小餓鬼族英雄譚:A story of an Goburin Lord .ⅳ【人雌人形と黄色眼鏡の嘔血鬼編】



潔癖極まり足る規則に則って目玉焼きを食する薬剤師。
随分とまぁ、長くのいい加減な字名と自分で名乗る薬剤師の漢。
潔癖症と言う悪癖も此処まで来るとなれば立派である。
好物である目玉焼きは三食必ずの主食であり、副菜には青山茸が二つと皿に乗る。
此の種の目玉焼きと青山茸と水。其れがこの薬剤師の惟一の食事である。其れしかないのである。
顔の作りや其の容姿は別の機会に述べるとして商売相手に名乗る時は実際の年寄り二つ上乗せして告げる。
意外にも童顔で有るためにもっと若く観られ舐められるからである。
いま正にも大皿に乗る二つ黄身の目玉焼きの一つは飽く迄も極めて固くに焼き上げ
もう片方は飽く迄も半熟の黄身に焼き上げられている。勿論一切に誰の手助けもさせず完全な自炊である。
一階は自分の薬剤店と工房であり二階が私室であり食卓もある。だが寝何処は工房の天上に釣り布寝袋を釣ってくるまる。
銀のナイフより真鍮の物を好み、先ず先に固茹での目玉焼きの白身と丹念に切り分けくり抜き
フォークとナイフで白身を畳んで口の中に入れる。それから固茹での黄身を4つに刻んで三口で食べる。
その間に青山茸のしいたけをフィークで一切れ指して口に運び咀嚼し呑み込んでから
自分で開発した蒸留濾過器で二回ほどきちんとした濾過した水をゴクリと呑んで水杯の半分は残す。
次は半熟焼きの目玉焼きであるが此方も黄身をくり抜き白身を先に食す。
最後のお楽しみの半熟黄身は真ん中から半分にきってからフォークで指して重ね一回で刺し大きな口を開けて放りんで咀嚼する。
此の時出来るだけ音を立てずにゆっくりと時間を掛けて味わうのが彼の鉄則である。
最後にのこった水を顔を天上に向け喉を真っ直ぐして一気に流し込む。
これで皿の上に残るのは青山茸一切れであるが、皿を傾けて床に落とすと何処からかゆっくりと足音が聞こえ
決して自分が飼ってるわけでもない近所の野良猫がおやつ代わりと勝手に食べれば直ぐにどっかに消えていく。
食事の間、その薬剤師は全裸である。実は結構長く後ろ頭に結える位の伸ばした髪の毛を帽子屋で特注した
皮の山高帽の中に無理に詰め込む。
白い皿と目玉焼きの上に自分の髪一本でも落ちれば神聖な食べ物を汚染したと恐怖におののくからだ。
食する目玉焼きと産み落とした親鳥に深い感謝を込めて黄色に染め上げた皮手袋をキチンと嵌める。
これはこれで規則と言うより彼の体質が外す事を許さない。嘔血病
手袋意外の衣服を身に着けないのは気持ちが良いからとか一種の健康法の其れとは違う。
飽く迄も食べ物を自分の体に付属する雑菌等が汚染するかもしれないと言う一種の脅迫観念からである。
そしてその脅迫観念は食事だけでは無く仕事でも家の中でも外の空気にふれざる負えない時でも
彼の心にざわざわと恐怖と怯えの疑念を植え付けている。
自分の体に付着する菌が食物を汚染するならば、周りに漂う菌は僕自身を汚染するかも知れない。
愛情深める愛しい人、縁を結ぶ友人、道で行き交う見知らぬ人、極めつけは魔森生まれの魔物共
手を握れば汚染され、話をすれば唾から感染し、愛を営めば汚れてしまう。魔物に至っては近寄るのも恐怖である。
最初はこんな感じでは無かったはずであるが、一度其れにとりつかれれば後はない。
最初は手拭き布で口を塞ぐだけであったが其れが顔覆いの布となり、直ぐに革製のごつい仮面となる。
布の手袋は皮になり。出来る事なら騎士の小手と同じの鉄製でも構わない。
長丈の外套を夏日でも着込み、汗でじっとり四肢を湿らせても気にしない。
しゅうしゅうとごついマスクから息を吐き出すも頭髪も隠したいから一回り大きな山高帽を手はなさい。
人との距離を取りたいし邪魔な魔物を小突いて退けたいから、銀飾りの付いた柄杖を付いて歩く事に成る。
黄色目玉の黒仮面とも山高帽の薬剤士と呼ばれるのは未だましで、山高帽の黄色目怪人と陰口さえも叩かれる。
潔癖極まり足る規則に則って目玉焼きを食する薬剤師
潔癖極まり規則に則って目玉焼きを食する薬剤師
規則に目玉焼きを食する薬剤師・・・・。どれも長すぎるので、其の薬剤師は嘔血病を生まれながらに患っている。
父母の聞けば祖父母達もそうであり祖々父母、祖祖々父母も同じであると言うのだから血統に違いない。
嘔血病。正確には人種が好む食物を腸が受け付けずも嘔吐を伴うがその時に全身の血液が沸騰するです症候群である。
この症状を緩和するには家系伝来の薬液を一定期間にて服用する必要があるが、言ってしまえば乙女の血液である。
乙女の血液と言っても間違いではないが要は同胞人種の血液か魔物の血のどちらかで有る。
正し粗々父母までの時代とは違い同胞と魔物血液を堂々と手に入れる事は人道的な見解からから現在は許されて居ない。
其れに人種性や魔物性の血液成分の中には暴力性を誘発する因子が多分に含まれて居るために長期間の接種は
心身共に凶暴化の一途を辿り理性を損失し手遅れとも成れば完全な嘔血鬼となってしまう。
尤もかれらは普段でも半分以上か若しくは限界に近い段階まで嘔血鬼化してると言って構わないだろう。
潔癖極まり・・・其の薬剤師は比較的その症状を抑える事に性交もしている。
幼くも少年から青年へと達しようとする頃、自分の境遇を疑問にも思い呪ったのが其の先の道を形作る。
其れが錬金術を基礎とした薬剤師である。
だが幾ら研究に没頭しても自分の体の体質の改善抑制する薬剤がは調合に至らない。
その代わり過程で生み出された薬が一財産作ってくれる。余り贅沢をしなけば生活にこまる事もない
其の源が此の街でも最近噂の薬である。
少々効力が強いために必ず水か湯で希釈して述べば気分スッキリ。多少の傷にも有効でもあり
傷薬として重宝されれば、騎士団には用法を守る事を厳守さえすれば其れなりの怪我でも立ち所に完治すると
評判も高くも、魔物との戦場には大量に生産されて納入されている。
非常に高価の高い治療薬として評価され大量生産の為の工場さえも街中に現在建設中の勢いでもある。
薬剤師はその薬が劇薬である事を知っている。
自分の工房薬品店では客が用法を厳守しない事を考慮して何倍にも希釈した物を最初から商品としてるのである。
自分が作って管理しているから正しい効能をはっきしてるが、若し工場が稼働してその原液や濃度の濃い物を
横流しでもする輩がいればどうなるだろう。立ち所に大詐欺になるに違いない。
そういう懸念を抱えるために薬剤師は工場の稼働には及び腰である。
では、何故に其処まで強く懸念を表するのかと問われれば、その薬は魔物がつくった薬で有るからだ。
言わずもがな。代々も何代も血の病を抱える血統の一族など、人種の世界に存在するはずはない。
そりゃあ何代も幾代も前なら自分の家系の先祖は多分普通の人種であったのかも知れない。
それでも何代めかの母が魔物と交わったのだろう。それから嘔血病が生まれたのだ。
人種と魔物の血が交わって半人種、半魔物なれば半人魔とでもいうのだろうか?
その半人魔の自分が作った薬であるならばそれはやはり魔物が作った薬だろう。
一見安全に見える薬品であっても元々自分の病の改善を目指して調合した物である。
目的とする検体の対象が魔物に近いとなれば、幾ら希釈したとしても人種の四肢に与える影響は大きすぎる。
だからこそ、人種の人体には大きな効能を生み出すのだ。これは一種危険な賭けであるとも言える。
若し、用法容量を守らず。規定以上の量を服用すれば何が起こるかわからないのである。
そして其れはその内必ず起きる事である。
眼鏡当たりに黄色いく丸い縁取りの有るマスクを被りしっかりとその上から大きめの山高帽を被せ
膝下挙げ句まで届く丈の長い外套を着込む。銀燭飾りの柄杖をコツコツと長革靴をなるべく高くあげすり足で
有るかないようと常に繊細な足運びを進める薬剤師。
外套の右ポケットにしまい込み生活の基礎と正しい目玉焼きの食べ方と題名を自分で付けた独自の規則手帳に乗っ取り
出来るだけ何時も道路の左側を歩く。これは依然右側を歩いていて、街の公安秩序憲兵隊の輩にしつこくつきまとわれたからである。
其れ以来、道路を歩く時は左側を歩くと規則手帳に書き留めているが、この街の大変の人種は何となくの規則として
右皮通行を常とすることが多い。となれば当然に人の流れに逆らう事になるのだが幸いな事に銀燭飾りの気杖と
魔物以上に目立つ出で立ちのお陰で意外にもスムースに歩く事も出来る。
勿論にどうしても右側を歩かないと目的にたどり付けない事も多々にある。
その時は首と状態を本来歩くべき方向に結構な角度で傾け自分は今左側を歩いているんだと自分に言い聞かせて我慢して歩く。
その日は仕方なく外出しなかればならない案件があった。
其れのお陰で自分の治療薬の開発治験の作業を中断しなかえばならないのが煩わしいが致し方ない。
集金日である。
薬剤師は副業を幾つか変えている。自分の才能を生かしたものが多いが大抵は委託業務だ。
工房にこもってあれこれと治験してる方が勉強にも成るし人々の為にもある。
嘔血病の治療が最大の目的であるが、常に新しい発見と驚きに満ちており新薬の発見にも事欠かない。
薬剤師自身は薬を作る事にしか興味も才能もないから、其れを世に出すとなれば誰かの手を借りなければならない。
人々に感性の可能性も有るかも知れない嘔血病を抱えても居るから自分で売り歩くより誰かに任せたほうが効率もいい。
自分の薬品工房よりも結構遠い貴族街と呼ばれる区画の裏とその裏路地。
いつもと同じに道路の左側を歩き其の反対にある目当ての建物の入り口と向かいあう。
薬剤師とその建物の入り口にはそれなりの幅がある道路がある、当然に馬車が雑多に行き交っている。
目指す建物は一種独特な雰囲気に塗れる社交舞台の店である。政府庁商業管理課にもそれと正式なと届けが出てる。
つまりは紳士淑女と振る舞う貴族達が夜な夜なに集い、歌い、嗤い、時にはその肌を撫でて蜜を啜る店である。
通り向こうで社交舞台の店専属の用心棒が道路の此方側で銀燭飾りの柄杖を携える薬剤師を見付けると
店の扉をバンバンバンと叩いて手を降ってよこす。業務委託をしてるので直属の上司と言うわけじゃない。
それでも毎朝贔屓の情婦に石鹸泡を塗りたくって貰い綺麗な卵型をした頭を剃らせる癖を日課とする
用心棒にとっては特別な客である。綺麗な卵型をした頭をした用心棒が口笛を拭くと店戸口から
わらわらと数人の手下共が巣に酢液をぶち巻かれた蟻の様にわらわらと飛び出てくると
通りを跨いて横切り邪魔だとばかりに騒ぐ人と馬車を身振りと恫喝と恐喝で即席の横断歩道を作る。
単純な仕事に見えても結構、体を張る仕事でもある。黄色眼鏡の薬剤師が通りを渡る為だけに
勢いよく奔る馬車の前に飛び出して止めるのだ。此の半年だけで参人が馬車馬に蹴られ半殺しの事故となっている。
因みに店の所有者からは一切の治療費はでない。精々見舞い金として自分の店の割引券が二枚配布されるくらいである。
別に急いで居るわけでも無いし、其処までしくても自分が遠回りしてくればとも思うのであるが
まぁ、誰かが身を挺して作ってくれる横断歩道を無下にするのは失礼だろう。
「なるべくゆっくり渡ってくだぇ。背筋を伸ばして威厳持って歩いてくださいよ。
そうじゃないと体を張って歩道を作る若造がつけあがるので。お願いします」
疾く渡ってしまえば楽なのであるが、綺麗な卵型頭したを用心棒に耳打ちされているから
マスクの下で壱と、弐と、参と、四と、と数を数え本来は結構な小心者の癖に偉そうに歩いて魅せる。
数える数が二十五を超えれば店の前だ。
ゴソゴソとポケットをあさり紐で丸めた札束を卵型の頭の用心棒の前に突き出す
「お子さんは元気かい?女の娘だっけ?可愛い盛りだろ。大事にしたまえよ」
「へぃ。来月には三つになります。目に入れても痛くないです。仰る通りに大事に育てます」
ペコリと卵型頭したを用心棒は頭を下げて丸めた札束を受け取り太い腕を掲げ黄色眼鏡の薬剤師の為に店の扉を押し上げる。
黄色眼鏡の薬剤師の旦那は金銭感覚が可笑しい。
半月の一度の集金日だけにか顔を合わせもしないだが。来訪を店の者に知らせる為にドアを参回叩く。
手下を呼んで歩道を作らせる。そしてちょっとした雑談戯言に言葉を交わす。それだけである。
だが然し、感謝と言われても金額が多すぎるのだ。只でさえ悪党稼業に身を染めればそこら変の奴らよりも実入りがいい。
その自分の手に毎回乗せられる駄賃は店の給金より多い。自分はこの商売組織の幹部でも上役でも幹部でもない。
なのに、今日の駄賃だけで貴族が見せびらかす馬車も楽に買える金額である。
「将来の為に貯蓄したまえ。何なら良い投資先を僕が紹介してあげよう」
そうと言われれば確かにそうである。今ではその気になれば貴族地区に家と蔵が立つくらいの貯蓄もある。
組織のボスよりも金はあるやもしれん。それに今の立場が自分にはちょうどいい。あの旦那は恐ろしい。
荘厳であるも威厳久しく寧ろ禍々しい装飾と黄色眼鏡の薬剤師が調合した独自の御香の煙が漂う。
今日の其の日も店は繁盛しているらしい。こんな悪趣味な店に夜な夜な通う貴族と政府の厄神共は
よっぽど暇でしょうが無いのだろうか。マスク越しでも耳に煩い太鼓楽器と高音交じりの悲鳴が轟く。
「御父様。御父様っ。来てくれたのね。今日は何人?」
「嬉しい。御父様ぁ~~。お仕事終わったら遊んでよ~~」
「あっ。ずるい。私が先なの。私と遊んでよ。御父様ぁ」
舞台では殆、全裸の踊り子が四肢をくねらせ乳房を揺らす。座席で貴族の股間に顔を埋める女が性を絞る取る
魔女と醜漢がまぐわう天国の様な店内で直ぐに参人の女が黄色眼鏡の薬剤師を見つけ囲んみ外套の袖を引く。
「御父様って、もう無愛想。でも其処が良いの」
「御父様だもの。私の御父様」むき出しの乳房を強引に押し付けてくる女達
そのうち二人は同じ顔である。乳房の大きさも乳首の色もまったく同じである。
参人目も他の二人と良く似ている。否っ、同じじゃなくても似すぎている。
まるで先の二人の姿をちょっと幼くした位のちがいである。三姉妹であるのやもしれない。
二人が双子の姉妹であば残り一人が思うであれば良く顔つきが似てるのも納得は行く。
次の疑問となればそれなりに若い容姿であるし、人に聞かれれば弐才サバ読み年を告げる。
其れなのにも自分のさほど変わらず位の女に御父様と呼ばれているのは何故であろう。
それに当たりを観たわせば舞台の上で尻を振る女の顔も姿と姉妹に似てる。
皮作りの豪勢な椅子で政府役人の股間に顔を埋め性を絞って顔をあげまとわり付いた汁を
美味しいのと舐めて啜る女のかも何処無くあの姉妹に似てると思えば
私しも舐めたいと隣から頬に残った汁を綺麗に舐め取る女のはふたりとも全く持って同じである。
さてはもしかして此の店で妖艶に四肢をくねらせて踊る女も。
座席で乱暴に頭を抑え込まれて咽るその女も。
丸く太った役人の手に隙あらばと尻の肉を掴まれまんざら模なくせにピシャリと弾くあの女も
何処か似ている顔と四肢。皆姉妹なのか。親類だとでも言うのだろうか。五十人入るはずの女どもの顔は同じと良く似てる。
正義感と悪を憎む警官役人がある日店に踏み込んで聴取がてらに女共を壁に立たせてて似顔でも欠いて記せば
大体五人も掛けばすむだろう。後は全員同じである。
「御父様っ。御父様」と煩く纏わりつかれるのお黄色眼鏡の薬剤師はなれているのだろう。
さっきとは別の用心棒が密室事務所の扉を背後ろで締めてくる。
其れが完全に閉じる前にスルリと滑り込で悪戯ぽく嗤って魅せるが
その内二人は同じ顔出し、次の女もちょっと姉達より幼いだけでも良く似てる。
悪戯好きなのは上の姉妹なのだろう。観てていいわよとでも言うように茶色皮のソファの身を落としして絡み合う。
末妹は一番体躯の太い用心棒の漢の腹を叩いてから下腹部に細い指を絡めて嬲りだす。
「こっ。今晩は。黄色眼鏡の薬剤師殿。遠い所ご苦労さまです。
昨今は役人の締め付けもきつくなってますが、なんとか今日も盛況で。
これも薬剤師殿の薬のおかげです。いやぁ~~。本当に才能豊かでいらっしゃる・・・・」
ついさっきまで自分が此の場所のボスであると頭の上の鬘毛を櫛で必死に整えならが
鏡を覗いていた漢が必死で機嫌を取ろうと揉み手する。
ほっておけば毎回十分くらいは平気で褒めちぎって来る鬘頭のボスをマスクの奥からじっとじっと睨む。
ふと。何かみつけた子供の様に手に握る銀燭飾りの柄杖を宙に傾けると凝視しなくても高価と分かる
卓の上の家鴨の形の瀬戸物を其の先でちょんと突く。閉まったとばかりに鬘頭のボスは目を見開く。
ちょんちょんとつつけば家鴨の瀬戸物はその勢いで卓の隅まで動いてる。かろうじて卓の上に鎮座してる。
「僕が居る場所、其の部屋で黄色を見に付けて良いのは僕だけだ・・・」
最後にちょんと柄杖の先で家鴨の貯金箱を付いて蹴る。
中身をぶち撒けて黄色い家鴨の貯金箱が床に粉々にと砕ける。
「しっ、しっ、しっ、しっ、しっ、失礼しました。つい片付けるのを忘れちまって」
多々が黄色の貯金箱である。その色が黄色いと言うだけで黄色縁取りのマスクからふしゅ~と息を吐き出し壊してしまう。
同時に鬘頭のボスよりも、終わった。彼奴、終わったぞと心の中で恐怖するも何知らぬ顔でいちゃつく姉妹から身を遠のける。
「まぁ、いいさ。誰にでも忘れる事はある。人種の悪い欠点だ。物覚えが悪いのはけってんだよね」
「ええ、ええ。私はもとから馬鹿でして。記憶力など小餓鬼族よりも悪いんですよ。あはは。
こ、こ、此方が今回の上納金と帳簿で御座います。確認してください。どっどどうぞ」
意外な事に失態はあっても命は繋いだらし。部下の野郎共の目には情けなくも見えるだろうが
此処を乗り切るのもボスの腕のみせどころではある。
「小餓鬼族は馬鹿じゃないだろ?物覚えは寧ろ良いほうだし。創意工夫も怠らない。
客観的な視点で総合判断すれば、魔物の中でも優秀な小餓鬼族と何百年も進化もろくに出来ていない人種。
その差は歴然だと僕は思うがね。これは正しい見解で有るし異論はみとめないよ。そうだろ?」
「はいっ。仰るとおりです。黄色眼鏡の薬剤師どの。
我々、人種は小餓鬼族より劣る種族です。はぃ」学術的にもそれは正しい。
世に魔森があり魔物が巣食う以上、平で比較安全ば場所でしか繁栄出来ない人種は本来下位種族であってもおかしくない。
但しその殆一年中いつでも繁殖行為が可能で有ると言う特徴が魔物の其れよりも多く結果一番個体数がおおいと言うだけである。
黄色眼鏡の薬剤師の持論が正しくはあっても、其れに同意しかねるのは人種の奢りと傲慢さが起因する。
「あれ?計算がちょっとあわないぞ?
