【女装男児】女装家且来素子闊歩歩いて候:其の拾之ⅳ
倭之御國帝国陸軍且来素子准尉。
下記の様に命ず。
精錬妖精魔法國家においてその國の姫と成る魔法妖精姫を娶り
愛情を注ぎ守り愛し時に尻に敷かれ時に鞭で叩かれそれでも尚愛情を注ぎつつも
襲い掛かる魔王軍を見事蹴散らて退け國を守り切る事を命ずる。
尚、彼の種族は一夫多妻制を認めて居らずされど多産子宝沢山が奨励されておる故に
愛人妾等はほどほどに。子供は最低5人は作って良し。
ついで魔王も娶って丸めて片付けるなら尚の事良し。
(頑張って頂戴な)
倭之御國帝国陸軍大将・近藤政宗
「どわ~~~~~~~。何だ。このふざけた命令書はっ。
妖精って何だ?魔法って何だ?御伽噺か?寓話か?神話か?
魔法とか有るわけ無いだろ?妖精ちゃんはいないの。居ないんだってばっ
なに?又?嫁娶るの?今度は妖精のお姫様?儂ブサイクだって。腹出てるの。
良いか?うちの鬼嫁はな。今だに処女なんだぞっ。もうこの際。処女受胎してやるって言うんだぞ?
何だ?処女受胎ってそれが出来たら人間超えるぞ?
えっとなになに?お姫様娶って愛情を注ぎ?鞭で叩かれて悶えるだと?
鞭でお仕置き確定ではないか?儂が吊るされて拷問でもされるのか?
銃弾は怖くはないが痛いのは嫌いなのだ。
こら?御前。笑ったな。こっち来い。殴ってやるから頭だせ。
子供作れ?5人?そんなに作ったら子守が大変だわっ。ぜぇぜぇ。
一夫多妻が禁止なら素本も愛人とか作れぬだろうが。
ついで魔王も娶ってって魔王いるのか?魔王が?
魔王が漢だったらどうするのだ?ちょっとかわいい少年系とか超イケメン美青年だったら
どうするのだっ?漢だぞ?儂は漢を娶らねばならんのか?
・・・誰だ?この命令の発行者は?
こっ、近藤政宗大将ではないか。陸軍の総大将が何を考えておるのだ。
しかも応援されてるぞ?かっこ付きで応援されているぞ。
敢えて言わせて貰う。倭之御國帝国陸軍は馬鹿しかおらん。
儂を含めて馬鹿しかおらん。近藤大将。貴殿が一番馬鹿で有るっ」
件の事件から凡そ壱年と少し。
肌は触らせるが頑として入れさせない軍嫁との夫婦生活もそれなりに
怠慢気を迎え最近では処女受胎してやるとまで言い始めたしずゑとの夜伽の翌朝。
腕に黄色い紋章を付けた陸軍大将直属の伝令が渡した命令書に目を通した
且来素子准尉は命令書を受け取る度の儀式として毎度の癇癪を起こす。
何の騒ぎだと私室から顔出したしずゑが指令書を読んで
「まっ頑張って。魔王が漢だと良いわね。私まだ眠いから」
倦怠期さながらに軍夫を形だけ慰めるとさっさと寝台に潜り込む。
「騒いだら腹が減った。饂飩喰ってくる」
どすどすと地面を踏みしめて有るき出す且来を黄色い腕章を嵌めた伝令官が前に回って止める
「駄目です。且来准尉。お迎えが来てるんです。すぐに支度して下さい」
「貴様何を言っている?魔法だぞ?妖精だそ?ついでに耳も長いのか?
そんな迷信が現代社会に通用するものか?儂は饂飩が喰いたい」
軍属であっても突き出た腹の脂肪が丸ごと筋肉の且来には敵わない。
手を突き出して抑えても伝令官の体ごと押し込んで進む。
「待って下さい。有るんです。魔法もあれば。妖精もいるんです。
すっごく綺麗でお胸ボンボン腰がきゅお尻がドーンの妖精さんがいるですぅ」
漢なら聞き捨て成らない言葉に一度且来は立ち止まる。
「いやっ。いない。そんな綺麗な妖精がいるなら漢どもがこぞって進軍しておる。
魔王など尚更おらん。儂は兵だが勇者ではない、大体魔王が漢なのが気に食わん」
「魔法が漢と決まったわけじゃありません。伝承では両性具有で惚れた相手に
合わせて化けるとか。勇者がその勇者が手が付けられないんですっ。
お願い。話しだけでも聞いて下さい。御代官様」
「ええい。煩い。貧乏百姓の悴の癖に。この且来代官に逆らうとは
打首獄門天麩羅饂飩釜茹での刑にしてやる。退け退け。小童百姓。聞く耳もたぬ」
いつの間にか小芝居を打ちながら食堂までやってくると券売の前に且来は並ぶ。
「奢りますから。僕が御饂飩奢ります。ねっねっ
黄金海老の天麩羅弐枚乗せますから。だから噺だけでも聞いて下さい。
一寸の虫にも五分の魂で御座います。御代官様。お願い」
涙うるうるで若い伝令官が懇願する。
「その黄金海老の天麩羅とやらを且来殿に献上すれば我が國までご同行願えるのであろうか?」
凜々と鈴と降って鳴らす涼やか女性の声が食堂に響き轟く。
「そうとは言っておらん。言葉のあやである。
儂は好きな時に好きな飯を好きな様に喰う。戦に体を張ってる身なら饂飩代位は自分で払う」
且来の態度よほどによっぽどに機嫌が悪いと見える。
声の主の姿も禄に見ずに券売機に軍票を翳しピッと音が成ると丸っこい指で黄金海老の天麩羅の
ボタンを圧して発券する。のぞのぞと歩いて厨房の料理人に券を突き出し自分は盆を持つ
料理人は饂飩を盆に乗せながら且来に目配せし
(妖精。超美人。ボンキュンドーン)と仕草を小声で伝えてくる。
大体にして軍嫁と倦怠期で喧嘩も多い。他にも女はいても下手に愛でると今度は軍嫁が鬼と化す。
玉に実家に帰れば正妻が迎えるがこちらも間男上司と縁が切れずに。
一夜二夜肌を濡らしあってもその先に心許せる相手とまでは絆も浅く。
歳も参十半ばを超えれば子の一人も恵まれす寂しいひもじいと思わぬ時も少なくはない。
戦人であるからこそ今に饂飩を食べられるのは只の運である。体はでかく脂肪を腹に貯めても
無理が効かぬ時も多い。戦の誉と言えば格好つくがそれでも膝が動かぬ時もある。
不機嫌なままにズルズルと一人饂飩を啜る且来の前に先程の声の主が歩み寄る。
ちらりと顔を上げては見るが興味もないと饂飩を啜る。
銀色交じる髪を半薄兜の下に流すも以下に真面目であると言うような
少々お硬い印象の女性の四肢は調理場奥の料理人が言うようにボンキュンドーンと主張する。
且来は勿論興味はないが映画や漫画に出てくるキャラクターに扮する遊びがあるとも聞くから
その類で有るかと思えば理解も出来るが所々に擦り傷らしい物が鎧に刻ままれてもいる。
存外本当に剣や斧で戦えばそんな傷も付くやも知れん。
真っ直ぐに且来の前に達つくし実直な態度で且来を見詰めるならでぶの且来を侮蔑してるのか知れない。
いっぱい目の饂飩を食べ終わり顔を上げて視線を広げれば真面目そうな声の主の部下だろう。
それぞれに鎧を着込みそれぞれに帯剣せし騎士が食堂を埋める。
「美人だぞ。おい。伝令の小童。実直そうな瞳が初で有るな。
ちょっと耳先がちょっと尖ってるように見えるが本物か?
