injections■

「んっ・・・んんっ・・・んん・・・・んんんっ」
部屋の一人掛けのソファに脚を開き尻を収めるアルシュベルト・ドリュー・ンヌヌの股間の間で音が響く。
確かに独特の声であり籠もる声は一種の喘ぎであり密かに部屋の外からそれを聞いても明らかに
アルシュベルトの猛る漢竿を参拾参と呼ばれる雌型人形が咥えしゃぶり喘ぎ漏らす声音と理解も出来る。
「もっ・・・もっと奥まで・・・咽むんだ。参拾参・・・・」
もどかしさと欲に塗れた命言が堕ちて来る。
「んんっ・・・はぃっ。御館様・・・。御館様の竿・・・喉の奥まで呑み込もますの・・・んんんんぐぅ」
自分の主徒御館様と呼ぶのは異例な事であり他の者に支える人形達がそう呼ぶ事な殆ど無いだろう。
主徒とも御館様とも認め呼ぶアルシュベルトの手が頭の上に乗ると力が籠もる。
参拾参態々と加えられる力に少し抵抗する素振りを魅せてから出来るだけ時間を掛けて漢竿を呑み込んで魅せる。
自分の主徒の好む行為とやり方を参拾参は完全に理解していた。
普段の所作や欲に塗れた奉仕であっても主徒の命言を素直に受け入れない。
それがアルシュベルトの好みである。
「んっ・・・んっ・・・・・んぐ・・・・嗚呼~。んんっ」
恥じらいがあっても漏らす喘ぎが態とらしくあっても部屋を仕切る扉の向うに
聞こえるくらいに大きい方が主徒は好む。

刻は今は昔。巡り数えれば近代の世情であったも流行り昔。
アルシュベルト・ドリュー・ンヌヌが本国・欧州魔女王之御国から持ち込んだ従徒型人形である。
正式にはSelf-supporting・operable・ magic power-activated masterservant doll
自立式稼働式魔導力起動型主従人形。中途半端に長い形式名を持つ人形であるが未だに完成形ではなく
開発途上の実験段階の物である。極めて精巧でもありその外見は美しくも可憐な装丁をしているし
個体や用途によって多類な形の機体個体もあれば簡素な物もある。
特殊な用途や任務に就くために中に雌型の者が多いのは雄型より早く制作が進めれたのが理由でも有る。
外見は美しくも可憐で又に儚ない少女であっても体内の臓等は全て人造物である。
七つの大陸の生存順位の最高位に位置する人主人類の従者として制作され仕える物であるが
所詮、若しくは完全に人造物である。
主徒と記憶した者の命言に完全に仕え準じるが人種人類の胸に宿る所謂に心と言う物は持っていない。
突き詰めてしまえば人種人類と同じ容姿を模した人形である。
外部からの入力に対して膨大なデータから抽出計算した結果を出力して返すだけの器械である。
「んんっ・・・・ぬぐっ・・・御館様・・・んんっ」
ぬぽっぬぽっとすぼずぼと音が部屋に響き鳴り激しく頭が揺すられる。
「嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼・・・」
嫌悪感交じるも竿をしゃぶられ吸い上げられる快楽に逆らえずアルシュベルトは白濁を参拾参の口中に吐き出す。
ごぼごぼと音が鳴り注がれる白濁を竿を咥えたまま受け止め瞳を潤ませる。
「はぁはぁ~~」快楽と欲望と嫌悪感を吐き出すとどざりと椅子の背もたれにアルシュベルトは四肢を沈める。
「御館様の御汁・・・・美味しゅう御座いますの・・・」
アルシュベルトの白濁を突き出した舌の上に貯めながら明瞭な言葉を発するのは人形故だろう。
漢が悦ぶのを知っているとばかりに舌の上で白濁を転がし頂きますと声を発してから
態と見えるように口を大きく開け喉に粘つくとばかりに苦しそうに喉を鳴らし白濁を呑み込む。
「御馳走様でした。御館様。・・・あの・・・出来れば・・・」
何か物欲しそうに瞳を潤ませる参拾参をアルシュベルトは無下に手をひらりとかざして命言を示す。
独特な指を絡めた命言のそれを観ると参拾参の瞳から恥じらいと欲塗れの光が溶けて消え去る。
「では・・・後ほどに。御館様」
能面の如く至極冷徹で無表情に音もなく立ち上がると礼儀としてスカートの裾を持ち上げ一礼すると
何事もなかったと至極当然に拾と人形・参拾参がアルシュベルトの執務室から出ていく。

