下書き・タイトル未定

19,919文字

ルキル・トマチュ・ベヌは自分の名前が嫌いだった。
顔も知らないし一緒に過ごした海の親が付けてくれた物ではあるがやはり好きにはなれない。
嫌いな理由を10個位は簡単に口に出す事が出来るが今はどうでも良いだろう。
それ以上に対処すべき事が多すぎる此処数日をどう乗り切るかの方が遥かに大きな問題である。
・・・・しくじった。
悲観的な性格ではないはずだが3日前からこの言葉が事ある度に口をついて真っ先に出てくる。
苦い思いをしてるからだろう。今後の自分の人生でこの先何度も思い返し唇を噛み締めるのだろう

ルキル・トマチュ・ベヌ・・・・
上へ伸び上がる塔の街に拠点を置き、上へ登る塔に登り踏破を目指す冒険者を職としている。
この大陸世界にある幾つかの塔は上へ伸び上がる塔や下に潜る洞窟
暗すぎて何処につながるかわからない穴が幾つもある。
そこには大抵魔物が溢れ詰まり、それは人々の食物になり生活の糧になったり
一攫千金に値するお宝を求めて体を張る冒険者の職場でもあり狩り場でもある。
勿論。塔や洞窟・穴以外でも糧を得ることは出来ても金儲けを考えればあまり旨味はない。
漢女問わず種族問わず一度は上に伸びる塔を見上げ魔物を狩り倒し一攫千金を夢見るのは
誰にとっても憧れてあり誰もが通る道でもある。
尤も・・・・自分の胸内で夢想するのと実際にそれを職業とするのは全然違う。
大抵の種族は魔物と戦うには貧弱な四肢しかもってないし
武器を持つ強靭な四肢を持っていても、もしくは魔法を使うと才能を持っているからと
それだけで塔にも洞窟にも穴にも入るのは大抵の場合は無理がある。
一通りの手続きを取れば冒険者になることは比較的容易ではある。
よしっ!やってやろうと決意し角度を決めれば。あとは組合で申請し手続きをして
一定期間の教習と実習を受ければ冒険者の職業につく事は出来る。
実際希望者は多いし我先にと突っ走る輩も後を立たない。
否然し・・・・現実はそう優しくもないと知るのもいとも簡単だ。
新米冒険者達の廃業率は約八割。それも冒険者登録から壱年未満だ。
それだけ過酷な職業であり、精神的な疲労と体の苦痛を存分に味わえば里に帰って
実家の家業を継ぎ幼馴染の四肢を貪り尽くしてゆったりと過ごすのが壱番良いかもしれない。

大陸にある拾弐本目の上に伸びる塔
この街でルキル・トマチュ・ベヌが冒険者登録してから凡そ五年。
確かに他の者よりも若干早い年齢で冒険者登録してるとは言え見た目は若い。
それでも冒険者としてはベテランの域には達しているだろうが。
彼奴は義理堅い。腕は立つと言い難いがそこそこだ。呑み込みも早い。性格も良いほうだろう。
つまりは擦れてもないし、お人好しと言うほどでもないだろう。
使う武器は長さ違いの短剣弐本。起用であるがそれがどうした?
結局誰かの後ろから隙をみてちょっと手を出して獲物を撫でる位の腕だろ?
まぁ~この職業にはあまり向いてないじゃないか?
それなりに力もコネもあるのにも関わらず塔に登る事よりも酒場でいっぱい引っかけながら
大きな尻の給餌娘を視姦するのを最近の日課としてる鼻曲がりの冒険者がルキルを鼻で嘲笑う。

結構細かい事柄でも意外と気にして後々まで尾を引くルキルであるから当然に
自分の評判は気にするがここ数日の出来事はそれも二の次と言うほどに激しく落ち込んでいた。
朝叫鳥が煩くも騒がしくもその時を告げ重たげな瞼を擦り開き少し固めの寝台の脇を探ってみる。
普段はそこに恋人と言うには時間の立ちすぎてはいても肌を温め合う女が居たはずだった。
確か昨夜は上へ伸びる塔の攻略で自分達が到達階層の更新する事が出来たから
その一党仲間と酒場をはしごしてしばらくぶりに羽目を外したのは覚えている。
ぼんやりと呆けた頭の中で記憶が曖昧なのはしょうがないだろう。
そこそこ酒好きでそれなりに酒癖が悪いと自分もおもってるし
そろそろ引退して結婚しても良いのではと最近口癖のように絡んでくる恋人は
あまり酒が強くないからルキルに絡まれるのを嫌って早くにも起きて食堂に降りてるのかもしれない。
「あっ・・頭いたいぞっ。やっぱりちょっと弾けすぎたかもだな・・・・どっこいしょっ」
西の先の大鰐沼近辺あたりにかかる霧立ち込める頭を弐参度振ってからごそごそと髪のかき揚げ
年甲斐にもなく自分に自分で声を掛け寝台から四肢をずらし立ち上がる。
ちなみに全裸である・・・・。酒が入ると脱技散らかして他人に迫るのは悪い癖だ。
「あれっ・・・・?これ何だ?・・・・・・・えっと・・・なっ、なっ、なっ、なんだって・・・?」

あの朝から数日過ぎている。
文句を言っても状況は変わらなかったし・・・・そもそも自身の一党の仲間は街に居なくなっていた。
我を忘れ記憶が全く無くなるまで酒を呑みまくって床に倒れ込んだはずである。
自分の恋人か一党の誰かと知らずとも部屋の寝台に運び込んでくれたのは、多分そうだろう。
そこまでは優しさであっても床の上に無造作に捨てられた封筒一通。
よく解らずとも封をきり瞼を擦りながら文章を追う。
それは解雇通知だった。
若手の頃から五年程、生死を掛けて共に喜怒哀楽を分かち合った一党の仲間達。
一党の頭もその仲間もそれからの弐年は互いの四肢を貪りあった恋人。
文面を読み進めるうちに涙で視界が曇り鼻水を啜る音が部屋に響いた。
どうやら全員の意見だったらしい。満場一致で一党からルキアを追放すると決まったらしい。
確かに仲間の中とは時々は意見の食い違いもあった。互いに命を掛けて魔物と殺し合うのだ。
うまくいくなら互いを称え、死にかければ誰かを責める。
それでも全員で最後まで登ろうと誰もが誓い合っていたはずだった。
それと信じていたルキルであったがどうやら本当に一党から追い出されたらしい。
置き手紙を見つけて最初の弐日は呆然とただ宿の天井を見つめてすごす。
やはり恋人だと信じていた女を裏切られた事がルキルを苦しめる。
まだ若い四肢と性欲を持て余す時期とでも言うのだろう。
仕事として上に登る塔に籠もる以外の大半の時間を過ごして居たのもあるし
精神的にもある程度依存していたのもあるのかもしれない。
流石に腹が空き過ぎると何とか立ち上がり宿の食堂へ降りて行く。
当然如くと自棄食いに奔りはち切れる腹を抱え擦り始める位に落ち着くと
やっと自分がするべき事が見えてくる。
確かに恋人には振られた。
確かに一党の仲間からは見捨てられ一人ともなった。
それでも生活していかなかればならない。やはり働く必要がある。
そして壁にぶつかる。

