小餓鬼族英雄譚:A story of an Goburin Lord .Ⅴ【人面舞踏会編】

その雄は鼻が低い。極端にだ。
其の指は人種で有るはずなのに妙に長く節くれだって居る。然し指先に鍵爪はない。
其の種族は総じて背が低いと決まっているが其の推すはかなり高い
皮膚は多少の刃物で切りつけられようとも傷もつきにくい程にそれなりに弾力もあり少し湿ってる。
顔の作りなど問いかける必要もない位に当たり前であるがそれは人種の尺度を超える。
一番似てるのが魔物化物の小餓鬼族であろう。
いってしまえば小餓鬼族の顔に何となく人種の顔つくりを乗っけたような物であり
其れを隠すために彼は面を被る。始めて自分が殺した人種の漢の者である。
自分が殺した漢の以外から内側に先の曲がったナイフで丁寧に剥がして独自の手法で加工したものだ。
随分長い間使っているが自分の顔で有るからそう簡単にも取り変えられない。
そう入っても何枚かと人顔の面をも持っているが、いざと言うときにはこれが結構に役に立つ。
特に誰かの影をつけるときとか、食うに困って屋台の串焼きを盗む時。
自分の本性のその影響でどうしても衝動を抑えきれなくも、想い人の人種の女を犯す時とか。
本当の自分の正体を他人に知られない時には融通が聴く便利な人皮の面である。
何度鏡を観ても難い本当の顔を隠す人皮の面はたしかに扱いが面倒だ。
特に最初の頃に拵えた奴は内側の囲うが旨く行かずゴワゴワとしてる感触が拭いきれない。
後頭部にへと回して止める帯の材料もなかなかピッタリ来るのが見当たらず苦労もしてる。
時に何回も縫って取り替えているから趣味は裁縫と言っても構わないだろう。
細くも節くれだった指は思う以上に起用でもあり握力も強い。
秋かぼちゃの一つくらいは簡単に握り潰せてしまう。腕力も結構あるからそれと知らずに
鴨だと勘違いして鞄に手を突っ込んでくる小物悪党の頭を鷲掴みにして岩壁に押しつぶしてやるのも趣味だ。

背は高い物の極端な猫背であったり
手に水かきはなくてもその指は節ばっても長くも鉤爪はなかったり
細めの四肢に視えても結構力強かったり
真っ直ぐに二本脚であってもちょとガニ股で歩くくせがあったりと
色々に四肢の特徴が示す通り彼奴は小餓鬼族で有る
此の街には魔物、特に小餓鬼族はいないとされる小餓鬼族のそれで有る。
尤も、正確に言えば違う。類似点はすごく多いのであるが医学的には皆と同じ人種である。
人種を基本としつつも魔物小餓鬼族の特質を持っている。人種よりの小餓鬼族を言えばそれが近い。
心と意識的な物は確かに人種の雄であるが本能を司っているのは小餓鬼族の方だろう。
倫理と理性的な部分も確かに持つが、それが何処まではわからない。
一度小餓鬼族の本質に囚われると抑えが聞かなく成る。女とのまぐあいも特にそれが顕著に現れる。
傍若無人にも暴挙と言える行為を好み理性ない獣のように欲望を満たそうとする。
玄人娼婦でも眉を顰める位だし、大金を積んで承諾しても必ず手元に短剣を用意される事が多い。
吾を忘れて四肢を貪る其の雄を目覚めさせるには其れしか無いからだ。
人の四肢であっても同時に小餓鬼族の特徴も持つ彼奴。
一線を何処で引くかと言う問題を熟考する必要はあっても纏めれば、
人種の女性が小餓鬼族の巣城で無理に犯され孕んだ子が運も悪くも小餓鬼族にはなりきれず
人種と小餓鬼族の半分つづの四肢を持って母の腹から出てきた半魔物というのがしっくり来るのだろう。


人種と小餓鬼族の間の子と言えばしっくり来るが
その雄の名は偸盗(ちゅうとう)と言う。
勿論、本名ではない。字名でもない。仕事と言うよりは与えらた使命をこなすための暗号名である。
元より母がくれた名前と無いし、元より母が誰なのかも知らない。
人種と小餓鬼族の間の子として生まれ落ちたがいいが、歩く事を覚えた途端に同胞に巣城から追い出されてる。
小餓鬼族にとっても人種との間の子は彼等の間隔でも化物であり忌み子扱いである。
幸いにして彼等程ではないしろ成長が早かったのが幸いしたのだろう。
多分八才くらいだと思うのだが人種で言えば十代後半の姿にも見える。
それが短いか長いは未だわからない人生であるが、それほど食べ物には困ってないとは自分でも思う。
母の顔を知らずとも育ててくれた親代わりが居たからだ。
もっともそれは愛情とかでなく。人と小餓鬼族の間の子、偸盗を自分達の為に都合よく使うためで有る。
間者と言えば隠語であるが言葉綺麗に並べて諜報員となるのだろう。
親かわりの夜母の為に働けば最低限の飯にはありつける。
其れが偸盗の生活である。
最近の偸盗の全ては母代わりの夜母に捧げる物であり、その代わり必要な物は夜母が住まう聖堂から提供されている。
聖堂に住まう夜母であるが、彼女が偸盗の雇い主ではない。夜母は自分の直属の上司と言うところだろう。
その日も与えられた一日の任務課題を終わらせ気が向かぬし息が詰まる根城に帰らなければならないのが気が重い。

自分自身を初め本当は其処に存在する魔物小餓鬼族達を其処にはいないと言い張るこの街の駅前通り。
頭巾を深く被って屋台寿司屋でいつも持ち帰りの折りづめを買い求めてから深い待機をついて寝蔵に向かう。
本当はきちんと屋台席に腰をおろしちゃんとした食事を取れればいいのであろうが。
何せ自分は半分小餓鬼族だし、いくら頭巾の下に人皮の面を付けて居るとしても覗き込まれれば魔物とわかってしまう。
「肺、お待たせしました。お好み寿司の折り詰め二つとずんだ餅の苺餡掛パフェですね。
そちらはカップ詰めにしておきました。いつもありがとう御座います」夫も子もいるであろう色香の漂う女将が包みを突き出してくる。
大きめの頭巾の中で出来るだけ人皮の面を観られないように無言で頷いき急いでその場を離れる。
本来はきちんと礼の一つも言ってにこやかな笑顔も向けたくも成るが夜母と関わる偸盗にはそれも難しい。
本当は人との交流ももっとしたいし時には一人寝の夜が虚しくも悲しく成る時もある。
人との関わりに縁を結んで関わりを契る生活なんて間者としての偸盗には摂生し抑制するべき事である。
駅前通りの屋台寿司屋で買い物を済ませ、間者如きにも似合わない庶民の財布から糧財を吸い上げ搾取して
止まない豪商達の屋敷通りの奥門の茂みをこっそりと抜けたどり着いく有る銀行家の屋敷の裏手の地下扉にたどり着く。
贅沢極まりなくも荘厳な飾りのついた庭柱の三番目の地面の落ち葉を脚で退けて扉紐を掴んで引っ張る。
「この屋敷の住人共はいい仕事をするけど、何もこんなまで拘って偽装する事ないんじゃないかな?」
鬱蒼と茂る庭の木々が壁になり偸盗が寝蔵に忍び込む姿を見るのは殆無理である。
それなのに偸盗が寝蔵から出て外出する度に雨が振りそうな日には地下扉に態々泥土を掛けて覆い隠す。
それが枯れ葉舞う秋の日には広い庭から銀杏枯れ葉をかき集めて地下扉の上に撒き散らし偽装を心みたと思えば
ちゃっかり秋の味覚の焚き火芋を楽しんだ後もあった。勿論、偸盗におすそ分けはない。
結構思い任務をやっと終えて寝蔵に帰って来たときなどは三本あるはずの石塔が四本に成っていたり
今日は簡単な偽装だなと思えばまるっきり同じ地下扉が二つあったりした事も有り。
毎日出入りしてるのだから位置関係で流石にそれは解るだろうと開けた扉の先が落とし穴だった。
なんとまぁ、屋敷の住人総出で新しく穴を堀りそこからちゃんと正しい寝蔵に繋げている手間のかけようである。
断ってしまうが、此の地下扉を使うのは紛れもなく偸盗一人でもあり。他の者が使う事もない。
大体に知ってや屋敷の住人とは夜母を介しての味方である。多分其の筈である。
その日は屋敷の椅子に鎮座する主人の気がすすまなったのか、そろそろネタが付きたのか
地下扉の梯子を降りた所に大熊用の鉄輪罠が三つ隠れて仕込まれていただけですむ。
間者として腕の確かな偸盗であるが地下扉から私室までの土塊通路は十分に気をつける必要がある。
相手が味方であるがゆえに余計に気が抜けぬ油断大敵横断歩道は右左とちゃんと観てである。
「へっくしぃ。風邪引く・・・これは風邪ひく・・クシュン」
今日は簡単な方だったと敵の罠対策と言うより屋敷の住民(味方)の用心にと鉄板を仕込んだ革靴の
片方を脱いだ拍子に背が私室の扉をおした途端に桶がクルッと回ってザパンと水滝が頭の上から降ってきた。
「私室だよね?此の線から此方は私室だよね?
こっちには入ってこないでって言ってるでしょ。プライベートエリアなの。そう言う約束じゃんっ」
結構深い地下の狭い洞窟私室の中で叫んで観ても反響した自分の声が響くだけである。
「これかよっ。一日中、的びと追っかけて引きずり回されたっていうのに。
敵の罠にはかか無くても最大の敵が自分の味方ってどうゆう事なんだよ。まったくぅ」
背中に滑って凍える水しぶきに身震いしながらも吃驚して土床に音した皮鞄の紐を掴んで広い
自分の情けなさに呆れながらブラブラと腕を垂らして私室の木床を踏みしめ
雑多と荷物転がる洗濯物を脚で蹴飛ばし退けて昇降機の側の呼び鈴紐を引いて帰宅を知らせる。
屋敷の主人と顔を合わせる事はあっても罠を仕掛けてくる従者との面識はないのだから
態々帰宅した事を知らせる義務など無いと言い切りたいが其れも決まり事である。
くしゅんくしゅんと鼻を啜って擦り昇降機の扉を開けて屋台寿司屋で買い求めた品を入れて扉を湿る。
「ずんだ餅の苺餡掛パフェってどう言う味覚してるだよ。
其れが屋台寿司屋の品書きにあるって言うのがおしいけどさ。くっしゅん」
カラカラと金属の音が成って昇降機が上がってきて又下がる。
結構高性能な昇降機の扉が開くと高価そうな装飾のついた銀本の上に湯気たゆる湯瓶と大きめの紅茶カップが乗っている。
こんな気遣いは珍しいなと思い銀盆の上の箸h理書きを呼んで観れば
(御風邪を召しませんように。紅茶と入浴剤を用意しました。しっかりたった待って下さいませ。屋敷の従者一同)と書いてある。
「風邪を召しませんようにって冷やしたの貴下のせいでしょうが?貴下がやったの!
入浴剤は良いよ。ちょっと嬉しいよ?でも僕は行水なのっ。底の浅い行水桶しかないの!
肩まで浸かる風呂桶とないのっ。半身浴で入浴剤いれてどうするのっ。下半身だけすべすべお肌にしてどうするの!ぜぇぜぇ」
怒りに任せて騒いでも木霊が帰るのは自分の声だけである。屋敷の従者の気遣いに思わず感動した自分がなさけない。
元々、水桶の罠を仕掛けたのは屋敷の住人であり、御風邪を召しませんようにと気を使われても全然納得は行かない。
まぁそれでも冷えた四肢では明日の任務に支障が出てしまう。仕方がないから濡れた服を脱ぎ捨て
風呂場代わりの奥広場で行水の桶に出来るだけ多くの湯を貯めてせっかくのご行為であると入浴剤を溶かし
下半身だけを沈め買い求めた折り詰めを紅茶で呑み込み食事と済ます。
いくら人影に潜んで歩む間者の浮世と言っても何故が背中に哀愁が漂う始末でもある。

