【女装男児】女装家且来素子闊歩歩いて候:其の八

掲げた防護板に穴が開いてからその後ドゴンっと音が耳に届く。
「まっ又。穴が開いたぞっ。どうなっているんだ?
人形砲弾を跳ね返すのではないのか?あの防護版は?」西井守光秀縷々大佐が怒声を上げる。
「其のはずでず。設計部が言うには完璧に弾かえすと。計算では」
仕事がよく出来る副官が成るべく頭を下げて怒鳴り返す。
それでも状況を確認する必要に駆られちょっとだけと頭を上げる。
視界には雨とあられに鉄壁を誇るはずの四六特団列車の防護板を安々と人形砲弾が貫いて行く。
遠目には人形砲弾がまともに車両に命中し其の勢いに吹き飛ばれた兵士の脚が歪に曲がり
地面に落ちれば首の骨を負って絶命する。何人も逃す物かと人形砲弾は数知れずと四六特団列車を襲い
戦闘開始から弐十分も立たずに師団は壊滅の危機に有る。
「しゅっ。主砲は?主砲はどうなってる?何故打たぬ?」光秀縷々が床に這いつくばって問う。
「主砲なんて真っ先に潰されましたよ。あんな大きな物。良く見える的です」
副官は仕事だけは良く出来ると自分でも思っていた。どうやら嘘らしい。
状況を十分に熟考して配慮を怠らず挑んだ敵性地上戦艦陸の船弐番艦の撃破を目指し
あまり協力的ではないとしても物資の補給と英気を養う場所を提供してくれた中央管理局を出立し
之が獲物で有るぞと鼻息を荒く戦闘を開始する。
まずは人形砲弾を防ぐために設計された防御板を起動し高く掲げ。
次に人形砲弾の弱点を付くために大型の照射装置をも敵戦艦に向ける。
それから主砲を回し弾を込め砲撃を開始する。
決められた手順であり。それを踏めば陸の船を撃破するのは簡単である。
否然し。後の戦時検証がなされた時に同席した副官は且来の言葉に自分を恥じる。
「貴殿等の其の眼は節穴だったのか?動かぬ一番艦を砲で撃ち抜いたのであろう?
弐番艦の方が大きいし射出砲の数も多いと気づかなかったのか?大馬鹿であるな
先に提出されていた資料も観なかったのか?壱番館は実験船であるぞ?
実践配備された弐番艦・参番館は性能が向上して当たり前だろう?」
戦闘時のその時にこそ気づくべきであったがそれでも出来ることはなかったろう。
弐番艦の人形砲弾は壱番艦のそれより性能が良くて当たり前。
砲弾の速度も早ければ射出後の曲線軌道の改善それから弱点である受明度の遮光性能も上がり
単純な照明弾等では止める事も出来ない。最初こそ四六特団の大型照明装置の影響をも受けるが
直ぐに修正対応されて影響を受けなくなる。もっとも目くらましを受けた人形砲弾さえ
軌道をずらすが結局四六特団の車両を貫通してる。
人形砲弾が列車に襲いかかる度に兵士の手が千切れ血飛沫が跳ね首が飛ぶ。
防護板等全く焼くに建たず照明装置は硝子の屑となり主砲は鉄屑でしか無い。
次々と車両にも穴が開き隠れる場所も段々となくなる。
これも又人形砲弾の性能が上がり上下角の軌道変更が容易になったからでもある。
「逃げましょう。今しかありません。今しか」
「逃げろだと?四六特団を率いる西井守光秀縷々に逃げろだと?」
自分の面子と面目に未だ拘り杖を離さない光秀縷々の手を無理に掴み
敵砲撃の僅かな間隙を突き車両の反対まで転がると無線機を掴んで怒鳴り散らす。
「警笛を鳴らせ。撤退警笛だ。退却しろ。全員退却だ」それだけ言うと無線機を投げ出す
自慢の大型車輪を既に人形砲弾に撃ち抜かれ鉄屑となった戦闘機関車の操室で
無線機のから漏れた命令に我に返った機関士が慌てて警笛の紐を引いて下げる。
ぼぉ~~~んと断末魔を上げる四六特団の列車を未だ血が足りぬと指揮車両を打抜き通す。

極限状態に成ると人は回りの風景をスローモションの様に時間を長く引き伸ばして感じる事もある。
間違いなく自分の隣にいたはずの副官の姿が眼に写り次には恐怖に憶え口を開けたままの兵士の
首が目の前を通り過ぎ血しぶき雫の数を数えられるかと思うと衝撃が体に奔り地面に堕ちる。
「うぐぅ」肺から空気が一気に履き出てしまい空気を求めて口と喉を噛みしめる。
どごんどごんと砲音激しく耳鳴りとなれば列車を貫き砲弾が迫る。
必死に必死にと地面を転がり少しでも遠くに忌まわしい砲弾が届かない所へと光秀縷々は這いずり回る。
戦女神が本当に居るかどうかは別として偶然に転がり込んだ地面の窪みで頭を抱え
どうか人形が振ってきませんようにと呪詛然りと何度も声に出して唱える。
敵性陸の船弐番館の撃破の意向を強く指示したのは秀光縷々自身で有る。
この時点で見通しが甘かったとはおもいたくはないが、あの小童司令官代理は強く反対した。
「撃って出ても的になるだけですよ?
我らは未だ人形砲弾の対策を発見していません。
状況は極めて不利なんです。弾数だって向こうが多いですよ?
細く長い列車に詰める数は多くないし。広い面積を確保できる船は腹にかなりの砲弾を抱えられる。
算数できますか?算数。秀光縷々大佐」それを言われた時はムカついたし握る杖で頭を殴ってやろうとも
思ったが小柄で幼顔の司令官代理の言う事は正しい。四六特団は只の的で在った。
納得も行かず恥と知っても大尻の且来准尉に声を掛けて観ても
「断る。儂はゆかぬ。大分良くなったとは言え本調子ではないのでな。
軍の嫁と喧嘩は続いているし雌犬共が散歩しろとか尻を叩けとか煩いのだ。
何より勝算は未だ無い。あれば小童司令官が号令を掛けよう。
それでも行くと言うのなら師団兵を死なせに行くようなものだ。儂は助けぬぞ」
互いに溝があるとは言え顔を合わせた問いかけに且来も腹を突き出し真っ直ぐに答えた。
それでも秀光縷々が出陣を押したのは武功を焦っただけではない。
壱番艦を撃破した功績は確かに評価に値するも未だ称賛には値せず・・・。
陸軍上層部が判断を下し四六特団の力を疑問した通達を返して来たからである。
正式な師団とて発足を認められた物の秀光縷々は満足は出来ていなかった。
それ故に師団兵の士気が高い内に次の一手を踏む必要が在った。

四六特団結成時に父が祝品として送って暮れた杖はもう手の中にない。
何とか脚を捻っただけで済んだのは不幸中の幸いと思いたいがそれもいつまで続くかわからない。
どれだけ祈っていたのかも解らずにもやっと砲弾が終わったと当たりも静まり返る。
光秀縷々は脱兎の如く地面の窪みから飛び出し奔る。
最も脚をひねっているから思うようにはとても行かず引きずるから精々早足が限界だ。
それでも少しでも遠くへいきたかった。にげだしたかった。ひたすらに。
屍累々死体が散らばる。苦しみに悶絶悶たままに息絶えた顔のひとつひとつに見覚えがある。
師団の結成時にその顔写真を光秀縷々が一枚一枚捲り選んだ部下達である。
どの顔も良く知ると思えば苦悶に満ちどの遺骸にも手がなければ脚もない。
胴体が千切れてると思えば赤い鮮血が土に溜まりを作る。
大分遠くに離れたと思っても未だ人形砲弾が師団列車を貫く音も絶えない。
どずんと近くで音がなればびくんとみを縮めれるが決して光秀縷々は後ろを振り向かない。
怖くて怖くてしょうがないし。どうせなら気づかない内に殺してほしいとも願う。
助けはこないと知ってし。声に出して名前を呼んで叫んでも儂は行かぬと虚空が変える。

「しばらく袖を通してなかったらピチピチであるな・・・又太ったし」
中央管区の操車所の脇の車海老と書かれた空木箱の上に腰を下ろし
時偶、手を動かしては目の前の焚き火に木枝を且来が放り込む。
顔を合わせる度に態々と胸を揺らしてくる女医が配る薬がよく聞くのか
それとも此処が正念場と睨むのか、丸めた背には体調の良さが見て取れる。
カツカツと軍靴の踵が地面に響くと未だ若い兵士の姿を焚き火が照らす。
「且来素子女装家第弐連隊・憤怒轉一等兵。準備出来ました」軽量であるが一連の装備を身に付けている。
「憤怒轉。貴様右手の先がないではないか?どうやって銃を撃とうと言うのだ。
「はっ。右手の先がないのでずっと左手で打つ練習をしておりました。
それに脚はちゃんと二本残っています。仲間を担ぐ事は出来ます」
右手の先がないままに憤怒轉はびしりと敬礼する
「轟弐礼少尉。出れます。自分は二人背負って介護板を弐枚引きます」
且来には劣るとあっても十分な体躯の轟弐礼少尉が焚き火の側に顔を寄せる。
「あれ以来、出番がないので顔をお忘れでしょうが
でぶの隣には可憐な人妻がいないと成りません。粗胡椒少尉ついていきます。」
「久しいな。粗胡椒少尉。息災か?貧乳好きの旦那とは上手くいってるか?」
「離婚しました。きっぱりと。Eカップの女と浮気してたので。
御先祖様の離婚届を有りが叩く使わわせて頂きました。
つきましては・・・こほん・・・。こちらが四六特団の出撃時の資料です。おでぶ准尉」
最初から死線をともに歩いた粗胡椒少尉が差し出す書類板に眼を通す。
「小童。現状はどうなってる?どれくらいまで掴んでいるのだ?」
声が掛かるとは思っていたがすぐに見つかるとは思ってもいなかったのだろう。
恥ずかしげに頭を掻きながら小童と呼ばれた司令官代理が姿をみせる。
「現状なんてありゃしないですよ。且来准尉。
新型列車って言うからどれだけかとおもえば立派なのは機関車だけ。
あとは既存の車両に照射器のせたくらいですよ。これじゃ~~~やっぱり無理ですよ。
現場の詳細はこちらで説明ます。ひどいもんですよ」
本名で呼ばれないとしても権力はあるのだろう。直ぐに下士官が黒板を引きずりもってくる
それを気に何処からとも無く女装家連隊の兵士が焚き火の前によってくる。
決して五体満足と言えぬその体であっても仲間を助けるために掛ける命ある限り其の瞳に炎が燃える。

