[j.j.j]黑魔術教団・導師


壱枚の大板を古の金槌で叩いて割った五つとも七つとも言われる大陸の國
とりわけ古くから歴史の有る其の國は䯢女の國とも言われるが歴史流れれば近代化が進む。
國の首都と認識される鉄道駅のその前の広場の一角。
一人の女性が立っている。昔ながらの慣例に習い決して親が付けた名前を名乗ることはない。
[j.j.j]・・・ジェシカ・淳子・ジェリン。通称にしてj.j.j。若しくはj.j。
J.Jの容姿は一風変われば個性的でよく目立つ。
細身でもあり一般的な女よりも頭一つ高い背丈であるし、長く伸ばす事の多い髪は短髪でもあり
坊主を真似して丸刈りにしているがその髪色は真っ赤に染めている。
これは有る主の自己表現とも取られるし言ってしまえなゲイの象徴を示してるとも取れる。
否然し髪色だけが特別とは言えない。髪の毛を真っ赤に染めても居るが額から瞳の周り一体まで
今度は真っ黒な化粧を施している。これも見方によっては何処かの部族の戦化粧の其れにそっくりだ。
自他共に漢相手に腰を降るより同性を陵辱するほうが大好きだと言うが、その四肢は一片の棒のようだ。
つまりは女性ぽさの象徴としての乳房はぺったんこ。尻も膨らまず細いままだ。
着込む衣服も風変わりでもある。どんなに熱い日も又に寒い日であってもその装丁は変わらない。
公然公共の場所に毎日立つとなれば目立ってはいても警官に注意されない位には気を使ってる。
目を凝らさないと見分けもつかない乳房を短めなキャミソールで覆ってはいるが御臍は丸出し
腰から下は極彩色のボトムで有るが膝下も又肌を晒し真っ赤なピンヒールを履いている。
寒い日も有るしそうでない時もあればこれも目が痛くなるほどの極彩色のロングコートを羽織っても居る。
J.Jは此の格好で毎日毎朝に通勤時の頃合いに駅前広場の隅の一角に立つ。
赤短髪・黒戦化粧・極彩色のコートとボトム・赤いピンヒール。
一般人にも他人も一種異様な立ち姿であるJ.Jは緩やかな仕草で胸前で参本の指を立て人指し指と親指で細い鎖をつまむ。
伸びる細鎖の先には宝石を埋め込んだ参核塊が繋がっている。
派手な衣装で胸元で鎖参角塊を揺らし持つ。
その立ち姿の儘、朝の時間を過ごす。如何なる時も何処なる時も欠かした事はない。
J.Jにとって其の行為は修行である。
自分の四肢に示された修行の一環であり、進むべき道を示された次の朝からずっと道の上に立っている。
[j.j.j]・・・ジェシカ・淳子・ジェリン・・・・。
幼年時代からあらゆる災難と虐待を施されたJ.Jはある時。読み聞かされた寓話の中に希望を見出す。
䯢女である。飽く迄も寓話であるはずの䯢女は此の國の片隅は存在しているとも信じられている。
迷信深い国柄でもあるのだろう。何年も幾年もの時間をかけ師に従事する機会を得る事が出来たJ.J。
その師こそ誰ぞあれ䯢女でありJ.Jはその徒弟である。
存在を噂ばかりと信じる者は少ないが䯢女は居るらしい。
その存在を強く信じるこそJ.Jは師の言いつけをずっと守り続けている。
自分にその才能がないかもしれないと幾度も其れを失う事はあったとしても䯢女を信じて
師を敬い言いつけを守って幾年とも成る。
欧州アルデニュンタ䯢女連合国。
その日も明日も又も一人の䯢女の徒弟として朝から修行をこなすJ.J。
最近と言っても自分の誕生日を五回ほど数える前の頃。
䯢女徒弟[J.J]と同じ名前の犯罪者・爆弾魔Clubbomber事J.Jという青年がいた。
爆弾魔のJ.Jは有る特定の団体アルメルダ騎士団と言う組織を嫌悪し彼らの死を望んで活動していた。
迷信と盲言葉を極め思い違いの果に増長するアルメルダ騎士団を抹消するために活動するJ.Jは
彼らが集う拠点やBAR等をイチイチ爆破して騒ぎを起こしたが。
爆弾を使うとなればこそ一般市民をも巻き込むのは必定でもあった。
警察憲兵の努力だけではなく。偶然因縁深き去る一介の軍人とか変わった為に
爆弾魔J.Jはその才能を活かし負ける戦場で華こそ大輪を咲かして散っている。
事の顛末こそ人知れず誰かが心に黙る物語でもある。
爆弾魔J.Jと䯢女徒弟[J.J]に繋がりはあってもなくてもとして。
気になるのはJ.Jに魔法使いとしての才能と力があるのかという所だろう。
此の世。其の世に果てして魔法は有ると言うのだろうか?