上へ伸び上がる塔の街の足元。中心部に近くても少し離れた商店街地区の表通りのちょっと横。
「ぼっ・・・。僕っがこの店に入るのは場違いだと重々自覚ってる。
それでも僕はこの店にはいるしかないんだ・・・決してやましい事を考えてるわけではないぞっ」
必要に迫られているのは確かであっても傍からみれば十分に疚しい若者と思われるだろう。
この街でも大手の奴隷販売専門店。
刻に己の肉欲を満たすために奴隷を買う輩。自分の身の回りの世話を従者として買う貴族。
塔に上るために捨て駒として戦闘奴隷を必要としている冒険者。
様々な理由で奴隷を買う輩も多ければ多々の理由で奴隷を生業をする者も双方いる。
生活苦で奴隷へと堕ちる者もいれば死罪か流刑が奴隷堕ちかを選択肢のない罪人。
誰かに仕える事が己の性癖と認める者もいれば粗雑に扱われる事で快楽に溺れる者もいる。
時に様々な理由と事情が絡まる中、その需要と供給の結び付きが深くもこの大陸にも根付いてる。

「御客様っ。本日はどのような御要件で当店に脚を運んで頂けたのでしょうか?
当店の奴隷をお買い上げでしょうか?それともお手持ちの奴隷の販売で御座いますか?
はたまた。御客様自身の奴隷堕ちの手続きでしょうか?
それでしたら参番受付で列に並んでください。
今日は希望者が多くって待ち時間は半刻を下らないので覚悟してくださいな」
冒険者として生業を成すのであれば簡素な革鎧を着込むルキルであればこそ
大手奴隷店に務める番頭ともなれば頭も口もよく回る。
「えっと・・・奴隷の買取希望なんだけども・・・そっそれなりに金は持ってきてるつもりだし」
先ずひとつ・・・。
奴隷店四番番頭・ペッキン・モピピ。
見上げるお客が冒険者であるとは想像に容易い。
但し、ペッキンの知ってる冒険者とは違ってもいる。
冒険者と言うのは大抵の場合、横柄で傲慢である。
それはある意味では正しい。日々に上に上る塔に籠り魔物相手に刃を交える。
気荒くもなれば礼儀正しさ等、どっかに堕としてきたに違いない。
命からがら塔から出てこれたのなら命の重さと自分が生きてる証として女と雌の四肢を貪り
ときには同種同性相手も互いの穴を埋めるのも悪ないだろう。
大抵の冒険者となれば近場の仲間内か、少ない稼ぎを注ぎ込んで贔屓の娼婦か情夫に乗りかかるか
此処の店の奥通りに並ぶ娼館に脚を運ぶのよく聞く話だ。
その上でペッキンが務める大手奴隷店にやってくる冒険者と言えば
運よくそれなりのお宝にありついたのは良いが、
いざそれをどう使うのが正しいのか解らずに取り敢えず奴隷でも買ってみるかと
鼻息荒く大見栄きって足を踏み鳴らす輩位しか思いつかにない。
若しくは自分の性癖を見極め自ら奴隷堕ちを望む、ペッキンには理解できない輩も少なからずいる。
若い冒険者の姿を見てなんとなくそれと決めつけたのはペッキンの失態であろうが
当人はそれは気にしてないらしい。
尤もルキルは緊張しすぎて話が半分も耳に届いてないだけだった。

もう一つは奴隷店の四番番頭・ペッキンは跳ね跳び兎族であることだ。
「奴隷のお買い上げですね。当店の奴隷共は素材の質もよければ施す教育も良質の物で御座いますの。
塔宮の貴族達様も惜しげなく通って頂けるほどの商品も取り揃えておりますですの。
少々、お高くつくかもしれませんがご満足頂けるかと思いますわ・・・」
慣れないとうまく聞き取れないかもしれない程の早口でぺらりぺらりと喋るもルキルを客人椅子へを案内してくれる。
それでもルキルは落ち着かなかった。
跳ね跳び兎族は基本的に兎の四肢を持つ亜人である。見た目はものすごく可愛い兎である。
愛くるしくも可愛い兎がちんまりとした奴隷店の制服を着込んでトコトコと目の前を歩いてる。
ふりふりと前を歩くまんまるなお尻とやっぱり丸い尻尾。優しく抱っこしてその感触を味わいたい衝動に
誰もが駆られるのだが、冒険者のルキルは苦い思い出が山の様に積み重なってる。
跳ね跳び兎族は上に登る塔の外にいる種族だ。
だが然し。塔の中にも同じような兎の亜人がいる。見た目はほとんど似てる。
だが角がある。しかも鋭い。亜人と言うよりは寧ろ完全な魔物であり獰猛でもある。
決して長くはないが鋭い角を構え跳ね飛んで冒険者の剣と槍を交わし隙あれば猪突猛進と突っ込んで来る。
冒険者で前衛を務める者なら、あまりに疾い突進を交わし損ね腹や肺にぶつかって来られ
運が悪ければ四肢に穴が開く事さえあるのだ。
冒険者ルキルにとっては魔物そっくりな跳ね跳び兎族の番頭が丁寧な人類語で案内してくれる事自体
違和感がありなんとなく落ち着かい気分に成らざる負えない事である。

奴隷を売り買いする店でルキルは書いてであるのだからもっと無理をして威厳を持って堂々とするべきで
あろうが所謂、主人椅子とも言われるやたら装飾の施された椅子に尻を落す時ときでも
ルキルは何処か不安げな仕草で落ち着かない様で座る。
尤もこの場で場違いであり尚且つ、浮いている存在であると言うのを壱番自覚してるのはルキル本人である。
何しろと言えばこの店は街で奴隷を扱う店では壱位弐位を争うほどの大手であり
艶めかしくも大胆に肌を露出させた奴隷共が首輪から伸びた鎖が大げさな装飾が施された石柱に繋がれ
周りで貴族風情や商人が鼻の下を伸ばし目の前で四肢をくならせる奴隷の四肢に見入ってる。
ペラペラと店の仕来りや規則を説明する跳ね跳び兎族の番頭によれば
あの柱に繋がれた奴隷達は主に性玩具奴隷で有るらしい。詰まりは情婦と情夫の扱いと同義語であり
時間貸しは出来ないが日割りで彼等を買う事も出来るらしい。
つまりは日雇い奴隷と言う事になるのだろう。奥方様が実家に帰り家を開けるその隙に普段とは
違う快楽を味わうのは後腐れもない都合の良い奴隷どもなのだろう。
広い店内の中で何本かの石柱に繋がれ踊る奴隷もいるがそれだけではなかった。
北側に広く取られた一角はそれぞれに半丈の壁仕切りによって区切られるそれぞれに雰囲気の違う部屋がある。
ある一つの半部屋は北國造りを模した物になっていて白毛の大熊の敷物や暖炉がある。
その中心の長椅子に白銀の狼の毛皮を肌の上に壱枚羽織っただけの高級奴隷が四肢を横たえ微睡む。
その隣の半部屋は石作りの壁と床。どっかの牢獄を模しているのだろう。
手を伸ばせば触れる位の隙間の向こうから物悲しくも見窄らしい薄皮の奴隷服で此方を見上げる奴隷達がいる。
客を楽しませ一人でも多くの奴隷を買い漁って貰えるような演出にも余念がないのだろう。
西側のルキルが案内された場所は幾つも客主人様の椅子と卓が並べれられそこで店番頭と交渉して奴隷を選ぶ。
すでに何組かの客が番頭に要望を伝え。眼の前に並んだ好みの奴隷を視姦するのに忙しい輩もいれば
提示した好みとは違うと眼の前の奴隷と番頭に横柄粗暴な態度で声を荒げる商人風情も周りには多かった。