「うわっ。なんだよっ。急に顔出すなよっ。四拾弐弐っ」
「急にではありません。凡そ弐分と七秒前から個々に居ますわ。御館様。
御姉様の口技に酔いしれ呆けて居た癖に。だらしない顔で御座いましたの。
御姉様のばかり可愛がって私奴もかまって頂きたいですわ。この助平野郎の御館様」
情事の後の嫌悪感と快楽と気だるさに身を任せてると参拾参とは違う従徒人形が目の前に経ってる。
「べっ、別に彼奴だけ可愛がってるわけじゃないぞ。生理現象だからしょうがないんだよ。
漢の性なのっ。漢のっ。それに御前まで手を付けたら身が持たなくなるに決まっている」
普段から主人使徒としての威厳を保つべきと自分を戒めてるつもりであっても
間も悪く欲に奔った後の呆けた顔を弐分以上も観られて居たとなれば気恥ずかしさが止まらない。
アルシュベルトに仕える主従人形は参拾参だけではない。
國の当医局に正式に許可された従徒人形は確かに参拾参。一人である。
そうは言っても他國に忍び潜る諜報員であれば支える人形が参拾参だけでは手が足りない。
人形共を物に例えるのとすれば用途と状況によって道具を変える印象と解られば良いだろう。
正式従徒人形としてアルシュベルトに仕える参拾参の他にも数人程度の順仕する人形をも抱えてる。
「粗茶ですのよ。御茶請けは壱丸堂の苺餡掛け胡麻羊羹ですわ
最近、お腹がぽっちゃりしてきたので。弐切れにしておきましたわ。
私奴って気が効くのですわ。いい子で御座いましょ。」
気を使っているのかかまって貰えないのを怒っているのか、ツンっと鼻を鳴らし四拾弐弐が告げる。
アルシュベルトに仕える参拾は戦闘を始め身の回り些細な諸事もこなすのが仕様でもある。
それ以外の雑用も含め数人の従徒人形が仕え支えるのが他の人形でもある。
与えられる任務に順次するアルシュベルトを表に経って支えるの参拾参であれば
それに必要な性能を確保しているのは当たり前であると同時にその容姿もアルシュベルトの好みにも
合うように造られている。ちょっと悪戯に微笑む位でもアルシュベルトの心臓がざわつく位だ。
趣味趣向のど真ん中にカスタマイズされた容姿と性能を持つ参拾参に比べれば確かに
作戦を実行する為に必要な性能とある程度汎用量産性能を有する四拾弐弐。
常に強さと従順さを保つ参拾参に比べ差異はあっても四拾弐弐も魅力的でも有る。
御姉様と呼ぶ参拾参より若干低く幼い顔立ちであっても事務を担う量産型にしては乳房も大きく尻も大きい。
正式な主徒を持たない四拾弐弐にとっては眼鏡にかなう相手かどうかは別として
仕えるべき主人が側にいるのは嬉しくも安心出来る事でもある。
他の國に忍ぶ立場であっても気になる事と言えば、アルシュベルトははっきりと表には出さずとも
嫌悪はせずとも自分達との接触はあまりきが進まないと言う態度を維持している事だろう。
それでも側にいたいし出来ることなら仕えたいと真摯に思うのも刷り込まれた欲求なのかもしれない。
「それは兎も角・・・。何かあったのか?四拾弐弐」情けないため息を吐き出すもアルシュベルトが問う。
「はいっ。アルシュベルト特級諜報官様。
黄色鼠が孕みました。飼い猫共の狩りも失敗したようです。・・・大惨事ですわ」
「何だと?黄色鼠が孕んだと?飼い猫は何してたんだ?國制警察が失敗したのか?
大変だぞ・・・・厄介だ。被害報告を・・・。参拾参っ」
「はい。御館様。此処に・・・」
部屋の外に待機を命じたはずの従徒人形・参拾参が左側の背後に手を組み立っている。
「状況の確認と報告を・・・魔女か?騎士団か?それとも銀行家か?
クソっ。宗教家か。一番厄介な奴等じゃやないか?
國制警察は何してたんだ?丸め込まれたのか?・・・・・報告しろ。人形共」
ばんっと飾り窓のついた扉を拳で叩き押し入るとそこは作戦室でもある。
惨事が起きたとなれ此の國にとっては一大事である。
詳細は未だしれずと事を起こしたのが宗教家と呼ぶ輩と直ぐに知れたのは執務室から
作戦室を繋ぐ廊下を軍靴を響かせ小走りする間に人形従者・参拾参が最低限であっても
状況を把握しアルシュベルトに支え伝えたのだろう。
彼等が作戦室と呼ぶ場所は國街の一角に構える拠点の地下である。
正確には戦時対応型状況分析作戦室。
その呼称の如くに大小のスクリーンと分析用の無骨な機器が雑多に積み上げられている。
簡素作りの椅子に形の良い尻を軽くのせ人の目では終えぬ程の速さで情報分析型の人形達が
機器を操り次々と状況を把握し分析しアルシュベルトに報告を上げる。

