【女装男児】女装家且来素子闊歩歩いて候:其の十八

128個の部品の内。
組上げたのは47個。
ボシュっと音がして又、銃弾が頬を霞め後ろの壁に穴を開ける。
映画やTV番組で良く見る様に豚脚五郎は盾代わりにした机の後ろに隠れ必死に手を動かす。
思うように上手く動いてくれない指はその骨が折れてるからだ。
額ところか顔中に嗅いてる汗は冷や汗だ。
数日と前まではこの國にさえ居なかったし生まれも営んだ人生も違う場所だ。
必死に手順を思い出そうとしても思うように指の中に掴んだ部品がぽろりと床に転がる。
腫れ上がった目を何とか開けて転がる部品を先を追いかけ痛む指でそれを摘む。
ごほっ。
肺から漏れた空気が血と血が混じって気管を通り口から一緒に履き出るのは
残忍な彼奴が容赦無く腹を撃ったからだ。
多分。参箇所。若しくは二箇所。つまり一诺は瀕死の状態である。
「倭之御國の犬畜生にしてはしつこいな
四面楚歌で有るには代わりないが。態々奥へ逃げるのには分けが有るのか?」
五郎が当てずっぽに撃った銃の薬莢を軽く蹴飛ばしながら彼奴が部屋の向こうからやってくる。
「煩い。サディストめ。好き勝手に甚振りやがって。げふ。」
腹に力を込めて叫ぶと折れた肋骨が腸に刺さる。
「御前だって。楽しんでいただろう?甚振られて勃てていたじゃないか?
俺の可愛い子豚ちゃん。刺激的な時間だったろう?」
コツコツと足音が迫る。
ボシュ。ボシュっと二発に音が跳ね盾にした机に穴が空く。
防衛本能が勝手に反応し首を縮め体が固まる。直ぐそこに彼奴は高性能機関銃を持ってやって来る。
体に眠る誰かを嬲りたいと言う衝動が機銃の掃射を行わない只ひとつの理由だ。
腰だめに機銃を構え一斉掃射を行えばそれで済む。それをしないのは五郎を嬲るその為だけだ。
「もっと可愛がってやりたいが次がつまってるんでね」
机の上側に目線を上げると彼奴がにたにたと嗤い機関銃を構えてるのが見える。

彼奴の其の顔が何かを見つけたとばかりに目を見開くと五郎も笑う。
五郎胸の上に乗せていたのは側面式対人地雷。
しかも其の片側の蓋がむき出しになっている。
中には高性能爆薬の上に殺傷様の鉄球がびっしり詰まってる。
「窮鼠猫を噛むって言うのは個の事だ」五郎が満身の力を込めて無理に立ち上がり
思い切りとばかりに引き導線を真っ直ぐに引き絞る。

引き導が繋がる先の部品はゴムで出来た平板だ。
其れが引き抜かれると対人地雷の中の基盤に蓄えられた電池から電力が供給され
回路基板に命が宿る。回路内を電力が奔れば部品が作動し地雷が爆発する。
五郎はこの刻の光景を随分と長く其の頭の中に記憶として残す。
胸に括った対人地雷が熱く胸に熱を伝えると爆発が起こり
最初に鉄球と釘が飛び出し対面に突っ立ていた彼奴の顔に体にへと食い込んで行く。
皮膚の中へ釘が食い込めば血が吹き出し肉が見え骨が砕け顔の形が歪み
血管が破れ脳汁が飛び散る。
其の次にやっと胸に衝撃を感じ自分の体がゆしろの壁にぶつかって息が止まる。

「あの人に間違いないわ・・・」
豚脚五郎の妻・白湯はぼそりと呟く。
遥か彼方の戦地から遺骸となって帰ってきた元夫の姿を海軍将校の付き添いで確認する。
よほど激戦の地で任務をこなしたのだろう。頭の形は歪んでいるし顔はぼこぼこに潰れて
到底に白湯の記憶にある夫の顔面とは判別がつかない。
結局関係書類の中の歯型と虫歯の治療記録のみで夫で有ると判断するのがやっとである。
はぁ~~~とため息を付いて夫の遺骸から目を離し将校に向き直る。
「では。奥様。こちらの書類に署名を・・・」
「倭之御國帝国海軍て言うのは馬鹿が揃ってるの?
四度目よ。よ・ん・ど・め。四回もあの人を殺して何処か楽しいわけ?
毎回呼び出されて遺骸を確認させられる私の身にも成ってくれる?
夫元気で帰らずが良いって言っても死んで返ってくるのよ。
しかもご丁寧に偽装迄してくれるのよ?
なに?前回指摘した乳首の横の可愛く並んだ二個の黒子がちゃんとついてるわ。
良い事?元夫が死ぬ度に遺族には保証金が入るのよ。
お陰で高級マンション住まいよ。車だって高級車参台も買わされたわ。
これ以上どうやって贅沢すれば良いのよ?教えなさいよ。
・・・それであの人は元気でやってるの?」白湯は一気にまくし立てる。
元々気の強い五郎の元妻の気迫に押されながらも担当将官は台の上の遺骸を
自信なさげに指でさして誤魔化そうと試みる。

豚脚五郎。職業女優。其の元妻白湯。
五郎に取っては年上でもあり気の強い白湯に終始圧し潰され結婚生活は最悪だった。
五郎が絶えに絶えきって三年半。結局其れも白湯が愛人を作り浮気と言う形で幕を閉じた。
妻の浮気と言う最悪な事態で結婚生活が破綻し五郎自身には一片の非もないと言うのに
その後の五郎の生活も破滅の道へと突き進む。
回りから観れば鬼嫁を通りこし狂妻とでも言うべき白湯の所業迄最後迄自分から
離婚を言い出さなかったのも五郎は白湯を愛していた証拠であろう。
尤も五郎が女優として才能を開花させたのもその頃からである。
漢としてはあまり背が高くない五郎であるが女性に化けるとすらりした女性の印象になるし
元々整った顔に化粧を施すと少しきつめな感じには成るが其れも又映える。
少し低めな声も魅力であり一度化けてしまえば其れが漢生であるとは気づきにくい。
最初こそは鬘を被っていたが女優業に専念すると決めると。(当人に其の気が無くても)
自前で髪もそこそこに伸ばし艶のある輪が消えることないように努力も怠らない。
肌の手入れも顔だけでは無く全身くまなく滞りなくとすれば
本来はない乳房を医療欠損用の偽乳を高い費用を掛けて取り寄せて付ける。
さすがに漢の其れは取れないからそのままで有る。