銀行家の屋敷にすむ主人と従者。
その地下に寝蔵を構える人皮の面を被る半小餓鬼族の偸盗。
銀行家といえばそれなりと言うよりも大きくも広い屋敷であるが地下に其の半分くらいの広さの木造りの寝蔵を偸盗は持つ。
部屋数も多い。
地上からの昇降を置こうなう縦穴。大抵はその入り口を屋敷の従者が毎回勝手に偽装して偸盗を悩ます。
くねくねと曲がって進めば安全圏の私室部屋にたどり着く。
おおまかに言えば居住区が一番広い。
台所、一人用では有るが食事用の卓と椅子、上の屋敷の住人と連絡を取る為のさっきも使った昇降機
相手がいないから仕方く一人で勤しむ双六遊びの板と賽子、夜簿の膝上で子守歌代わりに読んで貰い
覚えた字は当然に暗号用であるが本ではあった。つまりは読書も趣味だから専門書を収めた棚も多い。
私室は以外に狭いから土天上から下がる釣り寝編みが寝床がわりである。
寡婦漢一匹であるから洗濯は週に一度の安息日に纏めて熟す。
仕事で使う専用の武器を並べた武器部屋と其れを整備する工具の部屋。
錬金術で薬品を作る作業室。各種特殊な道具を自作する為の簡易火事場。
地下で鍛冶仕事を熟すのは熱くて堪らず叶わないが信用できる者は自分しか居ないのだからしょうが無い。
その他に色々な施設が地下に作らて居るが偸盗がこれが一番だぞっと自慢出来るのが薬剤暗室でる。
勿論、その言葉も偸盗が自分で考えた言わば専門用語であり、今その時代は珍しい言葉の一つである。
薬剤暗室の使用するには特殊な用事が有るからだ。
写輝機(しゃこうき)。偸盗自身がそれを発案し何年も掛けての失敗と研究を重ねた物である。
勿論、この時代此の世界に置いて写輝機成る物を道具として扱う者は偸盗しかいない。
言い換えればこの世界で一番最初に写輝機を発明したのが偸盗である。
尤も此の時はまだ発明したばかりであり其れを実際に使ったのも実験を覗いて五回に満たない。
まだ、発明されたばかりの代物である。
写輝機とは・・・。
ある一定の大きさの木箱の内側が真っ黒に塗られている。
木箱の全面には小さくも完全な真円のガラスをみがいたレンズが嵌められている。
レンズに光を通すか遮断するかを決める蓋も用意してある。
反対の木箱の裏側には特別な木枠を嵌める事が出来る
その木枠は極力薄く整え作った羊皮紙に特殊な光を閉じ込める厄災が塗りたくってもあり
其れに光を当てたり遮断する木板を組み込んでもある。
黒箱に光を記録する写輝紙と名付けた薄く伸ばして挟んだ木板を差し込む。
それから目標に向けてなるべく動かないように木箱を抱え込んで固定し
写輝紙の木枠の遮蔽板を外側から引き上げる。最後が箱前のレンズの綴蓋をさっと開ける。
此のタイミングが難しく。晴天の昼間はなるべく短く、曇天と雨の時は出来るだけ長くと
レンズの綴蓋を開けて光を木箱に取り入れてやる。頃合いを観て綴蓋をさっと閉じてから
写輝紙に其れ以上の光が当たらない様にと急いで遮蔽板を閉じてやる。
まだまだ研究段階でもあり小型化も出来てない。夕方よりも光が少ない夜とも成れば
写輝機を使うのは光石を燃やして人工的に周りを明るくする道具も必要になる。
発明したばかりの写輝機は装置の改良と技術の確立には研究の余地が山とある。
光を当てた写輝紙に移した風景を目に見えるようにするには薬剤暗室で別の作業が居る。
これも又、特別に調合した薬品で画像を出現させ其れを長時間固定するために又薬剤がいる。
事実はその原理の発見と写輝機の開発発明より画像出現と固定の薬剤の製法を探す方が時間が掛かる。
では、その写輝機を使い写輝紙に出現させた画像と今までの物と何が違うのか?
其れまで此の世界では羊皮紙に描かれる絵がすべてあった。
読み書きを勉強すれば文字は掛けるだろう。だが絵となれば別だろう。それなりの練習と経験を積まなければ
芸術と呼ばれる絵画を描く事は出来ないだろう。絵師の給料と名声は政府庁の高位高官より高い事もある。
偸盗の写輝機は其れを遥かに凌駕する。勿論、撮影という行為にはその状況条件に左右される。
旨く行かない時も多くも画像が呆ける事もある。だが然し偸盗が場数を踏み経験を重ねてくるともなれば
人の瞳にも魔物の目玉にもそれと全く同じ物を写輝紙に光学的に模写可能である。
大陸世界の歴史にも絵画とは一線を仕切る表現技術であっても、今に偸盗が写輝機を使うのは後の言葉で盗撮であり
もっぱら間者仕事で恐喝・強請りと悪事の為である。

一日のうちで偸盗が一番苦手で嫌いなのが朝である。其れが朝食だ。
「それで玩具の写輝機のほうはどうなってるの?」幼さがのこるがしっかりと嫌悪と苛立ち混ぜた声が飛んでくる。
「う~~ん。順調とは言い難いかな。ピントの調整のためにレンズの位置を動かいたんだけど・・・」
「様子するに何も旨く言って無いってことね。無駄な玩具に時間掛けてないで仕事に集中なさいよ。半魔の出来損ないの癖に」
「そ、底までいわなくても・・・」
「何よっ。私に逆らおうって言うの?ウスラトンカチの童貞の癖に。」
此方が最後まで何かを言う前に三倍の速さで怒涛の如く悪口が帰ってくる。
「いい事。私が此の仕事の為にどれだけの金銭を手間を掛けてるかわかってるの?
敬愛する夜母様の事を思って身を粉にして頑張っていると言うのにぃ。
あ、貴下は役にも立たない玩具ばかりいじって満足な成果も上げてないのよ?
この弐週間、変な女の尻を追いかけ回して、やっと掴んだのが中年漢との逢引って何よ?
しかも駅前斜通りの街頭喫茶よ?そんな所で重要な情報をやり取りするはずないでしょっ
ばっかじゃないの。この半魔者童貞野郎の癖に。消えて。私の視界からいなくなって。いますぐよ!」
何日も付け回してやっと掴んだ情景を移して記録した写輝の紙をバンバンと叩いて少女が激昂する。
偸盗の密偵仕事のサポートをする黒布のドレスを着込んだ少女が怒りに任せて罵声を浴びせてくる。
まぁ、毎朝のことであるしそうなると手がつけられないのは明白だから素直に席を立つしかない。
豪勢な屋敷の専用の食堂兼執務室みたいな場所から隠し扉を開いて穴蔵に一旦戻る。
「ああ~、今日も朝食抜きかよ。置いそうな燻製肉のサンドイッチだったのに」
流石銀行家の娘の朝食ともなれば、軽い朝の食事でもやっぱり豪勢だ。
それでも偸盗は一度もそれにありついた事がない。
口の中に唾を貯めながら黒布服の少女の罵声と説教を毎朝、聞かされるだけ有る。
当然、朝食は魔物相手の屋台で安っすいぱさぱさの麺麭と甘水だけでなんとかやりすごく。
それに黒布服の罵倒台詞は一々にもぐさちぐさりと偸盗の胸に棘と刺さる。
半魔物とは良く言った物であるが、其れが一番辛い揶揄だと良く知った上で態と言ってるのだろう。
言われる偸盗にしてみればこれほど嫌で辛い事はない。

偸盗が的人と狙うのは派手な人種の女性だった。
此の時代の朱赤と言う色味のが再現は難しくも皮や布を染める染料時代が貴重品であり又それ自体も入手が難しい。
それなのに彼女は朱赤を好む。染料の関係も有り街の建物も人種の服の色合いも比較的暗く落ち着いた物が多い。
政府庁が大見得をきり吐いて捨てるように魔物の存在を否定する街中にあっても気づかないだけであちこちに潜む
彼等に取っても双方が枠で有るし溶け込みやすい。勿論、半魔物の偸盗にすれば目立たない事は有り難い。
それなのにシュッシュと言う女性は朱赤を好む。一般の常識から掛け成れているにも関わらず自己主張も強いはずなのに
見る人に嫌悪感も与えない範囲で自分のスタイルを誇示している。
まず、雨が降ろうが振ってなければ日傘として、雪が積もろうが戦場視察のその時さえ、傘をささない日は一日ともない。
こだわりの種をあかせな雨の日と晴れの日に指す傘は朱赤の色あいが違うし戦視察の時は薄く叩いた鉄板を傘布に挟んでる。
流れた矢を防ぐためである。その彼女の影には殆の場合、鎌持ちと言う専属の従者がついて回る。
傘持ちの仕事は言わずもがなに傘をもって主人の数歩後ろをついて有る事であるが、かれは自分の仕事に誇りを持っている。
元は戦さ場で剣鞘を腰に括っては居たが今はちがう。数本の傘を収めた傘筒と言う特性の道具を携えて歩く。
時に日傘の貴婦人とも呼ばれるシュッシュの機嫌や天候の変更等のを見極めて主人が手を振って構えただけで
その状況にピッタリとあった傘を差し出す。傘持ちの漢はその仕事に誇りを持っている。
頭の上に朱赤の日傘を指せば、生まれつきに薄っすらと琥珀職の長い髪に温めた鏝を当て緩く流すのも色香を唆る。
年の割りに少しキツめな瞳とかを付きでもあり、それでいて広角が少し湯がんだ唇の形は家鴨口ともいわれ
付き合う漢共はお世辞か本心か知らずも褒めてくれるが本人はそれが大嫌いである。
四肢の作りは正に日傘の貴婦人と自ら名乗るのに相応しくも出っ張る所はでて締まる所は閉まってる。
「女と雌の乳は大きすぎるって事無いの。
それに釣られて寄ってくる屑漢を挟んで喜ばせて下腹で締めて縊りしぼるのに私の四肢は丁度良いのよ
だから大きすぎて困る事なんかないわ?寧ろもっと大きくする薬があるのなら、私が全部買い占めてやるわ」
豪語する其の目に偽りはないだろう。自分より大きい乳房を持つ巨人族の雌を睨んで呟きもする。
片口から足元まで他の貴族や淑女達を同じ様に黒地布に上品は文様の入ったドレスを着込むが
以外にも大きな乳房の下は細身の四肢であり、其れを更に朱赤に染たコルセットでキュと湿る。
むっちりとした尻と太腿でもあるがドレスに隠れると知ってが下着布は付けていない。
漢と雄の悪癖を意識して下腹部の陰毛はていれもせずに伸ばし放題でもある。
観られる所は淑女然と拘りを見せるが、そうでない所は自分の好きな様に好きにするのも我儘な性格が前に出る。
頭の上に朱赤の傘を翳し漆黒のドレスで四肢を覆いながらも細身の腹を朱赤のコルセットできつく締め上げ
泥埃がベタつく土を踏むのも又に朱赤の軍靴である。拘りと怠惰な性格がなんとも言えぬ出で立ちを生み出す。

偸盗が此処数日、追いかけ回すシュッシュであるが。余り旨く言ってないのは確かである。
的であるシュッシュを見付けるのは簡単でもある。毎日の行動が決まっているのだ。
厳つくも又荘厳で独特の寝城で朝食のをすますと喉を直ぐに行きつけの喫茶通りの店に向かう。
そこで毎日と発行される鞣羊皮紙の街新聞を三紙ほどたっぷりと時間を掛けて読み込む。
姿を見せる時間も場所もわかっているのだら偸盗としてはその時と其の場所に行けばいいだけだ。
シュッシュは喫茶の店に入らずに必ず露頭席に陣取り自分好みに作ってわせた椅子に座る。
その席の斜め対面の通りの此方が夜母のはからいで菓子露店と串焼き露店の両脇にはまされた扉部屋がある。
夜母の計らいで拵えた奥に何か部屋が有るかの様な扉の奥はかなり狭い。
元々両脇の店の僅かな隙間に無理矢理割り込んだ様なものでもあるから本当にせまいのだ。
扉を開ければ椅子が一個おけるかその奥は直ぐ裏路地で逃走用の空間しかない。
開いて閉じた扉には隠し穴がってそこに写輝機のレンズを嵌めて優雅に黒紅茶を楽しむシュッシュの姿を盗撮する。
自分一人が入るのがやっとの狭い空間であるし小型化出来てない写輝機では自分の体をこれでもかと捻って撮影するしかない。
こちらの苦労も知るつもり全く無くシュッシュは日が高く成るまで喫茶の街頭席で優雅に過ごす。
美しくも派手なシュシュを写輝紙の上に焼き付けるのが最近の偸盗の仕事であるし
確かにその美しさと巨大な乳房に似合わずにちょっと慌てん坊であったりドジな所も有るのだなと
面会者の相手に話しかけられ気を取られる度に紅茶カップの縁に黒砂糖をぶつけて跳ねた飛沫で軽く火傷したり
鞣羊皮紙の街新聞の縁で指を切ってしまい恥ずかしそうに指先を舐める仕草が結構可愛かったりもする。
一日に何枚もその姿を撮影してると何故かシュシュが夜母の戦敵と思えなく親近感も湧くのであるが
その症状が残酷な悪女に豹変する刻が有るのも良く知っている。
大抵は商談か会談の刻に相手がシュッシュにとって良くない報告をせざると負えない日であろう。
あまりないというのではなく結構頻繁にも簡単に其れまでにこやかに微笑み談笑していたと思えば
いきなりもすっと悪魔の如くと顔を歪め誂えさせた卓上に両腕を突いて四肢を支え身を乗り出しては
相手の顔のギリギリまで家鴨口を尖らせ唾を吐きつける。
「ああ、彼奴終わったな。又、木樽が川に浮かぶのか?
大丈夫かよ。彼奴って結構太ってるぞ?幾ら手足千切ったて出た腹を詰める樽はないぞ?特注かな」
怒涛の悪鬼悪女顔で叫んで相手に詰め寄るシュッシュの顔は普段とは大違いとばかりに
顔の皺肉を歪めギョロリと瞳を開け放ち怒鳴って叫んで喚けば鬼だ。
まぁ可愛い少女もあれば美しい淑女でもあるし人殺しの悪鬼悪女の醜い顔も持つ。
「まぁ誰でも幾つもの顔を持ってて当たり前だしな。遠目でみてれば可愛いんけどお近づきにはなりたくないな」
狭い撮影部屋に籠もり隣の店で買い込んだやたら硬いすじ肉の串焼きを歯に詰まらせながら素直な感想を一人で述べる。
淑女然りの顔と悪鬼の顔、そのどちらもしっかりと写輝しに写し取った偸盗だからこそ
お近づきにはなりたくないと濁らせば、それは本音である。
シュッシュは漢を良く帰る。言い寄る漢の数しれずともよりどり緑なのは確かだろう。
大体にして半年前後はシュシュをつけまわしているはずだが、取っ替えた漢の数は十で足りずも
次に変われば二十と弐くらいだろうか?一月持てば万々歳で速くて二日で入れ替わる。
「当番制なのかな?週替り?いや日替わりかな。でも同じ顔は観ないから千切っては投げてるのな」
何を千切ってるのかは知らないがシュッシュに捨てられたしばらくして男娼街で見かけた奴もチラホラみたから
やっぱり千切って捨てるのが彼女の性癖なのかもしれない。下腹部が身震いする趣味である。