「本日っ。苺猿の月。朝食には必ず辛味納豆の小振り皮包を食べる日。
午後のおやつの弐拾五分前。我が憎むべき怨敵國の帝都にて。
市民を巻き込む大惨事が起きました。運搬中のタンクローリの爆発です」
「なんでそんな事になった?帝都だぞ?街中走って良い代物じゃないだろ?國警察は何してたんだ?」
情報分析人形の目に止まらぬ指の動きを不気味だとは思っても顔には出さずアルシュベルトは怒鳴る。
「冬も近く最低限の供給備蓄の貢献の為に國警察が許可したようです。
もっともいつもの如くに警備はおざなりです。」舗装でに黄色の腕章を括る人形が答える。中級分析官だ。
「それは罠です。寧ろ準備段階です。惨事への布石とも言えます。
國会議事堂とは反対側の帝都市民広場付近に到着後・・・・・帝都外から砲撃されました」
「てっ。帝都の外から砲撃だと?なんでそんな事。態々」
「被害を拡大させる為と推測されますの。御館様・・・・」
指揮卓の天板に手をついて正面を観つめるアルシュベルトの耳に声が届く。
一々心地良い参拾参の声であっても。逆にそんな事もわからないのかと棘を忍ばせる声にも聞こえる。
「より被害を大きくするために態々、市民広場に誘導してから長距離からの砲弾射撃だと?
何を考えているんだ?自国の民だぞ?思想違いと差別の為に個々までするのか?宗教家奴」
怒りと焦燥に喉を絞り声を荒げると。
「弐発目・・・来ます・・・。弐発目・・・・・参・・・弐・・・壱・・・着弾です」
「・・・・・・・」
「帝都外からの砲撃二発目。帝都市民広場に着弾。被害甚大。繰り返します。
砲撃二発目。市民広場に着弾。死傷者多数。死傷者多数。尚、以前状況不明。要確認です」
今度は白い腕章を腕に括る上級分析が冷静であっても怒りが交じる声で報告する。
「一度ならず。弐度までも?どれだけの憎悪を腹に貯めていると言うのだ?
魔女の淑女と連絡はついたか?騎士団の馬鹿は?要請はあるのか?」
余計な程、腕に力を込め前のみりに身を屈めながらもアルシュベルトが怒鳴る。
「魔女の淑女様等は沈黙です。確かあの地区近辺に協会があったかもです。
騎士団の無線は傍受してますが混乱の極みです。彼等も状況を把握してません。
より詳細で確実な状況の把握のため情報収集行動を推薦します」黄色腕章の人形が冷静に声を上げる。
「ふむ。どこもかしこも混乱極め然りか・・・要請があなければ手出しも出来ない。
・・・鼠が孕めば猫の狩りもままならずか・・・・。面倒くさいな。僕の任期に面倒事なんて・・
鶏坊を起動させろ。起こしてやれ。面倒はくじ引きで決めるが良い。
・・・・本国に連絡する。・・・来い。参拾参」
「御意に。御館様・・・」
肩で風切ると言うには少々背も高くないアルシュベルトが身を翻し作戦室を出て行く。
言われなくも常について歩く参拾参が足音を忍ばせそっと背中を追いかけ微笑む。

