異世界渡れば芋煮の其の味、何故密甘し!


「あっ・・・・堕ちる・・・・ぐぼっ・・ごぼっ」
安アパートの狭い浴室で儀式とも言える一日の疲れを癒やす風呂に入ろうとする桶狸怪助。
いつもと変わらなければ浴槽の縁を跨いだ片足が風呂床に届くはずである。
それが届かない。底なしの湯の中に片足を突っ込んだはずだが床に足がつかないから
そのまま体勢を崩して好みであっても少々熱く炊いた風呂のお湯中に墜ちていく。
「どっぼぼぼぼぼっ・・・」熱めのお湯が四肢と顔を包み息もまともに出来ない。
[召喚候補対象者:漢性・桶狸怪助確保っ]
「へっ?確かに桶狸怪助。嬉し恥ずかし参拾参の半ばを軽く超えたばかり・・・ですけどっ・・・・ごぼぼっ」
[補助アイテム:生活教本授与]
「ぐほほっ・・教本って・・・なんですか?・・・」
風呂にはいろうとしていたのだから裸一貫である。
行儀が悪いとも取られるが桶狸怪助は風呂桶にタオルを持ち込むタイプでもあった。
つまり衣服ぽいのは白いタオル一枚である。
「うぉっ・・・・イタタタタっ・・・・へっ、へっ、ヘックション・・・・ヘックション・・げほっげほっ」
光輝印眩しくも視界を奪う光が途絶えたと思えば、それまでは四肢に纏わりつく引力が途端に消える。
当然にも丸まると太る四肢が結構な高さから床に堕ちる。痛みで呻き声を上げたsとにドズンと音が響く。
「イタタタッ。この歳で風呂桶の床を踏み抜くとは情けない。
どれだ体重を育てれば風呂の床と湯ごと踏み抜くと言うのだ。さすがぽっちゃりさんと言うべきが・・・・
それにしても・・・・・・うぉっ」
結構な高さの空間から床にむけて堕ちれば体勢も崩れる。少しばかり憚るべきな格好で床に尻餅をついてしまう。
其の大陸人から見れば異世界國人となる桶狸怪助が床に尻餅を付いて脚を広げてる。
唯一の持ち物白タオルはまだ右手に握りしめたままだ。
「’صه… خنزير أبيض…」
(し・・・白豚っ。白豚が・・・床に転がって・・・脚・・・・開いてる・・・・へっ変態っ)
艷やかなにも驚愕に慄く棘のある女性の声が頭の中と耳で無下に響く
尤も実際には怪助の頭に中に響く女性と周りどよめく声音は遅れてくる。
最初に頭の中に響く声音は怪助自身にも解る者ではなく聴いた事もない言語であろう。
一瞬遅れてやってくる声は桶狸怪助にも理解できる祖國の言葉に自動で訳されている。
「شخص ما … يخبئ … منشعب الخنزير الأبيض.」
(誰か白豚の股間を・・・隠してたもれ)
わなわなと声を震わす女性は其の場にいる誰よりも聡明で美しく誉高い気品を醸し出す女性である。
蒼白と言わずとも透明感と雫のる肌と艶の瞬く黒髪と色を乗せる端正な顔。
耳に届く声の意味が解らずとも頭に其の意味が響けば意味も理解出来る。
その時に成ると眼の前で肩と四肢と大きな乳房を揺らし身震いする女性の其の周りにも
結構多数の日々が立ち並び興味と侮蔑の眼差しと好奇の視線を怪助に突き刺して来る。
「嗚呼・・・。済まない・・・・。
何せ一日の仕事終わりの入浴は儂にとって極み成る癒やしと楽しみなのでな・・・・。
生憎、状況がわからぬのでな・・・・。説明を求むぞ」
なるべくさりがない仕草を装いながらといっても、既に何もかも遅いのであるが
右手を動かし尻餅を付いたままでも迂闊に曝け出した股間を白タオルで股間を隠す。
「خنزير أبيض … خنزير أبيض …أنا المريض.」
白い肌を血相悪く青に染め口元に手をやって軽く咳を吐き出すと気高そうな女性がくるりと身を翻す。
同じ様にも侮蔑のそれと解る視線を怪助に突き刺し先に進む女性に数人が付き従う。
「やれやれ・・恥ずかしい思いをしてるのは儂の方であるのだが・・・」
確かに気まずい思いをしてるとは言え、状況は呑み込めない。
第一に自分は数分前まで祖ノ御國の安アパート自室に居てその日の疲れと汗を流そうと
風呂に片足を突っ込んでいたはずである。当然に風呂桶の床に届くはずである。
風呂の床を踏み抜いた・・・。常識的に考えればあり言えない事ではあろうが
怪助の認識感覚では自らの脚が風呂の床に届かず自分の四肢は湯の中に墜ちたのである。
時にして数秒。若しくは拾数秒。更には数分であったとしても湯の中で溺れかけ
漢でも女でも無い声がいつくか聞こえたかと思ったあとは四肢に痛みが奔る。
どうやら湯塊の中で体の天地がぐるぐると何度か変わったらしい。
湯塊を抜けて飛沫と一緒に転がった其の先の光景は自宅の狭いアパートではなかった。
尻餅を付いて床に転がり見上げる視線の先には絶世の美女がわなわなと四肢を震わせて居た。
白豚っと端正な達と男であれば視線を剥がすのに苦労するであろう程に大きな尻。
真逆にぎゅとしまった腰。其処から大きくも緩やかに膨らむ尻。
言わずもがな漢女問わずに羨む四肢を持つ女性が乳を揺らしわなわなと身震いし吐き捨てた言葉が白豚である。
まぁ確かに怪助は太っている。割腹が良いとも言えばでぶである。
背も結構高い方であるがそれ以上に四肢に肉がつき横に幅広く前にずんっと脂肪の付いた腹が突き出る。
それでも状況解らずとも初対面に出会った相手に白豚と冒険を吐き出し蔑まれるとはいたたまれない。
「儂は・・東ノ天空に日出る倭之御國。其の漢児・桶狸怪助である。
立って三尺って経てば六尺届かず五尺と半分。
三度の飯と朝夜の風呂をこよなく愛する俵二つの脂肪を腹の四肢に溜め込むが
色と欲に塗れるも漢色の趣味持たずも・・・・否っ。凛々しい幼年は許容範囲であるやも
三度の飯を喰らい朝夜の風呂をも又、又好み。御名子と幼年を愛でるのが好きな漢で候。
人の憩いの刻を何故の都合と理由で邪魔されたのか・・・。
せめて正しいく納得の行く説明を強く求む。各方・・・・へっ・・ヘックション」
のそり。ゆらりと裸一貫。情けなくても白タオル一枚で股間股ぐらを申し訳程度に隠すも
体躯のそれと似るも大きく野太い声が当たりの黒頭集る人々の疾風激怒に怒髪を突いて響き渡る。
遅まきながらも頭首を巡り回し当たりを見渡すと其処が結構に広い場所と解る。
広い空間とその天井を数本の石柱が支えていて周りには異国風情の衣装を着込んでいる人々の数も多い。
最初に怪助を罵倒した女性と主とするのか彼女に付き従う従者が数人もいた。
雑踏黒頭と人々も更に数も多く、殆ど好奇の目線を不躾に邪な視線を怪助にぶつけて来る。
怪助の故郷然り初めての場所と相手となれば挨拶を交わす事に口上を上げる事を上げる。
歳に合わせ言えば少々古びた世情時代の言葉使いになったのは漢意地でもあったろう。
問題はそれに答える者がはたしているのだろうか?
「سعدت بلقائك يا سيد جوكان.・・・・・・」
ついっと黒皮の靴の踵音を鳴らし一人の女性である。
否然し。彼女が発した言葉が耳に届いても意味がわからなかった。
つかりつかりと足音を鳴らし怪助の眼前背筋を伸ばし立ち塞ぐ女性。
何よりも初めての場所で裸一貫である。気まずさと不安に苛まれると自分の左側で影が動いた。
頭を巡らせると一人の女性が何かを手の中に収め怪助に差し出している。
怪助が眉を潜めたのは女性が手の中に一冊の本を収め差し出していることよりも
其の人生で物事の大半として武道に接して来た怪助で有るがそれ故に。
全くも気配も動きも感じさせずに自分の側に近寄り携える様に小柄な女性が怪助の側にいる。
「すまぬ・・・・。儂の私物とは思えないのだが・・・・」
顔の前に突き出せた古びた茶色の皮表紙の本を有る意味しょうがなく手に握る。
「御館様・・・」
凛と涼やかであり敬意と温かみの有る声が怪助の脳髄にはっきりと突き刺さる。
自分が理解出来る事ばは先ほどの女主人の時とは違い意味を通し頭に其の意味が瞬時に浮かんで溶ける。
「御主。倭言葉が解るのか・・・?いきな言葉が聞こえるようになったぞ」
こほんっ。注意を引くように眼の前の女性が上品な席払いをひとつ音が響く。
「初めまして・・・御館様。
私奴は・・・
大陸ひとつと無数に砕け広がる焔に誓う千と万との法律に財布の中身を掛けて女神を愛する御国
其の主徒様に仕える従徒・人造従徒蝋機人形・弐弐ⅳで御座います。
座って七リム。背筋伸ばして参セルスに至ります。
主徒様に御仕えするのを仕事とし。主徒様に褒めて頂けるのを至極の幸せと感じております。
私奴も弐度の御食事を楽しみに愛してやまず。最近駄肉が付くお尻が悩みで御座います。
愛して仕える主徒様であれば漢性でも女性とでも構わず慈しみ愛してご覧に入れます。
此方私奴立ち奴の都合立場と事情により主徒・桶狸怪助様を個々にお迎え致しました。
事情と理由はをきちんと説明させていただきますが・・・。
主徒桶狸怪助の都合を考慮せずに及びしたための不祥事で御座います故。
まずは別室にて御衣装を整えて頂きとう御座います。
それから・・・教本はお持ち下さい。御館様。へっ・・ヘックチョン」
五つの色を混ぜて交わした民族衣装を着込み言い淀む事もなく怪助を真似て
口上を述べる人造従徒蝋機人形・弐弐ⅳ。
語尾のっ・・ヘックチョンは怪助のくしゃみを必要な挨拶と勘違いしてであるが
構造的な物もあるのだろう。少々濁ったのは愛嬌である。
怪助としては言葉だけの羅列にしかなくても何れ意味も知れるだろう。
「宜しく頼む。弐弐ⅳ殿・・・・」
「御館様。従徒たる者に継承は不必要で御座います。弐弐ⅳと呼び捨てにして頂きとう御座います。
寧ろ足蹴に呼びつけて頂けるなら尻を振って喜んで魅せますの」
丁寧に頭を下げた怪助を窘め細く整えた眉を顰めて弐弐ⅳと名乗る従者がピシャリと言い放つ。