主演女優としてTVドラマに出演する頃には
「豚脚さん。若しよかったらこの後食事に行きませんか?」
必ずと言って良いほどに本気で誘って来る共演男優の言葉に
「又今度に。機会があれば是非」はっきりと断りながらも移り香を腕の中に残して去って行く。
漢であると皆が知るしドラマクレジットにもはっきりと豚脚五郎と名前が流れる。
それでも靭やかで有りながらも憂いも儚さも併せ持つ五郎は業界のみ成らず世間世情でも人気を博す。
当人は肌を魅せるのは芝居とは関係ないと嫌い。
企画実現までに丸々と二年も掛かった写真集は売れに売れて売れまくった。
漢であるから肌の艶も体の線も漢のそれであると皆が思うが撮影現場に現れる五郎の其れは。
普段でも女性にしか見えないのに。惜しげなくも晒す肌と仕草は美しい女性の四肢のそれで有る。
画面の中にこれでもかと敷き詰めた真朱の薔薇の中に半身を埋め惜しげもなく晒す
乳房は紛れもなく本物であり。観る者を魅了もするが女性には劣等感と嫉妬を心に刻む程でもある。
「五郎さんの髪きれいです。何処のシャンプー使ってるですか?」
スタイリストが思わず溢した問にもきちんと答えるところか
化粧品の類から下着や流行りの服まで女子会の会話にも違和感なく溶け込んでしまう。
元々体を動かすことが好きで学生時代は水泳をこなしていた事もあり健康的なイメージもあれば
大手運動メーカーからCMの出演依頼が来たりとスポンサーも付いている。
本名漢名の五郎で仕事もしてるのに何をどう間違うのかストーカーの被害も幾度か経験し
中には我慢出来なかったのだろう。猛る思い真っ直ぐに突進してくる輩の腕を取り
一本背負で地面に叩きつけ直ぐ様に体を入れ替え腕挫十字固を見事に決めて見せる。
祖父の影響で幼い頃に古武術の経験が有ると笑うがその歳にパラリと乱れた短いスカートの
裾を気にし引っ張り直し尚且つきっちりと技を極めて観せるのも女性らしく。
又、この時飛び交ってきた漢は最初の一本背負いで地面に叩きつけられた衝撃で失神し
次の腕挫十字固が極まると大声を上げて叫んだが刻既に遅しと絞り上げられ
どう対応して良いかも解らずのままにボキリと腕を折られている。
確かに警察沙汰に成ったものの当然正当防衛が成立もした。
以来。確かにストーカーの類の連中はいるが。精々遠巻きに五郎の四肢を視姦するのが精一杯である。

傘月と言えば未だ春の香り残る夜。
女優として華を咲かせる五郎でも代償は多い。
常に人に観られる仕事であればこそストレスも溜まる。
捌け口を何処かに求めても精々酒と違法が合法かの境界線ギリギリの薬しかない。
熱いシャワーを浴びて。丹念に体を拭くのは良いが其れももはや癖。
漢の癖に胸上迄にとバスタオルを巻いて隠すのは悪癖だろう。
肌に熱残っても効きすぎるエアコンの風を避け。
着替えに用意した寝巻き代わりのキャミソールを体に纏う。
一昔前まではこんな大きな冷蔵。しかも勝手に喋る家電となればそれなりに高い。
風呂上がりだからと遠慮なく頭を中に突っ込んで冷気を浴びてお気にリのアイスを手に取る。
パタンと冷蔵庫の扉を閉じる横にずれて小さめの匙を握り蓋を取ればゴミ箱に投げて捨て。
一口二口とパクリとアイスを舌の上で溶かしながら小幅の足取りでソファに回り込む。
どざりとソファに尻を落しぱくりぱくりとアイスを五郎は貪り味わう。

好物であるアイスの中でも特にお気にリの味を存分に楽しみ
あと二口もすれば食べ終わると言うと事で後頭部にゴツンと何かがぶつかった。
「動くな・・・。動けば撃つ」低く恫喝を抑えた声が五郎の耳に届く。
驚くが何が起きたか分からなくとも身を縮める五郎の口を前に回った漢の手が塞ぐ。
どうやら五郎のマンションに侵入して来た輩は数人いるらしい。
口を塞ぐ漢の他にも脚音を忍ばせ部屋を漁る。
「豚足五郎。職業・女優で間違いないか?」手袋で五郎の口を塞いだ儘に漢が問いかける。
塞がれた口は答えられないから頭を上下に振って頷く。
「道具は何処だ?商売道具だ。いつも使ってるやつだ」
何の事か分からないと言えばたかしにそうだが商売道具と言うならあれだろう。
五郎は顔を左に向けてんん~~~と声を出して場所を示す。
そこに合ったのかと他に黒ずくめの漢が物陰へと歩いて行く。
この時五郎は初めて銃を観た。恐らくは自動小銃であろうが最新式にも観えた。
「大事に扱えよ。特殊機材だからな。慎重にな。
それからスニーカーも忘れるなよ。濃紫のキャミソールってエロいな」
口を塞ぐ漢が部下で有ろう仲間に命令しつつも個人の感想をちゃんと漏らす。
んんん~~~んんん~~~と口を塞がれつつも何度も五郎は訴える。
その間にも部屋の中を最新式の装備を身に着けた漢達部屋を漁り
手当たり次第とは言わずも鞄の中に詰めている。
んんん~~~と必死に目の前のヘルメットとマスクで顔を隠す漢に訴えソファの上に視線を送る。
素手に五郎は手に手錠を嵌められ細い足首も専用の拘束具で固定され自分では動けない。
「ぬ?アイスか?アイスが食べたいのか?自分の状況わかってるか?
これから拐かされると言うのにアイス食べたいと言うのか?」
今生の別れに成るか生涯最後の食事となるかもしれないと五郎は必死に訴える。
「淑女の頼みと成れば仕方ないな・・・。喰わせてやるが暴れるなよ」
マスクの向こうで優しさを見せると漢は部下に目配する。
部下が半分溶けたアイスを匙で掬い鼻を啜る五郎の顔の前に突き出すと
正面の漢がそっと手を退ける。我慢出来ずとばかりにぱくりとアイスに五郎は喰らいつく。
その瞬間。首筋に鋭い痛みが奔り針が刺さったのかと思えば五郎の意識は溶けて消えた。

