【カツ丼勇者降臨】少々、我儘ボディにつき・・・


「へっ、へっ、へっ、へっくしょん」
其の日は給料日まで弐日ほどの時であったが体重を気にして自粛生活が甲を成したのか財布の中には余裕があった。
財布が膨らむまでちょっと位の贅沢も許されるだろう。何より毎日の昼飯が蒟蒻サラダでは情けない。
そうと決めれば商店街馴染とも言えるカツ丼定食屋に脚を踏み入れ若い店員に大盛りカツ丼定食を指を刺して頼む。
程なく宅の上に置かれる湯気漂う好物のカツ丼。古風流儀を守る店のしきたりの竹筒から割り箸を抜き取り
丸っこい指で器用に摘んでぱんっと割る。指の間に適当に挟み手を合わせれば日々の感謝とばかりに呪文を唱える。
「頂きます候」・・・・日々の糧に感謝するのも当たり前と声を出して唱えると視界が溶ける。
「へっ、へっ、へっ、へっくしょん・・・・」
遂に一瞬前までは定食カツ丼屋にいたのなら肌を撫でる外気も寒くもなければ寧ろ熱気もあったろう。
食前の感謝の呪文が終われば好物のカツ丼を一心不乱に口中にかっこむだけである。
それがない。虚しく握るのは弐本木創りの割り箸だけである。
「ぞっ、ぞっ、ぞっ、象さんを隠せっ!不埒者!
「絶対女王。アスフィレヌ・テレーヌ・ド・キルルヌ様の御膳であるぞ!だい不埒者奴」
轟雷切り裂く金切り声が其の場に轟くと思えば見慣れない雰囲気の中に人影が奔る。
「た、タオルっ。持ってきて下さいませな。
ぞっ、象さんが視えてますのっ。象さんが見えちゃってますのっ」
藁々と人影が駆け寄ってきたかと思えば肌寒さを感じる下半身に誰かの細手がまとわりつく。
「どっ、胴回りがすごいのです。届きません。おでぶちゃんなのですっ」
「なんと。おでぶちゃんですの。タオルが届かないなんてっ。
もう一枚持って来なさい。お尻ちゃんまでみえちゃってますの!夙く、夙く。
純潔女王様の御目を汚しては成りませんの。夙く!夙く!」
メイド風の衣装で有れども誰かに仕える従者という方がわかりやすいのかもしれない。
当人達は焦って居るようであるが全裸著しい漢の腰回りにタオルを待ちつけようと必死なのは滑稽である。
「へっ、へっ、へっ、へっくしょん」
締め付けられる腹が肌寒いとばかりにはねた腹の勢いにせっかくのタオルも弾け飛ぶ!
「なっ、なんと言う事!くしゃみ一つで私達を弾け飛ばすとは!さすが勇者どの!
ぞ、象さんが見えちゃいますの!マントを誰かマントを!
其の辺の公爵様のマント引き剥がしてきなさい。それよこしなさい。其のマント!」
良く見れば王が控える謁見の間と見える広い空間のど真ん中に全裸で立つ漢。
其の空間を支配するであろう女王の目から憚らるべき物体を隠そうと必死に慌てるメイド達。
結局も、少しばかり我儘ボディではあると自分でも認める漢は頭から紅と黄色の弐枚のマントと
頭から被されなんとも言えずに滑稽で情けない格好で広間に漢は佇む事になる。