「此方で御座います。・・・御館様」
先頭を歩く弐弐ⅳに付き従い歩く石作りの廊下を暫く進む間、正直な話として
目の前で揺れる弐弐ⅳの大きな尻から視線を剥がすのに怪助は苦労する。
尤も確かにそれは苦労したが関心したのはそれだけではない。
弐弐ⅳが尻を振り歩く先の結構大きくも思い扉がすっと開く。
左右に控えた従者が細い腕で取ってを引いて扉を開いたと解るが、それにしても大きな扉である。
扉を抜けて奥に進めば音も無く他の従者が怪助の右と左。更には後ろに着いて従う。
(捕縛されたのだろうか?尤も御名子であれば寧ろ歓迎と言う所か?)
邪であっても警戒するのは当たり前であっても実際には付き従う彼女達としては従者としての責務を
果たしているだけである。余計な気を回すと言っても皆が年頃の女性であるのは嬉しい誤算である。
「まずはお召物をご用意させて頂きますが・・・・。
御館様は少々割腹が良すぎる様にお見受けします。
あっ。決して太ってるとかおでぶちゃんと言うわけではありません。
飽く迄も此の國の標準的な体型と比べれば少し大きいと言うだけで御座いますの」
「ふむ・・・・」
大げさに頷くが最初にあの女性が良い捨てた白豚と言う言葉は差別的であり屈辱でもあればこそ
確かにそうは観えたとしても従徒・弐弐ⅳの言い回しにはある程度許容出来る範囲の物でもあろう。
先の広間に比べれば確かに狭くても控えの間となればそれでも広い。
幾つかの家具が置いてあるし主賓の尻を休めるソファもある。
手招きされ座る前に一度立ち止まるように示させると若い従者達がさっと付けより
ありあわせの布で作った簡素な布服を怪助の四肢に巻いて着せる。
従徒少女の瞳の中に幾つかの点と線が移り視えるのは何かしらの意味も有るのだろう。
数人の従徒少女が衣服を着せていくが手を止めずもその瞳の中で怪助の腕の長さ・首の太さ
胴回りの大きさ・臍の位置と座高・股ぐらから床までの長さ等。
自分自身のありとあらゆる四肢の寸法を瞳の中で計測をしているとは怪助は知らずにいる。
「御館様にはくつろいで頂きながら当國・観察官から一連の事柄の説明をさせて頂きますの」
怪助を罵倒した女主人。それに誘われた輩の冷たい罵倒視線と嘲笑。
随分と大げさでもあるが風呂に入ろうとした怪助を此の國此の場所に呼び込んだと下なら
それなりにも相当な理由があるはずである。
「私が・・・・
大陸ひとつと無数に砕け広がる焔に誓う千と万との法律に財布の中身を掛けて女神を愛する御国の観察官である。
今回の件に付いて専門的な見解を含め説明させて頂く・・・」
大層にも厳かに寧ろ自分は上の立場の人間で有るとばかりにある意味傲慢な態度で観察官の漢が言い放つ。
「儂は・・・。
東ノ天空に日出る倭之御國。其の國の民である。
壱日の終わりの余暇に風呂を楽しむ一介の漢児である。
何やらそちらの御仁は立場を履き違えているようであるが・・・。
御仁の話を聞く前に立場と状況を明確にしておきたい。
弐弐ⅳ・・・。何が起きて儂は個々にいるのか?なぜ故に個々にいる必要があるのか?
儂の意思は尊重されるのか?・・・状況を説明してくれ」
監察官と言う職に付き権威と高い給料を得てもいれば物事を法律に照らし合わせ必要であれば
力を行使する権限も持っている。普段か多少なりとも傲慢な態度をとる風潮も自身にある。
女主人の態度もそれを助長をしてもいる。
息を呑み込み傲慢な態度で白豚の漢に接しようとする瞬間。其の漢は諌める。
「はいっ。御館様。
我等、大陸ひとつと無数に砕け広がる焔に誓う千と万との法律に財布の中身を掛けて女神を愛する御国の女史王様の
命により國に巣食い襲いかかる厄災に立ち向かう為であり、同時に女史王様との結婚を目的として
遥か遠くの天駆ける星向うに直線に並ぶ地の星から我が主徒・桶狸怪助御館様を強制魔女法を駆使し
強制召喚転送・・・言い換えれば当人の確認及び誘拐を実行致しました・・・・・。
ありゃまぁ~~?誘拐ですって・・・。これは犯罪行為で御座い回すわね。
えっと。誘拐犯罪に成るとすれば・・・・?
大陸ひとつと無数に砕け広がる焔に誓う千と万との法律に財布の中身を掛けて女神を愛する御国の
千とも万とも言われる法律に照らしわせるとですね。・・・どう観ても犯罪です主犯は極刑ですし
力を貸したとか承諾し付き従った者も極刑となります・・・・。執行官呼んで参りましょうか?」
主徒怪助に命令され状況を説明した弐弐ⅳが自分で言葉にして途中から小首をかしげるも
おかしな方向に話も動く。
「色々と突っ込みたい所があるのだが・・・・。状況は理解できたやもしれぬな。
それで・・・・?観察官とやらは儂に何を説明してくれると言うのだ?」
傲慢な態度で適当に話を誤魔化して退散するはず手筈であったが既に自分の境遇は決まっるらしい。
「あの・・その・・・・うぐ・・・・
我が国としては千と万とに連なる法律に基づき主徒・桶狸怪助殿には参度の食事と昼寝。
大陸で誰にも邪魔されず自由に過ごす権利と参度の食事と昼寝。
国家予算が溢れない程度であれば金銭の自由使用の許可を与える。
それから此の部屋にいる従徒人形を含め追加として従徒二百の一団との主従許可を与える。
尚、必要に応じで追加事項は其の都度・女史王様と議会の承認を得て告知伝言させて頂く・・・・」
間違いなくも死刑宣告に近いと宣言されると言葉に詰まる。
出来るだけ早く頭をめぐらし自分の権限を超えていても幾つかの条件を怪助に告げる。
「ふむ・・・・。後は此方で適当やるから・・・・帰って良いぞ。観察殿
あっ。弐弐ⅳ。監察官を見送ってやってくれ。失礼のないようにな・・・。
にっこり笑って手を振れば良い。うむっ。ご苦労。ばいばいっ」
まったくもって生きた心地のしない状況でもある。
何故なら怪助が気が向いて本当に裁判庁に訴えを起こした瞬間に執行官が自分の所にやってくる。
自分自身も身に染み付いた法律は其の結果も良くと知る。
つまりは簡素な裁判の上、結果は極刑であろう。
安易な女史王の態度を真似て状況を謝れば即刻、死に至る。
ガクンと肩を貶し首まわりを撫でながら弐弐ⅳと従徒達が笑顔で手を振り観察官は見送られて行く。
邪な意思を持つ監査員を追い返し椅子に尻を押し込んで座り弐弐ⅳよりも
幼年とも視える従徒少女が差し出した飲み物をすする幼年。
異国であれば初めての飲み物をすすれば結構に甘い。寧ろ喉に粘つくほどのに甘いとなれば甘すぎる。
其の上で桶狸怪助と従徒人造従徒蝋機人形・弐弐ⅳとの間に一問一答が繰り返される。

帰れないのか?・・・・儂はっ。

申し訳ありません・・・・。
大陸ところか星を越えた錬金方陣を使って降ります。再びの星巡りを待っても百の歳を数えます。元の星に御館様をお返しするのは無理に近いと推測されます。

うむむ・・・。なるほど。
此の星。此の國には御前の様な人形という物が多いのか?
あっ此の小鉢。お変わり貰える?参拾参ちゃん。

はいっ。御館様
私奴達、人造従徒蝋機人形は人主人類の主徒様に仕える為に人工的に
制作された人形で御座います。主徒様達の数はあまり多くありません。
私奴達にとっては不運で御座いますの。
あの主徒様?少しばかり食べ過ぎではありませんか?何杯目ですの?

だって美味しいだもん。
此の皿も旨いのだが全体的に同じ様な味に成ってるな・・・。
何故故に人・・・人主人類の数が多くないのだ?
あっ。そっちの皿のお肉取ってくれる?参拾参ちゃん。

御館様
厄災と言えば腐人と魔物で御座います。
彼等は人種人類より強く数も多いのです。
お肉ばかり食べてないでお野菜もお食べ下さいませ。
健康上良くない所かおデブちゃんになりますよ。御館様。
白い布服を着込みソファに尻を沈め、腹が空いたとばかりには従徒達が部屋に運び込む食事を食らい込む怪助。
ある意味やけ食いであったのは胸内にぐっと押し込んでもいる。
風呂の最中に何等かの方法で遠隣の國ところか大陸飛びところか天の道を遥かに遠く星の間を跳んだとなる。
怪助が単純に魔法であろうと決めつけるが実際には極めて高度な錬金術の技術でもある。
それでも従徒人形・弐弐ⅳが綴る話を色々と纏める自分におきた厄災と世界の状態が呑み込めても来る。


天星の名を確かめるを忘れてしまうが、少なくても怪助の知る星ではないのだろう。
大陸ひとつと無数に砕け広がる焔に誓う千と万との法律に財布の中身を掛けて女神を愛する御国。
國は元よりも其の大陸にも生理学的な分類上の人種人類の人工的割合は以外にも少ない。
飽く迄も全体的な割合でも有るらしいが生存競争の覇者となれば魔物と言う物で有る。
多種多様な生物形態の中で身体能力だけを鑑みれば人種人類は下から数えた方が早い。
里村に暮らす人々が森に入れば魔物に出会う。それは死と直結するのであるが自衛手段も虚しい。
被害が広がるのを防ぐ為に生み出した人形達が護衛を成す事に成る。
怪助に頭の中では属に言う魔法と言い切るのが一番簡単であるのだが、当事者に言わせると極めて高度な