「あの晩は私も恥ずかしげにも声を挙げたな。漢が縄を使うと女は溶けると言うのは本当だった。
揚々。そこのでっぱらおでぶよ。あの晩は世話になった。私の豊満な四肢を嬲り
荒縄でしばりぱっくりとひらいた股ぐらを嬲り尻を叩いて腫らしたくせに
肝心の漢の棒は臆して縮こまったままであったな。嫁の前だからと女一人犯せないとは
半人前の夫だぞ。泣いてやるぞ?入れて貰えぬ女の恨みはこわいからな。え~~~ん。
ところで私の出番は有るんだろうな?且来素子准尉殿」
最後までしてもらえなかった女の恨みは恥辱憚らず場所を選ばす細棒中佐が且来を嘲笑う
流石の且来も頭を欠いてごまかす隣に軍妻しずゑがケラケラと高く嘲笑う。
「役者が揃ったと言う所か?だが師団一つの救出にはちと数が足りぬか?」
「師団の生き残りは少ないかもだわね。どれだけ救えるかも分からない。
それでも誰も行かないとは言ってないわよ?」しずゑが操車場を指で指す。
ぼう~~~と老翁暴走機関車が汽笛を猛り吠えると後ろの二両もそれに習う。
既に繋がれた車両には兵士達が搭乗をはじめている。主砲車両の上では玄人兵が砲弾を積む。
「やれやれ。儂の部隊が最後とはな。忙しい奴らである。急ぐぞ」
久しぶりの軍服に身を包んだ且来素子准尉がドタドタと走り出す。

どれだけの時間何処をどう歩いたかもわからない。
只しばらく前に人形砲弾の飛来が止み日が落ちたのは感じられた。
やっと安心出来たと思うと体の力が溶けて消え糸の切れた人形の様に光秀縷々はへたり込む。
風が吹いて髪を揺らし風が止まって髪が方に堕ちる。
力なくも顔を上げ重いまぶたを開けば其の先に人影らしき物が一つ映る。
眼を指で擦りもう一度見つめ直せばそれは自分がよく知る師団の服だ。
痛む脚を力を込めて拳で叩いて自分を鼓舞し立ち上がってて走り出す。
未だ力が残っているはずと信じて猛進に走ればそれは確かに自分の部下で
こちらに気づくと手を精一杯にと振って返す。
ぐんぐんと脚が回る度に段々に部下の顔が分かるくらいに大きく迫る。
「富岡師団兵」頭の中で写真を捲り照らし合わせて声に呼ぶ。

「来ないで・・来ちゃ駄目だっ。線を超えちゃ駄目」
自分を上司と知ってるのに軍言葉に成らないのはよほどに切迫してるのか?
言葉が警告で有るとわかれば奔る脚が止まる。
ビュンと音が摺る前に富岡の顔に何か巻き付く。
一周巻き付くだけでなくぐるりぐるりと二周三週と紐が巻き付く。
富岡は顔に巻き付いた紐を取ろうともせずに手をばたばたと振り回し地団駄を踏むだけだ。
辺りはくらいから月の光を頼りに眼を凝らす。
自体はよくわからないが富岡が攻撃されているのは事実である。
だけど其の相手の姿が見当たらない。
「ぼう。駄目ば」短く何とかはきだすが上手く聞き取れない。
弐拾にも参拾にも顔に巻き付いた紐が何故が動く。
紐が勝手に動いて富岡の顔をゆっくりと締め付けて居るようにもわずかに見える。
砲弾の音でが未だに残り耳鳴りの絶えぬ耳にブンブンと変な音も聞こえ届く。
もがき続ける富岡の顔が膨らんで居るのかと思えば目玉が膨らみ前へと出てくる
鼻は紐の下でとっくに曲がり潰れ唸り声が漏れても聞き取れない。
ぶしゅっと音がして富岡の頭は飛沫を上げて潰れ堕ちる。
夏の風物詩と思い出せば其の西瓜に何かの紐を巻き付け両端を強く引き。
固い西瓜に巻き付く紐を最後まで引き絞り割って魅せるというのだろか?
そんな事を人の頭でやれば血飛沫が辺りに飛び散り秀光縷々の顔を真っ赤に染める。
そして再び世界は暗転する。

西井守秀光縷々大佐が彼と彼等の事を確かそんな話を聞いた事があったと
やっと思い出したのは首輪に括られ無理矢理に彼の白濁を呑まされた後の事である。
もっともそこは立派な部屋でも無ければ整えられった寝台の上でもない。
只の地面。森の中であり転がる大木に彼は背を預け殆ど全裸の秀光縷々の頭を
抑え自分の一物に奉仕させる。逆らえない理由はいくつかある。
声を上げれば殴らるし拒めば指の骨を金槌で叩いて砕かれる。
いやというほど痛い思いを立った三日で味わっているのだ。
最初に意識が戻った時には既に軍服は剥ぎ取られていた。
投げてよこされたのは薄汚れた毛布一枚。
「何をする。私は倭之御國帝国陸軍大佐であるぞっ」怒声を上げて威嚇するも
彼はきょとんと首を傾げるだけで意味をなさず。変わりに勢いを付けて右手を引く。
途端に首に衝撃が奔りそのまま地面に光秀縷々は手を突いて転がってしまう
次に悟ったのは彼が握る鎖の先が自分の首の鉄枷につながっていると言う事だ。
その彼は効率よくも御前の主人は自分だと光秀縷々に教えたのだ
「はずせ。これをはずせ馬鹿者っ」声を荒らげ叫ぶと彼も喚く。
互いの言葉がわからぬ伝わらぬとわかると彼は要らだし光秀縷々の体を押し倒すと
足首を掴み更に大きな声を張り上げる。
「何をするというんだ。やめろ。それはやめろ。悪魔」
彼は腰からとりだした金槌を無造作に掲げると光秀縷々の脚の指と一気に潰す。
「ぎゃ~~~」森の鳥が金切り声に驚き羽ばたいて飛びあがる。
彼は砕いた脚指にそこら辺から小枝を広い当て木にすると布をまいて固定する。
手当と言ってもそれだけで優しさではなく逃げ出さない様にするためである
泣いて叫んで喚く光秀縷々の顔に布で猿轡を嵌めると拳を振り上げ何回かなぐり
ぐったりとしたところで脚を開かせ腰巻きを外して一物を差し入れてきた。

若く猛りの有る一物を差し込まれても光秀縷々の股ぐらは中々濡れず
ズキズキと脚の指が痛み快楽の一つも有るはずもない。
自分だけは気持ち良いのか漢声に喘ぎ乳房を指で嬲り口づけを求めてくる。
そんな物受け入れるはずもないと拒めば固い拳で殴られる。
一人勝手に果てると彼は衣服を直し光秀縷々の方へ干し肉と水皮袋を投げてよこす。
到底食べ物が喉を通るとは思わないが此処で拒むと後が怖い。
脚の痛みはきねないのに彼は夜の間も移動を続け場所を変える。
彼が引く鎖に行かれヨタヨタとあるくのでその度に脚も痛む。
自分がどうなっていくのかも良くしれぬがもと居た場所からは離れていくのだろう。
戻る事は敵わないかもしれない。

倭之御國自治区。其の防衛列車の内側の領域は広い。
街があると思えば土塊が広がり森も多い。確かに自治区の生活水準は高く治安も良い。
だが歴史を戻れば漢縁の土地で有り漢縁の民は暴力的でもあり多種族国家でもある。
多くは漢縁の血を引くが所謂少数民族の者も多い。得てして貧富の差も大きく
富と技術の恩恵にはあやかれない。結果貧しくも慎ましく昔ながらの独特の生活習慣を守って生きる。
その日の午後に魏と言う少数民族が居たはずだと彼の白濁を呑み込んだ後に光秀縷々は思い出す。
確かに防衛列車が奔るこっち側の森を生活の拠点としていたはずだがもっと東で在ったろうか
薄汚れた彼の民族衣装はそれに良くにていると思えるが違うのか。
あの少数民族は比較的温厚ではずとも思う。羊や牛を飼う遊牧民で在ったとも。
然し彼は肌の色の特徴は在っていても随分と暴力的である。
光秀縷々よろ背は低いし痩せても居る。荷物と言えば少し大きな鞄を光秀縷々だけ。
力もそれ程強くないと思えば工夫も忘れない。光秀縷々を殴る時は必ず拳輪を嵌めて
殴る其の物の力は強くなくても殴れば相手に怪我させるのは十分に出来る。
何より少しづつでも光秀縷々が言う事を聞くように成ったのは蟲鞭を握る体。
ちゃんとした名前が有るのかは分からない。光秀縷々が勝手に頭の中で付けた名前だ。
紐鞭を想像するのは容易いだろう。彼はそれも巧みに使う。
その紐鞭の先になにやら変な形の蟲が括り付けて有る。
紐鞭が振られると先端の蟲が羽音を鳴らして飛んでいき木に巻き付いたかと思うと
あの時と同じようにぐるぐると巻き突いて締め上げ最後には一本の幹さえ絞り砕いてしまう。
思い返してみれば富岡の足元の回りにはもう一つや二つは遺骸が転がっていたかもしれない。
まだ幼いとも思われる少年の癖に残酷で在ったり巧みに蟲鞭を使ってみたりと訳の分からない彼である。
そしてその彼に取って自分光秀縷々は生活の糧であると直ぐに思い知らされる。

彼が夕暮れのその間に鬱蒼とした森の中に光秀縷々の鎖を無理に引き連れこんだ先には
焚き火を囲む三人の漢が屯している。彼は迷うこと無く光秀縷々の毛布を引っ張り剥ぎ取り
全裸のままに漢の方に押しやる。頭で考える必要もなかった。自分は漢達に犯される。
それも複数の漢に輪姦される。元より光秀縷々は肉付きの良い漢好きの体をしている。
つまり漢達にとっては上物の女であり雌だ。
結局最後まで意味の分からない言葉が彼と漢達の間でやり取りされ其れが終わると
最初の漢が光秀縷々を押し倒し跨ってくる。濡れもするはずもない女襞に無理に一物を突っ込まれる。
其れで済むなら我慢観出来るが別の漢が一物を光秀縷々の顔にぐいぐいとなすりつけてもくる。
熱をもち固く成ると嫌がり口を閉じる光秀縷々の鼻を摘み空気ほしさに開けると直ぐに
一物が入り込んでもくる。苦し紛れに上げた手首を捕まれ別の一物を握らせらしごけとばかり強請られる。
最初の漢が猛り白濁を女襞の中に注ぎ込むを次の漢が光秀縷々の尻と持ち上げ四つん這いにしてから
一物を差し込む。最初の漢のものよりは太く濡れて快楽に喘ぐと口の中に又一物が入ってくる。
頭を無理に強く抑えされ根本まで咥えれば喉の奥まで入り込み嗚咽と吐き気に咽ぶ。
それを観て漢達は尻を叩いて笑い垂れる乳房を掴み持て嬲る。
最後の漢も後ろから入れるのが好きなのだろう。木の幹に手を付かせ突き出した尻に一物を差し込む。
漢達は酒をのみ何か得体のしれない物を口にいれてはモゴモゴと噛み吐き出しては又光秀縷々を犯す。
いつまでもいつまでも光秀縷々は腰を振り快楽に嫌嫌ながらも快楽に溺れ腰を振り続けた。