【千と万との法律に縛られ軈ては腐敗と欺瞞に没落し酒を煽って呆ける其の國】
苺猿の月。朝食には必ず辛味納豆の小振り皮包を食べる日。
そろそろおやつを摘みたくなる小腹がすき始めた頃合いの時間。
先週とも昨日一昨日とも変わらない日常を紡ぐ帝都市民の憩いの公園。
雑多黒頭に人々が思い思いに市民が過ごすその刻。
公園の中央入口につながる交差点道路。
そこに差し掛かる頃合いかと思い國警察で使われる燃料を満載したタンクローリの運転手は
仕事柄緊張しながらハンドルを握っていたが、はたっと何かに気がつく。
突き進むべき道先の信号が未だ直進を許可する青の信号なのに前の車の進みが遅い。
それを気にしたのは大型車を運転するが故の職業病だろう。
自分の運転する大型車の前を塞ぐ数台の車が何故かとのろのろとしか進んでいない。
「んんっ?なんで進まないんだよ?」髭を蓄える口から疑問と文句を漏らすと信号は黄色になり
あっという間に赤と代わり前の車も自分自身もブレーキペダルを強く踏む。
誰かにとっては好機であり絶妙なタイミングだった。
タンクローリの運転手と日常の生活を営む人々にとっては最悪で惨事でしかなかった。
髭を蓄える運転手が何の気もなく正面から線を上に向ける。ある意、殺気だったのかも知れない。
最も高い運転台に乗ってもいれば窓枠に視界は声援される。
それでも何かの点が視界に入る。それはあっという間にとみるみる大きくなる。
「あっ」っと声を上げた刻には遅い。軍役久しくも肥満になった四肢を運転席から引き出す暇等
到底有るはずもなく運転手の視界に入った点を砲弾の先端と認識出来た瞬間に
遠く帝都の外側から発射された砲弾は信号で止まるタンクローリの胴体部分に直撃した。
一気に熱気と爆発が膨れ上がり髭を蓄えた運転手の四肢は巻き込まれ飛散し塵となる。
彼はこの大惨事の最初の犠牲者で有る。
運転手を呑み込んだ炎と爆発はタンクローリの燃料を餌として更に大きく跳ねて爆発した。
ドンっと空気を揺らし爆発が弾ける。しかも大量の燃料を餌としてるのだ。
交差点の何台もの車を当然に飲み込み周りの建物に弾けてぶつかる。
通りの脇でコーヒーを買う女性は屋台の店主と一緒に炎と爆風に呑まれて藻屑となった。
炎に四肢を焼かれ弾け翔ぶ人々は周りの硬い建物に礫としてぶつかり
中にいる人にぶつかり更に燃え上がる。建物に飛び込む爆風と炎と礫となる人々。
中で逃げ惑う人々を爆風と炎は全てを呑み込み建物自体が燃え上がる。
建物のそとから襲う爆風は壁をぶち壊し崩れおちれば地面に更に地獄が広がり果てる。
一瞬であった爆発と風が通り過ぎても呻く人々が死を逃れようと逃げ惑っても行き場はない。
地獄の光景とばかりに広がる光景。強制的にも映し出される眼の前の視界は正に地獄。
そしてそれだけに収まらず天空を切り裂いて音も聞こえず二度目の砲弾が地獄のそこに堕ちてくる。

其の数分前。
歳はのいかぬ少年が公園わきの道路に経っていた。
どこかのそれでも有名な初等部の学生だろう。つまりは幼年から少年へと成長の頃だろう。
少々に大きめの学生服と背負う鞄が背伸びしてるとも視える。
そして一瞬だった。近くでおきた最初の爆発。そして二度目の爆発と炎は少年を包みふっとばし
噴水の石壁にぶつかり絶命に至る。