黒紅茶と街新聞と数人のこきゃくとの会談。そして自分が抱える手下の報告とやりとり。
大抵の場合は昼前後にもそれらを片付けその時付き合ってる漢がいれば娼婦館の自分専用の部屋に籠もり
漢の性汁と愛欲を搾り取る。取り巻きの漢がちょくちょく入れ替わるのはこれが原因じゃないかと偸盗は疑っている。
派手な衣装と同じ様にシュッシュは強欲なのだろう。朱と赤を体皮とする動物魔物の類は掃除で雌上位の生態であり
其れに準じると言うほどシュシュの性欲は強い。別に盗んで聴いわけでもないが
夕方間近に娼婦館から出てくるのは大抵と言えば殆、シュッシュと傘持の漢であり一緒に入った漢は出来ない。
まぁ大概の予想道理性汁をしぼりとられて残り粕もなければ命に等しい血さえも吸い取られ干からびているのにちがいない。
性汁を絞り血を啜り快楽に溺れ楽しんだと言うのに店を出る時のシュッシュは大抵不機嫌だ。
想像は容易い。猛る漢の一物を口と牝壺で咥えても直ぐに相手が果てて干からびでは楽しめない。
大概と大抵に漢と雄は早漏で女と雌は襲漏という成れど悪鬼悪女となれば欲しがり貪る性汁と快楽は膨大であろう。
シュシュの四肢に快楽を求め手懐け手籠めにしようと言う漢は多くても
殆全員が干からびて故郷に帰るか男娼街で漢客に慰み者と堕ちるのが結果であろう。まぁよくある事でもある。

十分な距離を取っていたはずである。
偸盗は的人であるシュッシュと十分すぎるはずの距離を取っていた筈である。
右と左にと尻を振って歩くシュッシュと傘持漢。更には其れを尾けて歩く偸盗の間には距離と黒山の頭があった。
そう安々と歩いて詰められる距離ではないはずだった。
其の日は運悪くも珍しくもシュッシュがつれて歩くのは傘持ちの漢だけだった。
漢日照りを数えて三日目、漢の汁と絞り啜る悪魔悪女の噂風に挑む勇者が偶々いないのだろう。
更に間も悪くシュッシュの思惑通りに顧客との交渉も旨く行かなかった。
其の内容までは通りを挟んで扉部屋の此方の偸盗は聞こえなかったが何時にもましてシュッシュは
眉間に皺を寄せては何度も卓を叩いて声を張り上げたが、相手はがんして首を縦に振らなかった。
黒紅茶のポットが三度入れ替えられる間、圧しては引いての問答芝居を撃っても幕が降りない。
最後にどんどんと弐回、拳を卓にぶつけ、先に席をたったのはシュッシュであった。
既に昼を随分と過ぎていまい自身も腹の蟲が捩れてる偸盗出会ったが荒ぶるシュッシュが何を仕出かすか期待もあったし
なにか此方に取って有益な情報を広るかもしない。だから十分な距離を取って後を付けたつもりである。

肩にかけた写輝機の紐が捩れる。結構重い器械だから歩いて居ても重さに負けて紐が捩れる。
なんだよ。面倒だなっと思って一瞬、本の一瞬進める歩を緩めて写輝機を腕でヨイショと抱え紐を直す。
「ねぇ~~~。君ぃ~~。此のお店知ってる?
駅前の屋台寿司屋何だけど出汁巻き卵と苺餡掛け勝丼が美味しいんだって。
私、勝丼って食べた事ないんだけど。・・・・あら?お肌トラブル?」
バレた。観られたっ。最悪だ。
「そ、そ、そ、そ、そ、そ、その店なら二つ向こうの通りの角を曲がって次の三叉路歩道を四本目を・・・
おっお肌トラブルでは無いです。ぼっ僕は・・・半魔物の雄で・・・人の顔じゃないので・・・」
「二つ向こうの通りの角を曲がって・・・面倒だわね。
私結構な近眼でさ。あんまり視えないけど、其れって人の顔の・・・皮よね?」
近い、近すぎる。相手は絶世の美人で悪女で尚且つ、自分が毎日尾付け回し写輝機で姿を追いかけてきた女だ。
其の顔が興味津々で自分の眼前に突き出されている。
「うわっ。結構気持ち悪い。でも良く出来てるわね。つんつん」
或ろうことか人皮の面の皮膚を指で突き始める。当然化粧の匂いより女雌の色香がむっと鼻腔にツンと刺さる
本来警戒心を解くべく相手であるもシュッシュの後ろに控える傘持の漢が細腕を掴んでシェシェを止める。
半魔物と言う言葉をその時は未だ知らぬシュッシュを首を振って静止する。触れるべきではないと。
傘持の漢は今でこそにシュッシュに雇われているが怪我をして一線を引くまでは戦人であった。
街の直ぐ底で繰り広げられている白腹小餓鬼族との戦にも身を投じてもいた。
当然、人種の女性が魔物小餓鬼族の本能と快楽に溺れ暴虐の其の果に子を産ませるも身を持って知っているし
数はそうと多くなくても小餓鬼族に成れなかった人の雄子の存在も観てきている。
彼等に対しての人種の酷い扱いも知っていた。だからこそ無言であっても振れやるなと制したのである。
だが然し、元々好奇心も強ければ強欲である。人種と魔物。恐らくは人種と小餓鬼族の半魔物、其れに雄である。
そうなのね。じゃあ。又ねとシュッシュが引き下がるわけもない。
「あら。ふれちゃいけない。微妙な問題だったのかしら?
そうよねぇ~~。皺くちゃだし、此の辺なんかほつれてるもの。隠そうとしてるお肌が見えちゃてる。半魔物かぁ~~」
「二つ向こうの通りの角を曲がって次の三叉路歩道を四本目を真っ直ぐ進んで途中でで直角に右に曲がった孫兵衛ってお店です
出汁巻き卵と苺餡掛け勝丼も有名だけど。
鴉烏賊の玄米詰め餡蜜掛けの季節の果物パフェもお勧めです。じゃ、じゃ、僕はこれで」
只でさえ、毎朝に隠れ家の少女に罵倒され下卑される人皮の面を絶世の美女に弄られるのだ。
只でさえ、毎夜と自分の身の上をのろっているのだ。自虐の焔が胸に焦げ付く。
「えっと、通りの角を曲がって次の三叉路歩道を四本目を真っ直ぐ・・・?
それからどっち?あぁん。わからない面倒だから一緒きて。
一緒にお昼食べよ。ぽきっと折れそうな腕じゃもてないわよ。女の子にも雄にも。
奢ってあげるから。人皮の面の坊や」
「嫌です。結構です。丁寧に畏まってお断りします。さようならです。二度と合わないけど又今度です。
あっ、左ではないですよ。あっちです。此処の三叉路を・・・・引っ張らないでください。痛いですてば」
「痛いの好きな癖に。むっちりお姉さんに虐められるの好きな癖に。
何ならその人皮の面の上にむっちりふくよかな御尻乗っけてあげようか?御尻の肉で圧迫死とか流行りそう?」
「人皮の面の上からはつまらないです。御尻の肉で圧迫死とかはやったら大変です。僕は犠牲者にはなりたくないですぅ。
どうせなら素肌の上に直接で。だからいたいです。あっそっちじゃないです。
三叉路を直角に曲がって・・あっ。大将、こんにちは。顔三つ子の急性腰痛ぎっくり腰はなおったですか?
では。僕はご役御免ですね。はぃっ、さようならです。ぐふぅ」
余りにも無理矢理にも悪鬼悪魔の握力で無理矢理引きずられいつの間にか屋台寿司屋孫兵衛の前に着く。
強引すぎて自分はこの女性を追いかけ付け狙う間者で有る事をてっきりぽっきり忘れて素が出てしまう。
あれよあれよと土埃の通りを邁進するも引きずられ到着すればお役御免と後ろを向けば
寡黙と沈黙を黙する傘持ちの漢が行くてを阻み立つっていた。
当然にぶつかれば人皮の面越しに鼻をぶつけるかが、これがめっぽうと痛む。
悶えて喘ぐと袖口を掴まれ思わず腰を落とせば、見事に的人シュッシュと間者偸盗の密会の如くの会食が始まる。

「うぉ・・ゆっ油断大敵。腰痛再発。
己。儂の腰の範疇の広さよ。可愛くならんだ三顔の少女達だけでなく。
火山の噴火の様に天空に届けとばかりの咆哮せす爆乳美顔の御嬢様にもしっかり腰が砕けるとはぁ~~
へぃ。らっしゃい。今日のお勧めは鬼栄螺貝の頭焼きです。一つを四人で食べてくだせぇ」
人面の皮の客は兎も角、連れの女性は初対面であったがこの手の美人も腰は弱いらしい。
ぎくっと唸りを上げて崩れ堕ちる四肢を生板についた上と太腿の底力で耐えて
本日のお勧め口上を見事に無視してうららか笑みで女性は丁稚に注意文し始める。
「特上握り寿司を二つ。ああ、でも一つの桶にして。一緒に食べるから
出汁巻き卵と苺餡掛け勝丼も二つね。鴉烏賊の玄米詰め餡蜜掛けの季節の果物パフェも同じで
お宮はお任せにしようかしら?でも鬼栄螺貝の頭焼きは遠慮するわ。
坊やとの床寝の合間につまめる様なものにしてくれるかしら?」
まだ鼻の奥がツーンとした痛みに耐えきれ半泣きになる偸盗には何やら意味ありげな言葉をサラリと暴露されても旨く聞こえない。