帳簿と実際の金額にずれが有るぞ?はてさてどう言うことだろう。
それと販売目標をたっせいしてないじゃないか?1号薬品より2号薬品の方が売れてるぞ?
それは違うだろ?僕は1号薬品をうってほしいんだよっ2号はどうでもいいの。おまけなんだよ。
なんで1号が売れてないの?君言ったよね。言ったよね?具語こそは販売目標を達成しますって。
僕の顔まっすぐ見ていったよね。なんで約束したのにできてないの?努力してるの?
朝起きて歯磨いたら。よし今日は1号を一万本うってやるって思わないの?思うでしょ。普通。
説明してくれるかな?ちゃんと説明してくれる」
最初こそ声に癖があっても紳士的に話していたはずだがだんだんと興奮して抑揚の差が激しくなるととまらない。
最初こそ黄色い縁取りの眼鏡マスクの奥で書類と売上金をにらみ比べていたが
書類に目を通して行き販売目標に達してないと知れると態度が変わる。
「そっ、そっ、そっ、そっ、其れは1号の方は魔物用です。
2号の方は人種用です。1号は魔物用ですが需要がないんです。ほとんどないんです。
最初は興味本位で客も買ってくれるんですが。所謂、味がしないとか効果がないとかで
返金を求められるです。其れに先週からあの蒼肌濁る小餓鬼族が内の薬は危険物で役に立たないと
言い出しまして街の店も売人も仕入れてくれないんです。
あの小餓鬼族が一つ言えばみんな言う事聞くんです。
そっ、そっ、そレに比べて人間用の2号はすごく売れるんです。何せ健康的な麻薬ですからっ」
ズドンっと音が轟き、ど頭をぶち抜き銀燭飾りの柄杖が中年用心棒の四肢を後ろ壁に植え付ける。
閃光の如きの光景はなんども観た光景だ。
弐ヶ月前も丁度其の位置に立っていて頭蓋骨に銀燭の柄杖を指して絶命した奴の体液血がまだ染みになってもいる。
激奥して勢いで杖を用心棒に投げつけた薬剤師は最先端のお洒落だと自分で決める山高帽を脱いで卓の上にそっと置き
手でかちゃりかちゃりと留め金を外しずるりと汗を飛ばし黄色眼鏡のマスクを剥いで脱ぐ。
左に首を曲げてふれば帽子から垂れて流れる美しも長い白銀の髪が揺れて流れる。
日に何時間も薬剤工房でガラス瓶相手に目を壊せば視力も悪いのあろう。
長外套下の燕尾服のポケットから真っ黄色に染めた太縁眼鏡を鼻に乗せたと思うと
獣腕一閃の如くに鬘頭のボスの視界が揺らぐ。
豪華な特注品の卓の上に黄色眼鏡の怪人に頭を強く押し付けられジタバタと手を振って退けようと足掻いても動かない。
その視界に白銀髪の惚れ惚れするような顔つきで鼻上に派手な黄色い眼鏡を乗せた美青年が睨み悔しそうに唇を歪める。
「契約だろ。契約しよな?
1号と沢山売るから2号をおまけにちょっと売っても良いよっだったよね?
なんで2号の売上が多いんだよ。馬鹿な人種が沢山買うからだって?金が儲かるからだって?
そうじゃないんだよっ。僕は1号を売って欲しいんだよ。蒼肌濁る小餓鬼族がどうだって?
奴を狩りたいからヤッてるんだよ。奴を混乱させるためにヤッてるんだよ。この惚け茄子」
激昂という事ばで示すのは足りないだろう。
結構幅のある卓の向こうにすわっていた鬘頭のボスの頭を鷲掴みにし怒気に任せて
ガンガンガンッっと卓に打ち付ける。余りの勢いに鬘毛が滑ってつかみそこね揺らぐ襟首を掴み直して
もう一度ガツンっと慢心の力で卓に叩きつける。
「いいか?契約は厳守すべき約束なんだぞ。御前自身で指印おしたんだぞ
なんで守れないんだよ。守ろうとしないだよ。努力たないなんだよ。
売れないなら売れるように企業努力しろよ。約束まもれってば。
守れないなら血肉よこせ。餌にしてやるっ」
黄色眼鏡の薬剤師は歯並びは良い方である。
否然し、其れはマスクを被っていても居なくても。殆全裸で目玉焼きを食べる時だけである。
目玉焼きは大好きなのは飽く迄、好物であると言うだけであり。本当に四肢が欲しがるのは人種の血肉と汁である。
ガッと見開いた瞳が血走り鬘毛が脱がた禿頭を掴んだ指が頭蓋骨にグイグイ食い込む。
とても人種の口の開け方では思えないほどにガバリと大きく口が開けば乱杭歯は蠢き吠える。
新鮮な血肉が目の前にあれば我慢することも特にない。
力任せに頭を引き寄せ正にガブリッとを喉に齧り付く。
ぐぃっと喉に食らい込む乱杭歯が喉肌に食い込み、鼻息あらく唸れば血が溢れて口と喉を滴り満たす。
何が旨いって問えば、骨を砕いて吸い上げる人種の脊髄液であると満面の微笑を浮かべるだろう。
事実、今も自分の喉に噛み付つき鼻をから息をすい上げその勢いのまま骨まで達した牙から
ちゅう~~~と脊髄液を吸い上げて行く。恐らくはその時くらいまでは絶え絶えであったも意識は
残ってるかも知れないが次にばきっと万力の力で首骨が粉砕されればそこで絶命に至るに違い。
空気を欲しがる肺襞も血を吸い上げられば縮まり何も残らない。
人種の生命活動を司る心の臓も噛まれた瞬間は動き血液を送り出せよと鼓動激しく動いていても
直ぐに心の臓に貯まる血液も吸い上げられる。びくんびくんと筋肉が痙攣し手足がばたついて止まらない。
ぢゅうぢゅうぢゅうと血液と汁を吸い上げる音が鳴り響く中、惨劇はその手を周りに伸ばす。
ボスと居座る机の上でさっきまで生きて動いていた骸が只の肉塊になっても未だ血と汁吸い上げられて居るあいだ。
「御父様。食べて良い?食べていいの?」
「もう我慢できない。御父様だけずるいの」
「私これがいい。ずっと目を付けていたの」
追々、今さっきまで股間を弄っていた幼顔の女がその手に圧力をかける。
圧迫と言うほどに生安いものではない。半立ちに固くなった竿と袋を纏めて握った女の手は万力の如くか鬼の握力か。
一瞬の後にぐちゃりと形を砕いて漢の竿と袋は潰れて血肉が飛んで跳ねて滴る。
「うげっ」と白目を剝いて嗚咽を漏らし痛みに耐えかね四肢を前に倒せば
其れを待っていたのよばかりに幼顔の女が下から大きく口をあけ喉食らいつく。
いつか昔の悪魔崇拝の宗教画が描く阿鼻叫喚の様とは正に其れだろう。
幼顔の女が漢の股間を握りつぶし喉に食らいつけば残る姉妹も漢達に遅い掛かる。
互いにいちゃつく革張りの寝椅子から飛び上がると思うと
油断していた顎髭の漢の喉に噛みつきその儘、壁に押し付ける。欲張りなのだろう。
逃げようとしたて漢の頭をがっちり潰せば運悪くも目玉に細指が突っ込まれて潰される。
頭が潰される恐怖に必死に足掻いて抵抗すれば順番を待ってろととばかりに女の手首がぐるりと回転し
頭も一緒に動きがぼきりと首骨が折れて砕ける。
黄色眼鏡の薬剤師と彼を御父様と呼ぶ姉妹と末妹は化物である。
普段は客と自分等に媚びを売り乳房を押し付け脚を開く女達が自分達の血肉を啜り食らう化物だとは思わなかった。
確かに彼女等全員が肉が好きだとは食事の皿を観れば良く分かる。肉と果物は嬉しそうに食べるが野菜は必ず残していた。
今更、彼女等が肉食女子だとわかっても自分の腹肉を割いて中に顔を突っ込み臓物を直接喰らい付いてるとなればこそ
納得はしてももう遅い。ぐりっと心の臓が掴まれぶちゅっと潰れれば直ぐに意識が闇に溶ける。
逃げるにも逃げられないのは誰でも解る。何故なら最初に末妹が叩き付けた場所は此の部屋の惟一の扉で有るからだ。
窓の一つもないのなら重い扉が一枚あるだけだ。逃げようとすれば扉を塞ぐ娘の手が伸びてくる。
残りの一人は彼女等の中で一番行儀が悪いと言えるやもしれない。
月に弐回の集金日には結構な人数の漢達が其の部屋に集う。
運が良ければ何も怒らずも。黄色眼鏡の薬剤師が激昂の果に食事を始める。分かったいても給料は良い。途轍もなくも。
既に参人目の餌の血と臓物を喰らって啜ってる癖にも飽き足らず覚え震える漢達の頭を掴んで軸として
そのまま手腕を引き脱いでしゃぶり喰らい付き、直具に別の奴の頭を掴んで腕をずぼっと引き抜き味見する。
腕を引き抜かれた奴らは激痛に悶え苦しみ床に転がり喚くも其の目の前にドサリと別の漢の腕が落ちて来る。
嘔血鬼共の餌場と化した社交舞台の裏事務所。
時に人は奇行に奔る。自分でも何がなんだかわからない行動でも有る。
余りに酷い惨劇を間の当たりしてその漢は喉が乾いたと気づく。何故そう思ったかなんて後になってもわからない。
悪行働く輩の事務所であるから当然に高価な酒を収めた酒が有る。
どうせ持ち主は黄色眼鏡の嘔血鬼の餌となっている。確かに自分が呑んでも文句は言わないだろう。
其れも名案であるが何か違う。次か其の次か、自分の腕は轢き散られるか頭を齧られるかのどちらかだ。
確か此の部屋の何処かにはポットとティーセットがあったはずである。
卓の上で既に四肢中の血液を黄色眼鏡の嘔血鬼に座れ肌がしぼみ始めた鬘頭のボスの二人前のボスが
酒を一切飲まない輩だったのでそのかわりに好んで呑んでいた態々大陸の向こうから取り寄せた紅茶葉も有るはずだ。
そう思いつくと人生の最後に紅匂い香る茶が飲みたくてたまらなくなってしまう。
別に逃げ出そうとしたわけでもない。別に死が怖いわけでもなかった。
ただ、無償に紅茶が飲みたくなり朧げな記憶の中で其処にティーセットが有ると知る場所にむかって歩き出す。
不思議な事にティーセットの棚の前にたどり着くまでに嘔血鬼達は食事に夢中であり自分の順番に回ってこない。
「ちょっと、御免なさい。直ぐすみますから」と湯沸かし筒に水を汲むために部屋を横切った時に
誰かの腕から滴る血を垂らし呑む女と目があってもぱちぱちと目を丸くして瞬きするだけで道をも開けてくれる。
往復する時に床に伏せくちゃくちゃと肉を咀嚼する女の頭を脚を上げて跨いでも特に気にする様子もない。
戻ってくると湯沸かし筒で湯を沸かし祖母に習ったとてもとても正しい紅茶の入れ方を頭の中に思い浮かべ
それをなぞって出来るだけ丁寧に時間を掛けて紅茶を入れる。
思い出の中の台所で祖母が紅茶を入れる時に必ず口にする鼻歌を自分もいつの間にかまねている。
それ偶然か、やっぱり偶然でもあろう。閉まってあったティーカップは5つ有るとある。
真面目に生きてきたつもりでも人様の命を奪ってしまえば地獄行きだろう。
冥土の土産に紅茶の一杯喰らいは許されるやもしれないが、其れを一人で楽しむのは忍びない。
結局思いあぐねも五杯の紅茶を入れて銀盆に乗せる。
「み、皆さん。紅茶を入れましたよ。食後の一服と洒落込みませんか?」
人の血肉と汁を喰らう嘔血鬼等がぴたりと動きを止めて顔をあげる。
「その紅茶の葉は何処産かね?」鬘頭のボスの四肢から血を殆ど吸い上げた黄色眼鏡の嘔血鬼が問い詰める
「東亜協湾帝国産って箱に描いて有りましたね。随分と珍しい葉の様です」
「なんだと、彼の国は食に拘る民が多いんだ。上手い紅茶に違いない」
「クッキーある?卵クッキーがいいの」
「今、手元に有りませんが直ぐ用意しましょう」
卓の上に乗った鬘頭のボスの遺骸を肘で退け銀盆を置いてから呼び鈴を摘んで鳴らす。
呼ばれて走り込んで来た若い手下が驚愕に目を開き胃袋から逆流するのを無理に我慢する。
「三丁目の菓子屋さんの卵クッキーを箱で買ってきて下さい。
今直ぐにですよ。疾走っていきなさい。卵クッキーですからね」
柔らかい物腰と言いましでは有るが体中に他人の血飛沫と肉片を被れば其れこそ恐怖だ。
「角砂糖は何個入れていいの?参個?四個個?」
「角砂糖は御一人様、2個までです。砂糖の過剰摂取は肥満の原因ですからね。
でも、行儀を良くなさるなら。特別に甘~~い蜂蜜を入れる事を許可してあげます」
「蜂蜜?紅茶に蜂蜜入れていいの?太らない?」末っ子妹が誰かの血濡れた腕を床に落として目を丸くする
「ええっ。角砂糖より気品の良い甘さに成るのですよ
黄色眼鏡の薬剤師殿には、当別にブランディを注いで上げましょう。大人の味で御座いますね」
「なんだと。紅茶にブランディだと?抹茶ひまわりの種油ではなくてブランディだと?新しい組合わせだぞ。
云々、私は父親だからな。云々、大人の特権だ。どれ頂こうとしよう。
お前等座れ。行儀よくしないと蜂蜜もクッキーもなくなるぞ」
「嫌っいやっ。其れはいやなの。お行儀よくするのよ。妹達」
三丁目の角の菓子屋から息を切らして帰って来た若い手下が卵クッキーを新しいボスに手渡す。
勿論、死に間際に紅茶を飲みたかった漢はそんな事は微塵に一つも考えてなかった。
ただ、卓の上に置いた銀盆からティーカップにブランディを垂らし進めると接客用の椅子には
威厳したたかに血汁が突いた長外套を脱いでくつろいだ黄色眼鏡の薬剤師が陣と構える。
待ちきれないとばかりに次女で或ろう女が結構重い寝椅子をヒョイと片手で持ち上げ卓の四角に寄せれば
疾く紅茶に蜂蜜垂らしてと幼女のようにキラキラと目を輝かせて刷り込む。
長女が男勝りに胡座を掛けば次女は女座りでしとやかに末妹は可愛らしくと膝を抱えれば
顔と四肢が似て同じでも性格はばらばららしい。
「それで君はどう思うかね?今後、我々はどうやって事を進めて行くべきだと思うかね?」
明らかに自分に向けて投げられる言葉であるとしれると動揺が隠せない。
何せ相手は顧客であり魔物化物である。散々食い散らかした同僚の骸が未だ転がっている。
自分だけ立ったままで上から見をろして話をするわけには行かないだろう。
「そうですね。色々問題はあると思いますが・・・。
発想の転換は必要ですね。ふむ、こう考えるてみるのはどうでしょう?