錬金術の賜物と言い切る。似て非なるもので有るらしい。
其の中で技極まれりと言う物が自分達を創った人種人類達を主人と呼ばず主徒と呼ぶ従徒・人造従徒蝋機人形。
どう観ても何処から観ても人種人類と其の外見は変わらない。
此の大陸に元から住まい此の國を収める女史王でさえも新世代の人造従徒蝋機人形は見分けがつかないらしい。
雄型・雌型と其の中間や両方の特性を持つものや戦闘特化に適してる者もいれば従者として主人に仕える者もある。
人主人類とはどちらかと言っても学術的な呼び名が強く属には大陸人と名乗る事が一般的である。
更に碧海を巡り渡る先に点在する島々人とも呼ばれ差別的な争いも多いらし良いが碧海にも海洋魔物が存在する為に
おいそれと隔たりを超え大きな戦がおきたのは数える程しかないらしい。
尖兵として戦線にたつのは人造従徒蝋機人形兵共であるがそれはそれで諸問題も有るらしい。
大陸人に仕える人造従徒蝋機人形の制作に当たり其の制作過程を初めコストも高い。
戦闘に特化すればそれだけにコストも高くなるし海を超えると成ると兵站処理も大変である。
近代の状況としては極端に戦闘に特化した個体を人造騎士蝋機人形となり従来の中で派生する。
結果的に状況によって様々な形式の人形達を生み出すことになる。
「従徒様っ。夕飯の時間が迫っているのですが・・・・・
いつまでおやつたべているのですか??まさか夕食の後に夜食も強請ろうとしてませんか?」
さすがの怪助もこれで終わりにしようとジャムパイに喰らいついた所に弐弐ⅳの言葉が投げかけてくる。
「もっ?もう夕飯なの・・・・此の國の民はせっかちだね。云々、そろそろ終わりにしようと思ってたんだよ。
あっ。此の皿は食べるのだ。倭漢児たるもの出された皿を空にするのが礼儀なのである」
多少は大げさでもあっても残すのは勿体ないのは確かである。何とか適当に言い訳を付けて皿の上を空にする。
人造騎士蝋機人形・弐弐ⅳ。恥ずかしそうにうつむきながらも怪助に食べ物を乗せた皿を運ぶ参拾参。
それ以外にも数人の人形達が怪助の側に立ち控え必要であれば細々と世話を焼いている。
怪助にしてみれば人と同じ様にも視える人造従徒蝋機人形であるが個々に注意点がある。
主人・主徒として認め精神的にも肉体的にも尽くし奉仕を喜びとする人造従徒蝋機人形。
ただし其の忠誠心を得るのには一定の信頼関係を得るのは結構に大変とも言われる。
今日から御前は自分の物だっ!と宣言するだけでは、はい。お仕えしますとはならない。
主徒と呼ばれる物が従徒や他の者に対し美徳とも言える行為を行う必要がある。
それも意識して出来ることでもないし、恣意的や疚しい気持ちを持ったまま美徳や縁を刻もうとしても
人造従徒蝋機人形はそれと直ぐに気が付き悟ってしまう。つまりはそう簡単にはいかないといっていいだろう。
今でさえ怪助を囲む弐弐ⅳ等の関係は絆を結んだ物ではなく飽く迄も形式的な物である。
それは女史王に命じられたからであり現状では形だけの主従関係を維持してるだけである。
したがって出会ってから直ぐだと言うのに言葉を濁してもおでぶと言ってみせたり
食べ物を貪りすぎる怪助に苦言を漏らすのも其の為だろう。
人造従徒蝋機人形兵が此の世界の錬金術の極みであると実際に言われてもそれを実感するのは苦労するが
それと信じるにたる理由がひとつ有る。
「用を足しに行くときとか。何処かに行くときは必ず教品をお持ち下さい。
御一人で外にお出かけに成る事は無いでしょうが、その時はも身につけて下さいませな・・・御館様」
眉を寄せ端正な顔を近づけてそうしなさいと言われるとなんか気恥ずかしくもなる。
なんと言っても美人であるしあの女史王さえも凌ぐのではないかとも視える巨乳を揺らし
指を立てて身を掲げられたら漢としての欲望が湧き上がる。
それでも教本がもたらす効果は絶大であると理解でした。
「سيد」教本を持たずにその声を聞けば言葉は聞こえても意味はわからない。
「御館様・・・・お腹ぷにぷにですよ?戦闘訓練の予約入れておきましょう」
教本を手に取り弐弐ⅳの声を聞けばはっきりと倭言葉で聞きとれ意味も理解出来た。
つまりはこの教本と言うのは色々と便利らしい。
とっ言っても、今のところは飽く迄も大陸人と倭漢児・怪助とのある言葉の壁を取り除いてくれるだけらしい。
丸い指でパラパラと捲っても最初に言葉を解すると言う文章が最初の頁に書いて有るだけである。
何度捲って覗いてもそれしか書いていないが、弐弐ⅳ曰く其内色々と増えて行くでしょうと微笑むだけである。
教本。それは大陸人にとってもそれに仕える人形達にとっても生まれた刻に必ず送らる程に大事なものらしい。
その持ち主が記載しなくてもその人生に置いて祝い事や災厄等を含め、大きな事柄も小さい事も
教本に文字として浮かび刻まれる。文字が浮かび上がると言うものである。
一人一冊・・・命尽きるまで寄り添う大事な本と言うわけである。
弐つの太陽が殆ど重なる友愛の闇に閉ざされる日
天光届くのも遠く星巡る彼星から参りし体躯の漢
一目観て発した言葉こそ・・・白豚
故に心証悪く険悪となり夫と不成ず國先に暗躍が訪れし成り
大陸ひとつと無数に砕け広がる焔に誓う千と万との法律に財布の中身を掛けて女神を愛する御国。
其の國を治める女史王の事。アルティシア・ビビ・シシヌミルカ。
國を治める女王であるが故に夫を娶る適齢の時期を逃しつつ有る。
本来であれば数ヶ月前に伴侶を娶る段取りも極めて順調であり、アルティシア自分もその相手を気にっていた。
武に通じ武を重んじる力こそ全てと言い切る近衛騎士団の団長でもある其の漢とは結婚を前提として
長い時間と根回しを掛けて想いを確かめ伝え、事実結婚式の準備も着々と進んでいた。
だが然し。突然であったにしろ近衛騎士団団長の漢は女史王との結婚を拒む。
明確な理由も明言する事もなくどうしても結婚は出来ないと言い切り、殆ど夜逃げに近い形で
アルティシア・ビビ・シシヌミルカとの結婚を解消している。
恥を掻かされたアルティシアは激昂のは手に星飛の召喚錬金術を行使すると決める。
賭けでもあった。そして眼の前に現れた漢にあろうことか白豚と言葉を投げつけてしまう。
弐つの太陽が殆ど重なる友愛の闇に閉ざされる日
天光届くのも遠く星巡る彼星から参りし体躯の漢
一目観て発した言葉こそ・・・白豚
故に心証悪く険悪となり夫と不成ず國先に暗躍が訪れし成り・・・・。
自分の教本にその日浮かび上がる文字に予想は付いたとはいえアルティシア・ビビ・シシヌミルカは落胆する。
「倭漢児の下着と言えば・・・・褌!褌一本なのである。
ちょっ。お嬢ちゃん・・・引っぱちゃ駄目っ。珍しいからって引っぱちゃ駄目っ」
客間と言えばそうなるのであろうがそれでも結構な大きさの部屋の中央に
どんっと仁王と立ち従徒人形の壱団が囲む。
肌寒いとは言わないがいつまでも裸一貫と言う訳にいかないのだろう。
自身が思うよりも短い時間で怪助の体の寸法にわせた衣装が用意されている。
「御館様。これはどうです?
我が国特有の民族衣装と極彩色の下着と模様が素敵ですの。
それとも可愛い女の子風のリボンとか?あっ!これも良いですわね。
今流行りの地雷系ファッションですね・・・。
お化粧は七色帯色系でアクセントつて観たり。云々可愛いですわ・・・おリボン」
体躯の大きい怪助の喉元に丹精込めて造られた衣装が次々と合わせられる。
「地雷系って何だ?儂は地雷系少女か?
こら・・・スカートを持ってくるな・・・・。おでぶのゴスロリ少女って何処の化け物だ?
止めなさいっ・・・・。おさげの銀髪かつらとかどこから持ってくるのだ・・・」
雌型であれば背も低いから態々踏み台に脚を乗せ背伸びしておさげカツラを怪助の頭に少女人形が
載せようとすれば。正面では別の少女人形が手をのばして丸眼鏡を鼻の上に載せようとしてる。
「儂は着せ替え人形ではないぞ・・・?
えっ・・・?其のつもりだったと?貴様ら面白がっておるな・・・・困った奴らだ。
其処の長帯を取ってくれ・・・端布だと言うのか?
否っ。それでいい。此の國の輩は帯をしらんのか・・・・全くぅ文化違いと言う奴は・・・・」
足元に転がる衣装籠の隙間にたれた少々太めの端布に視えるそれは帯として十分である。
散々おもちゃの様に着せ替え人形にされた怪助は弐弐ⅳが最初に持ってきた極彩色の衣服を示す取り
ばさりと音を立て襟を合わせて腰に長帯を数回廻してぐぃっと結んで締め上げる。
従徒人形達の感覚から言えば民族衣装はよく観てもある意味目立つ極彩色に染められた布地着物に
自分達の感覚からみれば長くはあっても端布である。紫色の長端布を帯びに見立て起用に自分で腹に巻き付けると
ぐっと絞って観た事もない結び目を括りパンパンと腹を叩いて満足気に嗤う。
「後は足袋か草鞋があれば着心地も良くなるのだが・・・・貴様ら何観てる?可笑しいか」
「猿猪にも衣装っ!おでぶに着物ですの?足袋と草鞋とは何で御座いましょう?」
自分達の知識もない衣服の着こなしに驚きも隠さずに従徒人形達は目を丸くする。