「起きろ。豚脚五郎特殊工作員。起きろってば。
ほら。個々を握れ。支えてやるからちゃんとしろ」
微睡みから現世に浮かぶ意識の中でツンと鼻に鋭い刺激が残る。
状況は最悪で有ろうが今生の別れとアイスに食らいついた後に麻酔を打たれたのだろう。
今その時に今度は覚醒させる為に何かの薬品を香香されたに違いないない。
届いた言葉に反応し体が勝手に手すりを握り掴んで体を支える。
それでも未だ朦朧とする五郎の顔を手で張ろうとする兵士の手首を
これも又別の漢が握り絞めて止める。
「仮にも淑女だぞ。顔は不味い。名前は漢名で有っても作戦上でも淑女である。
ちゃんと作戦資料を読んだのだろう?それなら女性として扱え」
記憶の中に残る寧ろ大嫌いな声が耳に届くが気にしもしてられず。
兎に角頭を振って意識を正常に保とうと踏ん張る。
「これをつけろ。商売道具だ」
五郎の足元に漢が置いたのは黒い特殊な鞄で有る。
漢の声を聞いて五郎ははっとして自分の胸を腕で隠し体を丸める。
恥辱に塗れたのだ。
「付けますからあっち向いて下さい。漢でしょ?」
二人の漢もはっとする。其れはそうである。淑女として扱えと言って起きながら
そこで棒立ちでいるのは気遣いが足りない。それは当然と漢達も背を向ける。
況してや漢の体で有りながら女体に化ける為に義乳を付ける様を堂々と視姦されるのは苦痛である。
自らも後ろに背を向け屈み込み手早く手を動かし胸に義乳を付けなじませてキャミソールの生地を直す。
立ち上がり様に部屋が揺れ体勢を崩し掛けた五郎を拐かした漢が支えて手すりをつかませる。
「大丈夫か?先ずは息を整えろ。少しは時間がある」
その言葉に五郎はしたがう。今はそれしか出来る事はないだろう。
肺を膨らませ息を吐き出す間に五郎は周囲を盗み観る。
五郎に取っては非常事態でも目の前の漢達にはそうでないないのだろう。
少々に狭い部屋の明かりは暗くはあっても赤くはない。それは緊急を示してもいない
右手には何か筒状の物があり扉が半分開いている。何やら操縦桿の様な物も見えるが分からない。
その先は廊下に続く隙間くらいしか視えないが左側には幾つかのレバーと計器番も有る。
本来はもっといろいろ有るのかもしれないが混迷する五郎の頭には入ってこない。
「そろそろじゃないか?」五郎を拐かした漢が腕時計を覗き時間を確かめた。
そのまま後ろ背に回ると五郎の背に少々重い鞄を無理に背言わせる。
「良いか?豚脚五郎特殊工作員。良く聞けよ。
貴様はこれから新型人力強行偵察魚雷に搭乗する。
我が倭之御國帝国海軍の伊号第十二潜水艦の準備が出来次第人力強行偵察魚雷は発射される。
後は着弾次第降車し敵陣に潜入し任務に当たれ。わかったな?」
「嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌々。
僕っ。女優っすよ。女優。解ります?軍属でもないし。誘拐されたし。
特殊工作員ってなんですか?下っ端でしょ?お尻触らないで下さい。変態小父様さん。
えっ、何。魚雷?潜水艦から魚雷で打ち出されるって?何言ってるの。
だから押さないでってば。あっ扉絞めないでがちゃんと締めちゃ駄目。
嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌々。いやんん」
強引にやっと其れが魚雷と分かった中に押し込まれると肺が縮まり息苦しい
何度か大げさに深呼吸をするとほんのりとしか明るくない内部が見えてくる。
「豚脚五郎特殊工作員。
体を伸ばし腹ばいに成れ。脚の所に固定用のペダルがあるからそこに足裏を着けろ。
発射時には相当な衝撃が掛かるし海進中は魚雷酔いになるかもしれん。
前の方に握り棒があるからそれを掴んで発射体制をとれ。
うむ。女優と言うだけの事はあるな。プリッとしたお知りが可愛いな」
「何処観てるんですか?変態小父様さん。ちょっと嬉しくてもやっぱり嫌です。
握り棒って何ですか?操縦桿ではないんですか?逃げ出したいです」
固く締められた魚雷の扉の向こうでは中の五郎の姿が見えるらしい。
個々でもまたキャミソールの皺と裾を気にしながらも言われた通りの姿勢を取る。
言われてみればゆっくりと目の前の方向が傾いて行くのは伊号第十二潜水艦とやらが
海中で進路を変えて居ると言うことだろう。左から少し上へと向かっている。
「こちら魚雷管制室。
4番砲人力強行偵察魚雷五郎号。装填準備完了。いつでも行けます」
「了解。発射を許可する。武運を祈る」
「武運なんか祈らなくていいです。冷蔵庫にまだアイス残ってるのっ。
チョコミントと梅昆布塩辛味のやつ。アイスが食べたいですっ」
五郎は魚雷の中であらん限りの声を張り上げて叫ぶ。
一瞬。無線の向こうで軽い沈黙があったのはこんな時にアイスを食べたいと
食い意地の張った奴だと兵士が呆れたからだろう。
「とっ兎に角だ。4番砲人力強行偵察魚雷五郎号発射。
写真集買ったんだぞ。二冊も。美麗な乳房がなんとも言えん。武運を祈るぞ」
「有難うですぅ。でもアイスが食べたいの。
梅昆布塩辛味のアイスぅぅぅっぅぅぅぅぅぅぅ」
がたんと大きな音がして台座が回ると通称五郎号は魚雷発射口の中に納められ
ドンっと衝撃が頭を押すとものすごい勢いで海へと発射される。
捕まり棒を必死に掴みマットに顔を埋め脚を踏ん張って耐えるのがやっとであった。
然し実際の人力強行偵察魚雷の運用に当たって搭乗兵はもう少し
否寧ろちゃんとした装備を着込んでいるし訓練もしている。
その搭乗兵でさえも発射衝撃で気絶する事も暫しと多く。
ともすれば着弾時に自動で魚雷は分解され海中に放り出される事になる搭乗兵が
その時までにも意識が戻らずそのまま溺死する事故も多発とは言わずとも
結構ある事例にもあるに関わらず。キャミソール一枚しか着用してない五郎はそれも絶えきって魅せた。

「ぶはぁ~~~。
何これ?魚雷って海中で分解しちゃう物なの?
お陰で遠泳する羽目になったわ。キャミソール一枚で遠泳よっ。
観て。この格好。土左衛門よ。土左衛門。昔断ったドラマの幽霊の格好と同じじゃない。
海軍て人を拐かした上に魚雷に詰め込んで発射するのが趣味なの?
薄給で働く兵士さんの苦労とか分かってるのかしら?可愛そうじゃん。
私軍人じゃないけど・・・。てか・・・個々何処?」
水泳の経験が合って良かったと五郎は思いながらも見慣れぬ海岸にたどり着いたと言えば
形には成るが下着一枚の土左衛門には違いない。
何となくも見覚えた有るとしたら海外のビーチの風景が記憶に有るから多分そんな感じなんだろう。
漠然とした思いと遠泳の疲れもありじゃりじゃりと小粒の砂を踏みながらも数歩と歩き
椰子の実の木の下に屈み込み背を幹に背を預ける。夜になればビルや建物に明かりが灯る
その空に輝く星の数よりも遥かに多くも数多と多くの星集が五郎の頭上を埋める。
ブルブルと小さく左上に振動が奔り慌ててそこをみればいつの間にか時計らしき物が嵌めて有る。
こんなもの嵌めた記憶もないから潜水艦の中でどちらかの兵士が勝手につけて横したのだろうか
形状はシンプルでゴムで成形されたバンドの真ん中に液晶が埋め込んでも有る。
その液晶に[バックを確認せよ・バックを確認せよ]と文字が連続して浮かぶ。
「バックって塩水で濡れてるじゃん。中もびちゃびちゃに決まってるじゃん。
あらん。防水なのね。気が行くわね。お菓子入ってないかしらね」
背負ったバックを砂の上に下ろし中を覗き込むと結構いろいろな物が入っている。
最初には極秘と書かれたプラスチックの中に挟まれた多分指令書みたいな物。
当然五郎はそれを無視してバックの奥に手を突っ込む。
水と食べ物を目当てにするが簡易軍用食が三本しかないし水も小さなボトルしかない。
頭からかぶる布が入っていれば遠目に見える人影の幾人かがそれを付けてるようにも見える。
他にはパスポートと多分この國のID。それも複数枚入っいるし写真は五郎の物でも
記載してる文字がそれぞれ違うし。容姿が違えば観たことの有る國文字の物もある。
この地で仕える紙幣通貨も用意されている。いつくかの束に区分けされてもいるが
その量がかなり有るとなれば置き引きやかっぱらい等には気を付けたほうが良いだろう。
緊急用の医療箱も入ってるし何やら得たいの知れない小箱にはやばそうな注射器も二本ある。
他にもごたごたと詰まっているが五郎は諦めた。
それより砂の上はともかく道路にでもでたら靴がいる。服だって必要だ。腹も空いている。
喉を潤し腹を満たし体を休めるほうが軍の任務とやらより五郎には優先事項である。

