小餓鬼族英雄譚:A story of an Goburin Lord.弐【聖精霊刻魔主教会編】



今日の神託は猿の御尻に緑の軟膏を擦り込んでお仕置するですのその日の午後のおやつの時間。
東地区聖精霊刻魔主教会の修道院に取っては楽しみな時間ではたしかに合っても元々にパサパサの煎餅に
味がするかしないと舌が悩む位薄い棘葡萄の汁を掛けたものであれは悲しさが先に立つ。
しかもそこそこに小さい煎餅を更に二人の修道女で半分に割って分けるのだから
精々二口で食べきってしまえるから、其れをおやつというのはやっぱり悲しい。
三月前までは煎餅は一人弐枚だったし大きさも今より二周りも大きかった。
全ての魔者を嫌悪し其の排除と全滅を教義と目指し定める聖精霊刻魔主教会であっても
一度財政難に陥れば立て直すのは難しい。結構な大きな街で合ったとしても
周りは貧民区ばかりに囲まれる此の東地区聖精霊刻魔主教会は有力な後援者を見付ける事も難しい
日々の生活を雨水を貯め泥を啜り、何しろその辺の草が一番のごちそうだと口を揃える住民から
お布施をよこせと言っても無理であろう。中央教会からの資金援助は合ったとしても
魔物から住民を守るには教会帰属の騎士団か野盗の集まりの如くの冒険者に依頼するしか他にない。
此の教会が抱える騎士団も冒険者崩れの輩で頼りないし人数も四人ほどである。
組み合いに触れを出して討伐させるには当然の如くぼったくられる。
他に選択の余地も無ければ仕方なくても支払う必要にも迫れ支払えば教会にその身を捧げる修道女達の
生活が紛糾する。都合二十と四人の戦災修道女を養って逝くのもギリギリな財政状況がずっと続いてる。
その日、其の時に運悪く教会の玄関の内側でこっそりオヤツの薄汁煎餅を口に入れ
噛まずに舌上で薄い葡萄の味を舐めまして居る時。
ごんごんごんと割りと強めに扉を叩く打音が聞こえる。何か用事が合って扉を叩く信者の其れとは違い
荒々しくも激しくも今にも誰かが殴り込んで来そうな打音でもある。
修道女は慌てて口の中の薄味葡萄煎餅を歯でバリバリと噛み砕き唾と一緒に無理に胃に落としてから
教会のギシギシと軋む扉取ってを両手で掴んで開ける。少し腰を引いて力を込めないと開かないのでコツが居る。
ぎぃぃぃぃっと歪んだ扉が床に擦れてやっと空いたとたんに金切り声が轟き吠えた
「まっ、魔物です。きゃ~~~~~~~~。化物が教会に!
棒槍っ、棒槍はどこっ。犯される。犯されちゃう。助けてっ。助けてぇ~~~」
日々の密かな楽しみを堪能していた其の修道女は悲鳴ところか金切り声を上げて叫び散らし
勢い余ってベタンと床に尻もちを付いてしまう。それでも当惑収まらずに声を上げる。
「ふ、二つ脚の狼。二つ脚の狼と・・・それと・・・・」
底まで叫ぶと傍と気がついたかと言うように身じろぎたじろぎころんだ勢いで乱れた教義服の隙間から
観てしまった肌を服布で多い、脚を固く閉じで飛び掛かられても揉みしだかれないようにと
固く手で乳房の前で重ねて防御する。
床に転んだ修道女が僅かに開けた扉の隙間に
ごつくもぶっとい手を差し入れのそりと入ってきたのは二つ脚の狼である。
人の腸肉を好んで食べる其の魔物は巨大な四肢に盛り上がった筋肉。
四肢の頭からてっぺんまで黒色の体毛を全身に生やす。魔物の生態系など人種人類は興味がないが
永久の昔に腸肉を喰われるかわりに犯された女が産んだ狼が二本脚で立って歩く様になった魔物である。
勿論、獰猛極まりなく群れを成して人と家畜を襲えば一晩で村の一つも全滅するだろう。
朝になり彼等が素に戻る頃に知らせを受けて到着した討伐隊が見る風景は何時も凄惨を極めている
手脚をもぎ取られ動けなくも抵抗出来なくなった所を爪で腹を引き裂き腸と生殖器を貪る。
後の肉はいらない。美食家ともグルメとも言えるしそこが一番上手いのだろう。
こじ開ける時に有り余る腕力が唸りを上げ蝶番が弾けてしまえな大扉は板屑となって参枚にわれている。
すぐさま教会の中に突入してくるかとも思ったがそれは一瞬だけ遅れる。
それでもドズンと最初の一歩が前に出れば自分の運命を悟って床に転がる修道女が一声喘いで失神した。
カンッカンッカンッカーン。カンッカンッカンッカーン。カンッカンッカンッカーン。
甲高くも耳聞こえの悪い警告鐘が激しくもけたたましく打ち鳴らされわらわらと修道女達が疾走ってくる。
その手には当然、魔物退治に道具となれども随分と見窄らしい物も結構多い。
失神した修道女が口に示した棒槍といっても元々槍ではない。
その辺の武器工房の色にが教会の依頼で拵えた物では有るが十分な代金は払ってもらえないから
ちょっと長いその辺の質の悪い棒の先端を槍に視えるように削っただけの代物である。
詰まりは只の棒である。他にまともな武器は欠いのかと探せば火のついてない松明とか
修道服をこしらえるのに使う裁ちばさみとか食堂のすりこ木とかお玉とか
敵襲魔物襲来と聞いて撃退するべきと部屋を探したが当然武器になる物などなくもしかたなく
寝台の上のシーツを丸めて抱え込んで来た修道女さえも居る。それ二つ脚の狼とどう戦うというのだろうか?
此処が見せ場と知っているのだろう。
二つ脚の狼は腹に空気を貯めて一気に吐き出し咆哮凄まじくも吠えて威嚇する。
「きゃっ。あんなの無理。松明でどうしろって言うのよ。火打石なかったのよ。見つからなかったの」
「私なんて夕飯のしたくしてたから。お玉よ。お玉。誰かすりこ木もってたのよ」
「シーツしかなかったんだけど・・・どうしたら良いのかしら?」
「駄目。犯されちゃう。犯されて孕んじゃう。弐つ脚の狼の子孕んじゃう。
愛して挙げられるかしら。赤ちゃん・・・」
最初は恐怖に慄いても次に起こるで起こるであろう状況が頭に浮かぶと思わず声が上ずってしまう。
正直に指摘すれば、相手は暴力剛腕の植えた弐つ脚の狼である。
彼等が満たそうとするのは食欲であり、満たすべきはやはり食欲であり性欲ではない。
暴力と食欲を満たすのが先であり寧ろ性欲に関しては同族と行う事が圧倒的に多いのである。
若しにその機会とその気になっても力が強すぎて相手の四肢を轢き千切ってしまう。
詰まり学術的には弐つ脚の狼と人種人類の性交は成り立たないのである。
詳しい知識を持たずも知らずであっても、結果先ずに自分達は犯され孕まされると考え思うのは
魔物自体を排除すべき汚物と教える教義であるのか生活の中で神を夫と禁欲を強要される反動なのだろうか?
「お静かになさい・・・。
神聖極まりなくも慎ましく輝くべき聖堂で、愛しき神に仕える修道女たる者が
たかが魔物一匹に何を騒ぐと言うのですか?
・・・・あらん。失礼。一匹と一頭で御座いますわね。あってるかしら?」
凛とした声が轟き歌うと当たりが静まり返る。
「きょ、教母ベロニヤ様。
たっ確かに大きい方は一頭と数え、小さい方は一匹と数えます。ハイ」
私室で警告の警鐘を耳障りに聞いた若くしても東地区聖精霊刻魔主教会の教母の地位に就くベロニヤ。
傍らにそっと控える秘書役の修道女が細腕に抱えこむやたらと分厚い教本の頁を捲り静かに答える。
「コホン。先ず。皆さん。其の武器と言うか日用品をしまいなさい。
とても物騒とは言えませんが顔にでも当たって怪我でもしたら治療費が嵩んでしまいます。
又、おやつの葡萄煎餅が小さくなるのは私奴としてもやるせないので御座います。
さて。恐らくは弐つ脚の狼の主人様。当、東地区聖精霊刻魔主教会に何のご用向でしょうか?」
尊敬すべきも意地悪で傲慢な教母と影であっても。特に最近はおやつの薄味葡萄煎餅を
私室の戸棚の箱の中に溜め込んで居ると噂の高い教母ベロニヤが甲高い声で問いかけてくる。
大半の者は底で始めて魔物が一頭ではない事に気づく。
冷静になって考えてみれば扉を壊して入ってきた魔物は聖堂の中でじっと立っている。
普通なら目の前の床の上に失神し転がる人の腸肉を爪で引き裂い食らって久しい時間が経過している。
其れ以前に本当にちゃんと観ればであるが、弐つ脚の狼の逞しく盛り上がる胸部の上
其の首に鋭い突起の突き出た鉄首輪ががっしりと括られており、そこからジャラリと伸びる鎖は
少々長くもだらりと垂れて床を這いずり、随分と小柄な魔物の筋張った手が握る取ってに繋がっている。
「あれは、小餓鬼族で御座います。ちょっと肌色が違います。
恐らく上位種かと。人の言葉はははぜずともその意味は理解する種であると。
それから。丁寧に礼節を持って対応すべしとも記載が御座います」
魔物図鑑とでも言うのだろうか、それにしても重いのだろう。ベロニヤの秘書官を務める修道女は
なるべく腕に負担がかからないようにと四肢をゆすりながらもハキハキと告げる。
「小餓鬼族に上位種?聞いた事も有りませんわね。
丁寧に礼節を持って対応すべしと言われても。あれは化物魔物の類でございますわよ?
まぁ、其の仕方ありませんわね。
コホン。兎に角、ご要件なら私奴の私室にてお話を聴きましょう。
その前にその危険な魔物をなんとかして下さい。これ以上聖堂を汚されては構いません」
いかにも教会を預かる者として慄然とした態度でベロニヤは言い放つ。
本当に人の言葉とその意味を理解は出来ているらしい。
街中にいれば小餓鬼族所か魔物一頭、一匹も見かけないが今日は別らしい。
言葉を理解する小餓鬼族など居るはずもないのであるが、今日はであった。
しかも図鑑にも乗っているほどであればこれほど確かな事はないがやはり信じられない。
それでも教母ベロニヤの要望に答えるべくと蒼肌濁る小餓鬼族が鼻を鳴らし独特の声を上げると
今度は其れを理解し弐つ脚の狼がドスンと脚を動かす。
鉤爪節くれたつ指を聖堂の隅の置くに弐つ脚の狼が腰をドスンと堕とす。
成れているのか飼い主に逆らうと後が怖いと重々知っているのだろう。素直にも言う事をちゃんと聞く。
修道女達にしてみれば聖堂の隅ではなく、せめて廊下にでもと思うが結構あそこは寒い。
自分のペットを無下に扱うのは嫌いとでも言うのだろう。
弐つ脚の狼が床に腰をおろしくつろいぎ始めると蒼肌濁る小餓鬼族は手に握る鎖を太い石柱に二十に括り付けると
腰鞄からやたら頑丈そうな錠前を取り出ししっかりと鍵をかける。それから弐度鎖が緩んで無い事を確認し
更にもう一度引っ張って安全をも確保する。随分と念入りであるがもしもの事を嫌っての対策である。
それですむのかと思うと反対側の腰に括った革袋から木炭棒を取り出し弐つ脚の狼を括った柱のこっち側に半円を描く。
次に線の向こうにぴょんと飛んで入ると気配を察して弐つ脚の狼がグルルと唸った。
今度にぴょんと線のこっちに脚をまたぐ弐つ脚の狼が興味を失い赤いしたで毛づくろいを始める。
なんとなく事を察するが言葉もないと不安である。何せ魔物相手のことである。
周りの怯えが溶けてないと分かると最近教会に逃げてきたばかりのとても若い修道女の胸に大きめの皮袋を押し付ける。
「ぎゃっん」と喉を鳴らすが意味はわからない。困惑すると袋を開けてみろと仕草で示してくる。
あとは準備が出来たとばかりに教母ベロニヤの方に向いて合図する。
結構に膨らみ重い革袋には色々な物が入ってた。
動物か魔物の干し肉と何か木で作った人の形を模した物。蝋燭と燭台。火打石。野菜の塊
皮包に来るんだ甘い匂いのするお菓子の様なもの。それと羊皮紙が二枚。
恐らくそれが一番大事なのだろう。ごそごとと開いてみると興味深い物が綴ってある。
文字ではない。羊皮紙の上には人の言葉ではく人にも分かるような絵が描いてある。
何せ小餓鬼族が描く絵であるが拙いがよく見ると滑稽でも愛嬌が有る絵柄である。
「えっと、なるほど。これをこうしてこうやって・・・」
あまり余興のなく窮屈な教会では些細なことでも楽しさを醸し出す。
先ず、其の修道女は小餓鬼族が床に擦って書いた線のこっち側の近くまで歩き燭台を置く。
そこに真新しい蝋燭を立てる。火打石がちょっと湿っていたから蝋燭に火が付いたのは参度目だ。
多分、露天で買ったばかりの蝋燭には線が刻んであってそれはあの小餓鬼族が鉤爪で刻んだものだろう。
「えっと火を付けたらお肉を投げる・・・。次の線まで蝋燭が減ったら人形を投げる。
云々。わかったわ。なるほど。線まで蝋燭がへったら次の絵の通りにする。
あの小餓鬼族さん。頭いいのね。私でもわかるわ。寧ろわかりやすいのです」
そう言いながらも二枚目の羊皮紙に目を通す。こっちは弐つ脚の狼の取扱説明書みたいなものであった。
「えっと~~。皆さん。聞いて下さい~~い。注意喚起ですよぉ~~。
エットですね。此の弐つ脚の狼君は雄です。お年は五歳。嬉し恥ずかしのぼく困っちゃうの思春期のど真ん中。
と言っても複雑家庭環境の為に価値観の倒錯が起こちゃって雄同士の恋愛を好む傾向があるらしいです。
弐つ脚の狼の世界にも愛の倒錯とかあるんですね。女性と雌には全く興味がないし肉は好きだけど
寧ろ野菜の方が大好きな草食男子だそうです。つまりは私達の四肢には全く興味がないって事ですね。
男性の小間使の方はお木をつけを。好きになったら猪突猛進まっしぐらなタイプだそうですぅ
大事なのは個々からです。床の線のこっち側が安全圏です。くれぐれも線の向こうに言ってはいけません。
遊んでくれるのかと思ってじゃれてくるそうです。あの爪でじゃれられたら即しですね。ぷぷっ」
拍子抜けといえばそうであるが雄であっても雄好きとはちょっと残念。
若い美男子がゲイだと知れば至極残念とため息が漏れる
「ちょっと。水はどうするの?水飲まないの?指示にはあるの?」
「そう言えば羊皮紙には書いてないですね。上げたほうがいいですかね?」
「当然よ。生き物には必須なのよ。誰か水桶もってきなさいよ」
「ちょっと。押さないで。推しちゃ駄目。線超えちゃうから。犯されるから」
「貴方、何聞いてたの?この子の雄好きよ?貴下の乳房に興味なんか有るはず無いでしょ?」
「ざっ残念だわ。此の教会に居る貴重な雄が雄好きなんて。
でももしかして興味あるかもよ。ちょっと貴方言ってご覧なさいよ。試してよ」
蒼肌濁る小餓鬼族と教母ベロニヤが私室で面会をする間に
聖堂では弐つ脚の狼の昼寝と物珍しさと欲望に身を焦がす葛藤がせめぎ合っている。
「ふむ。確かに所謂普通の小餓鬼族とは随分違うようで御座いますわね。
私奴は東地区聖精霊刻魔主教会の教母を努めます。ベロニヤ・ボンヤードと申します。
貴方様の事はなんとお呼びすれば宜しいでしょうか?」
凛とした声であるがかなりの高音である。耳が大きくも良く聞こえる聞こえすぎる小餓鬼族にとっては
欲にまみれて鳴いて喚く甘え声でなければ我慢するの嫌になるほどに高い声だ。
小餓鬼族特有の口の構造では人の言葉は頭が理解しても喋れない。
元々、最近まで人と話す機会も無かった小餓鬼族であるが己自身の所要で必要に迫られ
身振り手振りで伝わらない部分の補足に絵を使う事を思いつく。
当然に小餓鬼族風情が絵を描くと言うのは難しい他の種族は参本指出し自分でも四本である。
しかも筋が通り結構ごつい上に鉤爪も生まれ付いてくっついてるから細かい仕事は骨が折れる。
それでも小餓鬼族は胸内から適当に小さく刻んだ羊皮紙の束を取り出し覗き観ては重ねずらし
予め書いてある単語を選んで教母に魅せる。
自分で書けない名前などは金貨を払い付き合いのある商人に書いて貰ったりしてる。
「ヒュッテンバロズユクユヌゲロウズピポンヌケンバロウス。・・・様
随分と長いお名前ですわね。全部で一個ですか?長すぎますわね。
略して良いですか?ヒュッテン様とお呼びしても宜しいかしら?」
小餓鬼族におって其の名は特別に長いわけでもないし寧ろ言いやすい方である。
それに名を略されるのは小餓鬼族にとっては侮蔑的な行為でもある。
まぁそれでも人の習慣に習う必要が有るのだろうか。少なくてもこの教会にいる間はヒュッテンと言うことになるのだろう。
仕方なくも蒼肌濁る小餓鬼族・ヒュッテンは仕方なく教母ベロニヤの提案に渋々同意する。
少なくてもヒュッテンは理解して居る。