「あの~~~。何が起きてるか誰か教えてくれないだろうか?」
好物のカツ丼を射に喰らおうとすればこの様である。
一瞬に肌寒くも視界が眩んだとおもえば目をつむり、眩しさが収まればと瞳をあければ観死なぬ土地。
やたらに広い空間に結構な数の人の気配とどっかの絵画で観たような西洋風の大広間。
向かい正面の玉座に陣取るのはこの空間の支配者だろう。お世辞等要らぬとばかりに冷酷な顔立ちであっても
霊峰突き出る如くとばかりの巨乳と黒皮布の豪華なドレスで視姦する輩の視線を突き返す。
大陸女王ここに有るべきと名のある女王その人であろう。
すっと、音もなく若いメイドが盆を恭しくも掲げて近寄ってくれば漢の唯一の持ち物を載せろと目配せしてくる。
衣服を剥ぎ取られ現代人とおでぶには必需品となる形携帯電話とかハンカチ代わりのタオルとか入っていた
鞄は手元にない。唯一握りしめていた割り箸一膳が自分の所有物となれば手放すのも抵抗もある。
衣服もなかれば良い心の友の割り箸一膳も取り上げられると心許もない。
「こ、こほん・・・。勇者様の象さん・・・基、衣装も整ったところで・・・」
あたまのどっかには残ってるそれらしくもお大げさないかにも宗教儀式に乗っ取った神官であろうものが喋りだす
「ええ~~、たっ、多少の騒ぎがあったとは言え
無事に異国大陸からの召喚儀式の果に勇者殿を召喚する事ができました。
これによりこの大陸にも平穏が訪れるでしょう。やっ、やっとの事で御座います」
自分の役目もこれで落ち着くとばかりに安堵の息を全身で示す。
「わ、儂は・・・。自分の世界からここに召喚されたとでも言うのだろうか?
良くわからぬが、何かの力を得てこの世界を救えとでも言うのだろうか?」
なんとなくそんな噺を何処かで聞いたこともある。若い者が好む異世界転生とでも言うのだろう。
漢の頭の中で思いを巡らし言葉を並べる。
「おおっ、さすが勇者殿。呑み込みが疾い。聡明にちがいないな!おでぶでは有るが。
そうである。こちらにいらしゃられる我が主人様と夫婦の契を結び、魔物共を狩り尽くすのが仕事であるぞ」
「だが、断るっ」
「うんうん。さすが勇者殿・・・。えっ?断る?断るって」
話の流れから当然に疑いもせずに快く承諾するすると思っていればおでぶの勇者は憮然とばかり堂々と断って来る。
「なっ、何を申しておる。大陸召喚により勇者を成ればこそ栄誉と名誉であるんだぞっ
しかも我等が主人、アスフィレヌ・テレーヌ・ド・キルルヌ様の夫となれば至福の・・・・」
「それが何より気に食わぬ。
美人で有るのは当たり前、気品も知性も有る美しい女性であるのは確かであろうが、
人の都合も考えず、呼び出した所も。御客に茶の一杯も振る舞わぬ輩に
何故に手をかすと言うのだ?儂は帰る。魔物と屋良は自分達でなんとかするがよかろう」
「なっ、なんと言う愚劣な奴。こら、待てっ帰ろうとするな。本気で帰るな。この馬鹿野郎」
神官の罵声と共に前に出ようとする衛兵を一つ睨むさっきを飛ばし抑え込むと
良くも知らぬが思い扉を押し開け謁見の間を漢は出ていってしまう。

「蟹脚首怪助様。
先ほどは御茶も出さずに失礼しました。私共の失態で御座います。
急な事でもありますから戸惑うこともあるでしょうし、共あれ落ち着いたらいかがでしょうか?
温かいお食事と飲み物をご用意しますですの。ちなみにそちらは罪人の懲罰塔で御座いますよ」
怪助と呼ばれた漢が召喚主の戯言を断り謁見の間をでた所で声がかかる。
「あっ、そうなのね。いきなり呼びつけらた上に牢獄にぶち込まれてはまったくもって敵わん。
腹も減っているのも、又確かである。出来れば飯の他に衣服も提供してくれないだろうか?」
「御意にで御ざいますの。蟹脚首怪助様」
簡単なやり取りであるが意図する意味合いは大きい。
恰幅の良すぎる蟹脚首怪助であるが所謂も自分の世界とは又違う世界と場所と時間に呼ばれれば
色々と勝手もわからなければ腹も減る。何しろ貴族共から奪い取ったマント弐枚では勇者としても貧弱である。
大きな背後から声を掛けて主がきつめな顔立ちで黒髪であり、はやり巨乳のメイドであったのも関係は有る。
「お口に合うかどうかわかりませんが・・・。ご堪能下さいませ」
これみよがしに乳房を揺らし私室となる場所に案内するメイドについてたどり着いた部屋は確かに広く大きい。
「まずはお召し物をお着替えになさって下さい。
勿論、お手伝いさせて頂きますの。係の者達!」メイド長がパンパンと手を打つと係の者たちがすっと寄ってる。
現代社会で一人寡婦で長く暮らす怪助であれば、恰幅良すぎる怪助の周りに数人のメイドが群がると思えば
成れた手つきで着替えを手伝う。一人で着替えられると愚痴ても確かに勝手の分からない物もある感じでもある。
「寒い時期でもありますからお口にあうか分からないですが、お気に召さなければおっしゃり下さいませ」
「うぬ。有難う。寒いとなえばたしかかな。ほとんど裸だったし、遠慮なく頂きます」
成れぬ環境で有っても腹はへるし、世界が違っても共通点も多い印象ででもある。
いつも通りにと手を顔前で合わせ食前の呪文を唱え、初めての食事を怪助は楽しむ。