「御客様・・・・お飲み物は何が宜しいでしょうか?」
ペラペラと仕来りを並べる跳ね飛び族の番頭が一息ついて卓の上の水杯を手に取った隙を見計らって
給餌係の雌奴隷が柔らかい物腰でルキルに声をかけて来る。
「あっ・・・・えっ~~~とぉ。
あまり強くない・・・寧ろ弱すぎる酒を小さめの杯で銀本に並べて持ってきてほしい。
抓みは蒼鋏蟹を少し熱めに茹で上げた奴を弐匹。大振りの鋏持ちがいいかなっ。これで足りる?」
「弱すぎる酒を小さめの杯で銀盆に数杯並べて。
抓みは大振りの鋏持ちの蒼鋏蟹を少し熱めに茹で上げて弐匹で御座いますね。
・・・・承りました・・・・。御客様・・・・・。あの・・・少し多すぎで御座います」
「構わないから・・・・受け取っておいて・・・」
ルキルは特に気にしていなかった。奴隷店にいるのだから給餌してくれる者もいるのは当たり前であるが
奴隷であっても労働に従事してるのがから対価は当然だと思ってる。
「ですが・・・これは少々・・・貰いすぎと存じます」申し訳ない困り顔で給餌奴隷が言葉を返してくる。
「ええとぉ~~。僕はあまりこうゆう店に来ないし相場とかもわからないんだ
でもそれなりに見栄を貼るべき所だと言うくらいは知ってるつもりだよ。
大下座過ぎるとか言うのなら田舎者だと嗤ってくれてかまわないから・・・・」
あまりじっくりとは彼女の顔を見ずに手を振ったのは恥ずかしさもあるだろうが
見栄をはりずぎたと自分の失態を誤魔化すためでもある。
「お優しい方で御座いますのね・・・・御客様。・・・・それでは直ぐにお持ちしますね」
ルキルにしてみれば気恥ずかしい失態でも注文を取るだけの給仕に金貨弐枚は多すぎる。
銀貨弐枚の間違いじゃないかと目を疑った彼女は多すぎると言って見たものの
冒険者風情にしか見えない客が盆の上に載せた金貨弐枚をそのまま乗せたまま恭しくも大げさに頭を垂れた。

眼の前の若い冒険者と給仕奴隷のやり取りの間、番頭ペッキンはその様子を観察していた。
こういう店では客が見栄を貼ることも多い。寧ろそれが普通でもある。
だが然し。飲物と抓みの注文を取りに来ただけの給仕奴隷に多すぎる程の金貨を盆の上に乗せ
録に顔をも見ずに受け取れと言うのはあまり聴かない。
よっぽど財布の中の金銭が溢れているか。それとも相場を知らず見栄を貼っただけなのか
見極めるのには判断材料が少ないのであるが、まぁ、身なりからして世間知らずで見栄を張ったのだと睨む。
「さてとと・・・。御客様。
本日はどのような商品奴隷をお探しでしょうか?
当店ではどんな御客様のニーズにお答え出来るように多種多様な商品を取り揃えております」
店の仕来りと決まり事を一通り説明し一息ついたとばかりに水を含んで口を濡らしてから先へと促す。
「えっとぉ・・・・僕は冒険者として上へ上る塔に登り生業を立てている・・・」
多少なりとも多めに金貨を払ってくれた若い客にさっきの給仕奴隷がルキルの注文した料理を持ってくる。
ルキルが注文した蒼鋏蟹がそれよりも一匹多かったのは彼女の礼だろう。
横の卓に置かれた盆の上の小さめの杯を一個掴みぐぃっと煽るも酒気を吐き出しルキルが続ける。
「・・・・まぁそれでも上手く行かない事もある。
それなりに頑張ってたつもりだけど仲間から首にされたんだ・・・。
随分落ち込んでいるのも確かだし・・、正直恋人も失ったのは最悪だよ・・・本当に。
それでも・・・飯も食べていかないと行けないし稼ぐ必要もある。
一党に投げ出されたのは辛いが意地もある。今までやってきた事も辞めたくもない。
・・・・だからと言って一人で塔を登り切る事は出来ない。
ふむっ・・・・。だから最初の一人は戦闘を得意とする者がいい。
雌雄は問わないし、性格も容姿も気にしない。只ひたすらに強さを求めるようなやつが良い。
少々破天荒でもかまわない・・・・。少数精鋭で行きたいから戦闘狂でも構わないかな。
多少の行き過ぎは目を瞑るよ」
「ふむん・・・戦闘に特化した者も当店には居りますが・・・・癖がある者も多いで御座いますの」
「構わないよ・・・・。」
あらかじめ自分の中で頭に浮かぶ事を何度も練習してきたのだろう。
その要望を一気に吐き出し乾く喉を二杯目の酒で潤しも短く頷く。
ルキルの要望を独特の商い文字で素早く書き殴る羊皮紙を脇に控える丁稚に渡し投げる。

「おおっ~~~。お主が新しい御主人殿かぁ~~?
私はシシィナルゥ・・・・・。苗字はない・・・・貴族でもないしな。
塔に上る冒険者と聞いたが・・・ひょろひょろじゃないかぁ~~?
ちゃんとご飯食べてるのかぁ?稼ぎが悪くてご飯食べられてないんじゃないのか?
こっちが心配になってきたぞ・・・・。
よしっ!決めたっ。私が養ってやる。うんうん・・・私がお主の面倒をを見てやろう。
まずは・・・腹ごしらえが先だな。・・・・美味そうじゃないかっ。・・・
おぃ。お前。お変わりを持ってきれくれ。バケツ一杯位にな」
ドスドスと遠くからも聞こえる足音を踏み鳴らしルキルも見た事のない種族の女性が案内人と一緒にやってくる。
「此方が最初の商品奴隷ですのっ。半黒巨人族の雌・・・名をシシィナルゥと・・・。
こらっ・・・・!大人しくなさいっ!そっ粗相は駄目ですの。粗相はぁ~~。
御客様っ!御客様!大丈夫ですか?大人しくなさいってば・・・・この馬鹿でかゴリラっ!」