あの胸はけしからんぞ。儂の軍嫁より大きいな。云々これはけしからん」
「失礼ですよ。且来准尉。聞こえてますって。彼等は耳も良いんです。
高等教育を受けている精兵部隊の方々なんです。僕らの一般言語から隠語の喘ぎまで
理解する所か完全に使いこなすんです。えっ?試したのかって?黙秘します。
それよりどうするんですか?皆さん待ってますよ」
且来は小声で話したつもりだが精錬妖精に秘密黙してそれはなしと母國で言われるように
彼女等の前で声を潜めるのは全く持って意味はない。
「失礼した。漢の性と戯言と忘れてくれ。
詫びの印に饂飩を馳走しよう。妖精魔法の類は信じてはおらんが
饂飩を喰う間くらいは噺も聞こう。どうせ儂は拒めぬ。
おい。小僧。生真面目な騎士様と其の部下くらいは馳走してやれ」
別に見栄を張ったわけではないが饂飩の10杯20杯で財布が寒くなってもそれも愛嬌と
自分の軍票を弾いて黄色い腕章を嵌めた伝令官の尻を蹴飛ばす。
「噺は聞くと言ったのだ。座ると良いだろう。
儂は倭之御國帝国陸軍且来素子鏡蔵准尉。
何時も御上の気まぐれで、あの國この國と飛ばれては虐められる一兵卒である。
貴殿の名をお聞きしよう」
席を勧められた精錬妖精の女性騎士は軽装鎧をかちゃりと
鳴らし且来の対面にマントを弾いて腰をおろし少し落ち着かない様子で且来の対面を見つめる。
「こほん。精錬妖精魔法一等貴族騎士。セシーグ・モレヌ・ウリンである。
あの。その。ちょっと確認したいのだが。食事を頂くと言うのはだな・・・」
その時ちょうど且来の前に盆か置かれ饂飩が湯気をくねらす。
間をおかず一等貴族騎士。セシーグ・モレヌ・ウリンの前にも部下が盆を置く。
「噺を聞くと言ったが饂飩は間を置くと伸びるのでな。
それに汁が熱い方が旨い。うぬ・・・異国食事となれば作法も知らぬな。
云々。まずはこうやってだな。手を顔の前に合わせて。頂きますっと唱える」
セシーグの手を取り合わせ形を作らせ頭に手を少し乗せ下げさせる。
セシーグは言われるままに異國語を匠に扱い少し恥ずかしそうに頂きますと唱える。
「そうしたらだな。箸をこうやって持って此処で挟んで動かす。
まぁ~~~。最初はむずかしい・・・上手いな?妖精とやらは器用だな。
後はこうやって玉子を椀の縁で叩いて割って落とす。玉子は箸で解いても良いのだが
汁の味が混ざるからな。儂は最後の方で崩すのが好みである。
後は箸で饂飩を弐参盆適当に挟んで口に含む。後は息を吸う要領で啜る。
恥ずかしがる事はないぞ。饂飩や蕎麦は啜って音を出して食するのが礼儀だ。
どうだ・・・?旨いか?」
初めて異国の作法に習い饂飩をズルズルちゅるんるんと音を立てて啜るセシーグ。
麺のやらかさと少し固い歯ざわり絡む醤油汁のしょっぱさ。
セシーグの目が見開き憶えたばかりの箸使いを駆使し剣を振るうより疾くと饂飩を啜る。
上に乗る天麩羅を箸で割り汁にしたし躊躇せずに喰らいつく染み込んだ汁と未だサクサクの天麩羅を
堪能し椀の縁に口を付け汁をのみ又饂飩を啜っては玉子を解いて又摺るる。
「且来殿。もう一杯所望致したい。出来れば玉子弐個欲しい。
こっこんな旨い物は食べた事がない。これは命の泉の雫一滴に値する」
大声を上げて且来に饂飩のお替りを強請る。
こうなってしまえば且来も引くに引けないくなる。何より自国の食べ物を気にって貰えるなら嬉しい。
「腹持ちがあまり良くないのが欠点ではあるが旨い食べ物は旨いからな。
小童。皆にも馳走してやれ」破顔して好きにしてやれと伝令官に手を振って許可を出す。
券売機の前に最初に並んだのはセシーグである。
異国の慣れない風習とやり方が楽しいのだろう。
伝令官が且来の軍票をぴっと鳴らし支払いを済ますとセシーグがボタンを押す。
発券された切符券を大事ににぎり次に慣れない頭を料理人に下げて切符券を渡す。
指を示され教えてもらい山から盆を一枚取る。暫し待つと所望し待ち焦がれる
熱々の饂飩が盆の上に乗り促されるままに横にずれると白米お握りが弐個ならぶ。
これは何だと睨んでいると別の料理人がこっちへ来いと呼べば味噌汁が乗る。
黄金海老の天麩羅参点セットである。
セシーグは自分が並んで受け取った盆を大きな背を回り且来の前に置いた。
ぐるりと廻り対の反対に座ると部下が同じ盆をセシーグの前に置く。
「頂きます候。当番兵。麦茶だ。麦茶やかんを持って来い」と騒ぐ。
「頂きます候です。私も麦茶を所望します。麦茶やかんを持てっ」
其れが何かも知らずとも且来が言うなら必要なものだろう。
且来の野太い声に当番兵が跳ねて飛びその後をセシーグの部下がつまづきながらも追いかける。
「全員。気をつけ。券売機成る物の前に列作れ・・・。
且来准尉殿に敬礼。安めっ。伝令官殿に敬礼。安め。発券開始っ。
良いか。伝令官殿が札を掲げて下さる。ピっと音がしたら貴様等好きなボタンを押して宜しい。
異国文字であるからおすすめを教えてやる。
セシーグ様がお食べになってるのっは黄金海老の天麩羅参点セットである。
左から参番目の上から弐番目だ。お値段も高いが量もお多い。
自分は少食だと思う奴は左の4上の6。冷やし中華デザート付きだ。黄色い麺が不思議である。
饂飩とは別の食べ物に蕎麦と言うのもある。且来殿の好物鰊蕎麦と卵焼きセットは
左の1上の2だ。以上が本日のおすすめだ。
あとは次回までに試食して置く。尚、一人参杯迄は且来様の奢りと成る。
食する前に頂きますを忘れるな。感謝の言葉だぞ。元気良く頂きますだ。
麺は伸びると言う現象を起こすらしい。味が落ちるわけでないが出来るだけ早く食せ。
各自盆を持って席に付いたら食事して構わん」
恐らくはセシーグの副官なのだろう。良く通る声で命令と号令を掛ける。
(こちら内線204。第弐中食堂。担当如月軍曹であります。
救援求む。応援求む。料理人若しくは饂飩を茹でられる者。おにぎりを握れる者。
誰れも構い構いません。すごい勢いで食材がなくなります。救援求む。
救援求む。もうダメ助けて・・・)
内線204の緊急連絡を受けて半信半疑で駆けつけた少尉はその惨劇を見て慌て
基地の大食堂を緊急閉鎖し料理人を縄で括って拉致し倉庫まで自分の足で奔り
饂飩と蕎麦と食材をトラックにつみこんで戻ってくる。
且来は且来で忙しい。どうやらセシーグは精錬妖精の中でも器用らしく
箸の使い方もすぐに憶えたが中にはそれが下手な者もいる。
彼女等の席の間を歩き回り手を握っては使い方を教える。
「箸は二本握っちゃいかん。ここと此処で挟んでこうやって動かす。
最初が肝心なのだ。箸の使い方は。こらこら御名子の癖に犬食いはいかん。
汁を呑みたいなら箸を此処に添えて椀を持ち上げる感じで。
顔を拭け。汁がべったりではないか。おにぎりを丸々口にいれるな。喉に詰るぞ。
割って良いのだ。梅干しが酸っぱい?そう言う食べ物だ。好き嫌いはいかん。
セシーグとやらは器用なのだな。どいつもこいつも燥ぎおって」
結局且来は50人前後と思われるセシーグの部下一人一人に声を掛け
手本を見せてやり手をとりあれやこれやと世話を焼く。
如月軍曹以下10数名の腕と腰を犠牲にして精錬妖精騎士達の最初の食事が何とか終わる。
勿論。最後に且来に習いご馳走様の号令が食堂内に響いたの言うまでもない。
饂飩一杯暇つぶしに話しを聞くつもりが随分と騒ぎが大きくなったと苦く嘲笑うも
どれどれ麦茶で喉を濡らそうと席に戻ると様子が可笑しい。
精錬妖精騎士セシーグと副官。それに小柄な女性騎士が書簡を捲り顔を付きわせる。
あの陸軍大将直属の黄色い腕章の伝令官も目を丸くして顔を寄せる。
「一般的には・・・一人で有るから姫様ではないのか?」
「厭然し。実際ですね。あの札は財布なんですよね
あの札の中に金銭が入ってる事ですよね?つまりは資産ですよね」
「確かにあの札は金銭変わりのものです。資産と言えば資産ですね」
「えっと。つまりは現実な結果として
且来殿は自分の資産を削り私達に食事を振る舞って下さったと言う事ですよね?
しかも満足するまで振る舞ったと」
「よく見ろ。あの者たちの顔を。私を含めてだ。
あんな旨いものを腹いっぱい詰め込んだぞ。至極至福の絶頂である。
あの者を見ろ。幸せ過ぎて女の癖に腹を撫で回して失神しておるぞ。
あれで不満をもらすはずもない。」
「且来准尉はですね。セシーグ様の手を取り優しく色々と教えていらっしゃいました。
自分も口の周りを布で拭いて頂きました。至福であります。失神する所でありました」
「私も箸とやら使い方を直されました。おっきな温かい手で。むふふ」
「自分は漢なので且来准尉の拳骨のほうが怖いです
それで結局どうなるんですか?そんなに問題になるんですか?」
「宜しいですか?私達は古からの知恵と習慣を生活の基礎としてるのです。
其れもうとてもとても大事しているのです。
只。今回少し問題もあるとは思わるのですが。まずは事実として。
・・・
且来准尉殿はセシーグ様を始め私奴達に己が資産を削り
満足行くまで美味しい食事を施して下さいました。
更に一人一人に手を差し伸べ声を掛け気遣い世話を焼いてもくれました。
古からの習慣に基づき私達は返礼しなければ成りません。
己が心を捧げ体を許し絆を結んで妖精のその力消えるまでお仕えするのです。
・・・つまりは。」
「夫様で有るな・・・。」
「夫様ですね・・・。」
「夫様であります。はい」
「准尉?奥さんいましたよね?」
「ちょっと待ってくれる?儂。喉乾いたからさ。ごくごく。
それで?夫って誰?儂?ごくごく。
厭。儂。妖精とか信じてないし、えっ?眼の前にいる?云々そだね。ごくごく。
夫って事は君たちはお嫁さん?ごくごく。あれなくなったぞ?