聖精霊刻魔主教会と言う存在と底に身を寄せる修道女達の境遇と身の上が凄惨な物であり
その一旦に自分自身ではなくても同族共が根強く絡んで居ると言う事を完全に理解している。
ましてや教会の教母ともなれば確固たる意志で復讐を固く誓っているに相違ないだろう。
不格好にも醜悪な面構えは我慢できない。特にあの少し右に曲がった大きな鷲鼻が気持ち悪い。
鋏頬で挟んっでギュッとひねってまっすぐにしてやりたい。かつて受けた所業を思い出したくもないが
それでも妙に右に曲がった蒼肌濁る小餓鬼族・ヒュッテンの鼻の曲がり具合は許せせない。
知らずと自分が付けた俗呼び名を気に入りはしなかったのがぎゃんと鳴らして横を向き
それでも要件が有るからと羊皮紙の束をめくっては唾を付け束ねて突き出してくる
寄りに寄って小餓鬼族の唾がついた羊皮紙を手に取らなければならないとは屈辱にも塗れる。
それでも最初に読んだ束の話にはそれなりに驚きと合点も行く。多分聞き入れても良いだろう。
それは何よりと今度は唾を付けずに手渡してきた束のめくるが、そちらは首を振る。
「最初のお噺はすじが通ります。我が教会としても甘んじて承える範疇で御座います。
否然し、2つ目の方は遺憾ながら極めて個人的な理由からきっぱりとお断りいたします」
突然にぎゃんぎゃんと小餓鬼族ヒュッテンは喚き散らし怒りをぶち撒けて吠えて唸る。
突き返しせば其れを払い床に散らばった小餓鬼族の提案と要望は次の用なものである。
1つ目の噺は結構長々と状況と証拠を並べて書かれていたが筋も通る。
簡素に述べれば、この街の少し離れた場所にある二つの小餓鬼族の集落で巣溢れが起きそうであると言う事である。
小餓鬼族の生態で尤も有名なのは大繁殖であるが、実はその大繁殖よりも規模が小さい物は結構頻繁に起きている。
其れを巣溢れと呼ぶのもま有名であるし、規模は小さくでも人と小餓鬼族の戦に成るのは間違いはない。
近隣の二つの小餓鬼族の巣に最も近いのが此の東地区の教会を含む貧民街である。
当然、其れを内包する此の街自体が戦場に成るのは間違いなくも必須でもあろう。
だが然し、教会を囲む貧民街と中央地区には石壁が守りともなる。当然石壁の向こうには精鋭の守備隊も居る。
もっとも巣溢れが起きて小餓鬼族達が一挙大群と押し寄せたなら彼等は石壁の向こうで迎え撃つに違いない。
この教会も貧民街もそれから壁のこっちがわの住民も一番最初に小餓鬼族の餌に成るだろう。
何故ゆえに同族の繁殖行為を良しとぜず、蒼肌濁る一匹の小餓鬼族が此の街を守ろうと躍起になるのかはわからない。
それでも来年の春が来る前か又どこかの村を小餓鬼族が襲い女を雌と拐かし子を孕ませ食うに困ったった化物共が
さらなるえさと快楽を貪るために此の貧民街を襲うまえに新たな石壁を作り守りを固めなけれならない。
ぎゃぁ~ぎゃ~~と唾と涎を垂らし喚き散らす小餓鬼族はその石壁の建設と新たな守備隊の創設に手を貸そうというのだ。
それが主な要件であり。其れを担う為の補足事項が2つ目の提案である。
厳密に言えば目の前に居る蒼肌濁る小餓鬼族と巣溢れを起こしそうな小餓鬼族共とは種族が違うらしい。
こっちは蒼肌。向こうは緑。手指が四棒であればあっちは三本
風呂好きで綺麗好きであれば、汚泥好きで不衛生。鼻が大き方が美男子で可愛いされるのが小餓鬼族界隈では当たり前で
自分は超イケメンであれば向こうは背も小さいし弐つ脚の狼を扱えないし猪豚に跨るのが精一杯だども
身振り手振りで必死に喚いて教えてくる。この辺には秘書の図鑑にも乗っていなくも、大変に参考なったと彼女は喜ぶ。
確信を付けばこそ、どれだけ差異があると当人が声を上げて唸っても人種人類からみれば只の魔物と言う事である。
しかも人種人類と近隣の土地に巣と街を構えて居るのにも関わらず何十年も戦の鉾を交えている。
消して共存出来ない関係でもある。其の小餓鬼族がある日突然街に現れ同胞の襲撃が近いからと
壁を作り戦い方を教え人を雇い指導し軍隊を作って街を守ると言っても誰が其れを信じよう。
今、今日でさえ教会の教母が顔を合わせて話を聞いてくれている事さえ奇跡と成るべき出来事なのである。
そうは言っても時間もあまりない。一刻も事を進めるためにはお墨付きがいる。
政治を奉る輩に申し出ても捉えられ鷲鼻を引引っこ抜かれるだけでありまともに取り合ってもくれぬだろう。
其れならば少々面倒でもあってもお固くても礼儀を通す教会の方がまだましでも有る。
それならこの貧民街唯一の人々の精神的なより所である東地区聖精霊刻魔主教会のお墨付きがあれば動き安い。
詰まる所、此の小餓鬼族は東地区聖精霊刻魔主教会の聖印をよこせといっているのだ。
それがあれば貧民街の住民とも中央区の役人を含め貴族が文句を言って大手を振って好きな事ができる。
逆にそれがなければ何も出来ず。突き詰めれば遅くても来年の春にはこの街は無惨に轢き血切られた死体を乗せる大地と帰る。
それでも、東地区聖精霊刻魔主教会の教母ベロニヤは極めて個人的な理由としてきっぱりと断る。
助けてやると言ってるのになんで聞き入れないんだとばかりに喚く小餓鬼族を冷たくも侮蔑混じりの声が墜ちて諫める。
「蒼肌濁る小餓鬼族・ヒュッテンバロズユクユヌゲロウズピポンヌケンバロウス様っ
貴方は当、東地区聖精霊刻魔主教会の聖印が何たるかをご存じなのですかっ?
其れを得るための対価がなんであるかご存知なのですか?」その声に侮蔑と軽蔑を屈辱が濁る。
はてさて其れは何と言うようにぎょろりとした目を回し毛髪の無い頭をぽりぽりと鉤爪で欠いて魅せる。
「大体にして聖印くれと手を出せば、はいどうぞとくれると思っていたのですか?
聖印と言うのは正に聖なる印。其れを教会が授ける権利を持つのは教母だけで御座いますの。
つまりは此の教会の教母である私奴が貴方に聖印を授ける事になります」
個々で息を呑んでベロニヤは姿勢を正す。対するヒュッテンは底まではわかったと鷲鼻を立てに揺らす。
「教母が誰かに聖印を差し上げると言う事は・・・・。
教母の私奴がその方を見初め愛を捧げ慈しみその身と心を預け、一生の伴侶と認めると言う事で御座います。
結婚して命を育む。其れこそが聖印なのです
つまりは・・・・私と、けっけっけっ結婚して私を孕ませる事こそ聖なる証なのです
相手が小餓鬼族であればなるべく詳しく述べたとつもりであるがやっぱり良く伝わって無いのだろう。
決して絶対に伴侶と認めるつもりはこれっぽちも全くないがそれでも話が伝わったかと言えばやはり違う。
眼の前の雌がぎゃ~ぎゃ~~と何か喚いているが言葉の意味がわからない。
随分大事であるように大きな乳房を突き出して喚いたのは良いがやっぱりわからない。
「あの・・・教母さま。個々は大事な場面で御座います。
私が補佐させて頂きます。暫しお待ちを・・・」さっきから口を出すと折檻されること間違いなしと感じ
だんまりを決めていた秘書役の修道女が卓の引き出しから羊皮紙を白檀棒を取り出し机の上で何かを描く
書き終わった羊皮紙の絵を覗き込むとちらりと教母ベロニヤに方をにらみ観て自分の鼻を指さして確かめる。
一度はありえないとばかりに口元を歪ませ、更に羊皮紙を覗き込んでは確かめる。
また、ベロニヤの方を見上げて今度はじっくりとその四肢を品定めしてる。
それが終わるとこそこそと秘書役と額をくっつけて羊皮紙に何やら書き込んで密談を始める。
「私の体を視姦した後に密談するとは、何かご不満でも有るのかしら?絶対に結婚なんかしないけど」
「待って下さい。今、確認してます。意外とシャイなお方らしく。ごにょごにょ」
「小餓鬼族の癖にシャイってなんなの?私のどこに不満でもあるかしら?結婚は嫌だけど」
「えっと。結婚の意味はなんとなくわかってくれたみたいです。お子さんは何人がいいですか?」
「はっ?子供は二人くらいがいいかしらね。
あんまり若くもないから育ってるのに体力いるし・・・ちょっ孕まないわよ」
「結婚するのは良いけど夜遊びはできるのか?ですって」
「よっ。嫁がいるのよ。嫁と夜遊びすればいいでしょ?駄目に決まってるでしょ。認めません」
「これだからお硬い教母さんは困ります。まだ若いんだから夜遊びしたいですよねぇ。
夜遊びが駄目なら妾は何人までおkですか?だって」
「若くでも年食っても夜遊びは駄目に決まってるでしょ。
嫁を大事にしなさいよ。私を愛しなさいよ。妾ってなによ。0です。0に決まってるでしょ。此の唐変木」
「ちっ。ケチンボ。
おお。粘りますねぇ~。此の好きもの小餓鬼族め
将来、自分の筋城を持つのが夢です。その時は一緒についてきてくれますか?勿論第一夫人として」
「巣城って何?自分の城に拐かして来た女と籠もるわけ?ハーレム作る気満々じゃん。第一夫人って何よ
結婚して嫁とくっついて孕ませた後、夜遊び出来るはず無いでしょ?嫁と夜遊びしなさい。
妾作る暇あったら嫁を愛でなさいよ。かまいなさいよ。
ハーレム作るなら個々で良いでしょ?美味しそうな乳房いっぱいあるでしょ?
ちがっ。嫁を愛でなさいよ。私を愛しさなさいよ。ちょっと貴方、座りなさい。ゆかに正座しなさい。
其の小餓鬼族根性叩き直してやる。大体ねぇ。正妻を娶るって言うのに持参金所か・・・これも違う。
まず前提として、清らかなお付き合いから初めて互いの信頼と愛情を高めあって・・くどくど・・・」
そもそもに肌の色も違えども小餓鬼族に結婚と言う習慣はない。悪く言えば女と雌は子を孕ませる為の
道具でしかないのだから子を産めなくなった雌はいらないし必要もない。
感情は人種人類と同様に有る物もあれば理解できない物も多い。一重に習慣の違いであろう。
それでもいきなり長い耳を強く引っ張られ床の上に膝を折って座らせられ金切り声で怒鳴り付けられたら
なんとなくでも自分が失礼な事を言ったとかやりすぎだったのだろうと言うことは知れる。
交渉とも考えるべき作戦は見事に失敗であった。
それでも小一時間程説教と言う物をされ、人の雌もあんなに顔を真っ赤して起こる事も有るのだとも知った。
嫌よ嫌よと泣きわめき煩く騒ぐも結局は自分達の所業を受け入れる事が多いが中には激しく拒絶し
自分で舌を噛み切苦しく喘ぐも死を選ぶ雌もいる。教母と言う雌はどうやらその類であるのだろう
それでも少しの慈悲はあるとでも言うのだろう。
「今日はもう遅いし。飼弐つ脚の狼の事もあります。あんなのを夜遅くに連れ出したら中央区の
騎士団がや槍振り回してはしってくるでしょう。今日くらいは宿を恵んであげなさい。
あつ、夕飯は残飯で良いでしょう。近所の蜥蜴猫の餌のあまりでもやっておきなさい」
蜥蜴猫の餌の余りとは家畜同然の扱いに腹も立つが人の善意を無下にするも失礼である。
持参の調味料をどっぷりと混ぜ込んでなんとか喉に通して後は弐つ脚の狼の毛皮にも潜り込んで瞼を閉じた。
神を夫に操と愛を一生捧げたつもりであった。
それと四肢の疼きは別であったとしても自分の口から結婚と言う言葉が出て来るとは思わなかった。
伴侶を持つ等もはや別の世界の向こう側の話である。ましてや其の相手が薄汚くも鼻の曲がった小餓鬼族である。
おまけに結婚しても夜遊びするとか巣城とかってハーレムまで作ると公言している。
滅多く面倒な事に巻き込まれてしまったと思ったが普段の鬱憤を小餓鬼族相手に吐き出したのか随分ゆっくりと深く眠れたのも事実である。
兎に角にも。その日の朝、顔も見るのも嫌だがそのまま放置して奥に行かないと一応教会内を探してみても小餓鬼族の姿は無かった。
まぁ。昨夜の説教にこりて逃げ出したのが正解だろうと靴音をならして執務室に入ると卓の上に昨日観た黒檀棒の羊皮紙が数枚乗っている。
離別の挨拶くらいの礼儀はあるのかと並べて観ても良くわからない絵がのたくっている。
仕方がないから分かる者に聞いてみようと呼び付け鈴をリンリンと鳴らして見るが今日に限って来るのが遅い。
やっとその日の日直が顔を出すが随分と汚れた格好である。
「どうしたの?貴方。其の格好。神に仕えるには清らかで質素な振る舞いを心かけなさいと言っているでしょ?
それから此の手紙もどきの羊皮紙を読み溶けるかしら?幾ら私でも魔物の絵柄は読みにくく」
「えっと、その、あの。清らかなという部分については懺悔したします。
よっ欲に溺れたと言うのも事実で御座います、罰を受けろとおっしゃりますなら歓んで申し受けます。
だ、だからおやつの薄味葡萄煎餅の枚数は減らさないで下さい。お願いします。教母様」
汚れたと言うよりも乱れたと言うべき修道服の裾を直し半ば恐怖におぼれた表情を浮かべ日直の修道女は震えて頭を垂れた。
「懺悔をなさりたいと言うなら受け入れますが。
その前に事情をお話しなさい。此の教会で欲に塗れるとはどういう事なのですか?事によってはお煎餅の枚入数も考えます」
「おっ。お待ち下さい。教母様。お話します。ちゃんと話しますから。
私奴。ごろりん君の飼育担当を小餓鬼族のヒュッテン様から承ったのです。昨日。
あっ。自分で申し出たわけでは有りません。寧ろ私は猫派でして。あんな大きな犬など飼った事もないのですが。
え?ごろりん君って?あの弐つ脚の狼の名前で御座います。呼ぶのに困るとヒュッテン様に聞いたら特に無いと言うので
それも困ると居ましたらこちらで決めて良いというのでみんなで相談しました。投票で。
因みに二位はコロ助で参位がゲイ太郎でした。流石にそれはないなと思いましてやっぱりゴロリン君に落ち着いた次第でして。
えっ。どうでも良い?いやいやそれはいけません。化物だって親に貰った名前があるのに弐つ脚の狼に無いって言うのはおかしいでしょ?
とにかくですね。あのまま線の向こうでうずくまって居るのは可愛そうですし元より運動量が多い犬種なんだそうです。
ですから散歩がさせないといけないんですが。これが結構たいへんでして。ゴロリン君、ああ視えて人見知りなんです。
元々群れで行動する犬種でございますから仲間内での格付けもだいじで御座いまして。
飼い主は兎も角に世話をしてくれる人と言うのを覚えさせないと行けないのです。ああぁ~思い出しただけで・・・
いわないといけませんか?端折っちゃ駄目ですか?だめですよね。はぁ~~。
その匂いで仲間を嗅ぎ分けるのですから・・・。当然其れはお股で御座いまして・・・。
ゴロリン君の鼻の先に脚を開いてしゃがんでですね。参分ほど匂いをかいでもらうんです・・・。
もう、ゴロリン君も漢のですから雌の匂いとかに興味津津で・・・。敏感な所に鼻先を押し付けりこすりつけたりと
そりゃもう。声もででしまいますって・・・。でもお陰で仲良くなってお庭で元気にお散歩させる事ができましたの。きゃはっ」
清楚由々しいくも秩序厳しいはずの教会の庭で魔物の鼻先にお待たを押し付けて匂いを覚えさせる修道女。
なんと破廉恥な事であろうかとベロニヤはわなわなと全身を震わせ身を固くし声を張り上げてしまう。
「不潔・不浄に極まりなくも。
神に仕える東地区聖精霊刻魔主教会の修道院の敷地において
よりによって魔物の雄の鼻先に脚を開いてしゃがみ込み、お、お股の匂いを嗅がせるとは。
淫乱淫猥極まりない行為です。即刻、追放を命じます。出ていきなさい」激昂し怒声と命令が下る。
だが然し。弐つ脚の狼の飼育担当を押し付けされた普段は大人しいはずの修道女は食い下がった。
「そんな教母様。私奴は皆の事を思ってやったのです。
宜しいですか?小餓鬼族のヒュッテン様がお出かけになって今のこの間。
弐つ脚の狼ゴロリン君は一人で留守番なのですよ?只の犬だと思っているのですか?
あれ間は魔物。魔物の狼で御座います。幾ら雄好きの雄と言ってもれっきとした魔物で御座います。
いつ何時気が変わって暴れ出したらどうなると御思いですか?あの大きな四肢を振り回して暴れたらどうなると思うんですか?
棒槍なんかぽっきりです。お玉なんか痛くも痒くもありませんよ?あっという間に教会は血の海ですよ
肉の塊と血で真っ赤にそまります。今日がその日になってもよいのですか?