満足に眠れないまま彼が引く鎖に繋がれ光秀縷々は歩く。
潰された脚も痛みがひどくもう駄目だと首を振って地面にへたり込むと
彼は拳を振り上げ光秀縷々の顔を殴るがそれでも言う事を聞かないと分かると
腰鞄から何かの塊を取り出すと半分に契って自分の口にいれてゆっくりと噛み始める。
それから光秀縷々の口に残りの半分を無理に入れ顎を抑え顔を覗き込み
真似をしろと言うようにモゴモゴと口を動かす。
変な味がした。感触もそうだ。何か固い塊ではあるが噛んで幾度に少しづつ柔らかく成る。
口の中に髪汁が溜まっていくと頭の中が痺れてくる。同時に体に力が湧き上がり
脚指の痛みが溶けて消え自分の脚で立ち上がることも出来た。
ふらついては居るのだろうが気持ちよく高揚感がある。
寒風が吹いてる中であり毛布一枚なのに体がぽかぽかと暖かく火照る。
口の中の塊が柔らかく溶けて噛汁が甘く唾と溶け合い感覚が鈍る。
程なく彼が塊の汁を口から吐き出すのが見え光秀縷々も観よう見まねでそれを吐き出す。
彼はニヤニヤと笑い鎖を軽く引くと抵抗することもなく光秀縷々は有るき出す。

それが彼等民族の間で影に広まる麻薬で有るのだろうと気づくが遅い。
次の木々の奥の焚き火のキャップに付くと彼は同じ様に光秀縷々の毛布を剥ぎ取り
串にあの塊を入れてくる。あの高揚感が忘れられずに麻薬と知っても受け入れ
口の中で噛み始める。その間に彼は客の漢達と交渉し話が纏まる頃には
光秀縷々は麻薬の虜に堕ちている。頭の後ろをこづかれ噛み汁と吐き出すと
娼婦としての仕事が始まる。それは今まで味わった事のない快楽だった。
何倍も強く何倍も激しい快楽が光秀縷々の体を包む。
直ぐに虜に成った光秀縷々は自分で脚を開き漢の一物に手を添えて女襞にあてがい
こすり付け扱いてから腰をずらしてくわえ込む。貫かれる歓びに悶え顔上げると
別の漢が一物を突き出してくればにやりと笑い手で根本を掴んで扱き
先端をれろれろと舐め回す。二人の漢が光秀縷々の体を弄ってる間に
彼は今日の売上の金を嬉しそうに何度も数えてはほくそ笑む。
麻薬が与えてくれる快楽に溺れると光秀縷々の体は火照り欲しがる欲が止まらない。
漢の体を突き飛ばし跨がり一度は放出したあとの一物に女襞を押し付け擦り
柔らかい儘でもむりにくわえ込む。はぁはぁと声を荒らげると
残りの漢に顔をむけ片手で尻肉を引っ張り退けひくひくと動く尻穴に入れろと強請る。
既に女襞に一物を咥えて扱いているのもう一本よこせと声をあげて叫ぶ。
堪らず大きな尻の肉を退け其の穴にもう一本の一物がめり込む。
光秀縷々は嬉しそうに喘ぎ吠え女襞と尻穴に漢達の一物を咥え乳房と尻を激しく揺らす。
求められてもしないのに漢の顔を舐め回し舌を絡めては唾液を吸い呑み。
それでも満足出来ずにもう一人の唾液も強請る。
漢が昇りつめて唸り白濁の汁を吐き出せば下と後ろを交代し又腰を振り喘ぎ吠えては腰を振る。
光秀縷々の強欲は果てる事もなく漢達の一物から泡の一滴も出なくなるまで精を絞り取って行く。

彼が光秀縷々を大事にするように成ったのは。少なくても気を使うように成ったのは
光秀縷々が抵抗しなくなり従順になり始めたという事よりあの塊を欲しがるように成ってからだ。
麻薬漬けになった光秀縷々は予想以上に商品価値がある。
豊満で肉付きの良い四肢を持てば女としての価値は上がる。
仕事の前に塊を十分に与えれば客が満足する以上に腰を激しく降って魅せる。
最初こそ食事と言えば彼が森で狩る蛇や栗鼠の肉で在ったがそれでは栄養も足りなくなる。
漢客が動けなくなるまで若しくはそれでもまだ精を絞り取ろうとする光秀縷々は
仕事の後はよく食べる。当然である。どんな事でも激しく体を動かせば栄養が足りない。
彼の狩ってくる獲物では足りないし頬って於けば女が痩せていくだろう。
幾ら塊を与えても痩せてこけた女を客は好まない。
彼は売上から投資と割り切り森の商売人を尋ねる様になり新しく背負い鞄を購入し
光秀縷々の食事となる猪や豚の肉を買い込む。商品の品質維持の為には仕方ない。
それは彼にとって苦渋の判断でもある。
言葉が通じないから良いとはしても彼には彼の事情がある。
麻薬の塊で頭が濁ってなかれば高等教育を受ける光秀縷々には直ぐわかったことだろう。
子供ぽさが残るその彼は部族のしきたりではまだ成人もしていない。
同年代のものより細身で背が高いからそうは見えないだろう。
それに彼を取り巻く状況は甘えを許さない。
生きて行くには水も食料も金もいる。何かしらの商売をしないと金は手はいらないから
二つの年の前から女を拐かしては手の枷を首に嵌め鎖を引いては森を歩き
無法者達相手に女の体を無理に売らせる体売りの仕事に手を染める。
最初は勿論上手くも行かずに運良く女を捕まえても客の好みと合わなかったり
言う事も聞かずに暴れたりと仕事といえども苦労も多い。
非道と知っても逆らう女の脚指を潰し悪魔と罵らえても麻薬を使い最近やっと商売が
軌道に乗り始める。特に今度の女は具合が良い。自分が跨っても味も良いし
客を取らせればみずから快楽を求めて自分で腰を振って精を搾り取る。
やっと上手く回りだした商売に彼は満足げに其の朝も光秀縷々の尻を犯す。

ドンとククリが漢の首骨に喰い込む。勿論即死である。
首根に食い込んだGurkha knifeを引き抜くのは簡単ではないがその持ち主は簡単にそれを成す。
「余り持ってなかったな。明日の飯は賄えると思うが」
「爸爸・・・お腹すいた。それにやりたい」華やかな毛布を身にまとう女が木影から出てくる。
「しょうが無いだろ。こいつは外れだ。野盗仕事もしくじったんだろう
食い物は鞄にあるから好きにしろ。そっちは我慢しろ。指ですれば良い」
且来にも光秀縷々にも解らぬあの彼と同じ言葉で爸爸と呼ばれた漢は答える。
「爸爸寒い。爸爸の指が良い」しっかりとした足取りで焚き火の側に女が歩きよる。
「後でだ。後で。先にこいつを片付けないと。天幕の方に何かあるかな?」
爸爸と呼ばれる漢は野盗崩れの首を拾うと振りかぶって森の奥に投げて放り投げる。
大きな手をパンパンと鳴らし今度は首から血を垂らす胴体の脚を持つとズルズルと引き回し
これもまた出来るだけ遠くへと移動させる。血に集る動物が寄ってこないようにだ。
「天幕観てくるから焚き火見張ってろよ。俺の分の越しておけ。全部くうな。女儿」
どきりと顔を上げて女儿と呼ばれた女は鞄を漁る手を止める。
「やっぱり大した物はないな。古い箱と家族絵くらいだ。しけた野盗だな」
爸爸は手を打ち鳴らし焚き火の前に尻もちを打って座ると愛用のククリを取り出し砥石を当てる。
女儿が甘えて体を寄せながら黒塊をゆびで弾くと焚き火に黄色い炎が上がりその勢いを増して燃える。
爸爸と女儿。ぱぱと娘と呼ぶ会う二人が血がつながっているかは分からない。
そうであるようにみえるが女儿は毛布一枚だけ羽織り隅間から見える肌には何もつけてない。
首には彼の商売道具秀光縷々と同じ様な鉄枷を嵌めてもいる。
違いが有るとすれば枷に繋がる鎖が二尺ほどしか無く握り輪にも届かずつながってもいない。
女儿は好きに勝手に動き回れる。肌の血色も良き元気そうでもある。
対して爸爸の方はいかにもと言うほどに無骨で逞しくく狩人であろうし事実にそうである。
食するために動物を狩る。鹿や猪。時に熊も自分の腕で狩る。
信仰と部族の伝統を守るために人をも狩る。
狩人であり其れが爸爸と女儿。彼の部族の本来の姿だ。
少しそれる話ではあるが阴影と呼ばれる彼等の部族は変わっている。
もともとの先祖は確かに牧歌的で平穏な生活をこのんでいたが
いつしか狩りに手を染める。動物と人を狩る
少なからずも長く戦が続き倭の防衛鉄道が彼等の土地を分断したのも影響があったろう。
余り多くもない土地に追いやられた彼等は生活様式を変えなければ成らなかった。
羊や牛も手に入りにくく成り生活の糧を求める彼等はてっとり速く金銭を得る方法を探す。
森の動物を狩り肉を売ってる内はまだ平和でいられたろう。
否然し、森のめぐみは限りがある。ある日彼等の貧しい村と訪れた商人が狩りの腕を見込んで
仕事を依頼する。それは人狩りだった。報酬は弾まれる。
味をしめた彼等は次の仕事を欲しがった。商人は喜んで汚れ仕事を押し付ける。
両者が互いに徳を得る関係がしばらく続くと彼等の生活が変わっていく。
一人の狩人が動物と人を狩って糧を得る。一人の娼婦が体を売って金銭を得る。
二人一組で互いに寄り添い助け合って生きていく。其れが阴影の部族となる。

漢縁之國・軌道戦艦陸の船・弐番艦長に取って午前中の戦闘は素晴らしい成果を上げた。
倭之御國の武装師団列車を木端微塵に粉砕したのだ。この上ない勝利と言える。
然し戦と言う物に今日に勝利を掴めば明日には敗北する物である。
戦で最も難しいのは今日勝って明日も勝つ事である。
「入電っ。敵性倭之御國・救助列車からです」
「読み上げろ」面倒な事になったと弐番館館長は思う。
未だ完全には師団列車を破壊出来てはいなかった。敵の動きが速すぎる。