ルキルの目線の隅に突然入って来たその姿はあっという間にその姿で一杯になる。
尤もその次の瞬間。寧ろあっという間に客人椅子に座って居たはずのルキルの四肢が宙の上に浮き上がり
大地の支えを失いぶらぶらと足が揺れる。
同時に野太い声が響いてくる。びっくりして声を上げるのを忘れてしまうが
半黒巨人族・シシィナルゥの声と態度にやっぱり驚く。
新しい主人の希望がお前にあってるかもしれないから目通りをしろと奴隷頭に言いつけられ
意気揚々と店に顔出してみたが案内された場所の椅子に座っていたのは冒険者ではあった。
それでも屈強な体躯とは全然違い、寧ろひょろりとした若者だった。
誰ぞと言えずも久しぶりの主人候補との目通りとなれば期待もあった。
ちょっと残念だなと思いひょろりとした若者の前に立ってその顔を軽く覗き込んでから
流行る心に促され、よいしょとばかりにルキルの脇に手を添えて持ち上げる。
半黒巨人族のシシィナルゥとしては、いつも誰かを見下ろしてる。
半と言う文字がくっついても巨人族である。他の種族よりも弐周りも参周りも背も体躯も大きい。
同じ高さの床に同人立てば。どんなに屈強な体躯の輩でも、つい頭を撫でたくなる高さでしかない。
此処へ来て何回か番頭に目通りを言いつけられたが、貴族であれば自分を見下ろすシシィナルゥに
嫌悪感を覚えて不機嫌になるし。冒険者崩れの輩は自分より腕が立つのは明白と毛嫌いしてくる。
結局半年くらいはこの店でくすぶってるから暴れたくてしょうがないのも無理をする理由でもあった。
「う~~ん・・・。美人だけど・・・・。僕を養うって言い切られてもなぁ~~。
人並みにご飯は食べてるぞっ。元々太らない体質だし・・・・。どちらかと言えば大食いかもだ。
美人だけど・・・・。武器は何を使うんだ?それと条件は?」
褐色肌の自分より背も体躯もかなり大きい女性に脇下を支えられ宙に足をぶらぶらと浮かせながらも
ルキルはあまり表情を崩さずに奴隷が求める条件をシシィナルゥに問いかけてくる。
「ふむっ。日に三度の食事。出来れば大盛りでお代わりを許して欲しい。
塔に登らない日があれば昼寝を許していたい。使う獲物は戦斧が得意だ。
前にでる。とにかく前にでるやり方が好きだ。作戦とか戦法とか苦手だし。
どうしようもない時は逃げる・・・・。それが良いと思ってる。
後・・・夜伽の相手もして欲しい。漢と雄の味を知らないわけじゃないが・・・
なにせこの四肢だから満足させてくれる奴は少ないんだ・・・・・抱くのも抱かれるのもすきなんだが・・・」
「ふむぅ・・・。
他の輩はどうか知らないけど。冒険者は体が資本だぞ。それを節制すれば命を軽んじるのと同じだぞ。
三度の食事はお代わり自由。参時のおやつもつけてやる。
獲物は御前が好きなのを選ぶと良い。此処でケチると僕っの命に直結するんだぞ・・・。
それ位の甲斐性は漢の華だろ?・・・夜伽は・・・頑張る。
抱かれるのも抱くのも好きだとか・・・主人の僕を抱こうと言うのか?・・・この変態奴」
「おうぅ・・・。中々骨のある御主人殿じゃないかっ・・・気に入ったよ。
やっぱり私が御主人殿を養ってやるよ・・・・。
絶対抱いて・・・ひぃひぃいわせてやるから覚悟しな・・・がははのはっ」
半黒巨人族のシシィナルゥ。
普段であればもう少し互いの気落ちと条件を突き詰めて話し合い。
その折り合いが付けば奴隷店の番頭が値段を提示し互いの合計がつけば契約となる。
あまりに短い二人のやり取りに戸惑いを隠せない番頭ペッキンはが問いかけてくる。
「申し訳ありません・・・なにしろ戦馬鹿の腕力馬鹿でして・・・・
えっと・・・お値段ですが・・・・・」
若干の狼狽を隠せずに声を上げる番頭ペッキンに巨人女のシシィナルゥに四肢を持ち上げられたまま
片手を上げてそれをルキルが制する。
まず先に戦奴隷のシシィナルゥが先にルキルを気に入り自分が養うとか勝手に言い始め
短いやり取りを済ませた後。此処が出番と値段提示をしようとする番頭ペッキンを
ルキルはそれはいいよと黙って頷く。
長く商売してればたまにそういう事もある。それは大抵の場合。有り余る金に物を言わす貴族だろう。
財力に力を言わせて手当たり次第に買い漁る輩である。
確かに目の前の若者は冒険者であると知れている。
最初にそれなりの予算を取ってきてるともほのめかしてもいた。
本人の素行に多少の悪さが目立つとは言えそれでも一人の奴隷でもあればそれなりの金額が掛かる。
戦奴隷とのなればピンもあればキリもあるとは言え多少なりとも値ははるのだ。
それなりの値段がするし店の番頭としては商品の値段は告知するべきであるが
結局、番頭ペッキンはそれを呑み込み代わりに苦言を慌てて吐き出す。
「こら・・・ゴリラ巨人女・・・御客様になんてことを・・・・御客様だいじょうぶですっ?」
録に値段も確認せずに自分を買うと言った若い細い冒険者は抱え挙げられた冷静さを保ってる。
自分より体躯の大きな女性に体を支え抱えられながらも苦笑こそすれ侮辱とはうけとっていない。
「どれどれ・・・。交渉は済んだようだな。なにせ私は力もあるし美人だしな・・・。
若い四肢の疼きも私が沈めてやるからな・・・ぐふふ・・・どっこいしょ」
「うわっ。待てっ。待てってば・・・これはちょっと恥ずかしいぞっ」
宙に脚を浮かせていたルキルの四肢をくるりと回し一度体制を変えると
さっきまでルキルが座っていた客椅子に自分の大きな尻を無理に突っ込んで座る。
もっとも自分の主人となるはずの若者を抱いたままだから椅子に座ったシシィナルゥの太腿の上に
ルキルが乗っている状態になる。
詰まりは戦奴隷のシシィナルゥが主人となるルキルを抱っこして椅子に座っている状態となる。
「何も恥ずかがる事は何もないぞ・・・・・。
なにせ嬉し恥ずかし抱いて抱かれ合う恋仲だからなっ・・・がははのっは!
・・・・あっ。麦酒と大ぶりの蒼鋏蟹をバケツで・・・我が愛しの御主人にツケてくれ・・・」
「あっ・・・こらっ。勝手に・・・・僕の分は残しておけよ・・・えっと次は・・・」
恥ずかしさに身を捩ってみても相手は戦奴隷の太腕である。
しっかりと腰を抑え込まれは出来ることもないだろうし鍛えられた四肢といっても
やはり女の四肢である。それが不格好であっても悪い気はしないのかもしれない。