新たな行動指針を立案するのです。提案が御座います。黄色眼鏡の薬剤師殿」
仕方がないから卓をぐるりと回って前任のボスが愛用した高価な椅子に浅く腰をおろして発言する
「聞こう。紅茶職人殿の君の意見を」
興味深いとばかりにも優雅な仕草で紅茶に香るブランディの香りを黄色眼鏡の薬剤師が頷き促す。
勿論、その場しのぎのでまかせではなかった。其の日から紅茶職人と名を冠する新たなボスと成る漢は
大人しくも目立たぬが思慮深くも計算も得意で用心深く妄想好きでもあった。
金の亡者であった前のボスの利益至上主義にも辟易していた。目立たないから特に大きな仕事も
任されずに暇な時間も多かったら自分だったらこうするだろうなと胸の内で練った計画がある。
順を追って端折理もせず計画を話していくと黄色眼鏡の薬剤師が云々と頷くと父を真似て姉妹足しも頷く
途中。次女が卵クッキーのおかわりを強請れば呼び鈴を鳴らして買い出しに行かせ
黄色眼鏡の薬剤師がもう少しブランディを垂らしてくれと所望すれば新しく鼻歌を歌って紅茶を入れる。
事業と約束を守れなけば、即刻彼等の餌になるのが当たりまえの日常の世界で
時に懶怠者同士の喧嘩ですまぬ相手との戦長引きその後までも
紅茶職人と黄色眼鏡の薬剤師と参人の姉妹達の友情と絆、ずっとずっと後までも良好な関係を築く事になっていく。
幾度目にも社交舞台の店の経営を担う悪の秘密結社は、その前を新しく蜂蜜紅茶商会と変える。
トップが入れ替わったのだから当然そうなるのだろうし大きく経営方針を含め色々と変容する。
「おいっ、御前明日の休みどうすんだ?贔屓の売春婦の寝蔵まわりか?そっちの御前は?」
ちょっと年配の宙管理職の漢が羊皮紙の束を握って背の低い眼鏡の若い漢の顔を覗き込む
「何言ってるですか?明日は休みじゃなくて個人勉強の研修休暇ですよ
娼婦の寝床めぐりは次回の休みです。新しい店の会計補佐の研修に出ます。
将来、あの店の主任会計士なって乗っ取るのが目下の夢なんです。遊んでる暇なんてないんですよ」
「ええ、俺もそうです。拳闘教習訓練と大型荷車免許の教習会に出席します。
免許持ちは特別手当がつくんですよ。そういう貴方はどうなんです?
もう、年功序列の時代じゃないんですよ?」腕っぷし自慢の奴が顔を上げて言い返してくる
何だとくそ餓鬼の若造奴と眉を潜めても無駄である。
あの物腰の柔らかい紅茶職人の筆頭は大人しくも目立たない癖にやる事はえげつない。
組織改革の最初の業務執行が構成員の意識改革と福利厚生の充実であった。
先ず、若手を初め大抵の者はこの業界の労働時間はあって無いようなものだ。
今も其れは殆かわらない。ところが平日の勤務時間は変わらなくても
かわりに週三日の休みが確実に貰えるようになった。その内一日は個人の意識と技術向上の為の勉強日と定められる。
下っ端から幹部まで個人のやりたい事やるべき事に順次て有るものは腕っぷしを磨く為に拳闘教習所に通う。
興味が有る者は一定の期間の他職業の見学修行も認められている。社会勉強はとっても大事と悪の社訓にも謳われている。
手に職を付けて専門分野の知恵と技術を得て組織の繁栄に助力せよと言うのが組織の運営方針の一つだ。
若い者は大歓迎であるが、ある程度年配や幹部達の間には不満が貯まる。
それまで経験と腕っぷしだけでのし上がって来た輩には随分と甘っちょろい戯言だと鼻でも嗤う。
だが半月も立つと自分達も一日増えた休みを無駄に過ごすのは極めて身の危険であると悟る。
馬鹿だっ馬鹿だとばかり思っていた店に籠もる同じ顔の人雌達。
皿の上に乗った野菜を尽く残し、肉と果物を喰らうか客の股間に顔を埋めるか跨るかしか出来ない人雌。
確かにその彼女等、一見本当に馬鹿だと思っていたが其の年齢を聞かされて驚愕する。
平均して参才。年長でも五才。一番下は一才と九ヶ月だと言うのだ。そして大好物は人の腸の肉と知らされる。
噂はあった。
それまでは比較的中規模級のしがない悪の秘密結社であったが、あの黄色眼鏡の薬剤師と業務提携すると様が変わる。
貴族地区の駅前通りに社交舞台の店を開くと殆、同じ顔の女達を雇入れ、浮世離れの桃源郷如くと別世界を作り上げる。
快楽を求めて集う規則と政府庁の役員共に健康的な麻薬と四肢くねる人雌達が快楽を提供する。
店の経営は繁盛していくのだが、黄色眼鏡の薬剤師への見返りが上手く行かない。
舞台と資金が膨大に注ぎ込まれたが彼の求める物は目標の三割りにも達しってなかったらしい。
当然、トップの挿げ替えが余儀なくされるが、それは幹部全員皆殺しである。
文字どおり頭をすげ替えてしまえと言う事だ。
最も其れは惨劇地獄であっても当初は黄色眼鏡の薬剤師一人の仕業と皆が考えていた。
彼が魔物化物とは想像は出来ても毎日顔をあわせ、声を掛けて言いつければ歓んで脚を開く人雌が同じ穴の狢ところか
好きあらば咥えた一物の棒肉を咥え千切りたいと其ればかり考えている魔物化物であったと成ればおちおちともしてられない。
逃げ出す事もできるやもしれんと試みる者もいるが、所要と偽って脱走する前に皆の前で頭から人雌に齧られる。
本当にその店は浮世離れの桃源郷と極焔地獄そのものの場所である。



「君は家族持ちだと聞いたが本当かね?
世界征服を目標とする悪の組織に有るまじくも政府庁大陸人結婚管理課に正式な書類を提出してるとも。
うむ。大陸飛びの御夫人と縁を結んで国際結婚するとは小洒落た趣向を持ってるな
お子さんもそれなりの年だと聞いたがそうなのかね」
「へぇ。否、はい。そうです。
屋台でぼったくらそうになって困っていた大陸飛びの女に声を掛けたのが縁ですが、
随分昔の事でして。あっという間に腹が膨らんだらぽんぽんと子が生まれ
今や十と八を筆頭に三つ年までの六人の子持ちの悪党で御座います。
なっなので首切りは勘弁下させぇ。若い奴らと違って潰しがきかねぇんです」
急に筆頭に呼び出され流行りの首切りの宣告かと思って慈悲を期待に長々と喋ってしまう。
閉まったとばかりに頭を描いて下を向く
「ふむ。思ったより苦労人とも言うわけだ。そんな苦労人の君に朗報だぞ。
禄人子持ちの苦労人の小父様さんの君を我が社の財産であり主力武器人雌人形ちゃん達の教育係に任命する。
頑張りたまえ。お~~い。人雌共。入ってこい。新しい小父様さんだぞ。お前たちの面倒を見てくれるのだ」
「えっ?なんですかそれ?教育係って?人雌共の?
えっ?ちょっと待って下さいよ。あっ。こらっなにするんだ。毟るな。髪の毛を毟るな。
髭を引っ張るな。朝の手入れが大変なんだぞ。服を脱がそうとするな。腰巻きに手を突っ込むな。
そっ、其処はいかん。いかんのだ。中年漢の絶対領域であるぞ。むやみに御開帳してはいけないんだぞ。
ちゃんと奥様殿の許可がいるんだよん。あんっ駄目。其処は駄目。臍穴を舌でほじくるな。
どうゆう性癖をしてるのだ。御前はっ。やんやん。そっちはもっと駄目。新しい世界が開けちゃうの
・・・。ひっ。筆頭。何、微笑んでるですか?紅茶のおかわりしてないで助けて下さいよ。あん。エッチ。
幼稚園で子供と戯れる保育教師じゃないんですよ。此方は貞操が掛かってるです。犯されるぅ。人雌に犯されるぅ」
同じ顔の人雌共にとって家族と呼べる者は少ない。故に自分を慕ってくれる者への絆は深く刻む。
愛情の表現方法が歪んでいてもそれは最初に与えられる情報の少なさに起因する。
因みに黄色眼鏡の薬剤師を御父様と認識し尊敬と愛情を注ぎ尽くすが
この時彼女らは小父様さんと言う言葉の意味を良く知らず自分達の新しい玩具とかしか認識していない。
「やぁだぁ~~。お野菜嫌いなの~~~」舞台袖の脇横の其処まで広くない休息室で声が上がる
「お肉が良いの。お肉。貴方のお手々片方頂戴」
「葉っぱの塊は苦いの。ぺっぺっのぺっ」
「そんな事言うなよ。我儘は職無いんだぞ。食べろってば」
少々荒っぽくも喧嘩早い若い漢が憮然と言い張る。
彼奴は自分の腕だけで悪童の世界をのし上がれると思い込んでいるタイプの輩だ。
「なぜ、蜂蜜をかけてやらん。其処にあるだろうに。
それから何故、布圧手袋を嵌めておらん。安全施行基準違反だ。罰金銀貨参枚だぞ」
「えっ。蜂蜜はありますよ?此奴等が勝手にかければいいでしょ?
あんな分厚い手袋嵌めるなんてダサいんですよ。娼婦共に嘲笑われるし。
大体、上役さん達はわかってないんですよ。悪党覇道を目指すならかっこよさ・・・」
ガツンと思い拳骨が落ちて瞼にお星様が弾け飛ぶ。
「御前はなっとならんな。教育実習中なんだぞ?それも結構な危険業務なんだからな。
まずは安全施行基準の手法をしっかり遵守する事。それが大事だ。
それから此の子達はだな。野菜と言うものを好まないのは確かであっても食べないわけではないのだ。
蜂蜜をかければ食べてくれるのだが。ここが大事なんだぞ。
野菜は嫌いだが、誰かに目の前で蜂蜜を掛けて貰うのが嬉し恥ずかし楽しいのだ。
ほらほうやってだな。」
家に帰れば六人の子供。仕事場では何人かの部下の手を借りるとはいえ、五十と四人の年頃の人雌達ちの父である。
「良いか。レムヌ。モレヌ。キキヌ。
此の蜂蜜は態々峰向こうの農場に月に一度契約養蜂農家に買付に言ってる貴重なんだぞ。
其れこそ貴族だって安々と手に入れられない商品なんだ。
美味しくて甘くてとってもお肌に良いんだぞ。ほら、とろとろ~~~とろ~~ん」
眉間の眉を繋げて睨めば憲兵隊の大牙鬼族さえも背を向けるほどの強面の教育係の漢は
子を甘やかすのと同じ様に声に拍子つけ野菜の上にとろりとろりと蜂蜜を掛けていく。
その様をこれでもかというくらいに満面の笑みを浮かべレムヌと呼ばれた人雌が覗き観てる
「おっ小父様さん。小父様さん。私にも私にも。疾く疾くぅ」レムヌの妹モレヌが強請る。
「髭の小父様さん。私は二往復がいい。たっぷりにしてっ」上の二人と同じ顔のキキヌが騒ぐ。
「ずるい。キキヌだけずるい。もう一個たべるからたっぷりが良い」長女らしいレムヌがはしゃぐ。
「私もたっぷりたっぷり。あと、其の子嫌い。脚食べて良い?」彼女等の中では特に肉を好むモレヌが目を輝かせる。
「ふむ・・・。
脚を食わせるのは出来んが、此の職場には向いていないな。御前は首だ。帰って宜しい。
・・・えっと解雇の手順と届けは・・・担当じゃないかならな。・・・・人事課に。
あぁ~~、御前。安全施行基準違反五階目か。其の内弐回は人雌人形に手を上げる暴力行為を実行してる。
云々。反省の色がないってことだな。君達、食べて良いぞ。お肉の食事を楽しんで良しっ」
「えっ。そんな・・・お肉の食事って・・・俺っ?」
其れまで楽しそうに蜂蜜がたっぷり掛かっている青野菜の塊をフォークで突く人雌人形の顔が歪む。
ぎょろっと目玉が以上に開くと頬の上間で裂けた口から乱杭歯が生えて蠢く。
脱兎の如くに飛び抱え場阿鼻狂乱とばかりの三日前と同じ魔物の人肉を喰らう惨劇食事が繰り返される。
「又、人員補充せねばならん。今度は職業斡旋庁にでも脚を運んでみるか
んっ。其処の若いの。掃除課に連絡入れといてくれるか?店が開く前に片付けて下さいって言っといてくれ」
がぶりぐちゃりと姉妹達が肉の塊を貪るのも最早成れた光景である。
やたら高額な賃金に引かれ雑用係を引き受けたのは良いが魔物の世話係だったと知った青年は
こわごわと背筋を強張らせるも、自分は安全施行基準は絶対守ろうと近い伝言を掃除課の詰め所に届ける。
散々に四肢の穴の全てまで弄られ舐め回された鼻髭立派な教育を押し付けられた漢は
疲労困憊と気恥ずかしから卒倒してしまう。
額に冷たさを感じて瞼を朧に開けてみると可愛く妖艶な顔が三つ心配そうに見つめていた
「ひゃっ。近い近い。顔が違い。ちょっと離れてくれ」思わず声を挙げれば
同じ顔をした姉妹がさっと離れて距離をとる。
その時何か親しい者への愛情と絆を示す光が彼女等の瞳に宿るのも感じる。
どうやら自分は此の子等にとって世話をしてくれる小父様さんと認められたらしい。
上役頭領に任されたなら責任もある。
まずは相手の事を知るべきだと思いその日は舞台に参人を上げすじっくりと話してみることにする。
吃驚仰天無知こそ己の恥としれ。魔物界隈にも通じる諺にも有るように世話係の鼻髭小父様さんは
自分の経験と知識の狭さとあの黄色眼鏡の薬剤師の錬金術の手腕の凄さと所業の酷さを改めて知識と蓄える。
悪の組織、蜂蜜紅茶商会が経営する新旧共にの舞踏社交の店。
其処に巣食う。正に巣食うと言う言葉しか当て嵌らない人の雌の女達。其の数。数えて五十と四。
皆、乳房も尻も大きく容姿端麗、綺麗な顔立ちであるが。其の顔つくりは皆良く似てて似すぎてる。
並べて比べ比較すれば違いも確かに有るのだが真面目に分類するとだいたい10種類である。
およそ50人の人数であるが皆良くにてるし最初から最後まで誰も互いを姉妹とも呼ぶ。
生活の基本的な事は四肢が覚えて居るので差し支えないので或ろうが仕事として
認識してるのは人種人類との性行為である。それは極めるべきかなと技を知識が豊富でもある。
そうしろ言えば大概は素直に言う事聞いて脚も開くが、逆にちょっとした事の知識がない。
鏡を嫌いもする。尤も自分と同じ顔がいつも側にあるのがからそれで良いと嗤いもする。
肉食であるが果物も食す。野菜を嫌うが最近蜂蜜を掛けて食べると言う技を覚えてもいる。
そして人種の肉が大好物有る。正確には人種の血と肉と汁。そして脊髄液。
其れは自分達の片親から引き継いだ本能だと言う。
飽く迄も片親である。御父様と言う言葉を理解するが御母様と言う言葉は概念にも知識もない。
つまりは本当に方親から生まれたという事である。それも父親からである。
例えそして真実としても黄色眼鏡の薬剤師が魔物であり雄であっても
体一つから五十と四人の姉妹を産み落とすのはむりが有る。
其れこそ脾腫の女を拐かし巣城で犯し強姦し子を孕ませるのを本性とする小餓鬼族でも
五十を超える子供を皆同じ顔にするのはあり得ない。
其処まで聞けば察しも付くだろう。
五十と四人の姉妹達は黄色眼鏡の薬剤師が己の四肢の細胞を検体として錬金術の技を駆使し
生み出し作った人造人種の雌である。
後の世界で人造人種人形と学会で命名される自然界には存在を許可されていない人工生物である。
それと知った時は驚愕に腰を抜かすが、だからと言って欠勤しても居られなかった。
何せ家に帰っても嫁も子供も煩いし、仕事場に出勤すれば五十と四人の子持ちである。
しかも甘えたがりやで我儘で人種の肉を平然と喰らう。
幾つもの疑問と扱いに困り恐恐と黄色眼鏡の薬剤師に羊皮紙を束ねた手紙を送ってみたが。
(任せた・・・・僕は忙しい)とでっかい羊皮紙の真ん中に汚い字で小さく一文描いて有るだけだった。
「何が任せただっ。い、育児箒でないかっ児童管理庁に駆け込むぞ。訴えてやるぞ」
店の真ん中で恫喝を上げても周りで服袖を引っ張る人雌人形がつぶらな瞳でおやつを強請る。
こうなればせめて一般常識位教え込まないと親代わりの立場が危ない。
其の日から鼻髭の小父様さんの育児業務が慌ただしくも可憐に繰り広げられる。
「ほら。大丈夫。大丈夫だから。
えっ。怖い?無理。やっぱり怖いって。仕方ないな。抱っこしてやるから。
こら。髭を掴むな。胸を押し付けるな。其れは無理だな。しょうが無い。約得である。
そうそう。手すりを掴め。云々。脚を台に乗せるんだそ。よっこいしょ。
てか、尻でかいな。アルキューレ。太ったな。このおでぶちゃんめ。
えっと次はモルヌキューレか。なっなんだ。そのへっぴり腰は。可愛いな。どれどれっと」
舞台社交の店の業務勝手口の通り道。
鉄製の大型運用馬車が横付けされている。
四馬立ての大型にもなると当然特殊免許扱いである。前の後ろの見える所にでっかく仮免許と看板が括られてる。
馬車を操車する従者が実地試験の前という事であり周りに注意を言う促す為だ。周りもそれなりに気もつかう。
店の戸口でモルヌキューレと呼ばれた人雌人形ががたがたと膝を鳴らし中腰で有りながらも
精一杯に両手を前に突き出して恐恐と鼻髭の小父様さんに抱っこを強請ってる。
「御前もか。モルヌキューレ、土塊だぞ?只の土なんだぞ?