少し歩けば海岸沿いの観光客向けの商店が在るものの客が引ける頃合いなのか
あまりやってもいなく。それでも何とか店主を捕まえビーチサンダルと毛布の様な
何か羽織る物らしき物を身振り手振りと声を枯らしてやっと手に入れる。
この時店主が五郎の頭をやたらと指差し怪訝そうな顔をするので回りを見て観れば
個の國個の地の女性は何かの理由で頭の髪の毛を隠すべきらしい。
恐らくは宗教的な理由でもあるのだろう。自分は関係ないと言っても頬って置くのも面倒だと。
なるほどバックの中に入っていたのがターバンかヒジャブとか言う物らしい。
それを適当に頭に巻きつけるとやっと店主は品物を渡してくれた。
何となくでは有るが身にまとう物が揃うと次は腹の虫が泣き出してやまない。
恐らくは海岸通りから奥の方へとぶらぶらと歩けば屋台がズラリと並んでいた。
これ幸いと屋台を覗いて観ると豚や牛の焼肉を売る屋台が多く。
健康と美容に気を使う五郎は眼を細めて一度は通り過ぎるがやはり胃袋が煩く鳴るので
個々は我慢せずにと肉塊に齧り付いてみる。油が乗りすぎてるのがきになるが
一度口入れる美味しくて堪らない。次から次へを屋台を回っては異国の屋台食事を楽しんだ。
腹が膨らむと歩いて着た道を振り返る。
「もしかしてぼったくられたかも?この格好じゃ観光客と間違われて当然かぁ~~~。
まっ。良いや。今度来た時店主ぶちのめして取り返そう」
腹が減っていた時は気が付かなかったけでども恐らくはそうだったのであろう。
髪の毛を隠していてもビーチサンダルと上には体を覆う少し厚手と言っても布一枚。
後は下着と成ればどっからか迷い込んだ観光客という所だろう。
良い鴨であったのだろうなと少し悔しさが残るが後の祭り。
この恨み晴らさずおくべきかと立ち寄った屋台の店主の顔を思い出しふらふらと五郎は有るき出す。

左上に嵌まる時計もそろそろ夜も深ける頃と告げればどっと疲れも出てくる。
肌にべとつく塩の香りも洗い流したい。ふらふらと物珍しさに囚われ通りを彷徨けば
不謹慎にも漢が五郎の行く手を遮り國違いの言葉で話しかけてくる。
随分と不躾な奴だと思うと漢は勝手に衣服代わりの布の端を持ち上げ中の下着を観て
にんまりと嗤い指を一本二本と立てた。其の顔が下品に嗤うのを観れば売春婦とでも勘違いしてるのだろう。
嫌と言っても言葉は伝わらずにそれを何かと勘違いしたのが調子に乗れば五郎の乳房に手を伸ばす。
むっとして漢の手首を握り勢いを付け振ると返す刀で体を回し反対に回した腕に膝を合せ
体重を乗せたまま地面に打ち付ける。
ぎゃっと言う悲鳴とボキリと言う骨が粉砕される音は同じタイミングだった。
随分昔に憶えた技であったが昔取った杵柄と言うのは咄嗟の時こそ役に立つ。
悲鳴を上げて転がる漢のポケットから飛んで地面に落ちた財布を拾うと五郎はそのまま有るき出す。
運も合ったろう。頭に巻いたヒジャブで顔も隠していたし漢は五郎の体しか観てもいなかった。
もっと言えば手頃な売春婦を見つけたしどれどれ相手は此奴にしようと思って値段の話しをすれば
手首を掴まれ眼の前に地面が回ったと思ったら腕に激痛走る。
あたふたと立ち上がった所に勢いに乗ったトラックが打つかりその漢は全治六ヶ月の怪我も負う。
多分売春婦と間違われた事にも五郎は腹を立てたがそれも来ている服と格好のせいもあったのだろう。
手近に入ったホテルでも少し揉めた所からも理解出来きる。
だからと引き下がるには疲れていたから指を三本立て三日の宿泊と示し支払って代金の他に
漢の財布から抜き取った半分の金を受付の女性の手に握らせると五郎の事をMISSと呼び
思ったよりも良い部屋に案内してくれる。
ちゃんとした温かいシャワーを浴びドアノブに[起こさないで]とお決まりの札を掛けると
個の國では多分立派な部類に入るホテルのふかふかなベッドの中に潜り込み五郎は惰眠を貪り始める。

「四時間。四時間だぞ?
その特殊技工工作員と言う奴はやる気があるのか?
そもそもちゃんとこっちに付いてるのか?」
一階が雑貨屋に成ってれば二重扉と三つの鍵で施行させている地下室で其の漢は暗号無線機に
向かってながり立てる。いくら暗号化されると言ってもそれだけ大きな声で怒鳴れば目立つだろう
「こちらは指定時間に魚雷に詰めて発射してる。魚雷の着弾分解も確認してるし
遠泳して海岸に到着してるの目視で確認済みである。こちらとしては落ち度がないと考えている」
「くそ。GPSだって作動してないんだぞ?海岸に付いたた普通スイッチ入れるだろ?
装備だって指示書だって持ってるんだろ。なのに指定された場所に現れないって
なにやってるんだ。始末されたとか事故とかの報告もないんだぞ。どうなってるんだ」
立案された作戦計画に従うなら倭之御國海軍特殊技工工作員豚脚五郎は海岸に上陸後
指定された道を通り現地作戦指揮所の雑貨屋の地下に姿を現すはずである。
連絡員が海岸通りを見張って四時間。その後二時間立っても彼は姿を現しては居ない。