麦茶お替り持ってきてくれる?当番兵君。
そんな羨望の眼差して見ないでくれないかな。
儂が夫なら君たちは奥様?有難う。やかん有難う。ごくごく
えっと何人いるのかな?えっ。もう一回言ってくれる?
50と2?52のお嫁さん?えっと・・・えっと・・・ごきゅごきゅごきゅぷはっ。
軍嫁のしずゑママに黙っててくれる?倦怠期だけど怒ると怖いの・・・。
えっ?条件がある?
・・・・・・・。
倭之御國帝国陸軍且来素子准尉。
喜んで。精錬妖精魔法國に出陣します。
矢でも鉄砲でもおにぎりでも狐饂飩でも持って来い。漢の意地である。
漢且来素子。圧して参ります。夜が怖いけど・・・。
軍の命令とあれば致し方なしと気合を入れ後の二日を雑務処理と
軍嫁と猟犬と人形娘と過ごし且来はいざと精錬妖精魔法國に出撃と至る。
いろいろと問題と言わぬが花の秘密を抱え互いの絆を確かめ
次に目指すは妖精の國の旅路と成る。そこに巡るは又戦くさに命燃やして
いざ戦いの場所に且来は幾度目かにと血に染まる。
且来が精錬妖精魔法國に出立となる前日の昼。
内線204を管理し第弐中食堂を預かる如月軍曹に発注伝票が届く。
発注者は且来准尉の鬼嫁として名高い斑肌の道筋しずゑ上級大佐その人であった。
翌日のお昼に出立する精錬妖精魔法國特別列車の御客人52名
更に随行する将校2名分の幕の内弁当を発注致す。
幕の打ち弁当は三段重ねのお重を希望す。
御飯は出陣祝いとして紅白飯にすべし。
御客人方は肉も好むがよりに魚介類を好む故に多めなら良し
海老・蟹・烏賊・鰊等ふんだんに使われたし。
果物は酸っぱい物より甘い季節の物でまかなうべし。
尚、如何なる事情が有るにしろこの任務に失敗は許されない。
基地内の食料倉庫が空になろうとも必ず任務を遂行せよ。
小言一つ言うのなら私の名において排除処罰をも辞さんとす
中型銃剣の帯剣を使用を許可する。
(うちの旦那の分大盛りにしてくれる?最近痩せたって嘆いてるから♪)
且来の鬼嫁・道筋しずゑ大佐
「おっ。お玉もて。包丁握れ。鍋に蓋しろ。焼き物落とすなっ。
これより且来素子准尉鬼嫁様道筋しずゑ大佐の勅命により
中央大食堂の不当占拠及び料理人の拉致に向かう。
全員整列。台車確保。内線204第弐中食堂連隊出撃」
思わぬ大仕事であり其れが正式な大佐の命令と成れば失敗は許されない。
号令高らかに軍用車ならぬ倉庫台車を人力で圧しながら内線204第弐中食堂連隊と
名乗る一段は基地内を爆走し中央大食に突入すると怒声を寄声を上げて
食事を貪る兵士にお玉を振り回しまな板を投げつけ両人にしゃもじを突きつけ脅し拉致する。
当然。憲兵隊が輪を作り事態を沈静化を図る。
「落ち着け。話し合おう。要求はなんだ?賃金値上げか?それとも合コンか?」
「我々の指名は明日の昼間でに三段重箱幕の内弁当を54個の制作だ。
あの鬼嫁上級将官の命令である。一切の失敗と妥協は許されない。
まずは料理人だ。一人でも多く揃えろ。それから中央食材倉庫の鍵だ。
逃亡用・・・否。運搬用の台車も寄越せ。要求に応じなければ人質の頭をお玉で殴るぞ」
「待て。お玉は駄目だ。たんこぶが出来るぞ。其れはまずい。
わかった。まずは料理人だな。54人分となると多いな。少々腕が落ちても良いか?」
「う~ん。やっぱりダメ。妥協出来ない。後大盛り用のお重も欲しい」
「わかった。出来るだけ早く用意しよう。だから冷静にな。お玉振り回すなっ」
内線204第弐中食堂連隊の無謀な埠頭占拠に憲兵隊長は要求を呑みつつも
影裏に対策本部を設置し鎮圧部隊の出動待機を命じる。
「要求は一時的には呑むそうだが・・・。武器がお玉をなると厄介だ。
催涙ガスを使うか?・・・厭、食材が駄目になるな。
むこうがお玉としゃもじと成るとこちらはフライパンとすりこ木で応戦するしかないな」
どこまでが真剣なのか分からないが彼等も真剣である。
中央食堂が不当占拠され高級食材を奪われると発券機に売り入れの札が張られてしまう。
つまりはうまい飯が喰えなく成る。重要な問題で有る。
「内線202第壱小食堂連隊3名。大義の為に助太刀致す」
がらがらと使い使い込まれた台車を圧して別な食堂連隊が到着する。
「おお。助太刀歓迎するぞ。饂飩の釜を見てくれるか?茹で上がったら上州味噌に絡めてくれ」
「何?茹でた饂飩に味噌を絡めるだと?内線204隊長。其れは試食が可能か?」
「料理人の数が足りない。彼等と交換に10人分の饂飩の味噌和えを出してやる」
「連れてこい。縄で括って連れてこい。この際基地の外の料理屋の女将を拉致して来い。
何?貴様。ツケが溜まってるから顔を出せない?払え。直ぐ払え。厳命だ。」
「高級食材。通りま~~~す。黄金車海老他新鮮な魚介類とお肉のデパート。
通りま~~~す。そこどけて下さ~い。退けないと踏んじゃいますよぉ~~~」
うず高く山の様に箱を積み上げた台車がよろよろと通路を進む。
流石に高級食材の箱を崩したら後が怖い。憲兵隊も体を捻って道を開ける。
「お邪魔しま~~す。あの呼ばれたんですけど。御弁当作るとか?
