怪威居酒屋.呑兵衛荼羅里(仮)


狸馬鹿シ招聘・・・。
繁栄極まる御倭之御國の旧市街にて小料理居酒屋を営む大将で有る。
居酒屋であれば誰かに料理を出して金銭を頂くのであれば当然に手先が起用ではあっても
其の指が太くも丸っこく、更に野太い腕とくればかなり大きな体躯の持ち主と知れる。
確かに一度に三年程前までは御倭之御國の國競いの闘技、戦相撲の土俵を踏んでいた。
自分でもそれ一本で喰っていけると信じていたが運と縁は何処でどうなるかも知れずに結局は
土俵道を降り、趣味が講じる料理に励み苦労はしてもやっと自分の城店を営む生活に毎日を過ごす。
「さて、今日も仕込みは終わったし、そろそろ店も開けなければならぬな」
自分の城店と言ってもまだまだ繁盛には至らず、追々自分が食べたい物を仕入れる事も多いから
珍しい食材や高い仕入れに成る事も有る。つまりはあまり儲かってもいない。
だからこそ、店の切り盛りは一人寡婦である俗に言えばワンオペとでも言うのだろう。
「ちょっと大降りの雨模様と成ればこそ、今日は客足も細いやもしれん。
こんな時こそ賄は豪勢に行くのも一興であるな。うん。楽しみである。
断じで儂が食いしん坊と言うわけでなまいぞ。せっかくし入りて食材を捨てるのは料理人の恥だからな」
あっても無くても十の人癖と言われるそれの一つ、丸っこい指で鼻の頭をポリポリと掻いては
冷蔵庫の食材をあれこれと頭の中で吟味する。
「へぃっ、いらっしゃいっ」
店の戸口向日の地面は濡れているとしても、其の雨はいつの間にか上がったらしい。
しゃりっと粒砂を踏んで一足の靴が戸口を跨いで来る。
習慣と礼儀で狸馬鹿シは野太くも響く声で来訪の感謝と挨拶の言葉を投げる。
靴を履く持ち主は飛はちょっと戸惑った様子で前に出すべき歩を止める。
困惑すると言うよりも一瞬戸惑うと言う仕草にも観える。
「おっと、これは失礼。儂は元相撲とりでな。土俵に上がれば気合も入る。
今は個々が儂の戦さ場と成るわけだな。先程の雨で今日は客も少ないとも知れる。
店主としては少々淋しいのでな。客は好きな席を選べるのだが
今宵は精一杯饗させてもらおう。不細工の顔ですまないが・・・」
未だ相撲戦の力士癖も抜けず、客商売も慣れないから本人は精一杯笑顔作ってるつもりでも
極太眉がくいっと動いただけでは無愛想面の強面である。
それでも突き出した極太い腕の手の平が上に変えれば席を勧めてると知れる。
その日、初めての客と成れば嬉しさもある。
狸馬鹿シは確かに腕っぷしが強く料理も上手であっても細かい事には気が回らない。
故にこの時に起きてる少々に奇々怪々な事に気つくべきではあったろう。
来店して客は女性である。
だが然し、店の戸口を跨いだ靴は少し変わっている。
一見すれば皆が知るようにつま先も踵も真っ平らの地面を踏むのだから靴の中身の平らである。
ところがこの靴は其の内側で踵の方が少し上がっている。
踵側の方が高い角度であり緩やかな坂を描いて低い角度がつま先に至る。
つまりはこの靴を吐けば踵が高くつま先が低く成るからそのままであれば四肢が前に傾く。
もっとも履き成れていれば体の芯を真っ直ぐに保つ事は用意でもある。
少し細めかもしれない太腿は膝下までのコートの裾が覆い隠す。
観たことはないが何処かで観たとも覚えるのは軍服のコートか修道礼服のそれに近い。
軍服のコートで隠れてはいても大きいな尻は形がいいし、舐めるよう視線が登れば
キュッと腰も閉まる。当然の如くたわわに実る乳房は視る者に驚嘆さえ与えるに間違いもない。
おろしてしまえば結構に長い髪を結い上げていれば今更ながらも上品な女性と知れる。
人種の容姿の印象は受け手、視る手の感受性に訴え左右する。
それでも長い髪と揺らし椅子に靭やかな動作で尻を仕草は誰から観ても美しい巣が手に映る。