のそのそと異国のベッド殻昼過ぎに起きて来た五郎は眼を擦りながらも
ルームサービスを頼み適当に食事を楽しむ。
ついでに部屋から顔を出し清掃員のおばさんを捕まえ自分の衣服を示し
これじゃないちゃんとした服がほしいと身振りで伝え個の國の金銭相場も分からないから
適当にこれも駄賃を渡す。おばさんが眼を丸くして手を押し返して来る所を構わないから
そのまま押し付ける。身なりが整う迄は特にする事もないだろうからと
自分の唯一の私物となる鞄の中身をベッドの上にぶち撒けあれこれと並べて観る。
「呆れた。海軍の人って本当に馬鹿なのね。
御国から女優一人拐かして魚雷で打ち出したと思えばこんな事をさせようなんて。
上手くいくはずないじゃない。漢って本当に馬鹿よね。頭の御味噌腐ってるじゃないかしら」
機密事項保護の為にプラシックに包まれた軍指令書を指で摘んでピラピラと振りながら
五郎は皮肉混じりのため息を付く。
暫くもすれば清掃員のおばさんが敬々しいと言うまでの態度で紙袋に詰めた洋服と
この國の感光ガイドらしき物をと届けてくれる。
幸いな事に女優仕事の兼ね合いもあり小規模でも大陸旅を何度か繰り返した事も有る
五郎は国際標準語とも言える欧州語はある程度読む事は出来た。
いざそれを筆記しろと言われれば到底無理では有るけれども。
この大陸國は南地域に所在するからやたらと熱い。
それを避けて五郎は夕方近くにとおばさんが見繕ってくれた服に身を包み
ブラブラと買い物がてらと腹を満たしに屋台を巡る。

αのコードネームを持つ漢はβとのコードネームをもつ部下に手で合図をする。
凡そ丸一日遅れで特殊技工工作員が腕に付ける時計が想定通りに起動し
位置情報を送ってきたのだ。丸一日と遅れた理由は分からないが何か事情が合ったのかもしれない。
だからと言って現地作戦指揮所へ奴が姿を現した訳では無い。
現地でもあまり高くも安くもないそこそこのホテルの部屋が信号は確かに発しられているが
一箇所に留まり動かない。これはαに戦感に危険を感じさせる。
恐らくはヘマをして捕まったのだろう。工作員は戦のプロではないし現場で活動するが
誰かが守ってやらないと禄な仕事もまともに出来ない連中だし足手まといな馬鹿が多い。
個の國の物と肌の色は違っても宗教礼装に従い頭顔を布で覆えばそれも見分けがつかない。
軍人であり修羅場も踏めばドア錠なんて簡単に弄って開けてしまえる。
目当ての部屋に入って顔を覆う布を静かに外して息を整えゆっくりと進む。
高い部屋ではないと思うって居たがドアの向こうは短くも通路に成っていて
その奥にリビングが有るらしい。踵からゆっくりと脚を付けて音を消し通路の奥へと進んでいく。
二歩も進めリビングの全体が見渡せると言う所でブーツの足首が何かに引っかかる。
しまったっと思った瞬間ブーツの足首がトラップの糸を強く引っ張っる。
BANと音がして体の向きを変えると七色の紙くずが顔に打つかる。
何事かと思うと突然視界が白く柔かい物で覆われ息が出来なくなったかと思うと眼中に火花が跳ねた。

閉じたまぶたにぴかりぴかりと光が当たってまぶしげにαは瞼を開ける。
其の顔に又柔らかくも甘い感触がぶつけられる。
「ぷぷっ。倭之御國海軍きっての精兵工作員が素人の罠に嵌まるってどう言う事?」
「貴様。何をした。そもそも何で連絡を・・・」
其の顔に三枚眼のパイ生地が投げつけられる。甘いし痛くはないが屈辱的だ。
ホテルの椅子に手も脚もナイロンコードできつく縛られているし。βの姿も見当たらない。
「ぶはぁ。貴様何のつもりだ。貴様。ちゃんと作戦に従え」
「何言ってるの?あの紙切れは読んだけど。アタシは女優だし無理矢理連れて
魚雷に詰め込まれて発射されただけだし。時計が発信機に成ってるとか知らないしさ。
しょうが無いじゃん。αとか言う名の岬崎さん」
「えっ。貴様。なぜ其の名を。βはどうした。βはっ」
黒のキャミソールとパンティだけでベットの縁に座る女は岬崎の横の床を細い指で示す。
ん~~~ん~~~と床に亀甲に半身を縛られ蛙脚に縄を括られ転がるβこと稲垣が唸ってる。
それだけなら未だ増しであるが観るに絶えない淫猥な罵詈雑言が全身に落書きされている。
「可愛そうにねぇ~~~。稲垣ちゃんって許嫁いるんだって。
こんな格好観せられないよねぇ~~~。油性マジックしかなかったら消すの大変だし。
稲垣ちゃん可愛いのよ。アタシの必殺御稲荷さん三段絞りで失神するのよ」
女はやたらと楽しそうに軍用の携帯で床に転がり半泣きの稲垣の悶絶姿を写真に納める。
「何だその必殺御稲荷さん三段絞りって新手の拷問か?俺には効かないぞ。
ぶはっ。だからやめろ。この馬鹿。いい加減に」クリームたっぷりのパイ生地が顔に押し付けられる。
「貴方馬鹿じゃない?
部屋に忍びこもうとした時にトラップに引っかかってクラッカー喰らってるじゃない。
あれが銃弾だったらどうするの?その次のパイ生地がナイフだったら喉元グサリじゃん。
運良く急所はずれて捕まったしても相棒が拷問され素性もバレてるのに意気がって
又パイ生地二枚もくらってるじゃない。戦なんでしょ?敵ってそんなに甘いの?
声上げて怒れば作戦が上手く行くの?素人に四回も殺されてるのに気づいてないって
貴方は絶対馬鹿ね。使えないわ。どうするのよ?隊長さん」
自分が犯したミスの回数を理解し岬崎は黙り込み自分の後ろに
ずっと立っていた指揮官の存在に初めて気づく。

大陸南部の広大な土地を占める叙利亜因州共和國。
その首都と皆が知る宗教首都の二番目に高級とされるホテルのペントハウスで
豚脚五郎は其の國の女性が着込むヒジャブを頭に巻き髪を隠し椅子の上でアイスを匙で掬い口に運ぶ。
五郎自身は鬱陶しいと思うヒジャブで有るが黒布地の上に極彩色の模様が入る奇抜で有るが
高級品でもある。体を包み隠す衣服もこの國の女性が着込む一般的な装いを保つがいずれも高級品となっている。
「こんな任務を低予算で何とか熟そうって言っても無理でしょ?
相手は個の國の宗教派閥の娘よ?彼女を拐かしてクーデター起こして政権を都合の良いように
丸ごと挿げ替えようって言うのに。何でこんな安っぽい計画なの?
それに私。軍人じゃないから貴方達の言う事聴く義理ないし。
でもこれやらないと御国に返して貰えないでしょ?責めて私のやり方でやらせて貰いたいわ」
自分の部下が床に二人も転がされては面目丸つぶれであり五郎の言う通りである。
隊長は顎髭を擦りながら五郎の言い分を受け入れるしかなかった。