それが怖いってどういう事なんだよ。人の頭は齧るくせに土の上が怖いってどういうことなんだ?」
「おっ小父様さん。抱っこ。私も抱っこして。
土の中には土蟲がいるの。踏むとぴょんと飛び出してお股の大事な所パクって噛みつくの。
怖いのこわいの。小父様さん。抱っこしてん」ガクガクと膝を震わせて顔面蒼白に染めれば
戯言嘘迷信だ。子供だましの迷信だと言い聞かせても
生まれて始めて土の上に脚をつけると成れば怖いのだろう。可愛い子どもに見えても姿は色香漂う年頃の女である。
やっとのことで説き伏せ、よっこらせと抱っこに抱え馬車に送り入れるが周りの屋から観れば変態である。
大層大きな体躯の立派な鼻髭を蓄えた強面の懶怠者が年頃の色香薫る人娘を太い腕で抱え込めば
娘のほうもぎっちりと腕を回してしがみつく。落とされて成るものかと股脚を平いてでっぷり腹に回してる。
新種の遊びか拐かしかと注目をあびるのは仕方ない。
「えぇ~~。ちょっと腹痛です。
お昼に食べた饂飩がちょっと賞味期限が切れていたのです。
集団中毒かって?いえいえ。ちゃんと当店は保険庁の規則通りに運営します。
この子たちは。お格様の差し入れをたべちゃったのです。だから大丈夫ですよ。
はい。真っ直ぐお医者様に見て貰いますのでご安心を」
人手不足で無理に小父様さんの助手に任命された若い漢が普段出さない大声で誤魔化す。
「シュキューレも抱っこ。おんぶは嫌いなの。抱っこがいいの。小父様さんのケチ」
気恥ずかしさから最後の一人はおんぶでごまかそうとすれば頬を膨らませて睨まれる。
上の姉妹と同じに様にしてやらないと平気で腕に指を立てて傷を付けてくるのがシュキューレである。
要は我儘な末っこである。
人雌人形共の感覚は人種とも魔物のそれとも随分違う。
五十と四人全部を姉妹と呼べば、いつも大体そばにいる参人か四人を姉妹とも言う。
何回がしつこくも黄色眼鏡の薬剤師に送った文の羊皮紙の束にも記載がある。
自分の検体を基本とし錬金術で生成した人造生物であるが全部を一気に生成したわけではない。
順次でもあっても少し間隔をあけて一度に参~四人と分けて作業を行った結果らしい。
つまりは全員が姉妹であるが同じ時期に一緒に生成された者を特別な姉妹と認識しているらしい。
因みに雄はいないのか?ときいたら
(僕に雄のあれを作れと言うのか?この変態野郎。減給処分だ)
っとおこられ実際に弐ヶ月減給の処罰を受ける。相当起こされてしまったらしい。反省然りである。
それと段々に人種人形の事を知識として自分がわかってくると親心も湧いてくる。
どうやって其の店に来たかは良くわからないが彼女らは店の外の世界を知らなかった。
どんな世界で有るか何があるのかと知識と経験もない。
それでは世界征服ところか黄色眼鏡の薬剤師の計画にも支障が出るだろう。
いざ、その時に土の中の蟲が怖くて計画が失敗するのは不味いし責任を取るのは自分である。
そういうわけで本日は社会見学の日である。
「はい。皆さんこんにちはっ」
「はいっ。小父様さんこんにちはっ」
野太くも張りのある鼻髭の世話係の声に促されて三姉妹の大きな声が帰ってくる。
今でこそ座席に肩を並べで真っ直ぐと此方を見てるが窓の外の景色が気になってそわそわと身じろぐ。
「はい。集中して。集中したまえ。娘たちよ。
今日は社会見学の遠足である。まずは遠足のしおりをもってきてるだろうな」
さっき無理にもたせたらからなくすわけでもないのだが態とらしくきいてみる。
はざっと音がして参人全員が悪の秘密結社のマークが入った遠足のしおりを前に突き出して地面げに目を輝かせる。
「宜しい。では表紙を捲り給え。
シュキューレ君。左じゃない。右。右綴じなの。
ご本読む時は左手で背を持って右手でひらくんだよ。云々。よしよし」
結構あわてんぼうの所もある末妹のシュキューレが慌てて上の姉妹の真似をして背筋を伸ばしてしおりを覗く
「先ず。午前中は政府庁の見学だ。所謂、我々の憎き敵どもの総本山である。
だからと言って怖がることはない。住民課と言う場所の見学であり、地味な活動を主におこなう場所である。
但し悪戯は差し控えるように。怖い変態警官がおしりペンペンしにくるかならな」
怖い変態と聞いてちょっと期待しつつも息を呑んで云々と姉妹が頷く。
「それから戦争被害者のミーシャさんの個人宅にお邪魔する。
此方で勉強するのは目下戦時で関わらずも戦争という物はどうも遠い世界のようにも感じられる。
特に我々人種と君達、人種人形とは魔物戦争と言う物に対しての知識と経験に差異がある。これを是正して起きたのだ
[実録。私はこうやって小餓鬼族の巣城から生き残った!ポロリもあるよ]講座である。
真剣な話なので心して拝聴するように。」
魔物戦争と言われてもぴんとこないのだろう。植え付けられた知識は多くでも大体は言葉だけの事が多い。
ましてや舞台社交の店にこもれば態々小餓鬼族の顔を観る事など無い。
「次が休憩である。お昼であるな。
本来は野原後援で大布を敷いて幕の内弁当と予定ではなっていたのだが、
生憎午後から雨がふるやも言う予報がでてるのだ。
寄って今日は奮発してお寿司屋屋台を借り切っておいた。帝都湾仕込の高級お寿司での会食である。楽しみにし給え」
「お寿司っ。お寿司?」
「先生。お寿司ってなんですか?」
「アタシ知ってる。おりずめ寿司食べたことあるの。お客さんがくれたの。お米にお魚がのってるの」
「お米?お魚?食べられるの?ずるいわ。ずるいの。シュキューレだけずるいの」
それなりに膨大な知識を与えられる人雌人形でも帝都湾仕込のお寿司の知識はなかった。
ましてや魚と言う言葉も知らなければ爛々と目を輝かせる子供の様にはしゃいでもしょうが無い。
可愛い盛りではあるのだが、確か折り詰めを持ってきた客と言うのはその前日にとなりに座ったシュキューレが
気に食わないと暴力を振るったやつだった。店の商品に手を挙げるのは粗相ご法度では確かにあるが
用心棒が駆け寄る前にシュキューレが腹ごなしとばかりに其奴の手首から先をパクリっと腹に収めているはずだ。
怪我は負うがそれと店の規約を破ったのは別会計であるから手打ちの品として折り詰め寿司を持ってきたはずだった。
しかも五人前をぺろりと食べたのはシュキューレ当人である。
「それはさて置きだね。
最後はお待ちかねのお菓子工場だ。滅多に入場できない最新式のこうじょうである。
これは自分が一番楽しみにしているのだ。云々」しおりから目を話真剣に頷くのは滑稽でさえ有る。
「おっかし、おっかし、お菓子なの。るんるん」
肝心な所は全く同じ顔で同じ声を挙げるから、まだ成れていない助手の若者は誰が誰だか割らなく成る。
「質問は有るかね?生徒諸君」
「はぃっ。先生。おやつ代はいくらまでですか?」
「おやつ代にバナナは含むんですか?」
「お寿司のお宮はは小父様持ちですか?」今度は別々に自分が思う事を確かめたくてシュタっと元気に手が上がる。
「おやつは代は既に渡してある通り。一人五百帝園までだ。
ケチくさい事を言っちゃいかん。吾らは世界征服を目指す悪の組織なんだぞ。バナナとおやつ代は別であるのだ。
お宮って何処で覚えた言葉だ。さっきまで魚のさの字も知らんかったくせに。
それも安心し給え。留守番の姉妹達も順次遠足に出るのだが、待ってるのも辛いかならな。
特別に我が組織筆頭・紅茶職人殿の個人金庫から無記名のご切手をあずかって折る。
つまり君達姉妹全員分のお宮をかって帰るの我々の使命である。ゴホン。
では。仮免許取得したばかりの従者君。出発してくれ給え。安全運転で頼むぞ」
偉そうに威張ってみせるが寿司屋のお宮代ところか今日掛かる一切の代金は会社持ちである。
会社の金で飲み食いできるのだから頬の肉もほころぶというものである。
「あっあの人しってるぅ~~。
こんいちはぁ~~~~~。いつも私に御尻穴無理に舐めさせて悶える変態おじさ~~ん。
私達、えんそくなのぉぉ~~~~。いいでしょ。いいでしょ~~~」
馬車酔剃るといけないからと考え窓を開けた途端にこの様である。
始めての外界の世界で見知った顔を見付けたらやっぱり嬉しい。
窓から顔を出すなと言われているから口の横に手を当てあらん限りの声でアルキューレが声を掛けはしゃぐ。
常に冷静沈着を常にと剃る漢は警官であった。しかも運悪く結構美人な淑女に道を訪ねられていたところであった。
「へっ、変態。美男子で、きになったから道を聞くふりしてお茶にさそおうと・・・
変態・・・。御尻の穴なめてもらうのが大好きな・・・変態だったなんて・・お回りさ~~ん。ここに途轍もない変態がっ」
人道道それた非常識の変態と決めつけられて悲鳴を雄叫びにと女性は逃げていく。
「そんなっ・・・化物魔物の趣味みたいにいわなくても・・・そこまで変態では・・・・
あと、お巡りさん。此処に居ます。僕おまわりさんです・・とほほ」それ以来彼は内勤を強く希望する事になる。
「あの女の人。お日様出てるのに傘さしてるわよ?なんで?