今。此の場で弐つ脚の狼ゴロリン君をきちんと抑え込めるのはお股の匂いを覚えさせた私が持ってる
犬笛だけで御座います。それでも私を追放しますか?」
慄然と修道女が声を張り上げ恫喝の声をあげ首に括った犬笛を前に突き出して掲げる。
確かに話しだけを聞けば極めて破廉恥であり修道女有るましくもない行為である。
然し此の修道女にとっても災難ではあるのも確かであ或ろう。うら若くのはち切れんばかりの艷の香る四肢を持ちながらも
禁欲の掟に身を縛れる生活の中で満足に慰める事も許されない。降って湧いた事故でもあろう。
そうしなかければ大惨事に見舞われるかもしれないのを己の恥で救ったとなればそれは献身的な行為である。
わなわなと震える手で犬笛を握りながら僭越にも教母ベロニヤに鉄槌の杭を修道女が下す
「わ、私が破廉恥だとか教義を破ったというのなら教母様こそが教義破りの大悪人です。
魔物にプロポーズしたくせに。其れこそ不潔・不浄に極まりない極悪人で御座います」
半泣きでもしっかりとベロニヤに教義破りと突き落とす
「えっ?私がプロポーズ?あの小餓鬼族にプロポーズしたってどういう事?」
「何言ってるんですか?教母様
聖印を欲しがる小餓鬼族ヒュッテン様にその意味をきっちりお教えなさったないですか」
「云々。あれは驚いたわ。初対面でいきなり聖印よこせって言うのよ。意味も知らずに」
「それから持参金のお話もなさいましたよね?」
「云、まぁね。普通そうでしょ?結婚するって言うなら当然でしょ?一般的にね」
「ええ。教会の手続きは兎も角。一般的にはそうだと思います。
幾らくらいかって今朝聞かれましたし。代々これくらいかしらと答えたら
ちょっと買い物と一緒に巣に行って持って来るっていってましたよ。あの御方結構貯め混んでるらしいですよ」
「え?彼奴金持ちなの?いや。出かけたって持参金とりに行ったの?
小餓鬼族よ。小餓鬼族が持参金取りに行くってどうゆう事?おかしくないかしら?」
「その後、結婚生活のルールとか相談し合ったでしょ?図分と長い間真剣に話し込んでいたじゃないですか
お熱い事でごまいますわね。嫁を可愛がれとか私を愛せとかもう夫婦じゃないですか?」
「説教。あれは説教よ。人間社会に置いての夫婦のあり方を叩き込んでいたの!
大体、結婚しても夜遊びしたいとか妾作るとか挙げ句には巣城作ってハーレム作るとか言うのよ?
可笑しいでしょ?夫婦よ。妻よ。妻がいるのにハーレムとかありえないでしょ?頭おかしいのよ。あの小餓鬼族」
そこまで行って自分の行った事の其の先を思い出し、無責任な発言であったと後悔もする。
思い返せば最初こそ聖印成る物がいかなる物であるかと言う事を種族の違う魔物に説明するつもりで話していたが
結婚と言う漢女が一生添い遂げると言う行為を理解できない相手に講釈を垂れるには労力が掛かる
ましてや小餓鬼族であればこそ他の女と雌に手を出すのは当たり前でもある。
確かに夜遊びをしてもいいかと問われ自分と遊べとも言い。
妾は作っていいかと問われて自分一人を愛せと怒り
巣城をつくっていいかと問われれば個々に作れって私を愛せとも言い切っていた。
これでは自分を愛してほしいとせがむ嫁だとしか周りに見えてもしょうがないだろう。
「あっ貴方の件は不問にします。良い面を見ることにしましょう・・・。
今日から貴方は弐つ脚の狼ごろちゃん?ごろりんちゃんの飼育担当を命じます。
それから昨日の話しは嘘と言わずも真実でも有りません。世迷い言戯言の類でしょう。惑わされませんように」
なんとか教母の対面を保ち顔に鉄仮面を被って冷静さを装い下知を下す。
「天におられる私達の父よ 皆が聖とされますように みくにが来ますように
御心が天に行われる通り地にも行われますように・・・・」
「きゃ~~~。お肉。お肉よっ。ソーセージよ。温かいすーぷなのぉ~~~」
「麺麭がふわふわなの。ふわふわもっちりなのおお」
「チーズよ。チーズ。乾燥してない奴なの。炙るの。炙って麺麭に乗せるの」
「アーメン・・・・」神に捧げる事ばも美味しそうな匂いの前には自然と省略される。
礼の騒動があって二日。聖印を求める小餓鬼族ヒュッテンと其れを拒むベロニヤの関係はあまり良くない。
殆、一方的に嫌ってるのは勿論ベロニヤのほうである。
ヒュッテンは頭巾を被って街に潜る事はあるが夜には教会の聖堂に仮作りした自分の巣に戻ってくる。
出来るだけ聖印の承諾の為にベロニヤの機嫌を取ろうとしてるのか結構策士のところもある。
好意ある者を落とすなら先ず胃袋を掴めでる。
それは人種人類が魔物、特に小餓鬼族の生態を知らないかったと言うのを思い知らさえる事でもあった。
ヒュッテンはグルメであった。それも美食家の域に達する。
極めて質素な生活と節約の旨に成り立っていた教会の食生活は資金難が原因である。
其れが今や思い出せない程の昔の出来事に思える。
ベロニカ自身も逆らえなかった。長い昔の記憶の果には貧民街の教会の教母ではなかったし美食を楽しむ肥えた舌でもある。
其の頃に比べればまだ劣るといってもその食材を都合してくるのが卓の向こう側で椅子の高さが合わないから
いつもぶらぶらと脚を揺らして人と食事作法を全く無視して肉塊に食らいつくヒュッテンである。
その小憎たらしい小餓鬼族に頼み事をしなかればならないのが癪でたまらない。
「れっ、例の弐つ脚の狼狼をもう一頭増やす件はどうなってるかしら?ヒュッテンさん」
例え仕方なくても自分の名前を読んでくれたのが嬉しいのかそれとも機嫌が悪いのかわからない表情でぎゃっと唸り
腰鞄に手を突っ込んで羊皮紙を抜き出して揃えて節くれだった気味悪い指で卓の上に並べてくる
「高いですって。特に雌は高いし気性も荒いですって。扱いも大変だし。
まぁでも未来の奥様のお願いなら聞いてくれるそうですよ。良かったですね。お・く・さ・ま。ぷぷ
明日の午後には連れてこられるそうですよ」最近は通訳代わりに一緒にいる事の多い彼女が告げてくる。
「こほん。有難う。未来の奥様じゃないけど」できるだけ簡素に礼をしたつもりであるがもっと気持ちを込めたほうがよいのだろうか
「それで飼育担当はどうするですか?散歩とか結構たいへんですよ?匂い嗅ぎの儀式もありますし」
「匂い嗅ぎの儀式ってあれ?あれよね」失念して居た事にはっと気がつく。
「ええ。あの儀式をやらないと躾には必要ですし、肩にものれませんよ?教母様。忙しのに大丈夫ですか?」
「儀式って他の子じゃだめなの?ちょっとのせてもらうだけなのよ?」その詳細を改めて聞いた時を思いだし赤面してしまう
「それは無理ですよ。主人と飼育者の格付けもありますし其れ意外は噛み付いてしまいますよ。
ましてや中央区の教会の呼び出しでしょ?行って帰って会議にでたら半日くらいはかかりますよ。
そんなに長いあいだ飼い主でもなければおさえきれませんよ?魔物ですよ?」
「そ。そうよね。魔物だものね」あたふたと取繕っていると気まずさを察したのか
鼻が曲がった小餓鬼族が甘い果実を投げてよこす。其れを食べて落ち着けとでも言うのだろう。
問題が湧き上がって数日、もうちょっと簡単にすむかと思ったが実際に手を付けると手間が掛かる。
事の始まりは確かに大嫌いなヒュッテンであるが手続きの必要を感じて事を起こしたのはベロニヤである。
小餓鬼族ヒュッテンが求める聖印は必要な理由が巣溢れに有るということは明確であり
其れを魔物の戯言然りと放っておけば春には屍と屯する血の大地に帰る。
せめて其れを皆に知ってもらおうと中央教会に報告をしたら意外にも即日に返答が帰る。
【貴殿の忠告。真意確かめるべく小餓鬼族ヒュッテン殿と魔物と同行上参上されたし】
異例の対応に驚くもまずい状況に陥ってしまう。小餓鬼族ヒュッテンはとかくにも
飼っている魔物という部分が問題だった。正直に一匹と一頭と書簡に記載したのも悪かったろう。
それが弐つ脚の狼としれれば尚更である。それは同時に知能がなど有るはずがないと決めつけた小餓鬼族が
魔物を飼うとなればヒュッテンの知性を証明できる。それに形式できはあっても聖印を求めれば教母の結婚を
申請していると言う事にもなり。この先どうなるか別であっても良好な関係を結んで居ると魅せるべきでも有る。
自分の気持ちだけを前に押し付けて一蹴すればやっぱり春には血濡れの大地だ。
それ故に小餓鬼族ヒュッテン然り飼い弐つ脚の狼とも絆を結んで置く必要がある。
元より中央教会に提出した書簡にの氏名はベロニヤのものでありゴロリン君の飼育担当の名前はなかった。
詰まり結局はどうあがいても弐つ脚の狼との匂い嗅ぎの儀式を行う必要が生じてしまう。
一通り相談をすると強く反対したのはヒュッテンである。ギャンギャンと吠えて手を上げて棍棒を振りまわしたくらいだ。
「しょうがないでしょ?弐つ脚の狼って書いちゃったのよ?申請用紙に」
「匂い嗅ぎの儀式をしないと行けないんだぞ?ぎゃんぎゃん・・・・とヒュッテンさんがおしゃってます」
「他になにが居るって言うの?人が怖がって強くって格好いいまものじゃないと駄目なのよ」
「二つ脚二本尻尾の狸はどうだ?結構大きくて愛嬌もあるぞ。・・・と小餓鬼族さんが・・・」
もともと二人切りになるのも嫌だからだいたい羊皮紙の札読みに慣れた修道女を同席させている。
「たっ狸ってこわくないでしょ?そんな可愛い魔物とか居るでしょ。
もうこの際ドラゴンとかつれてきなさいよ。ドラゴンでいいのよ」暫しの沈黙が奔る。
「あの・・・ドラゴンっていうのは人種人類の妄想ですって。空想の類ですって。
そんなもの信じてるのが未来の嫁だとちょっと引いてらっしゃいますよ。小餓鬼族さんが
二枚舌の大鰐なら期日までに間に合うが。あれに匂いをつけるのは手の一本も失わないと。
だそうです。詰まりは其れを飼うには腕の一本も失えってことですね・・・とおしゃってます。ハイ」
結局、期日までに手に入る魔物と言えば弐つ脚の狼しかないと結論つけるしかなかった。
「あ。あれなの?大きいわよ。すっごく大きんですけどっ。



あっあれの鼻さきにお股押し付けて・・・」其の先の言葉をベロニヤはゴクリと呑み込む。
厳重に梱包され偽装された場所の荷檻が教会内の裏庭に到着するが流石の小餓鬼族ヒュッテンも緊張してるらしい。
すでに自分の臭い付けを魔物巣食う魔森で済ませて来たと言うがどこか自身なさげな表情だ。
「なにせ、つい先日捉えたばかりの野生の子らしく。特に人には成れてないそうです
十分に注意して下さいっておっしゃってます」通訳する修道女も背筋を伸ばして緊張を隠さない。
それが十分に危険だと言うことはヒュッテンの出で立ちからも伺える。
自分自身も魔物であり弱肉強食の世界でも消して低くない小餓鬼族。
其の小餓鬼族が噛まれても耐えられるようにと鉄製の小手を両腕に嵌めている。
ゴロリン君よりトゲトゲしくも鋭い首輪を窮屈そうに無理にはめ野太く吠えれば庭の空気が震える。
此の時は未だ名前がない弐つ脚の狼は雌であり、其の体毛は冬に積もる雪の如くに純白である。
潤しくも猛る逃遠吠えは近くに居た雄のころりん君が怖がり股に尻尾をはさんで隅っこで縮こまる位だ。
弐つ脚の狼の世界は雌が上位で全てを従わせる。其れを躾けると成るの主人も相当な力量がいる。
グイグイと鎖を引くヒュッテンでも腕に力を込めてるがわかる。下手をすれば力負けするのだろう。
未だ稀ぬ人里の風景を怖がらさせない様に用意した大きめな庭天幕の中に白い体毛の体をむりに収めると
一つと唸り声が上がる。腹が減ったとでもいうのだろうか。鎖の先を頑丈な杭に括り錠前をかけると
天幕からのそりとヒュッテンが出て来て詰めこんだ餌肉の大籠と水杯を運んでもどる。
幾ら未来の嫁の頼み事といってもけっこうこれは厄介だ。金もそれなりにかかれば手間も危険も多すぎる。
それでも必要な事であると自分を納得させてから様子を確認して天幕にベロニヤを呼んで手を振る。
「出番ですよ?教母様。存分にお気を付けて下さいませ」丁寧に警告の言葉を投げくるがその声は震えてる。
後に引けないと思うと脚が自然に動く。弐歩三歩と進めばあとは勢いだ。
背は低くても頼りに成るはずと未来の夫と勝手に此の時だけ信じて天幕の中に入ると様子が変わる。
突然に光遮りと解かぬ天幕の暗がりに四本の四肢を大地に付けて休む白銀の二本脚の狼。
二本の四肢で立ち上がり腕を振り回せば人種人類の首が三つ四つも軽く飛ぶ。
一度吠えて起これば小餓鬼族でも抑え込むのは大変だろう。
「ぎゃ。ぎゃ」早くやってしまうと言うようにヒュッテンが焦らせてくる。
「ちょっとまって。そんな事行ったって。怖いのよ。噛み付いたらどうするのよ」
声を荒らげた途端に白狼がギロリと目を開けてこっちを睨む。
「ひゅ~ひゅ~」とかすれ声で口笛を吹いてくれると落ち着くのか目を閉じる。
今だ、だとばかりに片手で剛毛を撫でながら余った手を降って今やれ直ぐやれと訴えてヒュッテンが背を圧してくる。
「はい。マリアンヌ。お手っ。お上手だわね。
おかわりっ。お上手だわね。本当に。
ごろんして。ごろ~~ん。きゃ。可愛い~~。はいご褒美よ~~ん」
昨日の羞恥醜態もどこ吹く風邪とばかりに教会の裏庭で白銀の弐つ脚の狼が主人と一緒に遊んでいる。
マリアンヌと名付けられた白銀の体毛を持つ弐つ脚の狼はベロニヤに良く懐く。
其れに頭も良かった。遊びのつもりで教えてみたが其れもどれも一回で覚えてしまう。
「やっぱ、飼い主が美人だと弐つ脚の狼の方も美人だし頭もいいのねぇ~~。
それに比べてあちら様は・・・ぷぷのぷ」
非常に不本意であるが小餓鬼族ヒュッテンが従える通称ゴロリン君は余り芸は得意ではないしい。
「ギャ」と唸ってお手をさせようとすれば餌をくれるのかとカブりと手にに噛みつく。
此のバカ野郎と癇癪を起こして木の棒を投げて取ってこさっそうと思えば、
それがどうしたとばかりにその場から一歩も動かず口を開けてアク部する始末である。
弐つ脚の狼に取っての主従関係はたしかに大事で合ってもある意味それは狩りを主体とするものであり
それ意外は最低限の関係でもないのである。言う事と聞けば肉が勝手に口に入ってくる。
自分に獲物を与えてくれるのが主と言うだけであり。別に主のご機嫌取りでないのである。
ベロニヤとマリアンヌが仲が良いのは先ずベロニヤが過保護である事。
それと互いに雌同士で気も合うのだろうし相性もいいのも有るだろう。
「そこ、そんなへっぴり腰でどうするのよっ?