「倭之御國帝国陸軍第二女装家連隊・且来准尉である。
本日の我が四六特団と戦闘において・御将の采配見事であると存じる。
尚、これより国際人権法に則り四六特団隊員の救助活動を申請実地せり。
御将は既に四六特団に勝利しており。これ以上の戦闘は差し控えるべきと進言する。
速やかに停戦に応じて頂く事を強く願う。
嗚呼。饂飩たべこそねた。車海老の天麩羅饂飩。たべこそねた
・・・以上です。返信しますか?」
飽くまでも平文でありこちら側の勝利を認めた上での物だ。
国際人権法にも則ったものだろう。指揮室の窓の向こうには猛々を煙を吐き出し
蛍光桃色の線が入った救助列車が山陰から姿も魅せる。
「了解したと伝えろ。但し砲撃を止めるのは一時間後だ。
その間に救助活動するのは勝手だが犠牲者が出ても責任は持たん」
弐番館館長はどうしても完全成る勝利に拘る。
「返信あり。
貴艦の勝利は既に確定している。戦いは決している。
之以上の戦闘は無意味と成り。直ちに戦闘行為を停止されたし
嗚呼。海苔巻き食べたい。鰻の肝が入った海苔巻き食べたい
・・・以上。敵将官は随分と喰心坊ようであります」
「こちらの作戦行動に変更はないっ。」
「再度、返信あり。音声です。直接音声通話です」
「つなげ。喰心坊の声を聞いてやる」

「女装家連隊・且来素子准尉である。
貴殿等。母はおるか?子はおるか?妻はいるか?
五分くれてやる。今生の別れをいま伝えろ・・・」
それは漢が腹に怒りを抱え貯め抑え込んだ怒声である。
先程との電文とは違い食べ物の話は一切もなく。それだけ吐き出すとぶつりと切れる。
本能的に死が間近に迫るのを背筋で悟るのは常に前線に立つ下っ端である。
一番激しい戦闘を経験してるからだ。
ぞっと背筋が凍る且来の声に無線卓に座る兵士が母に当てた手紙を書き始める。
いつかはくるだろうと思っていた日が今日であり自分の命は五分しかもたない。
何が出来ると言うのだ。弐番艦艦長は口の中で思う。
ただ線路の上しか走れない救助列車ではないか?今更何が出来ると言うのだ。
三分。そして五分と経ち指揮室の中ではサラサラと紙に別れを告げる言葉が刻まれる。
「うっ動き有り。前方です。遥か前方。敵の基地の辺り」
指揮室の甲板の向こうで見張り塀が無線に煩く声を張り上げる。
望遠鏡を覗く別の兵士の元に無理矢理無線機を伸ばす姿が見える。
「や。山向こうに動きが・・・ほっ。砲身です。砲身であります。
あれは。列車砲です。あんな巨大な砲身見た事ありません。
でかい。でかすぎる。狙ってます・・・ああ・・あれは・・・
我艦まで届きます。列車砲です。たっ退避を。退避を進言します」
甲板兵が叫んで直ぐに指揮室の画面に山向こうからにょきりと生える列車巨砲の姿が映る。
「あんな物どっから持ってきたと言うのだ。遠隔地から狙い打ちされたら終わりだ。
我が艦だって軌道線路の上しか走れないんだぞ?終わりだ」隣でぼそりと誰かが吐き捨てる。
「ご。五分経ちました。司令官?降伏を。降伏を早く。」又誰かが喚く。
「敵・巨大列車且来喰心坊砲。射撃体勢調整終了と見えます。砲弾装填済み。
砲撃開始。ああっ。来ます。衝撃備えっ。直撃っ・・・」

轟音轟き巨砲の砲撃は一度であれど陸の船の船体を激しく揺らす。
それは地獄の鬼の咆哮であった。
「てっ敵砲弾外し。威嚇です。威嚇。損害報告願う」
五分先にも未だ自分に命があった事を戦女神に感謝するも軍規に則った怒声が響く。
「損害報告。船体破損各地区中程度。動力室損傷あれど運行に支障なし。人的損害軽症。
・・・後方・・・後方軌道線大破・・・帰港出来ません」
倭之御國中間管理基地小童司令官代理の指揮のもとで発砲を許可された砲撃手は玄人である。
陸の船後方に合わせた照準通りに砲撃を終了する。
陸の船弐番艦はその壱番艦より大きな船体をもつが土に埋めた軌道線路の上を奔るのは
同じである。結果それを潰されてしまえば動けないでくのぼうである。
更に言ってしまえば参番艦も同様でもあろう。
「こちら漢縁之國陸の船司令補佐官・南方中佐。
倭之御國女装家連隊・且来素子准尉殿宛。
我らの命。五分繋いで頂いた事感謝する。
貴殿らの救助活動を当方は静観す。繰り返す。救助活動の邪魔は一切せず。
尚。貴殿の所望する鰻の肝入海苔巻きは自分が責任を持って後日届けさせて頂く。
実家が海苔巻き屋を営んでおるのでな。受け取られたし」
「返信・・・。
貴殿の配慮感謝する。
尚、貴殿も上官には苦労してるようだ。
敗将恐れる故に人の道外れる外道とは情けない。
鰻の肝入海苔巻き楽しみにしている。且来素子准尉。
・・・以上であります」
「やれやれ・・・兵の命は繋いで貰ったが、この後が大変だぞ。
親父に頭を下げ海苔巻きを作らねばならん。何人分なのだろうか?」
「手伝います。副官殿。命を繋いで貰ったのです。海苔巻き位いくらでも握ります」
船の後方で未だ土煙は収まらぬと言うのに安堵の笑いが指揮室に湧き上がる。
「儂は負けたようだ・・・敗将であるらしい」
数時間前の勝利にしがみついために最後には兵の命を縮めたとなれば
もう誰も命令を聞く事もないだろう。司令官は静かに指揮室を歩き去る。

「あのじゃじゃ馬の馬鹿女大佐は何処だ?見つかったのか?」
敵戦艦副官が約束を守り沈黙を続ける中で早急かつ迅速に四六特団兵の救出活動が行われる。
人形砲弾が飛んで来ないとは故、兵は負傷しているし死の淵に脚を踏み入れてる者も多い。
「未だ見つかってません。無事で有ると良いですが」
「馬鹿者。師団兵を救い遺骸を弔おう。だが肝心の指揮官が行方不明って恥だぞ?
しかも女であるぞ?尻はでかくても女である。あのでかい尻が見つからんとは」
且来は多少なりとも焦っていた。自分を取り巻く女難を受け入れるのは難しくもあり
面倒でもある。総じて女共は我儘だ。
其の中でも秀光縷々は面白い存在でもあった。最初から自分に喧嘩を売ってきたと思えば
何かにつけ首に札をぶら下げながら視線を投げてくる。
そこまでして何が知りたいのか解らぬが、ともかく四六時中自分の腹を視姦してたのは確かだ。
それを縁と呼ぶには少々疑問が残る。疑問がのこるが弐番館の撃破の為出撃となると
態々且来の前に姿を現し一度断ったのに再度師団へ取り込もうともする。
無下な言葉で一掃し助けてやらんと突き放したのは良いが腹の蟲が収まらない。
態度も気にくわないし互いの心に溝もある。同胞で有るには変わらぬが。
「それにしてもあのでかい尻が見つからないとは・・・」
時間的には余裕がない者の敵船が黙っていてくれるのは有り難い。
手を止めるわけには行かないが担架板が運ばれてくる度に顔を覗き確かめる
「且来准尉。こいつがでか尻大佐の所存を知っていると・・・」
衛生兵が腕を掴み無理に掴んであっ其の前につれてきた漢は何処か見覚えが有る。
「貴様。逃げようとしたのか?敵前逃亡か?」且来は見抜く。
衛生兵が女性であったにしてもその手が漢の腕をしっかりと掴んで離さないからだ。
恐らくは治療を施す際に光秀縷々の事を衛生兵に尋ねられたのだろう。
心に疚しい事でもあって逃げ出そうしたに違いない。
衛生兵の女性の顔と衣服が泥にまみれてるのは一悶着あったからだろう。
「貴様は自分では仕事が出来ると思い混んでいるが実際は回りを掻きまして
迷惑をかける輩だな。確か師団の副官でなかったか?それで何を知っている?」
図らずも脱走兵扱いとなった師団副官は衛生兵に腕を掴まれたままボソボソと漏らす。
「て・・・敵の砲弾が余りに激しくて・・・師団に退去命令を・・・。
その際に光秀縷々大佐の手を引き列車の外へお連れしようと・・・
あの尻が大きかったので引っかかったので押して・・・
そこへ砲弾が飛んできて投げだれたんです。
なんとか起き上がったら大佐と目があって・・・あの・・・指さしました。
あっちへにげろと・・・」自分に其れが都合悪いのだろう。地面を向いて黙り込む。
「どっちだ・・・?どっちを示した?」且来がぐぃと顔を寄せる。
「なっ南東です。森が有りました。あそこへ逃げれば安全だと思って・・・」
「安全だと思うのなら。何故御前も一緒に逃げない?何故此処に居る。
「居流区です。少数民族の。あんな所に女性一人で入ったら・・・」
副官の腕を抑え込んだ儘で片手で鞄を漁り折りたたんだ地図を覗き込み衛生兵が声を上げる。
「居流区・・・良くないぞ。御前知ってたのか?あそこは無法地帯だぞ?」
「あとで・・・気がついて・・・もどって・・・大佐は消えてしまって」
「なんて奴だ。女をあんな所に追い込んで自分は戻ってきただと?
こいつの治療は一番最後にしてやれ」
「破傷風になりますよ?傷に泥入ってますから」
脱走兵扱いでも人であり衛生兵であれば当然気にかかる。
「構わん。女を騙しすような奴には当然の報いだ。
皆に伝えてくれ。儂が行く。追うなとな。あそこは軍は歓迎されぬ。
潜り交じるのは得意だともな。それから海苔巻きは残しておけ。儂の分食べたら拳骨だ」
状況を確認すると且来は軍服と装備をばらばらと土の上に捨て置き
殆ど裸一貫で少数民族の居流区へを走り出す。
その後残された師団の副官の額には敵前逃亡罪疑い及び上官欺瞞行為の為
全ての兵の治療が終わるまで放置とする。触るな。と書かれた札が張られ
其の命令は確実に実行される。勿論あの女性衛生兵が指摘した通り破傷風に苦しむ事になる。

「爸爸。兎皮の襟巻き買って。あと猿のお肉」
「女儿よ。太るぞ。猿肉は栄養価が高すぎる」
「爸爸のけちんぼ。今日は咥えてあげない」
「買います。ちゃんと買います。だから咥えて下さい」
流浪の生活を好む爸爸と女儿であっても時には商人谷に顔を出す。
争い絶えない居流の森でも安息は必要であるし娯楽もいる。
もっともそれなりに危険もはらむが決まり事を守ればまぁまぁ安全でもある。
爸爸と女儿は用心深いから大きな商人谷には脚を踏み入れもしない。
そこは酒場変わりの天幕一つと道具屋と食堂宿の木造りの家が一つだけあるが
商人谷という限りは商いを営む者も馬引き露天と店を並べ。
その合間に体売りの者も商品を並べる。
頭に羽飾りを漬け毛布一枚を羽織る体売りの商品女は野盗や悪党の輩が前を通ると
毛布の間からちらりと四肢を魅せて言葉巧みに誘い興味を示せば値段が決まり
その後に客の財布が温かければ木造りの宿。寒ければ森奥へと姿を消して喘ぎ声を上げ
客を楽しませる。大抵の場合は森の奥で仕事をするのを商品女な好む。時間が短く済むからだ。