「雨の日は必然的に客足が堕ちるものでな。
追々、気が緩んでもしまう。品書きはそこに書いて有るのだが
まだ食べたい物がきまってないのならお任せと言うのはいかがだろうか?

「1001100110001111111…..0011000・・・おちゃっらへで・(?)」

「おっと、外の御國の方か・・・
品書きだけではわからないやもしれないな。
ふむ・・やはりお任せの方が・・・}


軍服、若しくは修道服を着込んだ女性は狸馬鹿シの言葉の全部は理解していないのかもしれないが
少しばかり小腹をつ透かし、ふらりと脚を踏みれた風変わりな店の巨漢の店主が促す木板を
真ん中から右へと動かし指ししめし三枚目の板を指してから又真ん中に戻して更に左の二枚を指す。
とにかくも何か分からずとも小腹は空いてるし、木板に描いてある文字は読めなくても
この店のメニューであるのは検討がつく。
それから・・・
「0001・・・おちゃっらへで・・・」
この辺は珍しい程に巨躯の漢の分厚い唇からもれた言葉が気になり口真似で告げてみる。
「勝丼、囃子ライス大盛り、大化け寿司、お子ちゃまライス、瀬戸内海黄金エビのフライ、
蜂蜜餡掛けのすんだ餅心心太裏ごし鰊クリームパフェ・・・・それに大将のお任せででるな。
何処の御國かは知らぬが細っこい四肢でやたらと大食いで有るのは驚くが・・・ふむ」
板前所を挟んでカウンター席に大きな尻を乗せる外ノ國の尚更の美人客。
(蜂蜜餡掛けのすんだ餅心心太裏ごし鰊クリームパフェ・・・って儂の店にあったけ?
でも品書きに描いてあるしな。材料もちゃんと冷蔵庫にもある。だが然し初めてつくるな?)
ボソボソと美人客の注文を頭の中で繰り返し其の作り方を思い出しながら
太くも丸い指でこれも又、丸い倭猪口の杯を起用に包んで卓の上にのそりと置く。
樫木創りの卓に置かれた小さめの卓は倭之御國民が好む倭酒水。
本来の倭米酒は酒度も強く知らずに口にすれば卒倒するほどにも強い。
兵を誇る酒飲のみでも2週に一度の控えるほど強い。
倭米酒のそれは確かに強いがより庶民が気軽に楽しめるようにと炭酸水と混ぜた倭酒水とする。
それでも飲み慣れない者にとっては未だ強いものである。
狸馬鹿シの店然り、仕来りとして出される御通しと小鉢と倭酒水。
今日の御通し小鉢は粗塗こしの葛餡掛け甘豆腐である。
御御通しであるから一口サイズであり、猪口も店からの客に対する小さな挨拶と饗しである。
「ずっ、随分と良い飲みっぷりであるなっ。御御客殿」素直に関心して狸馬鹿シがうぬんと頷く。
目の前の卓にちょこんと乗せられた小鉢と御猪口。
店の饗しの一口料理ではあっても卓の上に有るなら胃袋に収めても文句は言わないだろう。
尤も軍服、若しくは修道服を着込む女性倭之御國特有の饗しも仕来りも知らなかった。
確かに自分が品書きの木板を適当に指さしたが、それも自分の土地の飲食店の食事の仕方とも違う。
だから樫木の卓上に置かれた小さい杯と小鉢も自分が注文した料理のどれかかも知れない。
そして当然に倭酒水の強さと粗塗こしの葛餡掛け甘豆腐の甘さと旨さを知りもしない。
國が違えば作法も違う。それでも人が必要とするのは変わらないし言えば接種の仕方も変わりはしない。
水は杯に入れて呑む。杯の形は違ってもだ。
慣れない仕草であってもそれくらいは出来る。細い指で丸くも小さい杯をつまんで一気に倭酒水を煽る。
口に広がる圓やかで甘美な味と香り、次に来るのは喉を熱く焼く水塊だ。
まるで秋の季節に落ち葉を集めて焼いた松ぼっくりの様である。
「うっぴょっん。・・・・・01010100111111….200」
それは軍服、若しくは修道服を着込む女性に取っては一杯の倭酒水を飲み呑むのは初めて有る。
喉を焼き胃袋へと堕ちる強い刺激と濃厚な味と感覚に驚き思わず
瞳を丸くしわたわたぱたぱたと四肢を揺らし手を降ってしまう。
未だ口に残るう甘みを舌で掬い逃さない様に舐めながらも熱さを我慢できずにパタパタと手を振ってる。
「ふむ。外の御国の方なるなら倭の御酒の旨さも熱さも知らぬと当然であるな。
通しの意味慣れど店のご挨拶でる。倭酒水はうまいが熱く燃える。
元々苦手な者有るから、形だけに口をつけるだけで良いとも言える。
ちょっと啜る位がちょうど良いのだが、兵であるな。だからこその葛餡掛け甘豆腐で有るな」
お得に意地悪をしたわけではないが倭酒水の杯を細指で摘み煽る優雅な姿に思わず見とれたのも事実である。
小さい杯満たす倭酒水は旨いが喉と内蔵を焼く。
それを打ち消すのが粗塗こしの葛餡掛け甘豆腐の甘さと冷たさでもある。
消して普段は魅せない滑稽な女性に引かれながらも太く丸い指で小鉢を突いてやる。
「うぴゃんぽんっ。プナァ~~~・・・・・0001….0001….」
倭の民とは違いはあってもそれと似たような声を上げ慌てて口に呑み込む葛餡掛け甘豆腐。
其の冷たさと甘さが甘豆腐の熱さと喉を焼く焔を優しく溶かす。
「ぷは~~ぬん・・・・10001・・・・010101010」
喉を焼く旨さと熱さ、それを打ち消すも濃厚な味と冷たさに身を震わせる女性。
一杯の酒と一匙の豆腐。対となって初めて味わう倭料理の真髄とも言える。
それまで食べ事もない美味しさに感動する女性の目の前の卓上に最初の料理皿がトンっと置かれる。