ちゃんと擦らないとお昼はパサパサの麺麭にするわよ。
ちょっとそっちの貴方。石鹸は貴重なのよ。つけすぎなのよ。つけすぎ。
マリアンヌちゃんの目に入ったらどうするのよ。そこは手ぬぐいで優しくしなさい」
自分の飼い犬に愛情を爆発させるベロニヤであるが言いつけられマリアンヌを丸洗いする仕事を
押し付けられた修道女たちはたまらない。ベロニヤこそ匂い付けの儀を経てマリアンヌが
その匂いを刻み覚えているから良いが自分達は違う。魔物相手に怖がって腰が引けるのは当たり前だろう。
何かあったら大きな乳房の谷に挟んだ銀色の犬笛を吹いて止めてくれると言うが
怖くて怖くてしょうがない。正に意地の悪い上司の職権乱用とも言える。
「高いのよ~~~。高いたかいっ
マリアンヌ。ちょっとゆっくり歩いてくれるかしら?未だ慣れないのよ。
半黒巨人の子とか1つ目の大漢ってこんな感じで世界をみてるのねぇ~。不思議だわぁ~」
大陸の何処かの部族は細く削りきった竹を下駄代わりに一生大地に脚を付けずに暮らすとも聞くが
噂を確かめる術は無くても其の目に映る景色はきっとこうゆう感じだろうとベロニヤは思う。
ドズン、ドスンと土を踏みしめ貧民街の向こう奥の一般地区の商い市場を白毛の弐つ脚の狼が歩く。
時折唸るのって首を振るのは、其の肩に教会の修道服を来た女性を乗せ大股で歩く魔物に驚くも
興味津々で群がろうとする街人に退けろ道を開けろとの警告である。
「あら。有難う。もしかして貴方も?」
物珍しさに間近で観てみたいと思っても逞し良い腕と鋭利な爪が邪魔をする。
遠くから子を肩車して背伸びしながら投目に覗くのが安全であるが
時より人混みに紛れてマリアンヌに近づきてきてはその腰に括る買い物鞄に果物や包をするっと忍ばせてくる輩がいる。
皆せが低くも判子で押したように色違いで合っても頭巾を深々と被るも特徴的な鷲鼻がちらりと視える。
なるべく目立たないように素早くマリアンヌに近寄ってはさっと鞄に何かを潜り込ませ
尊敬の眼差しで教母ベロニヤの顔を見上げると直ぐに頭を下げる。
多分、彼等独特の信仰への祈りの仕方ななのだろう。節くれだった鉤爪の指を組みわせて頭を下げ
それが終わるとマリアンヌの白毛を愛おしそうに撫でると、すうっと人混みに紛れて消える。
目が慣れて来ると同じ様な姿をし頭巾を深く冠る輩がチラホラとでも街中暮らして居ると知れる。
「あれじゃ。子供と観間違えてもしょうがないわね。いつの間にか紛れ込んでるのだろうけど」
言葉を途中で呑み込むのも成れて来た。魔物だ、魔物だと騒いでも人種人類の営みを救おうと
結婚まで覚悟する馬鹿な小餓鬼族が自分の身近にいるのだ。
鼻曲がりの彼奴が街に紛れているのならもっと沢山いるのは当たり前だろう。
複雑な気持ちではあるのだが、マリアンヌがおすそ分けとばかりに
摘まんで横した野いちごの甘酸っぱさに堪らず声を上げて歓んでしまう。
貧民街ところか一般区の市場までマリアンヌを引きずり出すのは少し気が引けた。
何しろ主人と認めさせたばかりであるし聞けば最近まで野生でもある。それでも・・・
「ハラスメントで御座います。職権乱用で御座いますの。教母様。
あんなに大きな御犬様の四肢をブラシ一本で洗わせるなんて。からくり食器洗いでも買って下さい。
そんな大きいからくりはない?作ればいいでしょうに。作ればっ。あの小餓鬼族の夫さんに強請ればいいでしょ?
何の為に大きな乳房くっつけてるんですか?御尻だって丸い癖に?
えっ其れは行っちゃ駄目だって?言いますよ。言っちゃいますよ。
小餓鬼族の夫さん誘惑して新しい下着買って貰ったくせに。黒のレースのひらひらの奴。
あっ。御免なさい。秘密でしたのね?皆知ってますけど・・・。
怖いから睨まないで下さい。ねっねっ。可愛くて美人なお姉様。
でも、もう動けません。腰が逝ってるのです。モップが杖になってるです。椎間板ヘルニアで御座いますの。
だからお夕飯の買い出しに行って下さい。白毛犬様の散歩かねて。お願いです・・・腰が・・・」
何かの文句かと思えば何か知られなくない事もばらされ結局、夕飯の買い出しを押し付けられる。
一人では持ちきれない量ではあろう。自分の事は棚に上げてもおよそ弐十人ほどの修道女と
道端の腐った林檎を拾い食いするくせに美食家でもある夫候補の小餓鬼族ヒュッテン。
其れに黒毛、白毛の弐つ脚の狼となれば大所帯である。
勿論、影であの小餓鬼族が夜にこっそり教区金庫にお布施を詰め込んでくれてなければやっていけない。
もっとも結構複雑怪奇な錠前なのご丁寧に自分で解錠した後にまた施錠するとは玄人すぎる。
「其のお肉。大鹿のもも肉。丸ごと二本下さいな。運び賃は取らないで。
テイクアウトよ。持ち帰りなの。そっちの猪のお肉は煮込み用かしら?
野菜は其の籠の奴を丸ごとと後ろの箱の山を全部頂くわ。魚はいらないの。
この辺は海も川も乏しいのになんでそんなに新鮮なのよ?養殖?こんな山奥で?
どっかの金持ちが道楽で山の裏手に養殖所作った?小餓鬼族じゃないでしょうね。其奴。
信用ならないわ。お魚嫌いだし。棚奥の雄牛の肉と腸も。それからチーズ塊8個ね
そんなに一人で食べるのかって?育ちざかりなのよ。お胸と御尻が、ぷぷ」
楽しげに白毛狼の肩の上から降りもせず細くも綺麗な指で目当ての食材を指差し注文するが
話す会話は結構叔母さんで玄人仕込の熟練主婦の如きである。
「まけなさいよっ。これだけ買うのよ?もう夕刻近いし商売上がりも近い刻でしょ?
値引きできないなら果物の盛り合わせ参笊つけなさいよ。
大所帯なのよ。大食いの小餓鬼族と私がいるのよ。罰が下るわよ?渋ってると。天罰がっ
あら、有難う。身心深き商人様に父神の慈悲深き御導きがありますように。うふっ」
渾身の笑顔と長いまつ毛を伏せて目配せし漢心を惑わせるが
忘れてはいけない。ベロニヤこそ東地区聖精霊刻魔主教会修道院の長である。
食い意地の張った夫と食べざかりの子供達を養う熟練主婦でないのである。
うむ。その辺は勘違いなくお願いしたいものである。
「みつけたぞ。此の泥棒変態小餓鬼族めっ」
別に油断していたわけではない。只、個々しばらく人種人類の教会とやらに巣寝してたいし
いい匂いのする雌共とも話札での雑談も多い。やっぱり気が緩んで居たのだろうか。
成すべき事をする為になんとか巣根城は確保は出来た。
話の流れで雌と結婚とか訳の分からぬ事にも巻き込まれてる。
随分と美味そうな尻をしてるか口うるさい雌である。彼奴と結婚とやらをしなければならないのは気が重い。
そうはいっても持てる時間も多くはないはずだからと思い悩んだ計画はなるべく手を付けるべきである。
とは言えやっぱり気が引けた。あの雌との結婚は未だ出来てない。詰まりは聖なる印とか言うのもどうやら先らしい。
となると昨日と同じに街影に潜む一匹の小餓鬼族には変わりない。
教会と言う後ろ盾がない以上。頼れる仲間などもまだ遠い。それでも警告の一つもしてやらねばと考えて
人種人類の輩が集う冒険者組み合いの建物の側に身を潜らせる。
はてさて、どうやって中に入ろうかと睨んでいるとお気入りの蒼色頭巾を乱暴に掴まれる。
「ぐぎゃっ」
魔物ほどの力じゃないから痛くはないが、勢いはあまって頭巾はめくれ素顔を晒す羽目になる。
毛の内頭皮を寒風が軽くなでビックリした勢いで齧った林檎が指の間をすり抜け地面に落ちる。
「捕まえたぞ。こそ泥小餓鬼族。向こうの屋台で青林檎を盗んだのは御前だな。
その長耳千切って腐った魚と一緒に煮込んで缶詰にしてやる。覚悟しろ」
鼻息荒くもヒュッテンの頭巾をぐいっと掴んで話もせず腕力にものいわせぶらりと持ち上げる。
頭巾をムンズと掴まれ腕を高く掲げられれば小躯も惨めな小餓鬼族の体重は結構軽い
ぶらりぶらりと宙につられバタバタと手足を振って足掻けば人の目には滑稽な道化である。
だが然し、園の小餓鬼族は馬鹿ではない。
観念しましたとばかりにしょんぼりと項垂れるも見るべき所はきちんと見てる。
腰に括る刃剣と鉄の輪っかをはめた木盾。安物に視えるがつかいこまれてもいる。
きっと内側は鉄板に違いない。其の上に木板を張り込んで魔物からの攻撃を吸収する仕組みだ。
髪は目が覚める様な赤だから此の街というより二つも三つも山を超えた海沿いの先の街のでだろう。
潮風が髪を撫でで痛めるからあの辺のでの者は髪が紅い。
其れよりも顔の作りが良くて美男子に視えても火傷の後で肌が爛れる。
泥棒を捕まえてやったとばかりに自慢気に腰にそえる手袋と肘の間の腕もやっぱり爛れ肌だ。
どっかの洞窟に潜って前衛でも買って出たのだろう。多分無理をしたか組んだ徒党の仲間がわるかったか
存外、やり手に視えても馬鹿なのか酸蜥蜴の唾でもまともに食らったのだろう。
酸蜥蜴の唾といっても大きさは人の頭と同じくらいだ。まともに視えても馬鹿なである。
其れにしては気配消しも玄人並だし。今も警戒も油断も隙も見せはしない。
その腕を磨いたのは爛れ肌になってからだともいえるだろう。多分そうである。
そうであるがあの爛れ肌ではまともな夜伽にはありつけない。大金を払って娼婦をかうのであろう。
証拠にこそ泥小餓鬼族一匹を気配を消してまで捕まえる道理も無いだろう。
態と大声を出して聴衆の目を引きて大手柄であると自慢するのは清々しいばかりに小物である。
日銭の一枚欲しさに虚勢を張っているのだ。
「おい、其処の冒険者組み合いのお役人。
青りんご泥棒の小汚い小餓鬼族を俺様、シュワルツドッペンハイガー・テンチャンが見事に捕まえたぞ
手柄は手柄だからな。賞金の支払いを要求するぞ。がっはっはのはっ」
よほど嬉しいのか財布がとっても寂しいのか大根役者も呆れるほどである。
「えっと。今日は組合長が中央区の貴族様のご機嫌取りで出張なんです。
僕はおそい昼食を取ろうと出てきただけで。面倒なんですよ?事務仕事って奴はぁ
厄介事持ち込まないで下さい。夜分遅くには帰ってきますから組合長。酔っ払ってですけど。
大体、小餓鬼族捕まえったで銀貨二枚ですよ?其れが林檎一個のせっとうでしょ?
銅貨一枚にもなりませんよ?そんなの子供でもやる罪ですよ。手続きするなら被害届が先ですね」
よほどにねっちこい性格で有るのだろう。図分と不機嫌に組み合いの若い役人が吐き捨てる。
「窃盗は窃盗だろう。小餓鬼族だぞ。小餓鬼族。薄汚い小餓鬼族のことだ。
路地裏のどっかで誘拐と殺人とかしてるに違いない。悪党だぞ。そうだ。大悪党だ
其奴を捕まえたんだから金貨参枚を所望するぞ。さっさとよこせ。小童役人めっ」
「まぁ、鼻が曲がった小餓鬼族は嫌いです。僕も。
それでも規則は規則ですよ。その小餓鬼族が大悪党だという証拠でも有るんですか?
其れを証明する証拠の提示がさきですね」こっちも意地になってるのだろう。
「証拠だと?こいつが大悪人であるのは一目どうぜんであろうが。
観ろ。ちんちくりんの体に、やたら大きいギョロ目。曲がった大きな鷲鼻。
動物の肉がは挟まった突き出た乱杭歯。それにドブ川で洗った臭いが染み付いた衣服。
見るからに凶悪な大悪党そのものではないか?
これぞ大悪人鼻曲がりの腐りネズミの小餓鬼族に違いない。捕まえたのは俺様、シュワルツドッペン・・・・・」
「何をしてるのです。其処の貴方っ。私奴の夫(候補)の頭巾掴んで宙に揺らすとは何事ですかっ?」
凜とした稲妻の如くの金切り声が天を劈く。
其れだけで当たりの野次馬が慄き身を固め後ろの下がれば尻もちを地面に打ち鳴らす。
ドズンと一歩前へと白毛狼が地面を踏めばぼこりと沈んで足跡を刻む。
二本脚で立てば大熊より若干に背も高い。もっとも腕力は比べ物のにならないし人の腸肉が好物である。
ふしゅ~~と鼻から空気漏れればそれは白い体毛よりも白く凍る。
「其処の貴方。私奴の夫様(未確定)に何をしてるんですか?」
「なっ。なにをしてるって。大罪人の林檎泥棒を捕まえたので・・・
あ、奥様で御座いますか?きょ、教母様・・・?」
「いかにも私奴は東地区聖精霊刻魔主教会修道院の長を務める教保で御座います。
私奴の夫(考え中)が林檎泥棒をしたと言うのは本当ですか?
とりあえず。夫(ちょっと可愛いところもあるの)を離していただけませんか?」
「もっ、勿論で御座います。ですがこいつは俺の飯の種でして・・・教母様」
「私奴の夫(でもあ鼻まがってるのはちょっと気になるわ)が今更、今更林檎泥棒するとは思いませんわ
話せっていってんだよ。此のとうへんぼくの薄らトンカチ変態野郎っ」
其れまでにしとやかであった教母のか御が一変し鬼女となると仕える白毛狼も同時に吠える。
「ひえっ。おろします。おろします」教母の恫喝すざましくも白毛狼の牙はもっと怖い
吠えて鼻息吐き出す白毛狼から乳房と尻を揺らしてするりと大地に滑り降り冒険者崩れをぎりりと睨む。
これは本当に不味いと腕を下ろすとぎゃっと唸り声が響いて喉に鋭い痛みがチクリと刺さる。
目を見張ればシュッと小さく音を鳴らし小汚い小餓鬼族が隠し短剣を鞘にしまい。
手を借りなくても始末出来たと不機嫌に鳴きそれでも礼のつもりか教母に向かって手を降っている。
「私奴が手を課さなくでも始末出来たと?まぁまぁ。人種人類のしがらみの業の深さは勉強不足ですわよ
大体にして。あっちの屋台で無すまれたのは青いろの林檎でしょう?