「は~~~~~~い。あ~~~~んしてぇ~~。坊やぁ~~~」
妙にあまったるも何処か悪戯げな声で寿司屋の大将が焼き上げた出汁巻きが偸盗の顔面に突き出されてる。
寿司屋独特の風習で或ろうから滅多に使う事も無いだろう御箸で起用にもちんと使ってる。
「食べたこと無いんでしょ~~~。だし巻き卵。私もだけど。
御姉さんが出汁巻き卵の初めてを貰って・・・。食べさせてあげるから~~~。坊やぁ」
顔の前でぷるんと揺れる初めての出汁巻玉子。新鮮な卵の匂いが堪らない。
それでも偸盗はどうしたものかと暫し考える。
「シュッシュさんは意地悪です。ものすごく意地悪ですっ」人皮の面の奥でむっとした目でシュッシュを睨む。
「優しいわよ。ほらぁ~~~。お口開けてごらんなさいな。あ~~~んしましょうねぇ~~坊や」
偸盗が意地だとシュッシュを睨むのは訳がある。年上の女性の弄ばれてしまうのも嬉し恥ずかしも何処か納得できない。
当然の如くシュッシュは偸盗の人皮の仮面を取らせたいのだ。
自分が名乗ったの頑として偸盗は自分の名前をなのらかった。それなら責めてその素顔を晒してみたくてしょうがない。
シュッシュは自分の素顔の肌の上に人の皮で作った仮面を被ってる。
随分長く使ってるから確かにシュッシュの言うとおりところどころ破けそうになってたり実際に小さくも穴さえある。
作った時にはまだ処理方法も適切とも言えず、内側も肌さわりも快適とは言えない。
偸盗が素顔を晒し食事をするのは必ず一人であって、誰かと一緒に食事をしたと言えば小餓鬼族の巣で兄弟達と餌を奪いあった時だろう。
眼の前に出汁巻き卵を突き出しにっこりと微笑むそのシュッシュの顔は楽しげであり嬉しそうであるが
偸盗としは窮地である。出汁巻き卵は結構に分厚い。偸盗の人皮の仮面はそこまで大きくも口が動かない。
それなりに大きな物を食べるとなればやはり人皮の面を取らなかればならない。
冷静さが一塊として胸に貯まって留まるが、やはり卵の甘さと柔らかさには耐えきれなかった。
其れこそ閃光の如くも細長くごわついた指が動く。素早く手と指を動かし人皮の面をの留め金を外し
普通より二周りほど大きな頭巾をすっぽりと被り。そのままぱくっと出汁巻き卵に齧り付く。
「おっ。以外にも怖くない。そしてちょっと可愛いのね。云々、いい子ね。はい。もう一個」
恥ずかしいと言う気持ちが一杯で恐らくは初めてたべる出汁巻き卵の味は半分もおもえてもいない。
偸盗にとっては妥協案であったが大き過ぎて脇が視えないじゃないかと思える頭巾を深く被り
少し頭を垂れると素顔を見るのには同じ高さより下に目線を持って来ないと多分視えないだろう。
つまりは箸を突き出して偸盗の顔を覗き込むシュッシュ以外に素顔を覗き見るのは難しい。
「むふん。間接キッスね。これで男女の中と雄雌の契を結んだわね。むふ、この助平坊や」
偸盗が半分食べた残りの出汁巻玉子を勝手に自分の口に突っ込んで咀嚼して呑み込む。
美人なのは決まっている事だし楽しげな子供のあどけなさの横顔ははやっぱり淑女のシュッシュらしい。
「なんですか?間接キッスとか。雄雌の契とか勝手に。からかわないで下さい。
子供みたいに扱ってくれちゃって。僕だって雌の扱い位知ってますよ。
もういやんっていうくらい恥ずかしい思いさせてあげますよ。大将!あれを・・・。蝙蝠海老の半茹でを五本下さい」
「何言ってるのよ。坊やの癖に。妾を誰だと思ってるのよ?朱日傘の貴婦人よ。食らった漢は二百を超えるのよ?
たかが雑踏黒頭行き交う商店路地の真ん中で何が出てこようと恥じる事なんか有るわけ無いでしょ?」
「ああ。言いましたね?恥ずかしいですよ~~。赤面して泣いちゃうかも~~~。」
「何いってるのよ。私の出汁巻き卵に恋しちゃって素顔見せちゃう。ちょろい坊やの癖に~~~」
「なんですとぉ~~、ちょろくないです。僕は。身持ちが硬いんです。有名なんですからね。
半小餓鬼族の癖に貞操観念がちゃんと有るって。超有名なんです。身持ち固すぎて小餓鬼族の恥だって
僕知ってるですからね。漢に逃げられる度に白羽の枕ですんすん・・泣いて・・思わず・・」
「ちょっと。何よ?枕ですんすん・・・。はっ。なんでしってるのよ?それ」
((コレってなんか恋人同士の痴話喧嘩じゃないか?恋人同士の意地のはりあいじゃないか?付きってたのか。初対面だけど))
蝙蝠海老の半茹でが五本と茹で上がる間、偸盗とシュッシュ以が出汁巻き卵と握り寿司を箸で摘んで互いの口に押し付けるやりとりが
あまりにも自然であるにも特に違和感もなく傘持の漢はぼんやりと頭に浮かべる。

「これはぁ恥ずかしいぞ~~~。とっても恥ずかしいんだぞ~~~」
小餓鬼族の仲間の間でもとくに堅物で変人だと指を差される偸盗であるが、その声が悪戯が汁悪餓鬼の如くに嗤う。
「何よ?ちょっと大きな海老の尾っぽじゃない。それがどうしたって言うのよ?」
大きな乳房を両腕を組んで支え憮然とシュッシュが憮然とした顔で鼻を鳴らす。
「ふふ。小餓鬼族族の珍味。。蝙蝠海老の半茹と言うんですが雄は食べないんです。雌の食べものです。
むっふん。一見すると確かにちょっと変わった海老の様ですが・・・・此処やって殻を捻って剝いてやると
ぷりっぷりの身がでてくるんですよ。ほらっ。傘のオジサンは察してますよ。何せ馴染み深いですからね。
そうそう、あれです。あれ。特に雄小餓鬼族の其れにすっごく似てるんです。ほらほら。言われるとはずかしいでしょ?」
あれとかそれとか言われなくも例え小餓鬼族族のこれを観た事がなくってもその形はあれに良く似てる」
「ちょ、ちょっと。其れを食べろって言うの?そんな持ち方しちゃだめでしょ?根本を持っちゃ駄目でしょ。
やだ、ちょっとはずかしわ。そんなの口にするの。妾って乙女なのよ。うら若き乙女なのよ」
急にしおらしくもちょっと頬を赤らめ首をシュシュは右と左に振ってしまう。
否定しよう。蝙蝠海老と言うのは確かに小餓鬼族の珍味である。なぜこの握り寿司やのメニューにあるかは謎である。
大将の孫兵衛自身も品書きにそれと書いた記憶もない。でも品書きにはちゃんと乗ってるしネタもある。
ネタがあれば料理して客に出すのが屋台寿司屋の意地である。
厳密に言えば蝙蝠海老を茹でたそれは確かに小餓鬼族の其れに視えなくみない。
シュッシュの顔の前に髄と突き出した偸盗の持ち方も良くないだろう。
蝙蝠海老のそれは根本を摘んで持つと湯でられ実に細い筋が入る。更に剥いた殻を取らずに下げれば
雄巣にも視えてだらんと垂れた身が半立ちの其れにも何となくも見えるのがそれっぽ。
尤もそれっぽく見えると言うだけで巷の者もシュッシュ自身も小餓鬼族のソレなどじっくり観たこともなければ
偸盗の雌だけが食べる物と言われて妙に意識して閉まってるだけである。只の海老である。(多分)
「こ、コレを食べろっていうの?そっくりじゃない。コレってアレのソレでしょ?
人前でこれを食べろっていうの?意地悪すぎない?坊やの癖に」
「これがおいしいんですよ。ぷりぷりで甘いです。汁もじゅわ~~ってでてくるんですよ。
僕は食べた事ありませんけど。何せ雌の食べ物ですからね。むふん」
甘く旨味もあるらしくも汁もでる。肉も好きではあるが海産物も好みであるシュッシュは我慢できなくもある。
覚悟を決めて偸盗が突き出す蝙蝠海老に寄せ色っぽくも口を開けて顔を寄せるシュッシュに。
「あっ。駄目ですよ。いきなり噛み付いたら痛いでしょ?ちゃんと作法があるんです。作法が。
いいですか?茹でた蝙蝠海老の身に青筋が有るでしょう?
それによく見ると斑点があるでしょ?プチプチの。此処を舐めて刺激するとですね。
ピリっと辛くも甘い汁が出てくるんです。舌で斑点を舐めて刺激して滲みでるのが又美味しいのですよ」
「ぴ、ピリ辛の汁・・・・惹かれる・・・わね」色々な意味で汁と言う言葉に妙に惹かれるシュッシュの目と唇が潤む。
珍味であるとも知り、また美味しいと聞かされると我慢の限界の枠がぶちと壊れるとシュッシュは
青筋の張る蝙蝠海老の身に半口を開けて紅い舌をベロリとだして吸い付く。
音を見えるようにするならばねっちょと言うのが一番解るだろう。
蝙蝠海老の身に張り付いたシュッシュの舌は其のにちょっとベタつくも斑点の部分がチュっと弾けて半青の汁を吐き出す。
その汁が舌に染み込むと旨味は兎も角なんとも言えぬ高揚感が湧き上がってくる。
「お、美味しいっ」十分な距離を取っていたはずである。
偸盗は的人であるシュッシュと十分すぎるはずの距離を取っていた筈である。
右と左にと尻を振って歩くシュッシュと傘持漢。更には其れを尾けて歩く偸盗の間には距離と黒山の頭があった。
そう安々と歩いて詰められる距離ではないはずだった。
其の日は運悪くも珍しくもシュッシュがつれて歩くのは傘持ちの漢だけだった。
漢日照りを数えて三日目、漢の汁と絞り啜る悪魔悪女の噂風に挑む勇者が偶々いないのだろう。
更に間も悪くシュッシュの思惑通りに顧客との交渉も旨く行かなかった。
其の内容までは通りを挟んで扉部屋の此方の偸盗は聞こえなかったが何時にもましてシュッシュは
眉間に皺を寄せては何度も卓を叩いて声を張り上げたが、相手はがんして首を縦に振らなかった。
黒紅茶のポットが三度入れ替えられる間、圧しては引いての問答芝居を撃っても幕が降りない。
最後にどんどんと弐回、拳を卓にぶつけ、先に席をたったのはシュッシュであった。
既に昼を随分と過ぎていまい自身も腹の蟲が捩れてる偸盗出会ったが荒ぶるシュッシュが何を仕出かすか期待もあったし
なにか此方に取って有益な情報を広るかもしない。だから十分な距離を取って後を付けたつもりである。

肩にかけた写輝機の紐が捩れる。結構重い器械だから歩いて居ても重さに負けて紐が捩れる。
なんだよ。面倒だなっと思って一瞬、本の一瞬進める歩を緩めて写輝機を腕でヨイショと抱え紐を直す。
「ねぇ~~~。君ぃ~~。此のお店知ってる?
駅前の屋台寿司屋何だけど出汁巻き卵と苺餡掛け勝丼が美味しいんだって。
私、勝丼って食べた事ないんだけど。・・・・あら?お肌トラブル?」
バレた。観られたっ。最悪だ。
「そ、そ、そ、そ、そ、そ、その店なら二つ向こうの通りの角を曲がって次の三叉路歩道を四本目を・・・
おっお肌トラブルでは無いです。ぼっ僕は・・・半魔物の雄で・・・人の顔じゃないので・・・」
「二つ向こうの通りの角を曲がって・・・面倒だわね。
私結構な近眼でさ。あんまり視えないけど、其れって人の顔の・・・皮よね?」
近い、近すぎる。相手は絶世の美人で悪女で尚且つ、自分が毎日尾付け回し写輝機で姿を追いかけてきた女だ。
其の顔が興味津々で自分の眼前に突き出されている。
「うわっ。結構気持ち悪い。でも良く出来てるわね。つんつん」
或ろうことか人皮の面の皮膚を指で突き始める。当然化粧の匂いより女雌の色香がむっと鼻腔にツンと刺さる
本来警戒心を解くべく相手であるもシュッシュの後ろに控える傘持の漢が細腕を掴んでシェシェを止める。
半魔物と言う言葉をその時は未だ知らぬシュッシュを首を振って静止する。触れるべきではないと。
傘持の漢は今でこそにシュッシュに雇われているが怪我をして一線を引くまでは戦人であった。
街の直ぐ底で繰り広げられている白腹小餓鬼族との戦にも身を投じてもいた。
当然、人種の女性が魔物小餓鬼族の本能と快楽に溺れ暴虐の其の果に子を産ませるも身を持って知っているし
数はそうと多くなくても小餓鬼族に成れなかった人の雄子の存在も観てきている。
彼等に対しての人種の酷い扱いも知っていた。だからこそ無言であっても振れやるなと制したのである。
だが然し、元々好奇心も強ければ強欲である。人種と魔物。恐らくは人種と小餓鬼族の半魔物、其れに雄である。
そうなのね。じゃあ。又ねとシュッシュが引き下がるわけもない。
「あら。ふれちゃいけない。微妙な問題だったのかしら?
そうよねぇ~~。皺くちゃだし、此の辺なんかほつれてるもの。隠そうとしてるお肌が見えちゃてる。半魔物かぁ~~」
「二つ向こうの通りの角を曲がって次の三叉路歩道を四本目を真っ直ぐ進んで途中でで直角に右に曲がった孫兵衛ってお店です
出汁巻き卵と苺餡掛け勝丼も有名だけど。
鴉烏賊の玄米詰め餡蜜掛けの季節の果物パフェもお勧めです。じゃ、じゃ、僕はこれで」
只でさえ、毎朝に隠れ家の少女に罵倒され下卑される人皮の面を絶世の美女に弄られるのだ。
只でさえ、毎夜と自分の身の上をのろっているのだ。自虐の焔が胸に焦げ付く。
「えっと、通りの角を曲がって次の三叉路歩道を四本目を真っ直ぐ・・・?
それからどっち?あぁん。わからない面倒だから一緒きて。
一緒にお昼食べよ。ぽきっと折れそうな腕じゃもてないわよ。女の子にも雄にも。
奢ってあげるから。人皮の面の坊や」
「嫌です。結構です。丁寧に畏まってお断りします。さようならです。二度と合わないけど又今度です。
あっ、左ではないですよ。あっちです。此処の三叉路を・・・・引っ張らないでください。痛いですてば」
「痛いの好きな癖に。むっちりお姉さんに虐められるの好きな癖に。
何ならその人皮の面の上にむっちりふくよかな御尻乗っけてあげようか?御尻の肉で圧迫死とか流行りそう?」
「人皮の面の上からはつまらないです。御尻の肉で圧迫死とかはやったら大変です。僕は犠牲者にはなりたくないですぅ。
どうせなら素肌の上に直接で。だからいたいです。あっそっちじゃないです。
三叉路を直角に曲がって・・あっ。大将、こんにちは。顔三つ子の急性腰痛ぎっくり腰はなおったですか?
では。僕はご役御免ですね。はぃっ、さようならです。ぐふぅ」
余りにも無理矢理にも悪鬼悪魔の握力で無理矢理引きずられいつの間にか屋台寿司屋孫兵衛の前に着く。
強引すぎて自分はこの女性を追いかけ付け狙う間者で有る事をてっきりぽっきり忘れて素が出てしまう。
あれよあれよと土埃の通りを邁進するも引きずられ到着すればお役御免と後ろを向けば
寡黙と沈黙を黙する傘持ちの漢が行くてを阻み立つっていた。
当然にぶつかれば人皮の面越しに鼻をぶつけるかが、これがめっぽうと痛む。
悶えて喘ぐと袖口を掴まれ思わず腰を落とせば、見事に的人シュッシュと間者偸盗の密会の如くの会食が始まる。