50人くらいならそこまで大変ではないのかしら?」
真っ白な割烹着姿に買い物籠を携えた小料理屋の女将が顔を出す。
「女将さん。助けてください。問題は人数とかじゃないです。
味に煩いんです。異国のお人ですごく美味しそうに食べてくれるです。
僕らの倉庫空っぽにするんです。二日で全部か空っぽにするんです。
僕らも料理人です。意地も有ります。妥協なんか出来ません
ほら。あの方です」内線204連隊の隊長はお玉を振り回しながらも
騒ぎをと言うより美味しそうな匂いに釣られてひょっこり顔を出した
精錬騎士団の一人を示す。
「あらこの方が御客様ですのね。本当にお耳とんがってるみたい。
あのちょっと手伝って下さいませんか?この方に割烹着を・・・」
基地の外で評判の小料理屋の女将が腕も良ければ剛腕でもある。
誰もが旨いと評し誰もがその剛腕に頭があがらない。
「ほら。貴方達もいがみあってないで。手洗ってらっしゃい。
手伝うのよ。手伝いなさいよ。手伝って言ってるの」ぽかぽかと手近な兵の頭を叩く。
一度こうなると手がツケられない。下手に怒らせたら刺し身包丁で参枚に降ろされる。
いつの間にかお玉とフライパンを構えて歪みあう列が崩れ
美味しい御弁当を作りたい一心の内線204第弐中食堂連隊と
とても旨い試食品にありつきたい憲兵隊の思惑がいがみ合いを溶けて流せば
料理人が手を動かし女将が仕切り精霊妖精騎士が味見をし憲兵隊がおこぼれ有り付き
やがてと言わず明日の時刻に向けての御弁当作りが佳境を迎える。
その当日の昼もまもなくと成ればある場所迄の臨時列車が汽笛を鳴らす。
「随分の妖精の女性入れ込んでいるのね。全員に御饂飩おごるなんて」
「つい興が乗っただけである。後先考えぬのは悪い癖だな。
弁当の手配ご苦労である。面目が立つ。助かった。」
倦怠期と言えども別れの時位はしとりと濡れる。
「はい。これおやつ代わりに。早起きしたのよ」
料理は出来ても余り台所に立たないしずゑが珍しく軍夫の為に折り詰めを拵える。
「軍の夫も元気で留守が良いのは確かだけど。手紙位はよこしてね」
甘え下手なしずゑがこの時位はと人目は憚らずも且来の首に手を回し
体を預けて接吻を強請る。
駅のホームに短く汽笛がなればそろそろ出立の時刻も近い。
「んんっ。行ってらしゃい。貴方」互いの舌を絡め唾を注げば糸を引く。
その時機関車の運転手は確かに列車がぐらりと揺れたと覚える。
大きな背中と尻を軍嫁に向けて列車に乗り込めば何か不思議な物でも
見つけた様に精錬妖精の騎士達のほぼ全員が窓にぺったり顔を付けて覗いている。
「よっ。妖精の御國ではしないのかしら?接吻とか」
列車の硝子窓一杯に顔を並べ物珍しさと言うよりは羨望と嫉妬の交じる怪視線を
爛々と浴びせられ果てさてどうすれば良いのかと胸前で小さく手をふって誤魔化せば
今がその時出立で有ると機関士が警笛紐を引いてぼぉ~~~と警笛吠えて車輪が回りだす。
且来は態と少し時間をかけて用足してから席へと向かう。
それなりに時と絆の紐を長く伸ばして結び目を作れば情愛も深くなる。
意外とシャイな所も有る且来は列車旅の窓の向こうの別れを余り好きとは言わない。
「待たせたな・・・列車旅の別れはしんみりするのでな・・・
うぬ?どうした?皆の衆?随分と・・・」
がらりと車両扉を開けて席につこうと脚を勧めた且来の前に未だ寝れぬ尖り耳の顔をずらりと
並べ妖精騎士達が興味津々御めめ爛々とばかりにこちらの顔を睨んでる。
「夫様。あっあれは何で御座いますか?」
「夫様。軍奥方様と何をしていたのですか?」
「軍奥方様が。背伸びして。こう腕を首に輪回しなにやら口と口を合わせて・・・」
なにかと思えば接吻の事らしいが仕草を真似る姿ははたで見れば少々滑稽である。
「ああ。あれは接吻とか口づけとかキスとか言う物でな。
好意をもつ漢と御名子が互いの絆を繋ぐ時とかに確かめる時などにだな・・・」
「せっ。接吻・・・」
「口付け・・・」
「きっす・・・」
ごとごとと木枕を鳴らし加速して行く車両の中で小波の様に言葉が流れる。
「夫様。そそそそ。そのキッスとやらは私達にもして貰えるのであろうか?」
少し後ろの席で質問が有るとばかりにびしっと手甲を付けた腕が上がる。
「軍奥方様と夫様は縁を結んで長いと聞く。それ故にあんなに長い時間
人前憚らず互いの絆を確かめ会う事が許されるのではないか?羨ましい」
「いや。待て。奥方様という言葉は妻であると倭之御國なんでも辞典に書いてある。
つまりだ。軍奥様が妻と言う事は我らも妻である。
え・・・縁を結ぶ機会があれば。若しくはそれを作ればだな。
せせせせせせっぷんもして頂けるのではないのか?精進せねば」
途端に車内が騒がしくなる。ペラペラと紙を捲る音は倭之御國なんでも辞典とやらを
皆で捲っているのだろう。あちこちで嬉し恥ずかしとばかりに声が弾む。
「黄色腕章の小童少尉。説明しろ。妖精族の御名子は接吻ひとつで嬉々爛々としておるぞ」
自分の荷物と軍嫁しずゑの折り詰めを網棚に押し込んでやっと且来が席に尻を納める。
且来が席に収まると四人掛けの席が狭くも感じる。
その隣には倭之御國御上からの随行人。黄色い腕章を腕に巻く近藤少尉とやらが苦く嘲笑う。
どうやら且来としずゑの絆結びの接吻を観た妖精騎士セシーグの質問の槍玉に最初に上げられたのは
近藤だったらしい。それなりに経験は合ってもいざ上手く人に説明するには気恥ずかしく
のらりくらりと誤魔化していたらしい。
「これほど。貪欲だとは僕も思わなくて。ご迷惑を。
えっとですね。僕もまだ分からない事も多いのです。何せ異国も異国。大陸飛びの御國人ですから。
ただ。妖精御國生まれの方々はなんて言うか・。その余り直接肉体的な接触はしないようです。
そのあの・・・色々致す時なのどは・・・本来の姿というか・・・
くっ。詳しくはこれ読んで下さい。はぃ。精錬妖精魔法國なんでも読本です」
「御前。伝令官の癖に手抜きしてないか?いろいろと。
妖精妻の件も事前にわからなかったのか?
漢が資財を削り御名子に馳走し世話を焼けば結婚の儀に値いすると何故言わなかった?
お陰で50人もの妻持ちに成ったではないか。夜伽とかどうしたら良いのだ?
当番せいか?籤引きか?何より嫁が50人だぞ?饂飩一杯どころではないんだぞ?
それだけ養おうと成れば金にも煩くなるわ。痩せたらどうしてくれる」
自分の状況を思い出し噛み締めた且来はむかついて近藤の頭に拳骨を落とす。
「妻・・・結婚の儀・・・よっ夜伽・・・頑張らねっ」
席向かいでは且来が話した単語の一部に過激にセシーグが鼻息を荒くと拳を握る。
昼に基地駅を出た列車は夜半すぎ辺りまで線路の上を奔り続けるらしい。
最近では其の番号も二桁に乗るかと知れる漢縁之御国の陸の船も
何かと目にするがこの列車は大陸飛びの御客を乗せてるとなれば
陸軍ところか海軍までが事前警告を飛ばしているから襲ってはこないだろう。
「あれが夫様の敵船と観えるな?どうやって堕とす?イグ」
「はっ。此処から観てもそれなりの大きさでありますが石竜よりは小型です。
それに空からの攻撃に弱く。陸を奔る船とは言え線の上を奔るだけと知りえます。
今は我らも魔法を使えない故。鶏竜を弐羽程ぶつければ転がるでしょう
夫様の命あれば今直ぐにで堕としてご覧に入れます」
席向こうのイグと言うなの副官が堕として魅せると断言する。
「あのぉ~~~。今日は大丈夫です。ちゃんと我軍から通達を飛ばして
賄賂の蕎麦を馳走してますから大丈夫です。大人しく座って下さい」
「小童も大変であるな。儂に付いて大陸飛びするところか
敵軍に塩を送るとはご苦労である。それにしても陸の船を堕とすとも言っておったぞ?
妖精族とは血気盛んな御名子が多いらしいな。あははっ」
自分たちでさえ陸の船を堕とすのは苦労する。それを鶏なんとかで落とすと聞けば
流石の且来も腹を抱えて久しぶり嘲笑う。
がらりと車両扉があくと旅の列車の風物名物が入って来る。
「え~~~。御茶はいかがでしょう。冷たい冷凍みかん~~~。
軽食サンドイッチはいかがぁ~~~。旅のお供に倭之御國何でも辞典第3巻もあるよぉ~~」
車内販売である。勿論妖精騎士団兵であるが首から皮帯を垂らし胸前に抱える箱に
雑多とばかりに食べ物や菓子を詰め込んでいる。どっから持って来たのか
車掌帽子も斜めに被り声真似さえもちゃんとする。数が多いから後ろには台車を押す者もいる。
「私は冷凍ミカンと御茶。夫様には御茶とサンドイッチとやらを。私が払う」
「毎度っす。セシーグ様。御茶は熱いのと冷たいの何方にしますか?