夫様(今日の夕飯はなにかしら?)の鞄に入ってるのは赤色林檎ですよ。
肌が爛れてるのは不憫ですが其れも父神の試練でしょう。されど心まで爛れるとは悲しすぎますね」
余り難しい言葉の意味を知るには経験不足であるが雰囲気を察するのは出来る。
態とらしくもベロニヤの言葉に合わせ腰鞄から赤い林檎を握り皮服にこすりつけて磨き
爛れ顔の冒険者をじろりと睨んで嫌味に顔を歪めてやる。
「盗まれたのは蒼い林檎、こいつが持ってるのは。あかい林檎。其れを捕まえてつるし上げたのは俺」
「私奴の夫様(これを気に寝床を一緒にするのもわるくなわいね。新しい下着もあるし。きゃ)に
冤罪を着せるとは不届き千万、万死に値しますが。今は夕飯の買い出しの途中で御座いますの。
あまり遅くなると腹を空かした羊たちがピーピー煩いですの。では、この辺で。
そこの貴方。教母の夫に手を出した罪。洗い流せると思わないことね」
筋肉盛り上がる白毛狼の腕が動き主人を傷つけない様にと優しく四肢を掴み肩にに乗せるとドスンと土に足跡を刻む。
「馬鹿・・・やろう・・・変態・・」聞き取り悪くも人の言葉で悪態を付くと小餓鬼族がひゅっと口笛を刻む。
意外と近くの路地向こうで黒山が動いて昼寝から起きると野次馬が慄いて逃げ惑う。
小餓鬼族の主人にドスドスと歩みよるとそばに呆然と立つ漢の顔をにらみ。
咆哮、猛り吠えて脅して更にも今にも其の頭噛みちぎるとばかりに顔を舌で舐める。
冷えっと喚いて地面に転べは立場もかわる。さっきまで自分が見下ろしていた小餓鬼族がこっちを睨み
曲がった噛爪で鼻を軽く突いてくる。これは小餓鬼族の挨拶である。
御前を観てるぞ。夜道に気を付けろ。いずれ肩を付けると言う挨拶と脅しである。
小柄なくせに高くぴょんと勢いを付けて黒毛狼の肩に頭を乗せると鷲鼻を掴んで長い舌をべろりと出し
これもまた、相手を愚弄する特有の仕草を投げつけ先にすすんだ白毛狼を追いかけろと自分の飼い犬の髭を引っ張る。
白毛と黒毛の弐つ脚の狼の肩に揺られそれぞれの思いが交じる。
(夫って言ったのバレたかしら?認めたくないけど。金持ち立ち毛髪無いけど悪くもないわよね)
(夫?夫てなんだ?食べ物か?それとも牙を磨くあの変な道具のことか?後で雌に聞いてみるか)
それぞれに心内はどうであれ林檎泥棒の騒ぎは意外にも尾を引く出来事と成る。
其れはその日の夜遅くに起こる。
中央区の冒険者組み合いの新婚まもない自宅の玄関で一つ。
くたびれて安酒の匂いと安金で誰にでも脚を開く娼婦の常連宿の裏の横道で一つ。
今日は随分と面倒な事に出会ったぞばかりに苦くも笑い。
実際の自分の好みとは真逆の体型を持つ新妻の手料理を楽しんだ後に
寝酒を啜ると部屋の廊下に物音が響く。恐らくは態とであろう。
家に偲ぶ時こそ気配をけして住民に気取られる事を嫌い。
逆に目的の人物にはいきなり姿をみせれば驚いて声でも挙げられたた尚も困るだろう。
個々は定番の台詞の出番である。勿論いつかは言ってみたいと思ってもいた。
「誰か其処に居るのかね?抵抗しないから出て来たまえ」声が上ずってかすれても上出来であると自分で思う。
「教会の教母様の使いで御座います」
小声であるし少々かすれて聞き取り辛い。なんとなく人種人類ではない者が頑張って話してるようにも思えた。
「お役人様の疑問にお答えすると言う事です。詳細はこちらに」
無理に余り話したくないの地声なのかやっぱりかすれている。
夜灯を消した廊下の向こう扉がすっと開くと鉤爪の付いたふしくれだった指が封筒を差し出してくる。
「赤鼻照会?本当に有ったのか?教会は赤鼻照会とも繋がっているのか?」
真っ赤な封筒の白丸と小餓鬼族の横顔の印。此の大陸でも影の主とも言われる小餓鬼族の商い商。
絶対噂紛いの戯言だと誰もが思っている。
「中身を確認したら部屋の灰皿で燃やして下さい。後はのこしてはいけません。
それからお煙草は差し控えるべきでしょう。奥様のお腹のお子に悪う御座います。懐妊してらっしゃりますよ」
「なっ、何だと。でかした我が妻よ。ふっ太ってるからわからなかったぞ」
「おめでとうございます。あれだけやれば出来るものは必ず出来るでしょうに。此のスケベ役人様」
鉤爪だけしか視えなかったが扉の向こうでニヤついて嘲笑っているに違い。
「それは。その。好きなんだよ。好みとは違えどぷにぷにの脂肪腹が好きなんだよっ」
懐妊知らせを届けるもスケベと誂う赤鼻商会の小餓鬼族に言い訳すると廊下の向こうで夜灯が灯る。
同時に教会からの封筒を届けた輩の気配がふっと溶けて影と消える。
「えっと。鼻を右に折るんだよな。潰すんだっけ?どっちだよ」
「わからん。実行役は御前だろ?給金多く貰った癖に、指示書観ろよ。指示書」
「あっ旦那。夜飲みの帰りですか?寒いですから気をつけて下さいよ。はい。お休みです」
くたびれて安酒の匂いと安金で誰にでも脚を開く娼婦の常連宿の裏の横道。
小餓鬼族ヒュッテンに鉤爪でつつかれた冒険者崩れのシュワルツドッペンハイガー・テンチャン。
実は結構、腕の立つ冒険者であったが今は落ちぶれている。理由を知るのも面倒くさい。
「フンが。フンが。待ってくれ。許してくれ。勘弁して。金払うから」
既に後頭部にたんこぶが出来てるのは当然後ろから棒で殴られたからだ。
背の低いはずの小餓鬼族であるにもこいつは結構体躯が大きい。
殴られて意識が飛んだ所を裏路地の地面に転がされる。
息苦しさに目を開けると当然で鼻を分厚い肉の指がつまんでる。
「えっと最初は鼻をつまんで力一杯で右に曲げるだ。
行くぞ。此の偽善者を装って小餓鬼族に罪をなすりつけようとした大馬鹿野郎め
せいのっと、・・・壱と・・・弐と」バキッと力任せに鼻を曲げられ骨が折れる。
「ぐへっ。痛い痛い痛い。さっ、参だろ?参数えてやるのが普通だろ?心構えがいるんだよっ」
涙目になって唸って転がるも四肢の上に跨がられるから身動きもままならない。
「次は左手の指を二本おるのか?こっちだな」
「ばかやろう。そっちは左だ。それに指じゃない。腕。個々だ個々。
字読めないのかよ。小餓鬼族の癖に。商会でならったろ?」
「こんばんは。お巡りさん。えっ?問題ないっすよ。
ちょっと酔っ払った奴を解放してるだけです。悲鳴が聞こえた?猫ですよ猫。
其れより万引き野郎が大通りの方へ逃げましたよ。あっちであっち。お仕事ご苦労さまでっす」
「うぉ~~~~痛い痛い痛い痛い痛い~~~~痛い」
「にゃ~~~~にゃんにゃんにゃんにゃんにゃ~~~」見張り役が口に手を荒れて態と泣き真似する
到底無理があるともうのだが鼻の骨を折られ腕も折られては呻いても喚いても当たり前だろう。
鳴いて喚いても腕力自慢の小餓鬼族には関係ないだろう。
どうぜ金で雇われているのだろうし甘んじで受け入れるしか無いが
これで済めば幸いでもあろう。
「手練って聞いたけど本当なのかい?此の距離を当てようって言うのかい?」
「任せろっ。投げ物は得意なんだよ黙ってみてろって」
豹柄肌の細背も高い人種人類とは違う雌が馬鹿にしたような視線を投げつけてくれる。
眼の前には伏せて頭を隠せる長い背丈の草の間にシュワルツドッペンハイガー・テンチャンが四肢を丸めてかがむ。
四肢を斜めに構え振り上げ構えるのは投げ短刀の一本である。反対側もしもの時にと予備を握る。
ざっと数えて10メールと半分。全盛期なら間違いなく仕留めて魅せる距離である。
あの小餓鬼族野郎の仕置はきつくも傷も癒えきってもいないが教会の薬のお陰で体調は良い。
もっともその分借金は山と重なっった。
的と決めるのは大猪の鼻面だ、一撃必殺の為せる機会を今かと狙い待つ。
「どうせ無理ですよ?風上にいるですよ。私達
そんなちっぽけな短刀ででかい大猪仕留めようって間抜けですね。人種って奴は。
さっ。移動しますよ。てっちゃんの旦那」
かすれても結構通る案内役の小餓鬼族が声を上げて告げる。
「ちっ。なんだよぉ~~。見せ場なのに・・・やってみないとわからないだろ?鼻曲がりの小餓鬼族の癖に」
「私も無理だとおもった。そんな短刀じゃ軽すぎて風に煽られるに決まってる。
外した途端に猪突猛進。尻の穴が増えるだけだね。よっ変態冒険者」豹柄肌の雌が嘲笑う。
「三日だぞ?三日も肉くってないだぞ?こんな草原で野宿なんだぞ?
なぁ~~、街に戻ってさかばで騒ごうせ。軍資金はあるんだぞ。
それからてっちゃん言うな。俺の名前はシュワルツドッペンハ・・・」
声を上げてもそれが届かぬ所まで一団は先へと進んでる。つまりは置いてきぼりである。
「短剣を投げなくでも・・・・獲物は・・・狩れる・・・」
大柄な体躯に鋼鎧を着込んだ雄がドサリと地面に鹿を二頭落として呟く。
剣を握るわけでもなく矢を放つわけでもなく持ち前の突進と腕力の賜物だろう。
どう観てもしかめっ面の上に極太の牙が特徴である大牙鬼族。寡黙で粗暴にも視えるが極めて倫理的思考な種族である。
「やっぱり頼よりになるわね。大牙鬼族の兄さんは。其れに比べ斑肌の人種様ときたら役たたずだわ
血抜きはしてある?捌くのは私がやるよ」細背であるも豹柄の雌が靭やかに動いて獲物を担ぐ。
「どうせ、俺は魔森では役ただずだよ。街に帰っていい?寒いし」
「ご自由に。斑肌の人種君。
そのかわり教母様の閻魔帳の借金の欄に数字が上乗せされますよ?
これ以上借金かかえたらどうするんですか?鼻どころか首が回らなくなっても知りませんよ。
大体、僕らの仕事は斥候です。巣の入り口まで言って覗けば良いんです。直ぐにおわりますよ」
「赤鼻の小餓鬼族は気楽なもんだねぇ~~。わかってるのかよ。
小餓鬼族だぞ。強くはないかもしれないが厄介なんだぞ。この鼻をみろ。奴らのせいなんだぞ」
個々ぞとばかりに曲がった鼻を指さして誇示するが其れがどうしたと言うのだろう
冒険者崩れの斑肌の漢が日銭欲しさに教母の夫に勝手に罪をなすりつけて罰を食らったのは
街中の皆が知ってるし人種人類意外の種族にも笑いばなしの種となっている。
恨みつらみに喚いても所詮は自業自得なのであろう。
「うまいなっ。此の肉。良いお嫁さんになれるぞっ。俺様が貰ってやるぞ」
「あたし等の種族は人種人類の4倍生きるのよ?私まだ。思春期真っ只中だし。
だからと言って貴下と結婚する気はないわ。それにこれ焼いたのは大牙鬼族の兄さんよ。
兄さん。良かったわね、交尾の相手見つかって。早速今夜でも試してみたら?」
「確かに吾等の種族は雄同士で楽しむが、吾にも選ぶ権利がある」
「ぐはぁ。そうなのかよ。忘れてくれ。俺様は一人が好きなんだ。云々。
所でさ。お前等はなんで人種人類の言葉を話すのに教母様の夫とやらは話せないんだ?馬鹿なのか?」
「ぶっ、ぶはっ。教母様の夫様を馬鹿って。其れは不味いわよ。借金増えるわよ?
教母様の密偵が目の前に居るのに良く言ったわ。寧ろ清々しわね」
余計な事を口にするのは悪癖であるが、それにしても間が悪い。余計な事をしたと斑肌の漢は後悔する。
「別に私は教母様の密偵では有りませんよ。お飼いになってる白毛狼様を崇拝しているわけでも有りませんし。
鼻曲がりの小餓鬼族様が働き口の赤鼻商会に出資してるってだけです。私達が人種人類の言葉を話せるのは
仕事に差し支えがないようにちゃんと研修を受けてるからです。下っ端ですからね。
あんな偉い位の御方がは態々勉強してまで努力する必要ないんです。誰かにやらせればいいことですから。
でも、報告はします。斑肌の馬鹿が悪口言ってましたマイナス20点っと」
「待てっ待て。マイナス20点は酷いぞ。お前等知ってるのか1点金貨一枚何だぞ。
マイナス20点って金貨20枚の借金加算だぞ。そんな事になったら破産だぞ。破産っ」
「もう破産してるくせに。こうなったら雄情婦の紐にでも成るしか無いわね。
自分で働いて稼がなくて良いんだから羨ましいわ」
のそりと料理支度担当の大牙鬼族が鞄から食後のおやつ包を全員に投げてくる。
「明日の昼には目標の1つ目の右の洞窟に到着します。事の起こりと手はずを確認しておきましょう」
赤肌の小餓鬼族が仕切り声を上げれば斑肌の漢は苦い経験を思い出し項垂れて歌詞の包を捲り食らいつく。
人種人類の舌には魔物人達が好む菓子の味は理解できない。つまりはとても不味かった。
妻の懐妊の吉報を届けてくれた赤肌の小餓鬼族の使いが届けてくれた書簡に指定された時刻。
何せ相手は東地区聖精霊刻魔主教会修道院の教母様である。
確か先月当たりまでは財政難であり貧民街での炊き出しの回数も少なく提供される料理も
食べられるだけましと言う代物であったが今日と成れば昔の話だ。
炊き出しの回数は週一回に増えたし食材の質もかなり違う。遥か隣国からの珍味も食べられると言う。
元々美しい教母様の肌は健康的にも色香が咽れば魅力も増す。
下で働く修道女達も習えば気を引こうと豆に通う漢達が教会の周りにも屯する。
「いらっしゃいませ。冒険者組み合いのお役人様。ご機嫌麗しゅうで御座います」
「これはこれはお美しい修道女様。本日はお招き有難う御座います。
あっ、これは教母様への手土産です。
何せ薄給の安月給貰いの身ですからお手やらわかに。こちらは修道女の皆さんで分けて下さい。
白毛狼様には甘口の物を、黒毛狼様の方は辛口の肉塊で御座います。気に入って下さると良いのですが」
「お気遣いありがとう御座います。きっと父神様の恵みが訪れますよ。では。こちらへ」
涼やかなに頭を下げる若い修道女が目配せすると白毛狼が陣取る狼小屋のそばから
背の高い小餓鬼族がトテトテと小走りに疾走って来るとペコリと頭を下げて包み籠を受け取る。
良く観れば黒い布地の頭巾に白い線の文様が入っているから白毛狼を信仰する輩で或ろうと理解できる。
最初の頃の修道女のかわりに白毛狼の一切の世話を仕切るらしい。
うやうやしくも礼儀正しく頭を下げると土産籠を覗き込み自分の担当する分を取り出す。
ぎゃんと声を掛けて頭巾に黒線が入った別の小餓鬼族を呼び込み今度は別の包をも渡す。
最後は赤色頭巾の小餓鬼族が背後ろからよってきて残りを教会の修道女に届けてる。
魔物である・・・・。小餓鬼族である。
本来は魔物の討滅を旨とする聖精霊刻魔主教会修道院に出入りしてる。
其のおかげで公開礼拝と炊き出し意外、人種人類は教母と二十人前後の修道女だけである。
若い役人はうずうずと喉に貯まる疑問を吐き出してみたくてたまらない。
「私奴がこの教会の教母を務めるベロニヤで御座います。
こちらは試験運用中の夫。蒼肌濁りの小餓鬼族。夫君で御座います。
どうぞ、おかけ下さい。冒険者組合副総長のお役人様」
「有難うございます。まだまだ若輩で御座います故。其の様な立場には御座いません」
突然に自分には身分不相応な役職名で呼ばれて驚くがとりあえず進められた椅子に尻を沈めて見る。
ふかふかとしたクッションとどっしりとした重量感のある椅子であり座り心地も良ければ気分も良くなる・
「力量の有る御方にはふさわしい椅子と地位が必要で御座います。その才能を惜しげなく発揮して貰うためで御座います
奥様のご懐妊祝と教会からのご祝儀をおもってくださいな」
どこか意味を含んだ企みの有る印を踏んで教母ベロニカが微笑むとこれも又豪勢な長椅子に一緒に腰を下ろす
小餓鬼族ではちょっと珍しい蒼肌の小餓鬼族が鼻を鳴らしぺらりと白い封筒渡してくる。
魔物小餓鬼族はもっと下品は輩と信じていたがその蒼肌の小餓鬼族からは畏怖と威厳さえも感じられる。
気の所為だろうと思いつつも封筒を開いて中身を確認してふぅとため息が自然に漏れて身がしまるかんじだ。
冒険者組合に帰ったら忙しくなるだろう。教母様の案件もそうであろうが組合副総長としての雑務が増えるのだ。
「さて、組合副総長様の疑問にお答えしますが。まずはお詫びを。
私奴の夫君(お試し婚中)は人種人類の言葉を理解しますが話す事は出来ません。
最近、馬鹿とか尻の穴に指つっこむぞとか野盗崩れの暴言中理で御座いますの。
ほ、本当のことでしょ?夫君。大体夜中に食堂でつまみ食いはお辞めなさい。
ぽっこりお腹のちょっと可愛い小餓鬼族の癖に。
コホン。失礼しました。先ずはこちらをお読み取り下さいな」
教母のお小言に文句を言いたげにもギャギャアと鳴きつつも間にある卓の上に大きめの羊皮紙を広げて来る。
見慣れた人種人類の文字と言うものは少ない。羊皮紙の上に黒炭棒で書かれるのは依然よりも数をこなし
練習を重ねて滑稽でもわかりやすい絵物語である。これなら長い物語でも自分のペースで頭の中に刻む事も容易い。
最初にきが付くのは羊皮紙の真ん中に書いて置かれる自分達が住む街である。
其の半分は貴族と中央区民がすむ貴族中央区である。当然その周りは屈強頑丈な石壁が守りを固めてもいる。
個々には貴族お抱えの騎士団が常駐し物資も食料も兵站物資も山と備蓄してる。
同じ名前を冠すると言うのに其処から先は城壁と言う守りなど一切ない平民区と教会のある貧民街
其の周りを普通の森が広がるが奥へ進むと魔物が獲物を狩る守りが大きく包む。
組合事務所に掲げてある地方地図は良く観ていても魔物が描く世界を実際に観てみる人種人類が
以下に安穏とくらしているかも良く分かる。自分達の街をぐるりと囲むのはやっぱり魔森であり
彼等が本気で人の肉の味を覚えたら二晩の内にこの街は魔物に包囲されるだろう。
自分の組合と貧民街などいざ知らず、石壁の向こうが何日持つかが問題だろう。
それもそんなに長いあいだは無理だろう。此の絵巻が示すのは其れを問題にしてはいない。
其れを描いたのは小餓鬼族としても、其れはさて起き。問題にしてるのは魔森のそう深くない場所に
示された地図の比率としては結構大きな小餓鬼族の巣穴である。
綺麗な字でその上に緑肌禿頭の小餓鬼族の巣(大)と記載がある。
しとやかにもちょっと丸くも可愛い字であるからきっと教母が木炭棒を持ったのだろう。
そぐるぐると黒く何度も丸で囲った其の巣はきっと緑肌で頭の禿げ上がった小餓鬼族の巣であろう。
(大)と書かれてるから大巣を示しているのだろう。其処からわらわらと牙を剝いて小餓鬼族が出て来て
乱杭歯をむき出しに屯してる。この巣穴の事は組合でも把握してるし被害が出て居るのも承知している。
この街の北方の二つ先の村に襲撃があり半壊している。避難民が逃げきてこの街の貧民区が膨らんでいる。
組合でも討伐隊を組むべきだと自分を初め声を上げるも肝心の組合長は中央区の貴族の接待で忙しく私腹を肥やしてる。
但し絵巻の周りにはわらわらと小餓鬼族が書かれているし中からもこれでもかと出てくる様が描かれてる
「大繁殖ですか?これは・・・」
「飽きないの。飽きちゃ駄目。じっとしてるのも仕事でしょ?おやつ持って来てもらうから。
あっ、失礼。おほほ。大繁殖では有りません。其の可能性を含んだ巣溢れと呼ぶ物です。
私奴達には馴染みがありせんが・・・。脚ぶらぶらしないの。大人しくしてなさい・・・。
だっ、誰かおやつ持って来て。おやつ。・・・こほん。寧ろ問題は此方ですの。私も知りませんでした」
若い役人が絵巻を覗く間黙っているのが退屈なのか緑肌濁る小餓鬼族は退屈そうに椅子の上で脚を振る。
片手で夫君(お試し婚中)をなだめながら絵巻の左を細指で示され覗きこむと自分の眉間に皺が寄る。
冒険者組合でも把握してる小餓鬼族の穴であるが其処に巣溢れと言うものが起きているらしい。
これは合点がいく。巣溢れ。ここは小餓鬼族共が偶然にも大量発生しすの周りの獲物を食い尽くす
それでも足りないから脚を伸ばし他の餌場を探して更に悲劇が巻き起こる。
近隣の村が餌食になったのがその証拠だろう。組合としては個々を潰せば其れで終わると考えていたが
教母の夫とやらが示す状況は更に悪い。絵巻の最初に刻まれた巣の印はさっきの他にもう二つあった。
それぞれに(中)と(大大)と書かれいる。中位の巣の周りは先程と同じ様に小餓鬼族が溢れている。
大が二つの巣も満杯で溢れ出してる。限界が近いという事だろう。
「若し。若しですよ。此の大きな巣が溢れたらどうなるんですか?」
事の大きさが頭の中に渦巻きキュンと腹が収縮する。
やっと話が進むのかと蒼肌濁る小餓鬼族が長椅子から身を乗り出し腰鞄から札を選んで机に並べる
「小餓鬼族は・・・水にそって歩く。川にそって歩く・・・あっ。これは不味い。
すごく不味い。大きい巣の奴等が溢れて川に剃って歩けば中くらいの奴らと合流する。
大きい巣と中くらいの巣の奴らが合流して川にそって歩けば此の大きい巣を通る。
・・・・其の先は此の街ですよ。個々じゃないですかっ?何時です?いつ頃です?」
「今の所は大丈夫でしょう。来年の春くらいじゃないかと夫君は睨んでますの。
もっとも時間は無いでしょう。其のために準備しないければなりません」
「春って。来年の春って。半年くらいですよ?どうするんですか?どうしたらいいんですか?
