力的で目が離れない。
「どこを見ている。変態小僧。そこじゃ無く顔を見ろ。解るか?」
機関銃の弾幕の様に言葉を唾が顔に飛んでくる。
又、パンと頬を張られ痛みが頭に正気をもたらす。
気がついて見ると片目が開かない。恐らくは且来が顔を張った時に瞼が張れたか
目玉が潰れたのだろう。痛みがないのは何らかの処置でもされたのだろうか?
「良いか?御前の任務は此処から落下して地上についたらコイツを握って
引き金を引く。それだけだ。わかったか?パラシュートは設定高度に達したら自動で開く。
的になるなよ。良いか?落ちて地上についたら信号弾を撃つ。いいなっ」
言葉はわからないから大げさな身振りで女性が伝えてくる。
見える範囲で解る事はJ.Jは飛行機の中にいるらしい。軍用である。
更に衣服も軍服になってる。それでも爆弾が入ったリュックはちゃんと抱えてるし
紐も首にかかってる。左の手首には五円銭の輪っかも結ばれている。
どうなってるかわからないがJ.Jは軍服一式に着替えされられ安全確保の為だろう
分厚い底の軍靴やパラッシュートまで背負ってる。
「わかったんだろうな?御前本当に大丈夫か?」
何度目かに繰り返される女性の動きをJ.Jが真似る。
兎に角。この飛行機から飛びでて落下し地面についたら腿の信号弾を空にむかって撃つ。
それだけだ。大体なにがどうなってるか分からない。胸には爆弾を抱いたままでもある。
「そこに起て。赤い線の向こうだ。そうそう。脚を踏ん張って
こうやって手を広げて待て。そうだ。じっとしてろよ。」
身振り手振りで何とか褐色で背の高い兵士の指示通りに線のこっち側で
腰に力を入れて構え手を広げる。
上官と呼べば呼ぶのが正しいのか分からないが兎に角彼女はJ.Jの準備が整ったと
確認すると無線機に向かって何かを話し向き直るとレバーの前に立つ。
盛り上がると言うのが正しい胸元に手を言いれて紙切れを取り出すともごもとと練習し
「人を殺したそうだな?罪もなく優しい人々を手に掛けたそうだな。
教えてやる。恐怖をな。此処が戦場だ。漢なら命燃やして死んで魅せろ。
地獄で彼等に会って来い。武運を祈る。ジャック・ジャックマン。射出っ」
最後にJ.Jに解ることばで口上を述べると容赦なく射出レバーを引き下ろす。
「あれ~~~~~~~~~~~~~ぐぇっ」
ドンっと言う衝撃と一緒に軍用機から弾き飛ばされたJ.Jは直ぐに引力に引かれ
地上へ向かって風を斬る。国外から出た事もないし飛行機なんか勿論初めてだ。
おまけにパラシュートによる強制落下なんて以ての外だ。
幸いな事に多分ではあるがちゃんとそれは機能して抵抗を和らげる。
当然速度を落とすためにいきなりパラシュートが開くからハーネスが首を締め上げた。
そんな痛みも生きているからでこそだが痛い物は痛い。
意外にも幸運にも敵陣から弾は当たってないがそこが戦場だとも直ぐ知れた
眼下の丘の先には戦車が砲塔を回し砲撃を始める前に爆発して肉片が弾け散る。
森の手前では生身の兵士が機銃を掃射するが襲いかかる奴は二本の脚と手で地面を奔り
灰色の肌で口を開け兵士の頭にかぶりつく。たの兵士が構わず機銃を掃射すれば
仲間の体が血を吹き出すが灰色の化け物は尻尾を振り上げて兵士の心臓を貫いて朱く染める。
あの怪物は作り物に見える。二本の手足と細い尻尾。J.Jの頭でもそれが人工的な人形に見える。
パラシュートが風を捉えそれでも結構短い滞空時間の後に地上に迫ると
戦場の匂いが鼻につき状況も理解できてくる。
J.Jと同じ制服を着てる兵士は人であり。襲い掛かる人形は敵であろう。
其の数は圧倒的である。まるで餌を求め群がる捕食者の様に兵士の命と肉を喰らう。
もしこの戦いの勝敗を決めるならJ.Jと兵士は負けている。
逃げ場等ないのだろう。一人二人と肉塊になって果てていく。
ドスンと音がしてJ.Jは地面に転がる。
初めて嗅ぐ血の匂いと硝煙の香りが肺を焼く。逆流する胃液が喉から溢れる。
ゲホゲホと咳込み地面に手を突くと直ぐ近くで奔る脚と手の四足歩行の音がする。
吐瀉物を手の甲で拭うとこっちに向かって人形が奔って来る。
情けなくも体勢を崩し思わず意味もなく信号弾を握りしめた。
どんっどんっと衝撃が奔り人形が弾ける。至近距離の銃撃なら脚を止める事位は出来るだろうか。
直ぐに屈強な兵士が人形に近寄り頭に向かって更に弐発弾をぶち込み〆を指す。
「ボサッとするな。若造。御前の任務は?」
「こっ。これを撃つ事ですっ。空に向かって」J.Jは咄嗟に叫ぶ。
言葉が解るのは耳につっこまれた和訳機のせいだろうか?