「ほらっ。御主人殿。
大振りの蒼鋏蟹だぞっ・・・。私が殻を剥いてやったんだぞ。美味いだろう・・・ぷぷっ」
「美味いけど・・・・。僕より御前の方がたべてるじゃないかっ?飼い主は僕じゃないのか?」
「御主人殿に尽くすには愛情と力がいるのだ。
腹が減っては尽くすのもままならないのだぞ。奴隷の鏡だろ?可愛い奴隷だろうに・・
あっ。酒と蒼鋏蟹追加で。バケツでね。バケツ。あと鹿豚の脚も追加で・・・」
なんともまぁ珍しい光景でもある。
本来は客がくつろぎ座る椅子の上にでかい尻を無理やりつっこみながらその四肢の上に
若い冒険者がすわっているのは奴隷店ならあり得るとも言える。
そうは見えても実際は気恥ずかしさにルキルが何とか脱出しようと身を捩ると
半黒巨人族の逞しくもぶっとい腕が抑えこむ。詰まりは抱っこである。
その癖、ルキルを抱っこしガッチリお抑え混んでる癖に反対側の手を脇に置かれる桶バケツの中の
茹でられた蒼鋏蟹を取り上げる背尾のあたりに指を添え力を加えてバキッと折ってしまい
肉汁垂れる実肉を殻ごとルキルの口に押し付けてる。
なんとも睦まじい光景であるのだが楽しげに奉仕するシシィナルゥと真逆に
口周りを肉汁で汚しながら恥ずかしさにルキルは身を捩ってる。

「次の子は逸品で御座いますの・・・お勧めですのよ」
跳ね跳び族のペッキンは少し苛立ちが声に混じってる。
ルキルが最初に欲しがった戦奴隷は半黒巨人族シシィナルゥが勝手に前に出てくれたおかげで
短時間できまる。問題はその次にルキルの注文はさほど難しくはなかった。
「僕っはずぼらな方ではないとは思うけど・・・付き合った娘からみればそう見えるらしい。
まぁそんな僕の身の回りをしてくれる子が欲しい。
なんか大飯喰らいが勝手に増えたみたいだけど。その辺も含めて世話を焼いてくれる娘がいいな」
この奴隷店でも娼婦・情夫の類の次に世話焼き奴隷は需要も高ければ品揃えも取り揃えている。
だが然し。シシィナルゥの膝の上に抱きかかえられ口一杯に蒼鋏蟹を突っ込まれているルキル。
その前に並ぶ世話焼き奴隷。いつか言葉のやり取りを交わしたが条件が合わなかった。
二人目の世話焼き奴隷も似たようなものである。
参人目がルキルの前に並んだ時に、これは不味いとペッキンは心の中で気付いて焦る。
冒険者の客ルキルが前に並ぶ奴隷を気にくわないとか嫌いだと言うのではない。
寧ろその逆で気に食わないとか嫌っているのは自分の店の奴隷の方だった。
彼等にしてみればきっと些細な理由かもしれない。
ルキルが悪いわけではないのだろうが奥の控え部屋で若い冒険者の世話係と聞かされ
自分もやっと売れるのかもっと心踊らせて客前にでると胸の内で鐘がなる。
自分が世話をするかも知れない若い主人候補の冒険者が半黒巨人の太腿の上で口いっぱいに
食べ物を突っ込んでる。物事の流れでそうなってしまったのも理解は出来ても
感情的に納得出来る物ではないのだろう。
奴隷にとっては自分の主人がどれだけ威厳ある態度で接してくれるかと言うのは大事でもある。
それがどうだ・・・・。
自分より大きな四肢の奴隷女に抱っこされ身を捩っても直ぐに抱き直される。
口の中に次々と食い物がつっこまれ咀嚼してるから話すのも苦労してる。
何よりも半黒巨人の奴隷に良い様に扱われ威厳等まったくない姿に世話焼き奴隷達は呆れてもいた。

「今度こそは大丈夫!・・・・・あれ・・・・?」
中々、条件の合う世話焼き奴隷と出会えないのに苛つきを隠さなく眉を潜め始めるルキル。
長く培った商売眼と経験でその気配を察するも心の内が思わず声に漏れるペッキン。
ルキルもちょっと飽きて来たという雰囲気でよそ見とばかり周りで踊る奴隷達に目を飛ばす。
ふと、気がつくと口中に突っ込まれる蒼鋏蟹が入ってこなくなった。
あれっ?と思ったが同時に少し安堵も覚える。
「新しい御主人様と巡り会えた事を心から祝福させて頂きますわ。シシィナルゥさん。
否然し。シシィナルゥさんの胃袋には丁度良くても。
御客様のお腹がぽっこりになってますの・・・・口の中も蟹油でべったりですの・・・・・」
緩やかで静かな女性奴隷の声がルキルの耳元に届き響く。
さっきまで新しい愛しの主人の口にほぼ強引に食べ物をつこんでいたシシィナルゥの手が止まる。
止めざる終えないと言うか単純に出来なくなっている。
「貴殿は・・・店内一地味無くせに乳だけは大きいと言う忍び世話焼き女・・・くっ」
「確かに私奴は性格も容姿も地味で目立ちませんが・・・それほど乳が大きわけではありませんの」
「ぐぬぬ・・・東ノ御国に忍と呼ばれる曲者かっ?」
「いえいえ・・そんな大層な者では御座いませんの・・・しがない醜女で御座います」
蒼鋏蟹をバケツから取り出そうとしたシシィナルゥの手の甲をこの店1番に地味だと言う世話焼き女の
指がつまんでる。それだけなのにシシィナルゥは全身を強張らせ一切の動きをピタリと止める。
「たった弍本の爪先にこれだけの殺気っ・・・・・兵でないはずがない・・・・。
どこが地味な世話係だ・・・・・御主人殿。こいつを買ってくれ・・・。
必ず役に立つ。私が保証するから買ってくれ・・・・痛いから・・・・離してくれる・・・」
「こいつを買えって言ったったって・・・・全員か・・・?」
「へっ?・・・・・あれ・・・?」
手の甲の痛みが解けて消えたと思えばすっ頓狂なルキルの問が返って来た。
自分の手の甲を摘んでいるのは確かに涼やかな微笑みを浮かべる東ノ御国の忍の女。
だが気配を読めばそれとも違う。
自分がその口に食い物を突っ込んでいたはずの動きは封じられている。
明らかに忍女の仕業であるが自分にも主人ルキルの間近に顔がある。近すぎる位だ。
何が起きてるのかと思案すると当人よりも周りの者の方が分かりやすかった。