冷たいので?二つとも。はい。お会計は五百八十円でっす。どうも。
え~~~。サンドイッチにミカンいかがっすかぁ~~~」倭通貨の計算も素早く熟す車内売り。
妻の務めと言うには未だ拙いがそれでも妻らしく気をつかい細い指で御茶箱を掴んで且来に渡す。
あの僕は?と言うように顔を指差す近藤の存在は完全に忘れられていたらしい。
大陸が違うと生態系も含め種族や風習・文化・習慣が随分違うはずと知れるが
且来と近藤が頭に描くそれ以上に自分達が愚かであると気がつくのは又と後のことである。
「あの者達は大丈夫であるのか?窓を開けて風を入れるのも良いのだぞ。」
暫し列車が奔るとそれ程でもないが部下と言うか且来の妻の数名が気分が悪いとなる。
何処ぞの小童共と同じに燥ぎすぎであろうとも思うが軽い列車酔いと成るらしい。
誰かが壁の呼び鈴を押せば直ぐに車掌と言う腕章を巻いた衛生兵が走って来て
直ぐに硝子窓をあけて風を入れたり座席を詰めて横にならせて休ませる。
且来も席を達具合が悪いと唸る彼女等の額に手を当てたり手拭いに水を含ませ
顔を拭いてやるなど性格の豆さを生かして世話を焼く。
大事には至らずと頃合いをはかり落ち着いたと思うとセシーグに尋ねる。
「旅の恥は書き捨てとも申すからな。余り気にする事ではないだろう。
さて。先程魔法が未だ使えぬと言っておったな?儂がその類は信じても居らぬが
御茶を買って貰えなかったと未だいじける小童は其れが有ると言う。
お主等と儂らの違いと言えば耳の形がちと違うくらいしか思えるしな。
ここらで少々手間を掛けても教えてくねぬか?」
「はい。夫様。
此処は私奴。ソレヌと申します。主に部隊の記録や古書簡のとの照らし合わせ。
つまりは事務関係を司る者とお見知りおきを。
今こそ個の大陸に脚を付けて折りますが。それ故に弊害も有るので御座います。
確かに私達は魔法と言うものを友として生きておりますが
個の大地には因がないので御座います。私共からすれば至極と不思議な事なのですが
私達は因との結び付きがとても強く。因がなければ魔法も使えず。
体の自由も満足とはいきません。本調子ではないと言えば宜しいでしょうか」
「あれだけ元気に騒いで折るくせにそれでも本調子でないと?して因とは?」
車内売りが持ってきた倭之御國なんでも辞書第参巻はどうやら絵柄入の物で
夜の営みに関しての物らしい。頁を捲る度にわぁわぁきゃあきゃあと黄色い声が上がり
列車酔いに苦しむ者までも何処吹く風で辞書を覗き込む。
ソレヌと名を冠する妖精騎士が綴る魔法の噺は且来も面白く後学の為に多いに役立つ。
五つか七つもあのか九つめはと噂される五大陸のその2つ目の大地。
その大地に営みを旅する者はつまりと且来達とは随分と違うらしい。
例えば猿と言う種をみてもこちらの地では小型で肉食であっても
あちらの地では大型で果物を食すと成れば同じ猿でも随分違う。
それは人種人類に置き換えても同じであり且来と同じ人種が大半の地を埋め尽くしても
其れとは違う人種が別の土地にいるのが当たり前である。
2つ目の大陸は確かに他の大陸とは距離も遠く。種として祖先が同じでも枝と別れ
それぞれの土地で別々な形を辿った人成る。
其れが2つ目の大陸の約半分の土地を手にする精錬妖精族と成る。
まずは彼等彼女の友となる魔法成る物のに付いて紐解けは。
先ずは大地に染み込み湧きでて土と空気と空までも埋め尽くし覆う因がある。
精錬妖精の著名な学者の著者を紐解けば因とはある種固有特殊な粒子とも因子とも
言える存在でその大地と深く結び付く。目に見えぬとも因を友とする者は
その濃さと薄さも感じる事で出来ると言われ。因は大地に深く結び付く。
因があればこそに本来はもっと古風な呼び方であるが解りやすく言えば魔法。
その魔法の源で有るのが因であり。因使いと言うのが本来は正しく。
又は因法と呼ぶのも又正しい。その因法も又多種多様の技があるが
根本的には大地を流れる季節とこれも縁を結ぶ。
大まかにざっくりと示すならば。
春因は 組成治療 恵みを齎す技であり
夏因は あらゆる攻撃を敵に突き立てる破壊の象徴で有り
秋因は 変化を司り術者の変姿を促し命を削る病の御霊と謳われる。
冬因は 死を示す力の其それである。
飽く迄も妖精族が信じ友とする因の物であり似て否ぬ物もあるとしる。
「こう見ても私奴は春因の使い手で御座います。しゃっくりが止まらぬ時はおまかせを」
セシーグが大真面目に言って自身を示す。
「あれは横隔膜の痙攣である。水を飲んで鼻を摘めば・・・いてて・・
腹を摘むな。摘んで撚るな。黄色小童ね・・・儂は真実を・・・」
「言っちゃいけない事も有るんです。空気読んでください。
其れより目的地がちかいのかもですよ?ほら彼女等も元気に。」
促され目を車両に目をやればさっきは列車酔いに伏せた妖精女が窓を開け
勢い良く飛び出せし枠を伝って列車の屋根に飛び上がる。
一人二人と飛び出し轟音風切る列車の上で何かを浴びる様に手を広げる。
「元気過ぎるだろ?危ないぞ。止めなくて良いのか?小僧」
「ぷぷ。あれが彼女等の本当の姿です。
可愛いですね。お嫁さんがあぶないとばかりにお腹揺らして心配してるし。ぷぷぷん」
余りに急だったので気づかず席を立ってしまったのを誂われ何くそばかりに拳骨を飛ばす。
「未だ駅とやらは先ですが。因石が見えてきました。良き風でも有ります。
力が戻ります。漲ります。やはり因石を運んで来た甲斐が有ります」
列車内が騒がしく成ったかとおもうと妖精族達の顔色が艶と輝き色も唆る。
落ち着いて席に座るセシーグも息を整え因を含む風を味わってるようだ。
その肌姿がキラキラと光を弾きに時に瞬き半透明にも透けても見える。
「我が心と夏の因を結びて我が夫様の敵船とやら。
今とこの時我が夏因法の片鱗見せたる故に四因の法のそのひとつ・・・
「待って。詠唱してる?。詠唱してるの誰?且来准尉。止めて。
どっかに船有る。陸の船来てるじゃない?やばいから。止めて。准尉」
事態を把握し近藤が警告を発する。
「止めるって何を?儂が止めるって何をだ?」
且来も戦人であるか殺気のひとつも背に奔る。それでも何をしたら良いかと困惑する
「ひとつふたつと数えて夏の因。稲妻来たりて刃となれ。堕ちろ。雷撃槍二本!」
いつの間にか遠方遥かの空に暗々とした雲がわき豪雨が堕ちている。
そして稲妻の槍がぴかりぴかりと二度光る。
同日同刻と言っても更に少し前
「艦長。宜しいのですか?我らは倭之御國の賄賂の蕎麦を喰らっております。
あの列車と岩には近づくなと命令も本国からきつく言われてます。
艦長に至っては参杯もお替りをなさってます。ずるいです」
「賄賂の蕎麦は美味かった。然しあの珍妙な石岩をほっておくわけには行かぬ。
好機であればこそ。勝機と昇進の糧と成る。記録は取って有るのだろうな。
「はっ。感度は良好ですが・・・。気が引けます。
休戦協定を破ってる様な物ですよ?蕎麦美味かったし・・・」
「どいつもこいつも臆病風に拭かれたか?
これだけの距離が離れているのだ。記録を本国に送れば昇進が約束・・・」
「上空に異変。雲です。雨雲です。うひゃ冷たい。氷混じりの雨です。豪雨です」
「天気は快晴だぞ?どうなってる。予想図に何もないぞ?」
「この船一体だけに雨が振ってます。可笑しいぞ。有りえないぞ?
雲の中に雷視認。渦巻いてます。ものすごく怒ってます。
雷が怒ってます。あっ光った。ちょ。直撃っ」
がらがらどっしゃ~~~ん。がらがらどっしゃ~~~ん。
天空に弐度光った稲妻は雷鳴を弐度鳴らして漢縁之御国陸の船十弐番艦をほぼ直撃した。
「そっ損害報告。早くしろ」
「船体破損ほぼなし。奇跡です。あっ。エンジンルーム管制不能。
戦闘システム沈黙。回路がショートしてます。一砲たりとも射撃出来ません。
航行システムダウン。自動思考機構沈黙。各種電気および電子機器回路破損。
それから前方及び後方軌道線完全損傷。帰港出来ぬところか壱メートルも動けません。
漢縁之御国陸の船十弐番艦。大破。負けました」
「又か・・・又。馬鹿な指揮官のお陰で船を捨てるのかよ・・・」
過去にも同じ様な経験をした副官が悔しさに沈黙した機材に八つ当たりする。
「岩塔周辺に動き有り。えっと。灯通信ではありません。
旗?旗を振ってます。手旗信号?そんな古いだろ?自分では読めません。
誰か。解る人?あれって海の船で使うのか?」
「こちら。元油運びの船乗りの笹木です。えっとなつかしいな。
赤と白旗とは。・・・えっと。蕎麦代かえせ馬鹿野郎。もう一発欲しい?