J.J自身は師の魔法と術を観たことが有るから其れと信じて疑わない。
否然し。果たして自分に其れが出来るか?若しくはその才能が有るのかとなればJ.Jは自分を疑っていた。
人より感の鋭いほうだとは思う。なんとなく空気を読めると言うかなんとなく気配がわかるかも。
でもちょっとだけであるし何となくそんな感じが時々するだけでもある。
否然しに・・・。
其れを魔法と言うには未だ疑いはあったとしても。
毎日毎朝人々が行き合う駅前広場に鎖参角塊を握り呼吸を整えるJ.Jを実は皆が頼りにしている。
結構に目立つ格好で駅前広場の隅で瞳を閉じてずっと佇むJ.J。
当然その前を通りず切る人々も多い。
朝の弐時間、J.Jはいつもと同じ場所で鎖をつまんで参角塊を揺らす。
瞳を閉じ呼吸を整え、師曰く四肢に宿る魔力を参角塊に注ぎ込めば力を宿す。
師に言われ幾日も数年も修行してきたJ.Jであっても参角塊の中に収められた宝石がやっと小さく熱が籠もるだけである。
否然し。それはJ.Jがそう感じているだけでもあった。
頭を垂れ瞳を閉じるJ.Jにとっては参角塊の宝石は少し熱を持って居る程度にしか解らないのであろうが。
実際に其れを観る誰かには違った。
日によって其れは白く光り、時によっては鈍く碧く光ったりも又別の色で有るときでもあろう。
最初に其れに気づいた輩は見識のある人物だったのだろう。
「あら。貴方・・・・。もうすぐ雨が降るわよ。赤ちゃんの為に傘を買ったほうが良いわよ」
「えっ?そうなんですか?天気予報では今日一日晴天だって言ってましたよ?」
上品な気配を醸し出す壮年の女性が赤子車を押して散歩する母親に丁寧に声を掛ける。
「貴方?此の付近に済んでるの?この辺の住人はTVやラジオの予報なんて信じないわよ」
「そうなんですか?引っ越して来たばかりなので・・・・。
TVの予報を当てにしないとすれば。何を観て天気をしるのですか?」
「あれよっ。広場の隅に立ってる派手な衣装の女性。
彼女の持つ魔導具が白く光ってるなら晴れ。碧く光るなら雨なのよ。
彼女の予報は必ず当たるわ。・・・何せ御天気の䯢女様だもの」
「御天気の䯢女様?本当ですか?そんな方いらっしゃるですか?でも随分と派手な格好ですよ」
「当たるも八卦。当たらぬも八卦。直ぐにわかるはずよ。
随分と碧く光ってるし。大雨になるわね・・・。傘を買うならあの店にするといいわ。
あの店の店主は商売上手だからね。傘の仕入れは入念なのよ」
噺半分。信じないにしても赤ん坊がいれば噺も別である。
上品な笑いで商売上手の傘屋を揶揄するとゆっくりと何処かへと淑女が消える。
母親は狐につままれた気分でも足早に傘屋に入り少々大きめの傘を買い込む。
当たらぬも八卦っと傘屋の扉を出た途端に轟音と一緒に雨粒が地面を叩き始める。


帝都駅前広場の片隅で朝のしなしの時間佇むJ.J、誰が読んだか知らず其の名を御天気の䯢女様。
当人には届かぬふたつ名であるからJ.J自身はそう呼ばれてる事も知らない。
J.J自身は朝の修行で有り、淡々と其れをこなすだけである。雨が降っても風が吹いても雪が待っても毎朝である。
幾年も繰り返す朝の修行を収めるとJ.Jは生活の為に職場へと向かう。
タイムカードを押せば良いのは午後の始まりであるから時間はある。
修行の場所と決められた広場から今度は駅中へ向かい仕事場の駅まで自分の足で歩き地下鉄を使う。
今日もであれば昨日も一昨日も同じである。
本来の性格は何処か怠惰な物であるJ.Jであるが魔法の事になると非常に繊細で几帳面な性格でもある。
だからこそ毎回同じ通路を通り同じ列に並び同じ車両の大体同じ場所に乗るのが習慣である。
J.Jは凄惨な幼年期を過ごしたのもあって地下鉄や列車の運転席を観るのが好きだった。
特に意味もないのに列車とか大型車の運転を観るのは何故か楽しく感じてしまう。