体躯の一際大きな半黒巨人族に抱っこされるルキルの前に地味で乳の大きな世話焼き女が立つ。
長く伸ばした黒髪を三つ編みにしてるがそれ以上の印象は掴み難い。
漢供なんかは顔や姿の印象より乳房がデカいとしか思い出せないくらいに印象が薄い。
「近い・・近いって・・・・いい匂いだけど・・・」頬が擦れる位に顔を擦り寄せる東ノ御國生まれの世話焼き女。
だが然し非jとの気配を感じさせずに人影が動いた。
先ず。自分を養うと勝手に言い切った半黒巨人族のシシィナルゥが次から次へと口中に食べ物が突っ込まれる。
それを止めたのは確かに耳元に頬を寄せる女であろう。
だが然しそれ以外に影が動く。
口中一杯の蟹を無理やり呑み込んだと思ったら冷たい水杯の縁が唇に当てられ傾けられると
体がそれを欲してゴクゴクと水杯の中身を空にする。
反対側の頬に顔を寄せる世話焼き女以外の誰かが水杯を持ってきてくれたに違いない。
「ぷはぁ~~」と息をはきだすと少し集めの拭き布が顔に充てられ余計な油が拭き取られる。
同時に膨らんだ腹回りが楽になったと思えば別の誰かが腰皮のベルトをいい塩梅に緩めてもくれる。
尤もそこまで年を喰らってる訳でもないのにまるでオジさんとばかりに少女が嗤いながら微笑んでる。
別の少女の影が服の上に跳ねた油を布で拭き、乱れた髪を指櫛でほぐし整え衣服の乱れを整えると
最後とばかりにルキルの足元の長さの違う靴紐もを一度全部引き抜きちゃんと均等の長さに
整え靴紐を結びな押してもくれる。
「これはたまげた・・・・お前たちは・・・」
静かにも素早い動きと連携にルキルは素直に感嘆して乳房の大きな世話焼き女と少女達に問いかける。
「東ノ御國・伊徒賀の里に生まれ育ち・・・。見聞を広げるために塩の大海の此方側で生計を立てる者ですの
我らも又。忠義を立て捧げる御方を探して居ります。
名を・・・賤ゑ。此方の物は丁稚忍の・・・蘭丸。草薙。結衣花と申します」
壱歩弐歩と下がり地味ではあるが端正に整った顔立ちとしとやかな仕草で佇む賤ゑと言う女
一度はその横に列をなしてペコリと頭を下げた賤ゑの後ろに音を消して隠れる丁稚の輩
東ノ御國・・・。塩の海をわたりきったそのさきの何処かにそんな國があるとは聞いた。
絶えず万年にばかり戦が絶えず、技を磨く兵が集う國ともどっかで聞いた。
のそりと太い手が動きもう一度ルキルの四肢が宙に浮くとシシィナルゥがいすから尻を持ち上げ
立ち上がり脇へ退いてから再び客椅子にルキルを座らせる。
「私が奴隷頭のシシィナルゥだ。
我が愛しの御主人殿は私等に衣食住を提供して下さる。
上に伸びる塔に籠もるのが仕事だから稼ぎがよければ参食の飯におやつが増える。
寧ろこれははずせんがな・・・。美味い飯温かい寝床とおやつ。
嬉しはずかし朝までしっとりの夜伽のおまけ付きだぞ・・・むふふ。
忠義に励めば寵愛も多いと知るが良い・・・・がははっ。」
「承ります・・・・。奴隷頭のシシィナルゥさん。
私奴・賤ゑとその丁稚共々、忠義と愛を捧げます。御主人様・・・・。何卒よろしくで御座いますの」
噺の流れを汲み取って割って入ろうと番頭・ペッキンが慌てる。
「っと・・・・。僕を養うって勝手に言い切るでっかい戦狂の戦士がいると思えば
塩の海から修行に来て忠義を捧げるために主人を探す地味だけどよく見ると可愛いかったり
それでいて乳房も大きかったりとかする忍妾・・・・横に隠れてる欄丸って漢の子じゃないのか?
えっ・・・いまは常識の漢の娘だって・・・そいつも夜伽で奉仕してくれるのか?
それとも僕が・・・・こらっ。顔を赤らめるな・・・頬をそめるなてば・・・・。
たっくぅ・・・良いかっ?奴隷を買うって言うのはお金がかかるだぞ?
一人買うって言ったって・・・それなりに高い金額かかるんだぞ・・・・。
まぁ~自分達の値段位はわかってだろうけど・・・・。
やたら大きな体躯の巨人族。塩海を超えてきた地味だけど乳の大きな忍妾。
おまけに漢の娘とか年端の行かぬ丁稚が更に二人だぞ・・・。
確かに多めの予算をと見栄を張ってもってきてるけど・・・・。
普通なら値段の交渉とかあるのかもだけど・・・・・。
まったく・・・塔に籠もる冒険者じゃなきゃ・・・・・無理すぎるだろ?」
「大変しつれいしました・・・御客様・・・・私奴共の・・・・」
「親方様はどれくらいの高さまで登ってらっしゃるのですか?」
少し身を捩って乳房を揺らし、勝手に親方様と呼び始める忍妾の賤ゑがゆっくりと問いかける。
「上層・・・・八拾と参階まで到達してるよ・・・・
なるべく早く八拾五階まで到達したいんだ・・・その為に一党の核となる者を探してるんだ」
「うほっ・・・?」
「えっ・・・・?」
「はっ・・・・?」
「八拾と・・・参階・・?八拾参階で御座いますか?・・・お客様?」
「うん・・・そうだよ・・・二週間前に八拾参階に到着してる。
まぁ~~。その後、ごたついて苦労してるけどさ」
「さすが・・・我が愛しの御主人殿と言うべきか・・・それにしても八拾を超えてるとは・・・」
「我等が忠義と愛を捧げるに相応しくも・・・・それにしても八拾階を超えるなど・・・容易くは」
さらりといって魅せたルキルではあるが、確かにそれなりの時間と労力がかかっている。
おいそれと無せるべきことではないとこの場所にいる皆が驚愕と知るところでもある。
上に登る塔。そこに集い籠もる冒険者達。
それの実績として・・・成り立ての冒険者が最初の弐年で拾階にたどり着ければ
まずまずのスタートといえる。五年で弐拾・・・七歳で五拾階まで行ければベテランと言える。
この辺から今まで信じてきた仲間達数人で頑張って見てもきつくなってくる。
冒険者達がそれぞれに集う一党という物を更に纏めて大規模戦閥として活動し
上に昇る塔に籠もることになる。
それでも六拾と五階位を超えると限界に近くなる。
今までやり合って来た魔物達が個々に強くなってきたり集団で襲ってきたりと難易度が跳ね上がる。
その中で八拾の階層にたどり着き、それを超えた戦閥は弐つか参つしかないはずである。
冒険者ギルドの認定を受けているのはふたつしかない。参番目となる戦閥は確かに八拾階を超えて
魅せたと言われているが・・・・。その大半は帰っては来なかった。
その階層に到達したと戦閥の党員は言うが、大半が全滅しているからだ。
塔の上層階に達したのはそうであろうが最終的には強い魔物に敗れ敗退しているからだ。
到達証明の魔物の素材等を持ち帰得ることができなかったのも原因である。

