【The_конвой】馬車と躾けと修道女:壱
広大な荒れ地を二頭立て、若しくは4頭立ての馬が引いて奔る馬車の列が続く・・・・。
五つもと六つとも言われる大陸世界の其の三つ目の大地。
朦々と土煙を上げて奔る馬車が列を作る様から見れば其れは商隊の馬車列ではないだろう。
天空に羽根を力強く羽ばたく大鷲の目を借りて見れば尚更の事。
馬車列の先頭を奔る軽馬車こそに武装に思える物は少ないが茶肌の馬尻を鞭打つ従者の表情は焦りに耐えかねない。
よほどに危機が迫っているのだろう。焦れ焦れとばかりに鞭打つ度に馬尻が跳ねて脚が唸り奔度が上がる。
先頭馬車の従者が鞭を振るう度に疾度が上がれば後続の武装馬車が引きなされる。
重さも有るのだろう。後ろに続く馬車の外壁は分厚く通常の木板の上に鉄板が鋲で打ち付けられても入る。
防御に特化した武装馬車を態々襲う野党共等いないと知るから、恐らくこれは戦用の物だろう。
鉄板で保護された扉板には籠中から外側へと矢を射る為の狙い穴も開けられて入る。御丁寧に内蓋付きでもある。
必要に応じて内蓋をあけ襲い来る野党共に矢を射るの事等、強者にとっては造作も無いし日常茶飯事なのだろう。
其れだけで武装馬車と言うのは痴がましい。がらがらと車輪を軋ませ奔る戦馬車の武装は其れだけでない。
「あれは頼りになる。今日もあれに助けられた」と普段から頼りにするのは戦槍馬車である。
実に鐵鎧を被った禄頭引きの槍馬車は棘馬車とも呼ばれる。
その馬籠は普通の物よりも遥かに大きくもあり中には仕掛け台座の鐵槍が仕込まれている。
いざに戦闘とも成れば四人かかりで鐵長槍が仕込まれた台座を持ち上げ屋根の上に持ち上げると
馬籠に槍銃座が現れる。後は火薬を詰めた大砲宜しく敵魔物に対して鐵長槍が轟音唸って打ち込まれる。
先の尖った鐵長槍が付いた大砲とでも言えばわかりやすい。四肢の小柄な小餓鬼族等は一溜りもないのは当たりまえ
大鬼族でさえも直撃を喰らえば腹を貫かれる。欠点を上げるならば槍馬車自体が重くも大きために実際の運用には
人数と手間が掛かる。それでも剛力な戦馬車であるから、携わる者達は吾こそはと胸を張る。
戦槍馬車が戦連馬車隊の主役を張ればそれだけでも無く弓撃ち馬車が有ると思えば兵站馬荷馬車もある。
馬の前に特殊な三角櫓を組んで敵陣に突っ込み先端を切り開く先陣馬車もある。
それぞれに特殊な兵装を備えた馬車があると思えば兵共の胃袋をもてなす食堂馬車・寝宿馬車・指揮馬車等
ともあれ多々と嬉々に雑多に馬車が集う戦連馬車隊。
今にその刻。峡谷を目指す馬車連隊。其の先は血飛沫飛び散る眩い戦さ場である。
シシヌルミルカ・オリンの朝は早い。朝喚び土竜が地面から顔を出したばかりの頃には身支度を済ませてる。
昨夜に大鬼族の巣城に戦連馬車隊の仲間が夜襲を掛けたかたらだ。
夜襲自体の成果は上場で合ったと医療天幕へと向かう脚にすれ違った兵士が雑談していた。
其れは良い事だとシシヌルミルカ・オリンは少し胸を撫でて下ろす。
従馬車医療修道女としては熟すべきであろう其の数自体は少ないと思うと少し気分が楽になる。
尤もそんな事は言ってられないのも身にしみている。此処は戦さ場で有る。
左右を切り立った大きな崖に大木を組見上げて城壁と変様させた大鬼族の巣城。もう、何年も堕せてもいない。
兵共の噂噺が本当であり、夜襲そのものは成功したとしてもだ。