此の國にってからやっとの事で裸一貫から抜け出せたと思ったら怪助の客間に使者がやって来る。
「初めまして・・・東ノ天空に日出る倭之御國。其の漢児・桶狸怪助様
私奴は・・・
大陸ひとつと無数に砕け広がる焔に誓う千と万との法律に財布の中身を掛けて女神を愛する御国
其の御國の由緒正しい支配者・女史王アルティシア・ビビ・シシヌミルカ様に
お仕えする専用従徒人形・百拾ⅵⅵで御座います。
桶狸怪助様に置いては此方の都合であちらの天空國からお呼び立てしましたが・・・。
今度の件に付いて我が愛しき主人アルティシア・ビビ・シシヌミルカ様との謁見を行うべき
その予定をお伝えに参りました・・・・宜しくお願いします。
桶狸怪助様・・・・へっ・・ヘックチョン」
「お見事な御山の如き乳の出っ張りである・・・・。けしからん。
非常に由々しきも叱らん・・・・・・。だが断るっ。きっぱりと断るっ」
「はっ?お断りになるとは?・・・女史王アルティシア・ビビ・シシヌミルカ様との謁見をですか?
お断りになるとは・・・・?それはアルティシア・ビビ・シシヌミルカ様のお怒りを買う事になります。
けしからんと言われても生まれ持った乳のでっぱりで御座いますので・・・褒めて頂いているのでしょうか?」
女史王アルティシア・ビビ・シシヌミルカのお付きの人形・百拾ⅵⅵ。
此の國の総べる女史王おつきともなればよりすぐりの美貌と四肢を持つ人形とさすがにも納得出来る。
「漢児であればこそ飯も好きだが色欲に塗れるのは性であっても
素直に認めるのはやはり悔しいのだ。乱暴な言い方では有るが誉れの如しと褒めているつもりだ。
女史王様とやらの謁見とやらは気が乗らん。謹んでお断り申す候」怪助は大げさに頭を垂れて気持ちを伝える。
「それは何故で御座いますか?」巨乳と言うには憚れる程に大きれば爆乳を下から腕で支え百拾ⅵⅵが眉を潜める。
「他愛もなければわかり切った事であろう。
風呂浴びの最中であれば誰もが裸一貫である。
天駆ける星の向うまで錬金術の技を伸ばせば多少なりとも不具合もあろう。
思うに容姿端麗美男でも呼んだつもりが裸一貫のでぶであれば確かに期待通りではないかもしれん。
それでも白豚はいかん。白豚はっ。言い方によっては愛称にも聞こえなくはないやもしれんが
眉を潜めて声を荒らげれば侮蔑であろう。初対面の輩に侮蔑でも穿けば悪縁来たりだ。
そちらの都合で呼んでおきながら侮蔑を投げつけられれば腹にも座る。
百拾ⅵⅵ殿・・へっ・・ヘックチョン」
先ずひとつ。女史王に仕える百拾ⅵⅵは従徒人形である。
良くは理解出来てなくても大陸人と従徒人形には明確な格差があるとも思える。
女史王の従徒人形と今の自分の関係がどの様になるかは解らずが
先方の要望を断るのだ。一応であっても敬称を乗せて百拾ⅵⅵ殿と礼を尽くす。
・へっ・・ヘックチョンについては冗談である。
元々は呼び出された時に湯塊から堕ちて寒さに我慢できずに出たくしゃみであるが
何かの勘違いで挨拶か慣用句になってるのが妙に面白く悪戯如くくっつけてやる。
「桶狸怪助様・・・・理解致しました・・・。
ですが此の國にとって女史王のお言葉とお気持ちは絶対で御座います。
揉め事になるやも知れません。ご理解を・・・。へっ・・ヘックチョン」
「相っ。解り申した・・・・へっ・・ヘックチョン」
それが悪戯で有るとも知らず正式な挨拶と信じて疑わずの百拾ⅵⅵに言葉を重ねて
怪助は女史王・アルティシア・ビビ・シシヌミルカの誘いを正式に断る。
結果的に此の國の女史王・アルティシアの使者・百拾ⅵⅵを追い返した後
やれやれと肩を貶し腹を擦って腹の好き具合を確認する怪助。
多少なりとも不味い事でもやらかしたとでも自分でもおもっているのだろうか
しばしの時間を呆けて過ごした後に・・・・。
「さて・・・。一応であったも儂の可愛い従徒・弐弐ⅳよ!
やはり最初は互いに見つめ合って・・・キッスであろうか?」
その巨体を少し猫背に曲げ両手を前に突き出し臨戦態勢を取りつつ怪助が構える。
「やはり嬉し恥ずかし最初の一手はキッスが通例で御座います。
嗚呼~じっと見つめ合う男女二人の恋の駆け引きで御座いますの」
戦闘用でも無い弐弐ⅳであってもそれなりの護衛術は嗜んでいる。ゆるく力を抜いても隙がない。
「その時はぶちゅっと一発。舌を絡めて一気に・・・・であろうか?」
背筋を丸め踵をすっと上げ俗に猫脚となれば倭空手の技である。じりりと間合いを詰めて一歩前に出る。
「成りません。初めてのキッスは嬉し恥ずかしなのです。記念のキッスなのです。
舌を絡めてぶちゅのキッスは二度目のデート以降ですの・・・・」
右手を前に出し逆手を胸に寄せ握り先手攻めるか受けに回るも対処は可能な構えで弐弐ⅳは前に進む。
「どうせするのであるから・・・同じではないのか?儂はねっとり攻めるのがすきなのだぞ」
怪助の構えは先に相手に責めさせ一手喰らう覚悟で裏手を取り投げる一撃必殺の構えである。
「どうせではありません。するの?しちゃうの?きゃっ。恥ずかしいでもして欲しいのきっすですのよ
ねっとり責めて頂くのも個人的にはすきですが・・・何事もしきたりが御座いますの・・・」
弐弐ⅳは先手必勝に相手の胸元に潜り込み手刀をぶち込む構えである。
國が違えば漢女の営みのそのやり方もしきたりも多いに違うだろう。
互いに距離を詰める怪助と弐弐ⅳの丁度ど真ん中に据えられる卓盆の上には一個の柔菓子。
その日のおやつの最後の一個である。
「従徒人形にとっては人種人類の儂は主徒であろう?御前に此の腹である。これは儂の物である」
「確かに私奴は従徒人形で御座いますが。親方様と言ってもこれは譲れませんの。
親方様が喰らい過ぎて食堂倉庫がからっぽですの。明日まではこれが最後ですの。譲れませんの!」
どうやら本当に卓の上のや和菓子は最後の一個らしい。
じりじりと距離を詰めていく二人・・・。
その中間にある和菓子を巡り怪助と弐弐ⅳが一歩も譲らず睨み合う。


