【女装男児】窃と

渋屋の中央交差点の街頭信号が蒼にとなれば一斉に人々は有るき出す。
戦後復興の爪痕残ると言っても若い世代に取っては戦さが有った等遠い昔し。
来る春の時代を謳歌するのが当たり前の倭之御國の若者皆々であろう。
雑多にと行き交う人々然りの中で特に特にと目立たぬ様にと周りの足並みに合せ横断歩道を渡る人影
気をつけてなければ極々に人混みの中に紛れてやり過ごす青年一人。
黒髪の顔をフードで奥深くに隠し伏せるが結構細身で華奢な体躯だろう。
背には流行りのボディバク一つをくくりつけて居るのも若者の類に入る。
変わっていると言えば華奢な胸を細腕で自ら抱きしめ少し前屈みに成って歩くところだろうか。
よく観れば少し脚を引きずってる様にも視えるが気の所為なのかもしれない。
華奢青年は大通りの歩道を渡りきると人混みを避け暗がりが続く地下歩道へと向かう。
その先に続く場所は絢爛甚だしい渋屋の街には似つかわしくもない裏世界の街並みである。

自分で自分を抱きしめて歩く華奢な青年が地下歩道を進み歩くと
向こうから懶怠者風情の輩が二人歩いてくる。
カツカツと先の尖った革靴をコンクリートに打ち付け方を猛り闊歩と歩く懶怠者。
華奢な青年は深く頭を下げ出来るだけ更に気を使い地下歩道の壁際に態々と身を寄せる。
悪童然りの懶怠者にしてみれば気分が良い。
自分の姿におそれを成して自ら脇へとよった青年の姿を観ればからかってやろうとも心が踊る。
「おい。兄ちゃん。結構可愛い顔してるじゃねぇか」難癖をつけるには何でも良い。
弐歩と参歩と前に出てフードで顔を隠した華奢な青年の顔を屈んで覗き込む。

置字

天鼠 蛭姫ノ壱

天鼠 蛭姫ノ壱

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