一矢も受けずにも一傷も追わずにも無事に帰って来る兵士は少なくて当然だ。
どんなに勇猛な戦士と兵士であったも、あの大鬼族と引き連れる部隊兵と剣と鉾を交えて
全員が無事に帰って来れるはずはない。怪我で済シシヌルミルカ達従馬車医療修道女の世話に成るならましな方だ
矢を受けても手首を失っても命は拾える。半身を食いちぎられ頭がなくなれば従軍葬儀屋の棺桶に入るしか無い。
贔屓にする汁菓子屋台から数えて4つ目の医療天幕がシシヌルミルカの詰める場所とある。
跳ねるように四肢を動かし近づくだけでも中の喧騒が耳に届く。先程の安堵はやっぱり嘘である。
「シシヌルミルカ医療修道女様。七番と八番。それと十ニ番と十四番の寝台をお願いします」
「はいっ。承りました。直ぐに行きます」少々疲れ痩せた同僚の医療修道女の指示が耳に届くと冷たい水樽の中に
手を入れて出来るだけ急ぎながらも丁寧に手を荒い、直ぐに言われた寝台に奔り向かう。
「大丈夫ですよ・・・。傷は浅いですから安心して下さいな。」
指定された担当寝台に人混みを別けて滑りこむと寝込む患者の手を取り優しくも微笑む。
八番寝台は腕に矢を受けてはいたがこの場所に運ばれて来る前にきちんと処置されて入る。
後は安静にしてればいいだろう。九番寝台は擦り傷だから医療溶液を塗って処置とする。
「養生してくださいね」と最後に声を掛けるのも忘れない。
十二番は重症であろうとも既に十分な数の他の医療修道女がついている。態々邪魔をする事も無いだろう。
弐歩と奥へ脚を運んで十四番寝台の患者の手を取り声を掛ける。
「大丈夫ですよ。直ぐに御医者様が来てくれます。お気を確かに」一目見て患者の状態を把握してその手を胸に抱く
無理であろう・・・。確かに直ぐに髪の毛一本も生えていない若そうな蜥蜴顔の医師が駆け寄り処置を始める。
専属看護婦も掛けより医者の指示で手を動かす。
それでも死と生を幾度となく見守ってきたシシヌルミルカは其れと知る。
ああ。この青年兵士はもう駄目だと・・・。
汗と緊張と狼狽にまみれるも、尽くす手は最早ないと知れるまで若い蜥蜴顔の医師は粘るも最後には目を閉じ
其の瞬間に息を引き取った青年兵の胸に手を置いて宣告する。
休むまもなく次の患者の元へと奔り奔る医師の気配を感じながらも従馬車医療修道女シシヌルミルカは患者の手を
握りずっと祈り続けて止まない。
医療修道女と言っても・・・
一生の間にシシヌルミルカ・オリンの様な戦さ場に身を投じる医療修道女はそう多くないだろう。
確かに個人的にな理由に基づいてこの戦場にやって来ている。だあらこそ凄惨な出来事が目の前で起こっても
黙々と自分の役目を熟す。
精霊聖教と言う大陸でも覇を唱える教会の修道女として一生を神と信仰に捧げるシシヌルミルカではあるが
一変道理の修道女としては其の日々に疑問を感じ教会の許可を得て戦さ場へとやって来ている。
生涯を精霊聖女に身を捧げる修道女であっても癒やしの力に秀でる者は多い。
但し彼女達は力を持ってはいても教会に布施を胸に懐いて訪ねて来る輩にしかその力を振るう事はない。
修道院に力を見出され身を捧げてもその力の使い方に疑問を覚えたシシヌルミルカは本来の地位が堕ちると知っても
巡回医療修道女に身を投じる。
そして四人・・・。
日々に自分の眼の前で生と死を彷徨う兵士と患者を支えながら生きる。苦もあればこそ命の尊さを知る毎日である。