「銀狼の捧筒・・・そして断崖の放浪旅団。
この二つが正式に冒険者管理局に認定された上に登る塔八拾階到着者達で御座います。
その姿こそは皆が当然知るところでありますが・・・。
残念ながら其方のの御客様のお顔は私奴もよく知りませんし、他の者も同じと存じます・・・・」
いつものまにかと言うのが正しいだろう。
ルキルに取っては痛恨の一撃に等しい女性特有の高くもその意味も冷酷な声が其の場に響く。
「ちょっと・・・貴方・・・いつの間に」番頭ペッキンが当惑した声を漏らす。
「痛い・・・痛いな・・・・だが正解でもあるかなs」
半黒巨人属の奴隷頭の太腿の上で東の御國出身の忍奴隷に口の周りを拭いてもらいながら
頭の中に深く刻まれる苦い記録に顔を歪めるも。愚言をその女性に先を促す。

「山だ・・・。観ろっ・・・。あの乳房・・・。山だぞっ」
「しっ・・黙ってろ・・・だが然し・・・けしからん」
ちょっと奴隷を買うだけのつもりでやってきた店の一角でいつの間にか周りに
黒頭がたかり騒ぎにもなってるその列の奥から前に出てきた一人の女性。
奴隷頭シシィナルゥによりは確かに低い背丈であっても人種人類の女性の中ではすらりと高い
白濃色の髪を長くも伸ばし馬尾に纏めて冷静な視線をまっすぐにルキルに向けて突き出す女性。
簡素であるにも皮首輪を括っているから確かにこの店の奴隷なのであろう。
金貨を詰めば買える奴隷であるにはかわりないのだろう。
黒布で織り上げた柔らかい衣服にみを包むその奴隷はルキル買おうとしていた他の者とも雰囲気が違いすぎる。
御主人殿を養うと言い切る半黒巨人のシシィナルゥは明らかにルキルに好意を持ってるともわかるし
賤ゑと連なる丁稚共も真意はともかく忠誠を捧げるとも言い捨てる。
それが美味い飯とおやつに惹かれたのか・・・・金銭なのかはわかりはしない。
だが然し最後に面通しに現れた女奴隷はルキルの想像とも大きく違う。
身につける衣装のそれだけではない。その四肢に纏う雰囲気が違えば発する気配もまた違う。
切れ長の目でルキルに突き刺す視線の意味は好意でも誠意でも忠誠とも違う。
憎悪とは行かずともそれが嫌悪であるのは容易く誰もが理解できるだろう。

「八拾階層を正式に超えて魅せた徒党一派は確かに弐つで御座いますの。
否然し・・・・それぞれ八拾壱階と八拾弐階の到達とされています。
ところが貴方様は八拾参階と申しました。
当然。冒険者管理協会の記録にはありません。それはなに故にで御座いましょう」
「確かに冒険者管理協会の認定は受けられなかった・・・・。
それが答えだよ・・・それでも僕等は八拾参階に到達してる・・・」
半黒巨人属の雌奴隷の太腿の上で蒼鋏蟹を弄っていたルキルがの反りと立ち上がる。
立ち上がり際にどこから出してきたのか忍奴隷の賤ゑが蒸しタオルでルキルの顔を撫で回し
だらしになく汚した顔を綺麗に拭き取る。
以外にも整い端正な顔立ちであればこそ無骨な冒険者家業を営む青年の物とは違ってもいた。
「正式ではないにしろ、噂風に乗って届く三つ目の徒党一派の大半は
上に昇る塔の床に溶けたとも聞いております。銀風の閃光とも呼ばれる勇者殿が先頭に発っていたとも
それでも魔塔とも呼ばれる上へ昇る塔こそは魔窟とも呼ばれます。
無事に帰って来れたの者も少なく・・・・哀れにも散り散りになったとも噂蝙蝠が騒いでますの」
「銀風の閃光だって・・・彼奴の技なんて子供の遊びに毛が生えた様のものだぞっ」
あからさまに自分に嫌悪を突き刺す奴隷女に更に嫌いな奴の名を出され思わずルキルが一歩前に出る。
「銀風の閃光の勇者様がお使いになる技は確かなもので御座います。
それを子供の遊びと言い切るのには何か理由でもお有りなのですか?」
一歩と前に出たルキルに向かい黒衣装の女奴隷も一歩と前に足を踏み出し向かい合う。
「銀風の閃光の勇者・・・本名はケポルポ・フェニ。
まぁ~~銀風の閃光の勇者の方が有名だろうけど・・・。
彼奴が使う技が銀風の閃光・・・そいつを駆使して獲物を刻むのが必殺と言われてるよな。
実際に彼奴の刃は疾い・・・。目にも止まらぬ早さだよ・・・・。
否然し・・・。速さは軽さだ・・・。
必殺の疾さと引き換えに威力が軽いんだ・・・軽すぎる。
そうするとどうなると思う?あの技を使って倒す前に獲物に誰かがダメージを加えておかないとならない。
彼奴が必殺と言う銀風の閃光をつかう前に誰かが踏ん張って魔物を弱らせておかなきゃならないだぞ。
奴があの技を使う度に名は上がるが・・・事前に魔物を弱らせる面々の苦労はどうなるんだ・・・?」
苦い思いを噛み締めながらもルキルは又、脚を前に出す。今度は弐歩だ。
「上に昇る塔の魔物を狩る冒険者。
皆、それぞれに力を求め技を磨くのは皆が欲するところで御座います。
富に悪運が付きまとう様に切れる技にも代償が必要で御座います。
一人の勇者が技を振るうならばこそ支えるべき者もいるのもまた然りでございましょう?」
ルキルの苦言に抗う如くと淡々とばかりに女奴隷が逆らい前にでる。これも又、弐歩だ。
ルキルと女奴隷・・・その距離の間はまるで上に昇る塔に巣食い魔物と冒険者の間合いのそれより近い。
「必殺と言うのは必中じゃない・・・・。
必ず殺れる!と言う其の技が・・・・必ず当たるものじゃなかったらどうする・・・?」
軽く手をひらひらと振りながら虚を突く揚げ足を取ると言うよりは意地悪な言い方である。
苦い思いとどこか痛みを我慢する動作にも視える。そして答えて魅せろと又、一歩、脚を進める。
「必殺であるが故に其の技こそ必中で御座います・・・・。
それが必中でなかったのなら・・・・技の失敗と言う事になるのでしょう・・・・ありえませんが・・・」
互いに心中に秘める思いあるゆえに互いの言葉に棘が突き刺さる。そして又一歩と距離が詰まる。
「ありえないという事は・・・仕込んだ術者の思惑にしか過ぎない。
例えばと・・・魔法使いが火球を放つ・・・其の大きさは問わないとしよう。
何回も日に何回も・・・魔物と戦えば・・それ以上に・・・・・。
だが・・技は慣れる・・・使い手に取っていずれは技に慣れ、いつもと同じにもなる。
そして・・いつかは・・・技の斬れが堕ちる・・・慢心て奴だ・・・
・・・彼奴が使う技は自分で磨いたものじゃない・・・。威力は高くても・・・・
あれは・・技じゃなかったんだ・・魔法だった・・・・」
まるで新米術者に諭すように言葉を吐き出すが、今度はルキルは前には出なかった。
代わりにひらひらと降っていた手指を握り拳を握る・・・・。
「意地悪な御方で御座いますの・・・・。
銀風の閃光の勇者の必殺の技が・・・魔法だなんて・・・・。
それを見抜いたとでも言うのですか?・・・・意地悪な御方ですの」
驚いたと言うよりも少しはにかむ様に口元を歪め嗤いながら女奴隷はほくそ笑む。
はぁ~~~とため息を先に漏らしたのはルキルだった。
殺気も交じるかとばかりの張り詰めた空気の中ともすれば誰もがそこが奴隷の売り買いとは忘れてるだろう。
「彼奴の技が魔法であっても・・・・慣れたはずの詠唱が・・・慣れと慢心の末に拍子がズレたとしてもだ。
技は技だっ。斉唱がずれたとしても・・・少し位は威力が落ちたかもしれない・・
それでも削りきれないこともやっぱりあるんだ。なにせ上に昇る塔の魔物だっ。
奴等だって必死さ・・・・。だから超えられない事もある・・・。うまくは行かない事もある」