「あの・・さぁ・・・事務担当の弐拾ⅧⅧ君?この屋敷窓多くない?・・・寧ろ多すぎるんじゃない?」
「はいっ。御館様。主屋敷の窓は中の部屋数より少ないですが五拾七個あります。
離れの方は弐拾四個。迎賓館は丁度参拾ですし厩舎屋敷は拾弐個の窓がありますよ」
「いやっ。窓の数が何個かって言う話じゃなくてさ?
儂一人が住むだけでなんでこんな大きな屋敷がいるの?幾ら腹がでかいからって屋敷もでかくしなくて良いだろ?
城下町の路地裏の格安物件とかでいいのではないか?家賃高くない?食費削るのは嫌だぞ?」
「ご心配無く。御館様。
腹が出っ張ってるくせにちょっと罵倒されたくらいで女史王との結婚を拒絶したおでぶちゃんと言えども
大事な御客様には代わりないのですよ。腐っても鯛。女史王の好意を足蹴にしても白豚ですよん」
「ずっ、随分と偉い言われようであるが・・・・まぁ、取り敢えず良しとしても・・・
あれは何処言った?・・・・一応、儂の従徒人形とやらの弐弐ⅳは・・・」
「弐弐ⅳ様なら向うです。・・・食堂倉庫屋敷の冷蔵庫設置に勤しんでいますよ」
「なっなるほど・・・・。新型の冷蔵庫だと・・・儂も観てこないと・・・
云々・・食事は大事だからな・・・・。こらっ。食い意地のはった犬を観るような目で観るな。
御前だって。気になるだろ?新型の冷蔵庫だぞ?中に何がはいってるかを見極めるもの主人の仕事である」
態と声を張り上げ腹を擦りながら歩き出す怪助の後を自分も気になると事務担当の弐拾ⅧⅧが小走りに付いていく。
女史王アルティシア・ビビ・シシヌミルカ様の謁見の要請を専用従徒人形・百拾ⅵⅵに断った怪助。
目上のものであろうアルティシアの要請を断ったとなれば其の対面を潰した事にもなろう。
故に客人扱いと言っても王城の客室に身を置くのは憚るべきだと怪助は考える。
出来るだけ早い時期を得て比較的、王城に近くも遠くもない場所に没落貴族の空屋敷を
借り上げる形で落ち着いている。当人は身の丈よりだいぶ敷居が高いと首を横にふってはみても
怪助一人に約弐百人近い従徒人形が側にいるのだ。その引越だけで一週間の時間を要する。
「よっこらしょ!・・・・・」
後に何故か食いしん坊の御館様の屋敷と呼ばれることに成る其の屋敷に引っ越したばかりの時期である。
其の日はいつもより少し早めに寝床から起き上がった食いしん坊親方事怪助。
「さてっと・・・・・う~~ん・・・よっこらしょっ!」やたら広く感じる庭の一角で怪助は背を伸ばす。
「う~~ん・・・よっこらしょっ!」
庭先の住みで背伸びをする怪助の後ろにずらりと尚且つ整然にと従徒人形達が逸し乱れず立ち並ぶ。
「いっちぃ・にぃ~~の・さ~~ん・しぃ~~~のごぉ~~~」
掛け声野太く怪助を上げて天空に向けて腕を伸ばしそのまま振り下ろす。
「いっちぃ・にぃ~~の・さ~~ん・しぃ~~~のごぉ~~~」
朝呼び鶏もびっくりして走り逃げる位に大きな声を上げ従徒人形が怪助を真似て声を上げる。
勿論逸し乱れずに同じ動きで腕を伸ばし振り下ろしてる
「ろくぅ~~~・なぁなぁ~~・はちぃ~~くっ~~・とぉっとぉ~~~」
振り上げた腕を下ろすたタイミングで屈伸しいわばスクワットと鍛錬とする。
「ろくぅ~~~・なぁなぁ~~・はちぃ~~くっ~~・とぉっとぉ~~~」
怪助の動きと全く同じ動作を移して人形達が腰を下ろしスクワットを繰り返す。
「いっちぃ・にぃ~~の・さ~~ん・しぃ~~~のごぉ~~~」
腕を前にぐっと突き出し腰を捻って動かし声を上げれば
「いっちぃ・にぃ~~の・さ~~ん・しぃ~~~のごぉ~~~」
その日その時にどうしても手がなさせない食事当番や馬の世話係等の都合の悪い者以外
庭の一角に集まって怪助の後ろにずらりと並び従徒人形達も運動する。
「ろくぅ~~~・なぁなぁ~~・はちぃ~~くっ~~・とぉっとぉ~~~とぉといちぃ~~~」
「ろくぅ~~~・なぁなぁ~~・はちぃ~~くっ~~・とぉっとぉ~~~とぉといちぃ~~~」
腕を上げ腰を捻った後にもう一度スクワットを熟し最後に大きく腕を伸ばしぐぐぅと背を伸ばして〆とする。
人としての運動は四肢に良いと言われるが人造人形にそれが必要かどうかも疑問であるが
特に命令にも言葉にしたわけでもないのだが、
晴れと雲りの日。雨で濡れる日は屋敷の部屋や廊下等。それぞれの場所で運動が繰り返されている。
これが後に食いしん坊運動と呼ばれ先ずは庶民への自主参加と広がり商人市場と工場へと伝わり
最後には応急と軍隊へとも伝わっていく。特に軍では朝の朝礼では必須の行事と義務付けられてもいる。
とぉっとぉ~~~とぉといちぃ~~~と声を掛け伸びた後にその日の調子を確かめるように腕をぶんぶん廻し
いつの間にか癖に成りつつある突き出た腹をぱんぱんっと叩いて鳴らし列を作る従徒人形達に向き直る。
「全員っ。傾聴なさいっ」
いつもは穏やかな話し口で簡単な声をかける弐弐ⅳが其の日は澄んだ声で全員に注意を促す。
「あぁ~~~。皆お早う。今日も元気で運動ご苦労さん。
えっと、今日は食いしん坊の儂にとっても。否っ。儂よりも食に拘る人形職人にとっても大事な日である。
朝市食材買い占め作戦の最終実行日である。
くどくどとは言わぬが儂の御國は食には並々なる拘りのある民である。
縁結び結んで此の地に脚を付けた通いが・・・・甘いのだ・・・・。此の國の御飯は甘すぎるのだ。
其の分けは明白であれど一々とは声を挙げぬが・・・!諸君。しょっぱいをしっているかっ?」
「しょっ・・・しょっぱい?・・・・御館様!それは味覚ですかっ?」
初めて聞く言葉の意味を推測しかねて思わず弐弐ⅳが声を上げる。
「しょっぱい・・・・しょっぱい・しょっぱい・・・・?それ美味しいのかしら?」
これもまた初めて聞かされる言葉にその味を想像も出来ずに列を作る姉妹達の顔を覗き込む。
「そうだっ。しょっぱいは味覚である。しょっぱいは味覚の一種類である。
良いかっ。しょっぱいは甘くないのだ!。しょっぱいはしょっぱいのだっ」
丸っこい指を拳に丸め胸元に掲げて怪助は声を張り上げる。
「しょっぱい・・・は味覚・・・・そんなありえないのすの!」
「しょっぱい・・・しょっぱいは・・甘くない・・・??」
「しょっぱいはしょっぱい???」
外観はそれぞれ違っても生まれてから大体三年から4年半分が平均の皆若い人形達。
自分達が知って自覚できる唯一の味覚甘さ以外の味覚を味わった事がないから当然に困惑して顔を観わせる。
「人の感じる事が出来る味覚と言うのは複数あるのだ!
しょっぱいだけではないっ。・・・・・酸っぱいもあるのだ・・・。良いかっ!すっぱいであるぞ」
「すっ、すっ、すっ、酸っぱいですか?御館様っ
しょっ、しょっ、しょっぱいとすっ、すっぱいはちがうのですか?・・・・そんな有り得ません」
「そうだ!弐弐ⅳ。そしてしょっぱいとすっぱいは違うのだ。それぞれに違う味覚なのだぞ
人が感じる事が出来る味覚は五つに分類されるのだぞ。
それぞれ甘味、塩味、酸味、苦味、うま味となる。
其内に甘みが甘いとなる。
塩味がしょっぱいであり、酸味が酸っぱい。苦味が苦い・・・旨味が・・・うまい若しくは美味しいである」
「甘味が甘い・・・・それは解りますの。
否然しっ。しょっぱいとはどんな味なのですか?人種人類はそんなに多くの味覚をもっているのですか?」
新しく聞く言葉に期待と興奮に溺れるも感覚的にそれが何なのか弐弐ⅳも困惑して身を捩る
「少なくても儂の星國の民はそうである。観た所此の國の人種人類の民の舌もそうであろう。
勿論。貴様達も五味を味わう事が出来ると思うぞ。
此の地の民が所謂に甘味しかしらないのは別の所にあるのだ。
食の習慣に原因が有ると思うだが今は語らず知らずで良い。なにせ朝市に遅れてしまうからな
良いか!皆のもの。甘いっ!しょっぱいっ!すっぱいっ!にがいっ!うまいっ!美味しいである!」
如何にもとそれらしく鼓舞し声を上げるが要するに怪助自身が食いしん坊なだけである。
「甘いっ!」「しょっぱいっ!」「すっぱいっ!」「にがいっ!」「うまいっ!」「美味しいっ!」
仮にであっても自分達の主徒・怪助が示した五つの味覚。
未だ観ぬそれと知らない感覚に期待に旨を大きく膨らませ人形少女達は拳を天に突き上げ吠える。
「そっ、そっ、そっ、そっ、そっ、そんなっ。
味覚と言えば・・・甘さひとつに決まっていますの。
それが・・・しょっぱいとか・・・すっぱいとか?
苦いって何?旨いって何よ?美味しいって・・・・五つっていったのに六つあるじゃん。
何がどうなってるのかしら?これがほんとうなら革命だわ・・・・味の大革命よ。
我が愛しき女史王様も甘さしか知らないのかしら?それとも黙っているのかしら?
ずっずるいわ・・・。しょっぱいとか酸っぱいとか・・・羨ましい・・・あの白豚野郎・・・・」
誰かが聞いたら憎しみさえ交じる怨言葉に聞こえるであろうがそれは主徒・アルティシアの怪助に対する
感情に引きずられているからだ。
食いしん坊屋敷の大庭の木洩れの塊の影に隠れ様子を伺う百拾ⅵⅵが思案いふける。
勿論に立場も仕える主徒も違うから公然と姿を見せるのは気が引ける。
それでも主徒違いの怪助が毎朝行う食いしん坊体操をも大きめの木塊の影にかくれ
視覚・聴覚機能を拡張しながら怪助の掛け声に合わせ主徒違いの従徒姉妹と一緒に行っている。
姿を見せる事は出来ずとも弐弐ⅳの号令に合わせ背筋を伸ばし傾聴姿勢できちんと聞いた。
前方ではその日の買い出し作戦の手順と班分けが行わる中、電光石火の如く百拾ⅵⅵの頭脳が煌めき思考する。
大陸ひとつと無数に砕け広がる焔に誓う千と万との法律に財布の中身を掛けて女神を愛する御国
其の國が乗っかる大地と大陸。其処に根付く人々の生活と夜の営みと宗教と法律。
其の國と人の食を語る前に知るべき事もある。
天空を支配する白大鷲が避けて舞う場所がこの大陸にはある。
火山である。
それと聞いてもされど成り。此の大陸の民なら良く知る物であっても実際に側まで脚を運ぶの者はいないに等しい。
人と鶏馬を使ってもその外周を一回りするには拾の日ですむかどうかも怪しい。
とにかく巨大な火山でもあり語弊があっても壱年間の巡る季節の内に焔と灰が堕ちて来る季節があるのだ。
壱年の内、春と夏と秋と焔灰と梅雨と冬の季節があるのだ。
壱年の内数ヶ月の間その時期に火山は空に焔を拭き上げ大地に灰を振り下ろす。
元より人種人類も魔物も動物も火山が座る地方には立ち寄らないが焔は兎も角に灰はさけられない。
別け隔てなく灰は大地に降り注げば農地にも海にも街にも王都にも堕ちてくる。
量も多いから人種人類には出来ることも多くはなく雪かきところか灰かきがせいぜいでも有る。
問題はその後だ。灰が堕ちてくる焔灰の時期には特に雨も交じる事も多い。
次に季節がまわれば浮きでも有る。この灰は比較的雨に溶けやすい。
地面に積もる灰の量は多くても雨が降れば軈て雨で濡れて地面に溶ける。
問題はこれであり大陸に住まう人種達が甘さという味覚だけなのもこれが理由だ。
雨と一緒に地面に溶け込んだ灰を農作物が養分として育つ。牧草地の牛羊も灰を養分とした草を食べる
森の動物が食べる草木にも灰が交じる。野生の動物も育てた家畜も取れる作物にも灰が交じる。
果ては海に溶ける灰を小魚が体内に溜め込みそれを大魚が喰らう。巡れば人もそれを取る。
結果的にはこの星、此の國の食べ物は灰を溜め込んでいる。
特に味がしないのであれば影響も無いのであろうがそうではない。
灰を含んだ肉も野菜も穀物も飲水然りに食べ物全て。独特のえぐ味が強く出る。
人種人類の祖先有史の事はそれが食べ物の味と知りある意味我慢もしていたのだろうが
進化と共に舌も味覚も冴えて超えて売ると灰の味が辛くなる。
何年も恐らくは幾年も若しくはそれ以上の時間と年月を掛けて人種人類は灰の味を克服する。
甘くもとてつもなく甘い蜂蜜をぶっかけて灰味を誤魔化すのだ。
もうどんなものにも極甘蜂蜜をぶっかける。灰のえぐ味を甘い蜂蜜で誤魔化す。
火山の灰のえぐ味が強ければ強いほど極甘い蜂蜜をぶっかけて味を相殺するのだ。
長い時間を掛けて人種人類の味覚の中で甘さだけを好むようになり甘ければ甘いほど良くもなり
後年に誕生する従徒人形達も食物の灰味を消すために極甘蜂蜜を掛けて食べる事になれば
しょっぱい。すっぱいを知るに至らずでいた。