おねぇさ~~~ん。雨ふってませんよ~~。傘はいりませんよ~~~」
反対側ではモルヌキューレが真顔で聞いてくると思えはこれも又大声で叫ぶ。
「あれは日傘と言いましてですね。淑女の嗜みの一つでして」たしなめようと助手が教える。
「えっ。日傘?なにそれ?馬鹿じゃないの雨降ってにないのに傘指すのってばかじゃん」
確かに淑女の嗜みと言い切っても雨も降ってないのに自慢げに傘を指すのは可笑しいと大声で言われれば
正しいと言い張ってもやっぱりはずかしい。こほんと咳うって気恥ずかしげに傘を閉じる。
「ほらっ。やっぱり私が正しいんじゃない。君、可愛いけど意地悪なんだね。プンプン」
自分は間違ってないと言い張りたいが端正な顔で頬を膨らませて起こる姿に見とれて助手は言葉を失う。
「あれ?あのちっこいのが魔物の小餓鬼族君?可愛いい。
お~~~~~い。其処の魔物く~~~ん。小餓鬼族く~~ん。此方向いて~~~。
きゃ可愛い。お髭ぴくんってした。ぴくんって。もう一回やって。きゃわゆ~~~~~~い」
当然に人種に大声で呼ばれてし合えば髭も跳ねる。頭巾を頭からすっぽりかぶっても確かにその背丈で
正体がバレる事もある。本来街の中にはいないとされる魔物小餓鬼族にとって人種に見つかると言うのは屈辱でもある。
「あっ。すごい。あっという間にどっかいっちゃった。すごいすごい。あれが魔物って言うんだね。
可愛い。ぎゅってしたい。どうしよう。恋に落ちちゃいそう」
頭巾の奥の魔物顔をチラリと見ただけで恋に堕ちるとか結構純粋なとこもももってるのだろうか。
最初の見学で一番苦労したのは助手の若者である。
勿論。馬車から役所の建物の出入りは鼻髭の小父様さんが抱っことおんぶで運び込む。
その後である。
「見て。見て。お姉さんにスタンプ押してもらったの。格好いいでしょ?格好いいって良いなさいよ」
長女のアルキューレがだっとの如く疾走ってきたと思えば丸いおでこに丸いスタンプ印を付けて目を輝かせてる。
「其れは来場記念のお子様用のスタンプです。大人が付けて喜ぶ物で有りません。
特に額につける物ではなくですね。付属の用紙につけて・・。あっどこ行くんですか?そっちは・・
はっ。これはスタンプラリーだ。真逆、役所内の全部の部署を回る気では?不味い。
悪の組織的は非常にセンシュティブで危険な部署もあるのです。待って。待って下さい。アルキューレさぁ~~ん」
一抹の不安どころか当然そのつもりであると言うばかりに脱兎の如く走り出すアルキューレ。
追いかけて止めねばと四肢を踏み出した瞬間に。
[ピンポ~~ん。ピンポ~~ん。
帝都駅前・社交舞台の店の悪の組織。蜂蜜紅茶商会の世話係の余りかっこよくない若いお兄さんの御方
お連れ様が迷子で泣いて半ベソを欠いております。至急最寄りの職員までご連絡下さいませ。ぴんぽ~~ん]
「言っちゃったよ。言っちゃってるよ。悪の組織っていっちゃてるじゃん。
しかもかっこよくないお兄さんて。なんだよ。もうちょっとマイルドに言ってほしいです」
それでもしょうが無いとばかりに受付まであるきしっかり悪の組織と明記された社員証を提示して
迷子預かり所まで案内されると既に次女モルヌキューレが鼻髭の小父様さんのでっぷり腹にしがみついて
泣きじゃくり鼻水をずずずっと啜っていた。
一歩遅しとも安堵に肩を堕とすがはたと気がつけば末の妹は何処へやら。
意外に直ぐ見つかるも購買部で会計の前で鼻息荒くも両手の籠に安駄菓子を山と積み上げて並んでいた。
「シュキューレさん。一軒目の役所でそんなに駄菓子かったら後で何もかえなくなりますよ?」
四肢は向こう向けて首だけえおグリグリと輪ますのは特技と言うより恐怖であるが
睨まられたかと思えば涙目を貯め唇と噛み締め半ベソに成る。
シュキューレにとって駄菓子と言えば天国しかりで店の姉妹にも配り食べさせたいとばかりにその一心で
籠に山とつめたが世間一般の相場も分からず金銭感覚もちょっと危ない。
ましてや午後の本命のお菓子工場の事も失念し、でも駄菓子も捨て切れぬと
嗚呼、無情。駄菓子欲しさの濡れて泣き出す乙女心に浮世の冷たさよ。
「はぃ。大丈夫です。可愛い顔が台無しですよ。僕が払いますから。泣かないで下さいね。
今度は感激の涙ですって。はいはい。会計は此のカードで御座います。
侠気があるって。駄菓子ですよ?駄菓子・・・。これくらいで・・・あっ。結構たかいですね。
まぁ~~。これくらい。はははっ。今月はお昼を自炊弁当しよう。云々」
いて然り・・・。随分と苦労事のに振り回わせれたが
キチンと役所の見学を最後まで行ったのは悪の組織世話役・鼻髭の小父様さん一人であった。
後の残りは役所の中を走り迷惑沙汰を起こしただけの一行であった。
悪の組織の構成員共が政府庁の役所を見学すると言うのはなかなか筋違いではあろうが
社会勉強である。敵の事を調べねば大樹の根も張れず華枯れるというやつである。
二軒目の見学地は予めの注意もあって人種人形達も冷静沈着と大真面目の様子であった。
戦争被害者のミーシャさんの個人宅を丁寧な態度で来訪した一行は。
馬車通りから石板を踏みしめて自宅を訪れる。此処で三姉妹は恐る恐るも始めて大地を踏みしめる事になる。
土がむき出しの地面であっても硬い石板の上であれば土蟲も出てこれないと知った瞬間である。
戦争被害者ミーシャ。
其の戦争と言えばそれなりに平和そうに見えるこの街の直ぐ近くで毎日毎夜と戦々恐々と繰り広げられている
人種人類と小餓鬼族。言わば人種と白肌膨れ腹の小餓鬼族・主王との戦争を示す。
白くブヨブヨと腹の膨らんだ城肌の小餓鬼族とか弱気女性ミーシャの話は人雌人形達から見ても涙せずに居られぬ物語である。
両目を黒布で覆い隠すミーシャの瞳には光は輝かず届かない。そのミーシャが自分の体験を世人に伝え表現するの方法が
模様点字絵巻である。近くに顔を寄せて観る事にその美しさと精密さには感嘆の頷きを隠せない。
小さな点の塊であるがその一つ一群に色が染められ絵形を作る。それは人であったり動物であったり魔物であったりと
余りに芸術の粋をも超える技を成すのが盲目のミーシャとしれば尚更にその絵巻と作品を譲ってくれと
金銭を山とうず高く積み上げられてもミーシャは断固として断る。
うればこの先一生は足らなくても行きていけるであろうがそれはのぞみもしなかった。
一針一針羊皮紙を指でなぞっては穴を撃ち一つ一つの穴に自分の指の感覚だけで色を染み込ませ
何年も掛けて積み上げた模様点字絵巻である。其れを何処ぞの貴族とやらが持っていくのは許せなかった。
よくある話と割り切るのは簡単であろうが、実際に自分自身が身をもってしった悲惨な体験を他人に話すと言うのは
大変が屈辱をもたらす物である。ミーシャは確かに生き残る事は出来たが小餓鬼族の鉤爪で目玉をえぐられている。
その詰めが脳髄まで達しなかったのは気まぐれに小餓鬼族がミーシャの四肢を気に入って嬲り続けたかったからに過ぎない。
両目をえぐられ痛みに苦しむ間もミーシャは小餓鬼族の雄竿を喰わえさせられ穴にも無理につっこまれる。
発狂するというよりも地獄の痛みと快楽を刻み教え込まれればやがて御子も孕んでしまう。
何人、何回、何匹孕んで産み落としたかもしれやしない。精神的にも動物的にも限界を超えた時
やっと救出されたが時は既に遅し。壊れすぎた人に非ずミーシャは街に戻っても底辺の生活を余儀なくされる。
政府庁の生活保障最低限である。近所の輩は魔物小餓鬼族の卑母と罵り蔑む。
やっと少しはその日の様に戦争被害者に目を向ける輩がポツリと話を聞きに来るくらいである。
人種の夫ならいざ知れず、人種に非ずも魔物でありそれも誰がどれだかもわからない。
孕んで宿した御子は果たして人種か違うのか?生きて居ても化物姿で有るに違いない。
それも生きていればの話である。人と小餓鬼族の戦は今日も明日も来年も続く。
何人、何匹産み落としたかも分からずと成れば、姿形違えど愛するべき御子はとっくに皆に絶命しているに違いない。
アルキューレ、モルヌキューレ、シュキューレは泣いた。
ズルズルと鼻水も涙も憚らず人雌人形姉妹は号泣した。
勿論、一番鼻に鼻を啜ったのは年相応に涙脆い鼻髭の小父様さんである。いやはや面目もなくも臆面無くである。
ばんと音がしてお茶卓の上にアルキューレが置いたのは役所で苦労して集めたスタンプラリーの羊皮紙綴である。
全部で30枚程あり。自分の宝物とアルキューレが決めた品である。
役所で迷子にしかなってないモルヌキューレは自分の小遣いを半分ほど数えて卓に置く。
気風が良いのは末妹のシュキューレであるが置いた駄菓子の袋の代金は若い助手の全額持ちである。
同情と哀れみと断言するつもりはまるでない。そもそも戦の下では犠牲は値前である。
されど鉤爪で頭を貫かれて絶命するのはまだ楽であろう。運悪くも生き残ったゆえの生地獄である。
ふるふると感動と戦との犠牲者の辛さと無念差を肌で感じる人雌人形姉妹哀れみやるせなさ故の想い故
責めて何か自分達に出来る事はないかと持つ物を糧にと大事な物を卓の上に置く。
其れを太い大きな手をずいっと突き出し制するのは世話係の鼻髭の小父様さんである。
「此処で同情をかける物ではない。此処で憐れみを示すのはかえって失礼なのだ。
この御方は貴婦人であり立派な女性である。哀れみが欲しくてお話を聞かせてくれたのではない
乞食でも物乞いでもないのだぞ。我々に戦争の裏側を事実で有ると教えてくださったのだぞ。
勝利の旗の裏側にはこの御方のような犠牲が有ると言う事をお教え頂いているのだ。
我々は人の道を外れた輩である。それでも人の本質的な希望まで見失ってはならんのだ。
観ろ。悲惨極まりない経験をなさって居るのに、未だ背筋を伸ばして前を観ておられるではないか?
その方に憐れみと同情等を投げつける吾らのなんと卑しい事かである。彼女こそ真の勇者その人であろう」
自らの膝に指を立て涙と鼻水を憚らずにうつむいて号泣滝の如しと嗚咽をこらえる
最後に言葉を紡いだのは若くも面倒に巻き込まれている助手の青年である。
「あの・・・僕は来月で二十になります。戦争孤児です。父も母も殺されました。
生まれるずっと前から戦争は始まっていたから、僕は戦争のない時代は知りません。
悪党の世界に入ったのも半分は貧しいからです。言い訳はしません。望んで悪党になりました。
でも生きていくためにはお金も御飯も必要です。全うに生きるより今の職場は楽かもしれませんね。
でも、違うんです。結構大変と言うか。毎日命がけなんですよ。
綺麗なお姉さんがいっぱいるんですけど。魔物と一緒で何時喰われるかわからないんです。
しかも我儘で意地悪で元気一杯っで疲れなんか知らないし。其の癖皆かわいくて綺麗で・・・。
でも数が多いです。鼻髭の小父さんが頑張ってますが手が足りません。
一応、人員も組まれてますが皆いい加減な奴らで話に成ません。
ですから・・・・手伝って頂けないでしょうか?きっと母親代わりの方がいれば皆言う事を聞くと思うです」
「おっ、御前何を言ってるんだよ?俺等は悪党だぞ。悪の組織だぞ?観れば解るだろうが。此の馬鹿野郎」
「あ、あの・・・悪党と言われても、見えないので私・・・・」ポツリとミーシャが当たり前の様に呟く。
「はっ、それは失礼。いや待てよ。
瞳に光なければ何も見えずに・・・。つまり吾らの悪業が見えずも目を瞑って頂けるなら・・・、
ふむ。元々見えないのであれば知らぬ存ぜぬもまかりとおる言えば確かにそうだ。
とすれば、先ず通り名がいるな。御父様が黄色眼鏡の薬剤師殿で、頭領が紅茶職人であるにも
儂が鼻髭の叔父様であるのから、伯母様と言うのは失礼なのか?う~~ん。盲瞳の伯母様が妥当な所ではあるが」
「伯母様と言うほどの年では・・・いえ、まぁそうなんですが・・・・どうしましょ」
「伯母様っ伯母様っ」
「きゃ~~~、伯母様。盲瞳の伯母様。あたしの伯母様」
「ずるい。姉様。ずるい。抱っこ。抱っこして伯母様」
云々と悩む鼻髭の小父様をよそに新しくも家族と呼べる絆をしった人雌人形姉妹達は
涙隈のそのままに今度は嬉し泣きとばかりに燥いでも元気に盲瞳の伯母様ことミーシャに抱きついて離れようとはしない。
「伯母様。次の見学地はお寿司屋さんなの。お昼なのお昼」
「あら、お寿司なんて何年ぶりかしら?でも私奴が同席してもよいのかしら?」
「当たり前でしょ。伯母様なんですもの。当然よ」
「私達の伯母様なのよ。今更違うと言い出したら彼奴の頭齧ってやるわ」
ぐるりとあらぬ方向まで首を曲げ半分乱杭歯を出して若い世話係の青年を睨む。
「ふむ、面倒な手続きは後まわしてでも良いだろう。
今日の所はこれで問題ないな。今日の予算からはみ出れば御前の給料から天引きすればいいしな。
よしよし。ではまかせたぞ。人雌人形世話係課副主任殿。連絡事項は以上だ」
「あっ。今なんて言いました?副主任殿っていいましたよね。昇進ですか?ですよね?
えっ、待てよ?仕事増えるじゃないですか?丸投げする気満々しすよね?天引きってなんですか?
うはっ。昇進って事は其れ以上に仕事増えるってことだぞ。あっ、プレッシャーでお腹いたい・・いたっ」
仁義あふれる漢気を魅せたが同時に仕事がごまんと増える結果は自業自得であろう。まぁ漢気に代償はつきもので有る。
人雌の参姉妹が石床と土くれを踏みしめて馬車へと向かう。
まだ心もとない足取りであっても手を引き案じるべき盲目の叔母を支える必要が有るからだ。
盲瞳の伯母様事ミーシャにとっても日の当たる外への外出は久しい事でもあるし
可愛い御子代わりの姉妹達が支えてくれる温もりも又、心暖かくも懐かしい感触である。
帝都湾仕込の屋台寿司屋[孫兵衛]の主人の孫兵衛は東の島国から大陸を飛んで渡った異國人である。
故郷で本場の握り寿司の修行を黙々続け自分の店を出す時に腕を確かめようと塩海を飛んで渡ったのだ。
異国の地の風当たりは冷たかったが黙々と努力を重ね頑固一徹、此の地に根付いて十と八年。
屋敷店舗と言わずとも屋台寿司の店では星八つとまで言われる名店に名声を積み上げる。
大型店舗と言っても屋台である。仕込みと料理は店奥で済ませても客の前で寿司を握るのは
外にせり出す客席との対面である。孫兵衛にとっては其処が仕事場で戦場である。
その日は貸し切りの契約日であったがその時刻のちょっと前にしらせが届く。
一人追加との急ぎ飛脚の頼りであるが孫兵衛はは腹を据えてどんと構えている。
前日にいついつ此の日に貸し切り予約をお願いしたいと連絡があり申し込みにきた人物は
観るからに脛に傷持つ輩であったが断る前に告げられる。
当日はそちらと当方の真剣勝負と合間見れる戦である。
当方の駒はこれまでの人生長くて五年。短くておよそ約弐年の月日に一度も寿司と言う物を食らった事が無い参人姉妹である。
付き添いの者も二人と成るが此方も日陰の裏街道に潜めば本場の寿司の味は知らぬのが本当であろう。
だが然し。侮るなかれよ。御主人殿。五才、一切と言えども美食を極める輩である。
何せ当店の経費の三分の一は彼女等と姉妹の腹に収まるのだ。量で言えば馬車が連なる。質で言うなら天上に届く等級の肉である。
肉が好物と成れば果物の甘みも好むが何よりも人の腸と血汁が美味と豪語して憚らぬ。
何々?街に魔物はおらぬとお聴きか?はてさて其れは其の目玉で観ればよいだろう。
それよりも、いざにどうなさる?。寿司屋の御主人殿。
そもそも人の腸啜る美食のかの舌に貴殿の寿司が何処まで通じるか試してみたくは御座らんか?