精霊聖会に身を置く修道女の其れに習いシシヌルミルカの姿は質素でもある。
黒布の縁に白線が入った頭巾。同じ柄と布地で拵えた質素な修道服。胸には角を生やした双首馬の教会の紋が入る。
靴だけは泥地でも脚を取られない丈夫な革靴を確りと履く。
少々思いのは確かがであるが泥に脚を取られて転ばないようにでもある。零細であっても他の協会の修道女と違うと
すれば。どんなに美しい容姿を持った修道女であっても教会に身を捧げた時から顔を秘す教義が有るために
面当てを外さない。これは位が高く成る連れ最初の目と其の周りを覆う面当て。次に目と鼻を秘す半面当て
最後が顔の全面を秘す仮面となる。それなりに長い年月を教会に仕えるシシヌルミルカであればこそ本来は半面当ての位であったが今は地位の低い目当てだけを嵌め顔を秘す。巡回修道女由縁の習わしに習って入るとも言える。
大規模な戦さ場であるこの地に置いて単純に雌と女性の姿は以外にも多い。
看護を担当する者は元より医療修道女もかなりの数が入る。中には戦兵の中に混じって斥候を担う者も入るだろう。
大鬼族の巣城を責めるのは真摯に骨が折れると指揮を取る者も首を垂らしてもぼやく。
其れに携る士官も兵士はもっときついだろう。明日、手を引き千切られるか頭を齧られるかでもある。
だからこそ生にしがみつく。だからこそ精を放って明日と何時かに希望を繋ぐ。
そういう意味では信仰に身を捧げる修道女で合っても、寧ろ其れだからこそにシシヌルの四肢を視姦する輩も多い。
修道女であればこそ一種独特な雰囲気を持つシシヌル。教会に身を置きながらも四肢は豊かで有るのが原因である。
一際も其れ以上にも大きな乳房は其の下で腕を組んで支えても直ぐに疲れてしまう。其れくらいに大きい。
普通の雌と女性と比べればそこまで細くない胴と腰を言い換えればちょっとぽってりと肉付きが良いと見える。
それでも朝と昼と夕までもと医療天幕の中をあちらこちらと忙しくも奔れば筋も締まる。
一見とすればぽっちゃりと肉が付くがそれでもしなやかな四肢をも持つ。大きくも張りの有る乳房よりも
時に目の保養と拘りを持つ輩も入る其の尻も肉付きが良ければ大きくも丸い。
ともすれば大きな乳房としまった腰に大きくも丸い尻とその先のキュッとしまった足首を持つシシヌル。
そうと知れば修道女と言うよりも酒場の踊り子か漢の竿を咥える娼婦の方が良く似合うと誰もが思い視姦するだろう
(やだっ。あの人又こっち見てる・・・)
自分の四肢が漢の好色の対象に成っている事もシシヌルミルカは良くと知っている。
それは教会に身を捧げる前からずっとそうだし、死神の手を向かい入れる瀕死の兵士でさえ最後の力を振り絞って
今生の別れとばかりにシシヌルの乳房に手をのばす兵士もいるのも良く知っている。
それで兵士の気が安らぐならばと受け入れ微笑み返す事もまた慈悲の一つと役目も果たしている。
(せっかくのお昼御飯なのに・・・・)
忙しくも慌ただしい医療天幕から出てる時間は少ない。せいぜい短い食事を楽しむ時だけしかない。
僅かな楽しみと憩いの時間でさえ、向かいの娯楽天幕の前で屯する一団が厭らしくもジロジロと嫌らしい視線を
刺してくる。誰もがそうであるのに瞳を面当てで隠した修道女が黙々と席に座り椀に匙を刺して啜る姿を
じっと睨んでくる漢とその仲間。一つの仲間付きやいの一党とも見て取れる。