警告です。敵様怒ってます。猛烈に怒ってます。繰り返します。
蕎麦代かえせ馬鹿野郎。もう一発欲しい?蕎麦代かえせ馬鹿野郎。もう一発欲しい?です」
「記録を捨てろ!HDと写真をフィルムもだ。全部甲板で燃やせ。早く」
これも又適格に遠慮無く艦長等差し置いて副官が怒鳴る。
電光石火の如く記録装置をからHDを抜き取り甲板に係が奔る。
各所から直ぐに岩塔を盗み撮りした写真画像とフィルムとHDが集められ
岩塔の下に群がるであろう輩に向けて見えようと見えまいと掲げ振り
それから甲板の上に写真を置いて火を付けて燃やす。フイルムは先を引っ張って感光させる。
電子式のカメラを大きな金槌で鉄屑になるまで汗だくに成って叩く。
記録媒体のHDは床に置いて拳銃で撃ち抜き金槌で又潰す。
そこまでしてやっと顔を上げ岩塔と見ると手旗の変わりに艦橋に無線が奔る。
「あぁ~~~。こほん。
倭之御國帝国陸軍且来素子准尉で有る。あの御免なさい。すまぬ。
うちの嫁と言うか・・・そのやっぱり嫁がだな。
ちょっと張り切って粗相をしたようだ。
然しそちらも悪いであろう?鰊蕎麦奢ったのに指定区域内に留まるのは
協定違反に値するぞ。蕎麦代返して貰えるのだろうか?
それに嫁が未だ暴れ足りないと騒いでおるのだ。なんとかしてくれ」
「あ・・・且来殿であるか・・・やはり貴殿であったか
以前も馬鹿な司令官のお陰で干瓢海苔巻きを握らさせたものである。
カステラでどうだ?我が刻のカステラは旨いぞ
其れに我艦は大破したも同じだ。一歩も動けんのだ。かすてら・・・
「えっ。カステラと言うのはだな・・・とても甘くて・・・
何?苺大福はないのかって?何処でその知識を仕入れてくるのだ?
えっ。約束を違えた敵軍は家族全員皆殺ししても文句が言えない?物騒だな。君たちは
それが厭なら苺大福よこせだど。あと心太も食べたい?通な菓子を知ってるな。御前は。
あ~~~。すまん。ちょっと嫁の数が多いものでな我儘でいかん。
ちなみにそちらの船を沈めたのはたった一人で有る。其れが何人もいると知ってくれれば
儂の苦労もわかってくれよう。えっ?早くカステラよこせとな。
え~~~。協定破りの代金としてカステラ・苺大福・心太。
儂はお萩が良いな。お萩。兎に角だ。迅速に対応されたし。
嗚呼。お萩食べたい。鯛焼きもよいな。出来れば白餡で。嗚呼カステラ食べたい」
「ふっ。増えてるぞ。且来准尉。増えてるぞ。無線切れたし。
早急に手配しろ。早く。この馬鹿。」激昂して蹴り上げたのが指揮官椅子の台座であり
尻椅子を蹴り上げれた司令艦は「御免なさい・・・僕のせいです」と項垂れる。
その後。
漢縁之御国漢縁之御国陸の船十弐番艦艦長代理となった実家が海苔焼き屋の将校と
こちらも又最近には背丈も高くなり美少年と噂さされ正式に中央管理基地司令官となった
二人の間で正式な謝罪と國違いの客人の粗相の経緯が説明等のやり取りが行われ
蕎麦代の賄賂の代金と且来の嫁と言えば正しいのであろうがとりあえずは客人達が
所望した各種漢縁之御国自慢の菓子は至急速攻に本国で生産発送され
一旦中央基地に最新鋭陸の船十五番艦艦がきっちり納品し精錬妖精軍が本国に
帰巣する朝ギリギリに弐連機関車と主砲車参両編成及び貨物列車八両の
特別列車の運行により無事に届けられる。
噺戻れば雷撃の後に。
精錬妖精の因法と言う物を見たと言うか見せつけられた且来はさすがにうぬと頷いた。
もっとも其れが遠くであった為に実感わかぬと言うのが本音であるが
そこはさて置きと揺れる列車の通路で妖精族の慣例習慣に則り小さな儀式が行われる。
且来の前に先の通り堕してみせたイグが膝をおり屈む。垂れた頭に且来は手を乗せ撫でる。
「大義であった我妻イグ・メリン。
其の働き立派であったぞ。次回は敵を撃つ時はもうちょっと早く知らせるように。
うぬ。良きはたらでった。(これで良いのか小僧?)」
「感涙の極みで御座います。お言いつけの通り次回は事前にお知らせします
有難う。御座います。夫様」イグは頭を撫でて貰い嬉しそうに声を震わす。
「きゃぁ~~~良いなっ。良いなっ。イグ様良いなっ」
「我が妻だって。私も呼ばれた~~~い」
「船ないかな?あれを沈めれば良いんでしょ?もう一船位いないかな?」
妖精族に取って夫と認めた漢に体を振れてもらうのは栄誉である。
其れには夫に対して奉仕なり役に立つなりの実績を必要とする。
イグは確かに先走ったものの先に言ったとおり船を堕としたとなれば
且来は夫として務めを果たす必要があった。
「小僧。驚いたぞ。儂らがあれを堕とすのは気が滅入る。
それを魔法とか因法とかで一発とは驚いた。それに御前は感じるか?」
「えっ。因ですか?う~~~ん。窓を開けても僕には風くらいしか」
「そうなのか?セシーグを見ろ?時々透き通ったり輝いたり
肌の艶も良いと見える。それに何やら儂の膝も泣かぬ・・・」
「夫様は因をお感じに成られているのですか?」意外そうセシーグが問いて返す。
「解らぬ。否然しだ。儂は戦で怪我を負った身でな。時に体が軋む事があるのが。
その痛みが溶けて消える。調子が良いのと言えば因とやらのお陰かも仕入れん。
其れとは別に気になる事もある。主等は儂を夫と見るのは良い。
理由も解るが。儂より小童の方が付き合いが長いはずだ。
飯の一つくらいは振る舞う機会もあったであろう。だが。何故にこいつはモテぬ?」
「えっ?それをお聞きになるのですか?どうお答えしたものか?」
真面目でもあるが空気をちゃんと読む技を心得るセシーグはこの場をソレヌに押し付ける。
「えっと。僕もちょっと不思議に思ってました。
妖精族の方々とのお付き合いは半月程になりますし。食事とかも一緒に。
それでも友好的な感じではありますが、何故か友情とか好意とかには
寧ろ良く御話するように成ったのは且来准尉と引き合わせてからなんです。不思議です・・・」
「お答えするには勇気がいります。他国の雄の方に恥を欠かせるのは気が引けますが
私達は古きからの習慣を大事にしております。時に厳格と言うほどにでございます。
同時に目も良く光を捉え音は良く聞こえ拾えます。気配を察すれば事情も知りたいと思います。
貪欲な種族で御座いますね。近藤殿には國違えど優しく接して頂いているのですが
食事などを施して頂いてもそれは経費とお呼びになる物。つまりは国費ですね。
私の夫様は己が資財を削りましたが、近藤殿は國の財布からお金を引き出したに過ぎません。
それからお腹と言うか。体が細いと言うか貧相すぎて。おこちゃまみたいで・・・コホン」
「がーん。僕18ですよ?成人してますよ?痩せてるのが駄目なの?僕もてないの?」
「中には。極稀には痩せ雄好きの者もいるやもしれんが。稀である。
我らの國では太るには食べ物が多く要る。財力がないと太れない。
つまり太っているなら財力がある。それとやはり戦いに出て傷を得るのも雄の誉。
細い体に戦傷一つないとなれば。我が国の雌との結婚は諦めよ。近藤殿」
ソレヌの後を引き取り席向こうから顔だしイグが微笑む。
「ガーン。ガーン。且来准尉ばかりずるい。52人も奥さんいるのに未だ娶る気だ。
「むっ。悪口言った?小僧。且来大将の孫でも上手く行かぬ事も有るだな。うははっ」
又一つ妖精族の世情を知った且来は以前娘に噛まれて鈍くしか動かぬ拳を握り確かめる。
「近藤~~~~(少尉)
貴様。鶏と言ったな。鶏とぉ。
ついさっき列車の中で鶏が運ぶ籠に乗って大陸を渡ると。
確かに儂は笑ったぞ。鶏が空を飛ぶのかと笑ったぞ
否然し。否然しだっ。
あれは何だ?あれの何処か鶏なのだ?
竜ではないか?ちょっとした山だぞ。あっちは。この世いちゃいけない大竜ではいか?