既に其の日は馬露天の間は埋まって致し爸爸と女儿は安息を求めて此処にやってきてる。
女儿はパタパタと脚音を鳴らし馬露天に並ぶ肉を物色してる。
爸爸はそろそろ黒塊が少なく成ってきたと思い出し辺りに頭を巡り回す。
その漢は奇妙だった。
直ぐに居流の森の民ではないと分かるが逆に良くなじんでもいる。
山か熊かと思うほどの巨躯の癖に足取りと動きは早い。
殺気など微塵も感じさせない仕草なのに自身は軽快を怠らない。
爸爸が狩人であるなら其の漢は戦士で有ろう。
特に武器らしい物を持ってないと見えればあの大きな拳がそれとなるのだろうか
出で立ちも不思議だ。安物の手甲と足甲は自身の体躯に合わないから我慢してると言う感じでもある。
肌色は漢縁の民に近く浅黒いがそれも怪しい。海焼けが薄くなったとも思える。
薄茶色の同義には何か動物の血でも塗りたくったように観たこともない時が描かれる。
爸爸には最初の女と言う言葉しか理解できない。後に続く文字は分からない。
明らかに出で立ちは居流の森の其れとは違うのに馴染んで居るのは死を共にしてるからだろう。
常に戦いを経験し常に死を間近としてきた漢が纏う霧が見える。
但しそこまでだ。
山と動く漢はのそのそと馬露天の間に立つ体売りの商品女を物色し始める。
なんだ。只の野盗崩れか。つまらないなと爸爸は目線を外す。

馬露天の動物肉をあれこれと観てるとシャリシャリと小石を踏んで大きな漢が女儿の後ろを過ぎる
随分と大きな漢であるが真剣な眼差しで同業の体売りの女を物色する。
「尻のでかい女を知らないか?」女儿には耳に馴染んだ言葉であっても居流の民にはつたわらない
「尻・・・おおきい・・女・・・知るか?」たどたどしくも今度は居流の言葉で話す。
それでも訛が在って聞きづらい。漢は何とか判ってもらおうと手を動かし身振りを示す。
先に言いたい事がわかっていればその身振りが女の体の線を示すと判っても
やっぱり体売りの女には伝わらない。
漢はしょうが無いとでも言うように禿げた頭に手を上げ撫で回すと諦めて次の体売りの女へと歩く。
そこでも先程と同じ言葉を離しては手振り身振りを繰りかえす。
女が首を横に振ると。又次の所へと草履を鳴らす。
最後の馬露天の間に立つ体売りの女も言葉はわかない。
彼女は女儿よりは少し年上だけどそれでもまだ若い女であった。
言葉はわからないけど仕事をしないと持ち主に殴られる。
だから纏う毛布を開いて大きな漢に体を見せた。
大きな漢はそこで初めて体売りの女に興味を示し太い指で女が纏う毛布を摘み
良く観たいとばかりに覗き込む。満足すると女の頭に手を乗せて撫でる。

「てめえ。買うのか?買わないのか?さっきから観てるだけじゃないか?」
馬露天の後ろから体売りの女の痩せた持ち主が顔を真っ赤に走り出ってくる。
持ち主としては客が女を買ってくれなかれば飯が食えない。そっちにも事情があると言える。
「貴様がこの女の持ち主であるか?聞きたい事がある。
この地の体売りは互いに生きる為の糧とも聞いて知る。
だが時には互いの絆なきままに拐かした女とその体を痛めつけ
私利私欲のために女に客を取らせると馬鹿がいるとも良くと聞く。
其の馬鹿は貴様か?貴様がこの女を痛めつけたのか?」
これは倭の母を持つ女儿だからこそ頭に響く言葉声であり痩せた持ち主は分からない。
ただ然し。毛布を纏った女の体には無数に焼きごてを押し付けた火傷後が深く残る。
恐らくは足の指も砕かれ満足に治療もなされてなければ足をも引きずるだろう。

怒声と響くが言葉の意は解らずとも鬼気に当てられ命危険とばかりに
痩せた持ち主は腰の双剣をすらりと抜く。
逃げ出さかったのは体売りの意地と同業仲間の手助けを期待してだろう。
「儂は只に女を一人探しているだけである。見知らぬ土地と習わしあれば
少々焦って無礼を働いたかもしれん。此処で儂は引くが故。そちらも怒りを納めると願う。
それでも引かぬと言うならば。女の体に刻んだ痛みとその恨み一つくらいは返してやろう。
引けばよし。下がればよし。前に出るなら命はないぞ?」
巨躯の体を半身に構え音は後ろ手に何かを握る。

「下がって。諦めて。この人。本気よ」女儿は焦って短く吠える。
同族の言葉であればやせた持ち主も頭でわかる。それでも意地も見栄もある。
「ふん。体はでかくてもそれだけだ。武器も持たずに何が出来る。でぶ野郎」
鍔を飛ばし威勢よく啖呵をきる。ただ一つ。ただ一歩。確かに足を前に踏み出した。

轟気迫りて大きな漢が手を引いた。
何処に隠していたというのだろう。それは居流の民が初めて見る代物である。
すらりと抜いた長い刃は鋼である。良く研がれきらりと光を返せば又輝る。
短剣も長剣でもないその刃は更に長くなる。
どうゆう仕組みか分からない。ただ一つ漢がブンと腕を振るとカシュンカチンと音が成る。
漢の腕が止れば、あろう事かその刀は更に刃を長くと伸ばす。
知識もなく観たこともない者も倭之御國にもいまだ多い。
其の刀の名前は折れ刃の斬馬刀。倭之御國での古戦で騎乗した武士がそのまま地に足を付ける
敵侍切り捨てるとかあるいはと騎乗の武将を地に脚をつけたまま切り倒す刀と言われる。
その長さ六尺をこえ七尺に届くとさえも言われる。
当然其れを扱うのは二人か三人でやっとかとなるが巨躯を売りにする且来には出来ぬ事ではない。

「切り捨て御免!」
腹から声だし気合一閃斬馬刀が上段から地面に唸って光る。
返す刀で又一閃。刃唸って疾風が舞う。

「殺生。御法度しきたり成り」
必死の思いで大地を蹴り。漢の側に同然と立ちすくむ体売りの女を庇い
女儿はあらん限りの声で泣き叫ぶ。

一閃光った最初の刃は痩せた持ち主の右手を飛ばす。
元よりいざこざと種を巻いたのが自分にあるかもとすれば踏み込みも甘い。
返る刃は思うよりも鈍く奔れば女の首輪に繋がる鎖を断ち切ったのみであった。

「貴殿。儂の言葉がわかるのであるか?
成れぬ土地である故に仕来り無謀とするところであった。
礼を言う。変わりに何か馳走させて頂きたい」
よほど腹に据えかねているのか声にまだ怒りが交じるが態度は丁寧である。
「云々。それしか思いつかなくて・・・猪鍋と猿の燻製肉が良いわ。でぶ小父様さん」
とても奇妙な事にこの辺の国々でもでぶと言う言葉はみな同じである。
なぜがそれが可笑しくて且来は腹を揺らし女儿に笑って見せる。

出番がまったくなかった狩人の爸爸は神妙な顔で且来と挨拶を交わす。
「理由あって尻の大きな女を探す。且来素子である。迷惑を掛けた。すまぬ」
「居流の森の狩人。爸爸だ。全く。あんたは化け物だな。あんなの観たことないぞ」
「体も大きけど。変態なの。結局此処の体売りの子全部に声かけてたの」
「そっ其れは人を探しているからだ。致し方なくである。助平でも変態でもないのだ」
「嘘。嘘。特にこの子はお気入りなのよ。毛布捲って嫌らしく視姦してた。」
「なんだと?あの大きな剣をつかうのに女の体を視姦するとな?
確かにそれは変態だな。助平だな。漢の鏡だな」女儿と長く肌を寄せれば倭言葉も理解出来る。
女儿は火傷肌の女に言葉を介し二人で且来を指さし嗤い誂う。

凡そ七尺近い折れ斬馬刀の血飛沫を風に払った且来は爸爸と女儿と言葉を交わすが
少々面倒で手間の掛かる用事を片付ける事になる。
先ずに斬馬刀の斬撃で片手を失った体売りの痩せた漢の手当。
これは礼儀として且来が商い谷の仕切り役に治療費として金を払う。
納得は出来ないが事を荒立て刀を抜いたのは確かでもある。
次に先に双剣を抜いた持ち主も谷では武器を抜いては成らぬと言う仕来りを破ったとして
治療費の半分を仕切り役に戻す。
それから痩せた体売りの商品女の見聞が行われ確かに合意ないままに客を取らされていた事
虐待と暴力が日常的に行われていた事が判明すると罪人であると認められ牢屋に入れられる。
この時点で半分となった且来の治療費が元の手に戻るが
今度は体売りの商品女の持ち主が居なく成り途方にくれるとなる。
爸爸は且来にこの女の買い取りを強く勧めた。代金の半分を支払うとも言い張る。
この辺の体売りの者たちは皆。脛と顔に傷を持つ。
且来が買い取らねば又つらい目に合うだろうと説教までしてくる始末だった。
結局半金だすと言い張る爸爸の申し出を断り自分の財布を軽くすることになる。
「金がいったりきたりするのも面倒であるが結局財布が軽くなったぞ?」
「いいじゃない。この子可愛いし。胸もお尻も好みなんでしょ?助平でぶ小父様さん」
「助平でぶ小父様さん・・・」自分の新しい持ち主の名前を覚えようと火傷肌の女がつぶやく。
「そうよ。助平でぶ小父様さんが貴方の持ち主よ」女儿が嘘を教え満足げに嘲笑う。