「うぉ・・ゆっ油断大敵。腰痛再発。
己。儂の腰の範疇の広さよ。可愛くならんだ三顔の少女達だけでなく。
火山の噴火の様に天空に届けとばかりの咆哮せす爆乳美顔の御嬢様にもしっかり腰が砕けるとはぁ~~
へぃ。らっしゃい。今日のお勧めは鬼栄螺貝の頭焼きです。一つを四人で食べてくだせぇ」
人面の皮の客は兎も角、連れの女性は初対面であったがこの手の美人も腰は弱いらしい。
ぎくっと唸りを上げて崩れ堕ちる四肢を生板についた上と太腿の底力で耐えて
本日のお勧め口上を見事に無視してうららか笑みで女性は丁稚に注意文し始める。
「特上握り寿司を二つ。ああ、でも一つの桶にして。一緒に食べるから
出汁巻き卵と苺餡掛け勝丼も二つね。鴉烏賊の玄米詰め餡蜜掛けの季節の果物パフェも同じで
お宮はお任せにしようかしら?でも鬼栄螺貝の頭焼きは遠慮するわ。
坊やとの床寝の合間につまめる様なものにしてくれるかしら?」
まだ鼻の奥がツーンとした痛みに耐えきれ半泣きになる偸盗には何やら意味ありげな言葉をサラリと暴露されても旨く聞こえない。

「は~~~~~~い。あ~~~~んしてぇ~~。坊やぁ~~~」
妙にあまったるも何処か悪戯げな声で寿司屋の大将が焼き上げた出汁巻きが偸盗の顔面に突き出されてる。
寿司屋独特の風習で或ろうから滅多に使う事も無いだろう御箸で起用にもちんと使ってる。
「食べたこと無いんでしょ~~~。だし巻き卵。私もだけど。
御姉さんが出汁巻き卵の初めてを貰って・・・。食べさせてあげるから~~~。坊やぁ」
顔の前でぷるんと揺れる初めての出汁巻玉子。新鮮な卵の匂いが堪らない。
それでも偸盗はどうしたものかと暫し考える。
「シュッシュさんは意地悪です。ものすごく意地悪ですっ」人皮の面の奥でむっとした目でシュッシュを睨む。
「優しいわよ。ほらぁ~~~。お口開けてごらんなさいな。あ~~~んしましょうねぇ~~坊や」
偸盗が意地だとシュッシュを睨むのは訳がある。年上の女性の弄ばれてしまうのも嬉し恥ずかしも何処か納得できない。
当然の如くシュッシュは偸盗の人皮の仮面を取らせたいのだ。
自分が名乗ったの頑として偸盗は自分の名前をなのらかった。それなら責めてその素顔を晒してみたくてしょうがない。
シュッシュは自分の素顔の肌の上に人の皮で作った仮面を被ってる。
随分長く使ってるから確かにシュッシュの言うとおりところどころ破けそうになってたり実際に小さくも穴さえある。
作った時にはまだ処理方法も適切とも言えず、内側も肌さわりも快適とは言えない。
偸盗が素顔を晒し食事をするのは必ず一人であって、誰かと一緒に食事をしたと言えば小餓鬼族の巣で兄弟達と餌を奪いあった時だろう。
眼の前に出汁巻き卵を突き出しにっこりと微笑むそのシュッシュの顔は楽しげであり嬉しそうであるが
偸盗としは窮地である。出汁巻き卵は結構に分厚い。偸盗の人皮の仮面はそこまで大きくも口が動かない。
それなりに大きな物を食べるとなればやはり人皮の面を取らなかればならない。
冷静さが一塊として胸に貯まって留まるが、やはり卵の甘さと柔らかさには耐えきれなかった。
其れこそ閃光の如くも細長くごわついた指が動く。素早く手と指を動かし人皮の面をの留め金を外し
普通より二周りほど大きな頭巾をすっぽりと被り。そのままぱくっと出汁巻き卵に齧り付く。
「おっ。以外にも怖くない。そしてちょっと可愛いのね。云々、いい子ね。はい。もう一個」
恥ずかしいと言う気持ちが一杯で恐らくは初めてたべる出汁巻き卵の味は半分もおもえてもいない。
偸盗にとっては妥協案であったが大き過ぎて脇が視えないじゃないかと思える頭巾を深く被り
少し頭を垂れると素顔を見るのには同じ高さより下に目線を持って来ないと多分視えないだろう。
つまりは箸を突き出して偸盗の顔を覗き込むシュッシュ以外に素顔を覗き見るのは難しい。
「むふん。間接キッスね。これで男女の中と雄雌の契を結んだわね。むふ、この助平坊や」
偸盗が半分食べた残りの出汁巻玉子を勝手に自分の口に突っ込んで咀嚼して呑み込む。
美人なのは決まっている事だし楽しげな子供のあどけなさの横顔ははやっぱり淑女のシュッシュらしい。
「なんですか?間接キッスとか。雄雌の契とか勝手に。からかわないで下さい。
子供みたいに扱ってくれちゃって。僕だって雌の扱い位知ってますよ。
もういやんっていうくらい恥ずかしい思いさせてあげますよ。大将!あれを・・・。蝙蝠海老の半茹でを五本下さい」
「何言ってるのよ。坊やの癖に。妾を誰だと思ってるのよ?朱日傘の貴婦人よ。食らった漢は二百を超えるのよ?
たかが雑踏黒頭行き交う商店路地の真ん中で何が出てこようと恥じる事なんか有るわけ無いでしょ?」
「ああ。言いましたね?恥ずかしいですよ~~。赤面して泣いちゃうかも~~~。」
「何いってるのよ。私の出汁巻き卵に恋しちゃって素顔見せちゃう。ちょろい坊やの癖に~~~」
「なんですとぉ~~、ちょろくないです。僕は。身持ちが硬いんです。有名なんですからね。
半小餓鬼族の癖に貞操観念がちゃんと有るって。超有名なんです。身持ち固すぎて小餓鬼族の恥だって
僕知ってるですからね。漢に逃げられる度に白羽の枕ですんすん・・泣いて・・思わず・・」
「ちょっと。何よ?枕ですんすん・・・。はっ。なんでしってるのよ?それ」
((コレってなんか恋人同士の痴話喧嘩じゃないか?恋人同士の意地のはりあいじゃないか?付きってたのか。初対面だけど))
蝙蝠海老の半茹でが五本と茹で上がる間、偸盗とシュッシュ以が出汁巻き卵と握り寿司を箸で摘んで互いの口に押し付けるやりとりが
あまりにも自然であるにも特に違和感もなく傘持の漢はぼんやりと頭に浮かべる。

「これはぁ恥ずかしいぞ~~~。とっても恥ずかしいんだぞ~~~」
小餓鬼族の仲間の間でもとくに堅物で変人だと指を差される偸盗であるが、その声が悪戯が汁悪餓鬼の如くに嗤う。
「何よ?ちょっと大きな海老の尾っぽじゃない。それがどうしたって言うのよ?」
大きな乳房を両腕を組んで支え憮然とシュッシュが憮然とした顔で鼻を鳴らす。
「ふふ。小餓鬼族族の珍味。。蝙蝠海老の半茹と言うんですが雄は食べないんです。雌の食べものです。
むっふん。一見すると確かにちょっと変わった海老の様ですが・・・・此処やって殻を捻って剝いてやると
ぷりっぷりの身がでてくるんですよ。ほらっ。傘のオジサンは察してますよ。何せ馴染み深いですからね。
そうそう、あれです。あれ。特に雄小餓鬼族の其れにすっごく似てるんです。ほらほら。言われるとはずかしいでしょ?」
あれとかそれとか言われなくも例え小餓鬼族族のこれを観た事がなくってもその形はあれに良く似てる」
「ちょ、ちょっと。其れを食べろって言うの?そんな持ち方しちゃだめでしょ?根本を持っちゃ駄目でしょ。
やだ、ちょっとはずかしわ。そんなの口にするの。妾って乙女なのよ。うら若き乙女なのよ」
急にしおらしくもちょっと頬を赤らめ首をシュシュは右と左に振ってしまう。
否定しよう。蝙蝠海老と言うのは確かに小餓鬼族の珍味である。なぜこの握り寿司やのメニューにあるかは謎である。
大将の孫兵衛自身も品書きにそれと書いた記憶もない。でも品書きにはちゃんと乗ってるしネタもある。
ネタがあれば料理して客に出すのが屋台寿司屋の意地である。
厳密に言えば蝙蝠海老を茹でたそれは確かに小餓鬼族の其れに視えなくみない。
シュッシュの顔の前に髄と突き出した偸盗の持ち方も良くないだろう。
蝙蝠海老のそれは根本を摘んで持つと湯でられ実に細い筋が入る。更に剥いた殻を取らずに下げれば
雄巣にも視えてだらんと垂れた身が半立ちの其れにも何となくも見えるのがそれっぽ。
尤もそれっぽく見えると言うだけで巷の者もシュッシュ自身も小餓鬼族のソレなどじっくり観たこともなければ
偸盗の雌だけが食べる物と言われて妙に意識して閉まってるだけである。只の海老である。(多分)
「こ、コレを食べろっていうの?そっくりじゃない。コレってアレのソレでしょ?
人前でこれを食べろっていうの?意地悪すぎない?坊やの癖に」
「これがおいしいんですよ。ぷりぷりで甘いです。汁もじゅわ~~ってでてくるんですよ。
僕は食べた事ありませんけど。何せ雌の食べ物ですからね。むふん」
甘く旨味もあるらしくも汁もでる。肉も好きではあるが海産物も好みであるシュッシュは我慢できなくもある。
覚悟を決めて偸盗が突き出す蝙蝠海老に寄せ色っぽくも口を開けて顔を寄せるシュッシュに。
「あっ。駄目ですよ。いきなり噛み付いたら痛いでしょ?ちゃんと作法があるんです。作法が。
いいですか?茹でた蝙蝠海老の身に青筋が有るでしょう?
それによく見ると斑点があるでしょ?プチプチの。此処を舐めて刺激するとですね。
ピリっと辛くも甘い汁が出てくるんです。舌で斑点を舐めて刺激して滲みでるのが又美味しいのですよ」
「ぴ、ピリ辛の汁・・・・惹かれる・・・わね」色々な意味で汁と言う言葉に妙に惹かれるシュッシュの目と唇が潤む。
珍味であるとも知り、また美味しいと聞かされると我慢の限界の枠がぶちと壊れるとシュッシュは
青筋の張る蝙蝠海老の身に半口を開けて紅い舌をベロリとだして吸い付く。
音を見えるようにするならばねっちょと言うのが一番解るだろう。
蝙蝠海老の身に張り付いたシュッシュの舌は蝙蝠海老の身に舌を付けたまま漏らす言葉は素直な感想であろうが
淫猥な表情で蝙蝠海老の身に舌を這いずらせるシュッシュの顔は理性が飛んでるようでもある。
何かと間違って居るのではないかと言う様に蝙蝠海老の身の先端から上に舐め上げたかと思えば
唇を半開きして押し付けヂュウヂュウと斑点から漏れ出る蒼い汁を啜りすう。
自分の舌で汁を啜り唾液に塗れば又それを吸う。恍惚と淫猥な味を楽しめば腹も疼けば四肢も火照る。
斑点から漏れ出る汁がもっと欲しくて堪らずに先端から根本まで口に含んで味わえば
確かに今まで食べた事も無ければ感じたことのない独特の味が癖になる。
蝙蝠海老を支え持つ偸盗の手が揺れるのが食べ辛いともで言うのだろう。
万力の如くの力で手首を付かんで固定し、ジュルリと吐き出しではぢゅると根本まで呑み込む。
根本まで口中に収めれてから頬を窄めて下品にも聞こえそな音を立てて啜る。
「おッ。御嬢。其の食べ方は、ちょっと」それまで沈黙を守ってきた傘落ちの漢がぼそりと漏らす。
その時を見計らって居たのだろうか、ガッチャンとおとがして生板の上に握りした拳を付きたて
腰と固をふるふると震わせ耐えていた屋台握り寿司の大将は泡を吹きもんどり打って厨房の床に卒倒する。
巨漢の漢が床に倒れると言う結構大きな物音も全く耳には入って来ないシュッシュは
蝙蝠海老の斑点から漏れ出る汁を全部絞りとると残念そうに首を傾げ吐息を唇から吐き出してから
思い切るように口を大きく開け蝙蝠海老のその見に歯を絶てる。
小餓鬼族族の珍味と言われる蝙蝠海老の身肉は思いの他、肉厚で噛みごたえが有ると思えば
じゅわりとの甘くも濃厚な味と汁をシュッシュの口中と舌に伝え満たす。
最初こそ噛みちぎるのに苦労するが、こつをつかめば独特な味と香りが癖にもなる。
偸盗の手首をガッチリと掴んで完全に固定して残った身に又かじりつけば堪らず旨さに酔いしれひとみが潤む。
「おっ。御嬢の食べ方はずるいというか・・・その思わず・・・観るに耐えぬ」
それは下品とも卑しいというのではない。ただ、茹でたばかりの蝙蝠海老を食べて居るだけである。
やっと一本目を食べきったばかりだと言うのにぽってりとした唇についた油を舌でべろっと舐めたかと思えば
言葉を一切に紡かずに人皮の面を被る偸盗の顔を上目遣いでじっと見つめては二本目を強請ってくる。
「ねっ。美味しいでしょ?はずかしいでしょ?むふふ」
「いや。恥ずかしいとかないわ。余りに美味しすぎて羞恥心とか飛んでちゃうわ。あんっ駄目。動かさないで」
たかが海老。でも食べ方が、そのちょっと、あのちょっと、見てる此方が恥ずかしいとばかりに
傘持ちの漢はコホンと咳を打って後ろを向ければ、厨房の中ではドテンバタンと若い料理人達がこしを抜かす。
二本三本と食べ進み、最後の一尾を食べ終わる頃には屋台寿司の正面通りには何やら黒山頭の輪が出来て
誰が先に投げたか知らないが小銭ところか金貨が交じる御捻り銭の山が出来ているくらいだ。
「なんかいまいちだったなぁ~~。シュッシュさんの反応。
もうちょっと嬉しはずかし。どうしますしょ。こんな物を人前で食べちゃうなんて
困っちゃう。けど、美味しい。そんな顔が見たかったのに。想像力がけつじょしてますよ?シュッシュさん」
「さっ、最初は恥ずかしたかったけど、あの汁を味わったらどうでも良くなったわ。
こんな美味しい物があるなら、淑女の憂いなんて皮に捨てもいいわ。
そんな憂いとか羞恥心とかでお腹膨らまないわ。次は私の番ね。
御顔真っ赤にして逃げ出したく成る思いさせて挙げるわ。
それと勝丼未だ来てないけど?大将、床で昼寝するがマイブームなの?顔真っ青だけど大丈夫?」
随分と恥ずかしい思いをしたのは事実であっても、蝙蝠海老の味わい深い食感には変えられない。
未だ卓にならんでない勝丼と次はどれにしようとばかりに品書きを見つめるシュッシュでもある。