叙利亜因州共和國。
周辺諸国と同じ様に有る主独特の宗教を國宗教と定め戒律と規律を軍規を重んじる國。
世界各国が資源として必要とする油田を幾つも持ち又希少鉱山も国内にあると成れば
太古はともかく昨今近年は近代化も進み富裕層も増え貧富の差も広がる。
とは言え油と鉱石資源を盾に取り近年特に発言力も高く成りつつあれば
周辺国家ところか世界的に大きな影響を及ぼしている。
懸念される問題は幾つもあれど大局的に観れば現職の総統は武闘派と言われ
独占的でもあり先ずに自分と親族の利益を優先に考えて政治を行っている事である。
其の振る舞いは年月を重なる事に真に独裁者へと傾倒し世界の警察と呼ばれる米欧州連合でも
手を焼いている。つまりは他国への宗教戦争を仕掛ける準備を着々と勧めてるとさえ言われている。
今までは政治を司る政治政党の上に宗教指導者と宗教派閥と言われる二つの蓋が重く伸し掛かり
その重しと成っていたが宗教指導者の力は既に形骸化しお飾りとかしている。
もう片方の宗教財閥の力も徐々に削られて居ると成れば世界各国もあの手この手で
独裁者を抑え込もうとはするが成功には至っては今もこの先も当分は無理だろう。
勢いの付いた独裁者政権は坂を転がる玉のように力を振るい他国への進行を行おうとしている。
唯一。独裁者としての総統が気にするべき事があれば内乱を含むクーデターであり
事実一部では抵抗勢力もある。自身が力を付ける度にそれも又彼等も力を付けてきている。
独裁路線を突き進めていくとすれば搾取する相手が自国民で有るのは当然である。

「おい?あの女。女優だよな?
手癖悪くないか?あんなにすんなり摺って取って魅せるとか玄人並だぞ?」
國の祝日に行わえる宗教財閥のパーティへ潜り込むと言い出した五郎はその会場に向かう
一組のカップルの後ろに近づき婦人が手に持つ招待状の封筒をするりと摺り取る。
摺り取られた当人は気づいてもないのだろう。連れの夫と楽しげに会話を弾ませている。
五郎はそのまま一般駐車場まで歩くと元気工事のバンに乗り込む。
「ちょろいもんじゃん。てかさぁ~~~。これくらい偽造すればいいじゃん。
シリアル番号が入ってなければそうする?貴方。文句ばかり言うわね。
御稲荷さんで頬摺りしてあげようか?それよりIDの書き換えちゃんとやってよね」
五郎は同僚の工作員を禁句とも言われる御稲荷ワードで脅すと奥の方でガサゴソと着替始めてる。
脅された工作員はどきりと首を縮めPCを叩きIDを偽造する。

「三助君。せっかくだから顎髭ちゃんと伸ばせば良いのに。熊ぽくなってちょっとかっこいいよ」
五郎は無事にセキュリテイゲートを潜りパーティ会場には行ってから連れの三助の耳元に呟き
スポーツジムで鍛えた尻を弐回撫で回してから人混みの中へと離れて消えていく。
五郎のパートナーとして会場に潜り込んだ工作員三助は変装用につけている顎髭を撫でる。
もっとも三助の仕事は個々までであり後は離れて五郎の様子を観てるだけだ。
今日に宗教財閥のパーティに潜り込んだ目的はターゲットの確認のみである。
出来れば第一次接触まで持ち込む事が出来れば望ましいのではあるが
三助は既に心配に成ってきた。
絢爛豪華な会場をそれ以上に着飾った男女が会話を楽しんでいる。
パーティの目的は次回総統選挙の資金集めであるから当然総統も来るだろうし
其の家族も顔を魅せるだろう。其れとはん別に幾つかの宗教財閥からも出席もある。
いずれは顔を合わせる事も在るだろう。ターゲットと関係者等の顔を写真ではなく実際に
其の目で見たいと五郎は言い出し譲らなかった。多少なりとも反対意見は合ったが
起点となる手筈も上手く用意できないでいたのも事実ではれば
先ずは個の國の社会構造と宗教と深い結び付きを五郎が肌で感じるのはちょうど良いだろう。
否然し。三助は会場に潜入して五分も立たないのに作戦が失敗ではないかと考え始める。
五郎は目立ちすぎる。
髪の毛は確かにヒジャブで覆ってる。其れが黒字に極彩色の模様でなければもっと良いだろう。
形で勝負よっと言い張る乳房は確かに大きくはない。然し其れがかえって自然な印象を与えてもいる。
その正体を知る三助が無遠慮に部屋に入った時にちらりと観えた乳房は確かに本物だったし
同時に飛んできたパイ生地の皿は玄人である三助の顔面に真っ直ぐ突き刺さってもいた。
あれがナイフや銃弾であれば三助は三途の川の小舟を自分で漕いで渡って居ただろう。
それ程大きくはない胸と締まる腰と膨らむ少し大きな尻を黒布と赤い文様が入った民族衣装で包み
足早にとバーカウンターに歩み寄ると五郎は高級なウィスキーを注文し喉を灼くと
バーテンにウィンクしてその場に陣取る。それだけなのに五郎が人混みをわけて歩き
バーカウンターに歩いただけなのに周りの漢達は五郎の後ろ姿を目で追いかける。
間髪も挿れずにプレイボーイを気取る漢達が自分のパートナーを差し置き
バーカウンターへと近づき始めていく。警戒し三助も五郎の側へと近づこうと摺る