幼年期に親に何処かに連れて行って貰ったとか家族と暖かく過ごしたとかの経験等あるはずもないから
子供っぽい所が未だに抜けないのはしょうがないのかもしれない。
それでも大人の威厳と言うのもあるから地下鉄の運転席近くの壁に虚ろ気な表情でもたれ立ち
視線を泳がせるふりして忙しく列車を操作する太った運転者の姿をこっそり観てる。
食に拘る漢は巷に結構居るが、その日の運転手もご多分に漏れず昼休みのチキンバーガーを楽し観にしてる口であろう。
決して好みの運転手でもなかったのは兎も角として・・・・。
子供っぽくも何処かにワクワクとした気持ちで窓越しの運転手を睨んでもいる。
しばらくの間運転手の手元を観ていると・・・・。
何かちょっと違和感を感じる。何処かそのいつもとも違うように思える。
動かす手がいつもより激しい。あっちこっちと忙しくも動いてる。
翌々と注意してみて観れば何度も同じ赤いレバーをガチャガチャと動かしてる。
汗ばんだ手で何度もガチャガチャと動かすレバーの其れは速度を落とすレバーである。
「あれって・・・ブレーキよね。確か列車の速度を落とす時に使う奴。
・・・・なんであんなに何度もガチャガチャしてるのかしら・・・あっ」
丸っこい指で必死にブレーキレバーを運転手が操作してるはずなのに何故か列車の速度が上がる。
体感でさえもグンっと後方に力が掛かり速度が上がるかと思えば乗客の体も傾く。
「ちょっ!何してるのよ。貴下っ!危ないでしょ!」
思わず声を上げ運転席と客席を仕切る扉を拳でドンっと叩く。
それでも気づかずに運転手は赤いレバーをガチャガチャと動かすのを止めない。
「何してるの?速度上がってるわよ?なにやってるのよ。此のお馬鹿」
声をあげ仕切り窓をドンドンと叩き続ける間も又、唸りを上げ車輪が回り速度が上がる。
何度も仕切り窓を叩くとやっと気づいたのかうあっとの事でちらりとJ.Jの方をみると
額に汗を垂らしたまま必死に何かを叫んでくる。
「何言ってるの?貴下っ。運転手でしょ!スピード落としなさいよ。此のお馬鹿!」
何かを訴えてるとは知れても肝心の言葉が聞こえない。
その間も暗がりのトンネルで列車は速度を上げる。
地下鉄列車の乗客は百人に近いか其れを超えるだろう。
其れを庶務とはいえ油外の太った運転手に全てを任せるわけにはいかなかった。
J.J自身必死だったのもある。手で叩いても拉致があかないとわかると自分の鞄に手を突っ込んで
先の鋭い物はないかと探す。これかっと思って握ったのはプラシック製のボールペンだ。
ボールペンであるから本体は柔らかいぷらっしくでもある。それでもその先端は金属である。
鋭くはなくても硝子麺の一端を金属の先で叩けば罅も入る。
其れを期待して何度か硝子麺を渾身の力を込めてぶつければ亀裂が出来た。
これでもかと腕に力を込めて振り払った一撃がバリンっと音と跳ねて硝子面が割れる。
尤も勢い激しくも力を込め過ぎたのJ.Jの細腕は割れた硝子片で傷がつく。
「何してるの!早くブレーキ引きなさいよっ。此のおでぶ馬鹿っ」
どれだけの怪我をしたかも確認しないまま腕を伸ばし取手鍵を外すと運転席に転がり込む。
「いっ、今のが最後の停車駅だ。此の先は・・・・」
「其れがどうしたって言うのよ。ブレーキよっブレーキ」喉が可憐ばかりにJ.Jは吠える。
「無理だっ。効かないだ。ブレーきが壊れてる。
其れなのにどんどん加速していく。俺は何もしてない」
蒼白に顔を染め真っ直ぐに前を観ながら腹の脂肪と膝をぶるぶるがくがくと震わせる。
最後の駅を通りすぎるとその先視界は開けても暗がりにライトの明かりが線路を照らす。
「ブレーキが効かず。加速だけしていくって。どうゆう事?」吐き出された言葉にJ.Jが聞き返す。
「本当だ。突然列車が加速したと思ったらブレーキが効かなくなったんだ。
さっきまで正常に動いてたんだ。・・・・俺に出来る事はない・・・」
「そんなブレーキが聞かないってどう言うことよっ!