「うぉ?なんだこれ?うぉぉおおぉぉおおおぉぉ~~~」
其の夜。木造りの宿部屋に籠もった且来の股ぐらの上にじゅぼりと音を鳴らして
火傷肌の女が跨った瞬間且来は我を忘れ声を張り上げる。
人種人類の体の作りは同じであっても個人個人のそれは微妙にも違う。
特に火傷肌の女の女壷は逸品然りの名器であり数々の女の味をよく知る且来であっても
その味と技に憚らず漢喘ぎに声を絞り出す。
焚き火の煙が細く切れ漂う翌の朝。且来はふらりと宿部屋を出る。
買ったばかりの自分の商品の味を確かめるつもりが搾り取られた。
お天道様が黄色く見えるか赤いかは気の迷いであろうが朝飯前に散歩する
聞き慣れない言葉ではあるが商い谷の川べり近くで自分に手を振る輩が騒ぐ。
何事なんだと近寄ってみれば谷の仕切り人と数人の輩が楽しそうに屯してる。
中には毛布一枚の体売りの女の姿もみてとれた。
「何事であるのだろうか?結構人の頭数もあるようだが」
興味はあっても精を搾り取られた体は重い。のたりのたりと脚を運ぶ。
ワイワイと意味の解らぬ言葉の中でやがて奇妙な風景が観えてくる。
それ程太くない木に漢が縛り付けられている。
見れば確かに片手に包帯を巻き、其れが昨日自分が手を落して体売りの漢だと知れる。
木に縛られた漢の足元に長柄の金槌が横ながの石の上に置かれる。
なんとも意味不明であるが毛布を羽織った女が声援を受けて前にでると
金槌の柄に体重を乗せて脚を振り下ろす。途端に反対側の金槌が跳ねて上がる。
女一人の力では余り金槌は持ち上がらす地面に戻る。
木に縛られた漢はほっと肩を撫で下ろす。
なぜなら若しとても上手に金槌を蹴り下ろすいるならば跳ね上がった金槌は
自分の股間に辺り漢睾を潰すからだ。手を切り落とされても女は抱ける。
商売だって続けられるが漢睾は別だ。これを潰されると後がない
そして絶対苦しむにも違いない。漢は志願者が前に出る度に冷や汗が垂れてとまらない。
「てぶ大将。でぶ大将」且来の姿を見つけて皆が手を振り呼んでくる。
どの地方でもでぶの語音と意味は同じだから自分が呼ばれてるとも良く分かる。
且来は気がのらなかった。漢の手を切り落としたばかりでも有る。
既に方はついているのだし。今更騒いで楽しむ事でも無いと思う。
その手を後ろから掴んで押すのは火傷肌の女である。昨夜絞りとった精では飽き足らず
朝の奉仕とばかりにと起きたら主人の姿がない。窓を開ければ金槌遊びが見えるとなれば
参加しない訳にはいかないった。体売りの仕事には娯楽が極端に少ないのである。
且来と火傷肌の女の姿と見つけると肩手首のない漢はふるふると首を振った。
且来の顔をまっすぐ観て。御願いします。来ないでと哀願する。
当然の事である。七尺の刀を扱う且来の腕をささえる其の脚は当剛気の強さを誇る。
曲りなりに本気で無くても且来が金槌を蹴り堕ろせば確実に漢睾は潰れるに決まってる。
集まる観衆の声がでぶ大将でぶ大将と高くなり期待を寄せて手をたたく。
一番高く元気に声を上げるのは我先にと挑戦した女儿である。どっか遠くで爸爸も見物してるのだろう。
「小父様さん。やってよ。やっちゃって」と女儿が興奮気味に声を掛ける。
且来は未だに気乗りしない。まぁまぁ落ち着け皆の衆と手振りで宥めると落胆の声が上がる。
変わりに火傷肌の女の肩と押してやれば自分がやってい言うのと鼻を指して確かめる。
途端に回りを囲む野次馬が歓喜の声を又上げる。
木に括られる漢は正直やばいと真っ青になる。
自分が今まで暴力を振るい先週だって稼ぎが悪いと焼きごてを押し付けたばかりだ。
恨み辛みは積もっても晴れない恨みを胸に滾らせる。
恐らくは壱・・弐・・参・・の掛け声で火傷肌の女が金槌の柄を踏み降ろすも
跳ねて上がったその先は漢の股ぐらの寸前で勢いを失い虚しく地面に落ち戻る。
落胆する声が周りに響くと恨みはらせなかった火傷肌の女は少し涙を滲ませ且来見つめる。
「手を落し方もついた者を甚振るのは趣味ではないが。女の肌に甚振る趣味は許せんな」
且来は自分の女に指を一本立てもう一回やって見ろと促し金槌の柄に脚を乗せさせる。
ふるふると未だに首を振る痩せた漢の肩に手を乗せる。
「大丈夫だ。所詮は女の細脚である。先も届かなかったのだ。今度も届かぬ。
恨み辛みは山となれど。次当たらねば見逃してやろう」
意味の解らぬ言葉ではあるが兎に角頷いて誤魔化す痩せた漢。
火傷肌の女が毛布を捲って太腿露わに金槌の柄に脚を乗せる。
観客が吠えて拳を上げ数を数える。
壱・・・弐・・・参・・・

ゴキュボキ。
なんとも言えぬ独特の打撃音が商い谷に川べりに響く。
肩に乗せていた手を且来が離すと痩せた漢のは言葉を失い眼をぐわっと開いたまま
悶絶し泡を吹いて気絶するが・・・直ぐに激痛に意識を取り戻し喚く。
野次馬の数えに合わせて火傷肌の女が金槌の柄を蹴り下ろす時
且来がその柄に脚をのせ女の恨み晴らすべしと一緒に蹴り下ろした。
四肢に乗せた力はそれ程でなくとも鉄の金槌は漢睾と腰骨を一緒に砕くのには十分である。
火傷肌の女は恨み晴らしたと両手を突き上げ歓び且来に抱きつく。
野次馬も拍手喝采と且来に近寄り体を叩いて歓びを隠さない。
「やれやれ。この谷の輩は悪趣味な遊びを好むらしい。
漢のにとっては悶絶とは嘸に辛いであろう。くわばらくわばら」自分で踏んでおいてではあるが。
「この先あいつがどうなるか知らないけどさ。命ひろえたんだからいいんじゃないの?
誰も当てられなかったら金槌で頭割られて川に流されるのが仕来りだから」
上機嫌で且来の腕にしがみつく火傷肌の女の尻を撫でながら女儿が教えてくれる。
「なるほど。拾えた命であるなら次は真っ当に使って欲しい物である」
「無理じゃない?腰の骨までいってたわよ?看病人をやとう金でもないと・・・」
結構冷たくも残酷な世情であると苦く嘲笑うがそれだけ貧窮してる世情であるのかもしれない。

「爸爸。お腹すいた。猿肉食べたい。あと餃子も」
「女儿よ。太るぞ。餃子は贅沢品だ」
「でぶ爸爸。この人達。早漏。短い。やっぱり早漏」
「火女儿よ。三人も充てがったのだぞ?見ろ。一物折れて白目剥いてるぞ?」
爸爸と女儿。且来と火傷肌の女は暫くの間一緒に旅をする。
爸爸がと女儿が有る少年を追い。且来が尻の大きな女を追うからだ。
そしてどうやらその二人は一緒に逃げているらしい。
「あいつは俺の息子でな。不器用なりに頑張ったのだが上手く行かなかった。
蟲鞭の技は冴えても思いやりと礼儀を解らぬ奴だった。
最初の体売りの女とも上手くやれず。二人目の時に手を挙げてな。
四人目の女を手に掛けた。御法度と言えばわかるのか?
息子の始末は親の仕事と決まってる。それにしても彼奴は逃げるのは得意すぎるな」
女二人が静かに眠る焚き火の側で爸爸が事情をうちあける。
彼等の世情の中で爸爸と女儿に血のつながりはなく。
縁と体売りの間柄で呼び合う習わしで親と子と言えば師匠と弟子の意味らしい。
それと納得し且来も身の上と成り行きを爸爸に話す。

其の彼は尻の大きい女秀光縷々の頭を抑え半ば無理矢理一物を咥えさせる。
最近は余り抵抗もなく寧ろ黒塊欲しさに云うこともきくように成って来てる。
特に黒塊を与え四つん這いにさせると自分で尻を高く突き出し客の一物を欲しがる様になった。
女がしゃぶる一物の真が熱くなり漢睾に虫唾が奔ると白濁が奔る感覚が気持ち良い。
白濁の雫をこぼさないように女の頭を強く抑え飲み込ませる。
御前は俺の物だと解らせるためでも有る。
ゴクリゴクリと喉を鳴らし呑み込んでいく女の様子を観ながら呆けて行く頭の中で
彼は最近の事を何となく思い考える。
いつくか変わったことが有る。尻の女が黒塊ほしさに従順に成ったのは良い。
其の反面。自分の事を爸爸と呼べと言ってもそうは呼ばない。
幾ら自分の顔を指で指し爸爸だ爸爸だと繰り返して見せてもきょとんとしている。
これは彼の世界が未だ狭いと言う事を彼自身が理解して居ないことに起因する。
爸爸と呼べと何度言っても言葉自体が伝わっていない。介する者が居なければ
ぱぱも呼べも一列の語音にしか聞こえず。意味が分からない。
顔を指して爸爸と呼べと言われても結局上手く伝わらない。
全く見知らぬ土地の人に自分の名前は誰の権兵衛ですと言われても
それがその人の名前をしめしているのか、自分を殴って下さいとでも言ってるのか
指で示しながら言われても検討もつかないはずである。
世の中そんな都合良くいかない。それだけ言葉は難しい物だ。
ましてや爸爸と呼ばせる意味が体売りの商売において持ち主の事で有るとなんて
倭之御國育ちの秀光縷々が少数民族の風習まで知ってるはずもない。

次に彼が思い浮かべたのが徒党の事だ。
彼は自分の親師匠から逃げるために仲間と組む事にした。全部悪党だ。
徒党と言っても仲間とは到底言えないだろう。言わば金でやっとた手下であり護衛でもある。
悪党でも雇うとなれば金がいるから当然尻の大きい女が稼いだ金をつぎ込む。
それで足りない分は尻の大きい女の体で支払う。悪くない企みだと最初は思ったし
少しの間は実際上手くも行った。それでも女に客を取らせ其の後に徒党の輩に
又腰を使わせるとさすがに女に疲れも出てくる。仕方なく客の数を減らすと
今度は稼ぎが少なくなる。食い扶持も多いし全てを女の尻に頼っているから
段々と状況も悪くなっていく。何となく雲ゆきが悪くなってきたかと思えば追い打ちが掛かる。
親師匠の組が近くの谷に居たらしいと噂が流れる。それも妙な漢と絆を結んだらしいとも。
商い谷で騒ぎがあったその後に親師匠と妙な漢が一緒に狩りをしてるとも聞こえる。
随分豪鬼三昧で動物を狩り客を取っているらしい。勿論。彼等が次に追って狩るのは人だろう。
その的が自分で有るのは重々と分かる。
もう一つ。尻の女を首輪に括ったあの日から女は時々空を見上げる。
何かを探すように何かを待つようにじっと空を見上げる。
彼に取って空と言うものはただそこに何時もあると言うだけの物で雨を降らす物くらいにしか
思ってもいない。天気の良い日は気持ち良いがそこに何かを期待すると云うのは分からない。
ところが徒党の悪党が答えを教えてくれた。
焚き火を囲い酒を回しのみながら髭面の悪党が自慢げに離す。
この森のずっと向こうの山のあっち側に國違い人が集まる場所が有るらしい
なにやら商い谷を百も千も集めたくらいに大きな場所らしい。
そこから鉄鳥が飛んでくる。ものすごく早くて矢を放っても当たらないくらい早い。
その鉄鳥が森の空に飛んで来ては何か袋を落したり何かを探すように睨んで来るらしい。
少しづつ鉄鳥が森の上を飛び回る回数も多くなって来てるともその悪党は眼を輝かせて皆に言う。
別の奴は此処にくる前ので森の道で同じ服を着てる奴らに出くわしたとも言う。
言葉が通じないのでさっぱりわからなかったが調子づいて威勢よく飛びかかった奴が
何かの魔法で一瞬で頭に穴を開けられたらしい。まるで悪鬼の如く冷静に人を殺したと。
彼等も時々森に入っては体売りの連中を探しているらしい。そんな話も彼は聞いた。
微睡み呆けた彼の隣でゲホゲホと咳き込む音がする。
どうやら女は白濁を喉に絡めて吐き出したらしい。
自分の白濁を吐き出された事に怒りを憶えたが、こんな時にも親師匠の声が聞こえる
「体売りの女は大事にしろ。手荒に扱えば自分に跳ね返る。
10回殴れば100回殴られる。因果応報は必ず帰る。それがこの商売の怖いところだ」
すでに何回なぐったか解らずひどい仕打ちも何辺も女にしてる。
これはそろそろ不味いかもしれないと彼は思う。