「星渡り異界喰心坊御飯調達隊・米俵調達第弐班・・・・
点呼!及び準備確認っ。私奴弐参ⅵ!担当は米俵2個!」
「米俵調達第弐班・六六四ノⅳ・担当は新米壱俵。及び計量枡5個ですっ」
「米俵調達第弐班・弐弐ⅲノ壱・私奴の担当はお櫃十二個としゃもじですの」
「米俵調達第弐班・七ⅶノ拾弐。えっと・・・私奴は御茶碗二拾個と小鉢四拾個ですわね」
朝の運動を終えた従徒人形達は広場で再度に列を組み開け小さな班に習い直し点呼と至る。
既に頭核の中で繰り返し刻まれた勅命を読み出しそれぞれに口にして確かめる。
それぞれの調達する物も違うから手に持つのが縄であったり数人で台車を囲む者もいる。
「ようぉし~~い。それでは市場に向かって進軍を開始するっ!
目指せ。米俵!お櫃!小鉢!であるのです!突撃ぃ~~~~!」
やるべき事の準備が終わり整理誘導係の従徒姉妹の進んでよしっ!を示す白旗が上がると
米俵調達第弐班の従徒人形達が疾風の如く坂を下り市場にへと奔り出す。
「行商人の叔父さん・・・。
ちょっとこれ高くないですか?拾匹銅貨五枚って。ちょっとぼったくりで御座いませんの?」
「その魚は今朝取れたばかりで新鮮な奴だよ。お嬢ちゃん。人気商品なんだ・・・高くて当たり前だな」
その日突然に市場に現れた謎の壱団とも言える細腕に腕章を巻き付けた従徒人形達。
数日前から噂はあった。最近、丘の上の没落貴族の空き屋敷に喰心坊の漢が住み着いたとも。
何やらやたら食に拘り虎視眈々と市場の商品の買い占めを狙っているとも聞こえては居た。
「行商人の叔父様・・・・・。私奴・・・これが欲しいのですの。
出来るだけ安く出来るだけ多くほしいのですの。
ねぇ~~。その立派なお髭を捻って上げますからちょっと安くしていただけません?」
「ああ~~。それは・・・ちょっと・・・儂。鬼嫁いるしぃ~~」
技らしくも極端に腰を折り前屈みになれば大きな乳房が視界に迫る。
「奥様には秘密にしてあげますわ・・・・・ほらっ。其のお魚も樽で買いますので。
こっちのお魚は安くしてくださいませな。お・じ・さ・ま」
「おうふ・・・。黙っててくれるなら・・・・持ってけ泥棒っ」
「うふっ。有難うですの。お・じ・さ・ま」
触れるか触れないかと言う距離まで顔と四肢を寄せて耳元で吐息を吹きかけ目的の商品を買い叩く。
その日朝市がそれぞれに店布を捲り手を叩いて客を呼び込みを初めた途端。
それこそ引き波押し寄せる様に怒涛の如く細腕に腕章を巻き付けた従徒人形達が市場になだれ込む。
勿論、一般客の隙間を縫い邪魔にもならないようにと配慮は基本である。
店先に誰かが並んでいればきちんと列の後ろにきちんと並び順番を待つ。
その時がくればにこやかで柔らかい微笑みで店主に語りかけ商品を買い求め値段の交渉も厭わない。
彼女等が求める商材は炊きに渡る。
厳密に言えば怪助の世界にあった食材と全く同じ物が有るわけでも消してない。
米にとっても存在はする物の怪助が知るそれよりも細く甘みも強くはない。
この世界の牛は肉にはなるが乳を出さない。乳を飲みたいなら羊を手に入れる必要もある。
事前の下調べは細かくも入念に必要であり、
怪助と弐弐ⅳは長い時間を額を付きわせて話し合いをもおこなっていた。
「何故だ・・・。何故上手く行かんのだ・・・・。
あっちの班は順調に米俵を購入できてるではないか?用意した値段も適正価格だぞっ!
なのにあの薄毛頭の商人は我等に売ってくれぬのだ。
親方様は我等の担当が作戦の要だと言うのだぞ?何としても麦を手に入れなければならんのだっ。
なのに・・・あの薄毛頭の商人は首を縦にふらんのだ・・・。ぐっ・・・・このままでは」
従徒人形と商人達の会話と値段交渉が華やかにも順調に進んで行く中、その班だけは苦戦していた。
宗次郎の側に仕える従徒人形の集団の中で少しばかり異質と言うか。
怪助も余り贔屓はしてないのはしょうがないだろう。彼等は雄型の従徒人形である。
抱える従徒人形の中でも四人と五人しかいない雄型の人形がひとつの班として行動しているが
背も高く、容姿端麗な美男子揃いの雄型人形の班長は困惑する。
「何故だ?何故・・・我々だけ・・・・」がっくりと型を落とし項垂れる雄型の人形達。
これには分けもある。
雄型人形達が欲しがる麦を扱う商人は最初から機嫌が悪かった。
交渉を始めるところか見向きもしない。
それでも頭をさげて声をかけてはみても小馬鹿にするように手をふって雄型人形達を追い返す。
全く持って話をも聞いてくれずに相手にしてくれないと引き下がるしか無いのだが
薄毛頭の商人にも思惑があった。
日を遡る事数日前。いつもの市場風景に変化があった。
すらりと細身で乳房も尻も大きくも容姿端麗な従徒人形が市場に現れ薄毛頭の薄毛頭の商人の所にもやってくる。
彼が扱う麦におおいに興味を示し、ムッと鼻の奥まで香る独特の体臭をも嗅ぐわせて近寄ってくる。
但し彼女は今日は下見っだけだと良い。必要な数も足りないし値段も高いと言い切った。
結局に其の日は交渉にも至らず商人として残念な結果にも成っていた。
だからこそ・・・・。
まずは商品の数を揃え。品質の良い物を仕入れ。此の値段であれば儲けが出ると何度も頭の中で計算し準備したのだ
当然にあの雌型人形が自分の所にやって来ると固く信じていた。上手くごねればちょっとした楽しみも有るかも知れない。
だが然し。いざに従徒人形が市場に姿を表したその日。
目に映るは確かに雌型であったが自分の店に姿を魅せたのは美男子であっても雄型であった。
苦労してかき集めた商品であるからこそ当然に雄型人形に売るのは単純に腹が立って苛立っているだけである。
薄毛頭の商人は店棚の前で腕をむっとした顔で水煙草をプカプカと鳴らしつま先をカタカタと鳴らしてる。
さてどうしようと言うのだろう。どうすれば良いと言うのだろうと悩み頭を抱え雄型の従徒人形。
「兄者殿っ。ボクっ!がなんとかするですよ!」
壱団の中でも年少の少年の姿を模して造られた従徒人形が目をパチクリと目を見開いて声を上げる。
「我が弟者よ。我等でも無理だったのだぞ?御前には策でもあるのか?無理しなくも良いんだぞ?」
「云々。大丈夫。ボクに任せてよ。兄者殿っ」
雄型が集まる班の中でも一番に幼い姿を持つ従徒人形・九拾ノ壱壱が元気良く声を上げ
兄弟従者の制止を木にしないでパタパタと走り出す。
さてどうなるか?と不安を隠さずに思って信じて様子を見守ってみると・・・
「御姉様!御姉様っ!ボク・・・麦の束が欲しいです。お願いしますっ」
麦売りの店棚の側に駆け寄ると目の前に立っている薄毛頭の店主に目もくれず奥の店員に声を掛ける。
「あら。坊や?どうしたの?麦が欲しいの?可愛いわね。坊や」
「うんっ。うんっ。綺麗な御姉様っ。ボクっ!は麦が欲しいだけども此の叔父さんは話も聞いてもくれないんです」
「こらっ。小僧。儂が店主なんだぞっ。誰か御前の様な餓鬼とか漢に売ってやるものかっ」
足元に群がる蟻のごとく騒ぐ少年を機嫌の悪いままに半ば本気で拳を振り上げる。
「うわっ。怖い。叔父さんが虐める。叔父さんがっ・・・ふぇっ。」
「こらっ。貴方っ。こんな子供虐めてどうすんだよ。子供でも客は客だろうに!」
少年が声を掛けたのは薄毛の商人の二人目の妻であった。
「儂が駄目と言ってるんだ。だから売らん・・・雄の餓鬼人形なんかに売れる麦など有るものかっ」
「貴方っ?何言っているんだい。人形でも子供でも商品を買ってくれるお客様だろ。
なんとまぁ~馬鹿な事いってるんだい。大方自分の店に来たのが漢だからすねてるんだろ?
坊や。幾らほしいんだい?アタシが売ってあげるよ。・・・・あらぁまぁ~~美男様がずらりと」
「これは美しくも又綺麗な御婦人殿。
僕らの弟が失礼な事を・・・・。確かに僕らは麦を買い求めに来たのだが・・・御主人の機嫌は良くないらしい。
もし間を取り仕切ってくれたら何かしらのお礼でも・・・・」
個々が好奇とばかりに兄者二人が前にで奥方に魅惑の眼差しをひたりと送る。
「嫌だねぇ~こんな漢前にそんなことされたらたまらないよ。でっ幾らほしいんだい?」
目の目で泣きそうな少年の頭を撫でながら嬉し恥ずかしに四肢を捩り交渉を始めようとする。
「駄目だっ。駄目だっ。漢と小僧には売らん。絶対に売らん。さっさとあっちいけ。」
自分の所に雌型の人形が来なかったのが気に食わずに。更に自分の女房が色目に酔うとなれば尚更だ。
意固地になった薄毛の店主は顔を真っ赤に声を荒げる。
「貴方・・・意固地にならなくても。こうなると手がつけらないだよ。悪い癖だよ」
調子に乗ったと一手はみても後の祭りとでも言うように半ば投げ出して二人目の妻は困惑する。
それでも少年の頭を撫で回すのを辞める事はしない。よっぽど拗らせているのだろう。
ドンっと空気が揺れる・・・・。
否っ。空気が弾けたと言ってもいい。
周りの空気が一瞬に集約し・・・。限界を超えると弾けて空気が弾け翔ぶ。
何か起きたとかと誰もが息を飲み弾けた空気の一点を見つめる。
「貴方達。何をしてると言うのですかっ?
私奴が愛してやまないでっかい御腹の桶狸怪助様の言いつけを忘れたと言うのですか?
本日の午前拾と半刻の前に必ず食材を獲得して邸宅に帰還せよ!で御座いますよ!
現在。拾時弐拾と七分で御座いますよっ。
我が愛しきお腹の御館様の世界では四半時分前行動厳守が当たり前なのですよ」
耳膜に届く澄んだ声は清らかにも鋭く冷たくも甘くも怒りに満ちている。
ざっと音を鳴らし麦商店の弐番目の妻に頭を撫でて貰っている少年人形以外の彼等が膝を地につける。
怒声を上げる其の人形は他の者を圧倒する其の姿は明らかに街でよく見る姿とは一線を画している。
國の女史王直属の従徒人形にのみ許された頭巾付きのケープを頭から深くかぶる。
当人の後ろにもまた同じ頭巾のケープをかぶり顔を深く収めるが誰もが冷徹であっても美人と知れる。
その時こそ良くは見えない顔であっても左の唇の横のホクロが色気を醸し出す
それだけでも魅力的で有ると言うのに薄毛頭の店主の視線は釘付けになる。
何処からと言うのは野暮である。
そこそこ背の高い人形の背後からがばっと遅かかり動きを封じて山の如くも大きく突き出る
乳房の根本を掴んで絞り上げ反対の手でむちりと張る太ももを撫で回し股間をこすれば
どんな声て喘ぎ鳴くのだろう。想像しただけで股間のそれが石の如く固くもなる。
だが然し・・・。其の人形の魔性の魅力に呑まれるのは商人だけではない。
辛うじて理性を保っていると思いながらもふらふらと前に出てしまう弐番目の妻の手首を引くのは少年人形だ。
はっと我に返ってみれば情けなくも股間をふくらませる自分の夫は当たり前に他の店の者も
買い物に勤しむ客さえもあの人形が纏う淫猥な体臭に惑わされ飲み込まれる。
もし彼女が振り返り此の場を去ったとですれば、其の後ろを死人の如く呆けたままについていくだろう。
「よぅとお~~!よぅとお~~!よぉくお聞きなさいな。
私奴こそ・・・
我が愛しきお腹の御館様の一番最初の夜伽を密かに狙う。
星渡り喰心坊隊・其の暗部。喰心坊の親方様のお腹を撫で回す会。その一番会員。
御館様専用愛人従徒人形・壱ノ拾壱ⅰですのよ。控えなさい。愚民人形共奴っ」
号令下知とばかりにざざっと音がなって既に肩ひじを付いた人形達が両膝を地面に付け頭を垂れる。
此の國の民であれば従徒人形も身近にいるし彼等の事もそれなりにしる。
色の権化とも雌悪魔とも取れるその人形の名こそ従徒人形・壱ノ拾壱ⅰ。
人形の名は格をも示す。特に最初に壱と付けば上位人形であり其の性能と格は國の女史王直属をも意味する。
あるいはそれに匹敵する性能を有し類する特別な従徒人形という事だ。
噂風に聞こえる星渡りの喰心坊は女史王に近い人形を有してる事になる。
「観た所・・・・。
なにやらうっすら禿げの商人様の機嫌が悪そうで御座いますの・・・よっ。
どうせぇ。私奴の美しさには劣ったとしても雌の人形が交渉に来なかったのを根に持ってるようですの・・・よっ。
他の者の担当を横取りにするのは私奴の仕事ではありませんの・・・よっ。
それでも少しばかり助けてあげますの・・・・よっ・・・」
涼やかに響く声が急に突然売り変わり吐き出す声に艶が乗る。
ゆっくりと前に一歩。その脚を勧めつと同時に深く頭隠した頭巾を細白い指でずらし脱ぐ。
たらりさらりと長く伸ばした白い髪が堕ちてくる。
「おおっ・・・・。はっ、白銀髪だ・・・・。白銀髪の白肌人形だぞっ」
一歩と弐歩と前に進む白銀髪の白肌人形。その意味を識る者達は驚きを隠せない。
数多くの種類と性能を持つ従徒人形達であっても、白銀の髪を持つ人形は数が少ない。
壱ノ拾壱ⅰと言う名もそれと示す様に女史王だけが所有が許される稀有な存在である。
「少々に薄毛が気になる商人の御仁様。
私奴が愛してやまないでっかい御腹の桶狸怪助様が麦を御所望で御座いますの。
多少の手違いでご期待にはこたえられなかった屋も知れません・・・よっ。
お気持ちはわかりますが・・・個々は私奴の顔を立てて頂けませんか?
多少の戯れくらいなら差し上げますの・・・・よっ」
数歩だけ間に出て厚ぼったい唇をすぼめ、ちゅっと音を鳴らして口づけを飛ばしてくる。
「云々・・・それなら・・・・儂の麦を・・・・売っても・・・・」
自分に向けて飛んでくる白銀髪の白肌人形の口付け。
その唇に吸い付こうと薄毛の商人がバタバタと前に出る。
「あらまぁ~~。慌てん坊の叔父さんで御座いますの・・・よっ」
「うぉっ・・・あっ・・・嗚呼・・嗚呼嗚呼~」
悪戯ぽく白肌人形が嗤い目を細めた途端。商人の四肢がガクガクと震え快楽に惑い溺れ膝を崩し地面に堕ちる。
「嗚呼・・・嗚呼」と呻いて崩れ落ちた商人の股間はしみがじっとりと浮かび上がる。
「まぁまぁ~~。辛抱の無い御方で御座いますの・・・・よっ。
十分に楽しんで居た開けたと思いますので・・・・麦は売って頂きますの・・・よっ」
ちょっとしたお遊び戯言を済ますと又頭巾を深く被り直すと薄く微笑み嘲笑って魅せる。
「それでは後はお任せしますの・・・・よ。
何しろ私奴は愛しの親方様のお腹を視姦すると言う重大な使命が御座いますの・・・・よっ。
では。では。皆様道を開けてくださいませな・・・」
深く被った頭巾の中で冷徹にも淫猥に壱ノ拾壱ⅰがきすびを返し歩き出せば更に付き従う人形もそれに習う。
「ともあれ・・御主人はまともにも商談は出来ないようである。
周りの方々にもご迷惑を掛けたようではあるし・・・少々色を付けて麦を買わせて頂きたい。」
「どうも・・・・。好きなだけ持って行っておくれ・・
あっ。ぞれから・・・・時々で良いから頭を何故させておくれよ・・・。坊や」
「うんうん。お姉さん・・・又来るよ。ボクっ!」元気に少年人形が答えて屈託なく笑う。
付け加えるなら股間を濡らし膝から地面に蹲るのは薄毛頭の商人だけではない。
起きた戯言の周りに居た漢共は元より女でさえも辛うじて立ってはいても身を捩って四肢を震わせていた。
そしてそれは白銀髪の白肌人形が市場をあちこちと市場の店棚を飼い食いしながら歩き去るまで
壱ノ拾壱ⅰの後ろ商人と客達が列を作ってついて回っていた。