ぜ、全滅ですよ。こんなの攻めてきたら。僕ら全滅ですよ。」唾を飛ばし思わず椅子から立ち上がる
「落ち着きなさいな。落ち着いて。おやつを頂きましょう。対策も準備してますから
ちょっと。それアタシの分でしょっ。貴方のはこっちでしょ。全く油断も隙もありゃしない」
粛々とあ礼儀だたしく運ばれた盆の上の柔菓子を自分の分だと手を伸ばす小餓鬼族と
其れを阻止しようとポカリポカリと頭を叩く教会の長教母。
其のやり時は微笑まし行くも滑稽であるが此の二人は本当に事態の重さはわかっているのだろうか。
「お役人様もどうぞ。ご遠慮なく」
「有難うで御座います。では黄色居やつを。あと出来ればもう一つ箱に詰めて頂けないでしょうか?
妻が懐妊致しましてね。もとからちょっと太ってましてね。分からなかったのですが
夫として面目ないですね。詫びに甘いものでもと思いましてね。ははっ」
「其れはおめでとうざいます。私達からも何かお祝いさせていただきますね」
子は鎹、幸も福も山高く積み上げたし。と言うが如し互いににこやかな笑みが漏れる。
柔菓子を刺し串でさして口に運び甘くも渋い紅茶を啜る間、やたら座り心地の良い椅子に座り雑談に興じる。
役人は教母に小餓鬼族との馴れ初めを聞いてからかい。
教母は顔を赤らめて役人の若妻女房の体を労って祈り言葉を捧げ頭を垂れる。
蒼肌濁る本編の主人公で有りながらも禄に台詞の少ない小餓鬼族は暇つぶしに一人博打の賽子を振って遊ぶ。
その日は結構遅くまで教母と小餓鬼族との密会に時間を取られ自宅にまっすぐ帰り正式に
嫁から懐妊報告を来て見上げの菓子を二人で分かち合い慎ましく心温る時間を過ごせたの幸せだった。
翌日の朝。
教母の案件をこなすのは厄介であると気を引き締めて組合の玄関に歩むと様子が変である。
貧民区の隣の平民区の中にあるとは言え妙に騒がしい。大工職人が木材料を運びこんでると思えば
玄関の看板を取り替える為に降ろされている。首を回せば馬車の上に布に包まれた新たな看板が積まれている。
教母様は随分と仕事が早いなと思えば見慣れもする油顔の冒険者組合長が息を切らして疾走ってくる。
「ふっ。副組合長昇進おめでとう。
然し、然しだね。私の扱いがなんでこうなるのだね?上司だよね。儂。
君の上司だよね?観てくれたま。儂の部屋はあの小屋だぞ。しかも解体小屋の隣だから匂いがきついのだ
それに中は机と椅子とランタン一個なのだ。そこで仕事しろと言うのかね?上司だよね?儂」
脂ぎった手でう腕を掴んでは揺らし半泣きで唾を飛ばし喚くてくる。
「手続き上の問題で御座います。教母様の案件を処理するには福組合長のこそが適任なのです
貴方はお飾りです。ですから仕事場はあの小屋です。押し込めておいて下さい。
福組合長様、午後には冒険者を集めて会議が始まります。準備事項がありますので早速中へ」
此の日此の時から平民区の冒険者組合は大きく変化する。
冒険者が集まる建物は拡張工事が施され幾つもの形態に対応する。
先ず、赤い腕章を腕に括る副組合長が仕切る魔物討伐任務を担当する騎士団所属の冒険者
其れに付随する事案を担当する随伴部隊と補助を担当する組合員。
羨望の的となるのは魔物討滅騎士団であるが此方の整備にはまだ時間が掛かるだろう。
腕に白い腕章を括る職員は依然と変わらぬ魔物討伐を担当する冒険者する。
主に赤腕章の輩が組合を仕切るが其れを白腕章達も良く支えている。
差し迫る脅威はそれだけ大きいのだ。
「まずは脛に傷持つ馬鹿であるが腕の立つやっぱり馬鹿な奴を使って斥候に出す。
かわりに周りを精鋭で固める。窮地に陥っても最悪其奴を囮に差し出して皆が帰ってくれば
無事に情報は持ち帰ってくれる。最善の策である」
教会で一度座りその心地よさに惚れ込んで態々赤鼻商会の者に発注して取り寄せた椅子から
立ち上がりもせずに副組合長が言い放つ。
「その馬鹿であるが腕の立つやっぱり馬鹿な奴てのは俺様ですか?」
先日に巨躯小餓鬼族に四肢を痛めつけられ裏路地に捨てられた斑肌の漢が項垂れる。
馬鹿をやってしまったから長い名前を人前で叫ぶのも最近は控えてる。
馬鹿の代名詞と皆がよくしるからだ。
「適任であろう?君しかないだろう?君が囮になれば皆が助かるんだ。
教母様に借金があると言う事は赤鼻商会に借金があるのと同じ事だ。
つまり君は私に借金と仮があると言う事である。間違ってないだろう?」
「ごもっともで・・・・」無茶な理屈であるがどの道首は回らないのは正しい。
爛れ肌の漢に逃げ道などは最初から無いのである。
青肌濁る小餓鬼族・ヒュッテン
縁と因縁とちょっとした用事を雑多な道具を腰鞄に詰め込んで、此の街に潜ってる。
この街に来る前は山三つ向こうの別の魔森に寝を張って暮らしてみ来た。
親が構えた巣の位置も良く喰らって散らかす獲物も多く人種人類の物図りで言えば裕福な家庭で育つ。
ヒュッテンがちょっとだけ不幸だったのは次男坊ということである。先に生まれた兄小餓鬼族が
性格も悪く馬鹿でもあったがヒュッテンよりも先に生まれただけという理由で親の巣城は受け継げなかった。
当然の如くある日突然に巣城から追い出せれたヒュッテンであるが小餓鬼族である。
小賢しくも逞しくも己の欲求と腹を満たすために孤軍奮闘の毎日を送る。
何故だろう。ヒュッテンは少し変わっていた。最初こそ山にこもって悪さに明け暮れて致し
直ぐに其れは山賊紛い悪党三昧の生活に身を堕とすことになるが意外にも其れに早く飽きる。
次男坊、大海を渡れば世の塩波に揉まれ歩いて棒に当たれば、その背に威風堂々と情と力纏けり。
人種人類の戯言然りであるが。山賊の真似事に飽きれば人の肉にも呆れて来る。
泣き叫ぶ雌の尻肉に鉤爪を食い込ませて痛みを上げ快楽と痛みに耐えかねて果てる姿を眺めるのは
確かに楽しい。だが然し大抵の場合は余りの刺激に人種人類の雌が先に白目を剝いて生き果ててしまい。
自分は禄に満足も出来ないのである。途中で勝手に白目を剝いて気を失って雌の壺に出るべき物を出しても
何の快楽も面白さも感じなくなったのである。まぁ何人かはヒュッテンの責めに耐え互いに快楽を貪ったが
彼自身が経験と月日を重ねるとそれに耐えられる雌の数も減っていく。
時には満足出来た事も有るはずだからどっかの雌が孕んで子孫を産み落としたかも知れない。
尤も何故か一箇所に留まる事を嫌い筋城も持たない流浪の小餓鬼族であったからその他と何かあったかなんて
覚えても居ないし興味もない。
世の常には学問と魔法と言うものが存在するが、生活の中に根付く魔法とは違い学問は、其の多くが本に記された
知識であっても一般庶民は本を開く事もしないのでは有るがもの好き学者は確かに偏屈で探究心とは恐ろしい。
巣溢れ戦の後から戦斧の餌食となった小餓鬼族の頭を回収し解剖した其の学者曰く。
小餓鬼族の脳みそを食するには適してもなく、確かに腹を壊したがその大きさは人種人類の其れより大きい。
つまりは時にずる賢いのは人種人類より頭がよく。時に冷酷なのは本能よりも効率を選択しているからであり
美食と言えば舌も肥え勇猛と言えば縄張り意識を強く持ち、時に忘れぽいと視えても実は違う。
とぼけて誤魔化してるだけであり経験を記録してる部分は人種人類も大きいも騒ぐ。
感情の波は激しくてもその種類も多く人種人類と同等に憐れみも情も慈悲さえも持ち合わせているが
大抵の場合は其れよりもめんどく臭いと言うのが本当の所である。表に出さなくても頭の中では
結構いろいろ考えていたりもするらしい。魔物特有の癖と習慣もそれらを抑制してるとも考えられるとか。
脳みその大きさはと機能の複雑さは人種人類の其れを遥かに超える可能性を秘めているっと、
其の学者は声を張り上げつばを飛ばすがコツさえ掴めば簡単に狩れる小餓鬼族が頭が良いはず無いだろうと
一蹴されるも馬鹿にされ、小餓鬼族は人種人類よりも頭が良い説はその学者が残した一冊の著書の文字だけに留まっている。
小餓鬼族を初め確かに湧き上がる感情に翻弄され癇癪を起こすが、其れも意外にも高等生物故の現象である。
此の街も大分同胞が潜り込む様になった。
結婚とかいう奴?訳の分からぬ約束事みたいなの。それにはまだ時間が掛かるらしい。
色々と自分なりに調べてみると何となくわかって来るのだか、結局は雄と雌が長い人生を一緒に暮らす事らしい。
どうせする事は誰でするんだし、楽しみは多いほうが良いんだから早くすませば良いと思うのだが
「互いの気持ちが大事なのっ。愛はじっくり育てるものなの」
椅子に座って脚をぶらぶらさせただけ悪鬼の如く起こる教母とやらが口を尖らせ煩く吠える。
それでもある程度の協力してくれて入る。礼の巣溢れの事を冒険者が集まる場所に知らせてくれ
街人の噂言葉に乗るようになった。ある程度で合っても皆が知るようにもなって来てる。
それでまではやっとちらほらと見かける程度であった同胞の輩も比較的大人しくも街に紛れ込んでいる。
其のはずであろう。手順は有る。結構厳しいのである。
後学の為についさっきその街の入り口にだどり付いたばかりの小餓鬼族の様子を伺って見よう。
其奴の名はモグリショウバイ。肌は灰色の一色肌だ。背には少し大きな背負子を背負ってもいる。
当然の如くに街に入るには検問がある。交易街と言わずともそれなりに人が集う場所で有るから
役人の前にやっと立つ頃までは随分と時間が立っている。
「あの・・・よろしくお願います」
腕っぷし自慢でも体力自慢の検問衛兵はずいぃと自分の背の高さから首の位置を動かさず
目玉だけ動かして人種人類の子供くらいの背丈で頭から深く頭巾を被った奴を睨み見る。
「あの・・・私・・小餓鬼族・・」次の言葉を吐き出す前に怖そうな衛兵が唸る。
「ぎゃんぎゃっ」正直聞き取りにくい。此の街に始めて訪れる物が聞けば驚くだろう。
厳つくも強面の衛兵が槍の柄を地面に付きたてたまま微動だにせずに唸るのだ。
「ぎゃんぎゃっ。ぎゃんぎゃっ。ぎゃ」確かに聞き取りにくいけども小餓鬼族モグリショウバイは理解できた。
「あっち。右の石壁の土溝の方。君達の専用入り口」と教えてくれているのだ。しかも丁寧語である。
つまりは建前である。人種人類の住処街に魔物を堂々を入れる訳には行かないのある。
己の背の高さと小餓鬼族の背の高さを利用して視界に入らないふりをして誤魔化しつつも
律儀に案内をしているのだ。しかも衛兵はできるだけ正確であり尚且つ丁寧な言い回しを選んでもいる。
「あっ有難う御座います。お仕事ご苦労さまです」モグリショウバイは驚きなからもペコリと頭を下げる。
「ギャンポンぎゃ」(溝になってるから足元注意だ)衛兵が言葉を返す。
少々不思議な光景であるがモグリショウバイが脇に退けて去っていくのを観れば周りの者は
なにか事情があって入街を拒まれたのだろうと考える。恐らくは通行証に不備でも合ったのだろう。
発音はいまいちでも丁寧言葉の衛兵が教えてくれた通りに城壁を暫し進むとボコリと穴が視える。
斜め堀り担ってる土溝を歩いて降りていくと何故か子供が二人と参人、土の上に絵を書いて遊んでる。
きゃっきゃっと楽しげに声を上げて喚いているがモグリショウバイの頭巾姿を見ると
急に真顔になってモグリショウバイをかこんでジロジロと睨んでくる。
「小餓鬼族のお兄さん?お年はいくつ?」喧嘩早そうなわんぱく少年が声を上げる。
「なっ、7つだよ。7つです」あまりに顔を近くまで寄せてくるので思わすたじろいでしまう
「小餓鬼族で7つってのは成人してるのね。成人してない小餓鬼族さんははいれないんだよっ」
人種人類の子供の雌は推すと見分けが付きづらい。声が高いのが雌と聞くから此の子は雌だろう
「あっ。あの。観光ですか?お仕事ですか?それから武器の類は一時預かりです。此の袋に入れて下さい」
たの二人よりもちょっとだけ背の高い子雄の雄が頑張ってるぞと言う風に声を張る。
「えっと、観光半分。お仕事半分です。巣城名産の草菓子を売りに来ました」
「おっお菓子なの?お菓子売りさんなの?美味しいの子雌がめを輝かせる」
「草菓子って言ったぞ。不味いんじゃないか?草だぞ」
「わ、賄賂はいけません。賄賂は贈収賄罪です。ちゃんと仕事しようよ。ねっねっ」
「ええ~~~~~。いいじゃんちょっと位。草菓子食べてみたいの」
「駄目駄目。はい。武器はこれだけですか?袋に封して起きますから中で検査して貰って下さい。
此の黄色い札を持って参番窓口に言って下さい」ちょっとだけ背の高い子雄が告げる。
「よしっ。お仕事終わり。続きしよ。次は誰だよ」
「待ってよ、私よ。私。賽子頂戴よ」
「参番ですよ。参番。其処の扉の奥ですよ」
遊びざかりなのだろう。言うだけ言うとさっさと賽子遊びに夢中になっている。
こんな子供も仕事してるなんて人種人類の生活は不思議でもある。
兎に角、言われた通りに扉を開けてみると其処は雑然とも荘厳たる世界が広がっている。
土溝深くまで斜めにお降りてきたから土の下である。
まるで小餓鬼族の巣城のように地下にある部屋であるが結構広くも四角の形である。
旅を続けて魔物の規制も最近ゆるくなったと噂の街に来てみたがモグリショウバイ自身も
観た事のない種族も多い。
ひらりひらりと尻尾を揺らすも祈願悪そうに口論してる豹柄肌の雌。
口論の相手はどうやら人種人類の赤毛の雄で或ろうが林檎をかじり態度も悪そうだ。
林檎をかじりながらも豹柄の雌に向かって声を張り上げ唾を飛ばす。
同族の姿も視えるがモグリショウバイは背筋がぞわりと凍る。
なにやら羊皮紙を覗き込み地図でも確認してるのだろうか。これからの旅路の日程を組んでるらしい
(あの人は駄目だ。玄人だ。戦ところか商売も雌の扱いにも長けている違いない。怖いって)
背負子を背負い直しこっそり歩き出す目の隅にやたら大きな大牙鬼族姿が写ってくる。
豹柄雌と赤毛の雄が吠えて唸っている脇で吾感ぜすとばかりに床に腰をおろし
匠に編み棒を扱い編み物に勤しむ。だたし編んでいるのは毛糸ではなくて鋼鎖だ。
鎧の下に着込む刃避けの鎖下着に違いない。
「はぃ。次のかた、参番窓口の札を持ってる方ぁ~~」
自分が呼ばれたと誘って足早に窓口の女性とモグリショウバイは対面する。
「こんにちは小餓鬼族さん。其の背負子は商人さんですね。
あっ。失礼。今日は忙しくって。ごめんなさいね。
えっと、初めから説明します。宜しいですか?コホン」
長い髪を留め金で後ろにゆって止めた窓口の女性が口に手を当てて姿勢を正す。
「先ず。其処の足代の上に立って下さい。似顔絵を描くのに視えないといけませんからね
顔と四肢の力を抜いて下さい。態と変顔しちゃ駄目ですよ。しゅるしゅるしゅるっと
ウンウン。似てる似てる。っと毎日書いてますからね。小餓鬼族のお顔。
意外と面倒なのは大牙鬼族なんですよ。牙の本数が違うって良く怒られるんです。
っと、これから対面筆記を行いますの。
小餓鬼族さん達の印文字は私達には読めませんし其の逆もそうでしょう?