誰が一番最初に肌の白い異国の女性を口説くか。
よーいドンっで始まった密かな競争は体格の良い美男の漢がカウンターに後二歩と言う所で
横から割り込んだ漢に一番乗りをかっさらわれる。
「こんばんは。御嬢さん。若しよかったら僕と・・・」
細身の美男は満面の笑みを浮かべ黒いヒジャブで髪を覆う女性に話し掛ける。
閃光が弐度奔る。
左上から右下へ右上から左下へと。
美男の漢は顔肌の上に何か触れた気がした。
パチクリと目を瞬くと目の前の異国の女性は少し微笑むもつまらなそうに
口紅のスティクを握り自分の唇をなぞるとキュッと締めてバーテンに指を立てる
「淑女様は気難しい御方で御座います。特に貴方の顔は気に食わないと。
一度。鏡をご覧に成ってから一昨日来やがれと申しております」
五郎が予め酒を注文した時にナプキンに書いて渡したメッセージを淀み無くバーテンは読み上げる。
困惑する美男の漢に異国の女性は指で拳銃の形をつくり声に出さすにBANと唇を動かす。
個の國に来て日の浅い五郎は片言も満足には話させない。
否然し。すり寄ってきくる男性の扱い方は心得てるし、言葉解らずも伝える方法はいくらでもある。
美男の漢がカウンターの上を除きそこに映る自分の顔に赤く口紅で書かれた✗印で意味を知る。
それまでも何人の女性を落してきた自分であるが見事に振られたと。
ポンポンとカウンターを叩き凄みを効かせて女性はの顔を睨もむが既に相手は眼中にないとばかりに
バーテンに向かって次の酒を注文している。
仕方なくも頬を擦りカウンターから歩きされば他の漢が自分の顔を観て怪訝そうに嗤う。
ついさっき迄異国の女性を口説こうと歩み寄ろうとしていた漢たちも狙う女性が一筋縄では
行かないと悟るとそれぞれのパートナーの元へと振り返る。当然彼女等は皆顔を顰めはいるが。
「おい。今のは国会議員の息子だぞ。やりすぎだぞ。目立ってるって」
「警告なのよ。下手に私に近づくなってね。三助ちゃんも書いて欲しいの?
おヘソの周りにはなまる書いてあげるわ。それよりターゲットは?」
耳の奥に付けたイヤフォンに三助の怒声が響けば五郎は軽口で返す。
大体にして五郎と三助は仲が良くない。三助は生真面目で任務に忠実であろうとすれば
五郎はいい加減で場当たり的でもある。馬が合うはずは当然にない。
「否。未だだ。遅れてるだけだろう。主賓だから姿は表すはずだ。
こら。尻を描くな。みっともない。淑女だろ。
「漢だも~~~ん。嘘々。淑女でもお尻は痒くなるの。
砂っぽいのよ。個の國は。誰も観てないって」随分といい加減な五郎の答えが返る。

叙利亜因州共和國・現総統はきちんとパーティ会場の控室に到着し
招待客が酒を楽しみ自分が姿を現すのを今や遅しと待っているのをよく知っている。
娘もお気に入りのドレスを着込み後は父が椅子から立ち上がるのを側で待っている。
既に全ての準備が整っていると言うのに総統は椅子の上から体を持ち上げない。
イライラと踵を鳴らし携帯電話で誰かとずっと話している。
此処に来る前からずっとそうであり、わずかに耳からそれを離したのは娘との抱擁を交わした時だけだ。
長々と会話は続き終わる気配はずっと先で在るとも見て取れた。
そしてついに総統は携帯を持ってない方の手を首の手前で二度振る。

「間者からだ・・・。
総統は確かに会場に来ているが此処には降りてこないらしい。
既に車での移動を開始してると言う事だ。・・・任務終了だな。退散しよう」
「あら。何?もうちょっとでバーテンの子口説けそうなのに。
帰らなきゃ駄目?五分頂戴よ。五分」
「口説いてるのかよ。棒みたいなひょろひょろが好みか?良いから退散だ」
「嗤うと笑窪が可愛いの。嘘々。三助ちゃんが一番好きよ。
それにしても残念ね。みんな期待して待っていたんでしょうに」
一頻り会話が済むと五郎はそれまで口説いていたヒョロヒョロのバーテンに目配せすると
小さなバックを手に持ってカウンターを離れる。
それぞれに酒と会話を楽しみながらもパーティの主賓が現れるのを楽しみにしている客の
その波間をすり抜け五郎はコツコツとヒールを鳴らし歩き去る。

五郎の肩に何かが触れる。
それは直ぐに人の頭と知れ。次に肩が重く伸し掛かりそれが漢がのしかかって来たと思うと
五郎は倒れ込んで来る漢の体を腕に抱きしめて尻もちを付く。
幸いにも漢の頭は五郎の折り曲げた四肢の上にあり床に打つかる事はなかった。
咄嗟にも五郎は漢の額に手を上げ体温を確かめ次に首筋に指をあて脈を取る。
初老とも言える背の高い漢の顔は熱く熱を持つ。逆に脈は今にも消えそうだ。
「緊急よ。誰か水もって来て。それ。寄越して。寄越しなさいよ。早く」
直ぐに声を上げ五郎はテーブルの上に置かれた凍りが入ったシャンパンのバケツを指さす。
咄嗟であるから口を出たのは倭言葉だ。それで男性客が意味を汲み取りバケツをよこす。
五郎は迷わない。
頭に巻いたヒジャブを剥ぎ取り袋を作るとバケツをヒックリ返し氷をぶちまけ
シャンパンの蓋を開けて咥えると結って水袋を作ると膝の上の漢の額に乗せる。
「何観てるのよ。持っともっと寄越して。貴方等この人殺すき?」
五郎の突然の行動に驚いたのは周りの客である。当然宗教的な物が絡む。
女性で在るならば滅多な事でない限り他人の前で魅せて晒す事は許されない。
寧ろそれは絶対と言っても良いだろう。
否然し。五郎は躊躇も迷いもせずにヒジャブを水袋と変えて漢の顔に当てる。
「そら。これだ。胸に当てろ。救急車も呼んである。すぐに来ると思うが」
如何にもと言う体躯を持つ三助がタオルに包んだ氷水を渡してくる。
「観たことがあるわ。撮影現場で役者が倒れたの。
異常な程に体温は高いのに脈は低いの。えっと確かあれは・・・急性逆熱疾患症候群」
「逆生?体温が高く成るのは活発的な心臓の運動現象だぞ?
体温が高いのに心臓の運動が低いのか?ありえないぞ?」
漢の襟元の服を引き広げ客が手渡してくれるタオルを胸に当てながら三助が聞き返す
「だから逆生なの。鼓動が少なくても何かの影響で体が熱を持つの。
あまりにも熱が高くなって細胞が壊死するのよ。早くもっと氷水を」
五郎の言葉をこの國の言葉に直して三助が叫べば皆が手を貸し水を用意してくる。
「何分なの?救急車が来るまで」五郎が漢の頬を撫でながら問う
「平均で20程度。込んでればもっと掛かるな」神妙に三助が答える。
「無理。間に合わないわ・・・このままじゃ無理」
はっと思い付いたように五郎は自分のバックから注射器を取り出すと
漢の心臓の脇にえいやとばかりに突き刺し三助を見つめる。
「軍支給奴。アドレナリンって聞いたわ」
「それでもどれくらい持つか分からんぞ?いくら軍仕様でも」怪訝とばかりに三助が顔をしかめる。
「助けて魅せるわ。女優の意地よ」
五郎は膝に抱えた初老の漢の頭の下にバックを潜り込まえて立ち上がり
会場の隅間でヒールを脱ぎ捨て奔るとテーブルの上に合る料理を手で払い落とすと
大きめのテーブルクロスを抱いて戻ってくる。
「これを担架代わりにするわ。出来るだけ静かに乗せて。
良い?1・2・3・・・どっこいしょ。
皆に言って。水でも酒でも冷たい物をこの中に注いでって。早く」
五郎は直ぐにテーブルクロスの縁を持って持ち上げ反対側を三助が持ち上げる。
周りの客が三助に言われた通りに酒や水と氷を簡易担架となったクロスの中に注ぐ。
その間にも五郎と三助は走り出し一刻も早くと会場の外へと向かう。
五郎に口説かられた若いバーテンも一緒に奔る。それでも何処か不思議に思う。
人間の胴体を持ち上げる時それが重いのは常に上半身だ。
担架に乗せた場合もそれは同様なのに頭の方を持っているのは黒髪を見出して奔る女性である。
ともすれば軽い脚側を持ち上げる屈強な漢のほうがもたつく時もある。
必死であるとしても女性の方が力持ちに思えるのは何かの間違いなのだろうか?
わたわたと担架かと水を掛ける一団が会場の駐車場に付く。
「三助ちゃん。この人お願い。支えて。
ちょっと。どきなさいよ。人名がかかってるの。退けってば。うすらとんかち」
楽しみにしていたパーティに遅れそれでもやっと会場に付いたばかりのカップルを五郎は押しのけ
高級車の中に潜り込む。手招きしてクロスに包んだ初老の漢と三助が乗り込む」
「バーテン君。今度デートしよっ。亀甲縛って吊して上げる」
「本気で口説いてたのかよっ。この変態。天井から吊るすって・・・うぉっ」
全部良い終わる前に五郎がアクセルを踏んで車が加速する。