とても真っ当なことではないだろう。あり得ない絵空事にきこえてならない
それでも孫兵衛は黙々と寿司を握りながら答える
心得ました。ご予約承ります。只、大食漢の方がいらっしゃると米が足りなく成るかも知れませんので
何人前くらいご用意すれば良いでしょう?とだけ聞き返す。
にやりと口を歪めたその漢はちょと顔を上げて普段の食事量でも思い出すかのように思案して
指を参本と丸と一個手で作る。参人姉妹と言えば参。付き添い二人で全部で五人。
それで食べる分がおよそ参十人分となれば大食いの域を軽く超える。
へぃ。承りました。お越しをお待ちしておりますと、赤見の魚を握りながら冷静に頭を下げただけである。
寿司職人の誇りと維持を掛け挑む戦寿司のその日に一人追加と言われても動じず焦らず孫兵衛は
布巾で黄金に輝く寿司板を無心に磨いて客を待つ。
「はぃどうどう~~。よこっろせっと」
屋台寿司・孫兵衛の店軒先に操車するには大型馬車免許が必要な五頭引きの馬車が止まる。
本来は港市場や工場の荷物の搬入と運搬に使われるものであるが五頭引きとなるとくせもある。
奇数の引きの馬車を扱うのは馬力があっても技術がいる。
少しおぼつかない操車であるのは馬車の横にも仮免許・練習中との看板を見つければ納得も出来る。
カラカラと馬車の引き戸が開かれ得る。引き戸であって開き戸ではない。
馬車に引き戸というのは効率的でないし馬車籠内に戸を収納する空間を確保しなければならず
其れが出来るとは言うには手間と金をかけると言う経済的な余裕が有ると示している。
当然、特注品の馬車と言う事になる。
最初に馬車の引き戸の向こうから姿を表したのは白銀髪の淑女である。
手慣れた動作とは言えないが従者らしき青年が馬車と地面の高低差を緩和する足台を用意する。
トントンっとんと軽やかに長裾のスカートの裾を軽く摘み白銀髪の淑女が通りの石板の上に脚を置く。
此処は硬い石であるかと言うように弐度、靴を鳴らして堅牢さを確かかめてもいるようだ。
ふわりと軽く波打つ白銀髪が揺れて流れれば、その瞳が当たりを警戒してるのだ直ぐ解る。
長いまつ毛を揺らし風が揺れても、其の眼光鋭くも戦で槍を掲げる戦士の様に獲物を睨む。
此の場合、獲物であるのは通りを行き交う通行人である。
年の頃は十と七か八。九を超えても二十に届かず。つまりは今も其の顔に幼き少女のあどけなさも観て取れる。
だが然し、儚さ幼さをただ背負わせながらも眼光鋭く少し厚ぼったい唇をほんのちょっと歪めれば
全うな人生を歩む街人はびくりと背筋を真っ直ぐに凍りつく。
脛に傷持つ輩であれきずびを返して脱兎と逃げる。今日は非番の警備騎士さえ凍えるさっきに有るなずのない剣柄を握る。
何気なくもありありと殺気を隠さず観わたせば、たわわと弾ける乳房が眩しく揺れて目がつぶるやと不安がよぎる。
きゅっと閉まった腰は元より其処から膨らみ曲線は漢が手を添えて支えとし四肢と前後にふるに持って来いの曲線を描く。
平坦のはずの床の上で下駄に体重がかかりがくんと一人でこけたのは孫兵衛である。
言わずものがな。戦相手の其の先鋒を務める淑女の其の丸くも張りに一目惚れしたのは厨房の職人達も一目で解る。
それほどに美しく大きな尻は孫兵衛だけと非ず、睨まれ立ち止まっ馬車から降りる輩に道と時間を譲る街人も同じである。
目線鋭くも当たりの安全と人払いを其の人睨みで済ますとくぃっと可愛い小鼻と顎を上げて合図と示す。
其れと知ってやはりスカートの長裾を詰まんで姿を現す淑女の姿。
ガタンと又音がして厨房の此方側で孫兵衛が又腰を砕く。
漢の意地とばかりに黄金色のまな板にピタリと手の平を付けて膝まで堕ちるのを必死でこらえる。
二人目の淑女も又確かにと美しくもあれば其の顔は最初の淑女と全くもって瓜二つの顔と四肢と仕草である。
(あっあんなに美しい顔が卓の向こうに二つも並んだら、儂の腰・・・完全に逝ってしまうぞ)
持ち前の精神力と寿司職人の漢意地で上半身は微動出せずとも其の下はガクガクと動揺の振るえが止まらない。
待ち人曰くも世間では子の顔が似すぎて同じなら二つと災い運ぶ忌み子である決めつけられが
そんなのもどうでもよくなってしまう位に美しくも冷たい表情の儘に馬車を振り返り
次に姿を表す女性に細く白い先を宙に掲げ重なる手を美しくも可憐な仕草で支えて魅せる。
ああ。なるほどと腰にぐぃと力が戻る。
顔が良く似た二人は恐らく姉妹であり母かそのかわりとなる女性を労っているのだ。
最初の淑女が眼光鋭くに当たりを睨みつけひとの流れをとめたのも
続く次女らしき淑女が母の手を引きいたわり導く。
母代わりも娘姉妹に負けず劣らずの四肢を一目に晒しているが、顔に括るは目隠しの黒い布。
瞳に光を宿さないのは一目瞭然である。黒布で隠しても全てのひっかき傷は幾本も綺麗な顔に後を残す。
恐らくと言うのは安易であっても戦争被害者であるのはかわりない。一人増えたと言うのもこの客だろう。
先に姿を魅せたす淑女の美しさも然りであるが、戦の代償となった女性の心傷を責めて一時であれど労いたいと
寿司を握って二十と余年。握り寿司一本筋の職人魂が焔と燃える。
背筋が伸びれば腰に気合がドンと入る。四肢に力が戻れば心に焔が宿る。
(あっ。駄目。駄目だわ。儂の腰逝った。確実に逝ったは・・・。もう駄目・・・無理だこれ・・・)
四肢に宿った力が蘇ったのは一時である。三度下駄をがらんと鳴らして腰が砕ける。
まな板に両手を突いて無理矢理体勢を維持するのがやっとである。
「誰か・・・。太帯持って来い。極太の奴。腰が砕けて寿司握れなくなる前に補強しろ。大将残し補修しろ」
厨房の奥で弐番職人が丁稚に怒鳴ってる。客が席につく前で良かったと心内で彼の昇給を固く誓う。
持ちなおした腰が三度完全に砕けたのは目隠しの女性の後ろから降りてきた最後の淑女のせいである。
(あっ。あれはずるい。ズルすぎだろ。先の姉達と同じ顔と同じ四肢なのに、あの可愛さはずるすぎる。
観ろ。盲の母の後ろに付いてあるく家鴨のように可憐である。心配してる仕草がまた可憐である。
けしからん。心配のあまり腰をちょっと曲げてるから胸が・・・お胸がゆれて・・けしからん・
誰か・・・太帯持ってきてくれる?もう、完全に駄目だわ。儂の腰・・・)
先の二人と三人目に馬車から姿を魅せた淑女は二人姉妹の妹であろう。
顔つきは同じでも仕草が違う。姉たちが先導する母の後ろを突いて歩くが転んだりしたら大変とばかりに
腰をかがめ手を伸ばしてもしもの時に備えてる。当然多くも形良い乳房が揺れても気にはしてない。
気にしてはないが此方はきになってしょうが無いとばかりに孫兵衛は丁稚に太帯を参十に巻いて貰い
威厳を保つが視線が揺れる乳房に吸い付いて離れない。
煩悩と寿司職人と言う題名で本が書けてしまいそうな長い時間を孫兵衛は堪能する。
「へぃ。いらっしゃい。皆々様。本日は御来店有難う御座います。どうぞよしなに宜しくお願いいたします」
黄金色のまな板を白布巾でさっと拭き上げ野太い声が響き渡る。
「本日は儂等の我儘で貸し切りしてもらった上に先日の約束より頭数を増やして閉まって申し訳ない。
あの時は大げさに申したが世間知らずの餓鬼にも劣らぬ三人姉妹と叔母代わりの女性を
大将の寿司腕前で持て直して頂きたい。残る漢共は気にしないでくれ。雑煮の一杯でもくれれば其れでよい。
外街に出るのも始めてなのだ。世間知らずの無礼を許して欲しい。行儀よくするんだぞ。お前たち」
「お気になさらずに。たんと召し上がっていただければ職人の腕も誉です」
態々。事情を明かしてくれるのは助かるが綺麗ところの同じ顔が目の前に三つと並び
黒布目隠しの叔母としる女性も又美しくもしとやかである。
(こんな状況で寿司握るとか無理だろ。綺麗で可愛い顔見てるだけで儂の方が寿司百貫喰えるわっ」
頑固一徹・寿司を極めて二十と余年。其の腕紛れもなく玄人であっても美女には全く耐性うすい孫兵衛である)
「粗茶で御座います。熱いのでお気をつけてくださいな」
年端のいかない丁稚が可愛い手でそれぞれの客の左手側に少し大き目の寿司湯椀をトンと置く。
無造作に丸っこい指でがっしりと掴んで最初に煽ったのは先導約の鼻髭の輩だ。
「遠慮なく・・・・」一言ことわりを入れてしとやかに細い指で湯椀を持ち上げ其処の手を添えて黒目隠しの女性が頂く。
本当に世間知らずなのか、それとも湯椀を初めて見るのか、はたまた、倭之御の茶をも始めてなのか
孫兵衛と対峙する同じ顔の参人の娘はじっど寿司湯椀を鋭い眼差しで親の仇とじっと睨む。
「遠慮なく・・・・」
突然に湯椀に白い指を添えたかと思えばさすが三人姉妹と寸分違わず声を合わせたところかその仕草もいっしょである。
先程の黒目隠しの叔母の仕草を観て真似たのだろう。優雅にもしとやかな姿は正に淑女然り
だが異様なのは其の先である。
叔母の女性と仕草は似ていても首を斜めにかかげお茶を飲み干さんとばかりにゴクリゴクリと綺麗な喉を晒して止めぬ。
寿司屋で出される最初お茶はこれからでてくる寿司の箸休めである。
出来るならばでてくる寿司と合わせて頂く為、後にすすでも冷めすぎないようにと最初は態と熱めの温度で注がれる。
口中濡らしと居られる作法で最初に一口だけちょっと含むのが礼儀作法であるはずが
同じ顔の姉妹は結構な熱さであるはずのお茶を喉を鳴らすも一気に呑み込む。
「結構な御手前で御座いました」卓にコトンと湯椀を置くとずじ違いとも思える挨拶が帰ってくる。
確かにそれは茶を入れて貰った時の礼節返しの挨拶であるが、其れこそ茶道・湯道の作法である。
先導役の漢が世間知らずの礼儀知らずといってはいたが、所がどっこいしょとばかりに礼儀も正しい。
多少、不審にも思えるが何処かの貴族でもあればこそ屋敷からだして貰えない箱入り娘の三姉妹とも思えば合点行く。
太い眉を寄せて示せば直ぐにおかわりの茶を三姉妹達に丁稚が届ける。
「ごゆっくり・・・」
とかけた言葉の意味をしり今度興味を示さず首の角度も揃えて真っ直ぐ大将・孫兵衛の顔を観てくる。
「今日はどうしましょう?」布巾で指先を擦りながらも握り手の具合を確かめて聞いてくる。
「お任せででお願いします」
「特上のお任せでたのむ。そっちの坊主には竹のお好みで」
「ちょっ。僕だけ竹ですか?副主任ですよ?これから雑用いっぱい押し付けられる期待の新人ですよ」
「ちっ。上のおまかせにしてやってくれ。背に腹はかえられん。ちっ」
「特上のお任せでお願いします」三姉妹が声を重ねて注文が決まる。
それぞれの好みと予算もあるのだろうが三姉妹は気にしないらしい。真っ直ぐと眼光鋭く未だ睨む
「へぃ。御嬢様方と淑女様。世話役さんが特上のおまかせで、お若いのが上のお任せですね。
承知しました。承ります。一時のお待ちを」
冷水に拭布を濡らし片手握力だけで水分を握って絞りさっと黄金色のまな板をなぞって飯櫃から酢飯をぱと取る。
個々からが戦である。戦場である。鋭剣のかわりに太くて丸い指が酢飯を握る。
さっと指が種桶にはったかと思えはねたを救い酢飯の上にのったかと本のちょおっと力を込めて軽く握る。
タンっタンっタンっタンっと客前の下駄皿の上に乗るのは最初の一品。白身魚ひらめの握りとなる
将棋で言えば最初の一手。前上がりの壱の歩となれば互いにとっての様子見である。
「屋台寿司屋・孫兵衛。大将孫兵衛の右手・副将四五禄と申します。
開業以来、大将の隣に立って十と五年。職人女房の相方を務めさせて頂きます。
なにせ、寿司を握ってれば幸せと言う御方でしてね。女性相手はからっきしの大将でしてね
いっそ、どっかで嫁でも見つけてくれればあっしの方もらくになるですがね。
あっ。失礼します。さしでましいですが。印かわりに個々においておきますね」
仕事女房とは良く言ったものである。無愛想無骨の大将孫兵衛の至らぬ所を四五禄が気を使う。
拍子を付けて調子良く話す四五禄が店頭に顔を出したのは手伝いもあるが
先ず気に厨房の奥から黒布で目隠しをし女性を味方からである。
不自由、自由に関わらずもあれでは下駄皿の上に乗る大将自慢の寿司が何処にあるかもわからない。
周りの者が手助けしても、其れが時には当人の恥と負担に成るともある。
それと察した四五禄が大将茶化しとばかりに顔出し黒布目隠しの女性の下駄皿の上に冷やしたお手拭きをそっと置く。
傍から見れば無作法であるが盲目の女性が手を前に突き出せば指が先ずにおしぼりにふれる。
其処を目印にすれば過ぎ横に旨い寿司があると言う手はずである。
これで盲目の女性も安心して寿司の味を楽しめるだろう。心使いと気遣いこそもまた屋台寿司屋孫兵衛の売りである。
最初の壱の歩、白身魚のひらめの握りは寿司職人の一番槍の其れであり客の返しを知るのに大事なものである。
下駄皿の上に出された寿司の食べ方で次の握りがかわるからだ。即ち箸で喰らうか?指でつまむ方でる。
握った寿司を箸でつまんで食べる客には次の寿司から握り方が変わる。
いくら器用な輩でも木の棒二本で寿司を挟むのは技術が居る。箸と使い習慣がなければ尚更だ。
だから次からも箸を使う客には舎利の表面にちょっと力を込めて固く仕上げる。
真逆に指で摘んで食べる客には舎利の中に空気と空間を保ったままでふっくらとした食感を維持して握る。
否然し、三姉妹は下駄皿の上の白魚のヒラメをちょっと顎を下げてじっと睨むばかりで微動だにしない。
暗黒の押し問答でもしてるかのように沈黙が暫し続く。
これでは次の寿司が握れない。これは強敵を孫兵衛が眉をひそめると助け舟が空をかける。
「本来は上品に食べるのも作法である。ステーキをフォークで食べるのが礼儀でもあるな。
だが、お前等がいつも肉を喰らうように。齧り付くのも寿司の食べ方の一つでもある。
綺麗に食べてもそうでなくもどちらでも旨いのが寿司である。こうやって摘んでたべるのだ。うまっ」
丸っこくも太い指でしらめをつまむと一気に口の中に運んで粗着して味わう。
「頂きますで候」涼やかに通る声が響くと目にも止まらぬかという速さで細い指が宙を奔りヒラメをつまむと
案内役の漢と寸分違わずの動作で寿司を喰らう。咀嚼した回数も同じではないかと疑ってしまう。
漢喰らいとも言える荒々しい食いっぷりで有るが参人の挙動は全く一緒に重なっている。
「これはこれは。なかなかの食べっぷりに大将もたちんぼですな。
しっかりしてくださいよ。大将。お兄さんには此方です」とか赤貝の握りを更に乗せる。
暫し呆然としていたのは漢喰らいの仕草が豪快だからではない。
壱の歩ヒラメの扱いに次の握り方を決めかねていたのは確かだが。
其れよりも自分のにぎった寿司を真剣に睨む三姉妹の顔に見とれて居たからだ。
(可愛い・・・綺麗でもあるが、可愛い。たかが一握りのヒラメになんであんな真剣な表情ができるんだ。
うらやましい・・・あれだけ可愛いお目々で見つめられたら・・・・儂、嫉妬しちゃう。・・・ヒラメに)
良くわからない領域に一人ぼっとする大将の頭を叩いて此方に戻せば、何かが可笑しい。
箸をつかって食べるのは盲目の女性と左隅の若い坊主だけ。
世話人と三姉妹は手づかみで豪快に寿司をくらう。それなら握りの方針が決まる。
だが然し、全く持って様子が違う。
寿司ネタの新鮮さと舎利の旨さには自信がある極めて握る寿司である。
観れば解るのは客の反応だ。
ああだ、こうだと何処ぞの娼婦館の乳と尻談義に四五禄参と話しを弾ませる世話役は
倭酒のお猪口も重ね機嫌よくも豪快に寿司を食べてくれる。職人身寄りに尽きる食べ方だ。
黒目隠しの女性は静かに微笑みながら上品に箸で寿司を挟んで落とさないようにと下手をかざして食べる。
時より綺麗な指を立て同じネタをもう一つとおかわりを強請る姿もしっとりと美しい。
少し舎利が多いのだろうか。次はちょっと少なめな舎利が良いだろう。
だが然し、三姉妹の様子が可笑しい。
白身の魚を握れば親の仇とばかりに睨み、しばらく居とり問答をしてから漢喰らいで一気に食べる。
白身の魚を握れば又に親の仇とばかりに睨み、問答憮然と黙って豪快に喰らう。
貝類にいたっては、これが人の食べ物かと、疑い深くもほんとうに食べていいのかと参人揃って此方を睨むのである。
親の仇か恋敵、戦敵か、政敵如きか。最初は味薄くも段々と濃くなる寿司の料理の流れにそって
段々とその視線に熱が籠もれば悪鬼の如くに此方を観まっすぐと一切視線はずはずに睨み殺す勢いである。
口に放り込んだ寿司をもきゅっもきゅっと頬を膨らませ咀嚼する仕草は可愛いを通り越し、殺気の旋律さえ漂わせてる。
(儂、死ぬのかも?寿司握って死ねるなら本望だけどさ。こんな可愛い娘に睨み殺さえるなら本望だけどさ 怖いのよ)
「あのぉ~~。皆さん。何時まで緊張してるのですか?無理しなくて良いんですよ?」
ばっと勢いがのって三姉妹の首が一斉に揃って左奥の若者の方を向く。余りにもそろっているのが怖い。
「おっいかん。忘れておった。
緊張しておったのか?まぁ始めての屋台寿司であるからな。無理もない。
猫を冠るのを止め給え諸君。楽にしてよし。せっかくに寿司なんだ。存分にたのしめ」
今度はも3つの首が一斉に揃って右を向く。電光石火の速さと足並みでる。
「あらら。御免なさい。私も気づかないで。だって惜しいんですもの。
さぁ皆さん。力を抜いてごゆっくりお寿司を楽しみましょうね。大将様、だし巻き卵下さいませ」
おほほとばかりに黒目隠しの女性が微笑む。
「ふはぁ~~~、緊張してたぁ~~、つらかったわぁ~~。真顔で食べるの。
さ、最初の奴。何あれ?超美味しい。あっさりしてて旨味がすごいの」
「私は赤いやつがいい。こりころしてるの。あれだけ食べたい。二〇個食べたい」
「窒息しそうだったの。肺に空気なくなったの。
私はてられらしてるやつが好き。ひかりもの。味にくせが有るけど好き。
あっ。卵だ。卵。焼くの?焼いちゃうの?小父様さん。私も私も下さい」
「えっ?卵があるの?お寿司に卵?ずるい。小父様さん私も~~~」
「うわぁ~~~。とろとろのたまごだぁ~~。ちょっと退けて、邪魔。君は隅でいいの」
其れまでの空気が一変する。
始めて寿司を食べる依然に魚の切り身を観るのも始めてあると言うのは後につけて聞かさえる。
あんなにも真剣に睨んでいたのは初めての魚の寿司と言う物の物珍しさ由縁の態度である。
箸の一本も握った事もなければ漢喰らいも成るのもしょうが無い。
自分の寿司が親の仇ではないと安堵したが今度は今度でやりにくい。
緊張しなくてよろしいい寿司を楽しんで良しと下知がおりた途端に子供の様にはしゃぎまわる。
四角卵の鉄鍋に卵をおとせはきゃ~~~~と黄色い歓声があがる
箸で寄せて油をひきなおせば卓から身を乗りだしてわ~~~~~おと騒ぐ。
取手と掴んでトンと叩いて裏返せばたま~~~~や~~~と種類の違う掛け声が掛かる。
ふんわり甘いだし巻き卵を輪に切って下駄皿に乗せて仕上げれば
「頂きま~~~すっ」と声を重ねて満面の笑みではふはふと頬を膨らませて口に運ぶ
(こんなに美味しく食べてくれるなら毎日作ってえがたくなるなぁ~~。暖簾おろそうかなぁ)
二十と四年の修行三昧の日々よりも卵焼きを頬張る三人姉妹の笑顔に強面の眉がゆるむ。
「大将。惚けてないでっ。戻ってきて。注文。注文だってば。おい。こらっ」
半分怒声の混じった声に頭を振って吾を取り戻すと副将の四五禄参の手が舎利桶とネタ桶の間で奮闘してる。
「とろびん長、サーモン、活〆大えびウニの軍艦巻、なまえび、烏賊にぎり、マグロ中ろとろ、大トロ。五貫づつで」
はっと気がつけば姉妹の一人が店の品書きを指で指して注文してる。
「私は鰻、赤貝、ふぐの唐揚げ、縁側のわざび大盛り、こはだ、皮付き鰻の炙り焼き、はまちと炙ったやつ禄貫纏めで」
「えっと私っは特上おまかせの続きとあっちの看板の右から左で全部と品書き札の上から参ページまでと御饂飩を
お寿司は八貫つづとだし巻き卵を4枚ほどお願いします」いつの間にか倭文字の品書きも小首をかしげるも完璧に読んでる。
「おぃ。お任せじゃなかったけ?そうだよな?」小声で四五禄参に聞いては見る。
「お任せですよ。お任せの追加注文です。おい舎利桶ついかしてくれ。貝類のネタ桶もだ。早くしろってば。」
「追加注文は良いが、予算とかあるだろ?確認したのかよ?