異世界と聞いてもおぼろげであり異国と言ったほうが受け入れやすいのは常である。
自分の世代で言えば皆無である。それでもこの城の主に仕えるメイド長サルヌルシズルは彼を舐めていた。
勇者と言えば美青年を連想しがちであっても怪助の体躯はそれとは正反対だ。
そして何よりもついさっき召喚されたばかりの蟹脚首怪助とやらは随分と違う。
体躯が大きければ食欲も旺盛であった。
メイド長サルヌルシズルが命を発し用意した料理は料理人が腕をかけた芋料理の煮込みシチューである。
怪助の体躯を考慮して一回り大きな鍋碗に料理を盛り付けて出したのは良い。
だが然しも成れぬ料理だとしても十分に最初の一杯を楽しみ腹に収めると
「お代わりを所望するで候」何処無く聞き慣れない言葉で頭を下げて鍋碗を掲げる。
「さすがで御ざいますの。勇者様となれば力を蓄えるのも仕事で・・御座いますのね」
世辞の一つもと言い終わる前に又に鍋碗を突き出されると思えば参杯目のお代わりである。
それが五杯六杯ともなれば、流石に口元がぴくぴくと引きつる。
「なっ、鍋を持って来なさい。鍋ごと持ってきなさい。煎り米混ぜて嵩増ししなさい。
麦酒持って来て!酔わせてしまいなさい。酔わせてつぶしてしまいなさい。
これ以上は。私奴達のご飯が・・・」おろおろと慌てるメイド長を尻目に怪助は又お代わりを強請る。

「ぷはぁ~~~。観た事もない料理であったが中々美味かったぞ。
有難う。異国の料理堪能させてもらった。云々旨かった」ポンポンとつきでた腹を怪助は叩く。
「そ、それは何よりで御座います。勇者様。
少々お痩せになったほうが宜しいかもしれませんね。私共のご飯のために。
さて、今回の召喚当についての補足書と・・・怪助様の体現書になります」
「体現書とはなんぞや?」
腹を膨らませ満足気に寝椅子に尻を埋める怪助に馴染みのない羊皮紙の束と分厚い一冊の本が渡される。
メイド長サルヌルシズルが怪助に手渡した体現書。
王族の持つそれとは違い豪華と言うよりは堅牢な作りと言うほうが良いだろう。
黒皮装丁の一冊の本では有るが革帯で閉じられて鉛色の釦が幾つか付いている。
サルヌルシズルに教えられたと通りの順番で釦を押せばぱかりと音が弾けて帯が外れる。
本扉を開ければ数枚の羊皮紙が挟んでもある。薄々には気づいていたがそれを捲り読むと世界が視えてくる。

蟹脚首怪助の世界は一つであった。
地面に立って上を見上げれば空。そこから下を見れば大地。
神と呼ばれる偶像の力を借りればやがては天空高くと大地は大陸と視え更に高く登れば星になり。
怪助が大地と國の一つである。過去から未来へと時間は経過するが一本の物であり縦に伸びる。
大地を塩海が隔て國向こうの大陸は有っても言葉も習慣も違う。人種人類には差別と対話も有る。
だが世界は一つの星である。場所と國違いは有っても人種人類は一つの世界に済んでいる。
召喚。
有る種の奇跡か魔法とでも言うのだろうか。人がな成す物であれば技術である。
便宜上に呼びやすくすれば魔法と呼ぶのが馴染むかもしれない。
相当に大きな謁見の広間であり女王が居を構えるならやはり城と成るのだろう。
体現書に挟まっていた羊皮紙は怪助に色々な事を教えてくれた。
怪助が日々を営んできた世界と時間を壱の世界と考える。
そこに五つとも六つとも呼ばれる大陸があった。人々に馴染む言葉で記せば五大陸。
五大陸世界と言えばそれらしい。羊皮紙の示して呼べば壱の五大陸世界。
土地と大陸と國が違っても世界は一つ。そう考えていたのは正しくはなかったらしい、
召喚されたと言えば土地と場所が変わったというのではないらしい。
壱の五大陸世界が有るなら弐の五大陸世界もある。更に怪助は時間と時代をも違え飛ぶ。
ありえないと思えば思い当たる節もある。それが言葉と文字である。
怪助は召喚されたその瞬から周りで交わされた言葉を理解していた。勿論、完全ではない。
大体の噺言葉と成す意味をほとんど直感的に理解出来ていた。文字に至っては完璧に近いだろう。
なぜならば、怪助は壱の世界を放浪していた時期が有る。其の三つ目の大陸街が気に入り
一度は永住しようかとも思うくらいに覚悟を決めた事もある。それくらい気に入れば言葉も文字も理解できる。
様子も違うし風景を違えても其の國の歴史を齧れば知ったことである。
良く似た世界と大陸に確かに自分は居るらしい。それこそが弐つめの大陸世界である。
だが、厄介である。随分と。
怪助が場所の他に時間をも跳躍したと推測するのは魔物の存在である
羊皮紙の隅にかかれた魔物と称される化け物が自分の世界でも馴染みと言えば記憶にもある容姿をしてる。
自分の壱の世界であってはもういないと空想の世界である小餓鬼族成るものが雑魚扱いであっても
群れを成すと厄介であり、これに大牙鬼族などの大群が女王が住まう王都の近辺に巣をつくってるらしい。
今のところの脅威はそれだけのようであるが魑魅魍魎が跋扈するのが弐の大陸世界らしい。
壱の大陸世界では逸話・寓話の中だけの存在である怪物・魔物はこの場所には勢力を拡大してる。

