【月額御主人様】Subscription Husband


「ああ~~。今日も負けたっ。負けたしっ。又負けた」
 縊犂桶噸麟と言う比較的若く無職でパチンコで生活を営む漢が横断歩道で立って待つ。
田舎育ちの噸麟であるが帝都に来て参年も過ごせば流行りにも染まる。
小柄な父親とは反対に母の性質を色濃くも継いだ噸麟はきちんと背も高い。
しかも少年時代に蹴技をも長く嗜んできたから四肢も良く締まってる。
見た目も良い。例え無職でパチンコ屋帰りでもあってもすれ違う女性が振り向く所か
容姿に見惚れ脚を止める所か声を掛けようと付いてこようとしてくる者もいるくらいだ。
髪の毛も割と無造作にいつも伸ばしている。前髪は適当に分けて流すが伸びすぎた毛は
これも昔付合った彼女が使っていた赤いリボンで適当に纏める。
極端に母親の性質を強くも引いているから漢でありながらも女性ぽさもある。
ぱっちりとした目と筋の通る鼻筋と小鼻。薄厚さの唇と三角の顎。
巷世間の街を歩けば雑誌のモデルに成るべきだと何処の馬の骨とも知らぬ輩が名刺を
突き出してくるのも週に二度と四度とか数も多い。
球技を止めたからと言っても事あるごとに四肢を動かす事は忘れないし健康にも気を使ってる。
「噸麟君。見た目は最高っ!ほんとに見た目だけは最高っ。
黙ってて。ねっ、黙ってて。そこに立っててくれるだけだけいいの。云々、素敵。
あっ、喋らなくても良いから。動かなくて良いから・・・・」
寒村から出てきて二人目に付合った彼女由々貴が口酸っぱくしていい続ける台詞。
其の意味を噸麟が自覚するまで数ヶ月も掛かる。
噸麟の姿容姿は回りの漢に比べてまさに美少年に類してる。但し当人は自覚がない。
容姿が確かに良くっても由々貴が黙ってと言い切るものがある。

訛である。
國の西の端と隅っこにぽつんとある婿飼村。
そこの出身である噸麟であるが、國言葉は皆同じだと信じていたが違ったらしい。
所謂、都会育ちの者にむかって噸麟がは話し出すと嗤いが止まらない。
聞き取れにないと言うよりは言葉の抑揚が強く高低差もあるから
端正な顔立ちの青年が真顔で歌い出すと言えば歌唱劇を無理に魅せられるのに近い。
季節が巡っていくにつれて生活も苦しくなってくる。
若いから未だ体も動けば無理も効く、あれだこれだと仕事をとっかえひっかえと
変えてみても、何かとどれも長続きしない。大抵の場合は対人関係が問題になっている。
噸麟は知らぬ存ぜぬとばかりに美麗美男子の嫉妬とやっかみである。
他人のやっかみに脚を引っ張らていけば、生活の質も堕ちてもしょうが無い。
なにしろ昼飯を食べると銭が減り、銭湯に浸れば金が目練りするのだ。
やむにやまれずと精神的にも余裕がなくなり、何やら怪しい輩と付き合えば
自然と成り行きで目つきも悪くとなって行き村に居た頃の陽気さも影を潜めてしまう。

「今週弐回目の敗退だぞっ!に・か・い・めっ
来週まで持たないぞ?財布ひっくり返しても五園玉一個も出てこないぞ?
ちなみに銀行通帳を何回確かめても二万園も残ってないんだぞ?
家賃払えば文無しだんだぞ!・・・お昼我慢してパチンコに・・・・
む、無理だっ。賭け事の女神さえそっぽ向いてるにちがいない。
どうしろって言うんだよ」
腹が空きすぎて我慢できずに断腸の思いで買い込んだ並盛りの牛丼を詰め込んだ
ビニール袋を大事そうにぶら下げ横断歩道と少し距離を置いて待っていると
「お願いしま~~す。かっこいい御兄さん」
細くも色白な指がすっと前に突き出される。
マッチ売りの少女曰く、テッシュ配りのバイト少女だろう。
普段なら相手にするのも面倒くさがるのだが、バイト少女が可愛く思えて貰ってしまう。
「愛人・主夫・不倫相手・間男募集って何?」
思わず受け取ってしまった如何わしいティッシュの裏をひっくり返し
追々気になった文言を口にする。
「随分、如何わしい広告じゃないの?」
如何わしくも悪事の匂いがプンプンとするティシュ裏の広告。
あまりに怪しいのでつい口にしてしまったが、問いかけた相手のバイト少女は
次の相手を探して噸麟の側にいない。淋しい限りである。
耳に届く前に進めと機会が単調なメロディを流し始めると大したこともないかと
随分と如何わしいテッシュを^ポケットの奥にしまい込む。















天鼠 蛭姫ノ壱

天鼠 蛭姫ノ壱

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