失態で有る・・・。
久しぶりに誰かと一緒にとった食事は味も良かったし十分に楽しめた。
腰痛の果に倒れ込む屋台寿司屋の大将の姿を肴に互いに顔を見合わせ声をだしても笑った。
吾に帰り自分の立場を思い出した途端に人皮の面の舌で全身の血が蒼白に引いて行くのも自覚できる。
「本当に大丈夫かしら?救急隊とか呼んだ方が良いんじゃない?
とりあえずお宮と御あいそお願いして良いかしら?」
シュッシュの気がそれた気を見逃さずに姿を消したのは良いが、それも旨く言ったが自身がなかった。
いつもよりも三回多く根城への帰還ルートを変更して用心を重ねるが、其の内の一回は素で道を間違えただけである。
偸盗は間者である。
最近の的人はさっきまで間近に肩を並べて楽しげに隣で食事をしていたシュッシュである。
偸盗の雇い主にも夜母にとってもそれから偸盗に取っても明らかに敵で有る。
辛うじて自分の仕事と職業に、それから名前。それだけは死守したが
個人的な自分の素顔をシュッシュに観られたのが一番辛い。
的人の後ろを尾していたはずなのにあっさりと気づかれ所在がばれた所か
腕を無理に掴まれ屋台寿司屋で嬉し恥ずかし保護者付きの会食デートに持ち込まれる。
最後こそ、これ以上無理とばかりに玄人の間者らしくと姿を溶かしたが
途轍もない失態である。
銀行家の嫌味たらたら鬼面の少女と屋敷の従者がその日の根城への罠は泥沼地獄であった。
確かに手が混んでるが作業に手間どったのもあり普通の間者偸盗であれば普通に避けて通れる仕上がりだった。
屋敷の三階から単眼遠鏡で従者が窓布の影から覗いていたが、偸盗の様子がいつもとは違う。
ガッチリと肩を落とすも両手をだらりと垂らして怠惰に歩く。
真っ直ぐに。真っ直ぐに。歩けば泥沼にズブズブと脚と取られても虚ろにも真っ直ぐに泥沼に腰を付けて歩く。
避けるとか避けるとか一切の躊躇せずに泥沼の罠の中を真っ直進してそのまま巣穴まで泥々と進んで行く始末だ。
「まるで心の非ずとでも言うのでしょうか?人皮の間者様、恋にでも堕ちたのででしょうか?」
「ぶはっ?こ、恋?こいって鯉?池の鯉じゃなくて、人様相手の恋?」
贅を尽くしすぎて寧ろそれは悪趣味の粋まで達する程の装飾のついた寝椅子にふんぞり返り
あのブサイクな間者が泥沼に入ってくれるかどうかと内心はらはらしていた銀行家の少女は
思い切り紅茶を吹き出し従者の手から単眼遠鏡を奪い取り覗いてみるが既に巣穴に潜ったあと出る。

それから三日ほどと数日の間、偸盗は尾行の仕事を休んだ。
理由は以外にも的人シュッシュに素顔がばれたからではない。
勿論、それについては困惑の極めにある為にしばらく尾を引くのは間違いない。
まぁ理由は銀行家の少女が仕掛けた泥沼の罠の土に蚊鰻が混じって頂けである。
子供に泥遊びさせる時は火鉢で炊いた炭粕を混ぜてからにするべしと言う
一般常識を裕福な幼年時代を過ごした少女は知らず分からずでそのまま泥罠を仕込んだのだ。
炭粕で殺菌消毒されてない泥に巣食う蚊鰻が齎す病は中程度の風土病であり
適切な処置と飲薬とお決まりに四肢を安静に保てば遠からずにの完治は可能である。
まぁそれでも自分の失態に苛まれ数日余計に休養を取らざる負えなかったのはしょうが無い。
なんとか復帰したと思えば当然の如く銀行家少女の罵倒は、此処ぞ此の時とばかりに罵詈雑言極まれリであった。

どうしたの?どうしてしまったのか?と何度も確かめでもやっぱりどうしたんだと其の顔を平手撃ちしたく成るくらいに
朱日傘の貴婦人シュシュの様子が可笑しい。
あの日、人皮の面を被った青年との握り寿司会食デートは余程楽しかったのだろう。
訳ありとは薄々感じたし会計の間にスルリと姿を溶かして消えたのもみごとではあった。
それでもまた直ぐに会えるだろうと考えて居たが見込み違いであった。
当然翌日から乙女心に期待を込めて、いつもより女性ぽくもめかしてこんで喫茶通りに出かけたが
当然仕事がらみの会談もところどころとおぼろげに成る。
「お昼よ。お昼。はいっ。此処まで。おしまい。お昼食べるのよ」
結構に大事な顧客であるにもかからず無下に勝手に噺を切り上げて席を立つ。
傘持ちの漢と暫く歩いて見せてから、あのひと同じ様にぱっと後ろを振り返るが、ざっと人並みが割れる
シュッシュの渾身の魅力と目力によって天啓に討たてるように人々が脇にどけるがあの青年は居ない。
暫く歩いてからまた試して見るが、やはり人並が割れるだけである。
結局三回繰り返してもあの青年はその日、シュッシュの瞳には顔を見せなかった。
まぁ。何からの当人の事情も有るのだろうとほっぺを膨らませて其の日をぼんやり過ごすが
二日目に成ると眉を寄せて仕事にならない。コツコツと豪華な茶卓を指で突いて叩けば
当然の相手の言う事なんて耳に届くはずもない。
「かっ傘の色が悪いんじゃないかしら?もっとアンニュイな朱の方が好みだとか?
それとも化粧かしら?坊やの癖に年増の娼婦好みでべったり濃い化粧じゃないと
色んな所が元気にならないとか?どうしましょ。私其処までの年齢じゃないし。
本職の年増玄人さんの色気とかないし?経験かしら?二百人じゃ足りないのかしら?
若いくせに自分の巣城に籠もるのが忙しくてこれないとか?
嫌だわ。こんなに美しい妾という物が有りながら、幼子から年増の玄人さんまではべらしてたらどうしよう?
第参十と弐番目婦人とかだったらどうしよう?やっぱり順番待ちの列に並んだ方が良いのかしら?
ねぇ。貴方どう思う?」心の葛藤を声に出し問いかけるのは交渉相手の顧客である。
それが三日と五日と過ぎて重なれば最早、恋煩いを超えてしまう。
「貴下、此処は良いから探してきて、私の坊や・・・」
まぁ、気持ちはわかる。気持ちは解るがそれと言い放つのった相手が顧客であれば最早重症である。
朱日傘の貴婦人に尽くして仕えて数年となるが、
この時期が一番つらかったと後に引退記念の集まりで傘持ちの従者は慰労会の屋敷で天井を見つめて呟いてる。
怪しいとは思ってた。それまで一回しかあってはいないはずなのに握り寿司の会食デートの時に坊主の様子が気にかかる。
一つ桶の寿司を仲睦まじくも食べる時、シュッシュが苦手な川魚寿司を退けてやったり
逆に好物の貝類を自分は嫌いだからと譲ったり、思いやりであっても根本的な好みを知ってなければそれも出来ない。
先ず、最初に自分の名と頑固にも明かさない。事情が有るのならそれとなく名と偽ればそれでいい。
後でボロが出て来るにしても、その場限りであれば誤魔化せる。然りにも頑として坊主は名を明かさなかった。
恐らくは間者であろう。
此の待には小餓鬼族や魔物が交じり、政府庁の諜報員も居れば、民間組織の間者も居る。
朱日傘の貴婦人其の人が属する組織も数えにいれるならだいたい七つくらいだろうか?
互いに敵対してるから互いに見張る事にも成る。
だが然し、あの坊主は相当の兵らしい。結構目立つ特徴があるはずなのに痕跡さえ見つけられない。

求む!朱日傘の貴婦人様の恋人。弐食+おやつ付き。体力に自身のある人。
長時間の残業と早朝出勤でも一言も文句言わない人。住み込み可。お布団と風呂桶は持参。
街の料理屋に詳しくの特に大盛りの店に毎週通ってる方。腰痛持ちは不可。
時給金貨二枚と銅貨四枚。前借り制度有り。國の保険制度は自己加入で

「これでいいんじゃない?
どうせ隣で立ってるだけで良いんだし。夜伽の時は顔見ないで我慢するから気にしないわ。
お風呂入って髪とかして清潔感保ってくれればなんでも良いわ。
適当な服着せれば見栄えも良くなるでしょ。面倒だからコレでいいわ」
顧客との対応を平気で無碍にするほどまでにやる気のなくしたシュッシュの補佐役が求められた。
流石にこれでは不味いと傘持ちの漢が苦言を申した結果である。
街の目貫通りの目立つ所に適当にチラシもどきを張っただけであるがその日の内に五〇人程
翌日には百を超える輩がシュシュの公爵屋敷に集まった。
別に勿体つける気もなかったがズラリとながくも列をつくった恋人候補からシュッシュが適当に選ぶ。
「御嬢。此奴はちょっと酷くないですか?美的センスを疑いますよ?」
「いいの。どうぜ顔みないから。なんでも一緒。どれでもいいのよ。はぁ~~~。私の坊や」
豊満な四肢と美しい美貌を持つ朱日傘の淑女様の恋人となれば光栄であるが
酒場の壁に張ってあった張り羊皮紙を観て、どれ自分もと勇んで観たが殆冗談である。
真逆自分が貴婦人様の眼鏡に叶うとは到底思わなかったが選ばれたとは天にも上る驚きである。
尤も、細い指で差され舞い上がったのも一瞬であった。
心、此処に非ずとばかりかあっちにもないという表情で投げられた言葉はどれでも良いと言う物で
確かに給金はよくても、張り羊皮紙の内容を確認すると長く続けれられそうにもないと直ぐに悟る。