何とかしなさいよっ。責任取りなさいよ。このデブのおでぶっ」
声を張り上げながらも周りの客席側に視線を巡らせると。向こう側は向こう側でパニックだ。
速度が上がる地下鉄列車の社内で掴まれる物を探し右往左往に地獄の絵図模様である。
捕まり棒に必死にすがる大柄な漢の顔は嗚咽にまみれ歪んでる。
ビシっとスーツを決める努め人は体を震わせ手を合わせ神へと祈ってる。
女性が悲鳴を上げつつもガチャガチャと客席に据え付けられた非常ブレーキのボタンを必死に押してる・
「この先に何があるのよ。最終駅の先って何よ」でぶの運転主の腕を掴んで激しく掴んで追い詰める。
「車庫だよ。列車の車庫・・・。つまり線路止めがあるんだ。」
「線路止め・・・・其処まで言ったら線路がなくなるって言うの?」
「そうだ・・・。普通なら側線に入って車庫にいれるのに・・・・。
其れも過ぎた・・・。たった今・・・・。あとは線路止めまでまっすぐだ・・・・ぶつかる」
「車庫にいかずに真っ直ぐ・・・・列車止め?線路の終わり?」
「そうだ・・・列車は列車止めに打つかる。壁に打つかる。・・・・終わりだ」
自分で言葉にしてはじめて運転主は自分の死を覚悟する。
運転手が死を覚悟したのなら同じ部屋に居るJ.Jも死ぬ事になる。
あと数分。あと数秒の命である。
[右に寄って。皆っ。右の壁に寄って!]
暴走する地下鉄の乗客の頭の中で誰かの声が響く。
「右ってどっちだ!進行方向か?その逆かっ」突然の声に恐怖の中でも誰かが反応する。
[進行方向に向かって右!御箸持つ方。女性と子供を優先に椅子に座らせて!後は右の壁に並んで!]
誰かが叫んだ怒鳴り声に頭の中の言葉を発する誰かは冷静で的確な指示を返す。
速度が上がる列車の中で半ばパニックになる乗客の中には響く声に驚くも
赤子を抱え手間取う母を押しのけて逆らい我先にと椅子に尻を押し付ける者もいる。
[其処の努め人っ。子は鎹。母の手は慈愛。貴下だって妻や子がいるでしょっ。
貴方の代わりに妻と子が死んだらかなしいでしょ!席を譲りなさい!]
其れが恥ずかしい行為であると声に諌められると端と我に帰り若い母親の手を取り席を譲り
其れだけでなく床に脚をつけ踏ん張り窓に手をついて母子の前に立つ。
此の後に何が起きるにしろ大惨事になるのは確かだろう。名を知らずも母子の盾となって逝くなら顔向けも出来る。
周りの皆も同じように座席に座る弱きものを護るように立ち姿勢を正す。


















