「何故だ?なぜ彼奴はあんなに早いのだ?股間に色々ぶら下げてるんだぞ?」
「且来。もっと早く動け。逃げられるぞ。ぶら下げてるのは御前も一緒だ」
森の中を腹を突き出して且来が奔る。その先を体売りの少年が毛布の隙間から色々見せても奔る。
「儂の國では節操なく股間の色々は見せていかんのだ。
特にぶらぶら揺らすのはいかん。ちなみに儂は喘息の発作持ちである」
「喘息ってなんだ?食い物か?旨いのか?早いな。彼奴。ぶら下げてるのに」
前を逃げる少年に取って其の森の其の場所は勝手知ったる庭なのだろう。
つかみやすい木枝を掴み纏う毛布の合間から下半身を晒してもするりと方向を変えて逃げる。
対する二人の狩人もそう簡単には追いつけない。
逃げる少年の眼の先に開けた場所が見えてくる。その先には深い川がある
そこへ上手く轉がりとべば馬鹿な大人も追っては来ないだろう。
少年はもうひと踏ん張りと脚に力を込めて大地を蹴る。
「此処で逃がすと跡がない。こう見えても俺は泳げないんだ。水が怖いんだ」
体売りの狩人爸爸は自分の弱みを白状する。

「ふんすっ」
且来はどすどすと猪の如く大地を踏みながら腰から蟲鞭をつかむと天空に投げる。
ギュンと蟲鞭が天空の太い横枝に絡まるとぐいと大地を蹴って且来は跳んだ。
横枝に絡み結ぶ長い蟲鞭に捕まり振り子の原理で且来は飛ぶ。
「うぉ。なんだ?」さっきまで後ろに居たはずの且来が頭の上をかすめて飛ぶ。
ぶ~~~んと音を立て蟲鞭の紐がしなり頃合いを観て且来は手を離す。
どずん。グエっと落下音とうめき声が響くと且来は見事にその尻で少年の体を潰し止める。
「怖かった。自分でやってこわかった。怖かったのである」
蟲鞭を使った振り子作戦は偶然にも成功し且来はいろいろぶらぶらな少年を無事に捉える。
「はぁはぁ。すごいな。あんなことする奴はじめてみたぞ。
大体。且来は蟲鞭使うの下手だろうに。退けてやれ。絶対肋折れてるぞ」
且来の巨大な尻に敷かれ失神する少年はたしかに胸肋を折っていた。
「下手の横好きも万回練習すれば何とかなる。どっこいしよ。尻も痛いのだ」
肋を折りうめき声をあげながらも失神する少年を縄で括ると二人の狩人はきた道を戻っていく。

色々とぶら下げて森を奔った少年を絡めての交渉は難航する。
確かに体売りの商品となる逃げた少年を何とか捉えたのはいいが
少々手荒な扱いとなった為当分客は取れない。
報酬ところか迷惑料をよこせと依頼主は煩く粘る。
「母亲殿。どうか判って頂けないだろうか?
儂等だって頑張ったのだ。ああでもしないと逃げられていた。
確かに少々手荒だったかもしれぬが逃げられてしまえは元もこうもないでないか?
儂らは急いでいるのだ。どうしても母亲殿が持つ情報が欲しいのだ」
爸爸と女儿がいれば母亲と儿子もいるらしい。
しかも且来の取引相手の母亲は金勘定の釣り合いには厳しい。
「訛が残るあんたの言葉はどうも聞き取り辛い。おまけに腹が出すぎてる。
それで体売りの商売がよく出来るね。なんども言うけどあの子は仕事が当分出来ない。
捉えてくれたのは嬉しいけど商売が出来ないと成れば話は別だよ」
且来寄りは年上だから齢四十を越えたあたりだろう。
派手な化粧をとれば存外美人と言える母亲はどうしても譲らない。

「ふむ。儂は國に女房がいる娘もいる。何方とも夜伽は欠かさない。
妾と言うには少々癖があるがそれでも縄で吊るせば気も失う。
鉄の道の向こうの大きな村にも嫁が一人と忠犬の女も又一人
かまってくれ入れてくれと強請る女も又一人。そこの体売りの女に聞けば良く知れ様。
これでも女の扱いには拘る理もある。どうだろう?少年の変わりの売上を上げたら
取引をしてくれるだろうか?まずは母亲殿から相手して進ぜよう」
且来は潔く来ている衣服を脱ぎ捨て鍛えた体をさらけ出す。
勿論。よく食べるから腹は出てる。
それでも軍で鍛え戦で死線を潜り森を奔る漢がただのでぶのはずもない。
それに体もでかいし比例もし父譲りの一物は他の物のそれより群を抜く。
淫猥にも歓喜の女の声が期待に染まる。母亲さえゴクリと喉を鳴らす。

それから三日の間。商い谷に女達の喘ぎと悲鳴が木霊と帰る。
母亲は元より且来の体を貪る女達が谷に集まる。
最初こそ体売りの女達が持ち主に強請り時に脅して金を払い且来に抱かれる。
谷に通う商人の妻も女も噂を聞きつけかけつけると列をつくる。
男も混じって列に交じる。且来は男色の趣味ないが相手の女が強請れば
尻穴にも入れるし乳房のない女と眼をつぶり約束の為に我慢する。
母亲も金は払わずとも何度か列に並び且来も列が続く限り気合で腰を振り続けた。
流石に誰と何をしたのか何人の女を抱いたのかも何処に入れたのかもわからなくなった
三日後の朝。倒れ込む且来の変わりに爸爸が約束の情報を手に入れる。

その日彼は吉凶禍福の言葉の内、中の二文字だけ取った運に恵まれる。
つまりは不幸が良く続く。
朝起きてぶらりと歩くと焚き火の前で石に躓きよろめくと朝食の鍋をひっくり返し
脚に熱い粥がかかり火傷する。熱い熱いと跳ねて飛び支えとばかりに木に手を伸ばし
なんとか落ち着いてみれば火傷と反対の脚が熊の糞を踏んでいる。
午前中はそれで済み火傷の手当をしていると徒党の仲間が喧嘩を始める。
些細な事であるはずで其の日に誰が一番先に女を抱くかと揉めているらしい。
徒党の頭の自分が決める事だと一括すればそれでいつもは納得するはずが
最後まで順番を待つ奴が切れて剣を抜く。
脚の火傷がキリキリ痛むし面倒だとばかりに短剣を投げる。
勿論脅しのつもりであったしろく狙いも定めもしない。
なのに百発百中の腕は確かに漢の頭にグサリと刺さる。
これには彼も驚いたがあんぐりと口を開けた徒党の輩は青ざめる。
待遇が悪いとちょっと騒ぎを起こしただけで頭に短剣を投げられ殺される。
これは徒党の輩の信頼を失った事になり。自分を守る盾が減った事にもなる。
やっと火傷も落ち着いた頃の夕方には兎を追いかけて狼の群れが
彼と徒党の焚き火場に奔り込んでくる。慌てた徒党の輩が剣抜き
追い払おうと松明を振り回し格闘するのは良かったが返って群れはパニックを起こす。
狼の群れはそこら中を荒らし回り騒ぎが収まった頃には大事な資材荷物がなくなっていたり
食材も丸ごと持っていかれたりと窮地に陥る。
万事休すとなった彼と徒党は互いに疑心暗鬼と空きっ腹を抱えて黙り込む。
そして・・・女が漢の名を闇夜に呼んだ。

[Vi har fundet den.Søn.Den pige, du dræbte, var gravid.
Du dræbte en mor og hendes barn.zeg fandt dem.Søn.]
見つけたぞ 息子よ御前が殺した娘は妊娠していたぞ 御前は母と子供を殺したぞ
見つけたぞ 息子よ

闇夜にたゆる風に声が乗る。
どこかで聞いた事がある懐かしさの交じる声が確かに聞こえた。
ゾクリと背筋が凍り蟲鞭に手を掛けてこの時の為に雇った仲間の顔を睨んで合図を送る。
ちりちりと燃屑を上げる小さな焚き火に何処からか黒塊が飛んでくる。
ボッと炎が放て辺りが明るく輝くとそれまで毛布に包まって寝ていた尻の大きな女が
地面に手をついて半身を起こし彼を真っ直ぐにみてにたりと嘲笑う。

ヒュンと木々の合間に風が靡けば焚き火の前に狩人が着地する
雇われ悪党と言っても荒くれ者だ。喧嘩事には慣れている。反応は早い。
むき身の剣を握り狩人に襲いかかる。だが然しそれよりも狩人は早い。
最初の漢に体をぶつけ押し返すと腕を一閃に振るザクリと手応えあれば悪党の頭に
ククリが突き刺さり振り払う手が短刀を投げれば反対側の悪党の頭にぐさりと刺さる。
木幹に倒れ込む漢の頭からククリを引き抜き背後から迫る男の前で二度に一閃腕を振る。
ドサリと右手を首が地面に落ち血飛沫ふきあげ胴体が地面に倒れ転がる。

「雇われただけだ。そこの坊主に・・・。最近は人も殺しちゃいねぇ」
残った一人は剣を手から落し両手を高く上げて降参の意を示す。
狩人は友が探す女の顔をちらりと観る。無事を確認したかった。
その女が黙ってこちらをじっと観る。その瞳に恨みが燃える。
ヒュンっと一度唸った疾風は止まらない。
ヒュンヒュンと狩人が腕を振る旅に悪党の体に投げ短刀がぐさりと刺さる。
ぐざりぐさりと投げ短刀が悪党の体の的に次々と刺さる。
狩人は〆とばかりに振りかぶり又一閃と腕を振ると手斧が悪党の頭をパックリと割る。

