【女装男児】女装家且来素子闊歩歩いて候:其の十九

「初めまして。
この御国から大陸と海を越えた日がしの倭之御國から参りました豚脚五郎と申します。
言語研修員とやって参りました。よろしくお願いします」
黒地の布に七色の文様が浮かぶ少々派手なヒジャブで髪の毛を隠し覆った女性が
ピムヌ・セシールの前に異国の挨拶で有ろう仕草で頭を下げる。
「こちらこそ。よろしく」
ピムヌは個の國の者では発音し難いであろう五郎という女性が差し出した手を無視する。
初めて会う異国の人に失礼だとは思うがそのままくるりと背を向けてスタスタと自分のオフィスに戻る。
五郎と言う女性がそれ以上追いかけて来ないのが幸いだった。
叙利亜因州共和國人権保護局。
独裁宗教国家において何を今更と言うのが当然の如くに人権保護局とは殆ど意味の成さない国家機関である。
第一人権保護課主任の肩書を持つピムヌ・セシールの仕事は本来成すべき国民の人権問題の解決ではなく
人権保護局の予算確保の為に宗教財閥や経済有力者の面々に頭を下げて寄付をお願いする事にある。
時に国家総統を崇拝し指示する保守派と呼ばれる面々の元にも赴く事も多々とある。
どちらにしても双方から当然にと見返りを求められる。
特にピムヌが未婚前の女性となれば尚更である。
やんわりと受け流し殆ど断るが時にはランチに付き合ったりパーティに随伴摺る事もあるが
其の度に愛人に成らないかとお決まりの誘いを押し付けられるも又何時もの事である。
親に言わせれば其れは決して悪い事ではないかも知れないがその前に早く結婚しろとも説教される始末でもある。
ピムヌだっていい人が居れば勿論そうしたいと思ってるし今だって彼氏と認める漢だって居る。
もっとも仕事が互いに忙しくゆっくりと会える時間は無く成っても来ていた。

「ピムヌさん。今日の宗教保守派のパーティ。私も御一緒して観たいのですが構いませんか?」
異国情緒のが抜けない訛であの五郎と言う女性が人権保護局を出る廊下で声を掛けて来た。
「構わないけど・・・。大変よ。何しろ保守派の会合だし。
何より貴方みたいな女性が言ったら漢共の餌食に成るだけよ」
「大丈夫です。漢の扱いは成れてますから」許可を得たとばかりに五郎は嬉しそうに跳ねた。
景色流れる車窓の向こう側を何となく見つめる異国女性の五郎。
その顔姿をピムヌは気づかれないようにと十分すごるほど注意して盗み観る。
(なんて綺麗なんだろう。しっとりとした白い肌。触ってみたい)
素直な感想がピムヌの心の中に漏れて響く。
最初にその姿と観た時からピムヌは五郎に密かに想いをはせていた。
自分が女性に惹かれる事などないと思っていたし其れは個の國では御法度事である。
男性同士女性同士でも同等に大罪とされ表沙汰にでも成れば宗教裁判と成る。
そして其れは大抵の場合は形式だけの物であり後は公開鞭打ちの刑となる。
男性の場合は未だ其れも良いだろう。上半身を剥かれても髪はいつも出してるし
裸と言っても大した事はない。女性の場合は違ってくる。
いつもはヒシャブで隠してる髪をむき出しにされ服を剥ぎ取られば乳房も晒される。
夫意外の多数の民衆の肌を晒して背を鞭で打たれるのは傷を負うよりも羞恥に塗れる。
心に一生の傷とトラウマを刻まれる様な物である。
だからこそ初めて五郎に会った時に瞬時に引かれ一目惚れと言う言葉の意味を体感したピムヌは
五郎に対して態々と冷たい態度を貫いて居るのである。