軍用機の中ではわからかったから地上におりたら作動する設定なのだろう。
「御前がか?持って来たのか?」
「えっ?」訳も解らず声を返す
「花火だ。爆弾だ。爆弾」兵士はJ.Jに掛けより確かめる。
「爆弾。有ります。此処に有りますっ」J.Jは自分が胸抱く爆弾入のバックを指差す。
「御前。名前は?」兵士はバックのチャックを開け中身を確認する。
「J.J。ジャック・ジャックマン。爆弾魔です。沢山殺しました。人殺しです」
「爆弾魔が作った奴ならお誂え向きだな。信号弾を上げろ。貴様の仕事だ。
人殺しついでに・・・俺達を連れて行け」
どっとJ.Jの瞳に涙が溢れる。意味を知った。今日の戦は勝てない。逃げる道もない。
J.Jは震えもしない手で信号弾を握り天空蒼空に向かって引き金を絞る。
ポンと弾けて赤い煙が空高くと筋を引く。投げ落とした信号弾の銃身のライトが点滅してる。
J.Jはバックの口を大きく開けて中を覗き込む。確かに自分が作った爆弾とTNT
其れに液体の入ったボトルが入ってる追加の燃焼燃料だろう。
「見えたか?信号弾の根本が集合場所だ。奔れよ。時間がないぞ。
一匹でも多く連れて来い。俺達を連れて行くのは爆弾魔だそうだ。
腕は保証する。逝くぞっ」肩の無線に兵士が吠えると猛者共の声が帰る。
J.Jは鞄の中を漁り自分が作った爆弾の配線を確認する。
取り上げられたはずの起爆装置もちゃんと有る。
兵士に向かって頷き準備が整った事を伝える。
「こいつが爆弾魔だと?小童じゃないか?」息を絶え絶えに走って来た髭の漢が文句を言う。
「8回のテロで72人殺しました。自慢で出来る事ではありません。
それでも貴方くらいは連れて逝けます」こんな時でも軽口は言えるらしい。
「はっ。言うな。こいつ。気に言ったぞ。若造。名前は?」
「crabbomber。J.Jです」ふさわしくはないと思ったが差し出された手を握り返す。
J.Jの回りに漢達が集まり互いに名乗り肩を叩き合う。
未だ走ってくる者も居ればその後ろに四つ足の人形が迫ってくる。
「持っと引き付けた方が良いな。花火は大き方が良い」髭面の漢がボソリと履けば誰もが頷く。
J.Jは胸元から封筒を取り出す。
「キャロル・ダイン。ミル・トワソン。K・ローリング。メイヤー・ジョンソン。
シルビア・トマーズ。シルビア・アレン。ジョー・アンジル。メリー・アンクル。
・・・皆。僕が殺しました。御免なさい。御免なさい。御免なさい」
自分が作った爆弾で命を落した人々の名をJ.Jは読み上げる。
それでも全部は読めなかった。後悔と懺悔で涙で字がぼやける。
誰かが頭と肩を叩く。
「連れて逝け・・・」
「はい。逝きます・・・」
J.Jが起爆装置を握りしめ蓋を開けボタンに指を乗せる。
漢達が其の上に手を重ねていく。皆がJ.Jに頷き。J.Jも彼等に頷く。
・・・そしてJ.Jは吹き飛んだ。
・・・漢達を一緒に。
・・・自分の作った最後の爆弾で。
「作戦遂行兵員。地上に到達確認。言語和訳装置起動」
「大まかな位置は把握出来てます。爆撃機203。任務遂行地域へ進行して下さい」
「爆撃機203。任務遂行地域へ進行します。障害なし」
「信号弾上がりました。偵察ドローンカメラにて視認」
「位置信号確認しました。方位42・03・49。爆撃機203へ座標送信します」
「爆撃機203。座標受信。対四足尾人形燃焼爆弾使用許可を求む」
「爆撃機203へ。使用を許可します。繰り返す。対四足尾人形燃焼爆弾使用を許可します」