「儿子・・・」
「爸爸・・・」
久しぶりの父と息子。師匠と弟子が互いに名を呼ぶ。
彼は自身があった。師匠はククリの扱いは抜群だが蟲鞭を振るうのは案外苦手だ。
立ち向かう距離には不安が残るが自分には策がある。
師匠の元で鍛錬を積んでいた時、使える蟲鞭は一本だった。
その後に更に鍛錬を自分で積み上げ今では二本同時に使う。しかも長短二本だ。
長い鞭と短い鞭。これで遠くも近くも相手を殺せる。
それを師匠は知りもしない。自分に有利に事が運ぶとニヤリと嘲笑う。

ドスン。ヒュン。
彼の頭の横の幹に手斧が刺さり股間の間を投げ短刀が通り抜ける。
動けなかった。毛一本程も動けなかった。
歳を重ねても尚、冴えわたる技と言うほど師匠は歳も重ねてもいない。
つまりは彼は全盛期とも言える腕前で儿子の頭の横と股間を撃ち抜いて魅せた。
命が有るのは師匠の気まぐれだろう。

「馬鹿な儿子だ。俺は一度も的を外した事はないし。狩りの獲物も逃した事もない」
師匠は無造作にそれまで敵的がよく見えるようにわざと黒塊を投げ込んで
激しく燃やした焚き火を脚で踏みつけ腕を一閃する。
彼はまた動けずに短刀が自分の頬をかすめて飛んで行くのを見送るしか出来なかった。
自分の仕事は終わったと体売りの狩人は木々の向こうに姿が溶ける。

静けさが戻り暗い闇夜に彼は師匠のククリ捌きにも手斧にも投げる短刀の一本にも
自分の腕は遠く及ばない事をやっと知る。満身と言う言葉の意味を初めて知った。
否然し彼も又体売りの狩人であれば遠くで吠える野獣の咆哮くらいは聞き取れる。
ふと足元で気配が動き視線を下ろせば自分の商品女が地面に腕をついたまま
にたりにたりと嘲笑って魅せる。

大丈夫だ。自分には策が有る・・・。
彼はこの期に及んでも生き残れると頭の隅で考える。
どんな奴が向かってこようとも最後には頭が良いほうが命を拾う。
森の王者と吠える熊さえも人の罠には敵わない。
彼は急いで体を動かし師匠がけした焚き火に火種と黒塊を投げ入れる。
ボンと弾けて焚き火が燃え上がる。時に自分も女に尻を振らせる時は必ず与える黒塊は
本来日用品である。森で野営し焚き火を起こす。その発火剤である。
今こそ小さい火であるが彼は腰鞄からありったけの黒塊を握る。
師匠の変わりに来るであろう奴がどんな漢でも目の前に突然大きな炎が燃えれば
視界が奪われる。その時に跳ねて轉がれば後は後ろは森である。
逃げられると彼は根拠もなく信じる。

森奥に微睡む鳥が叫びを上げて巣を飛び出す。
牙と突進を誇る猪が慌てて道を譲って逃げる。木々に爪を立てる大熊さえきずびを返して巣に戻る。
悪鬼に例えても生ぬるい黒い化け物と言っても未だ可愛げも有ろう。
其れをなんと呼べと言うのだろ。とても人とは思えぬ姿こそ且来素子のその人である。
先に雑魚を片付け自分の息子を十分に嬲った狩人に比べ出遅れたと言うのも嘘である。
六尺超えて七尺に届く折れ斬馬刀を背に乗せて疾走する且来。
目指すは軍の一人友。例え喧嘩絶えずに嫌っても。其れも然り縁である。
助けぬ救わぬと豪語した自分の意地と見栄を今では愚行の恥と悔み。
友の一人を持ってさらった悪党風情六尺超えて七尺に届く折れ斬馬刀振りかざし
刃の血露の一滴に垂らして候。恨み晴らして進ぜよう。

「倭之御國帝国陸軍准尉・且来素子鏡蔵。いざ。圧して参る」
動物も風も逃げて裂ける道の先に悪党小童の姿が見える。
未だ遠く離れる場所で銀光鮮やか閃光走って七尺折れ斬馬刀が抜刀される。
シュンと音刃が抜かれた音にカチンと音が続けば姿を見せし七尺折れ斬馬刀。
巨躯に唸らせ奔る其の腕を刃に添えれば七尺の刃が木々を切断する。
鬼火に光る眼光ゆらぎ上段に構え天叩くに突き上げれば闇夜に雷燿とも見える。

「小童ぁぁ。地獄の閻魔様に在って来い。
且来七尺折れ斬馬刀上段一刃。喰らいやがれぇぇぇぇ」
人並み外れた巨躯に四肢を打ち鳴らし地面を駆け抜け速度を乗せた勢いを
そのまま上段に構えた七尺折れ斬馬刀の刃に乗せて気合一閃振り下ろす
渾身の力と速さを乗った刃の切っ先は轟風切って少年の体を頭が股まで一気に切断する。

若し人が其の死の刻に体から魂が抜け出し灯籠間を観た後に自分の死に様を観れるならば
彼は観る事が出来たろう。策を労して焚き火に黒塊など投げこむ暇など当然有るはずも無く
観たことも無いほどの長い刃が自分の頭の一本から真っ直ぐ股ぐらまで切り裂いて行く様を。
綺麗に二つに切断された自分の体は釣り合を失い両方に離れて崩れ堕ちる。
死して尚驚いたのは後ろの大木も自分の体と同じ様に真っ二つに切断され
音を立てて両側へと離れて行く。自分を殺した漢の刃は自分の体と其の後ろにあった
大木さえ真っ二つに切って魅せたとはっきり知れた。
抜けた魂が天に召されるかと思もっても空は暗く闇夜のままだ。
視線が堕ちるとそこにはじっと自分を見つめる尻の大きい女の顔が有る。
その顔が闇夜の中でにたりと嘲笑った。

「たっ。助けに来ないって言ったじゃないか?」
腕を振って斬りを終えた七尺折れ斬馬刀の血飛沫を払った且来に秀光縷々が声を掛ける。
「嫌縁も縁である。あの時無下に扱った儂が悪い。すまなかった。」
「でも助けに来てくれた・・・。」今はそれだけ言うのが精一杯とばかりに秀光縷々は号泣した。
「帰るぞ。予想外に手間取った。海苔巻きがのこってるか心配なのである」
「海苔巻き食べたい・・・。車海老天麩羅の饂飩も」
「太るぞ。それ以上尻がでかくなったら大変で有るぞ」
嘲笑って良いのか泣いて良いのか解らず秀光縷々は七尺折れ斬馬刀を納め
抱き上げてくれた且来の腕の中でぽかぽかと頭を叩いた。

且来と爸爸の体売りの二人二組は近場の商い谷に宿を取る。
体売りを営む物に取って仕来りは大事でありそれを始めるの止めるのにも
ちゃんと届けがいるからだ。それに且来にも火女儿を言う女がくっついてる。
且来が体売を抜ければ火女儿の持ち主がいなく成るから誰かが面倒を観なくては成らない。
爸爸にあずけても良いのだが嫉妬の種火にもある。変わりの持ち主を探すのにも
手間取ったし秀光縷々の体の事もある。どっぷりと黒塊の毒に犯されて致し
毎夜毎日無理に腰をふらされた為に体に限界も来てる。あの彼に砕かれた脚指の事もある。
自分で歩けるからと言う秀光縷々の世話を且来は豆に焼いた。
嫌縁であるとは言い捨てるがそれも又縁だからと何度も言っては世話を焼く。
結局離れがたくもあったが商い谷を且来と秀光縷々は五日後に離れる。
別れ際に一悶着あったのは笑い草だ。
彼等少数民族の民が恐れる鉄鳥が空から降りて来てそれに且来と秀光縷々が乗り込むと
爸爸の制止も聞かず女儿も自分も乗ると騒ぎ出し彼等商い谷の皆が恐れ逃げ惑う中
女儿は空の旅を存分に楽しむ。わけも解らずあちこちと勝手に触るから
機銃を掃射してしまったり機体が傾き過ぎてあわや墜落の事態に陥り掛けもした。
何とか女儿をなだめ地上に戻すとやっと旨をなでおろし且来達は基地へと帰路に付く。

「馬ぁ鹿馬ぁ鹿。御前の母様。出臍でなくても御前はデベソ」
饂飩を啜る且来を食堂の柱の向こう影から秀光縷々が罵声を飛ばす。
胸元には且来准尉のでっかいお尻を視姦中の札を括ってる。
「腹は出てるがでべそではないぞ。おまえも知ってるだろう?
良いからこっち来て座れ。早く飯を済まさないと巡回列車に乗り遅れる」
「爸爸ぁ~~~。胡椒とって胡椒。」進められた席につくと悪戯げにあまえる。
「誰が爸爸であるか。いい加減に体売りから抜けろ。この性悪女儿め」
「好きなくせに。私の体。五日もの間弄んだ癖に。火女儿と三人で・・・」
「こら黙れ。嫁がいるんだそ?儂には軍嫁が・・・波風をたてるな」
「じゃ。卵のせて良い?梅干しおにぎりも。爸爸ぁ~~~」
「うぐぐ。好きにしろ。とんだ弱みを握られた物だ。さっさと喰え。遅れるぞ」
真新しい征服の袖を邪魔だとばかりに秀光縷々は捲ると且来の隣で饂飩を啜り出す。

秀光縷々が体売りの彼に囚われ且来が救出するの三ヶ月程かかっている。
それが長いのか短いのかは判断がつかないだろう。
事実、小童司令官代理は且来とは別口で捜索隊を何度か出したが成果は上がらなかった。
且来だからこそ彼女を救えたとも言える。
以前弐年もの間漢縁の土地を歩いた経験が役に立ったのだろう。
救出時の秀光縷々の状態は酷いものであったが少数民族の生活と知識より
軍の医療技術では当然ながら格段の違いがある。
本来の使用目的とは違い麻薬としての黒塊も解毒も容易く行える物であり
その御蔭で秀光縷々は中毒患者から抜け出す事も出来た。
脚指の整形手術も問題なく成功し今は奔り回って且来の尻を視姦してる。
体売りとして漢達に慰み物にされた記憶と経験は頭に残るが
何とか折り合いを付けて当人は元気で任務を熟す。
その影に何かにつけて世話を焼く且来の気遣いと努力があるのも確かで有る。
四六特団は解散され希望者は何故か且来の女装家連隊に殺到し
秀光縷々も新しい制服の袖を引っ張りながら且来の隣で嫌味を言いつつ
軍嫁の眼を盗んで腕に手を回す。

残す敵は陸の船参番艦一隻。
否然し。之も又双方に取って激戦然りの戦である。

 

 

天鼠蛭姫

天鼠蛭姫

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