案の定。最初こそ緊張しおどおどとパーティ会場の隅で立ち尽くしていた五郎で有るが
成れて来たと言うか寧ろ最初からその姿に興味を持って手ぐすねを引いて待っていた漢達が
ピムヌと五郎の周りに寄ってくる。
「ピムヌ・セシール殿。今日も御綺麗ですな。
果て。そちらの肌の白い異国の御方はどちら様でしょう。是非紹介を・・・」
「日がしの倭之御國から参りました豚脚五郎と申します。
言語研修という形で人権保護局ピムヌ・セシールさんのお手伝いをさせて頂ております
どうぞ。よしなに・・・」
異国情緒の礼儀を通し頭を下げてからすっと手の甲を相手の前に差し出し挨拶を済ます。
実に美しくもしとやかな仕草にピムヌも相手も惚れ惚れと目を細めてしまう。
この國の漢達は手が早い。男尊女卑が当たり前であるが故にちょっと強めに
言い寄れば黙って女は従うと皆が知っている。
そこに集う者達も少なからずも権力を持つ者が集うとならば尚更に。
然し。あまり愛想の良くないピムヌと違い漢達の輪の中にすんなりと溶け込んで行く五郎。
その姿を羨ましくも又に想い人の笑顔を遠目でも観てられるのも嬉しいかと感じつつも
少し離れた所で休んで居ると声がかかる。
「ちょっと良いかね。ピムヌ・セシールさん。連れの五郎さんの事なんだが・・・」
以前何度か寄付をお願いしに頭を下げ足繁く通ったが結局は1枚の小切手をも切ってくれなかった
ケチな漢が少々にばつも悪そうに近寄ってくる。それなりに寄って吐く息も酒臭い。
「なんで御座いますか・・・?」あからさまに警戒心が募り胸前で自然と腕をも組む。
「いや・・・その・・・。五郎と言う異国の女性の件なのだが。
恥ずかしながらデートを申し込んでみたのだよ。この歳でと思うだろうし妻も居る身ではあるが
それでもあれほどの美人であればこそ放って置くのはもったいない。
いざと声を掛けてみたのだが。首を立てには振って貰えなかった。
五郎さんが言うのは異国の仕来りが有るらしい。儂らの國の常識が全く通じないのだ。
色々聴くと倭之御國では漢の甲斐性と言うのをきちんと提示しないと行けないらしい。
つまりだ・・・。漢の力と言うか甲斐性と言うか何か目に見える物を形に摺る必要があるらしいのだ。
それを貢ぐと言うそうだ。我が国では女にか買い揃えてやると言うのは契を結んでからの事となるが
倭之御國では違うらしい。なるほど。國が違えば仕来りが違って当たり前でもある。
それなら漢の甲斐性を魅せれば良いのだがそれも堂々と人前で誇示するのも仕来り外れとなると聞いたのだ。
そこでだ。ピムヌ・セシールさん。・・・これを受け取ってくれないか。
儂なりの貢というか甲斐性を示したと彼女に伝えてくれないだろうか?よろしく頼む」
長々とも五郎が語った貢と言う仕来りを説明すると漢はこっそりと封筒をピムヌに握らせる。
しかもそれまでふんぞりかえって下げた事のない頭をペコリと下げて去っていく。
果てにそれは何を意味するのだろうかと思いこっそり壁に向かい封筒の中をそろりと観れば
一枚の小切手であり人権保護局第一人権保護課宛であり結構大きな額が刻んである。
「あらまぁ~~~。これはは中々の・・・」
小切手に刻まれた数字を見度確認してもやっぱり驚くも何か悪い事をしてる様な気分にも成るが
ピムヌとしてはすごく助かる。とりあえずそそくさと封筒をバックの奥にしまうと其の背に声が掛かる。
「あの。ピムヌ・セシールさんですよね。人権保護局の。えっと。異国の女性の事でちょっと。御話が」
ドキリと背を凍らせるが何とか誤魔化し振り向くと今度は若い財閥の御曹司が立っている。
その御曹司も先程の漢と同じ事を最初から繰り返すとナプキンに直接下手な字で金額が書いてある。
おそらくは小切手を持ち合わせてなかったのだろう。
五郎がデートしてくれるならこれくらいの金額をはらうと言う事だろう。
ピムヌはちらりとバーカウンターで漢達を談笑している五郎を見つめてから漢に告げる。
「私には五郎さんが言う倭之御國の仕来りは良くわかりませんの。
声大きくと魅せる物ではないのでしょうが彼女に取り次ぐ義理もありませんし
ナプキンに書かれた数字に何の意味があるのでしょう?
預言者様の似顔が微笑んでもお腹は膨らまないと思いますよ」
要するに小切手でもないし御曹司がよこしたナプキンは絵に書いた餅でしかないと
ピムヌはきっぱりと言い捨てる。
それでも個の國で漢の顔を潰すのは怖いと知るピムは黙りナプキンを弐枚におってバックにしまう。
若い御曹司が多少がっくりと肩を落すも歩き去ると同時にグラスを二つ握って五郎が寄って来る。
「ちょっと。五郎さん。何のつもり?小切手貰っちゃったわよ。あとナプキンも」
「私の御国の仕来りです。ちょっと誇張してますけど。
こうでもしないと漢がうるさいじゃないですか。それでどうですか?」
「貴方ねぇ。個の國ので漢に恥かかせると後が怖いわよ。
えっとね。最初の御方は。小切手ね。結構な額なのよ。お偉いさんだもの。
こっちは金額はともかくナプキンに手書きよ。
困るわ。貴方に取り次ぐ義理はないのよ。私には」嫉妬混じりの声で強めに文句をピムヌが告げる。
「それは確かにそうですね。押し付けちゃってごめんなさい。ピムヌさん
それでも小切手のは方は宛名もきちんと入ってるし。課のコピー機のトナー代位には成るのでは?」
「それはそうだけど・・・。オジサンよ。オジサン。確かに良い金額だけど」
「くすっ。私そんなに安い女では御座いませんよ。
まぁこれで終いならちょっとつまらないですけど。もう少ししたら帰りましょうか」
本当につまらないだろう。五郎は絵に書いた餅でしかないナプキンをピムヌの手から抜き取ると
側を歩く給仕の盆の上にさらりと乗せ代わりに又グラスを二つ取るとピムヌにお替りを渡す。