爆弾魔J.J・ジャック・ジャックマンの最後を皆それぞれに思い思いの場所で耳にする。
「儂を悪党と罵るか?轟一左」
「否で有ります。且来准尉。僕らは軍人です。何時か敵の銃弾で命散らすのが仕事です」
多くの人の命を奪ったJ.Jを戦地に送り込み生きて帰る望みを失った兵士を送る役目を
押し付けた且来は軍諜報課の無線機の前で拳を握り最後まで聞き届ける。
人に魔女エリーヌ・アルデニュンタと呼ばれる彼女は且来に声を掛けたあの場所の隣に
新しく出来たBARで今度は質素な服を来てバーテンとグラズを傾ける。
「山羊鬚のちょっとイケメンさんは今日も天使を口説いてるかしらね」
隣に置いたグラスを弾き一気に煽るとしとりしとりと小雨振る街に魔女は消えていくだろう。
Almelda409と名乗ったセリーシャは轟が置いて言った軍仕様の機材を弄くり回し
且来が演じたマイケルの尻の形が気に食わないとピザの変わりに高級菓子店の
梅昆布ショコラを突きながら携帯に流れたメッセージをちらりと見るがマウスが止まらない。
黒肌の小太りの漢は次の配達場所のルートの近道でバイクを運転する恋人と喧嘩し
振り落とされそうに成るからそもそも携帯の漢にも気が付かず。
アルメルダ騎士団の総帥を名乗ったスッタ・モンダ・トッコイショは
元の愛人ポリヌソワレに裏切られ故意による殺人か偶発事故か
事の最後の前に故人となれば墓の中であれば知らせは無用。
同じく元騎士団の梟はあの頃よりボロくなったトレーラーハウスの前で
弟の為に開けたビールを元彼から寝取ったガールフレンドに奪い取られるが
その元カレが弟であるからなんとも言えず。それでも知らせが届くと
詳細を確かめちゃんと読み深くため息を付いて彼女に頷く。
心と体と其の血まで且来の物だと言い張るポリヌソワレは
残る数カ所の視察を抱える且来に内緒で新しい身分のパスポートを手に入れる
脚に嵌めた監視機器等とっくの昔に外して捨ててしまい。
レザースカートに包んだ尻を揺らしながら楽しげに旅したくをしてるとなれば
トランクの奥にしまった携帯のメールに興味もわかず。
帰国するであろう且来の次の任務地に先回りするべくやっぱり尻を振る。
刻に欧州アルメルダ魔法連邦においてcrabbomber成る爆弾魔に且来が巻き込まれ
奮起遁走した一件はこれにて幕を下ろすと成れば
女装家且来素子の次の旅路は何処であるか・・・。
嗚呼。饂飩食べたい。出来れば車海老の天麩羅饂飩。嗚呼。そろそろネタ本当にもない。
Post-credit scene
crabbomberがJ.J。ジャック・ジャックマンであるとあの人気のマイケルが告げてから三日後。
信じられない思いが胸にうずまき赤毛の少女が彼のアパートを尋ねる。
短い間で有るし体だけの関係だったから特別の感情もありはしない。それでも彼女は
J.Jの事はよく知って居た。部屋の鍵はアパートの外壁にガムテームで貼り付けてある。
それをむしり取って部屋にはいれば当然の如く何もない。クルクルと部屋を踊る様に見て回り
擦れたカーテンの揺れる窓の下壁。指を数えて床に這わせ溝を剥がすと簡単に穴が開く。
少し大きなトランクケースがそこには埋まり小さい体と細い腕でなんとか引き上げれば
勢い余って床に尻もちをつく。まぁそれも愛嬌と。トランクの番号をJ.Jの誕生日に合わせて弾けば
ぱちんとバネ鍵が跳ね上げる。中を開ければ当然の如く起爆準備が整う爆弾が詰まってる。
一通の白い便箋に読みくい文字で綴られて。
愛しのエリーヌへ 若し僕が失敗したら・・・次は此処に
置字