随分と厄介な世界に呼ばれた物だと眉間に皺を寄せる。
その間にも用意される柔菓子をつまむ手が止まらない。
「概ね、状況はわかったと言えば多分そうであろう。
ところで、呼び出されたはいいが帰るすべはあると言うのだろうか?
あっ、この欧州饅頭。お代わり頂戴な。小分けじゃなくて袋ごと頂戴。
と、つまりはこの國の怪物退治に手を貸してくれと言う代わりに國を納める女王殿と縁を結び夫婦となれとな。
御山の如き乳には確かに惹かれるが、性格がきつそうであるぞ?
言葉の一つも黙してじっと儂の腹睨んでおったしな。嫌われてるにちがいない。怖いのである。
小餓鬼族とか化け物退治と言っても。儂、喧嘩嫌いだし。拳骨で殴るくらいしか出来ないよ?
なにか仕えるスキルとか技とかあるの?召喚特典とか貰えるの?」
「スキルとは何でございましょう?他の大陸語でしょうか?
えと、この大陸では技を成す者がいます。その大半が体現書を持っております。
そちらを読んで頂ければ詳しくわかるかと」
怪助の側に控えるも当たりのメイドを滑る長サルヌルシズルは問われた問いに全ては答えない。
理由あってのことでもあるが怪助当人はこの時に知るべき術もない。
「体現書とな、随分と分厚いけども・・・あれ、何も描いてない・・
あれっ、おお。なるほど。ふむ・・・。意味がわからん」
サルヌルシズルに促され体現書とやらの裏表紙を捲り覗いても最初こそ黄色い羊皮紙である。
何もないてない頁を成れば次へと捲る。
自國ごではないとしてもなんとか記された文字の綴は目次と描いてあるがそれだけだ。
仕方がないから又捲ると、最初は黄色の生皮地であっても筆文字が浮かんでくる。
おそらくはその体現書の持ち主だけが読めるものなのだろう。良く出来ている。
持ち主意外の者が読もうとしても其の文字は姿を示さない仕掛けなのだろう。
思ったよりも高度な技と言えば魔法の賜物である。
「っと・・・どれどれっと・・・・
大陸召喚者・蟹脚怪助・・・・体現。スキルみたいものかな?
【主徒たる資格を所持する者】だって?・・・・これなに?メイドさんで一番えらい人」
甘ったるい饅頭の袋をからにすると今度は甘汁垂れる果物に手を伸ばす。
思ったよりも水々しいのか、勢いよく噛むと汁が飛び散るし顔も汚れる。
当然に白い布で控えたメイドが拭うのは従者の鏡とも言える技である。
「しゅ、主徒たる資格を持つ者・・・・。言葉通りでございます。蟹脚様。
主の徒として従徒共を率いて纏め導く者で御座います」
主徒と言う言葉が耳に届くとメイド長サルヌルシズルを初め其の場の従者達も一様に四肢を強張らせる。
明らかに緊張し、其の場の空気が変わるほどの強い緊張が奔る。
主徒と従者。言葉の響きはともかくとして彼等にとって十分な重さを纏う言葉なのだろう。
「ふ~~ん。良くわからんが・・・どれどれ次は。
【常時発動常時体現】
大食漢・暴飲暴食・食いしん坊
これはわかる。言われなくても良く知ってるし。
【夜伽関係】
精力旺盛・精力絶倫・倭之御國駆夜伽語十禄手
霊峰巨乳で有ればこそ良く好み、されど貧乳愛でても好物であり
ついでに漢の娘の尻穴もまんざらでもなし。
縄と枷をこよなく愛し鞭と吊しと水責めを得意と放置と焦らしに重抜きを求め
各種道具の使いにも長ければおなごの尻肉を掴んで竿を差し込み悦に浸れば粋とするべし
・・・なんか恥ずかしいぞ。これっ。夜伽の内容自分でばらしてるぞ・・・?
良くわからないけども・・・・はずかしいな」
「かっ、蟹脚様。倭之御國駆夜伽語十禄手は何でございましょう?目合いの作法でしょうか?」
「巨乳好きなのですか?大きいほど宜しいのですか?」
「貧乳愛でるのもおすきなのですよね?私奴でも大丈夫ですよね?」
「ど、道具ってどんなのですか?張り子ですか?どんな形の?」
「焦らしとかはどれくらいの期間で御座いましょう。
放置とかたまりませんの。責めにたえたらご褒美はあるのですよね?とうぜんですよね。蟹脚様」
怪助が読み上げる言葉尻に一々突っ込んでメイドたちが顔を突きわせて騒いでる。


