The.Mimic

宝箱・・・。
何故か洞窟ダンジョンに置かれる宝の入った箱。
ボスと呼ばれるダンジョンの主を対しても沢山の報酬の中に入ってる事も多い。
まぁでも大抵は洞窟の通路の隅っこにこっそりと静かに置かれて居ることが多い。
何故そうなのかは冒険者に取ってはどうでも良い事だ。
時に空っぽだったり粗品程度の物が入ってるか小遣い程度の金貨が入ってるだけだ。
所謂。ミミックと言うものを除いては・・・。
擬態箱・・・。
化け物共を正確に分類する学者共の受け入りで言えば其れはミミックと言われている。
本来の自分の姿とは別の物に擬態すると言う生物をそうとも呼ぶらしい。
これも又大まかに言えばシェイプシフターの一種らしいが其れもまたどうでも良いのかもしれない
目の前に金目の者が有るには変わりないからだ。
塩の海の中にはミミックオクトパスと言う種類の蛸がいてこいつらは捕食者に擬態もすると聞く。
否然し。ダンジョンの中に置いてあるミミックは少々違う。
まぁ色々と種類も有るだろうが、大抵の場合は周到半端に成長した貪欲な化け物が
餌を求めて宝箱の中に入り込み住処にしたと思えば
これしめしめちょっとした小遣い稼ぎと口元を緩める冒険者が迂闊にミミックに
近づき箱を上げた途端に大口開けて頭と首から上を食いちぎる。
其れがミミックである。

Mimicopenerミミックオープナー
あまり大きな声で自分の職業を名乗るのは気が引ける。
要は箱開け人と言われる事も多い。冒険者を営む輩からすれば屑仕事である。
洞窟に入る冒険者の目当ては金と名声。特にまだ未制覇の洞窟には冒険者共が群がる。
天高く空に伸びる建物型の物もあれば地に潜る本当の洞窟の物もある。
形様々であれど基本的には階層作りになっている事が多いかもしれない。
どのダンジョンにも誰が入ろうとも大抵の冒険者は徒党を組む。
個人個人の出来る事は限られているし得意な技も違う。
前衛・中衛・後衛と別れそれぞれに違いに助け合い洞窟の制覇を目指す。
俺みたいな逸れ者以外は大抵がそうだろう。
決してダンジョンに一人で入ろうとする馬鹿はいないだろう。
俺みたいな奴でもなければ・・・。
四年も前ならば俺だって仲間と一緒に潜っていた。
自分でも結構腕利きの冒険者だと思っていたしいい仲間にも恵まれていたと思う。
只一度。調子に乗って迂闊にミミックの箱をあけてしまうまでは。
本当に馬鹿だった。
その日の稼ぎが思うよりすくなかったのもあるし
容姿に自身のなかった自分は同じ徒党の恋人を他の奴らに横取りされるのが怖くて
いい所魅せようと虚勢をはったのがいけなかった。
小さな宝箱だったしどうせ入っていても小銭だろうと高をくくっていた。
大した金額でなくても今夜の酒代くらいには成るだろうと思ってもいた。
何の準備も躊躇もしないで箱の縁に指を添えてぱかりと開けた途端に
緑色の煙が一斉に吹き出す。
慌てて手で顔を覆うも遅すぎる。
ゲホゲホを咽る俺を皆が笑うが当人はそれどころではない。
肺まで深く入り込んだ毒の煙は肺を焼いただけでなく。
顔の半分の皮膚を溶かして穴を開ける。
直ぐに水筒の水を被り洗流そうとしたが量が足りなかった。
結果的には一命を取り留めた物の顔の半分は火傷で爛れる。
「顔だけが好みだったのに・・・。顔だけが・・・」
暫く休養し久日ぶりにあった恋人が俺の顔を化け物でも見るように言い捨てる。
割と整っては居るかもしれないが美少年とは程遠いと自分は思っていたが
顔の好みだけで一緒にいたのかと思えば当然に別の漢の腕を絡め取り
「さよなら・・・」と言い捨て歩きさる。
愕然とする俺を置いて元恋人と徒党の輩は酒場の向こうへと姿を消して行った。

其れ以来。俺はずっと一人でダンジョンに潜ってる。
当然一人で奥の階層まで潜ることなんてできないから別の方法で稼ぐ。
尤も緑の煙はあの時も今も厄介ではある。
あの煙のお陰で顔の半分は火傷してるから街を歩く時は布で覆い
なるべく地面を向いて一目につかないように歩く。最早猫背は癖だろう。
それから肺も焼かれている。
ゼェゼェと直ぐ息が上がり奔る事もできないし素早く動く所か剣を振る事もできない。
こうなると冒険者家業などまともに出来ないから頭を使う事にする。
どの新米冒険者以外に見向きもしない宝箱を狙う。
当然に十個開けても八個は空っぽだし罠もあればミミックも有る。
普通の箱は大抵空っぽであるし罠が仕掛けて有るやつはそれをかいくぐっても大抵は小銭だ。
それでもミミックはそれなりの金貨や宝を腹の中に溜め込んで居ることも多い。
問題はどうやって罠を掻い潜り中身を弄るかミミックを倒すかである。
それには結構な時間と試行錯誤が必要であり当然他の冒険者から蔑まれる事になる。
「余り物の小銭箱ばかり漁って何が楽しいだろうな・・・あの馬鹿は」
安酒場で一番安い定食に喰らいついている度に聞こえるように陰口を叩かれる。
それでも今日の飯台。明日の宿泊代を稼ぐにはこれしかないのである。

「さて・・・本日六個目の箱だけど。そろそろ来るかな?」
洞窟は生きている・・・。
誰もが知る事であるし、そうと実感する事も多いだろう。本当に不思議でもある。
自分にわかりやすくMimicopenerを例に取ろう。何せ実体験だ。
宝箱は大体ある一定の間隔で通路の角とか隠し部屋とかに置かれている事が多い。
大抵ランダムな感じであるが場数をこなすとパターンもある。
俺くらいになるとこの辺にあるだろうなと思う所には必ずある。
問題はその場所ではなく宝箱の本質その中身だ。
ほとんど大抵の場合は空っぽだったりどうでも良い動物の皮や骨だったり
時たま錆塗れの鍵が出て来る事はあってもやっぱりガラクタだ。
もし銀貨でも入っていたら大喜びして良いだろう。
対して箱の蓋を開けるのはリスクが大きい。
最初の箱が空だったとししょう。当然簡単に蓋も開く。
動物の皮が入ってる宝箱あたりからきな臭く成ってくる。
簡単に蓋があかなかったり腐敗臭のガスが吹き出したりもする。
中身が銀貨の袋なら開けた途端に火弾が吹き出して火傷する事も有る。
俺が顔と肺を焼いた時は金袋がはいっていたからやはり上物とも言えた。
もっとも治療費で金貨はすぐに消えてしまったが
つまりは箱に入っている中身を罠のえげつなさは比例するのだ。
Mimicopenerのように数々の箱を開けていけば行くほど罠の酷さは威力を増していく。

まるで此方の動きを読んでいるようでもあり箱どうし何かの絆でつながって
いうように観えてしまうことがある。
だから準備が必要になる。

 

 

 

 

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天鼠 蛭姫ノ壱

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