しかも儂の顔が不細工で気に食わないと鼻息荒くしておるぞっ
竜は飛んでも鶏は飛ばないのっ」
だって。書いて有るんだもん。妖精さんちのなんでも家族計画のご本に
ほら。74頁に。挿絵もあるじゃん。鶏竜って書いてあるもん。
アレ・・・?鶏冠しか似てないです。それもあっちのは鶏冠って言うより角ですね。
ほら。准尉。機嫌悪くなると火吹くって。森とか街とか燃やすって。
すごいですね。アレ?やばくないですか?そ、ソレヌさん。躾けとか大丈夫ですか?」
終着駅についた且来と近藤が最初に見た物は確かに乳白色輝く因石で有るが
其の回りに鎖と枷に繋がれた空想上の動物所謂。竜若しくは飛龍の前で
声を上げつつも小芝居に明け暮れる。確かに妖精族の地でもそれらを鶏竜と呼ぶが
発音が微妙に似てるだけで厳密にはそう呼ばないし且来が知る玉子を産む鶏は全く違う生物である。
且来はもう少しと鶏竜都やらを眺めて居たかったが明朝早くにも大陸飛びをしないと
行けないと成れば体を休める必要も有る。
何せ相手は鶏竜である。あんな大きな生き物に乗るとなれば初めてでも有るし
多少の気後れもするだろう。相手は想像上の生き物でもある。
それでも且来は私室と与えられた天幕に妖精族騎士団の代表役セシーグを呼ぶ。
「夫様。私を及びに成ったと聞いたのですが・・・」
こちらも又私服とも言わぬとも鎧を脱いで少し肌が露わな民族衣装に着替えた
セシーグが少し緊張した顔でで天幕の扉布を潜る。
「往々。此処までの旅の案内ご苦労であった。
労を労うほどの事ではないが腹の摘みにでもとな。
列車の弁当の時に気にしていただろう。軍妻がつくった物であるがいなり寿司だ。
半分残しておいたのだ。好きに喰え」まる樽の上の折り詰めを指さす。
「そっそんな恐れ多い。軍奥方様の作ったものなど。私奴が頂くなど。
それに旅路も未だ残っております。何の功績もお仕えもしてないので
あれば褒美を頂く等滅相もありません」
「儂が食って良いと言ってるのだし。功績は十分起ててると思うが
奉仕の褒美であれば食べると言うのなら。
儂はこれから湯を浴びる。儂の背を流せ。セシーグ。それで良かろう」
「わっ私がですか。はっはい。夫様。喜んで御背を流させて頂きます」
驚きと嬉しさんの余りセシーグの尖った耳がピクリと跳ねる。
且来が気にしたの先ずに対面。意識したのは格付けである。
勿論。彼等妖精族にそうゆう風習があるのは知らなかったから
近藤の入れ知恵と助言有りきの事である。
事の流れがあったとは言え先んじて且来に頭を撫でて貰ったのはイグである。
イグはセシーグの部下で有り準じる者であればそれ以上にセシーグが寵愛を受けるべきである。
しかしセシーグは功績を積んではいないから格付けが崩れるし面目を潰してしまうことに成る。
それは良くないから近藤は具申して来たのである。
それを正し与えるのも夫たる者と唾を飛ばして説教までしてきたのだ。
なるほどわかったとポンと膝を叩いて且来はセシーグを呼びつけたのである。
且来の天幕からみじかい距離を歩くとは言えその後をセシーグが後で頂く事になる
褒美としてのいなり寿司の折り詰めを手に持ち掲げてついて入る。
回りの妖精族達の者はその様子を息を呑み言葉を呑みこみじっと見つめる。
且来の脚が風呂湯天幕となりその後ろをセシーグが箱を掲げて歩く。
且来が風呂に入りその世話をセシーグがすると言う妻としての務めを行うと
皆がが知るのだ。この栄誉を一番先に受け取れるのは誰も差し置いても
先んじてセシーグで有るとみなが知る。
時に妖精族は風呂桶に水を沸かして入浴すると言う習慣と知識を持たない。
普段は森奥の湖や川側で水を浴びる行為を入浴と称する。
その習慣に習っても良かったが責めて温かい湯を用意してくれと頼むと
雄の妖精族が夏の因法を使い水を湯と沸かしてくれた。
風呂天幕の仕組みとなれば簡単な物で土の下にそこそこ深く穴を掘り
其の上に格子上に鉄の板を組み上げる。其の柄に且来が経てば
礼儀とした目隠しをした二人の妖精雄が付きそう。
元々耳が良いし感も鋭い種族であるなら五感の一つを削ってもさほど苦労せず
当たりの状況は解るらしい。
「失礼します。夫様。それでは入浴の儀。私奴がお手伝いさせて頂きます」
全裸で天幕布壁の前に立つ且来の背後ろではらりはらりと布地が解かれる音がすると
大きな背をセシーグが手を添えてなぞる。視覚を塞いだ妖精雄が湯桶を掲げ湯を流すと
背に流れる温かい湯に混じりセシーグが手を添え体を押し付ける。
「ああっ」初めて触れる夫の背肌の感触にセシーグが喘ぐ。
押し付けた四肢がピクリと跳ねて震えるとセシーグは又喘ぐも其の体が光る。
湯が流れる度に背をなぞり掛からが半透明に助ければセシーグの体が且来の体の中へと溶ける。
ゾクリと背筋に軽い刺激が刺さるが悪いものではなく。寧ろ優しく温かい。
少し大きな何かの塊が背から体の中に入ったと思うとそれは且来の体の中で蠢くが
それもまた気持ち良くも何処か楽しい。何がを探すように温かいセシーグの塊は
且来の体を此処へ行ったりそっちへ行ったりと楽しげにも嬉しくも動く。
体の外に妖精雄が石鹸を乗せればそれをセシーグの塊が受け取り
ぬるりぬるりと荒いだず。風呂であれば汚れも落とす事でもあれば
当然となり石鹸を握ったセシーグの塊はやはりと戸惑いを見せるが
妻の務めとなれば下腹部にも綺麗に洗う。時々動きが止まるのは
まじまじと且来のそれを監察してるのであろう。
全身が泡塗れに成れば妖精雄がまた上から御湯を掛けて荒い落とす。
その間もセシーグの塊は楽しげに愛おしげに且来の体の中で踊り続ける。
「綺麗になったでしょうか?夫様。ごゆるりと入浴の儀堪能して
頂けたなら至高の幸せで御座います」
妖精塊から人姿へと戻り且来の前に大きな乳房と尻を揺らし傅く。
「うぬ。気持ちよく風呂を堪能したぞ。我が妻セシーグ。
褒美のいなり寿司食するの忘れるなよ。他の者もご苦労」
傅くセシーグの頭を撫でてやり衣服を着正すと少し足早にと私室天幕に戻る。
はたはたと天幕に戻ってきた且来は外の警備兵にも聞こえぬように
心の内に一人悲鳴を上げる。
(あっあれは何だ?あれがセシーグか?セシーグなのか?
儂の体の中入ってきたぞ?何か塊が体の中で踊って跳ねておったぞ?
落ち着け。儂。こうゆう時は参考書だ。何せ異文化だからな
えっと。えっと。妖精族のお風呂の入り方。これかな?これは御飯の頁だな。
こっちでもないな。避妊の仕方って儂。漢だしな。
これだな。これ。えーと?
妖精族は物質的な体と因体と呼ばれる精霊体若しくは妖精塊の両方の体を持つとな。
通常の認識としては見て触れる事の出来る物質体はその本性の妖精塊が
服を着てる状態であり。ふむふむ。服を脱くと言う状態が物質体から妖精塊に成った物である。
なっ。なるほど。見て触るのが物質体であるなら。云々解るぞ服を着てるのだな。
風呂に入るのではれば裸になるのが妖精塊だな。合ってるではないか?
夫婦が風呂に一緒に入るのだ。互いに裸で当然であるな。云々。
妖精族同士が風呂などに一緒に入る時は妖精体となった二人が絡みあい接触する事で行われる。
ちょっと解らんな?絡み合う?接触?違うな。さっきのはもっと楽しげで激しかったぞ?
儂の中で踊っておったな。なになに?
妖精族同士が入浴するとなれ上記の通りと成るが妖精族と他種族の場合は
構造が違うために他種族の体内に妖精塊が絡み合う事が出来ずに溶けて入り込む事になり
これは妖精族にとっては至極の快楽を生み出す行為になる。
強いてそれは妖精族同士の性交にも似た快楽を生み出す。
・・・説明長いな。この著者説明下手だな。もとわかりやすく。
性交にも似た快楽を生み出す・・・んっ。性交って。エッチ?
あれ・・・やばくない?儂性セシーグと性交したの?あれ?