意気揚々とも行かずとも異国の女性とデート出来ると思い心踊る御曹司は
運も悪く五郎がナプキンを給仕の盆上に置いて捨てたのを観てはいなかった。
だが然し。それ意外の者は眼光鋭くそれを見逃さない。
最初にピムヌに近づいた漢が渡したのは恐らくは小切手であろう。
其の次の若造が渡したナプキンは五郎自身が投げ捨てる。
それは明確な条件を示していた。あからさまと言わずとも五郎に振り向いて貰うには
漢のを甲斐性を明確に示す必要がある。其れには何が一番良いかと言うのは
決して当人は言わない物の。今日この会場には仕事がらみで来ているし
上司としてのピムヌも同席している。その彼女がその日一番欲して居る物が何であれ
それを適格に示す事だ出来なければ五郎は愛想笑いを投げつけて来るだけだろう。
何しろ個の國の女と違い五郎は媚を売らず安売りもしない。
当人に直接渡そうとしても嫌悪と怒りが燃える瞳で睨まれるし
かと言って同伴者のピムヌも牙城も堅い。
さてどうした物かと悩む輩が談笑を切り上げトイレにでも姿を消した五郎の隙きを突いて
気疲れでガックリと肩を落とすピムヌに話しかける。
それも又嫌そうな顔をするピムヌに渡された封筒は弐通である。
片方は人権保護局宛の小切手であり。残りの小切手の宛先はピシヌであった。
さすがに最初の一通と比べ金額は少ない物の個人で貰うのは憚れる位でもある。
当然に漢とピムヌの間で少し押し問答が繰り返されるが漢に強く言われるとピムヌは受け取る事にする。
自分宛の小切手をバックにしまい込みもう一通をひらひらと振りながら戻ってきた五郎に渡す。
それを観ると云々と頷きピムヌが封筒を渡した漢を指で小さく示すと五郎がその先を追いかけ
漢の方へ歩きだす。其の腕をそっと握ると二人は見つめ合いまるでずっと昔からの友人で有るかの様に
五郎は華やかにも楽しげにも漢に笑顔を向ける。
やれやれ随分と現金であればこそそれもまた異国の男女色事仕来り成れば
今宵の相手は決まったのかと一安心も嫉妬も交じるピシヌの前に給仕が一人歩み寄って来る。
段々と漢達の手段は狡猾になってくる。給仕はきちんとピムヌに礼をした後に
又弐通の封筒を渡す。これならピムヌが断る事は出来ないし押し問答もない。
三回目に成れば小切手のチェックも手早くも成る。先程よりも金額が大きいと成れば
壁際から離れ親しげに談笑する五郎に近づき貴方宛だと携帯を突き出し廊下へと連れ出し
給仕が渡してくれた小切手を見せ二人で金額をチェックする。
そろそろ記入された金額が課のコピートナー代を遥かに又当然の如く上回るって来たねと
廊下で顔を云々と見合わせる二人の側を今度も又給仕と従者が取り囲む。
さすがに不味いなと思うピムヌは受け取りを拒否しようと提案するが
それも又非礼に当たると五郎は受け入れず。すべてを受けって丁寧に礼を言う。
「あんな事して大丈夫なの?個の國の漢はしつこいし皆傲慢よ。判ってる?」
「安心してくださいな。皆。物珍しさに遊んでるだけですから。
それに力在る者に尻尾を振るのが個の國の漢ですから。ぷぷ」
意味有りげに五郎はエレベーターの扉にするりと体を滑らりこませる。
「ちょっと。貴方。このまま帰る気?どう云う神経してるの?」
慌ててピムヌもエレベータに乗り込む。半分は五郎がその腕を掴んで無理に引き込んだのも在る。