「今日も・・・腹と尻にぐさりと鋭い視線が突き刺さるのであるが・・・
市場への食材の調達ご苦労。とは言え未だ未だ下準備の段階であるぞ。
何分は初めての事もあろうから留意して作業するように・・・頑張り給え!。
甘いっ!しょっぱいっ!すっぱいっ!にがいっ!うまいっ!美味しいっ!である!」
「甘いっ!しょっぱいっ!すっぱいっ!にがいっ!うまいっ!美味しいっ!ですっ!」
あらかじめ計画された道理に食材を調達出来た半も居れば諸々な問題に手を焼いた班もいる。
それでも姉妹兄弟に助けられ互いに助け合い概ね目標の食材を揃える事にも出来る。
「姉妹兄弟の人形達よ。仮ではあっても我が主徒・親方様のご指導を賜り
これより本来の昼食料理にかかる。我等にとっては初めての調理方法となるので
各自各班共々。配布してある[本日のお昼ご飯の正しい作り方]手帳を参照して作業を進める様に。
最初の一手が一番大事だと御館様は仰っておる。・・・では各自作業開始!」
喰心坊屋敷の大庭の溜まり列を作る従徒人形達が指揮役の弐弐ⅳの言葉に息を飲んで身を引き締める。
その日まで食べたことの無い食物を作るとなれは幾ら頭脳明晰手先起用の人形でも不安は感じるやもしれない。
それと知ったとでも言う様にも又、自分自身の得意料理ともなれば怪助自身も気合いが入る。
「其処の御前っ。もっとかき回してよいぞっ。下洗いが一番大事なのだ。
・・・・・御前。大きな尻をしてるな・・・けしからん。実にけしからんぞ。・・して名前は?」
「こっ。こうですか?御館様・・・・尻の大きさは下洗い班一番にお大きいですの・・・名は五六ノ弐で御座います。
でも・・・御館様・・・。麦を洗うって何の意味があるのでしょう?」
下洗い班の五六ノ弐は水を満たした桶狸にかき混ぜ棒を突っ込みながら怪助に聞き返す。
「確かにだな・・・この國の食事方法とは違うところでもある。それでもだな絶対に必要なんだ。
此の國の味覚が甘さ一辺倒の原因でもある・・・それも大事であるがしょっぱいを知る為には
此の作業が必要なんだぞ・・・。ほら、見ろ・・・泡灰汁が浮いてきだぞ。ちゃんとすくい取れっ」
「はいっ。御館様。頑張ります」
多くも有る姉妹兄弟も周りにいる中で仮主徒である怪助に声を掛けて貰え得たのは五六ノ弐も嬉しい。
機会があれば尻を撫でて貰えるかも知れないと期待に想いを膨らませながら水桶の中の灰汁をすくい取る。
下洗い。
星異国渡りの腹の出た喰心坊が錬金召喚術によって脚をつける事になった其の大陸國。
食材豊かな街であっても。かじりついた食べ物の味はたった一つであった。
舌に感じる味覚は甘さのみ。肉塊を齧っても甘み。魚を食らっても甘み。主食の米もやっぱり甘い。
それには理由がある。土地柄と言えばそれに成る。
この大陸には火山がある。恐ろしくも巨大であり、もし麓と近くに望むのなら首を直角に曲げても天頂まで
見えずに手を越しに添え踏ん張って四肢を後ろに逸らさなければ仰ぐこともままならない。
しかも壱年の内の一つの季節に轟々と焔と音を鳴らし灰を大地に振り落とす。
天空に舞い上がる灰はとても軽くも雨とまじり大地に堕ちて積もれば家々の屋根を覆い
土の上に積もれば作物も栄養と一緒に灰を吸い上げる。それを収穫し食物にすれば灰の味がする。
草木を食べる羊をも捌いて食せば灰味が交じる。地に溶ける灰は食物もそれを食べる動物も
川に流れる水も灰が溶ける。何処を取っても灰味が交じる食物を捕食動物も人種人類も口にせざる終えない。
長い歴史の中となれば灰味をなんとかせねばと人種人類が悪銭苦闘と膨大な時間を要して彼等は秘策を生みだした。
蜂蜜である。
それも極甘の蜂蜜。尤もその甘さを出すために何世代の品種改良が行われた。
単純に膨大な時間を掛けたと言う訳だけではない。幾種もの蜂とそれ以外の生物や餌となる植物の組み合わせと改良。
拾年とならず凡そ百年近い年月を農家と学者と錬金術士が額を付きわせ、時に喧々諤々と争う其の果に
やっとのことせと時間の果に灰味を打ち消す蜂蜜が出来上がる。
これがこの世の甘みの全てである。豊かな食材と多彩な料理文化であっても灰味を打ち消すために最後は
蜂蜜をたっぷりと掛けて食する。布いては何を食べても甘みしか人々の舌は感じる事は出来ないのである。
星異界渡りの桶狸怪助。
元の世界でも自他ともに認める大食いでもあり喰心坊である。
学生時代には町食堂の厨房でバイトした経験もある。そうでなくも食には拘りがあるのだ。
最初こそ甘さの食事も悪くないと思うも直ぐに別の味覚が欲しくなる。
画面できずにもあれこれと思案したり、どうせ時間を持て余す日々でもあるし、女史王との婚姻がどうたらと
余計な悩みに頭を使うより忙しくしてる方が気が楽だとばかりに城下の街や市場を巡る。
降灰期に此の地に堕ちて脚を付けた怪助。
女史王のその城も街もその時期の灰被りの街となる。確かにそれは数日続き、灰貶しの職人達が家屋根から灰を落とす。
屋根から下ろした灰を集めてどかす職業があれば集めた灰を処理する場所もある。
城下街を一杯に覆う灰を観た事もない怪助は灰箱びの馬車を後ろから腹を擦りながら付いていく。
やっとの事で街の済の処理場所にたどり付いた怪助は灰処理職人の様子を暫し観察する。
処理場に運び込まれる灰は地面に掘った比較的大きな穴に雨水を貯めた池に流し込む。
「街から運び込んだ灰の土を水を貯めた穴に注ぐ・・・・。
それでどうするんだ?水を貯めた池。その水も空から押してきた雨であろう?
それも火山から吹き上がった雨灰であるのだぞ?それでどうなると言うのだ?」
暫く我慢していたがよく解らずとなれば聞いて尋ねるのが一番早いと思えば職人に捕まえ問いただす。
そこそこに歳を召しているのに鼻にニキビが幾つもある灰職人が笑って答えてもくれる。
結構時間もかかる話であるから後でも思い出した噺が次になる。
降灰期に空から降ってくる灰は色々な方法で街の隅の灰水池に集められる。
水池の水も元を正せば天から降る雨であり其の水にも灰が混じってるはずであるが
職人に言われ水池を覗いてみると確かに池水は綺麗に澄んでもいた。
どうしてだ?と聞けば職人禄に答えず。草が吸い取った灰汁を土に混ぜて煉瓦を焼くと丈夫になると笑う。
水面に幾つかとも癒えず灰泡の中に緑草が浮いたり沈んだりようにも視えるが、
あれが灰を綺麗に吸い取ると雑に言われてもよく解らず屋敷に返って弐弐ⅳに確かめても良くもはわからなかった。
それでも実際に確かめて見ようと思い市場に脚を運んで職人が教えてくれた草を探してみる。
やっとの事で見つけたと言うよりも浸草と呼ばれる其の草は直ぐに手に入る。
見よう見真似で小さな桶に水を張り、買い求めた浸草を入れてみた。
弐弐ⅳと一緒に水桶を覗き込こみ少しの間待ってみると。水桶がぽつぽつと泡だし灰泡を作る。
「これは・・・灰汁と言うのか・・・。もしかして此の草は水の灰を吸って灰汁を作るのか?」
「親方様?灰汁ってなんですか?草の周りに泡がくっついている様にも見えますけど?
その灰汁ってなんですか?[大叔母様]の辞書にも記載がありません。
どういう現象なのでしょうか?見当も付きません」
「うむ。もし・・・儂の考え通りなら・・・こうだ。
此の地の植物なり動物なり全ての物はその体内に灰を含むものである。
だが然し。この浸草は水と一緒にすると灰とその成分を吸い出して灰汁を作り出すのだ。
なるほど。そうなれば。今日の調理担当は誰だ?・・・芋をもってこい。芋だ」
「芋ですか?お芋でございますか?直ぐに用意させます。御館様」
以心伝心、人形特有の通信機能を受けて主を数個を抱えて料理当番の七七弐ⅸが奔ってくる。
何かを食べるには必須になる極甘の蜂蜜の小瓶も忘れてはいない。
「態々ご苦労。だがその蜂蜜はいらぬ。
悪く思うな。これは実験でもあるのだ。そんな顔をするな・・・。
さて、先ず芋を煮て食べようと思うだろ。それには鍋に灰を含む水を満たして火を炊き沸騰させる。
その時に此の浸し草を多めに入れておく。湯を沸かす時に最初に入れておいても良いかもだな。
浸し草を入れておくと灰汁が出て来るだろ。それを草と一緒に灰汁を取り除いておく。
此の段階でも恐らく湯の中の灰も浸し草が吸い取っているのだ。
まぁ次に芋を転がしてしまえ。浸し草も追加しておけよ。
・・・・ふむっ。・・・・。ほら見ろ・・・・・芋の中の灰が浮いてくるではないか?
芋に染み込む灰の成分を浸し草が吸い取って灰汁となっている。
うぬ・・・・よく見れば鍋の中の灰を十分に吸い取ると浸し草の色が変わるようだな。
そのままで構わぬから浸し草を取って見ろ・・・」
「澄んだ・・水・・・。お湯で御座います。御館様」鍋を覗き込む弐弐ⅳが漏らす。
「御館様?お芋が含んだ灰の成分を此の浸し草が吸い取ると言うのですか?
そうしたら・・・・、どうなるんですか?」七七弐ⅸも不思議そうに首を捻って鍋を覗き込む。
「此の地の人々も主等人形もそうであるが・・・・食物に極甘の蜂蜜をかける。
食物の中に染み込んだ灰味を消す為だ。甘味で誤魔化している。
灰味がなくなれば蜂蜜を掛けて食べる必要がなくなる。つまりは素材の味を楽しめる事になる。
素材の美味しさを存分に味わう事が出来るのだ」
「灰の味を誤魔化す必要がない・・・・。極甘蜂蜜がいらない?・・・素材の味が楽しめる・・・?
お芋って・・・どんな味がするのでしょう?楽しみです」
怪助の語る事が良くも解らずとも美味しい芋が食べられるやもと知れると二人の人形は嬉しくて
身を屈めグツグツと煮える鍋を覗き込む。
「どれっ。そろそろか・・・・よしっと・・・。はむ・・・。おうふ・・・」
結構あついとも思われる鍋の中にさっと手を突っ込み歪な形の芋を抓み取り上げ
怪助は皮もむかずに丸ごとに口の中に放り込む。熱さよりも芋本来の素朴な甘みが口中に広がる。
「旨っ」自分の舌が覚えている芋の味を噛み締め、天空を見上げれば一筋の涙ほろりと漢泣き。
ぷっくらとした頬をしたりと伝う漢涙の筋に周りも不思議そうに怪助の顔のじっと観てる。
たかが芋である。お芋であり塩も掛けずに茹でただけである。
留意するべきことならば、弐弐ⅳを初め大陸人も人形達も素材その物の味を知らない。
土の中に溶ける灰味を消すために極甘の蜂蜜を掛けてしょくするからだ。
食感は違っても舌が感じる味覚は甘みだけである。
それでも仮主徒たる怪助が一個の芋を口に入れて感涙に塗れ天空を仰ぐとはどんな味なのだろう。
「御館様っ?そんなに美味しいのですか?私奴も頂いても?」
感涙に塗れじっと天空を見上げ微動だにしない怪助。余りに動かないので気絶でもしてるかにも視える。
「そんなに美味しいのかしら???どれっ。私奴も・・・」
怪助の返事も待たずに痺れを切らした弐弐ⅳは熱いままの鍋湯に指を突っ込み
小振りな芋を取り上げ、怪助を真似て皮をむかずにぱくっと口の中に放り込む。
「あつっあつっ。・・・あっつつぃ・・・あっ」
口の中に放り込む一口サイズの小振りな芋。朝食に食べた汁にもちゃんと入っていた。
汁にも灰味が染み込んでいるから当然その汁にも極甘の蜂蜜がたっぷりは入れてある。
特に弐弐ⅳは蜂蜜の甘さが好物だから誰よりも多く蜂蜜を汁に入れる。
だが然しどうだろう・・・・。
朝と同じ芋のはずである。本来であれば灰の苦みが口中に広がるはずである。
「なっ・・・なんて素朴な味なのでしょう・・・。
嗚呼っ。こんなにホクホクと優しくもほんのり甘く・・・・美味しいのです。
嗚呼っ・・・・。私奴はなんて罪深いのでしょう・・・お芋の味を知らないで生きて居たなんて・・・」
ひとつふたつと涙が弐弐ⅳの頬をすぅ~~と流れる。
気がつけば・・・・。主徒・怪助の横に並び立ち同じ姿勢で感涙に咽び天空を見つめて動けない。
「御館様?弐弐ⅳ様?そんなに美味しいのですか?」
「だって蜂蜜かけてないんですよ?どきつい灰身が染み付いてるのでは?」
「でっ、でも・・・本当に美味しそうですよ?」
微動だにもせず感涙に咽び泣く怪助と弐弐ⅳの姿を信じられずにも他の人形達も
おっかなびっくりと鍋から芋を拾い上げ口中に投げ込む。
「なっ、なっ、なっ、なっ、なにィ」
「えっ・・・ホクホク・・・・ホクホクなの!ホクホクだわ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
それと気がつけば怪助の周りでどの従徒人形達も直立の姿でただ、沈黙の果に感涙に咽び天空を見つめている。
「味噌を持て・・・・味噌だっ。
それとネギと豆腐・・・・。芋と人参だ・・・・行けっ」
「はっ!御館様・・・承知しましたっ」
未だ感涙に身を震わせる怪助が一つと下知を下す。
その瞬間。瞬く睫毛が閉じ開く瞬間。従徒人形達の瞳が燃える。黒から漆朱へと。青から漆銀へと。
草木揺らすも風一筋も建てず跳ねて消える従徒人形達の影もない。
「あれっ?・・・君達っ?
・・・・・・芋っ・・・全部たべちゃったの?結構な数茹でたよね?
一個ものこってないよ?・・・・・・儂の芋・・・のこってないよ・・・・とほほ」
戦場を駆け奔る剣と槍の稲妻の如く。主徒の命と下知を胸に刻み瞳を燃やし跳ねた人形達。
然り・・・其の瞬間に閃光一閃。湯泡膨らむ鍋から全ての芋が忽然と消え去る。
当然、ホクホクと素朴にもほんのり甘い芋は一個と乗らず人形達の胃袋に収まっていた。
ただ一人。一個しか食べられなかった主徒・怪助は口の中に僅かに残る芋の味に想いを巡らせただ一人
広い庭先で天空を見つめ空に浮かぶ雲をじっと見つめるしかする事がなかった・・・。
「料理長殿!料理長殿っ」
「何だと言うのだ。後弐時間四拾三分と参拾参秒は中休みの時間であろう?
ただでさえ、あのでっぷり腹の御館様が来てからと言うもの。
私の料理にああだこうだと文句ばかり言われてストレスがたまっているのだ・・・。
いっそ、あのでっぷり風船の腹を針で一突き・・・」
「料理長!怪盗ですっ!怪盗が現れましたっ!」
「かっ・・・怪盗・・・・?」料理長は言葉の意味が解らずも困惑する
[怪盗・・・・金品を初め極めて貴重美術品を華麗に盗み出す泥棒。又は盗人]
煌めく思考の一瞬に記憶辞書をあさり該当の言葉の意味を確認して次の言葉を紡ぐ。
「かっ、怪盗だと!して何を取られた・・・・?}
「そっ、調理場にあった芋五箱。そっれから貯蔵庫の人参とネギです」
「芋と人参とネギ・・・・?そんな物怪盗が盗むのか?何処にでもある食材ではないか?
御前。そんな事で私奴の貴重なお昼寝の時間を邪魔しよう言うのか?
一応、警備班に知らせておけば良いだろう。私奴は昼寝を続行する・・・ふんっ」
芋と人参それから葱。昼寝に戻る料理長は大事にならずと捨て置くが
実際には金物倉庫から大きめの鉄鍋・お玉。調理場から幾つかの調理器具・大きめの椀が消えていた。