死んだはずである。人種人類としての死を迎えたはずである。
千切れとんだ四肢と砕けた骨。人としての形をなしてないはずであったはずでも意外にも少年の姿は損傷が少なかった。
意識がないはずの少年の頭の中に必要以上の情報が強制的に入力される。
【千と万との法律に縛られ軈ては腐敗と欺瞞に没落し酒を煽って呆ける其の國】
五つも七つ有るとも言われる大陸の少し右上の方にある其の國。
此の國の世情は随分と複雑でもある。今は歴史を追わずもとして個々拾数年の事に限れば・・・。
政治的には王政の政治を取りそれ要としてる。つまりは国王と王族が國の全ての政治を司る。
彼等が國警察を所有し。其の親衛隊は王族が所有する私兵に成り下がってもいる。
だがこれは近代的な思惑の賜物であり遥か昔の國の根幹を司るのは魔女協会と言われる宗教協会が根本にある。
王族の思惑と策略に嵌り近年では形骸しつつあり人々は信じても宗教の域にとどまっている。
話題になるのアルシュベルトが嫌う騎士団は烏合の集である。
最初こそ烏合の集であったし何を目的としてるのかもいまいち不明であったとしても刻の中で変化の渦に影響を
受けると才能の有る者が指揮を取り変化する。今では組織化され若者を巻き込んで世情にも
一定の影響を及ぼす位には活動の幅を広げてる。残る銀行家とは存在も怪しい輩でもある
つまりは幾つもの勢力の波に時勢も庶民も思想も混在し飲まれている事になる。
尤も此の刻。広場の交差点で狙われ爆発したタンクローリと弐発目の砲弾を放った輩が
上記の輩と誰かやったと言うのも知れず。更には又別の誰かがやったのかも今は知り得るとも言えずである。

【了っ。三世代偵察潜伏少年型従徒人形・亜飛夢ⅳノ其の弐号覚醒。直ちに任務を開始しまっす】
絶命を迎えたはずの四肢に力が宿る。粉砕し千切れたはずの四肢もちゃんと復活してる。
なぜそうなったのかと自分で解らずも疑問もわかない。
頭に浮かぶ男性にも女性にも取れる寧ろ中性的な声に心地良さを感じても使命感をも感じる。
黒焦げになった服と煤の付いた肌でも其の四肢は無事である。
少年・亜飛夢は一瞬にあたりを見渡し状況を確認し助けを求める人々に駆けより奔る。

【帝都広場・・右側噴水付近。綺麗なお姉さん負傷度・参ノ五点。
デート相手にしてはださいオジサン・負傷度・四点弐。要救助優先度平均四級。
至急緊急搬送車の送迎を望む。宜しく】
「大丈夫。お姉さん。脚痛い?直ぐに救急車来るから耐えてね。
ほら。オジサン。痛がってないで。お姉さん支えて上げて。漢でしょ。怪我なんて根性で我慢するの!」
本来は恋人を待つ間に隙を突かれてナンパしていた男女に少年・亜飛夢が駆け寄り声を掛ける。
肩を支え楽な姿勢を取らせるとナンパ狙いの漢の腕を引っ張り女性の四肢を支えさせる。
罵倒に見えても本人は鼓舞のつもりだろう。
「坊主。俺の方が怪我酷いんだが・・・・」
「根性出しなさいよ。漢でしょ。腹突き出してナンパするくらい元気って事でしょ。ほら、水飲んで」
背中に背負った鞄の歪んだ蓋を弾いて水筒を取り出し男性に放り投げる。
勢い欲投げられた水筒を痛む手で受け取るが縁も行きずりでも礼儀を律する輩なのだろう。
虚ろに呻く女性に先に飲ませてもやる。
「大丈夫?直ぐに来るから頑張って・・・」取り敢えずの処置を施すと少年・亜飛夢は立ち上がる。
「小僧っ。俺等は良い。この女性は俺が面倒観る。もっとひどい人の面倒を観てくれ。
緊急バックはあの店にある。探して持っていけ。それからこれも・・・」
自分も結構酷い怪我であるのも耐えるのは漢の意地だろう。
ダサいグレーのジャケットのポケットからカードを壱枚取り出すと亜飛夢投げつけてくる。
「行け。小僧。一人でも多く救ってくれ・・・」意地と見えを張って漢が笑う。
「ぼっ、坊や・・・有難う。・・・・名前は?」息も絶え絶えと顔色悪くも女性が声を絞り出す。
「亜飛夢・・・。欧州魔女王之御国の亜飛夢。生き延びて二人共」
問いかけられ言い捨て終わる頃には脱兎の如くと亜飛夢が奔り去っている。
「亜飛夢君・・・。不思議な子」
「有無。欧州魔女王之御国の亜飛夢・・・・。変な奴と言うか変わったやつだな」
年甲斐もなく自分の好みにピッタリの女性と出会い声を掛けたは良いが惨事に見舞われたる。
運が悪くも出会いの中で支える女性と縁を交わした少年。
少年が発した國の名前は珍妙であった。自分の國と欧州魔女王之御国は其の仲は悪い。
互いに貿易の相手であっても火種はいつも大きくも多くもでもあり争う関係でもある。
それ故に其の國の少年が自分達を助けるのは気後れもある。
どこか胸の中に棘刺さるようにも感じてしまう。・・・それでも善意もあるのだろう。