「主徒たる者・・・従徒成る者とは・・・
命を発っし支配する者とそれを受け入れ仕える者で御座います。」
体現書を捲りつつも問いかける怪助にサルヌルシズルは伏し目がちに答える。
「主人と従者と言う物とそう変わらないとも思える。
例えるなら此の國の主人・女王と騎士や僧侶、従者共と変わらぬとも聞こえるのだが」
「類するようにも聞こえるかもしれませんが実際には違います。
女王様にも忠誠を捧げますが、縁と言えばよいでしょう。貴族は位を頂くも己の家族も事情もあります。
義を尽しても全てを捧げはいたしません。
従徒は主徒に絶対を捧げます。命すれば全てを掛けましょう。そこに迷いは有りません。
「主徒と従徒。それは國の長よりも強い絆を結ぶと言う事か・・・?
それはどうすれば良いのだろう?」
単純にふと疑問に思い怪助は言葉にしてみただけである。
「主徒と従徒の縁と絆を硬く結ぶのであれば契の儀を行う事になります。
主徒の体液を従徒が四肢に取り込む事で儀式となります」
真剣な顔つきでサルヌルシズルは答える。
主徒と従徒。其の契儀。
言葉と成される儀式の意味と結果を知るサルヌルシズルとメイド達は深々と息を呑む。
「ふむ・・・やっぱり良くわからん・・・」
一瞬に言葉の先を期待したかもしれないサルヌルシズルであるが肝心の蟹脚は唸って終わらせる。
言葉から読み取れる意味はおおよその概念は出来たのは確かであるが
実際にその先を言葉にすれば取り返しの使いない事にならないかと当人が危惧したからである。
「それよりも・・・。
この世界に豚は居るだろうか?・・・・カツ丼が食べたい・・・どうしても・・・」
「カツドンで御座いますか?食べ物でございましょうか?
豚?と言うのは?動物でしょうか?」サルヌルシズルは首をかしげてカツドンと言うものに思いを馳せる。


「第十弐女子騎士団、全員整列!装備を確認しろっ」
スラリとした四肢であり背が高くもこれも又、乳房の大きな第十弐女子騎士団団長が声を張り上げる。
ざっと軍踵がぶつかる音が響けばやはり女性らしい乳房と尻を揺ら騎士団員達が背筋を伸ばす。
整列した隊員の前に副団長が差し出した羊皮紙を覗き込み声を上げる。
「え~~と。本日の任務は・・・だなっ。
猪大豚族のお肉の調達である・・・。なんか違うな・・・とうばつじゃないの?
えっ。カツ丼の食材として猪大豚族のお肉が最適であるっと?
彼の召喚者のおでぶ殿が欲しがってると?なんか良くわからないけれど?
えっ。出来るだけ傷つけないように〆ろって?雄鶏と一緒の感じ?
面倒だぞ?我らは女子であっても騎士団ではあって・・・食料調達部隊ではっ
・・・何?カツ丼とは異世界の食べ物で有り猪大豚族を調達したら優先的に食する事が出来るとな!
そっ、それはたまらんな。淑女共、気合を入れろ!カツ丼の為に剣を掲げろ!
猪大豚族を〆るぞっ」美味しい異世界の食べ物を優先的に食べられるとわかると気合が入る。




天鼠 蛭姫ノ壱

天鼠 蛭姫ノ壱

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