ですから、お話をして私が人種人類の文字で代筆します
ここでの申請が証明書そのものになりますから正確にきちんと答えてくださいな。
お分かりですか?小餓鬼族さん」
「はい。宜しくお願いします」
「では、お名前はとお仕事は?」
「モグリショウバイです。行商商人です」
「モグリショウバイ・・・さん。う~~ん。お名前に文句をつけるのは失礼ですが
人の言葉の意味は印象が悪いかもですね。この街で人前で名乗る時は二つ名が多いんですよ
う~~~ん。灰色肌大背負子の小餓鬼族様にしましょう。覚えて起きてくださいね」
良く分からなずとも自分の名は人種人類との商いには剝いてないのかも知れない。
モグリショウバイはモゴモゴと口の中で自分の新しい二つ名灰色肌大背負子の小餓鬼族を何度か言ってみる。
「泊まる所はありますか?」
「今日来たばかりでして巣宿はこれから探そうかと・・・」
「っとですね。
この街が最近魔物の出入りの規制がゆるくなったばかりでしてね。ええ、教母様のご意向なんですが。
正式な行政も法律も整備過程なのです。したがってお金を払っても表だって魔物が泊まれる宿がないです」
「やっ。宿がないんですか?そりゃ困る。困ります」意外な状況にモグリショウバイはうろたえる。
「大丈夫ですよ。お表立っての宿泊はできませんが別の方法がありますから
これは小餓鬼族がよく使う手法でして。貧民区の住人宅に居候するんです。
貧民区には教母様が管理する教会もあるのでもしもの時の対応も出来ますし
住民の方々に小額のお金をお支払いしてかわりに寝床を提供してもらうのです。
勿論、貧民区の住民と言っても街の住民ですから此方でも把握出来ております。
どの小餓鬼族さんが何方の家に居候してる管理してるので身元確認も出来るのですよ」
「そっ。それでお願いします」
始めての街でいきなり人種人類の家と言う巣に居候と言う物に成るのはちょっと怖い。
それでも魔物が宿に止まれないとなれば其れしか無いのだろう。頷くしかないのが不安でもある。
「では、そっちの手配もしますが、個々が終わったら十二番窓口にいって下さいな。
後はこんなかんじですね。あっ赤鼻商会とのつなぎは隅の赤い頭巾の小餓鬼族ですよ。
それから教母様へのご挨拶は忘れないでくださいね。忙しい方ですが力になってくれすはずですよ」
「有難う御座います。教会の教母様の挨拶は早速行って参ります。
それから検問のお役人様と土溝の子雌達にこれを渡して下さい。
わっ賄賂では御座いません。良くしてもらったのでお礼です。お礼っ」
こうするべきと頭に浮かんだが同時に賄賂と言われるを嫌い強く否定し草菓子を人数分と
目の前の受付嬢の分を足して卓の上に並べ頭を下げ足台からモグリショウバイは跳ねて降る。
その後にかなり近況したが教会の教母を訪ねて見るがあいにくも外出中であり出迎えた修道女に
頭を下げて挨拶すれば。次は貧民区を訪れは始めて人種人類の家で居候として一緒に食事となる。
新しく此の街で商売に生を出す小餓鬼族もいれば、そこそこ長い間に腰を据えて商売に勤しんでいるのに
なかなか目が出ないと言うか寧ろ働けど働けども出費ばかりかさみ短い首が回ら無くなっている者いる。
名をヒンモ。うっかりその辺の太った人種人類の叔母さんとやらに名乗ると怪訝そうに目を細められる。
何か人種人類の言葉で悪い意味のとそれと似てるらしい。
ヒンモはたの小餓鬼族と同様、魔物の出入りが比較的緩いその街で腕試しとばかりにやってきが小餓鬼族である。
尤も運とめぐり合わせは昔から悪い。向かう先々で出会う輩の縁はいつも最悪だった。
それで人種人類の輩は幅広い感覚を磨き、時と場所によっては魔物とも共存も全くないわけでもないらしい。
そんな話に期待を込めて最近、小餓鬼族の夫(試験運用中弐ヶ月目)と大喧嘩してる教会の教母が
提唱する小餓鬼族巣溢れ対策強化月間促進委員会が跋扈する街にヒンモや自分の傍を建てようとやってくる。
打が然しにやっぱりと後からじっくり考え混んでみると何度思い返しても最初に外れ籤を引いていたらしい。
石壁の横を回って子供たちの最初の面会も其の次の手続きも悪くはなかった。
但し、緊張の余り言われたこ事の幾つがが余り大事な事には思えずに後回しにしたのが手落ちである。
街に到着したのが夕方近くだったしそれから手続きとなれば自由になったのはそれなりに遅く。
ものめずらしさに街を歩けば貧民街に付くまでに結構迷い。人種人類の鋭い視線が突き刺さって気まずくもあり
やっと貧民街にたどり着いた居候先。温かい食事と柔らかな寝台を想像したのは間違いである。
大体にして居候宅の扉を叩いても鍵など掛かって折らず、拳をぶつけた勢いで勝手に扉が開く。
誰も居ないのかと思って中の覗いても肝心の住人も居なかった。
手続きはおわってるはずだから間違いも無いはずであるがと室内に入り荷物鞄を床に置けば背後に気配がぽっと湧く。
「わ、吾は小餓鬼族のヒンモ。料理人である。今日から個々に居候と言うのをするのだ。よっよろしく」
余りに気配もなく背後にぽっと枠ので驚いた。人種人類と言うのは噂に聞く盗人忍びの技を心得ているとでも言うのだろうか。
「あっそう。私はメタヌフィリーネ。売春婦だよ。
台所は個々。二日前の草のシチューが鍋に入ってるから勝手に食べとくれ。
用足所は共同だから広間の反対側のすみっこだよ。風呂桶はこっちの奥だけど覗くなら銅貨2枚。
冷蔵庫には何も入ってないから適当に使ってくれ。私の分は名前書いてあるから勝手に食べたら百叩きの刑。
弐階は仕事場だから咥得てる時は邪魔しないでおくれよ。寝台は一個しか無いからアタシと一緒だね。
爪を立ててもいいけど余り深い傷は勘弁しておくれ。客がひくからさ。
んじゃ、家賃は週銀貨四枚だよ」メタヌフィリーネと言う人雌は言うだけ言うとぬぅっと手を前に突き出す。
言われた通りに銀貨を手の平に乗せた時鉤爪の先が触れたが随分とや分からそうな肉でもあった。
「んじゃ。宜しくぅ」
乗せられた銀貨を目を細めて数える確認するとくるりときすびを返して弐階への石段を登っていく。
此の時ヒンモは人種人類の生活習慣とか事情とか職業とかの知識はなかった。
感じたのは妙に甘たるくくもきつい香水と言う物の香り。これが結構きつくて鼻があ落ち着かない。
スタンフィリーネの背中の半分まで届くかと言うような長い髪。
さっきまでこっちを観ていた時に目が吸い付いてはなれなかった重そうな乳房。
振り返って石段を登ればざっくりと背中まで空いた白い服と布がピッタリとくっついた大きくも丸い知り
つまりは小餓鬼族の本能的な部分がむくりと猛りスタンフィリーネの話も余り聞こえても来なかった。
メタヌフィリーネという雌は随分と怠惰な生活を好むらしい。全うに就労してるかどうかも怪しい。
「なんじゃ~こりゃ~?草のシチューて言うより泥水だぞ?
その変の草を千切って泥水で煮込みでもしたのか?ひどすぎる。あんまりだ。ぺっぺっ」
多分メタヌフィリーネは料理と言う言葉を知らないのに違いない。
古ぼけた鍋に庭先で千切った草に水を打ち込んで煮込んだだけだろう。
かすかに塩の味もするからかろうじて料理したとでも言うのだろうか。
兎に角、とにかくである。人種人類と魔物の味覚の違いは合ってもこれを料理と言い切るのは言語道断。
ヒンモは勢いにまかせて勝手に台所に立つと気合を入れる時だけ使う調理器具を背負子から引っ張り出すと
手持ちの食材から人が食べられそうな物を選び手早くもちょっとは気を使い
小餓鬼族風味・人の口にもきっと合う山芋ハーブと羊肉の煮込みシチューを作って魅せる。
「いい匂い。・・・それ私の部分も有る?」
「ぐぎゃ。何だいきなり。近い近い。それに煙草くさい。けっ健康に悪いんだぞ。煙草は」
「ねぇ。私の分あるって聞いたのぉ?」人一倍大きな乳房をヒンモの四肢に押し付けて強請ってくる
「あっあるにきまっているだろ。家主の為につくったのだからな」
「じゃ。食べさせて。あーんして」
「はっ。それはなんだ。飯くらい自分で食べられるだろ?」
「やだっ。食べさせて。あ~~ん」
「何だ。此の雌。行儀悪いぞ。小餓鬼族を舐めてるのか?
兎に角。座れ。行儀よくするんだよ。肘をつくな。しゃんとしろ。背筋を伸ばせてっば」
洞窟の地べたに座って焚き火を囲み肉塊を食らう小餓鬼族の方がまだ行儀が良い。
少なくても種族の長が最初の一口を食べるまできちんと待つし、渋々であっても後始末もちゃんとする。
それに比べてメタヌフィリーネの食事態度は酷すぎる。
最初に有った時からどこか惚けた印象であったが椅子に座らせるともっと酷い。
頭が朦朧とするのか目の焦点があってるのかあってないのかもわからない。
其のくせ水を飲ませると生き返ったように極々と喉を鳴らして飲めば
ニンマリと笑い口をあけてヒンモが縁の掛けた皿から掬うシチューを嬉しそうに啜る。
しかも結構な大食いでも有りおかわりも強請るが其れ以上に多くの水も飲み干しす勢いである。
人の食事と言うのは随分とだらしないものだなと鍋の殆を平らげると卓の上にバタリと倒れ込み
ずぅずぅと大げさに鼻息を立ててそのまま寝倒れてもしまう。
「やれやれ。居候とは言うのは家主とやらの世話をするということなのか?
よくはわからんが随分と面倒くさい宿である。困ったもんだ。うはっ。吾の分。少なっ。少ないって」
料理人身寄りに尽きると言えばそうであるが自分の賄分位は最初にとりわけて置くべきであった。
卓に突っ伏していびきを描いて眠りこける家主の体が冷える前に味わう暇もなく腹にかっこんで片付ける。
「あっ、あっ、あんっ。素敵。剥げた頭親父の癖に上手。あっ、あっ、あんっ」
確かに聞き覚えの有る調子の声が大きな耳に届く。始めて人雌を犯した時に聞いた喘ぎに似てる。
声の高さからしてあの家主のものだろう。然し何か変である。平衡感覚が間違っているのだろうか?
家主の声も変な響き方をして届いてる。目を開けゴソゴソと手を動かすと視えたのは床ではなく天上だ。
其れに妙に汗臭い女物の下着が顔の前に掛かってる。お陰で家主のお股の匂いが脳裏に刻み込まれる。
ごそりと鉤爪を動かすと何かの縁に引っかる。其れが編み籠であり四肢を動かして体勢を整えると
自分が編み籠の中に上下逆さまに詰め込まれていたとやっと理解出来た。
「あっ、あっ、出しちゃ。だめ。でてきちゃ駄目。あんあん」
「何を言ってるんだ?未だ入れたばかりだろ?逝きたいのか?雌売女」
「あんっあんっもっと付いて。もっと責めて。激しくぅ。でも出ちゃだめ」
激しくも声を震わせ喘ぐが言葉尻が変なのは跨る醜漢へではない。
下着入れの編み籠に身を潜め頭だけ出してメタヌフィリーネと醜漢の情事を盗み観るヒンモへの警告で有る。
メタヌフィリーネは仕事中であった。きちんと就労していたのである。確かに手と四肢をつかう仕事でもある。
昨日に街に付いたばかりだし疲れも溜まっていたの遅くまで眠っていたのかとおもえばそうでもない。
普通より少しおそいで或ろう時間帯であるが午前中とやらの時間でもある。
単にメタヌフィリーネの客が待ちきれなかったと言うのだろう。
予定よりも早く来た客なのかそれとも飛び込みなのか分からずも其の暇なく取り繕うと
昨夜は一つしかない寝台で眠った小餓鬼族を慌てて編みカゴに突っ込んだのが正解だろう。
下着入れの編みカゴの中で息を潜め人雌と人雄が抱き合って交尾する様をヒンモは始めて目の当たりにする。
巣の地面に乳房を押し付け擦り付けさせ手と腕をつかみ尻を突き出させた股ぐらに突っ込むのとは違う。
人雄が寝台の上に胡座に座り其の股ぐらに人雌が脚を開いて座り込む。
大きくい乳房を魅せつける様に上下にぶるんぶるんと揺らしその片方を人雄が手で掴んで揉みしだく。
ギシギシと寝台が軋んで揺れる度にメタヌフィリーネはのけぞって快楽を貪る。
「はぁはぁ。あん。其れはだめ。やっぱり貴下が一番いいの。ああっ」
一つ激しくも声を上げ乳房を人雄の顔に押し付け埋め一層激しく尻を押し付けて弓なりに喘いで
汗と涎を飛ばしメタヌフィリーネは快楽の中で身を震わせて息を止めぶるりと四肢を揺らして逝き果てた。
「ちっ。また、途中で逝きやがったか、早漏野郎の雌売女め」
御前自身もそうであるとは観れば分かるのは
メタヌフィリーネの牝壺がごぼりと白濁を泡と一緒に吐き出したからである。
惚けて頭も回らずも咽るメタヌフィリーネを置き去りに人雄は鏡台の上に幾枚かの金と
何やら黒い塊をごろりと転がす。悪態の一つも吐いて捨てて石段を降りていく剥げた頭の人雄が姿を消す。
「家主殿?お仕事ご苦労さまである。大丈夫か?大層な運動量が必要な仕事であるな?」
昨夜は随分とだらしない雌だと思ったがきちんと仕事をしてるとは偉いものだと労った途端
「うげっ。げぇぇ~~」一つ唸ったと思ったら胃に貯めた物を床にぶち撒ける。
「うぉ。大丈夫であるか?家主どの。これにこれに・・・」
雑多に物が転がる品々から何か器に成る物を適当にひっつかんでメタヌフィリーネの眼前当てる。
昨夜食べた物と胃酸が混じった物が結構の量となってたらいの中に注がれ落ちる。
「ぐぇ・・・。お水・・・頂戴・・・」
さっき前とは別人のようである。あんなにも声をあげ快楽を貪ると思えば
今となっては弱々しくも胃液を吐き出し口をあけて水を求めてくる。
これは人種人類であっても普通の状態ではないとやっと悟り急いで台所に駆け下り
水差しまるごと掴んで戻り与えると、ごくりごくりと喉を鳴らして一気に呑み込み
そのまま目を閉じたとばかりにずぅずぅと鼾を描いて眠り込んでしまう。
果たしてこれが正しいのかと頭をひねっても家主の世話はこれからである。
鼾を欠いて寝るのは良いが汚れた服は着替えさせないと小餓鬼族の鼻にはきつすぎる。
憚らずも遠慮せず手早く台所でお湯を沸かし布切れを探してメタヌフィリーネの四肢を拭く。
時々、うわ言さながら薄めを開けて喘ぐが四肢に力がはいらないからされるがままでもある。
メタヌフィリーネの四肢は小餓鬼族でなくても涎を垂らして当たり前だろう。
ヒンモが覚えているよりは肉付きが悪いといえば痩せている。
其の逆に乳房は大きくも張りがあれば先端の乳首は桃色だ。思わず舌を絡めて吸い上げたくもなるが
家主の仕事が雄と交わる事なら敬意を表して金を払うべきである。きちんとした職業なのであろう。
痩せてはいるが腰まわりも好みと言って間違いないくらいの曲線美であり尻も大きい。
追加料金を払えばその尻に鉤爪を立てても良いのだろうか?ぜひお願いしたいところである。
体を拭き終われば軽く長い髪を軽く木櫛で鋤いて整える。痩せ気味で頬がこけているが
顔つきは整っているから小餓鬼族の間でも人気だろう。
順番が逆で有ったが窓を開け床と桶に貯めた胃酸混じりの食べ物を態々広場の井戸裏の洗い場で流す。
衛生上他の人種人類に迷惑をかけるの不味いと思いつき結構な時間を掛けて洗い場の隅まで綺麗に掃除する。
新参者の魔物であるも迎え入れてくれた家主とこれからお世話になるやもしれぬ向こう三軒両隣の付き合いである。
初めが肝心と言うわけだ。
少々、気合が入ってしまったとばかりに掃除に熱中しそろそろ自分の腹を満たそうと居候宅にもどり台所に立つ。
此の街で小餓鬼族の郷土料理の屋台でも開こうと考えるヒンモである。
まぁ最初はほそぼそとやるの吉ではあるのだが。予定外に家主の世話が大変かもと思えば台所の隅の小皿が目に止まった。
昨夜の食事を作った時。メタヌフィリーネが草シチューといった其の草である。
人種人類とやらはこんな草を食べるのか?こんな不味いものをおもい一本鉤爪でつまんで匂いを嗅ぐ。
湯がいて有るから匂いも溶けている。然し記憶のどっかにはかすかに残る。
