羆如くの養父とおませな双子の蛇舌少女


朝叫鶏が朝の人仕事を終え餌籠の穀物種を一心不乱に突きまくる時刻。
片田舎久しくも王都の会計帳簿の役人が参年に一回は税金の取り立てを忘れるために
翌年の税金が倍に成ると何とも不憫なやっぱり片田舎の街。
日だまり暖かくもそよ風が裏戸口からゆらりと入ってくる小さな台所。
基確かに小さな台所であるが、やたらと大きな鍋を覗き込む人影は羆の如きに大きい。
羆の如きに大きな体躯であれば漢であり言えば雄である。
羆の如くに体躯の大きな漢であるが出で立ちは主婦そのものである。
大体にしてそろそろお昼とも成れば当然に昼ご飯の支度であればこそどの家庭でも女と雌が
お玉を握るものであろうが、この家の台所を預かるのは羆漢である。
但しこの漢、随分と豆な性格を有するらしい。
白布の頭巾で髪を覆うのは良いがもとより毛髪は無い。禿ではないし薄らはげでもない。
歳も参十と弐を回ったところであるから老け込むのにはまだ早いのは確かだ。
毛髪がないのは手好きな時に散髪屋に通い綺麗に剃っている。
其の暇が無い時は使い慣れた刃物と石鹸で自分で剃り上げる。
鏡を六に観ない癖にも最後にはきちんと剃り上げるのは熟練の技であろう。
綺麗に剃り上げた頭を態々白布の頭巾で覆うのは料理を台所を預かるものとしての嗜みだとでもいうのだろうか?
頭を白布の頭巾で覆い、其処になくても毛髪等が料理に入らないと気を仕えば当然に着込むのは割烹着である。
何しろ大きな背中であれば本より尻もでかい。羆の如くであるから当たり前であるが
大熊、羆の体躯といっても普通に腹を突き出したおでぶちゃんでもある。
羆の如きの体躯であってもやっぱりおでぶの漢。
その背中に殺気を押さえてひたりひたりと脚音忍ばせ責める人影2つ。
こそりのそりと床石を踏む小さな脚音を踵を上げて忍び寄るは二人の少女。
歳の頃、6つかな7つというところだろうか?まだまだ母のぬくもりを欲すると時期でもある。
昼に三人で食べるであろう大鍋の中に料理匙を突っ込みかき回す羆漢の大きな尻。
のそりこそりと息を黙して二人の女の子がおおきな尻を目指して迫る。
6つ7つと見える少女の顔は良く似てる。姉妹にしてもそっくりである。
種を明かせば当然に双子であれば俗世には忌み子とも呼ばれる。
大きな尻に忍び先に忍び寄る少女のかもは透き通る程の蒼色である。
まだ幼くも大きな瞳にちょこんと乗った小鼻。可愛くもぽってりとした下唇。
弐年と半年を掛けて伸ばした髪を頭の上で右と左に丸めて団子に纏めてる。
かわいい盛りである以上に悪戯ぽくくりくりとした瞳を輝かせ気配を消して大きな尻の背後に迫る。
葵色の髪の少女の隣にピッタリと顔と四肢をくっつけるもう一人の症の髪形も同じ様に伸ばした髪を
お団子に伸ばして纏めている。顔の作りも蒼髪の少女と殆ど同じに視える顔つきと四肢であるが
その髪色は桃色である。双子忌み子であっても明らかに違うのも生まれる気の髪色で区別がつく。
のそりひそりとデカ尻に忍び迫る蒼色と桃色の双子姉妹の少女。
蒼色髪の少女がぱちくりと大きな瞳を瞬きしてこぶりな口を何故かと開ける。
可愛らしくも愛おしげな小ぶりの口がパクリと開けばぺろりと紅色の舌が出てくる。
唇から這い出た朱色の舌がにょろりと伸びる。にょろにょろと伸びる舌はそれ自体が何かの生き物で
あるかのようにうねうねと蠢くも可愛い唇から伸びていく。其の長さは軽く壱ユルを超えると成れば
到底に人種人類の舌とは違いすぎる。蠢く少女の舌の先端がゆっくりと左右に開けば
その間に鋭き牙がずらりと並ぶ。其の気になれば細めの木杭なぞ舌先に挟んで砕いてしまうくらいだ。
あと数歩、もう一歩と迫れば蒼色髪の少女にピッタリと顔を寄せる妹出あろう桃色髪の少女も
同じ様に唇をあけるとこれも又にょろりと朱色の舌が伸びて宙をうねり蠢く