その日一番にと漢の甲斐性を魅せた者にと告げた五郎に群がった漢達は誰も五郎の眼鏡には叶わなかった。
勿論。漢達が魅せた甲斐性がそれなりの物であったのは確かで有ってもやはり五郎が相手を摺るには
少々と格下であったと言うだけの事である。
「なるほどね。これほどの待遇を受けているなら。トナー代って言うのもわかるわ」
エレベーターからロビーに降りたピムヌは正に成るほどと実感する。
扉が開き数歩在るき出す其の前に二人。五郎と並ぶピムヌの左右に二人。後方には三人と。
それぞれタイプの違う護衛がすらりと寄り添う。
若し攻撃を受ける事を想定して前面には生きた盾となる屈強な漢。
左右には細身では有るが疾さを売りに摺る男女が並び次への移動を迅速に誘導する。
後方の三人は守りもさることながら攻撃に転じる事も出来る武器を携帯する。
エントランスから出れば更に護衛が列を作る。
乗り込む車はリムジンで有るが高性能は当然。防弾防爆にも対応する。
もはやコンボイと言うのが正しい車列には小型装甲車・逃走用なのか五郎の趣味なのか
高性能のスポーツカーが二台リムジンを挟んで奔る。
後方も武装したSRVとバンが車線を埋める。
五郎と同じ肌をした熊の如きの漢が悠長な個の國の言葉で
今日受け取った小切手は当方で預かり換金して振り込んで置きます。
ピムヌ様宛の物は御自分で処理して頂いて構いませんと告げ。それから
「アーカム氏が声を聞かせろと催促してるぞ?五郎」と携帯を突き出す。
「えぇ~~~。またぁ~~~。心配しなくてもなびかないのにぃ~~~
甘えっ子なんだから~~~。・・・爸爸。五郎よ。云々。大丈夫だってばぁ~~~。
格下相手に心配いらないって。ええ?何・・駄目よ。同僚が隣に居るの。
えっ。言わないと小遣い減らす?意地悪なのね。爸爸。
しょうが無いわね。大好きよ。爸爸。ちゅっ」甘ったるい声で電話の相手に投げキッスを五郎は投げる。
「ア・・・アーカム氏ってあの・・・アーカム氏?」
思わず声を上げたピムヌを熊の如き漢が分厚い唇の前で指を立てて黙する。
重鎮アーカム氏の名前が出て来た事も驚いたが携帯を投げて返した五郎の其の表情にも又驚く。
電話で交わす言葉は感情と愛情がこもってても其れが終われば一人黙り
車窓の外をぼんやりと見つめる五郎は今日に群がる漢共もアーカム氏さえも
だたの駒でしかないとで言うように冷めた目で遠くを見つめていた。