「それは。薬草だよ。刻んで潰してお湯と一緒に呑むんだよ。麻薬の毒に効果が有るって言われてるんだ。
貴下この辺じゃ見かけない顔姿だね。魔物かい?それなら滞在許可見せなっ」
野太くも山の如くに太った人種人類の雌(多分)が木箒を握りしめて後ろに立っている。
後で知るのであるが彼等は人種人類の中でも雌おばさんと言う非常に怖いとされる物に分類もされる。
「はっ。初めまして。わっ吾は昨日から家主メタヌフィリーネの家に居候させて頂いている。
小餓鬼族の料理人・ヒンモと申します。近隣の方々にはお昼御飯済ましてからご挨拶に伺おうと」
大牙鬼族にも勝る程に大きくて怖い雌おばさんを目の前にヒンモは恐れおののくも
いつも必ず身につけて置くべしときつく言われた滞在許可証を襟元の引張出して魅せる。
ぐいっと雌オバサンの顔が突きよってくる。落として成るものかと括り紐を短くしたのは失敗だった。
「紫肌の小餓鬼族で料理人ヒンモねぇ~~。
家主の紐かい?その逆なのかは別として性格は真面目そうだね。
洗い場をそうじするのをみてたよ。私は貴下の家主の隣の住人のアンヌだよ。
でっ?貴下。メタヌフィリーネの事情をしってるのか?」
「いえ、昨夜遅くについたばかりでして。
ちょっと惚けてますが勤労著しい御方であろとしたか・・・・」
「惚けてるのは訳がある。勤労と言うのは間違ってるね。多分。
差し出がましいと思うが・・・・ご近所付き合いは大事だしね。・・・とりあえず。それ頂戴」
確かに隣人に礼儀を立てるべきでありお茶の一杯でも出せば良いのであろうが失念していた
雌オバサン事アンヌが指さしたのは昨夜作った夕飯に水と別の具材を加えた料理である。
加減が分からずも多めに作ってしまったが結局に雌オバサン・アンヌが殆一人で腹に収め
残りも育ちざかりの子供のおやつにするからと別れ際に鍋ごと持って行かれてしまう。
それでも小餓鬼族のヒンモにとって摩訶不思議である人種人類の生態と事情とやらを
わかりやすく教えてくれたのは随分と助かることになる。
ヒンモが転がり込んだ居候宅。
その家主のメタヌフィリーネは情婦である。
一種の職業の類で有るらしいがその微妙な扱いをヒンモは掴みかけ三度聞き直した。
確かに其れは職業には分類されるが主に人種人類の間では必ずしもそうでなくても卑しいとされ
あまり評価されもせず、どちらかと言うと憚れる物であるらしい。
公然と刑法にも限りなく禁止事項ともされ、公の場では差し控える行為であるとも言われるらしい
小餓鬼族としては雄が雌を犯すのは繁殖と快楽の為の事で其処に金銭は絡まない。
それ自体が不思議でもある、雄がやりたいと思うった時にやるので犯される側の気持ちなど考慮されない。
この辺は理解できない事として棚に上げた。
問題は情婦と言う職業であっても必ずしも本人が臨んで行う仕事ではなく。
丁寧に言って大三者、悪くって悪党共に強要虚勢されて行なわれる事も多いらしい。
弱みを握られる脅さえるあるいは麻薬などを使用して強制的に言いなりにさせて情婦として働かせる。
メタヌフィリーネは其れである。初めはそうでなかったにしても軽い気持ちで其の世界に入ったのかもしれない
だが気がつけば拒んでも逃げても薬の悪夢が追いかけて来て逃げられない。
近隣の住人が幾ら助けようとしても麻薬のに縛られた心と肉体の鎖を本人が断ち切らなければ終わりはしない。
その深い沼にメタヌフィリーネはどっぷりと浸かっていた。
さて、大体の状況は何となく掴んだという所で疑問が湧く。頭の中に浮かんだ不安が膨らむと恐怖が止まらない。
「アンナ雌のオバサン。アンナ雌のオバサンっ」ついさっき顔を合わせ睨まれたばかりに凝りもせず
ご近所付き合いの礼儀も忘れとりあえずどんどんと扉を叩けば当然に鍵など掛かって折らず。
バタンと扉が開いた勢いで任せに家に飛び込み大声を上げる。
「アンナ雌オバサン。
若し、家主様メタヌフィリーネがその違法就労とか薬物所持違反等々の罪で投獄されたらどうなるんですか?」
「なんだい?藪から棒に。いくら向こう三軒両隣の付き合っていってもオバサンと言っても夫もいるんだよ
まぁ兎に角だね。メタヌフィリーネが咎人にでもなったら貴下を監督する人物がいなくなるってことだから
最低でも街には居られないね。追放って言う所じゃやないかね。このドスケベ変態小餓鬼野郎」
「つ、追放・・・。メタヌフィリーネ殿がつかまったら・・・追放。街に居られなく成る・・・
はっ、これは大変失礼いたしましたぁ~~がっ眼福で御座います。失礼しましすっ」
此の時ばかりは性欲旺盛の小餓鬼族で合っても悪気はない。
勢い余って隣の家に飛び込んでだのは良いが外は意外にも気温も高くも一仕事終わって汗でも欠いたのだろうか
間も悪くオバサンという割には巨躯であっても雌であり行水の後とでも有ったのだろう。
とっさに長布で四肢を覆う暇物なく途中で諦め、寧ろ堂々と晒した肌は水玉弾いて艷が乗る。
つまりは夫持ちのおばさんとはいえ、人種雌の裸体を間近に見てしまったのである。
「扉閉めとくれょ~~~。流石に下々の皆様にまでサービスするきないからねねぇ~~」
「はい、失礼しました。御免なさいです。眼福至極で御座いましたぁ~~」
謝罪と褒め言葉を並べて扉を締めて居候宅に戻って息をつく。
「みっちゃった。見ちゃったよ。お隣さんの奥さんの全裸。
たっ。タイプだ。そりゃ一番のタイプは家主殿である。あの気だるそうな表情で口を開ける仕草が足らない。
いや、それも良いがあの波つ脂肪の塊こそ、それも又、良しである。唆る。唆るのだっ・
否っ、今は其れどころじゃない。家主殿の体調を心配せねばならん。家主殿の健康第一に考えなかれば。
はっ、磯胃ろうは吾であるぞ?なんで居候の吾が家主の健康をきにせばならんのだ。
だっだがしかし。家主殿が咎人となれば吾の居候宅がなくなるどころか追放であるぞ
無ぐぐ。どうすればよいのだ・・・・。ええい、まずは家宅捜索だ。家宅捜索せなばならん」
常に頭の雌との性交する事が有るわけではないが、まじまじと自分好みの四肢を魅せつけられえば
本能に逆らうのも難しい。自分のやりたい事もある。はてさてどうした物かと悩むがまずは行動である。
とりあえず、家主の健康優先を第一目標に設定するのは良いが超えるべき問題が多々とある。
先ずは家主メタヌフィリーネは幸いな事か危惧すべき事なのか判断が難しいが中程度の麻薬患者である。
いきなりその麻薬をやめろと言っても言う事なんて聴きやしない。
何度か説き伏せて見たり取り上げて見るが癇癪を起こして暴れる始末だ。
大体にして人種の雌と小餓鬼族では腕力の差もあるが背丈の大小もある。
薬欲しさにメタヌフィリーネはやたらと癇癪を起こせば刃物を握り振り回す所か自傷行為に及びそうにも有る。
これは厄介だぞと思案した挙げ句に必殺の手法に売って出る。
メタヌフィリーネが好む麻薬は人種にとってはそれなりに強い物であるのだが所詮は人種が扱う物である。
魔物の生成する麻薬に比べれば子供のお菓子程度の強さしか無い。
そこで先ずヒンモは巣城で一時期流行った薬草麻薬を作ってみる。当然、そんな物を人種に使わせたら
下手をする前に腸と脳みそを壊すだろう。当然ながら弱く弱くと調整しなんとか人種の四肢に合うように
調合するがそれでも麻薬は麻薬である。こんどは中毒性は有るものの麻薬の効果を分解除去する効能を付け足す。
これで麻薬の効果事態はメタヌフィリーネが今使うものよりも効果は確かに強いのであるが
同時に其れを分解する薬品効果がも強いから今の麻薬からの脱却はかのうでもあろう。
中毒性は暫し残るかもしれないが随分と体調も良くなるであろう。
調合した半麻薬系の薬草を煎じメタヌフィリーネにも扱いやすように人種が好む水煙草の形式を取る。
ガラスの容器に温めた湯と麻薬薬草を加えて管の先から空気が入りコポコポと音がなれば中の薬が蒸気を発する
其れを吸い込めば薬品の効果が発揮される。
「むはっ。これ本当に麻薬なの?寧ろ頭がスッキリするけど。
私こんなに意識はっきりしてるの何年ぶりかしら?でもちょっと苦いのよ。ミント味ないの?オレンジマスターど味とか」
「頭がはっきりしてるのは良いことでしょ?家主殿
ミント味は薬草のことで有るか?オレンジマスタードとはなんぞやであるか?」
「居候の小餓鬼族君。手先器用なんだから作ってよ。
オレンジマスタードと桃色棘葡萄味がいいなぁ。作ってくれないと家賃上げるわよ}
「うぉ、其れは殺生である。オレンジマスタードとは兎も角に桃色棘葡萄は原材料が高いのである。
もっ、勿論努力しますです。家主殿」
久しぶりに意識がシャンとしてるのか四肢のだるさはあっても艷ぽい笑み微笑みを浮かべられたら貯まらない。
薬の問題が片付くと又次が持ち上がる。
当人も気づいている以上に四肢が弱っている。この先、情婦として仕事を続けるのにも今は無理である
しばらくは休養が必要である。
だが其れで被害を被るのは悪党である。あの薄らハゲの醜顔の人種の漢である。
「何だって。御前誰だ?俺の商売のネタに何しやがった?早漏売女は俺の物なんだぞ?」
「吾は小餓鬼族の料理人ヒンモと言う物である。縁あってメタヌフィリーネ殿宅に居候する者である。
家主メタヌフィリーネ殿は現在、肺の病気を患っているのである。
しばらくは休養しねならないのだ。貴殿の飯の種とかは知らないし、自分の所有物と言い張るなら
最初から病気になるような毒にも勝る麻薬付けにはしないで或ろう?
兎に角、もう来ないでくれたまえ。メタヌフィリーネは当分に吾が面倒見るので」
「なんだとっ。人の物を勝手に取りやがって。殺ろうってのか?この小餓鬼野郎」
「殺りあろうと言うのか?ふむん。売り言葉に買い言葉と言うやつか?
それとも本当に殺るのか?吾は構わんぞ。人種の一匹や二匹如きの始末等容易いのである」
いくら太って腹がでていて所詮に脂肪の塊で或ろうし背の大小はあっても四肢の弾力は遥かに違う
ましてや指の先には鋭い鉤爪がにょっきり生えている。
戦でも無ければ人種の世界で同族を殺すのは度胸もいるだろう。魔物であれは其れに技術も知識も必要である。
抵抗せずに震えて固まる奴など居ないし抵抗は必須である。
口の言葉だけで吠えるのは簡単であっても、少なくても魔森で生き抜くすべを知る其れこそ魔物相手に
喧嘩を売るのは具の骨頂である。
「きょ。今日のところは見逃してやる・・・」
「いや、殺るなら今個々でやり合った方が早いだろう?何故に見逃す必要が有るのだ?」
臨戦体勢に入ったヒンモは自分の鉤爪を舌で舐めて魅せるが其の言葉が聞こえない所まで醜男はとっくに逃げていた。
それでも事が片付くとはヒンモ自身も思わなかったし用心に越した事もない。
「覗き魔小餓鬼族のヒンモ君は魔物ことは知っても乙女心と人種の世間世情には疎いだろ?
ああいうのはきっちりお仕置きしないと何度でもやってくるもんだよ」
夕飯の買い物帰りにばったりと合って隣の雌オバサンがきつく言う。
「覗き魔と言うのは褒め言葉ですか?あっ違いますね。察しました・・・。
ふむ、きっちりとお仕置・・・。どれくらいきっちりしたほうが良いのでしょうか?」
買い物帰りに並んで路地を歩く雌オバサンが口を歪めちっと舌を打って首を掻っ切って見せた。
「おおおっなるほど。きっちりお仕置ですね。云々納得です」
ヒンモは納得するがアンヌとしては完全な冗談である。悪党と言えども精々半殺しが妥協点である。
「法に触れない様に人様にばれないように殺るんだよ。此の大悪党の変態小餓鬼族」
「なんか時々知らない言葉が交じるのですが・・・其れは褒め言葉・・・・
違いますね・・・はい・・・。その節は大変お世話になりました。はい」
何となく言葉の端を察すると気恥ずかしにヒンモは黙り込む。
「人様の目に触れないように殺る。後を付けて夜中に後ろからバッサリと・・・。
其れもいいが姿を見られる事も有るやもしれん。この街では表立って魔物は認めてないのだから
悪行三昧の悪党のマネごとは訳が合っても危険であると・・・。何か考えろという事であるな」
悶々と夜遅くまであれこれと考えてから三日後の午後にあれこれと手を回して目当ての物を仕入れる。
其れは結構危険な生き物で有る。癖のある生き物でもある。昔買った事が有るが世話が大変でもあり
結構苦労した記憶もあるくらいだ。但しコツをつかめば意外と従順で甘え上手でもある。
「どうしたの?こんな庭先で腹痛?居候の小餓鬼族君」
ドズンと思い衝撃が庭先で地面に箱を置いて睨むヒンモの頭に柔らかくも重いメタヌフィリーネの乳房がのしかかる。
「どひゃ。わっ吾の頭は乳置き場じゃないんですよ?退けて下さい」
「いいじゃん。今日は体調も良いし日向ぼっこよ。居候君の作る御飯も美味しいしさ
何より重いのよ。肩凝るの。乳休めよ。乳休め。で、其の箱はなんなの?」
「休めないで下さい。居候小餓鬼の頭の上で休めないでください。
これは番犬かわりの猫です。吾も最近出かける用事も多くなって来てるので
家を開ける事も多いでしょ?あの醜い奴が来てもおかしくないし。まぁ番犬代わりです」
「きゃぁ~~~可愛い。てかすごい。気品有るわ。此の猫。威風堂々美人さんだわ
私にそっくり。きゃぁ~~素敵。名前はミッシェル。ほら。おいでミッシェルちゃん。ミルクのみましょうねぇ~~」
其れまで箱の蓋が閉じられ開けられ光放たれると新しいい主人が満面の笑みで迎えてくれる。
一人は人種であろうがもう一匹は魔物であろう。以来ミッシェルと名付けられた猫は
黒髪長いメタヌフィリーネに良くなつき、あれこれと世話を焼く小餓鬼族にはほどほどに懐くように成る。
ミッシェルは魔物である。魔物生物図鑑には魔猫と記載されている。
縄張り意識がとても強く、主人と餌を定期的にくれる物意外、余り人には懐かないが物覚えは良いらしい。
小餓鬼族が巣の周りに放し飼いに番犬がわりに使う事も多い。大食漢でもあり肉食である。
警戒心も強く小柄な四肢の割りに凶暴性も高い傾向にある。人の手には余る愛玩魔物であろう。
魔猫ミッシェルが新しい家に住み着いて数日の後。この辺までは自分の縄張りとばかりに決めた場所を
巡回警備した後、自宅に帰って主人の乳房の谷間に鼻先を埋め昼寝でもしようとすると
その扉をガンガンと叩く人種が視えた。
自分の巣家に押しいろうとしてるようにも視えるから鉤爪のある奴は留守らしい。
どうやら留守を狙って自分の主人を訪ねて来たのだろう。
「帰って。もう嫌なの。貴下なんか嫌いなの」
「うるせい。さっさと開けろ。早漏売女。御前は俺の物なんだよ。
犯してやるからさっさと開けろ。此の馬鹿女」
普段は自分に優し良い主人が怯えてかな切り声を上げている。
あの鉤爪の魔物は巣家の中にはいないのだろう。怯えた主人の声だけが耳に響く。
なんの前触れもなくストンと巣家の戸板窓の縁に脚乗せて構えると
シャ~~~と唸って醜男を威嚇する。余りにも違い距離のため独特の刺激の強い猫唾が飛び散る。
魔猫独特の攻撃方法である。
「うわぁ。なんだ。此の猫。熱っ。顔が熱いぞ。この野郎」
当然に白い猫が目の前で吠えたと思ったら唾がかかり燃えるように刺激が刺さって画面出来ない。
「なっ、何だって言うんだ。猫の癖に。化け猫かよ。熱い。熱い」
それが一種の酸であると頭が回るのは知識を溜め込む人種の特権でもあろう
共同井戸まで転げ歩き何度も水で洗い流すと息を荒げ
「馬鹿野郎。馬鹿猫奴。覚えてろ」
お決まりの文句を吠えて垂れるが相手は猫である。其れも魔猫となれば尚更に意味も強がりも無意味である。
良し勝ったとばかりに魔猫はするりと戸板窓をくぐりぬけ。
息荒らげに泣きじゃくる飼い主の乳房の谷間に鼻先を突っ込んで慰める。
ヒュッテン
メタヌフィリーネ