勝丼。
割と安価であっても豚肉に卵衣をつけ油でサクサクこんがりと黄金色に揚げ濃いめの垂れを掛けて
頂く食べ物であり、倭之御國にでも庶民的な食べ物では有るが好物と足蹴に店に運ぶ者も多い。
狸馬鹿シ自身も好物の逸品であり料理人としても、これ又得意の料理の一つである。
雨の日でも無ければ狸馬鹿シの店に通う者は学生や社会人でも大柄やヲタクの者も多く
大抵は大食いでもある。狸馬鹿シもそうであるしつまりは勝丼の丼ぶりは他店より一回り大きい。
卓の上に置かれた半円を逆さにしたような器。態々それを覆い隠すように円形の蓋器ものかってる。
この店独特の器なのだろう。器自体も観たことはないがそれよりも中に詰まってる食べ物が気になる。
器と蓋の間にちらりと観える揚げもの衣と染み出る匂いが何とも言えない。
恐る恐ると板前台の向こうでふんぬとばかりに胸前で腕を組んでこちらを睨む店の大将を見つめる。
料理屋の客であるから注文した料理を食べるのは権利でもあるし文句は言われないだろう。
それでも何か許可を貰うように一本眉の大将の顔を怖怖、見つめる。
うんむと言うように胸前で太い腕を組んだまま大将が頷くとこれもまた臆病気味に細指で蓋を摘み取って視る。






