「ああ、其処は訂正が必要ですな。
そっちは桁が間違ってます。この内容で其の金額では此方が赤字になるますな。
それでは当方は受けられません。金額の情報修正強く希望します。
はぁ~~。気に食わないのなら手足千切って戦なたで首跳ねて木樽に詰めて・・・。
あっ。はい。上乗せ有難う御座います。御所望の首は三日後に必ず。
はいっ。次の方どうぞ。美人ですな。いえいえ、本当に美しいですよ。御客様」
適当に繕えって見栄え良くと確かにシュッシュが命じたが、これがまあなんともである。
生活感はある。以外にも仕事も良く出来る。これは以外であった。
それにしても背もあまり高くなくシュッシュと並ぶと其の差は歴然とばかりに低い。
「まぁまぁね。そこそこって感じ。中の小の下ってくらい。顔みてないけど」
満足はしないがそれなりとシュッシュが言うくらいに体力は有るらしい。
「其の癖、治らないのか?おおげさじゃないか?」
「清潔感と保つとですね。どうしても七と参にわけなけばならんのです。
そうするとですね。書類を観たり何かする度に顔に掛かるのです。
仕方がないからこうやってばさりと」
何処にでもいそうな四角縁の御茶係と恋人兼上司のシュッシュに名付けられた漢は
大げさに首を振ってわけた髪を跳ね上げ丸っこい指で整えて笑う。
一応も髪油を塗り込んではあるのだが四角縁の御茶係の髪は剛毛らしい。
何かの拍子に逆らって乱れてしまうから其の度に大下座に首を振
指で整えで決まった!とばかりにニヤリと笑う。
なんともその仕草が怖い位に似合ってない。
背が低くもあれば小太りで横に丸ければ前に腹がドスンと突き出る。
其のくせ後ろから観れば尻が丸くぽっちゃりとしてるから愛嬌もある。
滑稽であるがそれに演劇でもやっているのかと言う様な大げさな振る舞いと仕草。
会計士と言えば雰囲気は有るが鼻に乗せる四角縁の眼鏡は伊達である。
其の方が扱う仕事の内容に合うのではないかと高額給料を当てに自腹で買い揃えた。
自分では似合ってると思うがどうやら違うとも見える。
其の原因は太った四肢と腹を包む燕尾服だろう
白革の手袋と革靴も似合ってるはずもないのである。
元の職業が塩川の渡し船頭であるのから招き悪戯猿にも衣装と皆も笑う。
「あの~~?視線を感じるのですか?
そりゃ。私の様な清潔感溢れる美青年のお腹と尻を世の淑女が視姦せざる負えない
乙女心の我儘はわかるのですが、なんかもっと鋭いと言うか?
戦さ場で奔る殺気のような。それでいてねっちょりと言えば・・・
まぁ兎に角誰かに観られている気がしますね。
あっ、はい。淑女様。黒紅茶に砂糖ですね。えっ違う。私の愛情に耐えられない?
それも違う?はっ。お代わりですね。只今っお持ちしますです」
火照る欲情を慰めるために仕方なくも寵愛を頂く四角縁の御茶係であるも
此奴も一癖も三つも癖のある人物である。
だが彼奴が感じる視線こそが偸盗に災難を呼び込む発端となる。

「何だ?彼奴?僕のいない間に何時の間に恋人作るなんて酷い」
蚊鰻に噛まれて数日間。
病の症状それ自体は割りと速く改善にむかったがその正体は兎も角、半魔物としても小餓鬼顔を観られたショックと
間者として敵人を会食デートに及んで閉まったと言う失態と自己嫌悪から更に数日の休養を要する。
今日の今でも肺に凝りが残り小咳がでてしょうが無い。有る薬剤店の変態錬金術師が進める薬液を呑むと緩和はするが
その薬液は途轍もなく不味い所か肺の中に熱した火かき棒を突っ込まれる程に熱く肺を焼く。
小咳が止まらないからと薬液をがぶりと飲めば肺に火かき棒がささるから今度は咽て大咳が出る。
これで治るのかという前に薬液の効果で悶え死ぬほうが絶対早いと断言も出来る。
大体にして後数日は安静にしてい給えと黄色縁眼鏡の変態錬金術師に言われているのに
「何時まで自分で慰めてるのよ。気色の悪い変態小餓鬼族。
仕事よ。仕事。これ以上休みなんてほざいたら蚊泥の沼水、巣穴に流し込んでやるわよ。
さっさと出てきて仕事しなさい。この唐変木の変態半分魔物っ」
普段は食べ物や書類と上げて下げる昇降機の穴に直接顔を突っ込んで小一時間も説教されれば堪らない。
もっとも結構重篤な偸盗のかわりにやり手と噂の斥候が的人シュッシュの監視については居たはずである。
所が何か不慮の事故があったらしい。視線を気取られたと言うのだ。
それも的人ではなく、七と参にわけた髪の乱れを気にし大げさに首を振って不気味に笑う小太りの燕尾服野郎にだ。
「あ、あんな奴が趣味だったんだ。背が低くて丁度いい感じに出っぱてる奴が良いんだ。
そうだよなぁ~~。人と魔物の間の子なんて興味無いんだ。僕なんてどうせ半端者だもんね、イジイジ」
久しぶりに咳止めをがぶ飲みしながらも普段は写輝機を乗せる四脚棒に丸眼鏡のレンズを丸窓に当てて覗きこむ。
「綺麗だぁ~~。やっぱり。あの可愛い家鴨口であの七参髪の野郎の棒を咥えるんだ。厭らしい。でも羨ましい
おっと、こんな感じかな?寿司屋の大将の鉢巻じゃなくて、腹巻き」
丸眼鏡にレンズ縁に目玉を押し付けながらもせかせかと動かす手が止まりもしない。
蚊鰻病の回復が進み時間を持て余した偸盗は得意な器械弄りだけでは飽き足らず
小餓鬼族には似合わない女性の趣味の編み物にはまる。元々器用だし熱中する癖もあればその腕は最早玄人である。
好みの女性客が来る度に定期行事となった握り寿司のギックリ腰大将の気遣いにと編んだ熊の柄が入った腹巻きの出来を
云々、これで良いだろうと広げ丸眼鏡から目をはなすと知られて無いはずの狭い監視部屋の扉がトントン叩かれる。
「あの・・・その・・・だな。
そちらにも色々事情があるのはわかっているのだが・・・・ちょっと顔をだしてくれないか?人革の小僧」
聞き覚えの有る声だ。的人シュッシュの従者。傘持の漢の声である。間違いはない。
「その・・・だな・・・・。
其処に籠もっているのはわかっているのだ。暫く顔姿を見せなかったのは事情があると思うが
その間に其処に籠もった奴が素人でな。まぁ観つけたのはあの七参わけの小太りの漢なんだがな。
見かけより繊細な体質らしくてな。其奴の間者の視線に気づいたのだよ。
あとは簡単だ。朝早くから通りに部下を張り込ませてな。お前らしき風体の漢が其処に入ったとも確認してるのだ。
互いに事情があるのはわかる。解るのだが。これ以上御嬢が錯乱する前に顔を魅せてやってくれないか?」
仕方なく渋々という感じのなんとも言えない声が扉の向こうからボゾボソと気こえる。
病欠の間を肩代わりした彼奴がへました時点で偸盗がシュッシュと敵対する輩の間者とバレているのだろう。
互いに事情があると重々知ってわかった上での申しでであろう。
冗談でもなく誤魔化しでもなくけほけほと咳づく音が聞こえると意外にも便利な作り扉の枠窓がパカンと開くと
半小餓鬼族特有の振れ櫛だった手が出てくるとペタンと扉に羊皮紙が張り出される。

病気療養の上、開店休業です。一昨日来て下さい。
なにやら羊皮紙に急いで書いたような字で文言がならんでる
「病気だと?だっ大丈夫なのか?どんな病気なんだ?小餓鬼族風邪か?悪性の腫瘍か?」
これは大変だとばかりに声が上ずるとぱたんと扉が開いて羊皮紙が出てくる。

蚊鰻病です。変態薬剤錬金術士の薬をのんでますので大事に至っておりません。
ちょっと休んだだけなのに小太りの眼鏡オジサンのアレとかそれとか
握ってる浮気症の御姉さんとしかめっ面の小父様さんに心配される言われる由縁は御座いません
「待て待て。蚊鰻病とは餓鬼共が泥遊びする時になる奴だろ?
御前。真逆其の年で泥遊びが趣味なのか?
も、もしかして裸でどろどろぬるぬるの泥油で互いの四肢を弄る泥雌遊びが好きなのか?変態奴」
すると又、書きなぐった文言と一緒に大きめな袋がぬっと出てくる。

新婚の奥様がお腹膨らんでるのを好機で有ると奥様よりむっちりとした情婦の乳を撫で回すも
それでも飽き足らず年笠の叔母様系情婦二人とたっぷり楽しむ寡黙な小父様さんに言われてたくありません
これからは互いの道を歩いて行きましょうっと、お伝え下さい。
ちょっと本気で好きになりかけていたのに。
僕が半小餓鬼族だからって。幼気な半小餓鬼族の青年を弄ぶ乳臭い浮気症な御姉さんなんかだきらいだぁ~~
あっかんべ~~~。では又、何処かで。失礼します。
「おい。待て。待て。ちょっと待て。
なんでそれを知っているんだ?嫁に言うなよっ。告げ口するなよ。後生だから、頼むぞ。オイっ」
羊皮紙を一読すると自分の秘密を知ってると言うよりもばらされたらやばいとばかりに
勝手に体が動き監視部屋であろう扉に肩をぶつけて突入する。
互いに事情は有るとは言え、僅かな時間であっても心へあるのだろう。
狭い部屋にいたのは戦場で良く見る鷲鼻の小餓鬼族が驚いた様にギョロ目と口を開けていた。
「変わり身身代わりの法か・・・・途中からか・・それとも最初か。此の玄人間者奴」

これはしてやられたと自分の思い込みが腕の粗暴さと身に染みる。
考えてみれば相手も間者である。其処にいると見せかけ騙すのが仕事である。
互いの事情と知っても協定違反の類如くも堂々と顔を魅せろと言うのは道化芝居である。
「何よっ。これ。私が何時浮気したって言うのよ?
大体突然いなくなって消えたのはあの子でしょ?私がおあいそしたのよ
まぁ、私が奢るって言ったけど。あの日以来、姿一つ魅せなくなったのはあの子でしょ?
病気?知らないわよ?そんなの知るはずもないでしょ?
えっ?ちゃんと届けを出した?欠席届だした?受け取ってないわ。
ちょっと何よ。届けでてるなら見せなさいよ。この小太りの御茶係の癖に。お馬鹿さん
何よこれ?細毛糸で編んだ乳当て?これから寒く成るし普段遣いに最適ですって?
しかも針金が仕込んであるから乳垂れが起きにくい?それはすごいわね。起用なのね。
貴下のそれは革の膝当て?中に鎖が編み込んで有るから丈夫なのね。良かったわね。
脛に傷持つ傘持ちだものね。皮肉が効いてるわよ。
それにしても乳臭いお姉様って何よ?これのおかげで商売繁盛なの。
肩凝るのよ。えっ、だから毛糸の乳当てだって。有難う。使わせて貰うわね。
それにしても許せなわ。妾を乳臭い浮気性の御姉さんとか言っちゃってくれちゃって。
えっ事実だろうって。そんな・・・・事あったわね・・・コホン。
・・・・ぼっ、坊や。いっ何時から其処に居たのかしら」
重ねられた羊皮紙の束と傘持の従者が手当してくれた革袋の中身を確認しながら
声を上げ唸り文句を言って居ると周りにも気がまわらない。
文字を読めば怒りが爆発するし病気としれば心配もする。
貯まるも塗れる良くに仕方なくも代替えの輩に跨がれば浮気者と決めつけられれば怒りもする。
追々無我夢中と馬頭と文句を吐き出すと御茶係の愛人がシュシュの脇腹を小突く。
いつの間にかと言えば何時姿を現したのかも定かではない。
気がつけはシュッシュの対面に置かれた客用の椅子に細身の四肢と尻を預け
喉が痛むのからと七参わけの御茶係に黒紅茶を頼み得体の知れない小瓶から薬液を垂らして
小餓鬼族特有の鷲鼻を摘んで苦くも嫌そうに一気に煽るとにっこりと笑う。
「何よっ。これ。私が何時浮気したって所からいましたよ?
こんな可愛いくも美青年の顔を忘れるとは・・・やっぱり別々の道を・・・」
「さっ、最初から其処に至っていうの?どうゆう間者技よ。気づかないわよ。そんなの
べつべつは、嫌・・・。とりあえず貴下は首よ。首っ。帰っていいわ。帰りなさいな」
怒りと嬉しさが混じった顔を偸盗に向けたままびしっと指さしたのは七参わけの御茶係の鼻面である。
「わっ、儂。首ですか?退職金はでますかね?あっはい・・・頂けるなら結構です。
短い間でしたがお世話になりました・・・しょぼ~~~ん」
シュシュと偸盗の二度目の縁を結んだ功績を無下にされ突然の解雇に驚くも逆らえない御茶係の漢であった。