「何処か一番近いの?ナビは?早く早く」
「中央病院だが。この疾患に対応できるかどうか?」
胸に抱いた漢の体にボトルから水を掛けながら三助が答える」
「ちっ。使えないわ。本当に。
・・・こちら倭之御國海軍特殊工作員・豚脚五郎上等兵。
伊号第十二潜水艦。私のお尻触って魚雷に詰め込んだ助平な上官さん。応答して」
「こちら伊号第十二潜水艦。豚脚五郎上等兵。
貴殿のお尻を触った助平な将官は現在休息中と思われる。緊急か?」
「あの馬鹿。私の写真集で致してるじゃないでしょうね?
緊急よ。作戦執行中に不慮の事故発生。
男性一名が急性逆熱疾患症候群と思わる疾患の為に卒倒。
現在応急処置をしながら搬送中。然し重病と思われる為現地病院での対処に不安有り。
そちらでの対応は可能か?救援求む。繰り返す。救援求む」
「暫し待機せよ・・・。
・・・・・・。
了解。豚脚五郎上等兵。国際人命救助条約に基づき我軍で対処可能。
救難ヘリを送る。到着予定時刻は約七分後。位置情報は送信する」
「伊号第十二潜水艦。感謝する。5分で到着するわ。以上」
夜も深ける街の道路を三人を乗せた高級者がエンジンを唸らせ疾走する。

「はふはふ。ずるずる~~~。上手いなこんな旨い蕎麦は久しぶりだぞ。
否然し・・・なんで俺等は南国の熱い國のホテルのキンキンに冷房の効いたペントハウスで
熱々の天ぷら蕎麦を啜っておるのだ?五郎子よ」
「いやん。五由梨って呼んで。
しょうが無いでしょ。専属メイドのアリアちゃんが倭之御國通なのよ。
観て。この天ぷら黄金車海老が丸々入ってるの。あの子って本当によく分かってるわぁ~~~」
以前のホテルよりも又ひとつも二つも上のホテル。しかもそのペントハウスで五郎と三助が蕎麦を啜る。
「誰が五由梨だ。ごりらの間違いではないのか。
それよりアーカム氏の様態はどうなんだ。こちらの事情は知ってるのか?」
ずるずると蕎麦を啜るのを止めずに三助が問いかけてくる。
「あの後の事は貴方も知ってるでしょう。海軍の処置が迅速且つに正確だったおかげで
二日昏睡しただけで意識を取りもどしたし。二日前に都市中央病院に転院したわ。
後遺症が在るみたいだから暫くは杖を突いての歩行になるでしょうし。それはずっとかも知れないわね。
目が冷めたのが異国の潜水艦の中だったし。私達の素性はばれてるでしょ。
それでも何も言わないのは命を拾ったのが私達だからよ。
感謝してくれるのは良いけど。少々やりすぎよね。アリアちゃん。お替り下さいな」
最後の部分だけ個の國の言葉に直して五郎は天麩羅蕎麦のお替りを強請る。

五郎が自分の髪を他人に晒して命を救った初老の漢は勿論この國の要人である。
名をアーカム・レム・ジルルギ。國の宗教財閥でも尤も力と影響力を持つ人物であり
五郎と三助が居心地が悪くむず痒いのはあろうことか総帥を強く指示する保守派と呼ばれる派閥に属して居る。
勿論に個の國の総帥を崇拝と言える迄に溺愛し経済的にもかなりの出資をしている人物である。
それは其れとしてと言うのだろうか。自分がパーティ会場で倒れその生命を救ったのが五郎然り三助と
その二人が属する倭之御國海軍で在ると知ると驚愕し暫し考えさせてくれと吐き出し
海軍としても五郎としても其れで良いだろうと考える。
それでも五郎は献身的にアーカムを支えた。最初からではあるが潜水艦に運び込み処置にも立会う。
アーカムが昏睡状態の儘で過ごす二日の間もベットの側に付き添いずっとその手を握っていた。
当然とアーカムが目を覚ました時にも彼が最初に見つめたのは白肌の五郎であり
その後も五郎はまるでアーカムの妻の如くに食事を匙で口に運んでやったり
体を拭いてやったり言葉はあまり伝わらぬでもアーカムが信仰する神に一緒祈ってみたり
下の世話まで献身的に世話を焼く。
五郎には五郎の事情もあった。確かに自分が拾った命であればこそ其れが手を離れるまでは
世話を焼くのは当然だと思うし当人の性格も在るだろう。
然しそこが倭之御國海軍の潜水艦の中と成ればこそ軍事機密や作戦遂行の件もある。
従って一度状況説明を行った艦長と医者担当看護婦意外の人物をアーカムの側には
おけないと言う海軍の都合をもある程度優先した結果である。
事情はどうあれ確かに献身的にアーカムを支え介護した見返りとして
五郎と三助はアーカムの下知を頂いたアリアとその一団に半ば強引に連れられホテルを鞍替えを余儀なくされた。
「旨いが蕎麦であるが・・・。どうするんだ。これから?」既に4杯の椀を重ねて三助が満腹だと腹を撫でる。
「どうするもこうするも作戦は遂行するわよ。当然じゃない。
アリアちゃ~~~~ん。胡麻垂れ苺杏味のシャーベット頂戴な」
又も半分は個の國の言葉で五郎はデザートを強請る。

置字

天鼠 蛭姫ノ壱

天鼠 蛭姫ノ壱

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