黒装束



その漢は明らかに異國人である。
この胸糞が悪く成る程に暑いこの街で、COLOR付きとは言え派手なシャツを着込んでいるから其れと知れる。
肌の色も違えば髪色も違うし、何より随分と落ち着きがない。
雑踏黒頭屯する三輪バイクの客卓乗り場の列で手を上げて来たと時には、観るからにお登りの観光客でにみえた。
これはしめしめ態を遠回りをしてぼったくってやろうと古ぼけて半分壊れた三輪バイクのアクセルと握ると
「この道順で目的地迄行ってくれ」と当然分からない言葉を投げかけてきたと思うと形は違うが恐らくは携帯らしき
物を顔前に突き出される。其処には当然の如くに目的地の安宿までの道順が写ってる。
どうせ言葉なんてわからないんだし異國人であれば街の作りも言葉も分からない。
携帯の画面の道順に最初こそ従ったがそろそろ頃合いだろうと右に曲がって余計に距離を稼ごうとハンドルを切ろうとすれば
「違うだろ?おっさん。真っ直ぐだろ?画面ちゃんと観てくれる?」
言葉は分からずととぼけようとすれば結構な力で肩を叩いて来て反対の手で正面の方向を指差してくる
(こっちのほうが近いんだよ。お客さん)突き出された指の方向を無視して又、右にハンドルを切ろうとすれば
「そっちじゃないから。わざとやってるなら。警察いこうか?ポスタリカ。ポスタリカ」と声が飛んでくる。
耳に届いたポスタリカと言う言葉の意味は警察である。
確かに空港に付いたばかりであろうし荷物も旅行鞄だ。確かにこの國は初めてだろうし間違いはないだろう。
それでも最低限に旅慣れているのだろう。尚も頃合いを観て携帯のルートから外してやろうとハンドルを曲げると
今度は肩口からぬぅっと手が前に伸びてきてくるっと此方に携帯のカメラがこっちに向いたかと思うとぱちゃりと音がする。
(なにしやがるんだっ)と声を荒げると低い声が帰ってくる。
「僕はきちんと道順を提示した。その道順に沿ってホテルまで言ってほしいとも告げたぞ。
生活のためだろうが、勝手解らずの異國人からぼったくろうとするのは犯罪だ。
個の國の客卓には免許証の提示義務はないからな。こうやって顔写真を取って記録して警察に届けるんだ。
悪徳業者め。ポ・ス・タ・リ・カ。ポ・ス・タ・リ・カ」
短い文章でもわからないのにそこそこ言葉を並べられたらこっちも余計に分からない。
それでも携帯で顔の写真を取られ警察という単語を口にされたら嫌でもわかる。
三輪バイクの運転手は仕方なくも若い異國人が突き出す携帯の地図を観ながら道順に沿ってハンドルを切るしかなかった。
「それにしてもあっついぞ。こんなに暑いのに襟付きの服なんて来てるのは僕くらいなんじゃないか?
清掃のはずなのに誰一人着ていないぞ?良いのかな。木にしなくて良いのかな?」
礼節を重んじる倭之御國の出生まれであればこそ異国に渡っても染み付いた習慣は抜けないのだろう。
抱え込んた荷物鞄には御國の軍服さえ騎士hンと畳んで詰めてある。仕事柄必要になるかも知れないと思っての事では
あるがもとより実践配備されているのは個の國でも斎玉子五郎一人であるのだから意味いくらでも
ごまかせるのかも知れない。つまりは本人の几帳面な性格がそうさせているだけであろう。
東亜々亜帝教国。
5つとも7つとも言われる大陸世界のその大地の上でも個の國の人々のを取り巻く独自の思想は随分と変わっている。
虎穴にいらんぜばとも教えられても戦絡みの土地生まれの倭人の縊犂桶五郎がその全部を理解するのは何年も先のことである。