彼の漢と女性が高いに顔を見合わせ訝しげに思うのも理解出来た。
少年・亜飛夢。奔り出した其の姿は普通の目には異常な程に疾い。
疾走する亜飛夢は爆風で壊れかけても辛うじて道を塞ぐ店の扉を脚で蹴飛ばすと中に飛び込む。
店内を一瞥し生きているか若しくは瀕死の人達が居ないのを確認しつつも壁際に据え付けられている
緊急用バックを探し取り上げる。次自分が抱える鞄には店から水のボトルを取って詰めもする。
あたりは確かに悲惨である。傷つき千切れ翔んだ手と脚と内臓。床も壁も煤と血しぶきが惨劇を示す。
【先ほどの漢女と女性の処置は終了。これより広場の右側通りの確認に向かいます。
尚、付近の建物から救護用具を獲得。尚。國警察官の緊急コードを習得。転送するの使用して下さい。
それから生存者の有無に付いては恐らく少ないかと・・・・・殆ど・・・以上宜しく】
亜飛夢は中間報告を本部に飛ばす。
次の場所に奔る亜飛夢は要救護者を見つけ疾走しながら駆け寄り声を掛け必要であれば
救護品を渡し励ましもする。

「三世代偵察潜伏少年型従徒人形・亜飛夢ⅳノ其の弐号・無事に覚醒。
同時に活動開始及び入電。現場の視界映像入ります。リアルタイムです」
黄色腕章の分析担当が指を奔らせると正面のモニターに画像が浮かび上がる。
「想像したより酷いな。國の救護隊の状況はどうなってるんだ?」アルシュベルトが怒鳴る。
「第一報を受けて出動を開始しましたが・・・・。思ったよりも動きが遅いです。
信号が未だ生きてるのと影響の少ない現場での混乱が整理されてないのが原因です」
分析担当が冷静に報告を返す。
「介入は可能か?面倒くさいが人々の命にはかえられないぞ。
協会の魔女達には連絡が就くのか?騎士団は・・・?」指揮卓に戻るアルシュベルトがまた怒鳴る。
「亜飛夢ⅳノ其の弐号が國警察のIDを入手しました。緊急コードの記載があります。
直接介入が可能です。非公式ですが危機管理センターへの介入が可能です」
「危機管理センターとは大げさだな。そして後始末が面倒くさそうだ。
所詮は他国の惨事でしかないしな・・・・・。否っ。介入しろ。
第弐管理帯での強制介入だ。実行しろ」未だ若い諜報員だとしても威厳は守るべきでもある。
「了っ。第弐管理帯での強制介入を危機管理センターに行います。
偽装の為、任意の人間の素性を利用します。・・・・参・・弐・・・壱・・・介入開始」
赤い腕章を付けた分析官が冷静にもある程度緊張しながらもキーボードを叩きコマンドを入力する。