頭くらくらする。駄目だ・・・」
「あのう。お努めご苦労さん。すまぬが寝酒を調達してくれないな。
優しそうな顔に顔の守衛君。衝撃的な経験をしたみたでさ。眠れないかも。
出来れば何か摘みと強い酒持って来てくれない。小遣いあげるから」
天幕の隙間から半身だけ出して且来は守衛の雄に声を掛ける。
その一方。
初めての奉仕を無事に終えたセシーグはその場では気を張っていたが
折り詰めを抱え自分の天幕に潜り込むとため息と共に寝台の上に倒れ込み
はぁはぁと息も荒く敷き布を掴み握ると声を出して喘ぐ。
確かにこれがその歴事上人種人類と妖精族の初めての交わりであるゆえに
少々上手く行かなかったのは確かである。
セシーグ自身も裸になると言えば妖精体であり且来の肌の上を
滑りなぞるつもりであった。然し妖精塊のままで且来の体の上を滑ろうとすれば
するりとその体内に潜り溶けてしまう。一度溶けて潜ると快楽と愉快さに
体が溶けて跳ね又潜り夫の体の中で踊ってしまう。
其の中で勝手も掴めなかったのもある。それでも誘惑に負けて少々。
否。かなり没頭してしまったと言えよう。且来にとっては風呂の湯浴みであったろうが
セシーグに取っては夫の体の中で快楽を貪る自慰にも良く似てるとも言えた。
一頻りも二頻りも枕に顔を押し付け声を伏せて喘いだ後にセシーグはやっと顔を上げ
よろよろと腰の当たりをさすりながら水筒に手を伸ばし寝台にすわり直して
膝の上に折り詰めを起きこれも又妖精界で初めて稲荷ずし成る物を口に運ぶ。
甘じょっぱい汁が口中に広がり垂れる米粒の塊を食すると手が止まらず
パクパクと口が動いてとまらない。あっとも言わずいなり寿司と食べきると
水筒の甘水を飲み干して誰に聞こえずとも
「ご馳走様です。美味しゅうございました」と人種人類の習慣と手を合せた瞬間に
「セシーグどの。夫様との入浴の儀。如何でした?」
「夫様の御裸。ご覧になったのでしょう?」
「触ったのでしょう?触れたのでしょう?」
「ぷにぷにでした?おなか?キュって摘んだのですか?詳しく」
一応の礼儀であるのか奉仕の褒美のいなり寿司を食べ終わるまで待っていたのではあろうが
どっと顔を並べ天幕に目を爛々と輝かせてイグを始め妖精雌がなだれ込む。
「そっ。それがね。上手く行かなくて。夫様の中にはいちゃって・・・」
「なんですとぉ~~~。夫様の。夫様の中に入ったとぉぉ~~~」
「それって妖精塊ですよね。全裸で夫様の中に・・・もうダメ・・ぱたん」
「それからそれから。全部吐くまで寝せませんからね。寧ろ吐かせます」
イグがずいと顔を寄せ他の者もそれに習う。
結局、セシーグは且来との入浴の儀の内容を嬉し恥ずかしに責められ告白する。
更にもう一方。こちらの集いは少々毛色が違う。
「且来様と言う人種人類の御方は何処か違う」
「そうなのだ。我ら雄に声を掛けて下さったのだぞ。
皆ご苦労さまとな。どう云う事だ?我ら雄に感謝してくれるとは?なぜだ?」
「おっ俺は言いつけを守って盆を運んだんだ。酒と摘みを。
尤も夜も遅かったら食事係を起こすの大変だった。
でも労を労うと言って異国の通貨を下さった。どうすれば良いのだ?」
「あの御方は何か違うぞ?小さい方は雌と同じ様に我等を見るのに」
「分からん。怖いが雌に聞くか?」
「馬鹿野郎。下手に聞いたら殴られる。然し。このままでは我等が困る」
少しばかりか随分と困り果てた妖精雄達が焚き火の前で額を付き合わせて悩んでいる。
「ぬ~~~ん。晴天とは行かずも風向き良しっと。
図鑑に乗ってたのとは違うけども。鶏さん達も元気そうで何よりで。
って。何してるんですか?あの人。褌一本で何やってるですか」
且来寄りは一回り小さな天幕から出て背伸びした途端に近藤は走り出す。
「おっ。お早う御座います。ソレヌさん。あの人何やってるですか?
殆ど裸で泥まみれですよ?これから大陸飛びだって言うのに」
「お早う御座います。近藤殿。夫様は昨夜余り眠れなかったとかで
憂さをばらしに運動をしたいと申しまして。
奥の国技御相撲をなさっております。随分と楽しげで宜しいです事」
「いや。違うから危ないから。確かに相撲って言えばそうですけど。
何処の世界に裸一貫で竜と相撲取る人がいるですかっ?
ほら又、負けたぁ~~~。止めてくださいよ。ソレヌさん」
近藤があきれるのも無理もないだろう。
且来はその気はなったとは言えセシーグと性交紛いの行為に及んだのが
良かったのか悪かったのか解らずにもどうぜならもうちょっと色々しても
よかったのではないかと悶々と眠れず体を動かして発散する事にする。
その相手が鶏竜である。
鶏と言う字をとれば竜で有るからそれ然り。
裸一貫褌一丁で寝そべる竜の顔の前で四股を踏み渾身の力で打つかり
張り手を噛ますが竜はものともせずぺちぺちと叩く且来を鼻で押しやる。
押されれば耐えて魅せると竜顔のでこぼこの肌に指を掛け踏ん張るが
それも又軽くと弾かれ最初に書いた土の上の輪線を超える。
「よっ。寄り切りです。且来殿。ヘンリエッタの勝ちです」
且来に教えられた相撲技の名と喉を絞って妖精雄が行司板を高く掲げる。
「何のまだまだっ」なんのこれしきと且来は又四股を踏み
行司を真似る雄が声を掛けると竜の顔に突進する。
「勝てるはずないのにぃ。何やってるだろ。あの人」
「そうでもありません。普通の雄なら最初の一転びで怪我をしております。
我ら雌でも五回転がれば体力も尽きるでしょう。夫様は既に二十を超えても挑んでおります。
かと言って鶏竜ヘンリエッタも加減はしても手抜きはしてません」
いつの間にか戦目は確かなイグが隣にならんで自分の夫を誇らしげに見つめている。
「え?そんなに?流石且来准尉と言うべきなのかな?それでも?」
「若し。愛しの夫様がヘンリエッタの三分の一位の体格でもあれば
すってんころりと投げ飛ばしてるかも知れません。恐ろしい夫様で御座いますね」
またこれも昨夜に且来の体の中で跳ねたセシーグが夫に微笑みを送る。
妖精雌の者達が遠巻きに見塗る中。
且来は都合30回近くと鶏竜ヘンリエッタに相撲勝負を挑みその悉くと負けたが
最後の方に成ると少し位はヘンリエッタが押し出すのに苦労する場面もあった。
機嫌も良くなったのだろう。側にいる妖精雄の背を軽く叩いてふざけたりもしていた。
尤も妖精の雌に比べ雄は貧弱な体をしてるために勢いの乗った且来の張り手に
背を打たれればよろよろと大地に膝を付く始末である。
そのまま雄達の手を借りて体についた泥を落し衣服を整えると
少しばかり顔を伏せるセシーグに向かい声をかける。
「ちと昨夜は眠れなくてな。鶏竜で大陸飛びとなれば儂も小童心に戻るのだろう。
鶏共とも顔合わせておきたてな。随便と転がされたが。朝食は籠の中で取ると聞いた。
いざ。大陸飛びと行こうか。皆の衆」
「御意。私奴の夫様」下知をえると。軽装鋼鎧に身を包んだセシーグが右手を掲げる。
即特の音を経てて竜の頭を削り出して作った竜笛が音色を上げる。
最初の笛兵が息を吹き込み音を鳴らすとそれに応え次々と笛音が重なる。
鶏竜ヘンリエッタが鼻息を吐き出し大羽根を羽ばたかせれば慌てて雄が飛び下がる。
どうやらヘンリエッタがその場の主であり其の咆哮が上がるとたの竜も鼻息荒くと動き出す。
妖精魔法国家に取って且来素子と付きそう近藤は正式では無いものの国賓扱いに匹敵する。
「本来は持っと大きな籠を御用意したかったのですが」セシーグの悔しをそうに落ちる肩を
「苦しゅうない・・・おっと。これは図に乗りすぎたか」ポンと肩を叩いて笑って魅せる。
セシーグはもっと大きな物と言ったがその籠は迎賓と言うよりは戦略的な意味合いが
強いと且来は見る。下ろした席の部屋の真ん中には指揮卓が有り幾つかの部屋の先の
廊下から籠の外を見れば巨大な鐵槍砲が括られている。
自分の嫁達と言えば正しいはずであるが列車の中で騒ぎ浮かれ気分など微塵も無く
戦地故郷への旅路と成ればそこは戦兵の顔と成る。
「おい。近藤少尉。風呂には入ったか?油断するなよ。
雄であってもだ。儂らが思う以上に妖精族は奇々怪々であるぞ。
「えっ?湯浴みはしましたよ。雄の御二人が手伝ってくれました」
「そっそれは湯浴みの儀では無いだろうな?雄であっても油断してならん。
風呂は一人で入れ。ひとりで・・・」
「はっ?何言ってるんですか?小声は駄目ですって。皆さん。耳良いんだから」
「おおう・・・」小声と声を絞ったももの丸聞こえとは恥となる。
且来が真面目な顔で取り繕い座り直した所で籠が揺れる。
ヘンリエッタが客籠の柄を指でつかんで天空へと舞い上がる。
且来素子鏡蔵。二度目の大陸飛びと成れば
向かうその先こそは奇々怪々成る妖精族と魔王の國。
腹を太鼓変わりにポンポン叩き人の頭を噛る勇者の國。