「異国渡り料理隊・御饂飩制作部っ。
手打ち饂飩用!小麦粉(中力粉)準備よしっ!水(又はぬるま湯)適量準備よし!
塩適量よしっ!打ち粉よしっ!打ちまな板よしっ!伸ばし棒よしっ!厚刃包丁よしっ!
その他諸々道具準備よし!・・・・臨時料理長・弐弐ⅳ様。御饂飩制作部準備できましたっ」
「宜しい。想定時間より壱十弐秒ほど圧してしまっているが、許容範囲であるっ。
これから貴様等が行う作業は本日の料理の主役を務める大事な御饂飩の制作である。
我々が初めて味わう事になる味覚・しょっぱいを教えてくれる大事なものである。
勿論。饂飩の麺の制作はもとよりそれを浸す温汁も貴様らが作る事になる。
今更であるが・・・・。我が御館様肝いりの大事な料理であり
御館様が自らお書きになった[僕のお腹をぱんぱんにする為の料理教本初版本第壱巻]に基づき作業を進めるように!
では・・・作業始めっ!」
厳しくも起立正しくと臨時料理長・弐弐ⅳの前に列を作り話を傾聴する白い割烹着を着込む人造人形達。
その前を一層に厳しい顔つきで靴音をカツカツと鳴らし声を上げ弐弐ⅳが号令を上げる。
ザッっと音を靴音を鳴らし用意された調理台の前に歩きよると予め自らの脳核に刻み込む
[僕のお腹をぱんぱんにする為の料理教本初本版第壱巻]に基づき作業を始める。
饂飩・・・。
個の國の國人。彼等と共に形を並べ尽くし営む人造人形達。
事情があるとはいえ御館様と呼ばれる桶狸怪助が火山灰に塗れる食物の味を誤魔化す為に
多量に掛ける極甘蜂蜜。それを打ち消す方法を怪助が見つけた浸草による灰汁味の解消方法
その後に怪助が最初に食べたいと願う饂飩。
当然に國人も人形達もそれを食べた事もその味をも想像する事も出来はしない。
小麦は有る。麺麭はある。怪助の記憶と形は違っても麺麭はある。
「小麦があるのだ!何故に饂飩がないのだ!。
饂飩と蕎麦こそが我が生まれ國の心の味である!食べたいのだ!儂は饂飩が食べたいのだっ」
屋敷の天井を見上げ腕を組み腹を突き出し豪語する怪助であっても
弐弐ⅳを始め人形達は全くもって想像も出来なければ理解も出来ないでいる。
「御館様・・・・饂飩ですか?・・・御饂飩で御座いますか?
味ところか・・その形も想像出来ません・・・。
[大叔母様]のこんなときこそ勉強に役立つ総合辞典にも記載が御座いません。
どのような食べ物なのでしょう?」饂飩と言う名前だけでは全くわからないと弐弐ⅳは眉を潜める。
「饂飩というのはなっ。
小麦を練って打ち伸ばし麺として甘じょっぱい汁と一緒に頂く食べ物なのだ
つるつるとこしのある麺を甘じょっぱい汁に浸しズルズルと啜る食べ物であるんだぞ」
「おっ、御饂飩は・・・甘・じょっぱい・・・。甘じょっぱい・・・?
そっ、それは甘いのですか?しょっぱいのですか?甘じょっぱいとはどちらなのですか?」
正せさえ甘味しか知らない弐弐ⅳ達人形にしてみれば甘味は知っていてもしょっぱい走らぬのに
それが二つも混じってしまえば混乱もすれば全くもって想像もつかない。
「甘じょっぱいは・・・甘じょっぱいのである。甘みとしょっぱいが適度に絶妙に交じる甘さなのだ
饂飩。それに稲荷があれば最高の食事であるな」
饂飩を啜り稲荷を頬張り喰らう味を想像し一人で思いに浸る怪助。
「甘じょっぱいは甘じょっぱい!??甘みとしょっぱいが適度に絶妙に交じる甘さ!??」
「はぃ!御館様!稲荷とはなんですか?それは甘いのですか?しょっぱいのですか!??
どういう食べ物なのですか?どうやってつくるのですか?」
「稲荷と・・言うのはな・・・」
迂闊に別の食べ物の名前を出した途端に弐弐ⅳの後ろから詳細を記録していた書紀係の四壱拾五禄が
ひょっこり顔を出して稲荷の作り方を怪助に問い正してくる。
画してその日制作される料理の品書きは一本磨鰊饂飩と稲荷と決まる。
「こらっ!そこのお前っ。腰がひけてるではないか!
饂飩は腰が命なんだぞ!打ち手の腰が引けては饂飩がコシが出来るか!ちゃんと腰を入れんかっ!」
「ひゃん!あんっ・・御館様素敵!・・・ちゃんと腰入れます・・色んな意味で!」
饂飩の粉玉を寝る人形の尻をバチンと怪助を叩くと歓喜交じる悲鳴を料理人形が喘ぐ。
結構広い庭広場に理路整然と並べられた打ち台の上のまな板の上に小麦粉(中力粉)の上に
既に浸草を桶にしたし十分すぎるほどに浸し灰を吸い取り尽くした水を注ぐ。
饂飩の玉打ち等やっとこない人形達であってもその前で腹を突き出し練習と称してやってみせた饂飩打ちを
彼女達が真似るとぎこちなくもなく怪助の仕草動作を完璧に再現して魅せる。
玉打ち台の上で練られる饂飩の玉。人であってもそれなりに腕力を要する物であっても
今それをこねる人形達は専門特化なくても戦に出ることも有る。
コシのある饂飩を生み出すには申し分ない力と繊細な動きを細腕の癖に巧みに捏ね饂飩玉を作っていく。
頭の上から饂飩玉を振り下ろしいたに打ち付けこねては打ち粉をぱっと振って又こねる。
十分に練られた饂飩玉は打ち手の人形から桶を持つ別の人形に引き取られ寝かせ場に運ばれると
又、しばしの間時間をおいて休ませ寝かさえる。
適度な時間十分に寝かされる饂飩玉は十分に空気を吸い込み艶肌に輝くと担当の人形が大事そう桶を抱え
次の係への場所へと急ぎ脚で届けられる。
十分に寝られ時間と手間をかけて寝かされ桶に収められた饂飩玉は次の伸ばし場へと運ばれる。
打ち場と同じような板の上に載せられる饂飩玉はこの為だけに用意された伸ばし棒を使い
大地に踏ん張り腰を据えた人形達が饂飩玉をぐっ!ぐっ!と伸ばして行く。
一度だけではなく伸ばされ又のばされては畳まれちょう良い塩梅になると白い細指できれいに畳まれると
厚刃包丁でサクリっサクリっトンっトンっとリズム良く切られていく。
ここまでも大事であろうがこれからが蝶よ!華よ!との魅せ場である。
前段階でいくら人形達が端正込め饂飩玉を練って叩き伸ばし饂飩玉を作り上げたとしても
沸騰するお湯に浸し湯で上げ麺として湯で上げる。
星渡り人の怪助が書き上げた[僕のお腹をぽんぽんにする為の料理教本初版本第壱巻]にも
この調理段階が一番大事あり尤も難関な作業段階とも記されている。
「御館様っ・・・。
饂飩制作班の事で御座いますが・・・つまり湯で係の人員の件ですの。
料理作業の段階でも一番重要な作業であると教本にも書いてありますの。
ここは我等、人造従徒蝋機人形の中でも戦闘は元より一般教養・調理・裁縫・主徒様への奉仕
・夜伽等全てにおいて優秀な者達を選別しておりますの。ご確認をっ」
当日に向けての準備を積み重ねる日々に続く時。
誰もが初めて作る饂飩と稲荷の料理に関して臆する事はあっても、それは名誉でもあろう。
「ふむっ・・・ご苦労。・・・それにしても・・・けしからん・・・うぬ・・・けしからん」
私室となって久しい結構広い部屋で大きめの椅子に菓子籠を抱え込み鎮座する怪助の前に並ぶ人形
数え見れば凡そ壱拾五から壱拾と九。当日は怪助を含め弐壱拾杯の饂飩を茹でるとなると
人数も揃えるべきであるが、他の星他の土地から渡ってきた怪助にしてみれば随分と美麗な者達である。
人造従徒蝋機人形達ともなれば美麗な者が多い。それから使用される状況目的に合わせて特質が与えられている。
つまりはそれぞれに個性はあっても端正な顔立ちであるのは当たり前でもある。
怪助を始め漢共からみれば端正な顔立ちとその四肢に魅了されるのも当たり前だろう。
大きく突き出しす二つの乳房。手を伸ばせば指に乳肌が指に喰い込み減り込み指間から肉がはみ出るだろう。
乳を嬲るとなればその感触を忘れられず月夜になる旅にそれを思い出すに違いない。
視線を下ろせばきゅっきゅっとしまったその先には大きく膨らむ丸い腰。
後ろからみれば膨らむ尻肉を手を振り下ろし手平の証を刻むのもまた至極の悦である。
「けっ・・・けしからん・・・けしからんが・・・・ともかくである。
貴様等の手淫・・・あっ。違った。手腕に当日の饂飩の甘さが決まるのだ。
油断するんじゃないぞ。・・・これから実演を儂が行う。その後に貴様等が練習を行う。
これに関しては儂が直々に指導する形となる。まぁ~なんだ。練習は大事だからなっ・・云々」
「はいっ。御館様!宜しくお願いしますっ」
やる気十分雄々しくも声を上げ前に壱歩弐歩と前にでる人形達に怪助も驚きちょっと引いてしまう勢いである。
たかが饂飩一杯と米飯代わりの稲荷に有り付く為と言えど随分手間がかかると怪助は苦く嗤い廊下を歩く。
「御館様!饂飩を入れる器・・椀と言うのですか?
木製の物が良いのでしょうか?それとも漆器のほうが相性がいいのでしょうか?
資材兵站調達班から問い合わせが来てますの!」
「御館様。饂飩を食するのは箸と決まってるそうですが
生憎。この國にはぶっ刺し棒しかありません。どこから持って来ればよいでしょう?」
「御館様。何故か情報が漏れたらしく・・・
星渡りの腹の突き出た御仁が故郷の食事を無料で馳走してくれる[饂飩会]なるものが
催しされると貴族の間でも城下の者の間でも噂になってますの。どうしましょう?」
中には当日が待ちきれず宿馬車で屋敷の前に陣取る貴族もいれば布団を抱えて順番待ちする
輩もいるようですの?どういたしましょう?」
「なっ、なんかいちいち細かいなっ。
儂が仕切らなくても[大叔母様]とやらの裁量に任せれば良いと言うのに。
えっと、器は漆器製の物が良いだろう。木製では軽すぎるだろうからな。
箸かぁ~。ぶっ刺し棒って使いにくいいんだよな。先尖り過ぎだし
後で見本作ってやるから・・・・節竹だっけ?あれを用意しておけ。
面倒だなぁ~~。大体なんだ?星渡りの腹の突き出た御仁って誰だ?儂の事か?
思ったより腹つきでてないぞ?ちゃんっと節制してるからなっ。えっ?しっかり腹でてるって?
これくらいは愛嬌だ。愛嬌!チャームポイントなんだぞ!儂の腹は。
えっとなんだっけ?ご相伴に預かりたい貴族と城下人?
なんでそんな事しないといけないのだ?面識もない貴族などに奢ってやる義理はないだろうに。
只でさえ食材の調達には金銭かかってるだぞ?饂飩代を取れしこたま!ぼったくってしまえ。
その分城下人に安く喰わせてやれば良い。それでも制限かけろよ。
儂が喰らう分が減るからな・・・がはっはっのはっ」
初めて饂飩を食する機会に恵まれたとは言え人形たちにしてみればわからぬ事ばかりである。
知識と経験とその味を知る者が個の國に怪助一人となれば煩くついて回り質問詰問するのも当たり前である。
「おっ・・・・御館様・・・あの・・・」
[腹の突き出た星渡の御仁が振る舞う饂飩と稲荷の食事会]
いつの間にか日時とか場所とか饂飩一杯の値段とかの詳細が公に城下公民局の前の掲示板に
張り出され本番当日まで後何日もないやもしれないと言うその月夜。
準備と諸事務もなんとか片付け飯もあらかた喰らい風呂に入り湯を浴び
寝酒と夜食に有り付きつきもし、落ち着いたかと思えばまだ腹に空間が有ると擦るも
食堂は既にしまってるやもしれない。
ならば夜晩見張りの巡回人形兵が詰める夜食詰め所に偲んでやろうかと背を丸めて歩くと声がかかる。
「おっ・・・御館様っ?」
「うむ?どうした。結構遅い時間だぞ?こんなところでなにしてるのだ?
儂に用事でもあるのか?それとも例の饂飩の件か?
小戯言くらいであれば食いしん坊の弐弐ⅳでも押し付けてやれば良いんだぞ。
儂は小腹がちょっと空いておってな。これから夜晩見張りの詰め所に忍び込むところなのだ。
してっ。何用だ?・・・・えっと・・・」
これから夜晩見張り兵の詰め所に偲んで小腹を満たすと結構大胆な発言をしたその先で怪助は言葉を飲み込む
「はい・・・御館様・・・・私奴は七七ノ九壱拾と申します。
お察しの様に特別に才もなく秀でた四肢でも御座いません。何より小心者でも御座います。
常々に目立たぬようにと気を使い、皆様に迷惑をかけぬようにと心かけております」
気が弱くもか弱くも遠慮がちな性格を与えられた人形なのだろう。
標準的な背丈有るはずも猫背に更に腰低く怪助を見上げる姿は確かに弱くも頼りない。
「その・・・目立たぬ迷惑かけずとの人形が儂に何のようだ?」
少々、怪助はむっとした。気弱で臆病な人形とやらに付き合っている中に腹も減ってくる。
「はい・・・。御館様。
常々、目立たぬように迷惑をかけぬようにと気をつける日々を送っていたのですが・・・
何故か御饂飩番頭の弐弐ⅳ様に目をつけられ饂飩玉の打ち手と湯で上げ人に任命されてしまいました。
この上ない名誉と存じますが・・・自信が御座いません・・・。
私奴等には恐れ多い役目で御座います・・・。御館様の実演も拝見しましたし影でこっそり練習もしてるのですが
どうしても饂飩玉に艶がでないのです・・・これでは饂飩玉を練ることもままならないのです。
それで・・御館様。私奴に個人指導を施して頂けないでしょうか?お願いします。
あっ。小腹がお空きかもと思いまして米饅頭を盗んでまいりました。
漬物と粗茶もついでに盗んできたのです。・・・これでどうぞ私奴にご指導を」
節目がちにしたから視線を絡める人形・七七ノ九壱拾の胸には笹布に包まれた米饅頭と漬物が入った籠がある。
どうやら気弱な性格な割にしたたかでもあり食堂から食事を盗む度胸はあるらしい。
それほどまでに追い詰められているのかもしれない。
「ふむ・・・なかなかいい心掛けだな。お前。切羽詰まっているのか度胸があるのかわからんが・・
七七ノ九壱拾・・・。籠をもったままでいいから背筋を伸ばして観ろ。ぴんっと背筋を張って・・・おっ」
「せ・・背筋を伸ばすのですか・・・?こっ・・・これで宜しいのですか?・・・御館様?」
「おっ・・。おおお・・・けしからん・・七七ノ九壱拾とやら・・・随分とけしからんぞっ」
「えっ・・・申し訳ありません・・・御館様・・・御免なさい・・・」
怒られたとばかりに背筋を伸ばしたまま下を向く七七ノ九壱拾であるが怪助の心眼は確かなものである。
「うむむ・・・云々・・・うむうむ・・・・けしからん」
内気な性格なのだろう。ましてや正式とは言わずとも仮ではあっても主徒となる怪助に背筋を伸ばせと
命じられ、尚且つにけしからんと怒られたとばかりに下を浮いてしまうが背筋は伸びた儘である。
床に視線を落とすも少々と影の有る顔つきであれもその四肢は他の人形と変わらずも違う。
予め決められ元となる基準はあれどもそこから幅と言う個性が与えられてもいる。
怪助の目に映るその姿は確かにその乳房は他の者と変わらずとも少し大きいと感じるやも知れぬ
心眼極めれば大きさはともかくも形良く乳輪こすれば尖る乳首は色も感度も良いに違いない。
但し腰はきゅっと締まると膨らむ尻はでっぷりと大きしすぎるとも形が良すぎるのも見て取れる。
手ではればぱんっと貼れば跳ね返るも良い音がなれば撫でて掴めば柔らかくも指が喰い込み沈む尻肉である。
「これは逸品である・・・なになに?饂飩打が上手くいかないと?
どれどれ儂が直々に教えてやろう・・・特訓だな!特訓である!うんうん!」
「あっ・・・・有難う御座います。御館様・・・・あんっ」
七七ノ九壱拾が持ってきた米饅頭とその四肢に引かれ七七ノ九壱拾の手首を握って調理場へと引きずり歩く


「えいやっ」とばかりに掛け声高く頭の上に持ち上げた饂飩塊が板に打ち付けられる
他の打ち手に比べれば七七ノ九壱拾のその姿は癖があった。