其の仲間一党の頭とでも言うのだろうか。他の部隊に混じっても直ぐに指を刺して彼奴は悪党だと示す事が出来る
其奴はよく目立つ。見るからに陰険な目つきが鋭くもしシシヌルミルカの乳房に注がれる。
ロシュネグルスープ・ズヌ・・・・。
一党仲間と屯する部隊天幕との対面の食堂天幕で少し昼時を外すも暇を手漉きを見つけ食事を楽しむ医療修道女。
戯言に適当に頷くもその視線は修道女の四肢から剥がす事が出来ないでいる。
少々肉付きが良いのも其れとして聖教会の修道着を着込んで入れば尚更に好機の目線を貼り付けてしまう。
尤もロシュネグルスープにはそれだけではすませさない。
昔はそれなりに美形で安娼婦には人気の容姿であったが大鬼族とやり合って顔をでっかい拳で
殴られているから顔の左半分は少々歪んでる。柔らかに流れる髪を手で軽く撫でて目を流せば彼女らも
喜んで胸を腕に押し付けて来た物であるが、今では歪んだ顔骨のお陰で左目は上手く開けない。
どうしても半分開けるのが精一杯だからぎこちなくも半目開きに当たりを見れば、常に誰かを睨めつける様になる。
顔を殴られれば中央に有る鼻も曲がるが身の上運悪くもロシュネグルスープは直ぐに治療が受けられなかった。
その時の部隊を率いた奴が貴族風情の若者で自身も手骨を折った為に医師も助手も修道女も其奴に手を掛けていた。
其奴より大きな怪我を負ったにも関わらず放置されたロシュネグルスープは三日と半日昏睡し
どうにか意識を戻したが早期に治療を施されなかった為に命と引き換えに自慢の美形を失った。
実はこの時にロシュネグルスープはあの修道女の介護を受けている。
う~う~と唸り目を覚ましすまえからロシュネグルスープの手を握り声を掛けては手を暖かくも握り支えてもくれる
顔が腫れれば奇石の技で痛みを和らげ安らぐ声で励まし。薬粥を匙で救っては口に運んでもくれた。
なんとか立てる様になっても時には手をかしてくれ用を足すまで側にいてくれたことも有る。
献身的な介助に感謝するべきでは有るのだろうがロシュネグルスープの心は寧ろどす黒く塒を巻いて久しい。
シシヌルミルカにしてみれば当然に仕事をこなしたと言うだけでは有るのだがロシュネグルスープは
その出生と生い立ちからも自分は差別・排他の対象で有ると自虐にも取れる妄想が強い。
確かに其れは両親から貰った四肢であるし部族部類の誇りでもあるが。
他の物から見れは背も高いし筋張った四肢でもある。何よりもその肌の色は黒くも濃い。
他の大陸や島地には確かに浅黒い肌を持つ人種人類も稀ではない。否然しロシュネグルスープの肌は其れよりも黒い
薪火をお越し其の上に岩をドンと置き熱くなった其れに小麦をねって塊にした物を押し付けて焚く
薄麺麭をたとえとするなら何かの拍子によそ見をし隣人と話し込んで入る内に
追々黒く焦げるまで放置下くらいに黒い。それが人の肌の色とも成れば他の者から見れば畏怖と成る。
程よく焼けた麺麭肌の者から見れば焦げた黒麺麭は外見だけでも苦くも避けたい者とも成り
中身は同じ麺麭であっても毛嫌いするのは当然とも言える。
あまりに其れが事多く営みに被ればロシュネグルスープ自体も疑心暗鬼にも成るだろう。
里島では皆が同じでそれが当り前、寧ろ白い麺麭肌の物を見た時はえらく吃驚した物であるが
彼等が見た目だけでロシュネグルスープを虐げるとは想像に絶する事であった。
置字