「それでは・・・・。
朱日傘の貴婦人様と半小餓鬼族人革の面の間者坊っちゃん様推参の上
第三回、シュシュ様の浮気断罪裁判と結婚を踏まえた上のでの明日からの夫婦生活をどうしましょ井戸端会議を初めます。
司会進行と裁判長を努めますのは此の仕事を最後に首切り解雇予定の儂、綺麗な七三わけがとっても愛らしい御茶係で御座います。
「なんで第三回なの?私が三回も浮気したように聞こえるじゃない!
ぼっ、坊や。そんな汚物を見るような目でみたいで。一回よ。一回!一人だってば。其処の貴方何惚けてた顔してるのよ
思い出さなくていいの。伽の中身を思い出して鼻の下伸ばさなくていいの。妾の御尻の下で呻いてた癖に。
はっ。そ、そうじゃないのよ。坊や。本当は坊やにしてあげたいの色々。そんな卑しい者を見る目で観ちゃいや、
背筋がぞくぞくちしゃうから。・・・もっと。それから、結婚を踏まえた上での明日からの夫婦生活って何?
一緒に暮らすの?夜伽も未だなのよ?やっぱり此処は文通から初めて純愛を積み重ねてからじゃないの?
愛があってこそ互いを労えるのよ?愛せるのよ。でもそれと夜伽とは別よ。先に寝台いきましょうよ。坊や。
なんで司会進行が貴下なのよ。もうちょっとましな奴いなかったの?チェンジよ。チェンジっ」
急遽と言えども都合して借り切った有名菓子喫茶のホール特別席に朱日傘の貴婦人シュッシュが
自分ばかりが悪者扱いされる事に腹を立て高価な装飾の茶卓に身を乗り出して暴言を撒き散らしてる。
相対する偸盗は悪鬼の如く喚くシュッシュの暴言よりも観た事もない貴族の少女が好きそうなキラキラとした
柔菓子が珍しいらしくも興味津々で串刺し細棒を握り注意深く観察しツンツンと小突いてる。
「浮気相手が一人でもしちゃった回数は三回じゃないんですよ
上の口で一三回、お胸で挟んで二二回、お臍に擦って七階、舌のお口で十五回ですよ。
僕と言う正夫がいながらこんな小太りの小父様さんのモノが良くってあんな顔で吸い付くなんて
僕だってまだしてもらった事ないのにぃ~~。このまま童貞の儘で年老いて死んでいくんだ。グスン
これ食べて良いですか?雄の僕でも食べて良い食べ物ですか?宗教的にも大丈夫ですかね」
「なっ、なっ、なっ、なっなんで回数まで知ってるのよ?
妾は強欲なのっ。一回や二回じゃたりないの。それにね坊やの事を思ってたのよ。
こんな小汚い腹の漢の顔なんか観てるもんですか。貴方のモノだと思ってたのよ。ちょっと本気になっただけよ
そこで惚けるの止めなさい。思い出して惚けるの止めなさい。この変態オヤジ。チャンジして。お願いだからチェンジして」
「はぃ。それでは先ず己の罪と愛を知る事は大事です。まずはお名前と勤め先とか趣味から・・・・どうぞ」
「なんで罪と愛なわけ?愛があれは種族の壁なんか乗り越えるのよ。
「朱日傘の貴婦人。シュシュ・バレンタイン・メリーよ。
勤め先は鼻曲がりの蒼肌濁る小餓鬼族の聖堂付秘書官を努めてれるわ
趣味と言えば漢と雄漁りよ。だから鼻の下伸ばすの止めなさい。亭主がいるのよ。将来の亭主が目の前に居るの!
自重して。お願いだから真顔になって頂戴。薄ら禿げに成りかけの七三わけの変態御茶係の癖に」
「悪の蜂蜜紅茶商会の偵察密偵の・・・ち、偸盗です
銀行家のとっても意地悪な腹黒少女の虐めに耐えてみせるのが主な仕事です。
趣味は物作りとか器械作りとか最近凝ってるのは編み物です。
御姉さんの乳当てとセットで毛糸の紐おパンツも編んでみました。履いてみます?」
「ちょ、ちょっとそれ。お揃いは良いけど・・・紐よ?紐。
編んだって言うより毛糸結んだがけじゃない?少なっ。布の面積少なっ。
でも・・・、サイズはピッタリね。裸とか魅せた事無いになんでサイズがピッタリなの間者の目ってそんなに鋭いの
よっよこしないよ。後でちゃんと履くんだから。有難う。でもなんか納得いかないわ。ぴったり過ぎるもの」
冷える季節に毛糸の編み物は嬉しいがシュシュと偸盗意外の残りは眉を潜めて険悪な雰囲気に沈黙する。
蒼肌濁る小餓鬼族の聖堂付秘書官と悪の蜂蜜紅茶商会の偵察密偵
どちらも大物であるが完全に敵意をむき出しにして殺し合う事もある敵同士である。

「最初は兎・太鼓がポン!同じでぽんっ」
「ちょっとぉ~~。偶には負けようよぉ~~。可愛い新婦に勝ちをゆずりなさいよぉ~~~」
「嫌です。オヤツは小餓鬼族にとっては大事な間食なのです。
それにお姉さんはいろんな所に駄肉が付いてるですからちょっと痩せたほうが良いんですぅ
あと、可愛くて綺麗なのは認めます。でもオヤツは上げません。べぇ~~~」
何やら楽しげにも真剣にオヤツの取り合いしてる漫才夫婦の周りで関係者と職人が額を合わせてる。
「だからだな
互いの合意の上で決めた杖鼓に夜と、冷蔵庫は三台までなのだぞ
そちらの要望ばかり通すわけにはいかんのだ、我儘娘奴」
「何いってるのよ。それじゃ私の夜食の三本頭の鶏の佃煮がはいらなのよ」
「そっちだって笠立て二〇本てなによ。堅牢な屋敷なのに雨もりの心配してるの?馬っ鹿じゃやない」
「馬鹿とはとはなんだ。馬鹿とは
年長者を敬う心をしらんのか。親が銀行家だからって図にのるなよ。
こっちは戦で負った怪我の治療費、まだはらってんだからな。舐めるなよ。
朱日傘の貴婦人の屋敷に傘立てがあるのは当たり前だろ?寧ろ足りないくらいだぞ」
主人が敵同士なら従者も敵同士で有るのは当然であろう。
「まぁまぁ。お二人共。この屋敷の中では歪み合うのはご法度ですからな。
銀行家の少女様は冷蔵庫を増やしたい。傘持の旦那は傘立てをおおく置きたい。
それなら決められた条約以上の事に関してはその分だけ互いに追加出資と致しましょう」
喧々諤々の小父様さんと少女の間に中途半端に膨らんだ腹を突き出す七三わけの漢である。
「なんで御前が居るんだよ?御前は首になっただろ?」
「うわっ。気色悪いっ。七三わけの髪が油でギトギト。誰よ。この腹の出た小父様さん」
「儂こそ蒼肌濁る小餓鬼族の聖堂付き正式認可済み御茶係兼悪の蜂蜜紅茶商会の雑用連絡係で御座います。
つまりは二つの組織の調整役でごさいますな。此処では私が正義となるのです。
流行り組織のトップにもなると見る目がちがいますな。油輝く七三わけの純然たる魅力と才能に気がつくとは流石です」
「なんでこんな小父様さんが調停役なの?外見だけでももっとましな人いないの?」顔を歪めて銀行家の少女が怒鳴る。
「これしかいなかったんだ。双方に顔が聞く奴って・・・・
此奴が決定権もってるとか信じられないが、まぁ少し位は才能もあるらしい。多分・・・」
「失敬な・・・この七三わけの純然たる・・・・。はぃ何でしょう?空調器の搬入ですか?
とりあえず裏に置いて下さい。えっ其処は淑女様の巨大浴槽が鎮座してる?
馬車にのせたままで結構です。後でかんがえ・・・はっ?お昼の買い出しは誰の担当ですかって・・
えっと・・・、あっ。私です。買い出しに行かねばっ。後よろしくです。皆さん」
自分の髪型に拘りが有る小太りの調停役であるが決定権があってもそれだけあり
組織の階級で言えば下っ端である。つまりは雑用ばかり押し付けられるのだ。

シュッシュが席を置く蒼肌濁る小餓鬼族の聖堂の一頭
偸盗が巣窟とするの蜂蜜紅茶商会の一派
共に其の街に暗躍する秘密結社であるし。其の日ま命のやりとりはしても交流はなかった。
蒼肌濁る小餓鬼族側から見れば、偶々蒼肌濁る小餓鬼族の機嫌が良かっただけであり
組織改革を順次押し広げる蜂蜜紅茶商会に置いては構成員の福利厚生の口上を社訓ともしてるから
申請さえすれば婚姻出来るしちゃんと党首名義でご祝儀も届く。
未だ正式な結婚までは届かずも二人は強く同棲同居を好んだし
互いにまだどちらかが専業主婦・もしくは主夫に成るつもりは無かった為にそれぞれ継続ともなる。
ついでという事もあるし新婚でもあるがシュッシュも偸盗も腕は優秀な為に多少の我儘を聴いても
臍を曲げられて抜けれられでもしたら仕事に穴が開く。
それなお互いに有効かつようしようじゃないかと提案もありそれまで互いにいがみ合ってきた
縄張りの一角を長いに共有しようともなり、其処に偸盗とシュッシュの新居屋敷が建築される運びになった。
勿論にそれぞれの仕事場と互いの組織の構成員の出入りを含む事務所も屋敷内に作られる。
数歩と馬を奔らせれば小餓鬼族との戦激しくも剣と槍が突き刺さる戦時で有るにも関わらず
建築中の新たしい悪の合同宿舎兼事務所は他の貴族が態々見学に来るほ度に大きくも絢爛である。
蒼肌濁る小餓鬼族と蜂蜜紅茶商会、双方の印旗垂れ幕が風にたゆる大扉の前に立つ
これも又懶怠者もの正しくも屈強な用心棒が右に立てば、麗しくも妖艶な尼姿の黒衣装の淑女が左に立つ。
通され開かれる大扉を潜れば大層な広さの受付広間が有り、そこでどちらに用事が有ると告げれば
それぞれに独特の雰囲気でごってりと装飾のついた事務所に通され接待と打ち合わせが行わえる。
犯罪事務所屋敷の地下の大半は勿論に偸盗の巣穴が掘られている。
暗くジメジメとした世界感は偸盗の趣味であると同時にこの街には非公式にしか存在しない魔物内
主に小餓鬼族達が蠢くも、倉庫や屋敷の施設管理の仕事をこなしてもいる。
勿論、彼等専用の賭博情もあれば塩泥の浴場もある。
建物の一階を受けつけ事務所が占領すれば、弐階には大手銀行の業務窓口と貴族淑女御用達の紅茶の店がある。
三階と四階はそれぞれの組織が個別に使う詰め所と兵器庫等があり五階が朱日傘の貴婦人シュッシュの私室である。
「ど、ど、ど、ど、どうしよう・・・。
おトイレにのぞき窓があるの・・・。観られるのよ。観られちゃうのよっ。私の坊やが覗くのよ
用を足す度に観られちゃうのよ。どうしましょう。・・・・・むふふ」
廊下ですれ違った従者に期待に潤んだ瞳で歪む性癖を告白するのは良いが、それが敵対する蜂蜜紅茶商会の輩であれば
どう答えていいのかと聞かれたほうが一番悩み曖昧な返事を返すのがやっとである。


「ちょっとちゃんと付けなさいよ。放置するつもりなの?」

「いや、そんなつもりはないけど。あっ嘘です。そのつもりでした。ごめんなさい。」
「ちょっと、何よ。其の態度。宜しい?私は貴方の飼い雌なのよ。飼い雌。
そしては貴方は私の飼い主なのっ。愛と絆で結んだ主従関係の絆なのよ?
飼い雌の私が一生捧げてついて行くって言ってるのに。なんで主人の方が自覚ないの?
あんなに激しい責めした癖に。バラすわよ。ばらしてやるわよ?
私の御主人様は人雌を柱に逆さに縛って脚を無理に開かせ突き出た尻にあっつい蝋燭垂らして
牝壺に蓋して火傷させるですって。その後指で穿りめくって人非ずの竿入れて犯す超変態ですって。
駅前通りのど真ん中で叫んでやるからね。寄ってきたらどうしよ?私も飼って欲しいって希望者殺到したらどうしよ?
兎に角、首輪つけなさいよ。主人としての確固たる自覚を持ちなさいよ。この馬鹿主人」


天鼠蛭姫

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