「はぁはぁ。気持ちいい。もっと絞って。もっと」
ピムヌは自分の乳房の先端を咥え口中で乳首嬲る漢に強請る。
(最近、上手く言ってるんでしょ?聞いたわよ。素敵な爸爸見つけたって)
最近は良く一緒に昼食を取る五郎がcurryを匙で救いならが悪戯ぽく嗤う。
「あんっ。其れは駄目」漢が両の足首を握り大きく四肢を開かせパックリと
開いた股座に覆いかぶさり一物を差し込んでくる。
五郎があのパーティで受け取った小切手の金額は確かに影響が大きかった。
人権保護局の予算に回され他の部署に先駆けピムヌの課のコピーは新品のカラーコピー機に入れ替えられる。
職員への待遇も良くなりエスプレッソマシンが導入されたかと思うと三時のおやつも出てくる。
五郎への取次係とでもその真似事を担ったピムヌ個人にも其れ成りの金額が振って来たが
後ろめたさもあり其の半分を慈善団体に寄付し残りは貯金に回す。
それから幾度かと二人でパーティに顔を出す度に五郎に群がり其の度にピムヌにも縁が結ばれる。
もっともそれは五郎の悪影響だとピムヌは思うし、今に個の時自分の体を貪る漢も
本当は自分を求めてるのではく、頭の中では異国の淑女を思い浮かべて居るに違いない。
それでもピムヌは受け入れる。五郎だけじゃなく少しは自分の楽しんでも許されるのではないかと
冗談で強請れば三日もしない内に自分のアパートに高級車が納車される。
さすがに其れは目立って困ると文句を言えば高級マンションが買い与えられる。
驚いた物のやはり漢は見返りにピムヌの体を求めて来る。それも又良かった。
頭も薄く禿げ上がった壮年に近いし腹もでてるし背も高くない漢である癖に。
性欲がやたらと強い。奥方も子供も居るくせにピムヌの体を貪りる。
与えられ植え付けられて行く快楽にピムヌは漢の体に溺れて行く。
仕事とプライベート。または其の思想の違いが有ってもそこに踏み込んでこないのも良い。
人権保護局に務めるピムヌは個の國の現状と行く末を憂い所謂改革派に身を奥が
愛人と成る漢は総統を崇拝する保守派。相容れぬ立場で有りがらも互いに求め合っていた。
奇妙ではあり罪悪感がないわけではない。仕事では人権保護の仕事をこなし貧しくも
苦しむ人々の為に働き手を差し伸べてはいても、其の夜には愛人と豪華な食事を楽しみ
愛と言うものが無いとしても体を許し快楽を求める。
この生活が正しいとは言わないがそれでも手放すことも出来ず
それがこの國のあり方なのかもしれないと一人勝手に思いこんでいたりもする。