あっ失礼です。舎利だ、舎利。黄金車海老の頭付き持って来い。疾走ってこい。この馬鹿っ」
言葉の途中で態度が変わったのは料金を心配した孫兵衛の腹を小突いて丁稚が小切手をちらつかせたからである。
署名はあっても金額がない。つまり食べた分は全部払うから金額を店側が欠いて良いと言うことである。
先日に予約を取りに来て世話役は確かに戦争と言いはなつ。正に戦争でる。
孫兵衛は寿司の握りは自身もある。その技術は当然であるがにぎる速さも人の倍を超える。
その倍速の上をいって下駄皿の上の寿司が三姉妹の胃袋に消えていくのである。
単純に早食いと言うのではない。きちんと寿司の味を味わい咀嚼し喉を鳴らして胃に落とす。
十分すぎるほどに孫兵衛の寿司を堪能し笑顔も浮かべておいし~~~とも声を上げてくれるのに
旨い寿司は舌の上でとろんと溶けると言うが握った側から寿司が溶けて消える。
そのたべっぷりに感謝感激と此方も嬉しいとばかりに腕を振るうが其の余裕など無いのが四五禄参である。
孫兵衛の腕にはまだ達してないから副将であるが腕が悪い訳では無い。
隣で楽しそうにもその手は電光石火の如くと手が勝手に動く大将孫兵衛においついてないものの玄人である。
玄人であるが状況はあまくない。
なにせめ眼の前の接客もすれば厨房もみなければならない。
ほとんど止まらずにとびか注文の対応に厨房は荒れる。
「はい。梅巻き干瓢蜂蜜餡掛け海苔巻き5本あがりっ。次は次何?」
若くして結婚した四五禄参の女房が厨房頭である。
「ふっ、ふぐの唐揚げ4人前です。奥さん」厨房の反対側で伝票整理の丁稚が騒ぐ
「ふぐ?ふぐの唐揚げ。仕込んであったのは?
もう出たって?当たり前よね。さっき揚げたもの。誰かネタ持ってきて。疾くぅ」
「炙り烏賊のずんだ餅塩辛乗せ軍艦10貫セット上がりましたぁ~~~」
「はぃはぃ~~~~~私ですぅ。私のです~~」分かりきっているが顔は同じだからやっぱりわからない。
「あのう。私の卵焼きは未だかしらん」
「ただいま。ほんのちょっとちょっとお待ちを。だし巻き卵の追加分は何処ですかぁ~~」
「今上がるよぉ~~。次はなになに?鮟鱇鍋季節の果物詰めわせ煮込み
こんなメニューあったのか?うちって寿司屋だよな?鮟鱇の肝持ってきてくれる丁稚君
あっ。配膳で手が離せないので。自分で行きます。配膳頑張ってくれよ~~」
「は~~いがんばってます~~。あっ関東風お好み焼きと餡蜜パフェセットはいりま~~す」
「歓んでうけたわりま~~す」声援が飛べば追加注文が入って帰る
(儂の店って寿司屋だよな?関東風お好み焼きと餡蜜パフェセットなんかあったけ?
まぁ歓んでたべてくれるならいっかぁ~~。やっぱり暖簾下ろそう。云々)
「ご馳走様っした。美味しかったですっ。皆さん有難う御座いました」
にこやかにも楽しげに声を合わせて一例弐拍とぱんぱん手拍子討たれて戦いが終わる。
あれだけ食べたと言うのに揺れる乳房の下腹はぽっこりと膨らまぬが摩訶不思議である。
どの戦争も終わると言うならば凄惨な結果であっても一息はつける。
「お粗末様でございます」
屋台寿司屋孫兵衛の流石の大将も黄金色の生板を白布巾で磨くふりして体を支える偽一杯である。
職人相棒を務める四五禄も壁に持たれやっとの事で手四肢を支えてる。
厨房では幾人もも職人が既に倒れ込み冷蔵庫の食材も極わずかを残すばかりである。
「いやぁ~~~。流石に喰った喰った。流石は帝都港の握り寿司の銘店であるな。
所で大将。来週の今時間に又予約を入れたいのだがよろしいかね?
人数は今日と同じでお願いしたい。えっと其の次のも次となるな。。えっと何回だろうな?」
「十と八かいよ。今日から毎週一回っとしても十と八回だわね」即座に姉妹のだれかが暗算して答える。
「じゅっ、十と八回?十と八週でですか?そ、それはどうゆう事ですか?」わけも分からず聞き返す。
「私達姉妹なの。ううん。参人だけじゃないの。五十と四人姉妹なの。
こんな美味しいお魚のお寿司。私達だけたべちゃ皆がかわいそうでしょ。だから順従に遠足なのぉ~」
にこにこと三人姉妹が顔を合わせて微笑む。
「つまり、その御嬢様方姉妹は五十四姉妹と言う事ですか?その毎週遠足のお昼に三人ずつ御来店なさると?」
疲労困憊で頭はで計算しても良く回らない。奥から腰に手を当てさすり四五禄参の女房が顔をのぞかせ問い返す。
「無理っ。こんな可愛い顔毎週観ながら寿司握れとか無理。儂、隠居する。腰が無理。可愛いすぎるんだもの」
心の声をただ漏らしにして余りの衝撃にバタンと大将孫六は泡を吹いて卒倒する。
引退宣言を声たからに宣言して倒れる孫六。これが毎週来るのかと想像できずに頭が惚ける四五禄参。
だが一つの戦が終わるまでの束の間の平穏は本当に短い。
ご馳走様と美味しかったですと頭を下げる五十四姉妹の内の三姉妹。
にこやかて手をふるも来店した時と同じ様に黒布で瞳を隠す女性の手を引き姉妹達が馬車に戻る。
途中まで脚を運んだ世話役の鼻髭の小父様さんがあっと呟いてドスドスと戻ってくる
「女将さん。女将さん。散々つい散らかした後で悪いんだが・・・。
お宮の分、数足してもらえるかな?えっと諸々全部たして57個の2足して貰って59個だな。
最後の一個は此の住所に届けて欲しい。ふむ、夕刻の飯の時間頃までにたのむ。」
「ご、五十と九個のお宮で御座いますか?」
「ふむ。元々きちんと発注しておるんのだ。増えるのは2個だけであるな。宜しくである」
子供の世話も有るから普段は午前中のみに店を軽く手伝う女将であるが当然何も聞かされてもいない。
合われて顔を厨房に向けて確認すると年はの行かぬ丁稚が満面の笑みで予約表を摘んで証拠を見せる。
「う、承りました。又の御来店有難う御座います。・・・・確かに時間までにお届けします。
起きろ此の唐変木共。仕事はこれからだよ。こ・れ・か・ら!
食材がない?第弐冷蔵倉庫に夜の分が残ってるだろ。全部もってきな。
それから其処に転がってる隠居希望のロリコン爺と棒っきれみたいな奴、簀巻きにしてゴミ箱に放り込んでおきな。
今日からあたしが店仕切りるから、キリキリ働きなさい。職人ども」
既に己の限界を超えた大将とまっしろに燃え尽きた副将の屍を超えて
個々に第二次可愛いお顔の五十と八姉妹と屋台寿司屋弐駄目女将とのお宮折り詰め戦争の火蓋が切って貶される。
「久しぶりに外を歩いたのです奴は少し休ませて頂きとうございます」
参箇所めの見学場所で盲瞳の伯母様ミシャーは暫しの休息を求め椅子に尻をそっと遅す。
壮絶な戦はミーシャ光だけでなく病がその四肢を蝕んでいる。片足引きずるのも其のせいである。
「大丈夫?私達もそばに」とアルキューレが心配下に声をふるわせるが
「駄目ですよ。今日は大事な社会勉強の日なのですよ。
貴方達は姉妹様達の代表なのです。しっかりお勉強してお見上げを持って帰得るのです。
しっかり楽しんでいらっしゃいな。アルキューレ」
「はい。伯母様。行ってまいります」深々と腰をおり頭を下げるとしゅたっと跳ねて
菓子工場案内添乗員の前でにきちんとならぶ姉妹の列に楽しげに並ぶ。
「声だけで解るのですか?流石ですな。儂なんかじっくり観てやっと何となくだと言うのに」
温かい缶紅茶をでっかい手に包んで鼻髭の小父様さんがよってくる。
「声のトーンに癖が有るのです。しっかりしてるようでアルキューレさんは心配性。
ドジで失敗も多いかも知れませんが内に芯の強さを秘めるモルヌキューレさん
末っ子そのままの正確のシュキューレちゃん。みなそれぞれに可愛い御子で御座いますね」
「儂には同じ顔に同じ声。只々元気な姉妹にしか見えないですがね。あれで人に非ず魔物弐に似ずとは御父上の御業と怖さですな」
「どの様な御縁で絆を結んだのですか?」僅かな空気の揺れと漂う熱の熱さを頼りに缶紅茶の位置を知って細い手を伸ばす
「悪党稼業に身をおきますが、何々偶然ですな。お陰で生きる糧に毎日汗癖動いてます。あれは・・数ヶ月前の事で」
人雌人形と新たに縁を結ぶ盲瞳の伯母様ミーシャにらしくもなく神妙に事の成り行きをボソリと鼻髭の小父様さんは語りだす。
何か調子が狂う。
午前中から数えて四回目の控除剣客を担当する女性添乗員。
いつもなら遠足見学と言えば小学生か不良を気取若輩の中学生、ちょっと飛んで社員旅行の会社員のスケベオヤジである。
今案内してるのはうら若くも銀髪のうら若くも可憐な女性と昼に御飯を食い過ぎたと腹を擦る間抜け顔の若い漢。
女性参人の美しい顔がみな同じに見えるのは最近彼氏に振られ其れ以来、毎夜に悪疫になっている深酒の影響だろう。
「此方で材料をあの器械で捏ねて。ローラーで平らに伸ばし其の次は型抜きで形を作っています。
その後目視で生地の具合をたしかめて、向こうの部屋でオーブンでじっくりと焼き上げ・・・」
反応が悪い。
確かに食用品の屋台や店ではよく見る一般的なクッキーの製造工程ではある。
だが個々は此の街でも最先端を極める半自動工程を極めた最新式の工場である。
菓子職人達が汗癖と昔ながらのやり方では生産数に限界もある。その問題と限界を見事に解消したのが此の工場である。
どんなに元気な小学生も半自動で生産される光景にガラスに額をべったり付けて離れないのが常である。
だが然し。三つ子姉妹の顔は無表情で一変の感動もない。手前においてある試食籠の中身は一枚も減っていない。
こんな最新式の工場に眉一つ動かさず黙してじっと観てるだけとはどういう事だろう。
「あのクッキーって七参わけの痩せっぽちのオジサンが毎週持ってくるやつよね?
パサパサでちょっと油ぽいやつ。一口食べると吐き出したく成るやつよね?」
「そうね。確かにあのクッキーと同じ匂いがするわね。お姉様
なるほど。あのローラーの飛沫がとんでいるのよ。其れが製品に染み付くのよ。
道理で油ぽく成るわけだわ。合点がいったの」
「観て、又の人、ローラーに油さしてるわ。これで参回めよ?
あれじゃ食品汚染よね?保険役所はなにしてるのかしら?
ほら其れに。金属の枠を使ってるからみな必ず同じ形に仕上がるの
袋絵には手作りって描いて有るけど嘘なのね。買ってもらう消費者にどう申し開きするのかしら?」
ぐるりと一斉に其れこそ音が鳴ったと言うように同じ顔が一斉に添乗員の睨み殺す。
「おっ。終わった。私の人生、今終わったの。若干二十と九歳で結婚も出来ずにおわったわ。
・・・。手作り風味です。風味です・・・。あっ言い訳です。ごめんなさい」
汚物か化物を見るように冷酷残虐な目で睨むと又、ぐるりっと音があって三つの首が同時に動く。
「お姉様っ。彼処彼処!職人さんが卵溶いてるの。昔ながらのやり方でクッキー焼いてるの。美味しそう」
「本当だわ。絶対美味しいにきまってるの。疾く疾く」
「卵のクッキー。ルンルンルン」
「お待ち下さい。あの部署は今週で廃止のお荷物部署で・・・きゃん、引っ張らないで下さいまし」
広い工場の作業場の一角の隅の隅。数人の職人が自分の手で卵捏ねて搔き回す。
「観て。あの職人さんの手ばさき。格好いい。あこがれちゃう」
「見てみて。あのオバサンの体重を乗せた棒伸ばし、あの為にオバサンん太ってるのよ。
正に職人の鏡よね。よっ、大統領。素敵~~~。結婚してぇ~~」
「あの人もすごいよ。ぽんぽんぽんと木枠でお星さまつくってくの。
ちょっと不格好なのが味があるの」
「仕上げの焼きの職人さん。渋い。
目潰って突っ立てるように見えて釜の匂いだけで焼け具合と間わかってるのよ。
あの白髪も渋いわ。燻銀のオジサ格好いい~~~」
手焼きの試食品の籠はからっぽだな。細い三本の指がもっとよこせと示してる。
かすかな声がガラス向うに届くのだろう。
昔気質の職人オバサン気づき手をふると
「きゃ~~~~気づいて貰えたぁ~~嬉しい~~~~きゃ~~」
「おばさん。お肉の揺れが素敵なの~~。脂肪は正義!其の脂肪が美味しいクッキーをつくってるのぉ~~」
「燻銀の叔父様~~。結婚しよう。私がお髭整えてあげる~~~、きゃ~~こっち観た。失神しそう」
ガラス越しに声がこもっても自分達に向けた声援としれば嬉しもあろう。
卵を割る手が舞うと園が卵が宙に跳ねればさっと掴んで枠にぶつけて割って。
独特の動作で動くと白身がいつの間にかぱっと消えると黄身が器に堕ちる。
ざっとすりご木が舞われば黄金色の液体が跳ねて飛ぶ。
粉に混じれば純白に寝かせた生地を脂肪のついた腹に力を込めて押しつぶす。
一回弐回と伸ばせば程よく厚さに一寸ずれもなく伸びた生地にぽんぽんぽんと星型に切り抜かれる。
何処を観てるのかと言うように目線ははずれても手の動きは正確に盆の上に型抜きされたクッキーが
ずらりとはねて列を成す。最後の仕上げとたっぷりと旨味の刷毛に乗せてなぞれば
燻銀の髭の職人が釜の前でじっと佇み焔と香りで時間を図る。
これぞ手作りクッキーと職人魂の誉と態とばかりに皆が胸を張る。
「其れに比べて・・・・」
一斉にぐるりと綺麗な顔首が回ると旋律が奔る。
「おわった。おわったわ。私の人生・・・。儚くも華もない人生だったの。
仰る通りで御座います・・・でも、会社の方針でして・・」
「貴下達、よかったらクッキーの手創り体験してみない?」
「やったぁ~~~。やりたいです」
「私も行く~~~。いっちゃ~~う」
「クッキー。クッキー。卵のクッキ~~」
週が開ければ部署は閉鎖と会社の方針で決まってる。
最後くらい華道を歩んでも悪くないだろうと断りもなくすりこ木をもったままオバサンが声を掛けてくる。
正直助かったと思えば、参人姉妹がピタリと廊下の途中でで四肢向こうでもぐるりと顔を向けてトドメに一言
「それに比べて・・・・・」声を重ねて五寸釘を刺してくる。
「仰る通りで御座います・・・・」返す言葉も無いと項垂れるとと服裾を若い漢がツンと引く。
「人生を嘆くのは結構ですが、何もしないのですか?あとおかわり下さい。手作りクッキーの。偽物ではない方の奴」
細くも情けないはずの若い漢がギラリと目を輝かせてクッキーを強請る。
「ですから。さっきから言ってるのです。
あのローラーの油は多すぎます。10分もしない間に4回も油をさすんですよ?