殺気とも言える気配を殺し羆の如きの漢のそれもまた大きな尻に
紅くも長くも可愛い舌が、未だ此処だっとばかりに襲いかかる。


「ぷぎゃ!あばばばばばばばばばっ~~」
「ぷぎゅ!あばばばばばばばばばっ~~」
狙うは三時のオヤツの早食いであるとばかりに羆の如くの大きな尻の後袋に指した長飴棒。
あと少し零と三分の一の距離まで少女の舌先がにじり寄った途端。
電光石火疾風の如く羆漢のでっぷり尻が跳ねた。つまりはぐるりと四肢を入れ替える。
「我が可愛い娘ヌキキよ。お昼の前にオヤツの早食いを狙うとはいかぬぞ。
我が愛しの娘ぬぴぴよ。お昼の前にやっぱりオヤツの長飴棒を狙うとは何事であるか?」
「あばばばっ。ゆるしゅて。爸爸ぁ~~。痛いのでちゅ」
長く伸ばした自慢の舌を爸爸と呼ばれた羆漢が大きな手で握るのは菜箸である。
「あばばばっ。ゆるぶて。爸爸ぁ~~。痛いのですの」
起用にも大きな体躯を翻し自分の尻に収める長飴棒を狙う二人娘のヌキキとヌピピ
蒼色の髪で涙目になって顔をふるると振って怯えるのが姉・ヌキキ。
桃色の髪で必死に涙をこらえて胸元で拳を握りじっと堪えるのが妹・ヌピピ
二人姉妹であるが色濃くも人種人類には珍しい髪色とある種化け物じみた長い舌。
化け物じみたと言ってもまだまだ子供である。
「いだいっ、いだいの爸爸の意地悪ぅ」
柔らかい長い舌の先を菜箸で掴まれ姉のヌキキは悶える。
「いぴゃいですの、意地悪の爸爸ですの」
何かと起用であるが舌を菜箸で動きを封じられじっと我慢する妹のヌピピ。
「そもそも悪いのは君たちではないか?
儂が一生懸命に君達の為に時間を掛けて昼飯を作っているのに。
隙を狙いすまし悪事を働くとは何事であるか?全くもって油断もならぬ。
兎に角である。謝罪の気持ちを示すのは大事であるぞ?可愛くて戀しい娘たちよ」
本より舌を摘む菜箸に力などこもっていない。さらりと押さえているはいる物の娘の
四肢を傷つける親などもいないだろう。
「ごめんなぴゃい。爸爸~。許してぴん」
「ごぺんなぷぬん。爸爸~。許ぷてぴょん」
涙を堪えても必死に姉妹が頭を垂れ謝罪する。
「よしよし。悪戯盛りもまた可愛いのであるが悪さはいかんぞ。可愛い娘たちよ。
ふむ、では昼飯を頂こう。今日は早矢仕ライスであるぞ。ヌキキの好物であるな」
「や、やったぁ~~~。カラメルプリンもあるの?無いと怒っちゃうぴょん」
「御姉ちゃんばかりずるいですの。私も苺カラメルのプリンが食べたいですの」
羆漢の菜箸がぱっと離れた途端に嬉々として少女姉妹の越えが煩い程に狭い食堂に跳ね響く。
羆の如くと大きな体躯を誇る割烹着を着込む漢は縊犂桶團蔵。
言うまでも無くこの御國の出身等ではなく遠東の大陸飛びの民である
何やら故郷では大層に名の覇った絵かきであったとも言えば六尺に届く刀を腰に指すとか
噂波を立てるが
この地この國では意識して慎ましい生活を営むのを常としてるらしい。
それでもいつの間にかと二人の娘持ちとは人生図らずもわからない。
最も蒼髪桃髪色の可愛らしくも悪戯好きの娘二人とは縁を結んでも血縁はまったくともない。
どう頑張ったら強面一本眉顔の羆漢からこんな可愛らしい姉妹が生まれるのかと問いても
この年になるまで團蔵は世帯など持ったこともない。
まっことそれなりに言い大人であるから夜伽の相手探しにも精を出すべきではあるが
此処数年は二人姉妹の相手で手一杯でありそれに手を掛けてる暇もないのが正直である。
親の愛情を欲しがる年頃でも悪戯好きのヌキキとヌピピ。
狭い家屋で割烹着姿で家事に掃除に子供たちの世話と忙しく体躯を揺らす團蔵と
愛らしくもやっぱり悪戯好きの紅い舌をにょろりと伸ばすヌキキとヌピピの間に血の通ながりはない。
どこをどうやってどうしたの言うのは周りが幾ら訪ねても一本眉を顰めて團蔵は無言を貫き通す。