ぐっと握りしめた拳をぱっと開き・・・又閉じて開く・・・・。
「あの野郎・・・・。詠唱が失敗したと悟ると技に入る前に退けやがった・・・。
魔物の尾鞭が飛んできた先には・・・・・・。
ちっ・・・それだけで飽き足らず・・・・女まで・・・・くそっ・・」
情けなくも正直に漢亡きに店の天井を見上げて息を吐く・・・。
「犠牲は払った・・・きっちりと・・・・代償も重いだろう・・・・。
何せ、お箸持つ方だからな・・・。だが・・・黙って殴られるだけじゃ冒険者とも言わない。
漢としての意地もある・・・・・。
銀風の閃光の一党に討伐認可を降ろさなかったのは証明部位を持ち帰らなかったからだ。
技に失敗して逃げ出したからさ・・・・・・。
だが然し・・・討伐証明部位はなくっても・・・・これくらいは持ち帰って来たぞ」
それまで大事そうに腰に括り付けていた鞄からごそりと何かの塊を取り出すが
運悪くも指間をすり抜けてポロリと堕ちる。
一閃っ。影舞ってしっかと受け止めるのは小さな手であった。
堕ちる獲物の遺骸の一部と知っても臆せずに影となって一閃っ。
「おっ!おっ!おっ!お館様っ・・・これはっ・・・これは何っ!」
幼いでしっかり魔物の遺骸のそれを握り占めて声を上げるたのは忍丁稚の欄丸である。
「まったくっ・・・・。情けないで御座いますの・・・。
銀風の閃光の勇者殿の技のそれを魔法と見抜き・・・・
慢心の上に退いた彼等のとばっちりを喰らい。
おまけに恋仲の雌を寝取られるとは情けないで御座いますの。
・・・・八拾参階で鞭尾を振るう魔物・・・・。大蛇蝎の尾毒鞭と思われますの」
「おっ!おっ!大蛇蝎の尾毒鞭ですって・・・・。
そんな物どうやって・・・・・ちょっ!ちょっと・・坊っちゃん
見せてくださいまし。貸してくださいまし!ちょっとだけですから」
四番番頭・跳跳兎属のペッキンが欄丸の後ろをぴょんぴょん飛んで追いかける。
ペッキンもやっぱり根っからの商売人でもある。
その階層に到達するのも難しとなれば。めったに市場に出回る事のない魔物の素材となれば
自分の眼で見たみたい。なんとかうまく行けば売り買いの商売に絡めれば幸運の極みでもある。
「親方様っ!親方様っ!・・・・・これは何ですか?」
「親方ちゃまっ!親方ちゃまっ!この丸っこいのは何ですですのっ!」
迂闊に堕としかけた上に昇る塔の魔物の臓物を跳ねて受け取る蘭丸。
それがかなりに価値がある物だと知ると忍丁稚の草薙と結衣花がいつの間にか
主人の腰からむしり取った皮鞄を漁り声を上げる。
「其の尖ってる棒は・・・大蛇蝎の尾毒鞭の芯ですね・・・。
ちっちゃい丁稚の子が握ってるのは闇猿の屑髭と・・・そっちは角羊の角ですね
ちょっと掛けているのが残念ですけども。管理局が認定しなくても市場に流せば
涎を流して怒涛の如く金貨を積み上げる積み上げるでしょう?
なるほど・・・。最深部にたどり着いても管理局も認めない。
彼等が認めないなら・・・戦利品を渡す義務もないって事で御座いますの」
可愛い丁稚忍び達が笑々と逃げ回る姿に親代わりの忍妾の賤ゑがぼそりと呟く。
先刻より大柄な奴隷の太腿の上で蒼鋏蟹を貪っていた位の騒ぎであったが
何しろ上に昇る塔から持ちかえられた獲物の遺骸物となると更に騒ぎが大きくなる。
大抵の場合、塔に昇る輩・冒険者は狩った魔物の異物を冒険者管理局の指導に
従い流通に乗るのはやはり彼等の手の平の上で管理されている。
正式な道から外れたそれらは金銭と言う腕力があれば誰にでもてにする事もある。
勿論、多少なりとも割高であるのはしょうがないだろう。

「其の一つでも売りに出したら・・・・私奴どころか店の奴隷丸ごと・・・。
それ以前に狩猟師団を作れるのも当然、街の一つも買えるやも知れるのに
なぜにボロ鞄の奥にしまい込んでいるのでしょう?」
山と見間違えるほどの乳房を誇る奴隷女がぼそりと問いかける。
「別に出し惜しみとかじゃないさ・・・。
単純に管理局が認めるとか言う前に。残った仲間に捨てられたからさ。
魂からがらやっと逃げ来て、朝起きたら誰もいなかったんだ。
お箸持つ方のお手々は痛むし4年も付き合った女も銀風の閃光の勇者野郎に寝取られたんだぞ。
情けないってありゃしない。・・・・いずれは狩猟師団も作って見たいとはちょっとは思うが
今は何より次を目指したいんだ。・・・その核となる奴等を揃えたいんだ」
「なるほどで御座いますの・・・・」そこはあまり興味なさそうに女が呟く。

天鼠 蛭姫ノ壱

天鼠 蛭姫ノ壱

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