ええ、ええ。そうですよね。そうしないと回らないんです。あのローラー。欠陥品でしょ?
手作り風って何ですか?風って。消費者の目誤魔化してるんですよっ。このわからず屋の唐変木上司野郎
何故ですか?何故です?手作り職人参達の部署を閉鎖ってどうするんですか?
あの人達が内の会社の味を作って来たんですよ?なのに首とか閉鎖とかありえないでしょ?この馬鹿野郎の上司」
「もうきまった事である・・・・」
喧々諤々と女伊達等に声を荒げ揺れもしない貧乳の胸を突き出して案内係の女性職人が激昂に唾を飛ばす。
其れを会社の方針と机の上で肘を付き顔の前で手をくんでじっと睨み返してはや二十分の押し問答がずっと続く。
「一兵卒の平の案内嬢如きが上司に意見とは、自分のしてる事がわかっているのかね」
組んだ向こうで上目遣いに何時でも首を切れるのだぞと貧乳胸を見上げて睨む。
「元よりやめる覚悟は出来てます。私だって油ぽいクッキーより外側ぱりっと中しっとりのクッキーが食べたいです
誠意をもって言ってるのに、油切ったクッキーと偉そうにふんぞり変える椅子がすきですか?
自分の地位と御客様の笑顔天秤に掛けてご覧なさい。どうせ自分の椅子が思いんでしょ?」
「そんなことは当然決まっているのだ。態々天秤に測るまでもなく・・・・」
「では其の尻を黒革を乗せる貴殿の椅子と貴殿の命を天秤に掛けて頂こう。今個々で」
ドスンと事務所の扉が開くと巨躯を誇る隈の如しの漢が中へ入ってくる。特徴は整えた鼻髭だろう。
「何だね?君達は個々は関係者以外立ち入り禁止の場所だぞ」
ドスドスと脇目も振らず大熊の体躯を揺らして机の前まで圧しすすべば、気迫に押されて案内人の女性は脇へ退ける。
脇へ退けたつもりがギロリと五寸釘の鋭い視線が顔が三つ回って刺さってくる。
本日担当した見学者の女性参人が白い割烹着を着込んでそれぞれに木の器に卵を満たしすりこ木でしゃかしゃかかき回してる。
次の女性は粉と混ぜた種を細い腕で丸めて宙で捏ね上げる。最後の女性は自分で肩抜いた星型のクッキーを盆に並べて持っている。
手作りクッキーの体験会の途中なのだろう。三つ並ぶ綺麗な顔に怒りと殺戮の殺気を乗せるが割烹着が寧ろ可愛い。
「ふむ。儂も文字は読める。部外者禁止とは書いてあったのだが。
実はな。儂の可愛い娘たちがこの会社の手作り風クッキーを食べてな。ちょっと腹をこわしたのだ。
幸いにな。彼女等は胃液が濃いから大事には要らなかったのだが、余った奴を従業員が摘んだら
油臭いと吐き出す前に悶絶して泡を吹いて入院する始末でな。
社会見学の先で作っていたとは驚きであるな。クレーム受付の部署で聞いたらどうやら儂の顔が怖いらしい。
責任者を出せと脅せば此処ときいてな・・・どうしてくれるのかね?」
「いや。あの正式なクレームは専用の部署がありまして・・・」
頭の上から突然に振って湧いた話しであれば半分くらいは嘘であろう。きっとそうに違いない。
机の上では確固たる態度を示し最初の姿勢を維持するが。机の下では貧乏揺すりが止まらない。
ガタガタと膝下が振えがどうしても止まらない。
「此処も違うのか?困ったものだな。
貴殿の業務内容にクレーム処理がはいってないとすれば。手作り職人達の首を狩るのは貴様の仕事であるな?
人事部長とそこに描いてある。内の大事な娘たちがの胃袋が油まみれのクッキーで膨らむのは心が痛い。
聞けば彼の職人達が創業当時からこの味を作って来たと言うではないか?
もう用済みだからと首を切るのが仕事かね?それでは自分の首も切る覚悟は有るかね?
所で街で魔物を観たことがあるかね?鉤爪のあるちっこいのじゃないよ。あれは人の肉を喰らわない
人の腸肉と血汁と脊髄が大好物なんだよ。内の娘達は・・・・
さて。職人達の首と貴殿の其の首。どちらに傾くか天秤に掛けて貰おう。今個々で」
シャカシャカと卵をこねる人雌の目玉が赤く燃えるとぎょろりとひらく
こねこねと生地種をこねる手は止まらずも人顔溶けてぐわりと開けば大口が大きく裂ける。
盆に乗せた星型のくっきーを落とさないに気を使うも裂けて開いた口に乱杭歯が生えて蠢く。
歪に歪む顔であるも割烹着を着込みクッキーを大事にする仕草はやっぱり可愛い。
「わっ私は貧乳が大好きです。いつも廊下ですれ違う彼女の貧乳を視感していました。
ちょっと膨らむ御尻の線がたまりません。ええ妻の爆乳より彼女の貧乳が好物です。
貧乳の何処がいいかと言いますと、乳房がないと探す時のあの感触と感じて膨らむ乳首が愛しいのです
それから女性更衣室から下着を盗むのが私の趣味です・・・、ええ。今もちゃんと掃いてます
それから・・・それから・・」
天分に乗ったどちらの首であっても答えてしまえば結果は同じだ
職人の首と答えれば自分の首が確実に齧られる。自分の首だと言えば潔しと齧られる。
逃げ場がないとしれば自分の性癖もばらしてお茶を濁すのが精一杯である。
机の下ところか全身を揺らし恐怖に染まれば頭のネジが飛ぶ。
頭を齧られなくても自分で社会的に首を跳ねたの同じであろう。明日と待たずに会社が首を切ってくれる。
「呆れた。飛んだ変態やろうだったのね。知らなかったです。でもどうするんですか?」
「頭のネジがとんだら手のつけようもない。
其れに此奴も此の会社も信用ならん。うちで引き取ろう。
どれだけ菓子に金かけてるかしってるか?彼等を雇ったほうが安く付く。
何時まで大口開けてるんだ?クッキー作ってこい。行って来い。
あっ。君もだ貧乳の案内係にもなにか仕事を探しておこう」
「貧乳って連呼しなくてもいいでしょ?感度は良いです
あっため息付きましたね。失礼な。感度はいいのぉ~~~感度は~~~」
その日無事にも騒ぎを起こしたほうが多いアルキューレ、モルヌキューレ、シュキューレの三姉妹は
舞踏社交の店に帰るまでが遠足という言いつけを守るも地中の肉市場で勝手に馬車から飛び出し
屋台にの買い食いに自分達の小遣い以上の金額をぶち込むと言う暴動を起こす。
少々お疲れの様子と帰りの場所で目を閉じていたら本当に寝込んでしまった鼻髭の小父様さんは
これに対応するのに出遅れたため三姉妹の暴動鎮圧が遅れてしまい。次回からの遠足にルートが
野菜市場近辺のるーとに変更されたが最大の悲劇である。
当然の如く三姉妹が飼い食いした肉の代金の大半は鼻髭の小父様の財布から引き落とされっる。
この一件について彼にコメントを求めたところ
「いやぁ~~。小遣いが減って、噛み煙草を水煙草に変えたから健康になったわ。
云々、災いてんじてふくきたりである。ガハハハ。・・・・水煙草って味薄いんだよ。味が・・・とほほ」
自慢の鼻髭を捻って豪語するが、其の目は中年の哀愁を物語っていた。
さて、三姉妹の珍道中は此処までとなったがきちんと報告会も開かれる。
「嗚呼~~、なんと言う重々しくもじっとりとして排他的な空気。まるで小餓鬼族の巣城のような混沌の匂い
己の欲望にまみれて雄と雌とが拳で語りあい、暴力と混沌の果に血と骨と肉がぶち撒けられる戦さ場の匂い・・
ああ。堪らない。これぞ愛と憎しみのセレナーデ・・・ちょっと短剣持ってきて。
え?違う?健全とは言い難いけど暴力禁止?殴り合いも?一匹の雌を巡って命がけの決闘とかしない?
あ、そう。・・・・ちょっと残念・・・あら失礼。今日から皆様の世話をする盲瞳の伯母様で御座いますの」
「お、伯母様?伯母様って」
「きゃ~~~~伯母様、伯母様。此方向いてえ~~~」
「私の叔母さぁまぁ~~~。抱っこしてぇ~~」
店に入った途端に肺に潜り込む空気と暗闇。重くも苦い雰囲気がミーシャの目にかつての光景を想い浮かばせたのだろう
「ミーシャ・・・盲瞳の伯母様って戦争犠牲者だよな?なんか暴力狂にも見えるのだが?」
「誰だって混沌の悪癖の一つくらい持ってますよ。二面性って言うんですか?僕はおどろきませんよ
その方が萌えるです。素敵な伯母様。僕も列に並んできます。それじゃ」
「はい、はい。姉妹達。ちゃんと並びなさいな。順番に抱っこしますからねぇ~~」
新しい叔母様が来てくれたとばかりにミーシャの前に五列にきっちり並び人雌人形が列を作る。
一人、一人とペタリぺたりと顔を触り確かめてからギュッと抱擁する。
最初に出会った三姉妹と同じ顔同じ四肢をもつ五十と四人の姉妹であっても、細かい違いは有るらしい。
其の列の最後でちゃっかり若い世話係の若い男が並んでいるは愛嬌である。
盲瞳の伯母様の抱擁が終わると遠足帰りの三姉妹が戦利品の役所の売店を荒らした駄菓子。
その腰を笑顔で粉砕した寿司屋のお宮。貧乳の案内係を睨み倒して作ったクッキー等が配られる。
云々、なかなか充実した社会見学であったと鼻髭の小父様さんが鼻髭を捻って安堵する頃。
場所は変われども又、一騒動起こる。其れこそ人の倫理と常識を遥かに超える本日参回目の世界大戦である。
「お、お邪魔しま~~す。
駅前通りの屋台寿司屋・孫兵衛です。あの。出前ですけど、此方で宜しいでしょうか?}
三姉妹の笑顔と食いっぷり攻撃で心と腰を完全に破壊された大将孫兵衛は一時的に昏睡状態に陥るが
持ち前の気迫と寿司職人の意地で秩序と健全たる心身を取り戻す。
それこそにお宮の注文を受けたのも自分である。責任と意地でよっころせとた違った時は
厨房の職人が歓喜と感涙の水に声を上げ喝采を送ったくらいである。
その心に内に秘めた想いは兎も角も、目の前に三つの可愛い顔がなかれば勇気百倍寿司道一筋二十と四年。
漢一匹嫁要らずと、握りも握る五十と四個の折り詰め寿司の山と成れ。
最後の一貫を詰めるとガクリっと膝を降り、厨房の床に手を突いて山の如くの四肢を支え、辞世の句をボソリと一つ
「わ、我が人生に一変の曇・・・あった。一杯あるぞ。責めてあの姉妹にきゃぁ~~きゃぁ~言われたかったぞ、ガクリ」
絶命至るかはたまた、其の腰が戻るかは又に別な機会と御噺と相いまみれよう。
「ぬっ?出前だと?僕は頼んでないぞ?其れに忙しいんだ。僕は」
「宜しいんですか?娘様たちからの一文がついてますよ?
愛しい愛しい私達の御父様。
今日は社会見学の遠足でした。とっても楽しかったです。
お昼に食べただし巻き卵が美味し過ぎたのでお重に詰めて貰いました。
えへっ。偉いでしょ?だからお小遣い五割り増しにしてください。
アルキューレ、モルヌキューレ、シュキューレよりですって。
まぁ可愛い子達ですね。でも小遣い五割増しって強欲です事 うふ」
「卵と言ったか?卵と?出汁巻き卵とな?新しいなっ。食した事ないぞ。うん、新しい。
ちょっと待ってくれ。僕には規則が沢山あってな。今準備するから待ってくれ」
「別に待たなくても・・・。出前なのでおいて返ります・・・はぃ」
「それは困る。卵は好物であるが、出汁巻き卵は始めてある。
娘達が気を使ってくれた大事な食事を間違った食べ方や無作法で食しては礼儀に掛ける。
それに一人より皆で食べた方が美味しいにきまってるではないか?」
「はぁ~。確かにそうですか?私は只、出前にきただけで・・・あらん」
余り脚を運ばない貧民街の錬金薬局屋。
噂はちょっとだけ聞いた事があった。随分と変わり者の店主が住まう店であると、
若い割に女っ気所か研究一筋で腕は言いが余りに腕が良いから程々の店で程々の薬を買えば良いとも。
其れくらいに変人の店主が作る薬は効きすぎるらしい。
出汁巻き卵の三段御重を出前と届ける屋台寿司屋の女将。
薬剤瓶が並ぶ店内の卓に届け物を置いて問答すれば、準備が出来たとばかりに奥から店主が顔を出す。
噂と言うのは時に二割りくらいが事実という所だろう。だが然し此の場合は十割が噂の真実である。
変態と言う言葉の意味を辞書で引けば、其の挿絵にこの漢の姿が描いてるに違いない。
長いであろう漢の髪を後ろにひっつめ山高帽の中に収める。
鼻筋には黄色縁ので少し大きめのでもありレンズの厚い眼鏡を掛ける。
細身であるが其の腹はくっきり硬い筋肉が山となる。つつけば指が突き指するだろう。
規則と言えばこれがそうなのかほぼ全裸姿と言うのが正しい。
白くも汗にうっすら濡れるも引きしまった四肢に背の高い山高帽と黄色縁の丸メガネ。
他に身を付けてるといえばこれも黄色く染めた皮手袋だけである。
変態である。
ただの変態でる。この格好で通りに出たら秒で捕まる程の変態である。
「おおお。これが出汁巻きか?只の目玉焼きと随分違うぞ?
何だ?この甘い匂いは。こんな食べ物観たこと無いぞ。うわっ。ふわふわではないか
こんな食べ物が世にあったと言うのか?誰がこんな旨い物を作ると言うのだ」
薬剤店の店主は食事の作法を知らないらしい。元より食事など出来る場所ではないのだが。
卓の上の折り詰めお重を見つけると蓋を開けては感動しそのまま店のど真ん中で仁王立ちになる
一段目の御重を掛けて黄金色に輝く出汁巻き卵を指で摘んで豪快に口に運ぶ。
其の食いっぷりまさに小餓鬼族となれば出汁巻き卵の踊り喰らいである。
「わ、私が焼きましたの。愛情込めて焼きましたの。
あっ。こんな所にちょっと右に曲がった縁起物の恵方巻が・・・。いっ頂きます。ぱくっ」
「上手いな。上手いな。御前がつくったのか?
これは普段から料理に馴染んでおらねば出せないな味だ。一人者の僕には染みる味だ。
まさに家庭料理の味である。云々旨い」
「ああ、此方の恵方巻も味が染みてて美味しいです。じわってお汁が・・・ああっ
夫に仕え子を育む人妻です。人妻なんです。その私が愛情込めて作りましたの。
ああ。素敵な恵方巻ですの。ああ・・・貴方・・・」
「世にも甘くも匂い香る出汁巻きと縁起者の恵方巻。なかなか旨くも斬新な組み合わせである。
むっ?其処に有るのは肉まんでは無いか?しかも二つも綺麗にならんで居るぞ」
「ええ、ふっくらとお肉が詰まった肉まんで御座います。
先っちょに何故か吸口が尖った肉まんで御座いますの・・あん」
「さぞや汁の詰まった肉まんであろうな。出汁巻き卵も旨いが肉まんも食べたい。究極の選択だな」
「お食べ下さいませ。あん。そんな。肉まんの生地に指立て食い込ませて千切って・・・ああん」
「恵方巻を頬張る口が止まってるぞ。残しちゃいかん。きちんと食べてこそ福来たるであるぞ」
「あん。勿論全部頂きますの。恵方巻は私のものです。んんっ。はぐはぐ・・・ああ・・ごっくん」
錬金薬剤店に出前に来た女将が店の店に腕を伸ばし尻を突き出す。
ああっと喘いで仰け反る其の背中に最後の御重を乗せながらも前後に腰を動かす。
「ああ、素敵。店主様の恵方巻美味しい。すごく美味し良い。
これからも出前に来ていいですか?、いいえ。来ます。必ず来ます。
味わいたいのです。お口で・・・味わいたいのです。上の口と前の口と・・・
あっ、あっ、あっ、うっ後ろの口にぶっとい恵方巻入ってるぅぅぅ。
イイ。イイ。イクイクイクっ。恵方巻きで逝っちゃう~~」
それなりに遅くもない時間でもあり店錠前も開け放ったままで、何時人来る知れずとも
お宮の出汁巻き卵と恵方巻を貪り喰らう寿司屋の女将と錬金薬剤師
互いの四肢の味を確かめ有う試食会こそ雄と雌との世界大戦と又然り。(多分)