「えっ?もう一度言ってくれないか?アーカム」
明かりを落とした暗めな部屋でくつろぎ密会する漢が二人。
一人は其の名も國に轟くアーカム・レム・ジルルギ。
もう一人は最近新しい愛人の為に車やマンションを買い与え出費がかさむ漢である。
「あの女。五郎を妻に迎え入れようと思ってる・・・」
普段から無口で必要最低限しか話さないアーカムはその時も短い言葉しか吐かない。
「待て。待て。待て。アーカム。判ってるのか?
あの女は少なくても人権保護局に努める改革派だぞ。
しかも異国の女だ。一度夫婦と千切れば大変な事だぞ。自分の立場を分かって居るのか?
娘さんだっているのだ。遺産の関係だって。夜伽の事だってある。そんなの・・・」
寡黙なアーカムとは対象にピムヌを囲う小太り漢は普段からおしゃべりなくせに狼狽もしてる」
「命を救われたのだ。
あの女がいなければ、儂は彼処で終わっていた。彼女が進む道が儂の居る場所だ。
娘に遺産はちゃんと分けてやる。法にきちんと従ってな。
夜伽の方は心配ない。熱病は思った以上に儂の体を灼いてな・・・。
杖を突いて立つって居るのもやっとなのだ。側にしてほしい。それだけなのだ」
小太りの漢は驚愕する。寡黙故にそれを言葉にしたアーカムは常に本気である。
あの女がどんな女であれ何を求めてこの國に脚を踏みれたかも知れず
大概的に言えば確かに改革派に身を起きながらも半面それ以上にと保守派の所にも顔を出す。
一時的には立て直した体調であれども、いつ又悪くなるかもわからないとすれば
一人娘に遺産も残してやらねば成らないだろう。それも法的に対処すると言う。
つまりアーカムは自分がこの先しなければならない事を最後まで見届け付き合えと言うのだ。
「やれやれ。盟友を裏に返せば悪友と言うが・・・。
真逆本当にこの國の独裁者総帥に喧嘩を売ることになろうとは夢にも信じがたい事である」
薄く剥げた頭を撫で上げ小太りの漢は深くため息をどっと吐き出す。

病も長く付き合えば人の営みの友と個の國にも言い伝えが有るが
其の漢の病を友と呼ぶには少々と趣が違うだろう。
彼の口から齎せられる病の症状を聞けば誰もが最初に欧州でも有名な吸血鬼を連想摺るだろう。
尤もそれはどんなに足掻いても空想や逸話に出てくる人の血を啜る化け物でしかない。
否然し。医学界隈でもあまり症例が少ないから話題に成らないと言うだけで
吸血鬼はいないとしてもそれに近い病を患う人々は極稀にもいる。
陽灼血沸騰症候群と呼ばれる病を患う其の漢中程度の進行度と診断されるが
実際にはもっと酷いのかもしれない。不用意に外で太陽の光を浴びれば肌が爛れ始める。
皮膚が爛れ裂け血管が破れればぶつぶつと血泡が膨れ煮だる。
それこそ火を吹き出すかの勢いで皮膚が爛れて行くし痛みも激しい。
其の彼に取って強い日差しは天敵で有るから外出は極力避ける物のどうしても出かけなければ
成らない時は頭の先から爪先まで完全装備で陽を遮断する。
手袋を忘れる事は消してないし日傘代わりの黒い傘も忘れた事も当然とない。
尤も日が出てる内の殆どは室内に引きこもるのが常でもある。
又に食事も大変である。確かに人であるから他の人と同じ栄養を接種するが
違うのはやはり血を欲すると言う事である。彼が体内で生成する血は所謂血液に含まれる成分がない。
それを補う為に彼は外部から血を取り入れる必要がある。
それは他人には理解できない事であるだろうしこの病癖に適切な治療方法もない。
彼の両親も彼自身もあらゆる治療法を試して観たが結局は体外の外から血液を取り入れるしかなかった。
両親の時代は血液の販売は立派な商売とも言えたから比較的楽であったと言えるが
彼の時代はそれはない。公的な形では中々にと血液を手に入れる事は難しくも成ってきてる。
特に個人ではそうだろう。運も悪い。彼は病を公表せずにもいたし歩んだ道も日陰で有る。
いつの間にか彼も気づかぬ内に夜闇の世界に脚を踏みれいつしか彼を夜血人と呼ぶように成る。

 

 

 

置字

天鼠蛭姫

天鼠蛭姫

テキストのコピーはできません。