「駄目だっ。全く進まないぞ。何やってるだ?」
「無理です。爆発が起こったのはわかってはいても前に進めないですよ?
パニックになった連中が車置き去りにしたまま逃げ出してるんです。全く進めないです」
惨事の一報を正規の連絡方法ではなくゴシック目当てのNEWから知った救護隊の隊長は
半信半疑でも怒声をあげ隊員に命令を飛ばし救護者を奔らせた物の直ぐに行き詰まる。
普段ではあれば信号が進めを示せば動き出すが、今は無理だ。
広場へと続く通りに何台もの車が放置されて留まってる。壱台弐台なら退けられてもあまりに多すぎる。
しかも前方の信号はずっと赤のままだから車の中には逃げ出さない運転手が焦り文句と罵声を上げている。
「どうしろと言うのだ?本庁からの連絡もないのか?どうしろっと?」
途方に暮れ文句と弱音を吐いた途端に救護車が動き出す。
「しっ。信号が青になった・・・?でも又止まっちまう。・・・っくそ」
なぜか当然に動き出した車列であってもちょっと進んだだけで直ぐにとまってしまう。
確かに前方の信号は青になって運転手が乗る車は進みだしたが其の逆に運転手が置き去りにした車が
列を邪魔して結局に幾らサイレンを鳴らしても前には進めない。
「叔父さん。ちょっと薄毛が気になるお年頃の叔父さん?
何処のルートで現場に行くの?こんな所で時間くってるとおやつの時間過ぎちゃうよ?」
当然にひょっこりと救護車の横窓を開けて幼顔の少年が顔を突っ込んで覗き混んでくる。
「うぉっと。どうした小僧。怪我してるんじゃないか?
中央通りから戦死者通りへ抜けて現場に向かうんだが信号は兎も角、邪魔な車が・・・」
「僕は大丈夫。ボクって!可愛いからね。お姉さん達にもてもてなのだっ。
戦死者通りより三丁目の煙草屋のおばちゃん通り方が早く行けるよ。
道はボクが作る。任せなさいなのだ!。よっこいしょっとっ」
「三丁目の煙草屋のおばちゃん通りが近いのはわかるが邪魔な車が・・・・おいっ!小僧」
冷静に考えれば救護車の窓を外から少年が覗き込むのはやっぱりおかしいのである。
さして驚きがないのは元気の有る少年の声が届くからだろう。
止める暇もなく少年がぴょんと跳んだ。
っと。地面に脚を付けた少年は車道に貯まる放置車に手を掛ける。
「ボクっ!って可愛い!そして強いのだ!・・・フンっ」
掛け声一閃。
どう観ても細い四肢とつパッタ腕が車のボンネットを押し出すといとも簡単に動き出す。
「どりゃ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ」
圧された車は車重と言う重さも地面との摩擦さえも失ったかのようにすべって動き出す。
「おっ・・・・オイ。坊主・・・。げっ、元気だな。どっからそんな力湧いてくるんだ?」
一歩。又一歩と地面を踏んで前に進む度にガンガンと他の車を巻き込み道路に空間が空いていく。
「朝御飯は納豆と鮭と味噌汁なんだぞ。よわっちいシリアルじゃ力は出ないのだ!」
窓の向うから元気な声が帰ると勢いを付けて運転者がアクセルを踏む。
ガンガンと邪魔な車を弾いて進むと以外に早くも道が開く。
その間をアクセルを踏んで救護車が進む。一人でも二人でも多くと救う為に救護隊が奔り回って行く。
「俺も明日から朝食は納豆と鮭と味噌汁にする。嫁に土下座して頼み込むぞ!」
救護車内の全員が心に固く誓うのである。

【ぴぽ~~ん。ぴんぽ~~ん
本日の業務。ご苦労さまでぇ~~~す。午後のおやつの時間でぇ~~す。
本日のお茶は本国取り寄せの壱丸堂の苺餡掛け胡麻羊羹。一人参切れでっす
御茶受けは茶茶丸本舗の梅昆布蜂蜜お茶ですの。お召し上がり下さいませですの。ぴんぽ~~ん】
惨事であっても嬉し恥ずかし乙女の年頃が多い人形達であっても然り。おやつの時間は大事である。
それでも緊急業務をこなす現場と鳴れば手を止めてという無いだろう。
他の人形達よりは本の少しだけ幼い顔立ちの人形が大きめな盆に菓子と湯呑みを乗せ
業務をこなす人形達の机列の合間をわたわたと歩いていく。
彼女が近場に来るとさっと一瞬電光石火の如くに手を動かし湯呑みと菓子の乗る盆を受け取る。
真剣な眼差しで作業画面を覗き必要あれば声に出し指示を発しながら隙を観て
羊羹と御茶を楽しみ人形達は頬張っている。
「坊やの癖にそこそこやれてるじゃないか?
子供の割にあれだけ動けるとはおおわなかったな・・・あっ・・・それボクのだぞ!参拾参っ」
「御館様はお腹がぽっこりですの。私奴が手伝って上げますの」
「あっ。待てっ。こらっ。僕のおやつなんだぞ!ぽっこりじゃないぞ!可愛いトレードマークなのだっ。
よこせってば。僕の羊羹。取るなっ。羊羹好物なんだぞ。知ってるだろ!あん!僕の羊羹様っ」

天鼠 蛭姫ノ壱

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